運命に理由はありません(大野智)死神くん、ちょっと(桐谷美玲)
激しいバトルを勝ち抜いて・・・金曜日のレビューは「死神くん」である。
東日本大震災の後で日本人は老若男女を問わず「不慮の死」を身近に感じているだろう。
その「恐ろしさ」から逃れるために「死を感じさせない明るいドラマ」をお茶の間は望んでいるはずだが・・・スタッフたちはつい「死」について考えてしまうのだなあ。
だから・・・今季のドラマには「死」が充満している。
そして、視聴率がいいのは・・・「花咲舞」のような「死」とは無縁のドラマなのである。
そういう意味で・・・もっともストレートな題材をチョイスしてしまったこのドラマ。
しかし・・・基本的には「死ぬことは・・・トモダチに会うようなもの」的なニュアンスである。
「死」を押しつけるだけではないところが微笑ましいのである。
原作は1983年から発表されているので死神手帳はコミック「DEATH NOTE」(2003年)の先駆的アイテムと言うことができる。
死の予告とそれによって生じる人間の選択肢の変化の矛盾についてはドラマ「ロス:タイム:ライフ」(2003年)がその改善版と言える。
また・・・死者と生者の中間の場所についてはコミック「スカイハイ」(2001年)がより深化させていると考えられる。
また「生前の罪と昇天」についてはアニメ「地獄少女」(2005年)が展開しているわけである。
つまり・・・21世紀の「死神もの」の原点の一つが「死神くん」なのである。
なんで今頃という考え方もあるがここは「ナイス・チョイス」と言うべきだろう。
で、『金曜ナイトドラマ・死神くん・第1回』(テレビ朝日201404182315~)原作・えんどコイチ、脚本・橋本裕志、演出・中田秀夫を見た。脚本家はドラマ、アニメを両方こなす人だが実写版の時はあまりにも力が入りすぎるのか・・・微妙な時がある。今回は現実/非現実のバランス感覚が問われるので・・・いい感じで入った気がする。そもそも・・・一般的には「死神」は幻象的な存在である。現象しか信じない一般の人々にそれほどこだわらない方が面白くなるはずである。
基本的に・・・「死を予告するもの」は存在するわけだが・・・それが生死の境界線に属するために実証するのは難しい。なにしろ・・・証人はみんな死んでいるのである。しかし「あの世」や「天国と地獄」の想像の原点となっているのは「死を予告するもの」の存在である。「死神を見た」と言った人が「死ぬ」と・・・もしかしたら・・・「死後の世界があるのかもしれない」と人は想像を始めるわけである。
この世に定着している悪魔と違い、死神は当然・・・神の使者・・・つまり天使の色彩が強いわけだが・・・なぜか・・・死神には悪魔のイメージに近いものが流布している。もちろん・・・悪魔がそれに一役買っていることは間違いないのである。
「死の天使」なんて・・・かっこいいにもほどがあると悪魔が考えるからだ。
しかし・・・擬人化された死神には主任(松重豊)のようにイメージにぴったりの存在もあるので悪魔のキャンペーン効果の結果と断言することは憚られる。
さて・・・第一話のゲスト・・・死を予告されるものは・・・映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」のヒロインを演じた大原櫻子の演じる大西福子である。
大西福子はブスという設定なので・・・頑張ってブスに化粧しているわけである。
どうやっても美人という存在もあるので化粧である程度ブスになれるということはブスとしての才能もあるということなのだろう。
この人がブスだったら私もブスってこと・・・と気がついてはいけないことに気がついたら可哀想だという考え方もあるが・・・女性は意外に自分がブスだとは気がつかないものなので余計な心配なのだった。
大西福子は親友の小林真実(高田里穂・・・「悪霊病棟」からここ)が事故にあったと聞き、病院に見舞いに行く。
小林真美は顔面にひどい火傷を負い・・・失明の危機にあった。
担当の看護師(阿南敦子)はルーズな性格なので友人の福子に真美の病状を詳しく話すのである。・・・場合によっては訴えられるので注意が必要です。
「火傷もひどいけど・・・今は視力が無い状態なの・・・友達として・・・励ましてあげて」
「そんな・・・痣が残ったり・・・失明してしまうのですか」
「今は整形技術が発達しているし、角膜移植もできるから・・・改善されると思うのよ・・・でも女の子は今が一番だから・・・ショックだと思うの」
「そうですね」
しかし・・・失明中なのに割と自由な行動をする真美は「もう生きているのが嫌になりました」と置き手紙を残し、病床を抜けだして屋上から身を投げるのである。
だが・・・通りすがりの死神くん(大野智)がそれを許さないのだった。
「困るんですよ・・・」
空中に停止した真実に死神くんが告げる。
「なんなの・・・これ・・・」
「あなたの死亡時間は今ではないのです・・・神の摂理に反します」
「はあ?」
「とにかく・・・人間は死ぬべき時に死ぬものなのです」
気がつくと・・・真実は病院の花壇に寝ていたのだった。
真実を発見した福子は安堵する。
「よかった・・・死ぬなんて言うから驚いちゃった」
「私・・・死神の夢を見てた」
「何言ってるの・・・」
「でもね・・・私は死にたいの・・・だってこんな顔になったら・・・生きていても意味ないでしょう」
「看護師さん・・・治るって言ってたよ」
「本当?」
そして・・・病院からの帰路・・・福子は死神くんに出会うのだった。
「こんにちは・・・私、死神です。登録番号は413番なのです。この度はおめでとうございます」
「はあ・・・」
「お迎えにあがりました・・・私がお世話させていただきます」
「なんなの・・・」
「あなたは人生のゴール・・・つまり、死にまもなく到着なさるのです」
「変態・・・変態なのね・・・誰か助けて・・・」
通りすがりの医師が答える。
「お譲さん・・・どうしたんですか」
「変態が・・・変態がそこに・・・」
「どこに・・・?」と首をかしげる医師。
「あ・・・申し遅れましたが・・・死神は・・・担当させていただくご本人様以外には見えません」
「・・・」
「そうです・・・私は人間ではございません」
空中に浮揚する死神くんに絶句する福子だった。
「死神なんて・・・そんなの聞いたことないわ」
「いや・・・意外と有名だと思いますけど・・・」
「でも・・・それは作り話でしょう・・・」
「火のないところに煙は立たないんですよ」
「でも本当にあった怖い話にはでてこないし」
「なかなか・・・難しいんですよね・・・御本人が死んでしまうので・・・」
「死ぬって・・・」
「あなたは後三日でお亡くなりになります」
「そんな・・・私・・・こんなに若いのに・・・」
「死ぬ人は生まれてすぐに死ぬ場合もあります。若くても事故とか病気とか・・・戦争や大災害なら老若男女もれなく大量に亡くなられますし・・・」
「三日前から・・・死ぬなんて・・・たとえば飛行機事故とかなら・・・全員が予告されているとしたら・・・乗らない人も出てくるでしょう」
「そう言う場合にはそこはかとなく・・・言葉を濁すのが・・・我々、死神の腕の見せ所なんです・・・まあ、私の場合、新人なんで失敗も多いですけどね」
「なんで・・・わざわざ予告するのよ・・・」
「そうですねえ・・・そういう決まりなんです・・・ただ・・・残された時間を有意義に使って・・・想い残すことがないように過ごすのは悪くないと思いますよ」
「私・・・まだ死にたくない」
「皆さん、そうおっしゃいます」
「どうして私が死ななければならないの」
「人間の運命に・・・理由なんてないんですよ」
「つまり・・・生きているのも無意味ってこと」
「いいえ・・・そんなことはありません・・・すべてのもの意味がありますよ・・・その気になりさえすれば・・・」
「三日で何ができるのよ」
「やりたいことをしてください」
「やりたいことって・・・」
その時・・・真実のボーイフレンドで福子が密かに憧れている三城尚之(渡部秀)からの連絡が入る。
福子の中で複雑な思いが交錯する。
「私・・・友達は・・・真実しかいないの・・・でも・・・真実にとって私はただの引き立て役・・・本当は尚之くんが好きだけど・・・とても勝負にならないし・・・」
「どうしてです」
「だって・・・私、ブスだもの」
「まあ・・・外見は大事ですよね・・・でもそれだけではないのでは・・・」
「だって・・・尚之くんだってかっこいいから好きなのよ」
「尚之くんはかっこいいだけの人ですか」
「いいえ・・・優しい人だと思うけど」
「優しい人は嫌いですか」
「そんなことないでしょう」
「あなたは優しい人じゃないんですか」
「・・・」
「さあ・・・勇気を出して・・・電話に出てください」
福子は電話に出る。
「やあ・・・福子ちゃん・・・あの・・・真実と連絡が取れないんだけど・・・何か知らないかい」
福子が事情を話すと・・・何故か、お見舞いの品物を一緒に選んでくれるように言われる。
福子にとって生まれて初めてのデートだった。
それを見守る死神くん・・・そんな死神くんを咎めるように見つめる黒いカラス・・・。
尚之を病院に送りだした福子に死神くんは言う。
「一緒に行けばいいのに・・・」
「私がいたら邪魔でしょ・・・」
「いいんですか・・・残り時間はあと二日ですよ」
「いいのよ・・・私みたいなブスが彼と一緒に歩けただけで奇跡みたいなものだもの」
「せっかくだから・・・告白とかキスとかテレビではお伝えできないこととかにチャレンジしてみたらどうですか」
「そんなの・・・無理よ」
しかし・・・とりあえず・・・尚之に明日の予定だけは尋ねてみる福子だった。
「明日は・・・友達と約束があるんだ・・・明後日じゃダメかな」
「明後日はちょっと私に予定があって・・・」
「じゃあ・・・今度、連絡するよ」
「はい・・・」
ため息をつく福子に寄り添う死神くん。
「もうひと押しすればいいのに・・・」
「もう充分・・・親友の彼氏に手を出すなんて・・・すごく悪い女になったみたいで・・・気分がいいわ」
「ふふふ・・・あなたはとても素敵な女の子ですね」
「私も・・・担当があなたでよかった・・・おじさんの死神もいるんでしょう」
「ええ」
通りすがりの主任(松重豊)は何食わぬ顔で通り過ぎるのだった。
翌日、病院の真実を見舞った福子は・・・親友に別れを告げるのだった。
「昨日・・・尚之くん来たでしょ・・・」
「なんだか・・・福子の話ばかりしてたわ・・・私がこんな風になったから・・・あなたに乗り換える気なのかしら」
福子は真実の頬を打つ。
「ふざけないでよ・・・私はあなたの引き立て役だった時・・・あなたに一言でも文句を言ったかしら」
「福子・・・」
「さようなら・・・真実・・・」
その夜、福子は何も知らない父親(おかやまはじめ)と母親(池谷のぶえ)にさりげなく感謝の言葉を伝える。
そして、最後の日・・・死神くんと池のボートに揺られる福子。
「いいんですか・・・最後の日に僕なんかといて・・・」
「うん・・・」
「彼とデートしたり・・・彼女と仲直りしなくても・・・」
「できれば・・・彼女の役に立てるといいけど・・・死んじゃうしね」
「・・・」
やがて・・・福子は事故死した。
遺体は運ばれ・・・角膜移植のドナー(提供者)となる。
「こんなに早く提供者があるなんて・・・あなたは運がいいわね・・・」
「私・・・目が見えるようになったら・・・会って謝りたい友達がいるんです」
「そう・・・」
目の見えない真実の横でドナーとなった福子は永遠の眠りについていた。
霊界に帰還した死神くんは監死官(桐谷美玲)に罵倒されるのだった。
桐谷美玲、かわいいよ桐谷美玲が炸裂である。
「何やってんのよ・・・現実に介在して・・・死者の願いを叶えるなんて・・・ものすごい規則違反よ・・・」
「だって・・・穏やかに逝けたんだから・・・いいじゃないか・・・すごいいい子だったし」
「何、人間みたいなこと言ってんのよ」
「死神にだって人情はあるさ」
「ないわよ・・・漢字で書いてみなさいよ・・・あんたは人じゃないのよ・・・死神でしょう」
「じゃあ・・・死神情があるって言えばいいのか」
「そういう問題じゃねえよ」
「ま・・・いいじやん」
「とにかく・・・死神手帳だしな・・・確認印を押しとくから・・・」
「あれ・・・」
「何よ・・・」
「死神手帳落しちゃった・・・」
「バカじゃね・・・」
死神の手を離れた死神手帳は実体化するらしい・・・。
それを拾ったのは・・・「銀二貫」の主役の人(林遣都)だった・・・。
「デス・ノート」誕生である。
関連するキッドのブログ→鍵のかかった部屋
| 固定リンク
コメント