復讐の国で死者の名を刻むアリスの棘(上野樹里)
毎度おなじみの復讐の物語である。
「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」は復讐譚とは言い難いが・・・孤児となった主人公への優しい父の形見として登場する。
ちなみにハンプティ・ダンプティは「鏡の国のアリス」の登場キャラクターである。
そもそも・・・「魔王」の脚本家がスタッフに参加していて、タロットカードの「フール(愚者)」が登場して「フール・オン・ザ・ヒル/ビートルズ」のもじりであると思われる「フール・オン・ザ・デス(死者の上の愚者)」などと展開している。
「不思議の国のアリス」にはそれほど思い入れがないものと思われる。
まあ・・・ディズニー映画の「ふしぎの国のアリス」的なごちゃまぜを前提とすれば・・・フールとは「斬首好きなハートの女王」が「バカの壁」の向こう側にいるということなのかもしれない。そもそも「アリス」のハートの女王は不吉なスペードの女王が憑依しているようなもの。つまり・・・その正体は「死神」なのである。
とにかく・・・復讐のために女医となった娘が無数にいる父の仇を討ちまくるという設定にかなり無理があるので・・・その復讐模様にうっとりするしかないのである。
「のだめ」ではない女優・上野樹里を堪能できるだけで充分なのだな。
で、『アリスの棘・第1回』(TBSテレビ20140411PM10~)監修・西田征史、脚本・髙橋麻紀、演出・塚原あゆ子を見た。演出家は「夜行観覧車」で独特の情念を描きだしてキッドの中では高評価の人である。今回も・・・少なくとも・・・復讐者であるヒロイン・水野明日美(菊池和澄→上野樹里)を美しく存在させている。最近は仮面ライダーたちに家の警備をお願いしている上野樹里しか見ていないのでものすごく新鮮だった。
15年前・・・小山内孝夫(眞島秀和)は不慮の死を遂げる。
さらに・・・葬儀の席で汚職に関わったことが報じられ・・・死者は鞭打たれる。
残された娘の元に・・・病院から提示されたカルテとは別のカルテが届く。
それは・・・父の死が・・・医療ミスによるもので・・・事実が隠蔽されていることを娘に示す。
誕生日に「不思議の国のアリス/ルイス・キャロル」を贈ってくれた優しい父の面影に復讐を誓う娘・・・。
そして15年の月日が経ち、父の友人だった水野和史(中村梅雀)の養女となって水野明日美を名乗った女医が・・・聖林医大病院に赴任してくるのだった。
仇の一人である磐台修一教授(岩城滉一)は有馬教授(國村隼)と次期院長の座を争っている。
磐台修一教授は「大学病院の使命は臨床でも教育でもなく研究だ」と言い切る先端医療技術の推進者で保守的な有馬教授とは意見を異にしている。
明日美の所属する消化器外科では・・・最先端医療ロボットNOAの導入に伴い・・・手術での運用に意欲的な伊達理沙医師(藤原紀香)が適当な患者を捜していた。伊達医師にとって患者は自分の実績をあげるための道具でしかなかった。
「患者なんて・・・実験用のマウスと一緒よ・・・医者は患者を何人か殺して一人前になっていくの」と研修医を指導するのだった。
明日美は看護師の星野美羽(栗山千明)や磐台教授の息子で研修医の悠真(中村蒼)と接しながら普通の新人女医としてふるまっていたが・・・すでに最初のターゲットに狙いを定めていた。
父の手術に参加していた蛭子雅人看護師長(六平直政)である。
彼は患者よりも医師の意向を尊重するタイプの看護師だった。
「バカと患者は使いようですよ・・・甘やかすとつけあがります」と明日美におもねる蛭子。
明日美はたちまち・・・復讐心を燃えあがらせる。
ハンプテイ・ダンプティ 塀の上に腰かける
ハンプティ・ダンプティ ふんぞり返って落ちれば粉々
一族総出であわてたものの
ハンプティ・ダンプティ 中身がドロリ
明日美は正しいカルテのコピーで蛭子を夜の屋上におびき出すと・・・非常用縄梯子に追い詰める。
風の中で絶体絶命の蛭子だった。
「なんでしたっけ・・・バカとハサミでしたっけ・・・」
「おい・・・バカな真似はよせ」
「ハサミはロープを切るためにも使えます」
梯子の片側を切られて宙に揺れる蛭子。
「なんでそんなことをするんだ・・・」
「それは・・・あんたに殺された・・・男の娘だからだよ」
「俺は誰も殺してない」
「それでは・・・なぜ・・・カルテが二つあるんですか」
「そ・・・それは・・・」
「それでは説明は父に直接してください・・・あの世で」
「わかった・・・医療ミスだ・・・伊達医師が・・・無謀な術式にトライして・・・あんたの父親を死なせたんだ・・・」
「罪をつぐなってどしんと落ちますか」
「許してくれ・・・」
「あなたが患者にしたすべての悪事を記録してあります」
「なんだって・・・」
「それを患者の家族が知ったら・・・どうなるでしょうね」
「そんなことをしたら・・・あんただってこの病院にいられなくなるぞ」
「私は復讐に命を賭けてますよ・・・わかりませんか」
「わ・・・わかった・・・どうすれば許してくれるんだ」
「それでは・・・私の奴隷になりなさい・・・私の復讐は始ったばかりですから」
「はい・・・」
こうして・・・明日美は・・・蛭子を支配下に置いたのだった。
明日美の父の死にはまだ様々な謎が隠されている。
それには・・・磐台教授や・・・病院の顧問弁護士・日向(尾美としのり)などまでからんでいる気配である。
場合によっては・・・少女時代の明日美を知る医療担当の新聞記者・西門優介(オダギリジョー)もターゲットなのかもしれない予感さえある。
しかし・・・明日美のとりあえずの復讐相手は手術ミスによって父親を死に至らしめた伊達に定められる。
明日美の父を「術死」(ステルベン)の一言で葬り去った伊達は・・・その後も患者をステまくったのである。
その中には青年実業家で伊達のフィアンセである男の祖父までが含まれていた。
そして現在でも伊達は手術患者を確保するために・・・手術が危険なものであることを隠して患者に手術を受けさせようとしていた。
そのために・・・患部の画像をすりかえることも強行するのである。
明日美はその事実を伊達のフィアンセを巻き込んで公開してしまうのだった。
「なんてことするのよ・・・このままではすまさないわ」と明日美に食ってかかる伊達医師。
しかし・・・電撃を浴びて失神し・・・気がつけば麻酔を打たれて手術台に寝かされているのだった。
「意識は戻っても・・・身体は動きませんよ」
「こんなことをして・・・ただですむと思ってるの」
「あなたのしてきたことにくらべれば・・・なんてことはないですよ」
「なんだっていうのよ」
「私は15年前にあなたの無謀なトレーニングで殺された小山内孝夫の娘ですよ」
「・・・あの患者の・・・」
「患者じゃないんでしょう・・・マウスなんでしょう・・・」
「私をどうするつもり」
「私は新人なんで・・・先生の身体でトレーニングさせてもらいたいと思います。内臓順番に切り取って・・・先生にお見せしますよ・・・まずは食道から・・・それとも直腸にしましょうか・・・先生は上下どちらが好きですか」
「やめて・・・許して・・・あの患者のことは・・・悪かったと思っている・・・私も若かったのよ」
「患者・・・患者って・・・私の父親には名前があるんですよ」
「あの時・・・あなたの父親は助けられた・・・でも指導医の千原先生が術式の変更は許されないって言うから・・・」
「指導医の千原・・・」
「ね・・・だから・・・許して」
「とりあえず・・・あなたには医師をやめてもらいます」
「え・・・」
「あなたの殺した患者の遺族の皆さんに・・・すべての記録を送りつけてもいいんですよ」
「・・・ひっ」
「いろいろ・・・いますよね・・・ヤクザの親分とか・・・」
「・・・やめて・・・」
「医者をやめますか」
「やめる・・・」
「それじゃあ・・・記念に・・・私の父の名前を忘れないように・・・身体に刻みこんでおきますね」
「・・・」
明日美は伊達の腹部に「T.OSANAI」のサインを刻んだ。
「いやあああああ」地獄の手術室な伊達の悲鳴がこだまする。
「あれれ・・・麻酔切れてきましたか・・・」
そして・・・明日美は次なるターゲットの千原淳一准教授(田中直樹)に標準を合わせるのだった。先は長そうだ・・・。
まあ・・・本当は・・・処理済みの人は監禁しておいた方がいいよね。
後でまとめて殺すために・・・。
まあ・・・14歳から29歳まで・・・仇討ちだけを考えて来た娘の決心を「彼」が揺さぶるんでしょうけどね。
「ああ・・・あなたは親の仇の名を持つ人・・・磐台あなたはどうして磐台なの」的に。
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