お言葉を返すようですが・・・花咲舞が黙ってない(杏)
さて・・・水曜日は谷間である。
ということは・・・このドラマも谷間に咲くレビューしかしない。
ある意味で・・・このドラマはベタである。
ありえない世界でありえないキャラクターが紡ぐ物語なのである。
ところが・・・お茶の間はそういうベタの世界をありのままに受け止めるという性質を持っている。
結構、受ける・・・わけである。
「金融機関」という限定された舞台を主としながら、このドラマの原作者は見事にお茶の間の心をつかむらしい。
一方でヒロインを演じる杏は二世タレントでありながら・・・ものすごくたたきあげの感じを醸しだす才女である。
意地悪な敵役も、妖怪人間も、朝ドラマも根性でこなしていく雰囲気がある。
頭に本を乗せてウォーキングできるだけで尊敬に値するわけだが・・・ある意味でベタを演じさせると抜群という言い方もできる。
何をやっても杏ではあるが・・・それはものすごい存在感ありということなんだな。
もちろん、ホメてますから、全力で。
で、『花咲舞が黙ってない・第1回』(日本テレビ20140416PM10~)原作・池井戸潤、脚本・松田裕子・江頭美智留、演出・南雲聖一を見た。原作は2004年刊行なのでほぼ10年前の作品である。つまり、一昔前の話なのである。しかし、たとえば・・・銀行のように身近にありながらほとんどの人にとって内実が知られていない異世界ではベタというものが・・・存在する。それは「ベタな警察」とか「ベタな病院」とか・・・そういうものだ。なんとなく・・・そうなんじゃないか・・・という想像の範囲内がベタである。そこで・・・「言いたいことをつい言ってしまう主人公がなんだかんだで問題をすっきりさせる」というベタな話が展開するわけである。
だが・・・そういう作品でも美しい一瞬というものがある。
今回で言えば・・・突然、東京第一銀行(架空)の支店統括部・・・つまり本部員に抜擢された窓口係(テラー)の花咲舞(杏)が初めて本店を訪れた時の感想がいい。
「男の人ばっかりだ」
男女雇用機会均等法という・・・少子化対策であり、男女平等の国際化戦略でもある・・・官僚たちの出した答えが・・・人類の、アジアの、日本の男尊女卑の伝統と軋轢を生じさせている一瞬が静かに美しく描写されているのだ。
女の首相も、女の国会議員も、女社長も、女管理職も・・・まだまだ男女比率と添ってはいないという実態がある。
とにかく・・・完全なる男女平等が実現すれば・・・男というだけで立場を維持している人や・・・それに従属している人が困惑することは間違いないのである。
だからこそ・・・部下の女が上司の男に「これやっておいて」とお願いしてしまうという構図は面白おかしいわけなんだな。
テラーとして職場でそれなりに生き甲斐を見出していた花咲だが・・・突然、本部に栄転となり・・・基本、凄い出世なのである・・・支店統括部で臨店(業務指導を兼ねた査察のような業務)を担当する相馬(上川隆也)の部下となり・・・銀行内に燻る様々な問題点に遭遇するわけである。
しかし・・・本店と支店は敵対関係にあるわけではないので・・・相馬は問題があっても基本的には穏便にすませる方針である。
つまり「寝た子は起こさない」のが保身の道なのだった。
しかし・・・こわいものしらずの主人公設定は「寝た子をたたきつけても泣かす」的な暴走を繰り返すのだった。
そして、平氏が源氏には勝てないのである。・・・おいっ。
初回は・・・「業務成績の向上」が抜群の茅場町支店・支店長の矢島(羽場裕一)と対決である。矢島は次期頭取候補の真藤常務(生瀬勝久)の派閥に属しており、相馬としては絶対に対立したくない相手なのだが・・・。
だが・・・「成績向上」の裏には「徹底的なコストカット」が含まれていて・・・有能だが賃金の高いベテラン女性窓口係に対する陰湿ないやがらせによる退職勧告がパワハラの域に達しており・・・花咲は義憤に燃えるのだった。
すでに・・・三人のヴェテランが理不尽な退職に追い込まれ・・・中島聡子(木村佳乃)が孤軍奮闘しているのだった。
そして・・・臨店中の花咲の目の前で・・・聡子は現金百万円の過払いというありえないミスを犯すのだった。
百万円を多く受け取ったはずの客はそれを否定する。
払いすぎた・・・もらいすぎてはいない・・・は水掛け論である。
それは・・・矢島支店長の責任問題が発生する不祥事であるが・・・矢島はなんとか百万円の回収に成功する。
ところが・・・花咲は百万円が払われていないという事実を突きとめてしまうのだった。
百万円は聡子が横領していたのである。
「どうして・・・そんなことをしたんですか」と聡子を問いつめる花咲。
「フクシュウダ・・・」
「・・・」
「サキニヒドイコトヲシタノハシテンチョウノホウダ」
「店頭制服星人ですか・・・」
「フクシュウスル・・・」
しかし、支店長は自腹を切って百万円を補填し、聡子の自爆テロは失敗に終わりかけたのだった・・・。
だが・・・花咲舞が黙っていないのだった。
金額が合わなかった時に銀行員が絶対にしてはならない・・・禁じ手中の禁じ手「補填」をした矢島支店長の行為を暴いてしまう花咲なのである。
そして・・・矢島は左遷されたのだった。
もちろん・・・一矢報いた聡子も退職するのである。
「あなたなら銀行を素敵な世界に変えることができる・・・」聡子は花咲に希望を託すのだった。
そして、花咲舞は謎の黒い球体に・・・。
ああ・・・なんて爽やかなベタの夕暮れ・・・。
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