カーネーション(尾野真千子)と純と愛(夏菜)をダブルでえげつなく極悪がんぼ(仲里依紗)
「ナニワ金融道」「カバチタレ!」そして「極悪がんぼ」は独特の主題で共通世界を形成している。
それは「この世は金である」ということである。
しかし・・・「金」とは何か・・・という哲学から・・・「金を得るためにはどうすればいいか」という手引きまで・・・様々なアプローチが単なる真理を面白おかしく彩るのである。
「金」とは基本的に「信用に基づくもの」であるから・・・社会秩序をもたらす「法」に密接にからんでくる。
もちろん・・・面白い事象というものは法の内外の境界線に立つ場合が多く・・・あきらかに「犯罪」の匂いがする。
最近では・・・最初から犯罪者を主役に据えた「闇金ウシジマくん」が強烈な暗黒を深夜に漂わせているわけだが・・・フジテレビでは・・・ゴールデン・タイムにこのチャレンジを繰り返してきた。
中居正広が灰原を演じる「ナニワ金融道」(1996年~2005年)、主人公のヒロイン化の先駆となった常盤貴子と深津絵里の「カバチタレ!」(2001年)である。
しかし・・・これらはまだ主人公が完全な悪ではなかったのである。
今回の「極悪がんぼ」は早い話が犯罪者集団である。
あくまでドラマですから・・・でどこまで真髄を貫けるか・・・楽しみである。
いきなり・・・主人公のヒロイン化と・・・ドラマ「カバチタレ!」の性風俗業者への身売りの阻止という「どこかで見た展開」で幕を上げたわけだが・・・「ナニワ金融道」で主人公を導く桑田役を演じ、「カーネーション」で糸子(尾野真千子)の父親役を演じた小林薫がどうにもこうにも怪しい存在として登場し・・・ダークな感じを醸しだすのである。
もう・・・登場する男たちが全員、息苦しいよね。
ある程度・・・ソフトにするのは甘んじて受け入れたいと考える。
だって、お茶の間が相手だもんね。
で、『極悪がんぼ・第1回』(フジテレビ20140414PM9~)原作・田島隆・東風孝広、脚本・いずみ吉紘、演出・河毛俊作を見た。ドラマの最後に抜道琢己(板尾創路)が「ドラマの中で登場人物が犯罪行為をしていますがけして真似しないでください」と語るわけである。かなり際どくなっている「表現の自由」問題が再燃しないことを祈るばかりだ。世界はまだ始まったばかりだ。そしてどこまでもつづく空のもとで自由になりたいものである。
で・・・何かあった時のために・・・舞台は架空の都市・・・金暮(かねくれ)市なのであった。
つまり・・・登場人物が何をしようが架空の話なんですってば・・・ということなんだな。
さて・・・ヒロインはもちろん・・・底辺の人間である。
幼い頃に・・・借金の形に実家の「お好み焼き屋」は奪われ、たった一人の身内である母親は病死・・・中学を卒業すると自活して生きて来た女。あげくの果てに料理の腕はいいが・・・金に困るとクレジットカードを偽造するような恋人・茸本和磨(三浦翔平)にひっかかった女・神崎薫(尾野真千子)・・・職業・フリーターである。
カード偽造が発覚し・・・まともな社会人ではない雰囲気の男(中野英雄)から迷惑料二百万円を要求される薫・・・そして・・・和磨は逃亡である。
恵まれているとは言えない人生をそれなりに真面目に生きて来た薫は目の前が真っ暗になるのだった。
そこへ・・・さらにまともな社会人ではない雰囲気の男たち・・・金子千秋(三浦友和)と夏目大作(竹内力)が登場する。
彼らは・・・金の流れをスムーズにすることで何らかの利潤を得る・・・いわゆる「事件屋」を自称する。
つまり・・・迷惑料をもらいたい男と迷惑料を払えない女の間に入って・・・問題を処理し・・・手数料や相談料を得るのである。
この場合は・・・迷惑料を薫に代わって支払い(ただし・・・ある程度値切る)、薫にはすぐに金になる仕事(基本的に売春・・・ある程度抜く)を紹介するということである。
彼らにとってすべては日常的な業務であり・・・その席には同じように二百万円の借金がある女、矢敷聡美(夏菜)が同席しているのだった。
朝ドラのヒロインも金に困れば結界の張られた離島の温泉地で薄い制服のコンパニオンをしなければならないのだった。
「売春しろって言うんですか」と健気に抵抗する薫。
「それは・・・あんたの自由だ・・・出発は明日だから・・・一晩じっくりと考えてみな・・・けして悪い話じゃないと思うぜ・・・三ヶ月もすれば・・・綺麗な身体になれるんだ」
納得できない薫の隣で気の弱そうな聡美はうつむくばかりである。
金子たちはさらにさらにまともな社会人ではない雰囲気の男たちが集まる「小清水経営コンサルタント」の一員だった。
その一室ではさらにさらにさらにまともな社会人ではない雰囲気の冬月啓(椎名桔平)がさらにさらにさらに完全無欠にまともな社会人ではない雰囲気の所長・小清水元(小林薫)が一通の公正証書を手渡していた。
がめついらしい亀津井(勝村政信)からの800万円の不良債権の回収を命じたのである。
しかも道路の開発がらみで・・・亀津井に不動産を手放すように仕向ける裏の仕掛けも必要らしい。
冬月は金子の連れて来た二人の女に目を止めるのだった。
この事務所には弁護士の豊臣嫌太郎(宮藤官九郎)や小者風の抜道琢己(板尾創路)もいてそこそこ怪しいのだがもうお腹いっぱいである。
しかも・・・怪しい男たちは仲間というよりは敵対しているのだった。
金子が二人の女から搾取しようとしている金の流れを・・・冬月は自分の方に流れ込むように画策を始める。
「売春婦にならずに一日で借金を返せる手がある」と持ちかける冬月。
薫は興味をひかれるが・・・その方法とは・・・擬装結婚だった。
「それって・・・犯罪では・・・」
「無理にとは言いませんよ」
自宅に聡美を招き・・・相談する薫。
聡美は身の上話を始める。
「幼い娘がいて・・・夫が作った借金があり・・・できれば一日も早く借金を返したいから・・・偽装結婚をしようと思う」
「ええっ」
冬月の借金返済作戦。
信用情報機関のブラックリストに乗り、新たな借金ができない亀津井と聡美。
聡美はさらに自己破産をしており、さらなる自己破産ができないという身の上である。
そこでまず・・・亀津井と聡美が結婚し、矢敷の姓を得た亀津井が運転免許を再交付。ブラックリストのチェックを逃れる矢敷としてキャッシングし、消費者金融から限度額を借りまくる。
これで亀津井と聡美は離婚。400万円を入手。
次に亀津井と薫が結婚し、薫は亀津井姓で1200万円の借金をして自己破産をするというものである。
薫は経歴に傷がつくが200万円を。
聡美は偽装結婚の罪に問われるが200万円を。
亀津井は返済のための800万円を手に入れることができるのである。
作戦は順調に進行するが200万円を借り入れたところで亀津井が逃亡してしまう。
冬月の計略を知った金子が「偽装結婚」は犯罪だと亀津井を脅したのである。
たまたま・・・200万円を手にしていた薫は解放されるが・・・聡美は温泉島に行くしかないことになるのだった。
「運がよかったな・・・」と金子に告げられた薫の・・・良心が疼くのだった。
「あんたたち・・・事件屋でしょう・・・お金を払うから・・・聡美を助けてよ」
「一人100万円だぞ・・・借用書を書きな・・・それに俺たちは面が割れてるから島から連れ出すのはお前が自分でやれ」
「やったるわ」
こうして・・・島に潜入した薫は身売り前の聡美を連れ出すことに成功する・・・たちまち組関係の追手がかかるが・・・薫と聡美は海に飛び込み・・・漁船に拾われて本土に舞い戻るのである。
そこからは「小清水経営コンサルタント」の男たちが顔なじみの警察官・伊集院保(オダギリジョー)を巻き込んで追手の追跡を阻むのだった。
この辺り・・・案の定・・・脚本家の筋書きはかなり杜撰だが・・・想定内と言える。
ついでに・・・主人公の女性化によって発生した茸本和磨の恋人化と・・・オリジナル・キャラクターのバー「まやかし」のママ・真矢樫キリコ(仲里依紗)の設定にも・・・ややとってつけた感じは漂う。
キリコが情報屋だったり、冬月に片思いしていたり、豊臣にサディスティックに接したりするのもかなり安易な感じがする・・・まあ・・・しかし・・・月9なので・・・どうにもこうにもである。
まあ・・・基本的に全員が本当は組関係という話だからな。甘さは必要不可欠かもねえ。
結局・・・聡美は・・・ギャンブル依存症の多重債務者で・・・身の上話は全部ウソ・・・その上で姿を消してしまう。
薫には二人分の救出料金200万円の借金が残る・・・。
「こうなったら・・・この仲間にして・・・お金の作り方を教えて・・・」
どことなく甘さが残る薫に・・・金子は釘を刺す。
「お譲ちゃんの必死さなんて・・・本気とは言えない」
しかし・・・小清水所長は契約書を示すのだった。
「ウチは独立採算制だ・・・ウチの看板を使うなら年間2000万円のフランチャイズ料金を上納してもらいます」
「な・・・200万円でアップアップしてる人間に背負える金額じゃないだろ」と金子。
しかし・・・薫はサインをするのだった・・・ドラマだからである。
はたして薫は極悪のがんぼ(悪)の花を咲かせることができるのでしょうか。
ドラマの出来そのものがかなり境界線上だが・・・重厚なメンバーにはかなり魅かれる開幕戦だった・・・。
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