娘(大島優子)に性的な意味で親子丼を強要するのは犯罪です~映画・闇金ウシジマくん(山田孝之)
映画「闇金ウシジマくんPart2」の公開中に深夜でPart1のオンエアである。
本編は2時間超の大作だが・・・放送はいろいろな意味で大幅カットされてのオンエアである。
春ドラマのレビューは(月)「極悪がんぼ」、(火)「サイレント・プア」という流れになっているのだが・・・「極悪がんぽ」が金にからんだ犯罪が主題で、「サイレント・プア」は金にからんだ救済が主題である。
その両方を合わせ持ち・・・より深く、よりエンターティメントに仕上がっているのが「闇金ウシジマくん」シリーズだと言えるだろう。
ただし・・・犯罪は「極楽がんぼ」のように薄っぺらくはなく、救済は「サイレント・プア」のように慈愛には満ちていない。
クズたちの人間関係の中でひっそりと花咲く闇の花・・・それがウシジマくんなのだ。
もちろん・・・これを見て・・・クズはクズなりに真面目に生きていこうと思うことが大切なのである。
で、『映画 闇金ウシジマくん(2012年劇場公開作品)』(TBSテレビ201405190151~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、監督・山口雅俊を見た。金に価値があるのは信用があるからである。そこには当然、法治国家が関係している。国家である以上、公序良俗が維持される必要があり、秩序は既得権益を保護する。それは簡単に貧富の差を生みだすのである。世界戦争後の安定した世界秩序がどれほどの貧富の差を拡大させたことか。経済力は簡単に支配力に変換される。男尊女卑によって男性の経済力が優位になれば女が売り物になる所以である。一方で徒手空拳(学歴も金もない立場)で一攫千金を狙う方法の一つに口入屋があるのは今も昔も一緒である。美人局があれば女衒もある。売春が禁止された世界ではそれは非合法となる。非合法の社会で信用されるのが暴力なのである。
合法と非合法の間で生きる人間は金を賭けるのと命を賭けるのが同じだという現実を受け入れる必要に迫られる。
つまり、金がなければ生きづらい、命がなければ生きていないということだ。
頭がおかしいために・・・警察に手間をかけさせる困った人も多いが・・・正気の人間は警察のお世話にならないように・・・非合法活動を行う。
法治国家では暴力行為は禁じられている。
暴力で語るものたちは・・・法を信じる相手の口を封じる覚悟を求められるという物語である。
東京近郊で育った小川純(林遣都)はイベントサークル「BUMPS」代表を名乗っている。
東京の繁華街にたむろする若者たちのネットワークを作り、携帯3台にメルアド3000件という人脈を通じて・・・なりあがろうとしている男だ。
しかし、その実態は・・・尚也(井出卓也)やGO-RANJAYを名乗るイケメンダンサーたちに群がる若い女性を選別し、スポンサーである資産家の男性たちに紹介するという・・・擬似恋愛斡旋業なのであった。
裏社会の資金源である売春業スレスレで基盤を築き・・・イベント運営や人材派遣業という正規の企業家になること。
小川純はその危ういパランスの上で足を踏み外しかけていた。
規模を拡大しすぎてイベントを開催するための資金繰りが難しくなっていたのだった。
特にイベントのための会場使用料を踏み倒しまくっている段階に突入しており、なんとしても協賛を得て出資を募る必要に迫られていた。
そのために・・・手持ちの女子数人を派遣して参加したホームパーティーで・・・FXで大儲けしたという猪股(岡田義徳)との賭けに勝ち、100万円の出資の約束を取り付けたことは・・・僥倖だったのだ。
しかし・・・会場に・・・闇金業「カウカウファイナンス」の社長ウシジマくん(山田孝之)が柄崎(やべきょうすけ)と高田(崎本大海)をひきつれて現れると事態は一変する。
猪股は・・・資産家ではなく・・・単なる債務者だったのである。
「明日、事務所に来てくれたら一千万円払う」と虚勢を張る猪股。
「借金の返済をばっくれようとした奴の明日は信用できない」とウシジマくん。
「お前ら・・・闇金だろう・・・犯罪者だろう・・・警察を呼ぶぞ」とウシジマくんの暴力を疑う猪股。
ウシジマくんは電源コードを裂いて、猪股の鼻に一方の電極を差し込むと、もう一方を猪股の眼球に突きつける。
「ドラマとかであるだろう・・・風呂場で感電いる奴・・・実際にやったらどうなるか・・・見たいと思っていた」
「わかりました・・・払いますから・・・やめてください」
「この会場の人間から半金の500万円を立て替えてもらえたら・・・明日まで待とう」
しかし・・・さっきまで友人として振る舞っていた紳士たちは猪股を汚物を見るような目で見るのだった。
ウシジマくんに拉致される猪股。
大切な資金源を失うことでうろたえる小川純。
「待てよ・・・猪股さんを放せよ・・・警察呼ぶぞ」
「邪魔だ・・・」
「・・・本気だぞ」
「金は奪うか・・・奪われるかだ・・・恵んでもらうものじゃない」
ウシジマくんは教育的指導をサービスするが・・・野心に憑依された小川純の心には届かない。
そんな小川純を単純に慕う若者たちは多い。
高校を卒業して進学も就職もせずに母親の勤務するスナックで週末だけアルバイトをするその日暮らしの鈴木未來(大島優子)もその一人だった。
「純くん・・・今度VIP席にいれてよ・・・」
「今度のイベントのチケット30枚さばいてくれたら考えておいてやるよ・・・」
「本当?」
ミコこと鈴木未來には純のいる世界は眩しく輝いているように見えるのだった。
ミコの母親はギャンブル依存症の自堕落な女だった。
母の手一つで育てられたミコだったが・・・母親の堕落ぶりは拍車がかかり、幼い弟のタケルは食事も満足に与えられない状況になっていた。
ついに自宅で売春を始めるミコの母親・文江(黒沢あすか)・・・。
さらに客(中丸新将)の求めに応じ・・・ミコに3P売春をもちかけるのだった。
「深く考えないで・・・ちょっと目をつぶってたらいいんだ。世の中には若い女が楽して稼げる方法なんていくらでもあるんだよ・・・私がこれまで育ててやったんだ・・・今度はあんたがママに楽させておくれよ」
「嫌」
家出をするミコである。
しかし・・・母親はついに「カウカウファイナンス」の顧客となり・・・ミコの前にウシジマくんが利息の取り立てに現れる。
「なんで・・・私が払わないとならないの」
「母と娘だからだ」
複雑な心情でなけなしの金を払うミコだった。
ある意味・・・ものすごくいい子である。
母子を演じる黒沢あすかと大島優子はともに子役あがり・・・。
八百屋の娘は八百屋になり、売春婦の娘は売春婦になるしかない的なニュアンスを見事に醸しだしている。
そんなミコの前に幼馴染の冬美(野口綾奈)が現れる。クラスでも地味な存在だった冬実はピンクサロンに就職したという噂もあり・・・容姿が派手になって金回りもよさそうだった。
最初は渋っていたミコだったが・・・冬実の誘う「出会いカフェ」でアルバイトを始める。
冬実は売春目的だったが・・・痩せても枯れてもアイドル的な容姿のミコは食事につきあうだけで5000~10000円を稼ぎ、店に上納しても一日三万円程度は稼げるようになる。
おそらく日三(一日三割)の利息を十日で五割にしてもらったのだろう。
「利息は私が払うから貸した金はママから取り立てて」とウシジマくんに凄むミコだった。
「えらく鼻息の荒い女ですね」と柄崎。
「あいつは・・・身体を売ってないが・・・心を切り売りしてるんだ・・・まあ・・・そういう自覚はないだろうけどな」と応じるウシジマくんだった。
しかし・・・ウシジマくんは・・・母親の文江に着実に稼がせるために・・・その道のプロを斡旋するタイミングを計っているのだった。
一方、小川純はイベント開催のための借金に追われ始めていた。
会場の手配師であるハコ屋の中西(日向丈)からは300万円の前払いを要求され、イベントの指南役である広告代理店勤務の原(ムロツヨシ)からは売上の上納を求められる。地元の暴走族のヘッドであるブタ塚こと石塚(手塚みのる)からも顧問料を請求される始末である。
腐れ縁があるネッシーこと根岸(鈴之助)に借金を申し込む小川純。
「お前・・・背伸びし過ぎなんだよ・・・借金しまくって人脈広げるどころか狭くしてるだろ」
「次のイベントが成功したら・・・すべてが変わるんだよ」
ネッシーはまいたんこと舞(坂上麻美)を使って美人局を行い稼いでいた。そんな男に説教されたくない小川純だった。
「こうなったら・・・闇金から金借りるか」
「利子を払うなんてアホだよ」
しかし、ネッシーは闇金は違法だから・・・踏み倒せると嘯く。
それにヒントを得た純は・・・こわいものしらずの絵を描くのだった。
人脈の中からバカな女子を選び出し、恐喝で被害届を出させ・・・ウシジマくんから示談金をせしめようという無謀な作戦だった。
裏社会の常識を破った小川純の素人計画によって窮地に立たされるウシジマくん。
利息の取り立てのために女の呼び出しに応じたところで・・・黒岩刑事(古館寛治)らに現行犯逮捕されてしまうのだった。
闇金撲滅キャンペーンに賛同しているが裏の仕事もこなす西尾弁護士(金田明夫)を呼びだす拘留中のウシジマくん。
「逮捕されたことを柄崎に伝えてくれ」
「示談にすると・・・起訴は免れられないよ」
「闇金業務を摘発されたら・・・俺は終わりだ」
「とにかく・・・五人に訴えられている・・・妙な女が四人と・・・」
「小川純か・・・」
「どうして・・・」
「とにかく・・・五人のことを柄崎に伝えてくれ」
「・・・」
正攻法ではないことは弁護士には委託しない・・・暗黙の了解をする二人のプロフェッショナル。
「とりあえず・・・金だよ・・・」
訴えの取り下げに応じないバカな女。
弁護士が去ると柄崎が現れる。
バカな女の取り巻きたちは・・・柄崎の存在にすでに下手にでるのだった。
「お前・・・なんかしたのか・・・」
「知らないよ・・・」
「知らねえじゃ・・・すまないぞ」
たちまち事務所に連れ込まれるバカな女だった。
刑事たちは・・・すでに・・・事務所の家宅捜査の準備に入っていた。
しかし・・・当然、事務所は緊急避難場所に移転していた。
その物件を・・・ドラマ「闇金ウシジマくん」(第一シリーズ)でAV女優あがりの社員だった千秋(片瀬那奈) が再就職の報告に来る。
踏み込む側と踏み込まれる側の切りかえしのお約束である。
刑事たちの踏み込んだ事務所はもぬけの殻。
カウカウファイナンス一同は・・・ノックの音に緊張するという展開である。
ちなみに・・・映画版の受付事務員は・・・あつ子(雪子)だった。
もちろん、キッドには歴代受付事務員・小百合(西條るり)、あつ子、摩耶(久保寺瑞紀)の区別は難しい。
しかし・・・なんとなく・・・存在のニュアンスは分かるのだった。
ウシジマくん不在のカウカウファイナンスはどうやら堅気の世界に戻るらしい千秋を生温かく迎えるのだった。
イベント開催直前の小川純に問題が持ち上がる。
ファンの女に無理射ち(和姦とはいえない性的交渉)をしていたイケメンの一人・尚也が一匹狼の暴力者・肉蝮(新井浩文)に拉致監禁されてしまうのだった。
「こいつ女に悪いことしてたから・・・折檻してるんだ・・・解放してほしいなら百万持ってこい」
「百万・・・」
小川純はまたしても切羽詰まるのだった。
拘留中のウシジマくんはオムライスのケチャップ不足に凹む。
ミコは冬美と衝突する。
「あんた・・・私がウリ(売春)やってるから・・・避けてるでしょう」
「そんな・・・私だって似たようなもんよ」
「似てるわけないでしょ・・・性病に怯えながらオヤジたちに中出しさせてる私と・・・食事して金もらってるあなたのどこが同じなのよ・・・私なんか・・・仕事も家も最低なんだよ」
「ごめんなさい」
「口だけであやまらないでよ」
親に売春しろと言われているとは口に出せないミコだった。
売春だけはしない・・・それがミコの崖っぷちだった。
客と食事中の・・・ミコの元へ・・・小川純が現れる。
自分の身を案じてくれたと勘違いするミコ。
「心配しないで・・・ウリやってるわけじゃないから」
「百万円なんとかならないか」
「一ヶ月あれば・・・なんとかできるかも」
「それじゃ・・・間に合わないよ・・・お前ならその気になれば風俗店で百万円なんて」
憧れの小川純に売春を仄めかされ・・・店を飛び出すミコだった。
小川純には夢の女がいる。
手の届かない高嶺の花。
ミコはそうではない。
手持ちの札の一枚だ。
しかし・・・何故か後ろめたさを感じる小川純。
そこへ・・・バカな女から電話が入る。
「カウカウから・・・口止め料とれたよ・・・あんたにも払うって・・・」
小川純は「勝利者の気分」に浸る。
しかし・・・バカな女はカウカウに拉致監禁されているのだった。
それでも・・・被害届の取り下げを条件に百万円を入手する小川純。
なんとか・・・肉蝮に熱湯拷問中の尚也を救出する。
だが・・・ウシジマくんは・・・すべての被害届が取り下げられ無罪釈放されたのだった。
野獣は野に放たれたのだった。
小川純は・・・野獣に噛みつけば食うか食われるかだ・・・という掟を知らない愚か者なのである。
やがて・・・華麗なイベントの幕があがる。
華やかな宴に・・・気分が高揚する小川純。
一方で出会いカフェのミコはようやく悲哀にたどり着くのだった。
流されて何もない孤独な自分に気がつくミコ。
心を売って金を得ていた自分の憐れさにいたたまれなくなるのだ。
得意の絶頂にある小川純の前にはウシジマくんが現れる。
「借金、借金の利息、営業妨害による損害・・・もろもろあわせて一千万円だ・・・とりあえず、今夜の売上は全額回収する」
「そんな・・・」
頼みのブタ塚はウシジマくんの顔を見るなり去った。
そこで・・・小川純は・・・肉蝮とウシジマくんを対決させるように仕組む。
コンビニで包丁が入手できなかった肉蝮は百円ショップで包丁を買ってイベント会場に到着する。
ウシジマくんの鉄拳。柄崎の消化器。千秋のパイプイスの連続攻撃。
最後は高田が営業車をぶつけて・・・肉蝮は戦闘力を奪われる。
「殺せよ」
包丁をつきつけられ・・・挑む肉蝮。
しかし・・・ウシジマくんの眼光に怯むのだった。
「わかった・・・もう・・・やめてくれ」
ウシジマくんは肉蝮の屈服を認めるのだった。
けれど・・・現実から目を背ける小川純には・・・ウシジマくんの恐ろしさが見えない。
死の匂う営業車の中でまだ虚勢を張るのだった。
「お前なんか・・・犯罪者だ・・・今度は訴えを取り下げないからな」
「そうか・・・それなら・・・俺にも考えがある」
ウシジマくんは・・・堅気になる千秋を下車させる。
「達者でな」
「社長・・・」
営業車は地獄行きに車線を変更するのだった。
人里離れた山奥。
小川純は樹木に縛り付けられる。
「おい・・・やめてくれよ・・・たかがはした金で・・・人を殺すのか・・・」
「ゴキブリなんか・・・存在するだけで毒殺されるぞ」
「勘弁してください・・・警察には行きません・・・金も払います」
「さっきと言うことが違うじゃないか・・・お前の言うことは信用できない」
「助けてください」
「お前の人脈から・・・三人選べ・・・一人でも借金の保証人になったら・・・チャンスをやる」
一人目・・・ネッシー。しかし・・・ウシジマくん逮捕劇の発案者として高田に制裁されたネッシーはモコこと看護師・葉山朋子(希崎ジェシカ)の勤務する病院で意識不明だった。
二人目・・・イケメンゴレンジャイの春樹・・・しかし打ち上げパーティーの真っ最中で着信無視。
三人目・・・実の親。寝ているところらしく・・・電話に出ない。
「親にも見捨てられたな」
そこへ・・・事情を知らないミコから電話が入る。
「ミコか・・・頼みがある」
「私ね・・・やり直してみようと思うんだ・・・純くんが眩しくてうらやましかった・・・でも自分の手の届かない世界をいくら憧れても・・・なんにもならないもんね・・・でも、純くんのことは応援し続けるよ・・・頼みってなに?」
「いや・・・もう・・・いいんだ・・・ミコ・・・がんばれよ」
虚栄心を捨て去ることができない小川純。
そして美談はウシジマくんには通用しないのだ。
愚かな若者を残しウシジマくんたちは・・・去った。
小川純を囲む・・・色とりどりの蟲たち・・・。
夜の森は弱肉強食なのである。
小川純が虚しく大地に還った頃、ミコは時給780円のファミリーレストランでウエイトレスとして働いていた。
最後の利息をウシジマくんに支払う。
同僚(市原隼人)は心配そうに見守るが・・・ミコの表情は晴れ晴れとしていた。
「大丈夫・・・」
「はい・・・私もいろいろと勉強しましたから」
「勉強って・・・」
「お金を稼ぐのって大変なんだなあ・・・とか」
「そうか」
ミコの明るい声に微笑むチョイ役の同僚だった。
ミコは覚悟を決めて・・・どうしようもない母親と・・・可愛い弟の待つ家へと帰る。
その顔には以前にはなかった気迫が現れている。
「時給780円じゃ・・・苦しいでしょう・・・金を貸しますか」と柄崎。
「あいつは借りないだろう」と断言するウシジマくんだった。
しかし・・・すべての人間たちは・・・いつでも境界線に立っているのだ。
世の中には二通りの人間しかいない・・・闇金から借りる人間と借りない人間である。
賢い人間は借りない。
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