兵法三十六計の二十八・・・上屋抽梯と軍師官兵衛(岡田准一)
二十八計は「併戦の計」という同盟の戦略に属する。
孫子・九地篇では「兵を働かせるには他国に深く侵入させ退路を断つことで勝利以外に生きる望みを断たせることによって死に物狂いの境地を導く」と自軍の能力を最大限に引き出す方法を述べている。
ここから派生して・・・敵を死地に追い込み、味方につけるのが「上屋抽梯」の意味するところである。
つまり、「屋根に上がらせて梯子をはずす」ことによって・・・敵を窮地に追いやるのだ。
単純に使えば、囮によっておびき出し、伏兵によって退路を断つ戦法と言うことになる。
しかし、虚実が入り混じり、敵味方が判別できぬ状況では・・・敵の主君に部下の裏切りを疑わせ、主君に疑われた部下が進退に屈する状況を作ることもこの計略の応用となる。
罪なき罪を捏造し、故なき罰を逃れるために敵将を離反させるのは陰険さにおいて実に由緒正しい陰謀と言う他はない。
だが、計略とはそもそも悪い企みのことなのである。
荒木村重は見事に本願寺・毛利連合軍の陰謀にはめられてしまったのだった。
敵を味方に引き入れることは「兵を失わぬ勝利」という兵法の基本中の基本でもある。
で、『軍師官兵衛・第18回』(NHK総合20140504PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は23行の大躍進でございます。それでも・・・その裏にある敵側の謀略だったり、中川清秀のちょっとした臨時収入に対する出来心だったり・・・たまたまそうなったわけではない・・・というドス黒さが不足しているのですな。疑心暗鬼になってしまう荒木村重の演技がかなり良いだけに実に惜しい感じがいたします。だしが正室とすれば・・・その実家は村重が滅ぼした池田家でございますれば・・・だしが黒幕の可能性もある。そういう戦国の馬鹿馬鹿しいほどの恐ろしさが欲しい今日この頃でございます。今回はNHK大型時代劇「真田太平記」に登場する矢沢頼綱(加藤嘉)さんの描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。妄想では伊賀の老忍・葉蔵として登場いたしますぞ~。ついでに探偵社の所長は白影になっております~。
天正六年(1578年)六月、播磨・美作国境の毛利・宇喜多連合軍は撤退し、信長に叛旗を翻した東播磨豪族連合は盟主・別所長治の三木城に籠城を余儀なくされる。本願寺に味方した軍勢の特徴は徹底した他力本願志向である。石山本願寺は武田や上杉、そして毛利の援軍を常に待っていた。しかし、武田信玄、上杉謙信、毛利元就・・・戦国の巨星たちはすでになく・・・頼りにはならなかったのである。波多野秀治の女を妻とする別所長治も同盟すれども互いを救援しあう余裕はない。織田政権の確定を遅延させるための時間稼ぎの捨て駒になったことの自覚がないところに憐れさがある。信長の天下布武は着実に前進し、北の驚異であった上杉軍には柴田勝家軍団が、東の驚異であった武田軍には徳川家康軍団が充分に対応可能な状況になっていた。尾張、美濃、伊勢、近江、山城、越前、大和を完全に支配下に収めた織田家は独自の経済成長戦略によって巨大な富を生み始めていた。もはやすべての他家勢力が屈服することは時間の問題であった。しかし、既得権益の保持を目論む影の勢力の暗躍はあらゆる局面に見出される。摂津国では領土内に多数の本願寺門徒を抱え、その浸透は国主の意図を越えて浸透していく。荒木村重配下の中川清秀による本願寺相手の物資売買は村重を絶対に勝てない戦いへと追い込んでいくのである。やがて村重は・・・自らの有岡城が本願寺門徒のアジトと化していることに気がつき戦慄するのだった。正室が・・・家老が・・・本願寺門徒なのに・・・本願寺討伐なんてできない・・・のだった。
近江国・安土城天守閣。その壮麗な高層部に・・・信長が姿を見せた。
その足元にコトリと一枚の枯葉が落ちる。
「伊賀の葉蔵か・・・」
「葉蔵・・・参上」
信長は枯葉を手にとり、それを宙に舞わせた。
「掃除の役目のものを手打ちにすることになりかねぬ・・・このような合図は無用である」
「しかし・・・その葉はそれがしの身の証でございますれば・・・」
「であるか」
「摂津に変事がございます」
「・・・」と信長の目に険しさが宿る。
「荒木村重殿・・・謀反と決しました」
「であるか」
「摂津の伊賀目付けたちからすでに報せが届いております・・・荒木一族の各城、高山殿、中川殿いずれも篭城支度を整えておりまする」
「村重も・・・他愛もない・・・」
「本願寺門徒の忍び坊主どもが・・・城の内外で念仏調略の限りを尽くしておりますれば・・・」
「狙われたのだがや・・・本願寺にしてみれば荒木を落せば摂津播磨の勢力が連結できるとみているのであろうず」
「御意」
「本願寺も・・・波多野も・・・別所も・・・城を出て戦いもせず・・・いかに毛利に頼ろうとて・・・戦局に変わりなし・・・荒木がそれに一枚加わっても何事であろうかのん」
「上様の如き、神の知恵を持たぬものの憐れでございましょう」
「飢えたければ飢え、渇えたければ渇えるがよかろうず・・・」
信長の目に冷たい炎が宿る。
信長の怒りは年を経た老忍の心底を凍えさせた。
すでに・・・毛利・本願寺の補給ルートを断つべく・・・九鬼一族の開発した鉄甲船は六隻が完成していた。
「一益に出陣を命ぜよ」
「は・・・」
伊賀の葉蔵は枯葉を撒き散らしながら姿を消した。
信長は森蘭丸に清掃を命じた。
官兵衛は宇喜多調略の任を終え・・・播磨国の帰路にあった。
宇喜多直家は秀吉との同盟の密約に応じていた。そのために生まれたばかりの娘を秀吉に人質として差し出すことに同意したのだった。
直家の冷徹な計算は・・・織田家の勝利を確信していたのだった。
野生の勘が冴える母里太兵衛が歩みを止める。
矢の唸りが聴こえ・・・一本の矢が頭上から飛来して地面に突き刺さる。
「あわてるな・・・矢文じゃ」
官兵衛は天高く大凧が舞うのを見た。
「これは・・・半兵衛様からの至急の報せ・・・なんと・・・」
「いかがなさいました」と栗山善助が問う。
「荒木村重が血迷うたわ・・・」
夏の日差しが影を濃くしていた。
関連するキッドのブログ→第17話のレビュー
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コメント
ばんはです
主人公は主食というよりかは
ふりかけみたいな感じになってしまってて
一体何を見てるのかようわかりません┐(´ー`)┌
どういう風に見れば面白く見えるのか
そんな事を考えてしまう今日この頃
なんだかんだで来年で40になるという事もあり
あれやこれや仕事でもやる事が増えてきてまうもんで
日曜・月曜と東京出張で
大河ドラマのレビューは月曜以降に繰り越しです
今月末に大河ドラマストーリー本が出るので
とりあえずその時にまた本編の方々を描いてみる予定です
 ̄∇ ̄ノ
投稿: ikasama4 | 2014年5月11日 (日) 00時28分
ふふふ・・・サラサラと食べられる
お茶漬け的な大河ドラマを目指しているのかもしれませんな。
面白さの要素は悩ましいポイントでございますよね。
時代劇をずっと見て来た人々を満足させるには
それなりの新鮮さや深みが求められる。
歴史を知らないものには基礎知識をレクチャーしなければならない。
そして、ドラマとしての感動も届けたい。
まあ・・・そういういろいろな要素を追いかけているうちに
なんのこっちゃになるのはよくあることでございます。
キッドの場合・・・どうやら正室設定らしい
だしの行く末だけが・・・気になる。
そういう点で見ることにしています。
基本的に磔になる組、焼き殺される組、斬首組と
憐れな末路をたどる有岡城篭城衆の子女たち・・・。
もし・・・命を奪われる「役」なのだとしたら
それなりに・・・納得のいく死にざまを見せてもらいたい。
そこに・・・生き残る夫と・・・殺される妻の
悲劇があるはずですからな。
まあ・・・ここまでのところですと・・・
単なる無駄死にっぽい気がして
あまり期待しないで見守っております。
本当に底が浅い脚本でございますからねえ。
画伯は働き盛りなのですな・・・。
なんといっても現実世界の「お仕事」は
大切でございます。
レビューはご無理なさらずにマイペースでお願いいたします。
更新があればあったでなければなかったで
こちらは臨機応変に書き上げますので~。
まあ・・・少し、妄想ボルテージはさがりますけどね~。
ふふふ・・・大河ドラマストーリー本に
いい構図(特に姫たちの・・・)があるとよろしいですな。
楽しみにお待ちしておりまする。( ̄▽ ̄)
投稿: キッド | 2014年5月11日 (日) 01時37分