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2014年5月16日 (金)

夫婦喧嘩は犬も食わないとあきらめろ(小泉今日子)

才能の有無とは悩ましい問題である。

このドラマの脚本家はおそらく才能があるわけで・・・その才能をプロデューサーがあると認めているわけである。

こうしてレビューを書いているキッドもそれについては肯定的である。

しかし・・・「才能がない人」に引導を渡すのは別問題である。

現在の毎日放送されているドラマの脚本家が全員・・・「才能があって」書いているとは言えなくなってしまう。

いやあ・・・もう・・・できれば他の人が書けばいいのになあ・・・というドラマは連打されているわけである。

だが・・・「作品」が作られて・・・そこそこ需用がある以上・・・そこには「才能」が存在するわけである。

もちろん・・・「あきらめろ」と言われてあきらめるなら・・・それで試合終了ということはある。

いきなり、天才の人・・・気がつけば天才の人・・・よくぞここまできたな的に天才の人・・・。

単なる現実逃避や・・・暇つぶしであっても・・・生まれてきてよかった・・・生きていてよかったと思える凄みには出会いたい・・・そういう希望を叶える才能。

思えば人は・・・奇妙な才能を求めているのだなあ。

かって・・・多くの若者たちを前にして・・・才能について考えていたことがあったわけだが・・・自分に才能があるのかないのか分からないのに他人の才能なんか云々できないよ・・・といつも最後にはそう思う。

それでも・・・チャンスはなるべく与えたい・・・チャンスをものにするかどうかが才能なんだろうから。

そういう前向きな考え方をしないプロデューサーに対する・・・ある意味、皮肉も感じたりして。

でもねえ・・・見る目のあるプロデューサーの見る目に叶うのも才能だからねえ。

で、『続・最後から二番目の恋・第5回』(フジテレビ20140515PM10~)脚本・岡田惠和、演出・宮本理江子を見た。和平(中井貴一)の衣装がグレーでお地蔵さんを連想させるなら・・・吉野千明(小泉今日子)のストライプのジャケットは何の象徴なのか・・・と言えば牢獄の格子なんじゃないかと思う。基本的に動けない点ではお地蔵さんも囚人も大差ない。和平はなんだかんだと死別した妻に拘泥しているわけで・・・成仏を祈り供養しているわけである。それはそれで素敵なのだが・・・本当にそれで幸せなのかどうかは不明だ。一方で・・・千明は・・・早い話が「恋に恋する老いた女」なのである。人間の自然なサイクルで言えば・・・二十歳前後に子を生み、その子が二十歳前後に子を生めば四十すぎたら婆なのである。もちろん・・・時代はそういう実態を人工的に装飾して隠してしまう。まして小泉今日子が演じていたらとても婆には見えないわけである。その上でお茶の間から見れば・・・千明にとって和平は・・・これ以上なく理想の配偶者候補である。しかし・・・千明本人の理想やらプライドやら経験値が・・・本人にそれを感じさせないというのが・・・このドラマの趣向なのだ。実は・・・すでに・・・第1シリーズで千明は・・・それに気がついている風だったのだが・・・続編ではそれがいつの間にかリセットされている。まあ・・・そうなったら・・・おしまいみたいなところがあるわけである。そういう意味で・・・千明の恋心は牢屋の中からお地蔵さんを見つめているのです。

啓子(森口博子)と祥子(渡辺真起子)は千明の分身のような存在である。

啓子の出版業界も祥子の音楽業界も・・・千明同様・・・才能あるフリーランスの人間を扱う職種である・・・もちろん・・・本人にもある程度才能は必要だが・・・サラリーマンであるために・・・外部発注という手があるわけである。

そういう相手に・・・別の手を出していることは・・・職業倫理的にはかなり問題があるわけだ。

千明は下心があるために・・・プロとしての切味を失っているのである。

親友たちは・・・そういう危うさに気がついているわけである。

「お酒はほどほどにして言うべきことを言わないと」

「でも・・・元カレにひどいこと言わなきゃいけないんだよ」

「だからさ・・・酒の力を借りて言うことじゃないって言ってんの」

千明は・・・できれば・・・酒の力を借りてプロデューサーとしてでなく、女として高山涼太(加瀬亮)に接したいのである。

しかし・・・親友たちは千明の願望が虚しいことに気がついているのだった。

才能のないものに異性としていれあげても・・・笑い物になるのがオチなのである。

それが・・・才能を食いものにする業界の鉄則なのだった。

もちろん・・・才能のあるものに異性としていれあげるのはセーフであるが・・・それはそれでいろいろと差し障るのだった。

仕方なく帰宅した千明は・・・せめて最後の夜をロマンチックに締めくくりたいのだが・・・凶暴な虎である典子(飯島直子)がそれを許さない。

夫・広行(浅野和之)の西口不動産の女しおり(中西美帆)に対する横恋慕に心乱された典子は見苦しく荒れるのだった。

姉の狂乱に・・・妹の子猫・万理子(内田有紀)も手を焼く。

しかし・・・姉が泥酔すると・・・妹は・・・精神的に恋する千明と肉体的に恋する涼太が素晴らしい「シナリオ」についてミーティングすることを予測し・・・潔く身を引くのだった。

可愛いぞ、万里子可愛いぞである。

下で虎が寝ているために・・・二階で二人きりになった千明と涼太。

千明の胸は・・・期待でいっぱいになる。

しかし「シナリオのこと・・・話があるんだろう」と涼太は仕事モードなのである。

何度も繰り返すわけだが・・・涼太を元カレと思っているのは千明だけで・・・涼太は千明を元カノとは思っていないのである。

そのことに気がつかない女が恋愛ドラマのプロデューサーとして敏腕だというのが一同爆笑ポイントなのだな。

「ああ・・・」仕方なく・・・言いたくない本題に入ろうとする千明。

「思いっきりつまらなかっただろう・・・自分で読んでそう思った。恋愛ドラマなのにドキドキも胸キュンもなくて・・・登場人物はトラウマだらけでトラウマの宴かよって感じだし・・・セリフもストーリーも陳腐だし・・・頭の中では傑作だったのに・・・書いてみたらどうしようもない駄作だった・・・俺は分かったんだ・・・自分には才能がないって・・・」

言うべきことを相手に言われて・・・「もうちょっと頑張ってみたら」と女をさらけだす千明。

「いや・・・今、やめないと・・・先に進めないって思う」

「そうか・・・男らしいよね・・・私が嫌な思いしないで済むようにって・・・」とあくまで女を主張する千明。

「言ってくれ・・・本当のことを」

「あきらめな・・・涼太」

「ありがとう・・・」

涼太の男としての可愛さについに我慢できずに抱きつく千明。

そして・・・二人は一つのベッドに身を横たえる。

千明の胸は高まるが・・・千明の胸に顔をうずめ・・・安眠する涼太だった。

千明がいかに望もうが・・・涼太にとって千明は最初から恋愛対象じゃないんだってばさ。

それでも千明は涼太が・・・あまりにも性的な期待に応えないことが不思議に思えるのだった。

一同大爆笑である。

一方・・・美しい未亡人・薫子(長谷川京子)から突然「セフレになりたい」と言われた和平は混乱の極みに達するのだった。もちろん・・・薫子に下心のある和平なのだが・・・そんな風に肉体的なものを求められるのは主義に反するのだった。

できれば相思相愛になり・・・合体するのが和平の望みである。

しかし・・・男なのでセフレに心揺らぐところもあり・・・落ち着かない気分なのである。

そのために一人酒に逃避しようとした和平だったが・・・お約束で年上の義弟・広行が悪い酒でからんでくるのだった。

夫婦揃って・・・なんだかなあである。

なんだかなあ

本当にいやだね

なんだかなあ

夫婦そろって酒乱なんて

誰がミュージカルを挿入しろと・・・。

「俺はね・・・詩織ちゃん一筋なの」

「って・・・相手はあんたのことどうとも思ってないでしょう」

「人が人を好きになるのは・・・相手が自分を好きな時だけですかっての」

「あんたには・・・妹の典子がいるでしょ・・・既婚者でしょう・・・もしも・・・典子と別れて・・・詩織って人にも相手にされなかったらどうするつもりです」

「こわい・・・しかし・・・そうして荒野に佇むことを考えると・・・男としてワクワクする」

「何言ってんの・・・バカじゃないの・・・あんたたち・・・好きあって夫婦になったんでしょ・・・だったら添い遂げなさいよ・・・私なんか・・・女房が生きててくれたらと・・・いつも・・・なんだ・・・寝てんのかよ」

とにかくだ・・・典子と広行ほど・・・お茶の間から将来どうなってもいいと思われる夫婦も稀だと思われ・・・さりげなく脚本家の恐ろしい実力を感じさせるのである。

そんな夫婦のなれの果てに対して・・・これから夫婦を始めようという・・・。

天使の真平(坂口憲二)と大橋知美(佐津川愛美)である。

長倉家も大橋家も親戚が少ないらしい。

真平は男らしく結婚式についてはどうでもいいと考えているが・・・知美は女らしくそれなりのこだわりを見せている。

問いつめられてなんとなく・・・「カフェ・ナガクラで家族だけでやるのはどうか」と提案する真平。

知美はそのことに涙が出るほど感激するのだった。

ここをすれ違っていると感じるか・・・適当に流すかはそれぞれの感性でという趣向であろうか。

しかし・・・どうやら・・・結婚式よりも・・・婚約者たちの間には別に微妙な問題があるらしい。

どうやら・・・婚前交渉に関することで・・・二人はまだ・・・一夜を共にしていないのか?

なにやってんだ・・・鎌倉の天使。

で・・・とにかく一夜が明けるのだった。

シナリオのことも・・・千明と涼太の性的関係も気になる万里子は眠れない夜を過ごしたのか・・・千明邸門前で張り込みである。

そこへ・・・姿を見せた涼太。

涼太は無言でティッシュペーパーを万里子に渡し・・・握手をして去る。

万里子はすべてを察し、涙と鼻血を流すのだった。

ここは・・・クスクスするとこかな。

さらに・・・海辺で悪い酒を抜く和平と遭遇する涼太。

「朝・・・早いんですね」

「俺・・・漁師の息子なんですよ」

「そうなんだ」

「ここは気持ちのいいところでした」

「そうですか」

「いつか・・・また・・・来たいと思います」

「鎌倉は・・・いつでもそれほど変わりなく・・・お待ちしていますよ」

鎌倉市役所観光推進課の課長である。

「お世話になりました」という涼太のメモのような置き手紙に・・・。

最後まで女として扱われなかった千明は舌打ちするのだった。

長倉家の朝食。

相変わらず不機嫌な典子。

六月一日に決まった真平・知美の結婚式。

家族として招待される千明。

「家族でもないのに・・・」と遠慮しつつ、他人の家で朝食を食べる千明。

「男でも女でも一人で飲みたい夜がある」で軽く談義があり・・・。

涼太が去ったことを察して千明を思いやる和平なのである。

「そろそろ・・・」と長倉えりな(白本彩奈)が出勤時間を告げるのだった。

つまり・・・えりなは時計代わりのテレビの代わりになんだな。

「七時四十五分」・・・とか言ってるわけである。

脚本家が消えたことを告げる千明。

しかし・・・仕事にそつがない三井(久保田磨希)はすべてを予知し・・・準備終了なのである。

超能力者かっ。

そして・・・帰って来た若手脚本家の栗山はるか(益若つばさ)だった。

なんと妊娠中に夫に浮気され・・・離婚したらしい。

はるかは・・・そこそこのギャラとベビーシッター代を要求するのだった。

はるかは「まどかという名の女が登場して、性悪で最悪なキャラクターで、悲惨な最期を迎えるドラマ」を書く予定なのであった。

もちろん・・・まどかは夫の浮気相手の名前である。

そして、はるかは万里子を愛玩するのだった。

市役所では・・・一条さん(織本順吉)と田所(松尾諭)が共通の趣味で親密になっているらしい。

真平は担当医に婚前交渉について質問する。

和平は時間調整のために伊佐山市長(柴田理恵)と「始球式の練習してたら抱き合っちゃったコント」を展開する。

千明は典子の出番確保も兼ねてベビーシッターとして採用する。

そして、微妙な視聴率の月9女優(尾野真千子)は局内ですれちがうのだった。

朝ドラヒロインと朝ドラヒロイン母の遭遇である。

まあ・・・ある意味・・・ものすごく意味不明なお遊びだった・・・。

一貫して・・・すべての女を敵視するという・・・典子のキャラクターである。

女優にも脚本家にも喧嘩を売るのだった。

そういう妹や・・・弟と結婚する部下にも気を使う和平。

弟のフィアンセとおそろいのおにぎり弁当でランチである。

そして・・・花嫁の父親の代わりにバージンロードを歩くことを頼まれる。

「謹んでお引き受けします」

「ところで・・・和平さんは・・・婚前交渉の方はどうだったんですか」

「えええ」

やはり・・・清い仲の新郎新婦らしい。

はるか万里子の脚本家コンビは快調にシナリオを仕上げる。

例によって・・・はるかのシナリオにクレームをつける千明に・・・。

「千明さん何も変わらないですね」

「・・・」

「この二年間女として何やってたんですか」

「えええ」

「結婚、出産、離婚した女の気持ちが分からなくて恋愛ドラマのプロデューサーかあ・・・女としてもアレですが」

はるか・・・容赦ないのだった。

そして・・・和平は薫子と・・・陶芸教室だか染物教室だかに・・・。

「セフレ」の意味が分かっているのか問い質したい和平だったが・・・薫子は「もう・・・いけそうですか・・・」とますます意味深なことを言うのである。

「セフレなんですか・・・きれいな人ですね」

・・・ついに帰ってくる知美の母・秀子(美保純)・・・。

うわあ・・・千明と秀子が揃ったら・・・もはや違う海の色になりそうです。

もう去年のことなのに今週ももクロは深夜でじぇじぇじぇと言いながら潮干狩りしてたぞ。

・・・一度は交際しかけた和平と秀子である。

・・・っていうか・・・薫子、鎌倉市長、秀子と・・・和平の相手が入り乱れての登場なのだった。

つまり・・・千明本人がどう思うかは別として・・・「女としてどうか」と批判され・・・恋のライバル多数出現なのである。

まあ・・・でも湘南の夕陽で二つの影が一つになる寸前・・・なんだよね。

そして・・・親友たちにも恋の季節が訪れたようで・・・。

彼氏ができたら・・・置き去りにされる女友達なのだった。

まあ・・・中島みゆきなら・・・涼太は親友のどっちかと付き合ってるわけだが。

一人残された家路。

えりなが友人宅でお泊まりしたので一人の和平。

二人は・・・縁台でビールを飲むのだった。

「セフレって言われて・・・」

「なんかあるかと思ったら母と息子みたいな感じに・・・」

「癒し系だったんですね」

「癒されたいんですよお」

愚痴る二人は・・・ついに花火を始めるのだった。

まあ・・・なんだかなあと思わないでもないが・・・お茶の間的にはうっとりなのかもしれない。

とにかく・・・疲れを知らない子供のようには行かない二人を時が足早に追い抜いて行くのである。

来週は一足早く六月の花嫁なのである。

うわあ・・・夏か・・・もう・・・夏が来るのか。

凄い・・・加速力だなあ・・・。

関連するキッドのブログ→第4話のレビュー

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