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2014年5月10日 (土)

死の天使は嬰児を夢見る胎児を抱きて佇む(大野智)

日本国では経済的理由による堕胎が限定的に認可されている。

個々人の意識の世界ではその善悪は問われたり、問われなかったりする。

個人の尊厳を重視すれば・・・望ましくない妊娠は確かに存在し、「生」と「生」は衝突するのである。

もちろん・・・生きる権利はあらゆる生命にあるわけだが・・・それを完全に保証することは困難である。

その是非を問うことは答えのない問題を解くことと同じである。

ただし・・・絶対主義者はそれぞれの理念に従ってこれを否定し、相対主義者はそれぞれの情緒に従ってこれを容認する傾向にある。

妊娠出産が女性に限定された現象であるためにジェンダーの問題も色濃く反映することは言うまでもない。

しかし・・・すべては単なる運命なのだという考え方もある。

見知らぬものに犯されて父親の分からぬ子を生む母親も・・・理想の生活を求めて中絶を選択する母親も・・・些少の苦しみを味わうのが普通である。

で、『金曜ナイトドラマ・・第4回』(テレビ朝日201405092315~)原作・えんどコイチ、脚本・橋本裕志、演出・本橋圭太を見た。リアリズムという点では異常な回と言えるだろう。次から次へとホテルの一室に集まる登場人物たち。プライベートな密会の場でそもそも医師に患者の治療を要請する客室担当者がいるのか・・・いたとしてホテル側が急患と母親を案内せずに他の客室を訪問させるのか・・・それより、なんて火の回りが遅いんだ・・・しかし・・・そもそも、死神だの悪魔が登場するドラマである。それを言ったらおしまいだろう。どうせならリアルタイムに近い30分くらいに凝縮した方があわただしくてよかった気がする。

Photo あの世とこの世の間。死すべき運命の予定表の更新があり・・・経験豊かな死神上司(松重豊)は特例の記述に目を細める。彼にとっては特に珍しいケースではないが・・・若き死神くんこと死神413号(大野智)や、カラスに過ぎない監死官45号(桐谷美玲)には初めてのケースである。

職業訓練ではケースでしか学べない技能というものがある。死神くんや監死官の右往左往ぶりを想像すると上司は微笑みを禁じない。

退屈なお役所仕事では些細な刺激が何よりの楽しみなのである。

擬人化されたふたつの霊的存在に上司は通告する。

「今回の案件は死亡時刻と死亡場所は判明しているが死亡者の氏名が明示されていない。担当官は善処するように・・・」

「そんなの・・・ありなんですか」

「カア・・・」

仕方なく死神くんは・・・死亡者が発生する予定の夕暮れのホテルの一室に向かう。

死亡予定時刻まであと・・・30分だった。

鏡の前で看護師の山口真奈美(臼田あさ美)が化粧を直している。

「ああ・・・あなたが・・・お亡くなりになるんですね」

「え・・・」

「私・・・死神でございます」

そこへ・・・医師・南雲雄司(平岳大)が到着する。

二人は・・・恋人同志であり・・・今夜はホテルの一室でささやかな真奈美の誕生祝いをする予定だった。

「この人・・・誰・・・」

「え・・・あなたもこちらにお泊まりになるのですか」

南雲も死神くんもとまどうのだった。

そこへ・・・フロントから電話があり・・・ホテルに勤務する友人に頼まれごとをされる南雲医師。

「どうした・・・なに・・・子供の急患・・・ホテルのドクターは・・・不在って・・・とにかく医務室に行くよ・・・なに・・・こっちに直接来るって・・・おいおい・・・今夜は」

しかし、幼い息子・亘(押場大和)の発熱に切羽詰まった母親の高野洋子(佐藤仁美)は制止をふりきって部屋に押し掛けてくるのだった。

「先生・・・この子、熱で意識が朦朧としているのです」

「うわあ・・・この人たちも・・・」とさらにうろたえる死神くん。

「とにかく・・・ベッドに寝かせましょう・・・こりゃあ・・・熱が高いな・・・君、氷を持ってきてくれ」

シックな装いから客室係と思われた死神くんはドクターに命じられ、氷を捜して部屋をでる。

そこへ・・・血まみれのナイフを持った男・須藤五郎(安田顕)が廊下をよろめきながら駆けてきて・・・死神くんを部屋に押し戻すのだった。

「ええっ・・・また増えた・・・」

「なんだ・・・君は・・・」

「静かにしてくれ・・・俺は今・・・人を刺してきた」

混乱する一同。

死神くんは事態を収拾するために・・・思わず空中浮遊するのだった。

一同、唖然である。

「すみません・・・私・・・死神です・・・あの・・・後30分ほどでこの中のどなたかが事故でお亡くなりになる予定なんですが・・・」

「なんですって」と看護師。

「どういうこと」と母親。

「ふざけんな」と犯罪者。

「おいおい・・・」と医師。

「はあはあ・・・」と病の息子。

恋人たち・・・母と息子・・・そして傷害犯・・・果たして・・・死ぬのは誰なのか・・・という話である。

その時、衝撃で揺れる室内。

「なんだなんだ・・・」

「爆発みたい・・・」

「おい・・・廊下が火の海だ・・・」

「逃げられないの」

「はあはあ・・・」

「というわけなのです・・・誰かがお亡くなりになるにせよ・・・心の準備をですね」

「ふざけるな」

「冗談じゃない」

「心の準備って・・・」

「誰が死ぬっていうのよ」

「はあはあ・・・」

医師が言う。

「死ぬなら・・・こいつじゃないのか・・・犯罪者だ」

「違う・・・俺はただ・・・女の子にからんでるチンピラを注意して・・・そしたらそいつがナイフをとりだして・・・もみあってるうちに・・・そいつを刺してしまって・・・でも・・・そいつが死にそうな感じで・・・パニックを起こして逃げちゃっただけで・・・」

「そんなの信じられるか」

五郎はサイフから紙きれを取り出す。

それはかって五郎が人命救助で表彰された新聞記事の切り抜きだった。

「ほら・・・俺は・・・ヒーローなんだよ」

「だから・・・なんなんだよ・・・」

「つまり・・・死刑になるようなことはしてないってことだ」

「私が死にます・・・」と名乗りを上げる真奈美・・・。

「えっ」と驚く医師。

「私・・・あなたと別れて・・・自殺するつもりだったから・・・」

「なんだって・・・」

「私・・・聞いてしまったの・・・経営難の病院を救うために・・・あなたが資産家のお譲さんと婚約したことを・・・」

「う・・・それは・・・」

「だから・・・今夜は最後の夜にするつもりだったんでしょう」

「・・・」

幸せそうな恋人たちの事情を知り、立ちすくむ傷害犯の五郎と病気の子供の母親の洋子だった。

「あのう・・・盛り上がってるところをすみません・・・誰が死ぬかを決めるのは私ではなくて神様の定めた運命でして・・・」

「なにそれ・・・あなた・・・なんの権限もないの・・・じや、なにしにきたの」

「ですから・・・やりのこしたことなどないように注意をですね」

「残り、20分で何ができるんだよ」

「そうですねえ・・・御家族に最後のメッセージを送るとか」

「うちは母一人、子一人です」

「結局、運命には逆らえないのか」

「いや・・・できるよ・・・悪魔を呼べば願い事を叶えてくれる」と五郎。

「悪魔って」と死神くん。

「俺はヒーローになりたかった・・・でも勇気がなかったんだ・・・で・・・悪魔に願い事をして・・・表彰されたんだよ・・・二回もね」

「じゃ・・・私たちも助けてよ」と母親。

「三つの願い事がかなうと・・・たちまち地獄行きです」と死神くん。

「じゃ・・・私がお願いするわ・・・どうすればいいの」と母親。

「強く願えばすぐに来るよ」と五郎。

「やめてください」と死神くん。

「やめてくださいと言われてもねえ・・・」とたちまち登場する悪魔くん(菅田将暉)・・・。

・・・あの世とこの世の間・・・。

「やべえ・・・悪魔まできやがったカア」

「困りましたねえ・・・急いで・・・原本から・・・死亡者を特定しないと・・・」

「そんなの・・・無理じゃね」

「しかし・・・そうでもしないとあなたの査定にも響きますよ」

「担当死神を変更をしてくれないカア」

「そうですねえ・・・今夜、お食事でもしなから相談しましょうか」

「それ、セクハラじゃね・・・」

「これまでの不祥事をもみけすことも可能ですよ」

「まじ、パワハラじゃね・・・」

上司のねっとりとした視線を受けてあわてて書類仕事にとりかかるカラスだった。

ま・・・自意識カア剰ですな・・・。

下界では悪魔くんと死神くんの対決が始っていた。

悪魔に魂を奪われたら死神の寿命が縮み。

魂を奪えない悪魔は消滅の運命である。

生死をかけた戦いなのだが・・・お互いにのんびり屋さんの性格を隠せない。

「願い事をかなえますよ」

「やめろよお」

「邪魔すんなよお」

「私たち全員の命を助けて・・・」と母親。

「そんなの・・・簡単ですと言いたいところですが・・・ここに死神が来ている以上・・・どなたかが死ぬことは定められてしまっているんです・・・これは天界と冥界の条約があって・・・悪魔にも違反できないただ一つの禁止事項なんですねえ・・・ですが・・・御安心ください・・・抜け道はありますから」

「だったら・・・私を殺して・・・この子を助けて」と母親。

「いえいえ・・・そんなにあわてなくても大丈夫ですよ」

「あと10分しかないのよ」

「いいですか・・・願い事は三つ叶えますから・・・まず二つ願ってください。そして第三の願いで安らかな死を願えばいいのです」

「それじゃあ・・・この子に・・・富と・・・そして健康を・・・」

「素晴らしい・・・母親の愛ですね」

「ちょっと待ってよ・・・この子にとって何よりも大切なのは・・・お母さん・・・あなたでしょう」と看護師。

「でも・・・」

その時・・・目覚めた子供が母親を呼ぶ。

「お母さん・・・」

「・・・」

「お母さん・・・どこにも行かないで・・・」

思わず我が子を抱きしめる母親だった。

「おやおや・・・こりゃ・・・とんだ邪魔が入ったな」

「皆さん、悪魔の言葉に耳を傾けないでください」

「営業妨害だなあ・・・お譲さん・・・どうです・・・この人と結婚するのが夢だったんじゃないですか」

「確かに・・・だけど・・・一度捨てられたのに悪魔の力で結婚するって・・・なんだか惨めだわ」

「そうだ・・・俺も・・・悪魔の力を借りてヒーローになったけど虚しいだけだった」

「じゃ・・・ドクター、あなたはどうです・・・病院の経営苦しいんでしょう」

「悪魔に力を借りて・・・病気に苦しむ患者を救うのか」

「いやいや・・・そういう人多いですよ・・・特に奇跡の医師とか・・・そういう人・・・ブラック・ジャ」

「皆さん・・・時間がありません・・・残り五分です」と悪魔の誘惑を遮る死神くん。

「あわてたって・・・運命は変えられないんだろう」と五郎。

その時、検索仕事を終えたカラスから死神くんに死亡予定者の正体を明かすメッセージが届く。

死神くんは伝えられた運命の残酷さに立ち向かうのだった。

「誰かが死ぬという意味ではそうです。しかし・・・生きている限り、未来を切り開くことは・・・生きている人間のそれぞれの意志がなせることなのです」

「たとえば」

「何もしなければ大やけどを負うかもしれないし・・・何かをしたことでそうはならないかもしれない」

「なるほど・・・俺は・・・今日は非番だが・・・このホテルの警備員だ・・・廊下にスプリンクラーの手動装置がある・・・それで火勢を弱められるかもしれない」と五郎。

「しかし・・・廊下に出たら危険なのでは・・・」と医師。

「俺は意志が弱いから・・・このままだと第三の願いを使ってしまうかもしれない・・・その前に勇気をふりしぼってみたいのだ」と五郎。

「ふふん・・・この期におよんで・・・後生大事(死後の評価を考慮して善行をすること)の点数稼ぎですか・・・」と悪魔は鼻をならす。

「死ぬかもしれないと思ったら・・・人間は・・・いい子になったりするもんだ」

五郎は浴室に一同を集め、水をかぶらせるのだった。

「ドアを開けると一気に炎が入りこむかもしれない・・・みんな・・・浴室にふせてください」

残り・・・一分。

「いくぞ・・・」

ドアを開けると室内の酸素が火を呼びこみ・・・バックドラフトを引き起こす。

渦巻く炎。

爆風で吹き飛ばされる五郎・・・。

室内に立ちこめる煙。

咳込む看護婦・・・。

「あ・・・」

煙の向こうから消防団員がやってくる。

五人は意識を失う。

死神くんは悪魔くんをふりかえる。

「・・・魂が奪えなくて残念だったな」

「ふふふ・・・君は甘いな・・・勝負は始ったばかり・・・やがて君は人間がどれほど愚かな存在か・・・学ぶことになるだろう」

捨てゼリフを残して悪魔は去り・・・カラスが舞い降りる。

「今回はがんばったんじゃね」

「そうかな・・・」

「なんだよ・・・その目は・・・まさか・・・お前も俺の身体を狙ってるのか」

「身体って・・・おまえの身体で・・・何をするんだ・・・」

「カア、変態、クズ、カス、カアアアアアアア」

医師は病室のベッドで目覚めた。

おかしな・・・夢を見ていた気がする。

じゃあ・・・俺は助かったのか。

誰かが記者に囲まれて質問攻めにあっている。

「正当防衛が成立してよかったです」

あいつ・・・警備員・・・あいつも助かったのか。

「お母さん」

あっちのベッドには・・・あの母子がいる。

どうやら・・・元気そうだ。

それじゃ・・・まさか・・・真奈美が・・・。

俺はベッドから起きあがる。

思ったより軽傷のようだ。

「あなたがご主人ですか・・・母体は無事でしたが・・・赤ちゃんは残念でした」

なんだ・・・この看護師は何を言っているんだ。

見知らぬ看護師が案内する個室に真奈美がいた。

「真奈美・・・」

「赤ちゃんが・・・」

「どうして言ってくれなかった」

「私が・・・バカだったのよ・・・死のうなんて思ったりしたから・・・流産しちゃったの」

「悪いのは俺だ・・・俺が・・・間違っていた・・・他人の力をあてにして・・・」

「・・・」

「俺は俺の力で・・・病院を再建する・・・もしも・・・俺を許してくれるなら・・・君も手伝ってくれないか・・・」

「こんな私でいいのかしら・・・」

「君がいいんだ・・・」

死神くんは二人の会話を聞きながら虚空を見上げる。

幽かな無垢の魂の名残はすでにこの世から消えていた。

街の上空を漂うのは死を予告するカラスの黒い羽根だけだった。

今日も運命はこの世に降り注ぐのだ。

死神くんは少し憂鬱な表情を見せる。

生れなかった人間に名前をつける人間とつけない人間がいるとして・・・どちらが優しいのかと・・・ふと思う。

来週はなでしこでお休みなのである。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

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