心が死んだ気持ち~セーラーゾンビ(渡辺麻友)
カレンダーを無視した編成はあまり好みではない。
NHK総合のドラマは最近、特に顕著で唯我独尊的な始り方と終わり方をしている。
しかし、それはあくまで好みの問題で・・・五話で終わりたいドラマを1クールやる必要はないわけである。
11話やりたいのなら七月になってもやればいい。
しかし・・・もう夏なのにまだ春ドラマやってんのかよ・・・という気分はあるわけである。
つまり・・・クリスマスの季節にクリスマスの話をやることのプラス・アルファと逆のことが発生するわけである。
まあ・・・春にコメディーとは言え・・・ホラーをやってることがすでに気分ではないわけである。
心が死んだ気持ちを想像するのは難しい。
なにしろ・・・死んだ人に気持ちは普通ないのである。
だが・・・まあ・・・死体の心理描写というのは文学的なアプローチとしてはあって然るべきものである。
やるなら、本格的にやってほしい。
で、『セーラーゾンビ・第1回~第10回』(テレビ東京201404190052~)脚本・渡部亮平(他)、総合演出・犬童一心を見た。ゾンビの気持ちというのも想像するのが難しい。ゾンビというものが一体どんな存在なのかも理解することも難しい。ゾンビ(死霊)という意味なら心はかなりありそうな気がする。死してなお霊のある状態で・・・霊は幽霊などのように妄執や怨念とは言え一つの心理的な状態を感じさせるからである。一方、ゾンビ=リビングデッド(生ける屍)の場合、死体がなんらかの事情で活動しているニュアンスが強く、それは機械的な無心を窺わせる。しかし、機械にも心かあるという発想なら生ける屍にも心はあるわけである。もちろん・・・恐怖はなんだかわけがわからないところから生じるので・・・そういうゾンビ設定に厳密さを求めるのはチープな展開に似合わないという考え方もある。しかし・・・なんとなくわかるけどやっぱりなんだかわからないというレベルは最低限必要なのだと感じるのだなあ。
とにかく、「バイオハザード」というエポックメイキングな作品によってゾンビが一種の病状という認識が浸透すると・・・ゾンビの心は・・・植物状態や認知症的な知能の範疇に入ってくるわけである。「バイオハザード」のヒロインはゾンビ病を克服したスーパーゾンビであり、人間以上に理性的だったりするわけである。
また、土葬された墓場の腐乱死体が歩きだすというイメージには故・マイケル・ジャクソンの「スリラー」のミュージック・クリップの大ヒットによってかなり一般的なものとなっている。
そうした「他作品」によりかかって・・・亜流のゾンビものは増殖していく。この作品もまさにそうしたものの一つとして・・・まことにふざけているわけである。
とりあえずゾンビのあふれた終末世界は・・・未来に対する漠然とした不安を抱く女子高校生・舞子(大和田南那)の心の象徴として・・・展開していくのだった。
作品世界に登場するミルクプラネットは世界崩壊以前の舞子が憧れていたアイドル・グループでメンバーのマユ(渡辺麻友)は危機に直面した舞子の心の支えとして舞子の内面世界に存在する。
ほとんどの人間が知性を感じさせず、人肉を食すモンスターとしてのゾンビになっている世界で・・・おそらくミルクプラネットのメンバーたちもゾンビと化しているわけである。
アイドルになりたかった舞子にとって・・・現在の世界はまさに夢も希望もない世界なのだが・・・それでも自暴自棄になれないのは心の中でアイドルたちが「あきらめないで」と応援してくれるから・・・という設定である。
まあ・・・そういう仕組みがなんだか・・・心に馴染まない人がノコギリを振りまわしたりする現実世界もなかなかに物騒である。
事件の直後にドラマの中で百花(川栄李奈)がゾンビに襲撃されて姿を消してしまうのがシンクロ率が高いというか物凄くタイムリーなのだった。
それはそれとして「進撃のゾンビ巨人」(向井地美音)とか、ファミリーゾンビとか、初恋の人ゾンビ(中山龍也)とか馬鹿馬鹿しいものからしんみりするものまでバリエーションにも富んでいる。
世界を彷徨っていた舞子は奇跡的に生存率の高い藤美女子高校の生徒・睦美(高橋朱里)に救助されひとときの安らぎを得る。
しかし、そこもゾンビ化した家族のために生徒を餌として与え続ける教頭(相島一之)や、何故か、生徒を裏切り、一人だけで脱出する音楽教師・小雪(石橋けい)という悪い大人たちによって安寧の地ではなくなってしまうのだった。
キャンピングカーで旅する自衛隊員のアイカ(吉田亜子)と看護師のミドリ(秋月三佳)に救助された舞子と睦美・・・。
しかし・・・ゾンビの群れに追われ・・・その心は絶望へと傾いていくのである。
アイドルたちが続々とゾンビとなり、あるいはゾンビの餌食となっていく荒涼たる世界。
殺伐とした描写と・・・時々コミカルな演出が・・・物凄くかみ合っていない感じもするが・・・ゾンビ・マニアとしては結末を見届けるしかないわけである。
ま・・・ちょっぴり、舞子を応援したい気持ちになってきたので・・・ビジネスとしてはこれはこれでいいのだろうと考えます。
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