大河名物、急にでっかくなっちゃった・・・(松坂桃李)じゃなくて兵法三十六計の二十七・・・仮痴不癲と軍師官兵衛(岡田准一)
仮痴不癲(かちふてん)とは「愚かもののふりをして正気」ということである。
「能ある鷹は爪を隠す」に通じるところがありますが・・・無害なふりをするのではなく・・・バカを装うところがさらに悪質なのですな。
逆に・・・有能すぎて馬鹿にしか見えないという趣もあります。
つまり・・・凡人には天才が理解できないという場合です。
戦国時代の場合・・・ここに「うつけ」というキーワードが加われば織田信長です。
「痴」にしか見えなかったものが・・・結局、「天下統一」という事業を半ばまで成し遂げたということになります。
しかし、信長の場合は「不癲」に問題があった。
「正気」ではなく「狂気」を感じさせてしまったところがあったのでしょう。
狂気は伝染するので危険なのですな。
それはともかくとして「陰謀家」であればあるほど「正直者」として振る舞うのが基本です。
相手を油断させ、欺くのが狙いでございます。
つまり、「猪武者」と相手に思わせるのが得策なのですな。
相手が猪武者と侮って簡単な罠でも仕掛けてくれば・・・その罠をたまたま運よく回避したようにみせて急襲する。
そのために・・・父親をも騙す。
「汝は猪武者か」と父に言われてニヤリ。
戦国若武者の基本の作法と言えるでしょう。
で、『軍師官兵衛・第26回』(NHK総合2014062908PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は三十六行・・・三十六計とシンクロでございます。久々の好感触ですな。戦国史上、最大の事件の序盤ですので・・・まあ、表現しやすかった・・・ということになるのかもしれません。今回の流れはでは・・・朝廷陰謀説をベースに・・・信長に仕えることに疲労困憊した明智光秀という定番で来る感じでしょうか。キッドは基本は下剋上の延長線上・・・明智光秀といえどもワンチャンスに賭けずにはいられないというのが・・・実相だと思いますけれど。坊主なんて光秀もかなり殺戮してますからなあ。しかし、今回の光秀(春風亭小朝)は枯れ具合がよろしいですな。鶴太郎も小朝も趣は違えど芸が達者で安心ですなあ。お笑い勢の躍動をとてもうれしく感じます。今回はそんな光秀と快川紹喜の弟子と師匠のコンビ描き下ろしイラスト大公開で超お得でございまする。半年待てば一回くらいはよいのですか・・・。あ~届かぬ愛を~・・・。受けました。この調子で盛り上がってもらいたい今日この頃です。
運命の天正十年(1582年)である。今回の大河は俗説大好きであるので濃姫が信長の元にいつまでもいたりするのと同様、快川が「安禅必ずしも山水を用いず、心頭滅却すれば火も亦た涼し」と唱えながら往生するのだった。ちなみに・・・快川紹喜が匿ったとされる六角義治は慶長17年(1612年)まで生き、晩年はありがちな秀吉のお伽衆の一人である。一種の名将コレクションなんだな。ちなみに武田勝頼の死亡日である四月三日と快川の死亡日は同日である。快川は早い話が武田家の雇われ坊主であるから・・・武田氏壊滅とともに滅んだと考えるのが順当だろう。諸々のことは後世の脚色と考えた方がすっきりする。まあ、別にすっきりしなくてもよいのだが。織田四天王といえば柴田勝家、丹羽長秀、明智光秀、滝川一益である。これに羽柴秀吉が準ずるし、同盟者とは言え、筆頭が徳川家康という考え方もある。徳川家康・滝川一益が武田家殲滅という大手柄を立てた以上、上杉家殲滅、毛利家殲滅の使命を帯びた柴田勝家と羽柴秀吉はものすごくあせってしまうのだった。だもんで秀吉は播磨国姫路城を三月に二万の軍勢で出陣、備前国岡山城の宇喜多勢一万と合流して四月十五日に備中国高松城を囲むのであった。しかし、周囲を湿地帯に囲まれた高松城はなかなかに難攻不落の要塞なのである。すでに鉄砲による銃撃戦が主流となった合戦では遮蔽物がなく進軍速度の遅延する地形は死地となっていた。
すでに秀吉軍団というべき戦術単位が生まれている。
竹中半兵衛が織田家の直臣だったように黒田官兵衛も織田家の直臣である。つまり、秀吉と官兵衛は主従関係にはない。しかし、柴田軍団の目付けとしてつけられた前田利家が戦時においては柴田勝家の指揮下に入るように・・・指揮命令系統における上下関係は自然醸成される。秀吉の最初の組下武将とも言える蜂須賀小六、一門衆である羽柴秀長、秀吉の子飼いの若い衆である石田佐吉、福島市松、加藤虎之助、これらに加えて黒田官兵衛は播磨衆の代表として軍議の席に着く。
軍議の場は基本的に自由討論である。
秀吉自身が優秀なアイディアマンであるが・・・最終的な決断を下す前に・・・諸人の意見を聞くのは戦をそれぞれが命がけで行う以上、当然の成り行きであった。
高松城の支城をいくつか攻略した後で、一度、高松城を強襲し、失敗した後のことである。
「なかなかに手強いのだがや・・・ここは遠巻きにするしかないかの」
「大軍を持って攻めるには攻め口が狭すぎる」と秀長。
すでに山陰における攻略戦で戦慣れした秀吉の弟はなかなかの戦巧者となっている。
「やはり、付城を四方に築くのが一番だろうず」と蜂須賀小六が常套手段を口にする。墨俣築城以来、土木戦は秀吉軍団の特色の一つである。敵前で土木作業を行うのは危険が伴うがそれを成し遂げて来た自負が見える。
新参者ではあるが・・・秀吉の知恵袋であった半兵衛にお墨付きをもらった官兵衛に秀吉は水を向ける。
「官兵衛・・・何かあるか」
「春秋の時代、晋の智伯は地の利を得て・・・晋陽の城を水攻めいたしました」
「水攻めとな・・・」
「いかがする」
「堰を作るのか」
「さよう・・・まずは高松城を堤防で囲み、しかるのちに水の流れを変じまする」
「それは奇想天外じゃな」
秀吉の顔に血が昇る。本来が珍しいものが好きな男なのである。
官兵衛は図面を広げた。
「ここを閉じて・・・ここを開きまする」
秀吉は小六を見る。黒鍬(工兵)のしのびとして小六には実績がある。
「これは面白き仕掛けじゃ」
秀吉は小六が実現可能と見てとったことを知る。
「されば・・・それがよい」
軍議は整った。
普請奉行は小六が行い、官兵衛がそれぞれの侍大将に役割を振り分ける。
工作部隊と護衛部隊の編成である。
すでに官兵衛は・・・秀吉の忍びの一部を預かっている。
作業にはある程度の隠密性が要求されるために・・・忍びによる結界が必要不可欠であった。
黒田忍び、神明衆に加えて、秀吉の使う甲賀者たちも結界に参加する。
「飛騨のものたちは・・・」と官兵衛は秀吉に問う。
「あの者らは・・・上方に忍ばせている。上様(信長)が安土を御留守にしておいでじゃからの」
信長の支配により・・・京はかってのにぎわいを取り戻している。
幕府を滅亡させてから後・・・信長は権威を必要とする時のために御所を手厚く保護してきた。
しかし・・・千年の都の住人たちは三度の飯より陰謀が好きなのである。
そこには常に邪悪な欲望が芽生えているのだった。
赤影は今さらながらに京の都に忍ぶ藤原の忍びたちの底知れなさを感じていた。
時折、腕利きの配下のものが行方知れずになることも多い。
そうなれば・・・そこになんらかのあやしのものがあるはずであるが・・・その正体が杳としてつかめないのだった。
その探索を命じられていた黒影の様子もどことなくおかしかった。
「黒影・・・何かつかめたか」
「わからぬ・・・忍びの気配があって・・・忍びがおらぬ・・・赤影よ・・・俺はなんだかおそろしゅうなってきたわ」
二人の影の忍びは京の深い闇に飲み込まれつつあった。
関連するキッドのブログ→第25話のレビュー
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コメント
黒田長政のあの台詞に思わず
「あ~あ~届かぬ愛を~」と口ずさんでしまったのは
私だけじゃなかったと思わずにやついてしまったものです
; ̄∇ ̄ゞ
黒田家の家臣団が落ち着いて
幼い長政を見守る立場になってきたから
全体的にドラマ自体も落ち着いてきた感じでしょうかね
老臣ともいえる者がいなかったのが
ようやく序盤の家臣達が老臣的な立場になってきたって
ところでしょうかねぇ
それにしても信長が絡むと
どうもその作品ごとに本能寺の変の要因を
あれこれとその時代での解釈を絡めてきますが
主人公がその事実に何らかの形で絡むならともかく
絡みがないのなら、事実だけ描く
という風にしても思ったりもなんかして
それはそれとして
官兵衛のジオラマはかつて
風林火山で勘助が自分の城でやってた構図
官兵衛と恵瓊の語らいは
勘助と雪斎との構図と似せてきたような
ところがありますかね
後は備中高松城の調査も
かつて勘助が川中島を調査した構図と似せてきてるような
なんとも似たような部分が多いなと感じた今日この頃です
投稿: ikasama4 | 2014年7月 1日 (火) 07時24分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
チャゲはどれだけお待ちになるのか・・・という御時勢でございますな。
アーチストをクスリから守ってくれる守備隊が欲しいものです。
黒田家というものが見えにくかったというのが
困難を生んでいるのかもしれませんねえ。
なにしろ・・・名目上、小寺家だったから・・・。
小寺と黒田の関係把握は
歴史マニアの初級編ではございますけれど~。
本能寺の変というミステリは
「火薬集積による爆発事故」説まで
あって・・・まあ・・・基本的には
光秀崇拝者が言い出すわけですが・・・。
なにか・・・それなりにしたいと
つい・・・思うわけですな。
今回は黒田主人公で
勧善懲悪的なニュアンスが強いので
「信長やりすぎ」
「光秀是非もなし」
「黒田ラッキー」
こんな感じで来るのでしょうなあ。
「風林火山」の俺の城ジオラマ
「あまちゃん」の北三陸ジオラマにはおよばないとしても
「高松城ジオラマ」を出されては
目を細めるしかないのですな。
痛い所をつかれた気分でございます。
武将フィギュアも置いて
水を流してもらいたいですな。
恵瓊と小早川隆景の確執を
そこそこ描くとなると
悪い恵瓊に期待が高まります。
極悪忍び坊主暗黒寺の妄想展開をスタンバイ中です。
まあ、このスタッフいいところどりを目指しているわけですが
着眼点がもう一つなので
ちっともいい感じにならないわけですが
今回はまずまずだったというところでしょう。
ここが最低限でますます精進してもらいたいですねえ。
投稿: キッド | 2014年7月 1日 (火) 16時33分