今はただ怨みもあらじ諸人の命に代わる我が身と思えば・・・と別所長治(岡田准一)
説明不要の責任者が自己犠牲に酔った辞世である。
二週連続辞世かよっ。
主君が家臣に名前の一部を与えることを諱と呼び、ある種の褒美にあたる。
別所長治の長は織田信長の長である。
信長は臣従した別所の総領に諱を与えて厚遇したのである。
しかし・・・情勢判断を誤った別所家家臣団は・・・主君を自害に追い込んだのである。
では・・・別所長治は誰を怨んだのだろうか。
敵対した織田家か・・・。
それとも謀反を唆した家臣団か。
あるいは謀反をさせながら援軍をよこさなかった毛利家か・・・。
まあ・・・敗軍の将は自分の不明を恥じるべきなのだろう。
ザックもまた然りである。
7回勝てば優勝じゃなかったのかよっ。
信長は前年の天正7年9月、娘婿である松平信康を実の父・徳川家康に命じて切腹させている。
二年連続・・・諱を与えたものを切腹させた信長・・・第六天魔王の面目躍如である。
で、『軍師官兵衛・第24回』(NHK総合2014061508PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は13行で・・・クララが立ったじゃなくて・・・官兵衛が立ったじゃなくて・・・一行増えたのですが・・・しかし、イラストは渾身の織田信長地獄の帝王と黒田官兵衛地獄の使者の豪華二大描き下ろしでお得でございます。地獄の悪約プロレスラーのタッグチームでございますねえ。しかし・・・せっかく悪の官兵衛登場で盛り上がりを見せたのも一瞬、青面獣のように大きな痣を残せばいいのに・・・どんどんきれいになっていくメイクとともに・・・いつものお人よし官兵衛に逆戻り・・・一回で終わりかよ・・・どんだけ悪の持続力ないんだよ・・・でございました。なんかもう・・・「乾杯戦士アフターV」と大差ないドラマのクオリティーだな。だし(桐谷美玲)の怨霊アンコール出演が唯一の救いだな。ふう・・・だからためいきはコメント欄でつけと何度言えばっ。
天正八年(1580年)正月、三木城に籠城中の別所長治は・・・包囲中の羽柴秀吉軍の降伏勧告を受け入れ、城主・長治、正室の波多野照子、嫡子・千松丸、弟・友之ら一族の自害によって開城となった。摂津の有岡城、丹波の黒井城という連携相手を失い孤立しての憤死である。まあ、ある意味三国同盟でイタリア、ドイツに先に降伏された帝国のような運命である。欲しがりません勝つまではなどと言い出したらまず勝たないのである。波多野氏、荒木氏、別所氏の降伏により、孤立した石山本願寺の顕如は正親町天皇からの調停による和議に応じる。四月、顕如は紀伊国に退去し、本願寺残党は口惜しさ余って放火し、石山本願寺は灰燼に帰する。寺に火をつける罰あたりな坊主たちだったのである。荒木村重は有岡城から尼崎城、尼崎城から花隈城と後退しながらなおも抵抗を続けている。七月、花隈城を織田軍の池田一族が落城させ、ついに村重は落ち武者となった。それでも村重は生きのびるのだった。八月、近畿戦線の終結を見定めた信長は積年の怨みを込めて老臣・佐久間信盛を高野山に追放する。よほど無能だったのだろう。もちろん・・・本願寺攻略戦において荒木村重の謀反を招いた監督不行き届きが根本にあったと考えることができる。十一月、かって・・・信長への謀反歴がある柴田勝家は・・・蒼ざめて加賀一向一揆を制圧し、能登国・越中国にも侵攻した。よほど信長の目がこわかったのだろう・・・。ついに信長は東西両面作戦が可能な局面に到達したのだった。東の武田、西の毛利は風前の灯となった。西に羽柴秀吉、東に徳川家康。信長の両サイドは完璧な布陣になっていた・・・。
小寺藤兵衛政職は播磨灘を望む名もなき浜辺に潜伏していた。
毛利家の使者を名乗る草のものが手引きして・・・ここまで逃亡してきたのである。
怯える小動物のような表情を浮かべて、藤兵衛は身をすくめていた。
「舟の準備ができました・・・」
「さようか・・・」
「後は舟の揺れにまかせて落ちるがよろしかろう・・・」
「儂はどこへ参るのかのう・・・」
「もはや播磨には小寺様に同心するものはおりませぬゆえ・・・安芸に向かうのでございます」
「毛利は・・・儂を受け入れてくれるのか」
「もちろんでございます・・・なにしろ・・・敗れたといえども・・・小寺家は毛利のお味方・・・」
「そうじゃのう」
その言葉にようやく安堵して・・・藤兵衛は浜辺へ出た。
いかにも頼りなげな小舟が待っていた。
「その方は・・・参らぬのか・・・」
「拙者にはまだ草としての役目がありますれば・・・後は船頭がご案内しますので・・・」
藤兵衛は単身だった・・・一族郎党はすでに離散している。
やがて憐れな藤兵衛を乗せた小舟は沖へと漕ぎだし・・・たちまち視界から遠ざかる。
「はてさて・・・何の手柄もなきものを・・・毛利はどうするかのう・・・」
忍びの者は仮面を取り出した。
竹中半兵衛の命により・・・藤兵衛の脱出を手助けしたのは赤影であった。
播磨国に藤兵衛を残しておいては支障が出ると・・・今は亡き半兵衛は読んでいたのである。
官兵衛に独立を促し、秀吉の陣に加えることが・・・勝利への道だった。
赤影は半兵衛の未来予測の真髄を疑う気はなかった。
忍びのものは・・・ただ命に従うまでと思い定めているのだ。
播磨の浜辺を風が渡って行った。
安土城天主の間。
信長は葉蔵を呼んだ。
しかし、現れたのは忍びの一族・・・森の乱丸である。
「いかがした・・・」
「葉蔵は・・・老いによりて死にましてございます」
「であるか・・・」
「この乱丸が御用を承りまする」
「・・・」
信長は心に幽かに揺らぐものを感じる。
それは信長の感傷だった。
(あれも死ぬまでよう働いた)
言葉にならぬ思いがほんの一瞬、信長に沈黙を強いた。
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