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2014年6月13日 (金)

ストッキングを買わされる女(小泉今日子)と地蔵の気持ちがわかる男(中井貴一)

さあ・・・いよいよ、男子サッカーワールドカップ開幕である。

みんながバタバタと最終回に駆け込む中で悠然と展開する鎌倉の恋の物語・・・。

余裕だな。

エンディングでみんなが踊るダンスのシーンが毎回、微妙に変化して・・・今回はゲストが見事なダンスを披露している。

今週は・・・「花子とアン」「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜」「トクボウ 警察庁特殊防犯課」と三本かけもちの吉田鋼太郎がトークショーで「おやすみ/井上陽水」をギターの弾き語りで披露していたが・・・さすがは芸能人なのである。

素晴らしく出来る人たちのことをなんとなく出来ない人が素直に楽しむ世界は平和である。

喜びも悲しみも・・・人生の突き当たりまでの話なのである。

で、『続・最後から二番目の恋・第9回』(フジテレビ20140612PM10~)脚本・岡田惠和、演出・加藤裕将を見た。些少のニュアンスの違いはあるが演出家が誰でも・・・ほぼ同質の世界を描くことができる・・・脚本の力強さが半端ないのだなあ。今回は・・・長倉家と極楽寺の駅の間の通勤路が披露されるのだが・・・そういう場面もちょっとうれしくなるくらい・・・ドラマ世界が存在しているわけである。ここで・・・あまり・・・運動をしている風には見えない四十八歳のヒロインが息切れして、優しい隣人の手助けを拒むシーンが展開され、さりげなくフリと最後のオチを成立させていく。フリとしての「遅刻なんですけど」を発しない長倉えりな(白本彩奈)は大人たちに甘えたり構ったりせずにさっさと通学のために出発する。それもまた歳月の流れのひとつのオチなのである。もちろん・・・コントとしても・・・差し迫った時間にみんなが同時に気がつく一体感は微笑ましいフリオチの完成なのだ。フリとオチが巧妙に錯綜する脚本は・・・もはや神々しい。

前夜・・・ついに激突する千明(小泉今日子)と未亡人・薫子(長谷川京子)である。

薫子には「セフレ」の謎があり・・・本当に肉体交渉だけを求めるセックスフレンドの略なのか・・・何か別の言葉で勘違いしているという問題・・・和平(中井貴一)を争う二匹の雌という構図なのかどうかは微妙だが・・・千明が最悪でも彼なら・・・と考えているらしい相手の周囲に存在する美人として・・・千明としては心穏やかではない相手なのである。

相手はまっこうゆとり世代なので・・・ひとまわりも違う年齢差をものともせずに・・・千明の心中に斬りこんでくるのだった。

「男の前で涙を見せたら負けだと思ってるから・・・」

「何で勝負してるんですかあ」

「・・・」

「悲しい時と泣きたい時って違いますよねえ」

「違うの?」

「悲しい時は一人でも泣けるけど・・・泣きたい時は誰かの胸を借りたいじゃないですか」

「・・・」

「涙は女の武器っていうけど・・・それで幸せになれるなら・・・素手で殴り合うよりいいですよね」

「・・・」

「千明さんは・・・和平さんのこと、どう思ってるんですか」

「えっと・・・」

「和平さんはどう思ってるんでしょう」

「なんなら・・・呼んじゃう」

「呼びましょう・・・私も呼んでみますね」

完全に勝負を挑まれた千明なのである。

しかし・・・爆睡中の和平は・・・お地蔵さんパワーで危機を回避したのである。

翌朝・・・和平の表情から・・・娘と二人の妹・・・典子(飯島直子)と万里子(内田有紀)は和平が何か「優柔不断系」の行動をとっていることを察する。和平・・・読まれ過ぎである。

つまり・・・どちらにも折り返しをしなかった和平なのである。

そこへ・・・千明も現れて・・・和平の優柔不断さを袋叩きにするのだった。

朝から半殺しにされた和平は開き直るしかない。

「優柔不断で何が悪い・・・優しく柔らかく断らない・・・悪いところはないじゃないですか」

「おじさんが天使だった時みたい」とこっそり叔父・真平(坂口憲二)に大人モードで擬えるえりなだった。

「私は博愛主義者なんです」

「なるほど」

「宮沢賢治にもあるでしょう・・・雨ニモマケズ風ニモマケズ・・・ええっと」

「雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチですよ」とエリートとしての教養をさりげなく見せる千明。

「とにかく・・・東ニ病気ノコドモアレバ行ッテ看病シテヤリ的にみんなのことを思っているという」

「でも・・・この詩の最後の方・・・知ってます」

「最後の方って・・・」

「ミンナニデクノボートヨバレホメラレモセズクニモサレズサウイフモノニワタシハナリタイ」ですよ。

「・・・」

千明は・・・別に勝ちたくて男に勝つわけではない・・・つい勝ってしまうのだなあ。

そして・・・結婚したくないわけでもないのに・・・気がつけば昔なら「結婚できない可哀想な女」になってしまっているのだった。

まあ・・・そういうことに今も昔もないけどな。

そして・・・実は結婚している過去があり・・・そう言う意味では千明より女子力があるという伊佐山市長(柴田理恵)はなりふり構わぬ告白である。

「実は・・・私はあなたに恋しています」

「ええっ」

「だからといって・・・あなたとどうこうなろうという気持ちはありません・・・それともありますか」

「いえ・・・」

「答えなくてもいいのです・・・私は片思いには二つあると思っています・・・相手にその気がない片思いと・・・その気があるのかどうか分からない片思い・・・できれば後者でお願いしたいと思っています」

市長命令である。

今回は・・・ついに・・・市長問題がクリアされたようだった。

さらに・・・和平は薫子にも問いつめられる。

「私のこと・・・好きですか、嫌いですか」

「それは好きです」

「女としてはどうですか」

「すみません・・・」

「それならセフレになれますね」

この謎の展開・・・普通に考えれば・・・女=セックスなので意味不明である。

そう言う意味で・・・回答する和平。

「愛がなければそういうことはちょっと・・・」

すると悲しげに席を立つ薫子。

とにかく凄く欲求不満なのか・・・男なしではいられない身体とか・・・でなければ「セフレの謎」は深まるばかりなのだった。まあ・・・最終回まで間があるからな・・・。

さて・・・今回のゲストは・・・霧に閉ざされた千明の故郷からの刺客・・・ブレイクダンスの得意な幼馴染のテル(風見しんご)である。

あえて言えば・・・千明の初恋の・・・無論片思いの相手と言うことになる。

千明が・・・ずっと恋愛の縁のない生活をする原点である。

あえて言えば・・・千明は偶然を装った再会にときめいているのである。

しかし・・・テルは単に「ストッキング」の行商にきたしがないセールスマンだった。

千明の経済力が目当てだったのである。

もちろん・・・千明は買うのだったが・・・そういうことなら偶然を装わないで・・・素直に「買ってくれ」って甘えてもらいたいのである。

もちろん・・・深層心理的には「恋愛目的」ではなかったことが腹立たしいのだが・・・それはさすがに・・・セリフにできない千明だった。

だから・・・もやもやするのである。

せつないのである。

そして・・・今夜のその時がやってくる。

自分の心を持て余した・・・夜の駅前で・・・ついに・・・意中の人に電話をする千明だった。

秀子(美保純)と知美(佐津川愛美)の母親から拝まれるほどのお地蔵さんのような男は断らないと知っているからだった。

「私・・・勝ちたくて勝ってきたわけじゃないよ」

「うん・・・あなたはただ・・・一生懸命生きてきただけでしょう・・・宮沢賢治系で・・・」

「・・・」

ついに男の前で泣いてしまう千明だった。

酔い潰れた千明を和平が背負っての家路。

「でも・・・あなたのそういうところが好きですよ」

「・・・」

「夢の中か・・・もっと近い店にしておけばよかったな・・・」

四十代の女を五十代の男が背負うのは・・・ある意味、地獄ですからな。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

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コメント

こんにちは~

いや~んもうキッドさんが感じてることまんま…
って何様で許してくりょ~。
キッドさんのように上手く伝えられないので、
読んでて気持ち~ずら。

まさかの宮沢賢治系に、てっ!
そういうものになりたいφ(.. )フムフム
上手いな~♪

>さりげなくフリと最後のオチを成立させていく
そうなんですよね~。
これが本当に見事で気持ち良い。
元気な朝からしっとり大人な夜…
そして心地良いラストからあのエンディングもまた見逃せません♪
前作があっての『続』で魅せるワザ、さすがっすね!
大人の恋っすね

p.s.
風見しんごになったのね。
こっそり書き直させてもらいま~す

投稿: mana | 2014年6月14日 (土) 10時25分

|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||

梅雨の合間の猛暑中でございます。
ういろうでも召しあがりませ。

悪魔でございますので
男性脚本家の乙女心につい感情移入してしまうのですな。
男勝りでかわいいじゃないか・・・という感じ?

風見しんご氏は実生活の悲しい出来事があり
それでも、生きていく感じが
どうしても滲み出てしまう。
その上でこのものがなしい役柄・・・。
クールですな。

まあ・・・和平がうろ覚えの「作品」を
暗唱できる千明は・・・
やはり・・・宮沢賢治を
こよなく愛している才女なんですな。
コミック「まんだら屋の良太」の月子です。
じゃ、和平は良太かっ。
顔面だるまかっ。
いえいえ、地蔵でございます。

多重人格群の雑談はさておき・・・
本当に素晴らしい脚本でございますよねえ。

エキストラのあの人が就職運動に出かけていき
見事に出演者となって
撮影、編集、音入れと段取りが過ぎているので
数日間の出来事になるわけですが
まるで一日の出来事のように
まとめてきているのも素晴らしいのでございます。

女と女の悪い酒から・・・
男と女の今夜はしっぽりまで・・・・
澱みのない展開ですよね。
まさに一流の腕前ですな。

大人げないまま大人になるのは
褒められたことではないですが
そうでしかないから仕方ない・・・。
この辺りの優しさにうっとりするのですな。

万里子が着ぐるみシステムで
あの衣装の下に空冷装置が内蔵されているとしたら
通販してほしい夏はそこまで・・・。
夏を越えて秋までも・・・
ずっと「続」でいいのになあ・・・と感じる今日この頃でございます。

投稿: キッド | 2014年6月14日 (土) 15時54分

キッドさん
こんにちは

学生時代だった気がしますが
極楽寺で降りて行ったお寺の紫陽花が見事だった
そのお寺の名前が思い出せないけれど明月院でも長谷寺でもなくたしか極楽寺で降りて紫陽花を見に行った

このドラマを見ていたらそんな昔の記憶が甦ってきました

今回は冒頭に散りばめられたピースが終盤 ぴたりと収まって脚本家のテクニックにうっとりしちゃいました

超一流企業で男性顔負けで働いている女性の微妙な心の揺れに
好きですよ
泣かない系
なんて言ってもらえることは現実にはない気がしますが

大人のお伽話に
いつまでも浸っていたい気分です

小心者でやや情けない役柄だった風見しんごさんのブレイクダンス

ステキでした

投稿: chiru | 2014年6月15日 (日) 17時33分

シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン

極楽寺にも紫陽花はあった気がしますが、
海に向かって歩くと成就院がございますね。
ここでも紫陽花を見ることができたと思います。

キッドも学生時代、ここで自主制作映画を撮影していて
何度か訪れています。

時が流れていくんですよね。
いつもと変わらないような日常の中で
しかし、確実に時が流れていく。
「サザエさん」には許されない時の流れ・・・。
子役はどんどん成長するし、
一条さんは日々、老いてゆく。
胸がきゅんきゅんいたしますよ。

そういう時の流れの中で
前夜を引きずる今朝があり
今朝の導く昼があり
そして夜が訪れる。

それぞれの終焉に向かって
淡々と流れる時・・・。

心の中には現在過去未来が去来しますが
どうしようもなく今は過ぎ去って行く。
そういうムードが醸しだされる脚本なんですな。

ブレイクダンスも今は昔・・・。
そして遠い家路もいつしかフィニッシュ・・・。
後半が始った時には1-0だったのに
終わってみれば1-2の
日本対コートジボワールみたいに。
長い笛が吹かれれば
無情にも無常の時は過ぎさりますな。

投稿: キッド | 2014年6月16日 (月) 01時25分

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