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2014年6月14日 (土)

私は死神です。名前はまだありません(大野智)

人間は言葉によって独自の獣となったという。

言葉とは名前をつけることである。

「上」を指さして「空」と叫び、目を細めて「太陽」と呟く。

「自分」がいるから「他人」がいる。

そういう意味では「死神」もまた名前である。

「死神」も「悪魔」も「カラス」までもが・・・ファンタジーの世界では日本語を話す。

そもそも、「悪魔の契約」は「口約束」である。

そして・・・「名前」は・・・人間が思う以上の「力」を持っているのだ。

で、『金曜ナイトドラマ・・第8回』(テレビ朝日201406132315~)原作・えんどコイチ、脚本・橋本裕志、演出・本橋圭太を見た。オンエア日は由緒正しい「13日の金曜日」である。たとえば・・・半世紀前なら「本能」は言葉としてかなりの力を持っていた。「男の本能」だの「逃走本能」だの「闘争本能」だの「母性本能」だのが飛び交っていたのである。まさに本能の時代だったのだ。しかし、本能ってなんだよという疑問が生じ・・・本能的な行動を恥ずかしいと感じる人々が増加して・・・本能は力を失ったのである。じゃあ・・・本能はどこへ行ったんだ・・・ということになるが・・・代わって力を得たのが「欲望」である。特に「食欲」は恥ずかしいほどに世界を支配しているようだ。さらに「欲望」が恥ずかしい人は「衝動」なんて言ったりします。つまり・・・「本能」も「欲望」も「衝動」も本質は同じなのである。本能的でも欲望的でもない衝動なんていうものはないのだが・・・人によっては「本能」よりも洗練されて「欲望」よりも複雑なものが「衝動」だと思ったりもするのである。ちょっと面白い。まあ、母性本能がくすぐられるより、母性欲望が燃えあがり、母性衝動に突き動かされるのがかっこいい時代なのかもしれない。・・・母性はあるんだな。

神が運営する世界で・・・「生死」を司る天使の組織の歯車である死神くんこと死神No.413号(大野智)はどちらかといえば不良品で・・・運営に支障が生じるのである。誤作動の原因になるので場合によっては部品の交換が必要となる。そうなれば死神くんは破棄されてしまうのである。天使に墓場はないので・・・それは存在の消滅を意味する。死神くんの付属品である監死官のカラス(桐谷美玲)も連帯責任で消滅してしまう。

たび重なる不祥事のために審査にかけられた死神くんだが・・・審査中も業務は遂行する必要があり・・・働かなければならないのだった。

「上司としてできるだけの弁護はする」という死神主任(松重豊)もまた歯車に過ぎないのだ。

使えない死神くんに罵詈雑言を重ねながら・・・カラスは・・・担当エリアの監死は怠らない。

不審な死の気配があれば・・・ただちに・・・死神くんに告げるのだった。

「死亡者リストにない人間が二人も死にそうだ・・・急げよ」

死神くんはマイペースで下界に降りるのだった。

裕福そうに見える会社経営者の内田克也(小市慢太郎)は妻の美恵(中越典子)と息子の翔太(髙橋來)を巻き込んでガスによる無理心中を計画していた。内田の経営する会社は巨額な負債を抱えて倒産したのだった。

幸せな翔太の誕生日は・・・死に満ちた宴で幕となったが・・・死神くんの通報により・・・救急隊員が到着し・・・三人は一命を取り留める。

「二人じゃなくて・・・三人じゃないか・・・しっかりしてくださいよ」と注意する死神くん。

「カスッ」と死神くんをノックアウトするカラス。「一人は死亡者リストに乗っているんだよ」

Photo克也は気がついていなかったが死の病に冒されていたのだった。

「一家心中なんてやめてください・・・あなたはもうすぐ死ぬんですから」

「なんだって・・・」

「死神が言うのですから間違いないのです・・・あなたの余命は後、三日です」

「じゃあ・・・ますます無理心中しないと」

「どうしてですか」

「私の家族は・・・ダメな人間なんだ・・・妻には生活力がないし、息子は出来が悪い・・・とてもじゃないが・・・私が死んだら不幸になるしかない」

「そんなこと・・・分からないじゃないですか」

しかし・・・実際、妻の美恵は虚栄心ばかりが強い無能な女だった。克也と結婚する前は有能なビシネスマンの父親に庇護され・・・資産家の令嬢として何不自由のない暮らしを送って来たのである。本人は・・・仕事ができる女のつもりだったが・・・すべては親の七光だったらしい。その父親も婿である克也の保証人になったことで経済的に困窮してしまったのである。

そして・・・幼い息子の翔太も・・・ピーマンが食べられない甘えん坊で・・・期待しすぎる両親の期待には何一つ答えることができないのだった。学校の成績も悪く、友達一つ作れないのである。

出来の悪い翔太に・・・自分自身を見出した死神くんは・・・「友達になろう」と近付くが・・・幼い翔太にジャニーズ系の魅力は反映しないのだった。

虚飾に満ちた両親に育てられた翔太は・・・虚飾にしか魅力を感じない。

「じゃあ、私が・・・」とカラスが登場するが翔太は本能的にカラスに恐怖を感じるのだった。

美恵の境遇を知った知人女性が清掃業者の正社員の口を紹介するが・・・生活レベルを落せない美恵はにべもなく拒絶する。

「そんなことになるくらいなら・・・死にたいぐらいなんて・・・情けないとは思えいませんか」と忠告する死神くん。しかし・・・美恵は聞く耳を持たないのだった。

両親が運命に翻弄される間に・・・不遇を感じる翔太。

そこに悪魔(菅田将暉)が現れる。

虚飾そのものである悪魔にたちまち魅了されてしまう翔太。

「願い事を叶えるよ」

「じゃあ・・・友達になって・・・」

「と・・・友達に・・・」

第一の願いをかなえた悪魔は・・・契約上、厳密な意味で「友達」になってしまうのだった。

悪魔としてはこの時点でオチているわけである。

人間の友達とは違う。契約上の「友達」は・・・けして友達を不幸にはできないのだ。

なぜなら・・・友達を不幸にしたら・・・もはや「友達」ではなくなってしまうのだから。

喜んでかっこいい友達を両親に紹介する翔太。

「みっつの願いをかなえたら魂を盗られる」相手に・・・さすがの両親も蒼ざめるのだった。

克也も美恵ね・・・我が子の幸せを願う父親と母親に過ぎなかったのである。

我が子の不幸に接して・・・克也と美恵は覚醒したのだった。

しかし・・・死神くんの説得も虚しく・・・翔太は暴走していく。

第ニの願いし「壊してしまった父親からのプレゼントを直して」だった。

突然、故障の直ったラジコンカーに衝撃を受ける美恵。

「そんなことを・・・願ってはダメよ・・・」

しかし・・・幼い翔太にそんな理屈は通じない。

「ママのために・・・ピーマンを食べられるようになるよ」

「待って・・・」

しかし、翔太は苦手を克服してしまうのだった。

絶句する一同。

そこへ悪魔がやってくる。

「そうだ・・・確かに翔太は第三の願いをした・・・ピーマンを食べることができるようにって・・・だけど・・・俺が魔力を使う前に・・・翔太はピーマンを食べたよ・・・自分で好き嫌いを克服したんだ」

「えええ・・・」

悪魔は茫然としていた。

悪魔の力の深淵を感じていた。

友達を不幸にできない悪魔は・・・最大級の不幸である第三の願いを叶えることが実行不可能になってしまったのだった。

悪魔は自己嫌悪でいっぱいになった。

「友達って・・・最悪だな・・・悪いことが・・・何一つできないんだぜ・・・吐き気がする」

「なんていうか・・・超ラッキーな展開じゃね」とカラス。

「・・・」

死神くんは翔太に悪魔よりかっこ悪いと言われたことに傷ついていたのだった。

ただの子供である翔太によって・・・ただの親になった克也と美恵は・・・克也の最期の時を親子三人で分かち合うのだった。

死神くんの審理は結審した。

「情状酌量による寛大な処置が出た。今後ミスをしなければ処分は見送るということだ」

「ありがとうございます」と喜ぶ死神くん・・・。

「ボケがっ・・・今度一回でもミスったら処分されるってことじゃね」

「え」

死神くんとカラスの運命は最終回のゲスト・・・不慮の死の帝王ともいえるあの方(田中圭)に委ねられるのだった。

う~ん、ナイスキャスティング。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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