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2014年6月18日 (水)

彼と彼の妻とキャンピングカーと私~55歳からのハローライフ(長谷川博己)

幻想譚である。

幻想というのは基本的に心の病なのである。

この世に存在しないものをあると思うことは心の病だからである。

もちろん・・・そういう意味ではすべての人間は心の病にかかっている。

この世に存在しないものをあると思わない人間はいないからである。

だが・・・人々は思う。

この世にあるものとないものの区別は出来ている。

だから病んでいるわけではない・・・と。

しかし・・・たとえば愛。

そんなこの世には影も形もないものをあると信じてしまう人は多いのである。

で、『土曜ドラマ 55歳からのハローライフ 第1回 キャンピングカー』(NHK総合20140614PM9~)原作・村上龍、脚本・大森寿美男、演出・加藤拓を見た。大手家具メーカーの敏腕営業マンだった富裕太郎(リリー・フランキー)は勤務先を55歳で早期退職し・・・妻の凪子(戸田恵子)とともに退職金を費やしたキャンピングカーで悠々自適の旅に出る・・・太郎は美味しいコーヒーを飲み、絵を描くことを生きがいとしている凪子は時折、スケッチブックを開く。そこへ・・・見知らぬ男がやってくる。

「阿立と申します」と男(長谷川博己)は名乗った。

「素晴らしいキャンピングカーですね」

「ええ・・・」

「これでもう長い間、旅をしているんですね」

「いえ・・・」

阿立の質問に戸惑う太郎。

いつしか、太郎は回想の世界に入って行く。

「退職金でキャンピングカーを買うつもりだ・・・一緒に旅をしよう」

太郎は妻の凪子が当然、賛成してくれるものと思っていた。

少なくとも喜んでくれるはずだと考えていた。

しかし・・・妻の反応は鈍い。

「もう・・・買ってしまったんですか」

「いや・・・手付金を払っただけだ」

「私は・・・反対です」

「なんで・・・」

「なんでって・・・子供たちの結婚資金のこともあるし・・・第一、私は長い休みはとれないのです。絵画教室の付き合いもありますし・・・」

子供たちはまだ未婚だったが独立している。

長男の進武(橋爪遼)は「父さんの好きにすればいい」と賛意を示してくれた。

しかし、長女の美貴(市川実日子)は「お母さんの気持ちを考えてあげて」と難色を示す。

「母さんの気持ちって・・・」

「家計は母さんにとって大事なんじゃない・・・第一、父さん・・・ずっと遊んでいるわけ?」

「人を怠け者みたいに言うな・・・」

「じゃ・・・再就職のことも考えてみたら・・・旅は仕事があったって行けるけだし・・・」

「それじゃ・・・意味がないんだよ」

「仕事をしないで旅をすることに意味があるの・・・?」

「いや」

「じゃ・・・再就職にチャレンジしてみれば・・・」

自由に旅をするはずが・・・いつの間にか就職活動をしている太郎だった。

そして・・・思いの他・・・再就職は難航するのだった。

太郎の学生時代からの親友・駒野(ピエール瀧)はアドバイスする。

「俺たちは会社が沁みついてるんだよ・・・会社があったからそれなりの立場があるんだ・・・知らず知らずに上から目線になってるんじゃないのかな」

恐ろしい現実の壁に立ちすくむ太郎。

「英語が中国語ができますか。女性社員を部下に持った経験は? セミナーなどで講師をされた経験はありますか。プラインド・タッチはできますか。何か資格をお持ちですか」

キャリアカウンセラーの仲西(小林高鹿)の質問は太郎を追い込む。

「あの若造に・・・将来の夢について作文書かされたんですよ・・・屈辱です」

同じく再就職にチャレンジしている大手企業退職者の林(田山涼成)はぼやく。

いつしか・・・心身が不調になっていく太郎。

夜は眠れず・・・食は喉を通らない。

隣の家の飼い犬の吠え声が気になってしょうがない。

「ワンワンワンワンワンワン」

「あああああああああああ」

ついに錯乱する太郎だった。

そして・・・心療内科を受診する太郎。

担当医は・・・亜立だった。

「私は・・・心の病でしょうか・・・」

「驚かれるかもしれませんが・・・あなたは少し驚いているのです」

「え・・・」

「奥様に・・・大切にしている自分の時間があった・・・ということにです」

「・・・」

「そんなこと・・・と思われるでしょうが・・・人間は自分の信じている現実が現実ではなかったと知ると激しくショックを受けるものなのです」

「・・・私はどうすればいいのでしょうか」

「あるがままを受け入れることですよ・・・あなたがあなたの時間を生きているように・・・奥様も奥様の時間を生きている・・・ただそれだけのことです」

太郎は・・・凪子を捜した。

凪子は近所の公園で・・・絵を描いていた。

「コーヒー煎れて来た・・・飲むかい」

「ありがとう・・・」

「しばらく・・・君が絵を描くところを・・・見ていていいかな」

「・・・どうぞ・・・お好きなだけ・・・」

太郎は気がつく。

これが現実で・・・キャンピングカーで旅している自分は・・・幻想だったのだと。

それでも・・・太郎はキャンピングカーで旅をする夢を見る。

いつか・・・それが・・・現実になるのかどうか・・・今の太郎には分からなかった。

こんな調子で・・・後四回やる気らしい。オムニバス形式だから・・・ま・・・キャスト次第では堪能できるかもね。

関連するキッドのブログ→MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜

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