上様は舞わなかったのでございます(内田有紀)兵法三十六計の一・・・瞞天過海と織田信長(江口洋介)
「瞞天過海」は海嫌いの天(皇帝)を騙して屋敷船に乗せて渡海させた唐代の故事にちなんでいる。
しかし、兵法の極みとして語られる場合は敵を味方と勘違いさせることである。
海を陸と思わせるというたとえは・・・それが奇想天外な領域にあることを示している。
羽柴秀吉が氏素性も定かではない卑賤の身とすれば・・・明智光秀は美濃国守護の土岐氏の系譜に置かれる。
しかし・・・光秀本人は信長に臣従する以前は流浪の身の上だった。
そこから丹波国主となるまで・・・比叡山を焼き打ちにしろと言われればそれをなし、将軍を追放しろと言われればそれをなした。
毛利元就に就職面接で「狼の眠りし相貌」「利害半ば」と評された悪党が・・・信長の前では飼い犬のように従順だったのである。
すべて・・・敵である自分を味方と思わせる兵法・・・。
そう考えれば・・・兵力差一万対百の状況は「瞞天過海」そのものである。
信長はまんまと騙されてしまったのだ。
まさに是も非もないのだ。
「光秀、すげえよっ」と感嘆したわけである。
明智光秀が天海を名乗ってもなんの不思議もない所以である。
で、『軍師官兵衛・第28回』(NHK総合2014070613PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は十三行・・・主役が黒田官兵衛なのに・・・本能寺の変に時間さきすぎ・・・なのでございますよねえ。しかし・・・三度の飯より本能寺の変が好きな人は多いのでこらえてつかあさい・・・。そして・・・ついに・・・織田信長の正室にして挙動不審生没年不詳の女・チョチョチョチョチョ濃姫の描き下ろしイラスト大公開で満員御礼でございます。やはり・・・公開と同時に他界はセオリーでございますなあああああっ。公開先に立たずとはこのことなのでございましょうかああああ・・・しかし、あくまでマイペースでお願い申し上げます。
天正十年六月二日(1582年6月21日)・・・織田信長の正室・斎藤帰蝶(濃姫)がどこにいたか・・・戦国最大のミステリのヒロインのアリバイは・・・謎に満ちているわけだが・・・司馬遼太郎色の濃いこのドラマは「国盗り物語」に回帰したわけである。本能寺で信長と散った説・・・まあ・・・そうだと言われればそうなのである。その他にも・・・とっくに死んでいる説から、逃げ延びて長生きした説までなんでもあり・・・それが濃姫なのである。しかし、濃姫の弟・斉藤利治は斉藤道三の家来・猪子兵助とともに信長の嫡男・信忠の籠る二条城で討ち死にしおり・・・濃姫が信長と共に上洛していた可能性は否定できない。一方、明智光秀の出生も秘密のベールに包まれているが・・・光秀の父・秀綱が明智光継の子であれば・・・光継の娘である小見の方の娘の濃姫は・・・光秀とは従兄妹同志ということになる。骨肉の争いということでは・・・その方が盛り上がるわけである。正室の従兄だからすごく油断した信長・・・理にもかなっている。まあ、実弟殺している男がそんなことでどうするという考え方もある。信長死す・・・の報は東西南北津々浦々に伝播して行く。光秀が安土城に向かった四日・・・羽柴秀吉・黒田官兵衛主従は・・・その事実を知った。
黒影は・・・信長の目付け忍びを殺す魔性のものを影の中で見た。
明智光秀につけられた目付け忍びは信長の忍びの中でも極めて手練れである。
その達人たちが・・・容易く絶命する様は黒影の心を麻痺させた。
魔性のものは・・・確実に黒影の気配を感じ取っている。
しかし・・・黒影は無視されたのだった。
やがて・・・明智光秀は・・・信長の目付けが殺されたことを知り・・・追い詰められる。
「敵は本能寺にあり」と叫ばずにはいられない状況に追い込まれたのである。
炎に包まれた本能寺から・・・黒影は静かに身を引いた。
魔性のものをこれ以上、追い続けることは死を意味すると悟ったのである。
黒影は京を脱出して・・・摂津国で白影に合流する。
白影は魔性のものを真田の忍びと看破した。
「それは・・・おそろしきくのいちよ・・・」
「やはり・・・光秀殿ははめられたのか・・・」
「ともかく・・・赤影に知らせねばなるまい・・・」
赤影は・・・播磨、備前、備中を走破する。
堺で伊賀者の通報を受けた徳川家康は「うん」とひと唸りすると忍び装束に着替えた。
情報をもたらした石川五右衛門は道案内を請け負う。
家康はこの日のために伊賀に服部半蔵影の軍団を忍ばせている。
「伊賀までたどり着けば・・・脈はある・・・TENGAも夢ではないだに・・・」
家康と四天王は忍び装束で堺を突破する。
備中の陣中・・・黒田官兵衛は赤影から報告を受けた。
官兵衛の頭脳に「好機到来」の合図が鳴り響く。
「皆のもの・・・結界を張れ・・・」
(好機到来だ)
「明智の忍びを一人も通すな・・・毛利をつんぼ桟敷に置くのだ・・・」
(好機到来だ)
「清水に腹を切らせ・・・その替わりに国を返す・・・毛利にとって好条件だ・・・」
(好機到来だ)
「秀吉様・・・」
(好機到来だ)
「好機到来ですぞ・・・」
「・・・」
秀吉は官兵衛の言葉ですべてを悟る。
最大のピンチは最大のチャンスなのである。
陰暦六月五日の朝・・・備中備前国境には明智忍びの死骸が積み重なっている。
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