お饅頭になさいますか、お姉さんになさいますか(宮武美桜)
ニュース・キャスターが「停電でクーラーが使えないので扇風機などで暑さをしのいでください」と言ったという噂があるが・・・電池式のことなのか。
などと・・・つまらないツッコミをしたくなるくらい・・・今夜は蒸すのである。うだるような暑さだ。
関東ローカルでは「のだめカンタービレ」が再放送中なのだが・・・ぼぎゃーんと言いたい気分である。
峰(瑛太)や清良(水川あさみ)も懐かしいが・・・なんといっても真澄ちゃん(小出恵介)が「きーっ」と言っていて時の流れを感じるのだった。
木曜八時は時代劇対決になっているわけだが・・・。
「信長のシェフ」 ・・・・・・・・・*9.7%↘*6.1%
「吉原裏同心」*8.3%↘*8.2%↗11.1%↘*9.9%
結構、いい勝負をしているのだった。
「軍師官兵衛」では死んだ信長様が「信長のシェフ」では生きている・・・でも本当はとっくに死んでいるのが時代劇の醍醐味である。
夏休みなので時代劇にはまる小中学生が増えるといいと思うよ。
で、『吉原裏同心・第5回』(NHK総合20140724PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・佐藤峰世を見た。大奥が男子禁制の場なら、吉原は女子禁制の場である。なにしろ、吉原の女には「金」がかかっており、自由に出入りされては都合が悪い。しかし、遊女以外の女性が出入りできないのは不便なので「吉原遊郭」に入るための女性専用の切手(通行手形)がある。一般女性は入場の際に受け取り、退場の際に返すわけである。しかし、地獄というものは入るのは比較的たやすいものである。大人の目をくぐりぬけて少女が一人・・・大金のかかった薄墨太夫(野々すみ花)の宴席に紛れ込むのだった。
少女の名はおけい(宮武美桜)・・・薄汚い田舎娘だが器量よしだった。
「おら・・・遊女になりてえ」
おけいの申し出になにごとかを感じた薄墨太夫は吉原裏同心の神守幹次郎(小出恵介)を呼びだす。
おけいは八王子宿の桶職人の娘だが・・・父親が博打で借金を作り、身売り話が持ち上がったので先手を打って吉原にやってきたらしい。
つまり・・・親に売られるより・・・自分から進んで遊女になった方がましだという健気な娘だったのである。
事情を聞いた幹次郎の駆け落ち相手の汀女(貫地谷しほり)は自分の過去を思い出す。
汀女もまた父親の借金によって身売り同然で嫁に出されたのである。
汀女はおけいを不憫に思い・・・しばらく面倒を見る決意をするのだった。
しかし、翌日、おけいの父親の谷平(柳沢慎吾)が吉原に現れる。
「娘を売るとは何事だ」としかりつける幹次郎。
だが、谷平は身売りの話は確かにあったが・・・谷平にその気はなく、借金は働いて返せるので・・・おけいを吉原に売ったりはしないと言う。つまり、すべてはおけいの早合点だったのだ。
「もう、博打はやめるのだな」
「へえ」
安堵した幹次郎は父娘を一泊させるのだった。
その頃・・・吉原で足抜けを試みた遊女の吉野(小倉百代)が捕縛されていた。
吉原に娘を売った金を持ったまま父親が行方不明になったと吉野は足抜けの理由を語る。
番方の仙右衛門(山内圭哉)にその話を聞いた医者の柴田相庵(林隆三)は「同じような話を聞いた・・・」と言う。
吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)が調べると確かに二人の遊女の父親が金を受けとった後で行方知れずになっていた。
件の二人の遊女が府中宿、日野宿と甲州街道沿いの出身で・・・同じ女衒のあつかいだったことから・・・悪事の匂いをかぎ取る四郎兵衛だった。
「女衒」は女を衒(ひけらか)す職業である。つまり、人身売買のブローカーであった。金に困った家に器量よしの女があれば吉原に売りこみをかけるわけである。そして手数料を受け取るわけだが・・・時には悪辣な罠を仕掛けるものもあった。
甲州街道沿いに縄張りを持つ女衒の庄助(冨家規政)に悪い噂があると知り、四郎兵衛は探索を命じる・・・。
その頃、江戸の知りあいに挨拶に行くと言って出掛けた谷平はあろうことか庄助にあっていた。
「娘は見つかったのかい」
「おかげさまで・・・」
「じゃ・・・高く売るぜ」
「いえ・・・金の工面はつきましたので・・・その話はなかったことに・・・」
「そいつはよかった・・・どうだい・・・せっかく江戸まで来たんだ・・・少し遊んで行くかい」
庄助が案内するのは博打場だった。
ギャンブル依存症が簡単には治らないのは今も昔も同じである。
たちまち・・・熱くなって仕組まれた八百長賭博で十五両の借金を作る谷平。
その一部始終を幹次郎と仙右衛門は監視していた。
飛び出そうとする幹次郎を押さえる仙右衛門。
「なぜ・・・とめる・・・」
「今、出たんじゃ・・・殺しの証拠がありません」
四郎兵衛は谷平・おけい父娘を囮にすることを告げる。
「しかし・・・それでは嘘とはいえ・・・おけいは父親に一度は売られることになる」
悩む幹次郎に汀女が告げる。
「おけいちゃんは・・・強い子だから・・・大丈夫よ」
汀女の純潔が野卑な夫・藤村惣五郎(皆川猿時)に汚される前に救い出すことが出来なかった幹次郎は従う他ないのだった。
帰って来た谷平は娘に頭を下げる。
「こんな父親ですまねえ・・・お前を吉原に売ることになっちまった」
「・・・いいよ・・・わかったよ」
おけいは天使のように大人の事情を受け入れるのだった。
もちろん・・・子供だからである。
おけいはニ十五両で売れた。
金を受け取った谷平は賭場に借金を払いに行く。
すると庄助は正体を現す。
「おめえの命をいただくから・・・金にはもう用がねえだろう」
「なんだって・・・」
そこへ・・・幹次郎がやってきて薩摩示現流の達人で眼志流居合術も嗜む腕前を披露するのだった。
今回は相手が弱すぎて余裕の勝負だった。
晴れて帰郷することになった谷平父娘。
「本当にすまねえ」
「もういいよ・・・はやく帰ろう・・・おら、おっ母にあいてえ」
子供なのだった。
おけいは吉原番所に切手を返した。
夕闇せまる江戸の町・・・。
「もうひとついかが・・・」と幹次郎に饅頭をすすめる汀女。
「姉様・・・」とその手をそっと握る幹次郎だった・・・。
割り切れぬ思いを抱え・・・それでも人々は生きていくのである。
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