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2014年7月17日 (木)

謝罪できない若者たちにやぶれかぶれのフライング・ボディアタックを(瑛太)

痛烈な痛みを伴うドラマである。

その責任を担うのはおそらく脚本だろう。

ものすごく・・・汎時代的な主題をまとめあげるには・・・少し・・・若いんだな。

あくまで・・・1966年に「原案」があるために・・・そこに記された言語が・・・ものすごい波となって脚本家を翻弄しているのである。

そのために・・・まったく無関係であるはずの「橋田壽賀子」的ニュアンスが生じてしまったりしている。

まあ・・・そういう「事故」が一同爆笑を誘うわけだが・・・一般のお茶の間は大体、戸惑う他ないのではないかと危惧するわけである。

どうしていいのかわからない倫理観・・・知性そのものの複雑化・・・景気のことしか頭にない国民性・・・そういう現代性が抜けおちたまま・・・火だるまになっていくスターたち。

まあ・・・それでも・・・これだけの人が集まっているのでそれなりに燃え尽きていくのだろう。

盆の送り火の炎のように・・・どこまでもわびしく・・・。

それはそれで一遍の詩だな・・・。

で、『若者ち2014・第2回』(フジテレビ20140716PM10~)脚本・武藤将吾、演出・中江功を見た。ひとつ屋根の下で暮らす兄弟姉妹たちなので当然のように野島伸司が混入してくるのだが・・・今回は演出家が「ひとつ屋根の下」の人だ。しかし、あんちゃんは・・・「原案」の長男・佐藤太郎(田中邦衛)から「北の国から」の五郎(田中邦衛)までの半世紀近い歳月を背負ったために「青大将」的ですらある。もう・・・わけがわからない人格を演じる佐藤旭(妻夫木聡)なのだった。

そこに・・・前科者の次男・暁(瑛太)が出所して帰ってくるのだった。

旭にとっては弟のサトル。

ひかり(満島ひかり)、ハルこと陽(柄本佑)、タダシこと旦(野村周平)にとっては「サトニイ」である。

「なんで帰ってくるんだよ」

「帰って来ちゃいけないのか」

「犯罪者がぬけぬけと」

「なんだよ・・・犯罪者って・・・刑期をつとめて出所した前科者を差別するのか」

「するだろう」

「罪をつぐなっているのに・・・」

「お前のおかげで家族はすごくつらかったんだぞ」

「そうなのか」

「ひとつ屋根の下だって小雪のせいでいろいろと大変なことになってるんだよ」

「再放送が中止になったりな」

「サトニイのせいでいじめられてタダシは高校中退したし」

「そんなことでいじめるやつらが悪いんじゃないか」

「ケーズデンキの会長だって言ってるだろう・・・犯罪者は家族がいじめられることまで考えて犯罪しろって」

「誰だよそれ・・・」

「杉浦直樹だよ」

「手紙じゃねえか」

「とにかく・・・家族のことを考えてくれって・・・言いたいわけで」

「家族なら冷たい世間の目にさらされる前科者を暖かく迎えろよ」

「にぎやかでいいわねえ」

旭の子供を宿し、結婚するらしい梓(蒼井優)は兄弟喧嘩のある家族を羨むのだった。

「私は一人っ子の方がいいな・・・兄弟多いのって貧乏くさいでしょ」

「馬鹿ね・・・一人っ子だって貧乏は貧乏よ・・・親が借金残せば、一人で返済よ」

「そうかあ・・・」

はてしなく・・・かみ合わない嘘っぽいセリフが続いて行く。

・・・ほぼお前の妄想じゃないか。

とてもじゃないが・・・再現性高くにはなりません。

「ともかく、みんなで言いたいことを言うのが臨場感を高めることになると勘違いして脚本をこしらえているんじゃないか。だから役者もそれなりの演技をさせていただくしかないことになるよ」

「無理してえなりかずき風にこしらえなくてもいいんだよ」

前回、ひきの手として・・・サトニイは殺人者風に描かれているのだが・・・実際には屋代多香子(長澤まさみ)の老いた母(根岸季衣)から三千万円を騙し取った詐偽行為が・・・サトニイの犯罪らしい。

屋代多香子の母親は四十歳で多香子を出産しており、多香子の年齢設定が二十七歳なので・・・生きていれば六十七歳である。

しかし、多香子の母はサトニイが獄中にいる間に病死したらしい。

このあたりの事情が曖昧模糊であり・・・サトニイが多香子の母からどうやって三千万円をだまし取れたのかも・・・判然としない。

多香子の母はサトニイを息子のように思ったと「美化」するわけだが・・・ひょっとしたら・・・婆が若いイケメンにおいらくの恋をしただけじゃないのか。

高年齢出産あふれる現代に・・・「母がおばあちゃんみたいで恥ずかしかった」と言わされる長澤まさみが銃殺されている感じである。

ともかく・・・「オレオレ詐偽」なんて・・・家族の絆が失われている証拠じゃないかとわかったようなことを言わされる瑛太も絞首刑されているようだ。

脚本から「認知症」という概念が脱落しているんだなあ。

まあ・・・一種の若書きなんだよな。はっきり稚拙と言え。

結局、妊娠した詐偽だった永原香澄(橋本愛)が「謝罪なんて要求されてするものじゃない」などと盗人猛々しいことを言って・・・いかにも良いこと言った風に描かれるのも・・・。

まあ、いいじゃないか。

それにしても・・・妊娠の責任から逃れるためにものすごく底の浅そうな兄のハルに付き添って談判の席に着くタダシのかっこ悪さはもはや異常のレベルだよな。

イノッチでさえ・・・「冴えてる」って言われる帝国風土からは想像外の世界を生きているのだ。

大変だよねえ。

でも、中国語が話せるらしいぞ。

そうなんだ。

ハルには「祭りの準備」のインテリゲンチャの匂いがするね。

とてつもなく恥ずかしいよね。

やがて・・・実子よりも・・・サトニイを我が子のように感じていたという「告白」が遺言ビデオとなって・・・提示される。

多香子や多香子の兄たちはどこまでも通俗的な「金の亡者」なのだった。

まるで・・・サトニイを詐偽で訴えたことが犯罪であるかのようなムードである。

これは・・・気持ち悪いな。

「金より大切なものがあるだろう」というなんの説得力もないセリフを叫ぶロトぶきくんは大惨殺である。

突然・・・幼き日の母を想起して涙にくれる多香子の唐突感も半端ないよな。

「モテキ」でおっぱいもませて築きあげたステータスがもろくも崩落しそうな勢いがあったよねえ。

とにかく・・・ここからは根岸季衣の演じる「優しいニッポンの母さん」のイメージビデオで押しまくるのだった。

すげえ・・・。

自主制作映画なのか・・・。

NHKのアレで・・・「母」がテーマの時に佳作に選ばれそうな・・・いや、選ばれないか。

まあ・・・とにかく・・・歴史に残るよな・・・黒い方で。

すごく・・・見逃せないドラマになったよねえ。

どこまで落ちていくのか想像もつかないよね。

結局、ドラマは脚本なんだぜ。

アンチテーゼってやはり高度な技術を要求するんだねえ。

エロも演出家チェンジで完全に蒸発したしな。

とにかく、そこに愛はないな。

舌なめずりをするな、舌舐めずりを・・・。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

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コメント

こんにちは~。
分かりやすっ!
好意的に見ようと頑張って混乱した初回からの、
2話はながら見しながらでも
自主制作映画のシーンにはジーンと来まして、
これは瑛太とまさみちゃんの演技にヤラれたんですか?
ベタな親子ものに弱いと思ってたら、
認知症疑惑に冷めたりして~(ノ∇≦*)
毎度冷静なレビューに感動します。
小雪のせいだったり、
ケーズ電気会長やNHKのアレや何やかんや…
繋がって行くの大好き~♪
毎度見事なレビューに感動しま…
あ、さっき言ったか。
さっき聞いたよ。
って言ってもムダだよ。
認知症コワイコワイ。
他人事じゃナイナイ。

今日の初回ドラマも楽しみです。
追いつけない初回が溜まって行きますけど…
今期は1本あれば良し♪
ってな感じです(笑)
キッドさんのレビューで楽しませて貰うずら。
夏もよろしくお願いしまーす

投稿: mana | 2014年7月17日 (木) 10時48分

|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||

さすがはmana様、悪魔の暴走を見逃さないのですな。
しかし、上から目線で刺々しいキャラに
染まりやすいのでご注意くだされませ。
人が苦心惨憺しているところをアレコレ言うのが
許されるのは地獄だけでございまする。

まあ、しかし、ひどいですからな~。

長澤まさみと根岸季衣の
女優魂があれば・・・
母を失った娘の悲しみを
スケッチすることは
赤子の手をひねるようなもの・・・
なのでございましょう。

それはそれとして・・・。

弟を信じる兄と
兄に甘える弟の擬似親子関係なんかも悪くない。
それなのに・・・
なんだか胸に沁みないのは・・・
脚本がもう一つ整理されてないためだと考えられます。

今回の事案がすっきりしないうちに
「あのことを許したわけじゃない」とか
弟が言い出す・・・。
そういう「ひき」にうんざりしますねえ。

描こうとしている「よき情感」と
姑息な「テクニック」がミスマッチなのですな。

バカな弟をだませても
こずるい俺は騙せない的な展開にも
胸やけいたしますし・・・。

このように・・・誰もが悪魔の毒気に
感化されますからなあ・・・。

「オレオレ詐偽」の基本は
人の弱みにつけこむこと・・・。
それを「善」と言い出したら悪魔の立場がありませんからな。

「認知症の人」に
「絆」がどうたらこうたら・・・通じますかしらんと言うことですもの・・・。

東京の「お盆」も終わり
ほっと一息の今日この頃・・・。
夏ドラマとはいえ・・・それなりに秀作もございますので
レビュー・スケジュールがたてこんでまいりました。
谷間をどうするかに頭を悩ませつつ
mana様にとって素晴らしい夏となるように
お祈り申し上げます。

投稿: キッド | 2014年7月18日 (金) 00時51分

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