恋の花など咲くものか・・・恋は胸に刺さった薔薇の棘(橋本愛)
自筆というものが衰退し筆跡鑑定が効力を失う。
恐ろしいことである。
タイピングされた文章の真贋を判定することは・・・時代の要求の一つである。
そこで計量文献学が注目される。
だが・・・その実態は多くの場合、不可解なものとなる。
なぜならば・・・人間の脳における情報処理のアルゴリズムはまだ解明されていないのである。
文章は・・・脳活動の表現結果である。
人間が言語を活用した結果、膨大な情報が生まれ、伝達された。
その情報の発信者を特定したいと・・・人間は見果てぬ夢を見るのである。
それはつきつめれば・・・一つの言葉に集約されるだろう。
私を愛してくれるのは誰ですか?
で、『ハードナッツ! 〜数学girlの恋する事件簿〜・第4回』(NHK総合20140715PM10~)脚本・蒔田光治、演出・橋本光二郎を見た。平凡と非凡の境界を見極めることは難しい。しかし、常人には思いも及ばぬものを生みだすものには運命の影がさすという考え方がある。たとえば核エネルギーについての成果というものがある。目に見えぬ原理が大量破壊兵器を生みだす時・・・その原理に人々は恐怖する。その原理の提案者に非常の人を感じる。しかし・・・それは個人の業績に還元できるとは言えない。運命が情報を展開して行ったと考えることも可能なのである。
一握りの天才が・・・世界を変革していく。
それを否定したいと願うのもまた・・・天才ではないものの宿命なのである。
たとえば・・・「ロミオとジュリエット」の作者・ウィリアム・シェイクスピアは常に実在を疑われてきた。
16世紀から17世紀にかけて大衆を熱狂させた劇作家は・・・その栄光ゆえに・・・妬まれ続けてきたのである。
栄光なき人々は・・・「それほどの栄光が一人占めされること」が我慢ならないのである。
だから・・・人々は時々、「シェイクスピアなんて幻さ」と叫ぶのだった。
このドラマの架空の登場人物である難波くるみ(橋本愛)は天才的ヒロインとして造形されている。
もちろん・・・女子大生に過ぎないくるみにはさしたる栄光はない。
ただし・・・とてつもない情報の発信者になるかもしれない匂いを放つわけである。
お茶の間にそれを伝える手段が・・・奇人・変人としてのくるみの側面なのである。
当然、パートナーである警視庁初音署(フィクション)の伴田竜彦刑事(高良健吾)は凡人の代表を務めるわけである。
伴田刑事は「文章が計量されて解析されてしまうこと」を理解できないし、それが可能であると主張するくるみを否定する。
しかし・・・実際にくるみが「計量文献学によって得た結果」は利用するのである。
このあたりが平凡と非凡の現実的側面を強烈に穿っているわけである。
「原爆の原理」を知らなくても広島や長崎に「原爆を投下すること」は可能なんだな。
今回はグリコ森永事件を模倣した「浄水器を利用した不特定多数殺害未遂事件」が発生する。
その毒牙は・・・どうやら伴田刑事に恋をして・・・計量文献学を利用した完璧な恋文作成を模索するくるみに及ぶのである。
「飲んだら死ぬで」の水を飲んでしまい・・・遠ざかる意識の中で伴田刑事に通報するくるみ・・・。
しかし・・・それは単なる寝不足だった。
やがて・・・事件はサエキ浄水社長・佐伯隆弘(目黒祐樹)の誘拐事件へと発展する。
そして・・・身代金受け渡しの失敗と・・・犯人の自覚で幕を閉じるのだった。
その過程で・・・いくつかの文書が登場する。
①企業恐喝の脅迫状
②社長誘拐の脅迫状
③匿名者による犯人の暴露文書
④犯人の遺書
事件の流れから・・・①、②、④が・・・同一人物の文書であるはずが・・・くるみが計量文献学的解析を行った結果・・・②、③、④が同じカテゴリーに属することが判明する。
そこで・・・浮上する佐伯社長の狂言説。
真偽を確かめるために社長室に潜入したくるみは・・・反社会的組織とつながっていた佐伯社長に拘束され・・・口封じのために殺害されるのだった。
しかし・・・それでは物語が終るので・・・くるみは暗号で・・・伴田刑事に自分の居場所を伝える。
危機一髪・・・くるみは伴田刑事に救助されるが・・・伴田刑事には暗号は解けなかったのである。
佐伯社長の敵対組織と通じていた伴田刑事は・・・佐伯社長を監視下に置いていたのである。
「女子大生誘拐の現場」は最初から押さえられていたのだった。
非凡な女子大生のくるみが恋した男は・・・普通の刑事ではなかった。
一話完結でありながら・・・闇を宿した流れが渦巻き始めるのだった。
そうして・・・くるみ、かわいいよくるみの物語は続くのである。
キッドは「とにかく」という言葉をかなりの頻度で使う文章癖を持っているが・・・今回はそれを意識して使用しなかったので・・・すごく疲れたことを報告しておく。
けして計量しないでください。
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