さよなら、右京さん(林隆三)吉原裏同心(小出恵介)
1971年の金曜日といえば「天下御免」である。そこで主人公の平賀源内(山口崇)やヒロインの紅(中野良子)がピンチになると頼るのがどこかもの憂げな剣の達人・・・右京さんこと小野右京之介(林隆三)である。
そのダンディーな魅力に痺れるわけである。
そして・・・木曜日の時代劇「吉原裏同心」で医師・柴田相庵を演じる故・林隆三・・・。
これが見収めなんですか・・・右京さん・・・。
それにしても・・・あの「天下御免」が保存されていないなんて・・・なんて時代だったのか・・・。
で、『吉原裏同心・第1~2回』(NHK総合20140626PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・西谷真一を見た。大ベストセラー作家による大ベストセラーが原作である。相当な時代劇好きでもうならせる親父殺し的な面白さである。ある意味、反則に近いな。ここの処、不義密通の話が目につく・・・。まず、「真夏の方程式」で風吹ジュンが妻帯者と不倫の果てに出産である。それさえなければ悲劇は起きなかった。続いて「55歳からのハローライフ」の第二話では風吹ジュンが愛犬家によろめきかかっていた。風吹ジュンばかりじゃないか。昨日は栗山千明も夫と息子を捨ててたし。まあ、基本、不義密通はする方が悪いのだが、された方も格好悪いわけである。その格好悪さをデフォルメしていくとまるで不義密通が正義みたいなことになっていく。そして、かけおちカップル万歳の成立なのだった。一方で現在では売春そのものが悪であるから遊女には正義はないわけであるが・・・人身売買が当たり前の江戸時代・・・吉原遊郭が舞台となれば・・・そこには遊女の悲哀が成立する。かけおちカップルが迷い込む吉原迷宮・・・時は田沼意次健在の天明年間・・・これで面白くないわけないのである。
藤村惣五郎(皆川猿時)に父親が借金したために人身御供同然で嫁いだ汀女(貫地谷しほり)・・・。下級武士の神守幹次郎(小出恵介) は幼馴染の汀女の苦境を見かねて家を捨て賭け落ちするのだった。
女房を寝盗られた惣五郎は当然の結果として執拗に不義密通の二人を追うのだった。
故郷・豊後竹田の岡藩を脱出した二人は全国津々浦々を逃げ回り、時々追手を返り討ちにしながらついに江戸にたどり着く。
幹次郎は薩摩示現流の達人で眼志流居合術も嗜む剣豪である。
惣五郎は腕の立つ武芸者を雇うと同時に・・・二人を釣る餌として汀女の実弟・信一郎(上遠野太洸)を連れ出すのだった。
江戸に出た信一郎は吉原で・・・薄倖の切見世女郎(安売りの遊女)・初音(水野絵梨奈)と深い仲になってしまう。
初音を演じる水野絵梨奈がこれ以上なく薄倖なのだった。
薄倖だよ、水野絵梨奈、薄倖だよである。
この薄倖の遊女を前にして足抜きを企てるしかない信一郎・・・。
噂を聞きつけた幹次郎と汀女が駆けつけるが・・・信一郎と初音は吉原の追手から逃れようとして惣五郎の手下に斬殺されてしまうのだった。
薄倖すぎるぞ・・・。
怒りに燃えた幹次郎は峰打ちをやめ・・・信一郎の仇を討つ。
しかし、逃げ足の速い惣五郎は討ちもらすのだった。
あくまで格好悪い不義密通された人なのだった。
幹次郎の腕前を目にした吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)は吉原において発生する刃傷沙汰に対処する裏同心の仕事をもちかける・・・。
薄倖の遊女たちを薄倖にしている吉原の手伝いはできないと・・・断る幹次郎。
しかし・・・掟に逆らって信一郎と初音を丁重に葬ってくれた四郎兵衛に恩義を感じる。
一方、汀女は四郎兵衛の娘・玉藻(京野ことみ)から遊女たちの手習いの師匠になってほしいと懇願され引き受ける。
幹次郎もまた・・・薄倖な遊女をさらに不幸に貶める邪悪なものの存在に気付き・・・考えを改めるのである。
何者かに襲われた吉原の若い衆を助ける幹次郎。
吉原近くに住む医者の柴田相庵(林隆三)は下手人が小具足術の使い手だと指摘する。
幹次郎は江戸の小具足術の道場の探索を開始。
やがて・・・妹を身売りさせないために・・・火事場泥棒の手先となった遊女・梅園(奥菜恵)の存在に気がつく幹次郎と汀女・・・。
「おやめなさい・・・火つけは大罪・・・呪怨の元ですよ」
「こうするしかないのです」
しかし・・・幹次郎は黒幕の火事場泥棒・藤兵衛(山口馬木也)を罠にかける。
「助けると約束した梅園の妹をどうするつもりだ」
「高く売り飛ばすのさ」
幹次郎の剣は燃えるのだった。
うわあああ・・・面白すぎるのである。
この後も薄倖な遊女たちが続々と登場するのだった。
また・・・遊女たちの中に夕霧(近野成美・・・五代目黒井ミサ)が混じっていたりします。
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