和音のように従順に不協和音のように刺々しく(中越典子)
またしても夜の更新直前更新である。
スケジュールがまったくタイトな状態から脱しない。
そして・・・追い詰められると弱いタイプなのである。
妄想が膨らみ過ぎて収拾がつかないのである。
そういう時は操作ミスもしやすく・・・ますます無駄な時間を費やしてしまう。
もちつけっ・・・と言って杵と臼を用意して・・・違うだろう。
落ちつけ・・・。
なんというか母親が認知症を発症し、父親の脳腫瘍を告知されたような気分だ。
どんな気分だよ。
いつか・・・認知症になるかもしれないし、いつか脳腫瘍になるかもしれないという気持ちだ。
まあ・・・そんな心配しても無駄だよ。
録画した「ゴジラ」を繰り返し見なければいいだけだろうが。
それを言っちゃあおしまいだよ。
で、『ハードナッツ! 〜数学girlの恋する事件簿〜・第3回』(NHK総合20140708PM10~)脚本・山浦雅大、演出・橋本光二郎を見た。この枠は再放送があるわけだが・・・呪われたように「お休み」になっている。うかつに見逃せないよな。なんだかんだ・・・夏ドラマが始っている中で・・・(日)大河(火)ハードナッツ(金)家族狩りが確定してしまっているわけである。(月)のペテロもなかなかに捨てがたい・・・しかし、大河を除けばミステリばかりである。まあ、これはオリジナルだが・・・他は一応、ミステリ風文芸、文芸風ミステリで差別化できるよね。それにしても(月)はアレがあるしな。ペテロは余るかな・・・。残り四枠・・・場合によっては・・・谷間なしか・・・まあ、ハードナッツは早めに終わるしな・・・とにかくまきたいな。まきたいねえ。残り三時間とか・・・精神的によくないね。
なんとなく、豪華なケータイ刑事の匂いがするハードナッツである。今回は特にその匂いがする。
東都大学(フィクション)数学科の学生・難波くるみ(橋本愛)は東都大学よりもバカでイチャイチャしている学生が多いケーオーじゃなくて京南大学(フィクション)の小板橋教授(斉木しげる)に招かれ、「講義中に居眠りをする学生」が覚醒するような「不快なメロディー」の構築を依頼される。
教授同士の交流でくるみは「天才的だが変人」と噂されているらしい。
受講中にイチャイチャしている学生たちに反感を抱いたくるみはただちに依頼を引き受けるのだった。
数学的アプローチとして背理法で「不快なメロディー」を導き出そうとしたくるみは「不快ではないメロディー」によって熟睡につぐ熟睡を重ねる。
そのために・・・締め切り日を守れなかったくるみは再び、京南大学に向かうのだった。
「あと、五日で完成する予定です」
独特のリズムで生きるくるみの存在感に圧倒される小板橋だった。
小板橋はピタゴラス研究の第一人者で・・・音楽と数学の融合を講義に導入している。
「次は・・・ピタゴラスの音楽について・・・アプローチするんだよ」
そのために・・・ピアノが調律されている・・・というのが今回のキーポイントである。
絶対音感を持っているとこの時点で謎は解けてしまうわけである。
ピタゴラスの音律は振周波数比2:1の音程動数の比率が2:3である純正5度音程を積み重ねていくもので現代の西洋音楽における周波数比2:1の音程とはずれるからである。ある意味、ホンキー・トンク(調子はずれ)ピアノになっているのだった。
「ものすごく初歩的で猿でも理解できるほどわかりやすかった」と小板橋の講義を忌憚なく評したくるみは帰途に着く。
しかし・・・東都大学文学部でチアリーディングサークルに所属している浅尾奈津子(岡野真也)に呼び止められる。
東都大学野球部が遠征に来ているらしい・・・柚子も来ているのか・・・。
合コンの誘いを受けたくるみは荷物を小板橋の教授室に置き忘れたことに気がつき、奈津子とともに引き返すのだった。
廊下に流れるピアノのメロディー。
しかし、部屋の中から応答はない。
「いないのかな」
「いるんじゃないの・・・ピアノの音がしたし」
そして・・・床に転がった楽器を拾い・・・鈍器で撲殺された小板橋教授を発見するくるみだった。
奈津子は悲鳴を上げて逃げ出し、隣の部屋から駆けつけた准教授の堤彩葉(中越典子)に犯人と誤解される凶器を持ったくるみだった。
通報を受け・・・捜査にやってきたのは・・・警視庁初音署(フィクション)の伴田竜彦刑事(高良健吾)だった。書店員ミチルには優しいがくるみには厳しい・・・おいっ・・・伴田刑事は協力を申して出て捜査内容を立ち聞きするくるみに「学生は勉強していなさい」と事件に首をつっこまないよう釘をさす。
「はい」と言いつつ、心から血を流すくるみだった。
容疑者は三人浮上する。
呪われた病院から来た・・・おいっ・・・京南大学助手の坂下(大和田健介)は被害者から「無能呼ばわり」されていたらしい。
教授の学術書を出版している出版社の社員・三条文也(小松利昌)もトラブルを抱えていたらしい。
そして・・・堤准教授・・・。しかし、堤教授は最後に聴こえていたピアノのメロディーが一種のダイイング・メッセージだったのではないかと言い出す。
捜査会議で・・・メロディーを持ちだした伴田刑事。しかし、バカタレ管理官・小林(勝村政信)とチンピラ刑事・高垣(波岡一喜)は分析を音楽関係者に依頼する。
(数学者の残したメロディーなんだから・・・数学者でないと解けない)と直感する伴田刑事。
結局・・・ダイイング・メロディーをくるみにたくす。
くるみは心に刺さったクギを抜きながら・・・激しく愛を告白するのだった。
「学生は事件にかかわらず・・・研究しろと言われたので・・・大人しく研究しているわけですよ・・・研究しろとあなたがおっしゃったので研究している私なんですよ」
くるみは従順な女を強調して伴田の心を射止めようとしているのだが、単に恩着せがましい感じになっているのだった。
伴田とは「単なる知りあい以上」になりたいくるみなのである。
乙女なんだなあ。
何故か、協力的な堤准教授によって・・・メロディーに隠された暗号を解読し・・・283・・・ふみや・・・文也に到達するくるみだった。
しかし・・・三条文也はすでに投身自殺を図って死亡していた。
事件は解決したかに見えたが・・・東都大学法学部教授・権堂(大河内浩)のアドバイスがくるみに重くのしかかる。
「音楽を分析するな・・・音楽は感じろ」
今日は今までの どんな時より 素晴らしい
赤い糸でむすばれてく 光の輪のなかへ
伴田刑事に捧げる「Butterfly」のメロディーは悲しいほどにずれていく・・・。
そして・・・くるみは思い出す・・・ピタゴラスの音律が・・・現代の音律で再現されるはずがないことを・・・。
ピアニストでもある・・・堤准教授のリサイタル会場。
くるみは調律師に頼み・・・ピタゴラスの音律を再現してもらう。
絶対音感の持ち主である堤准教授はたちまち・・・音程の狂いに気がつく。
「おかしいですね」
「おかしいのよ」
「だって・・・あの日・・・教授室にあったピアノと同じ音程なんですよ・・・あの日・・・その音を聞いたはずのあなたが・・・何故、それに気がつかなかったんですか」
「あらら・・・」
「語りますよね」
「語るわよ・・・語るついでに一曲弾くわよ」
奏でられるピアノの音色は・・・悲しく狂う。
「ピタゴラスは・・・ピタゴラス教の教祖だったという説がある・・・独裁的で・・・高圧的な男だったとも・・・でもそれは彼が信じる神がヘカテ・・・ギリシャ神話の主神ゼウスの嫉妬深い妻・ヘラだったことによるのかもしれない。紀元前の伝説の真偽なんてわかるわけないわよね。とにかく・・・小板橋はピタゴラスの悪い側面をすべて継承したような男だった。傲慢で・・・他人の手柄を平気で横取りするような・・・ピタゴラスは無理数を発見したヒッパソスを口封じのために殺害したとも言われている。小板橋は私の研究の成果を横取りした上に私が彼の元から巣立つことを妨害したの・・・このままでは・・・私の研究は殺されてしまう・・・そう感じた時・・・衝動的に私は彼を殺し・・・その罪を盗作の共犯者である三条にかぶせることにした」
「そ・・・それはもはや・・・衝動とは呼べないのでは・・・」とたじろく伴田刑事。
「あなたの大いなる振動に私は共鳴しました・・・」
くるみは殺人者の心情に惜しみない拍手を贈るのだった。
「そうね・・・ヒッパソスは音が響くことにとても関心を持っていたというものね」
二人の数学に生きる女たちの会話を茫然と聞く伴田刑事であった。
伴田刑事とくるみの間には暗くて深い川があるのだ・・・。
まあ・・・どんな川でも泳いで渡れるからな。
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