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2014年7月19日 (土)

世界に蝕まれるあなた、世界を蝕むあなた(山口紗弥加)

さあ、どんどんやりきれなくなってきました。

まともな人間が一人もいないという世界のありのままを描写したら・・・こうなるよね。

家人と「老人ホーム」の実態について予想したわけだが・・・。

「実態なんかないよ・・・集金が済んだら即、店じまいでしょう」

「しかし・・・一応、顧客を納得させる事業形態が必要なんじゃないか」

「だって、基本、詐偽でしょう・・・足がついたらおしまいなんだから、バカな獲物がひっかかったらただちに解散しないと・・・」

「さすがにそんなに迂闊な獲物はいないんじゃないか」

「放棄したいほどの家族が一人いたら・・・まともな神経じゃいられない・・・そういう話でしょう」

そういう話だった。

で、『家族狩り・第3回』(TBSテレビ20140717PM10~)原作・天童荒太、脚本・大石静、演出・山本剛義を見た。すぐそこにある危機を人はほとんど回避できない。通学路に飛び込んでくる自動車、教室に飛び込んでくる狂人、航路に飛び込んでくる地対空ミサイル・・・。しかし、容赦ない現実の狂気には統計的にはそうそう遭遇するものではない・・・とたかをくくるしか対処法はないのである。長命寺の桜もちが食べたくなって買いに行く途中、時々、ぴょんと飛びあがりながら意味不明なことをつぶやいている人が接近してきた時は道を変えるのが無難である。油断すると桜もちを食べそこなうからである。それどころかこの世の見収めになる場合もある。

そういう・・・危機感を常に持っている人から見れば・・・君子危うきに近寄りすぎ、うかつにもほどがある登場人物たちだが・・・まあ、フィクションでございます。

酒乱の父親・駒田幸一(岡田浩暉)は幼児虐待で逮捕され、職を失う。そのあげくに飲酒し、児童養護施設に乱入するのだった。

虐待された娘・駒田玲子(信太真妃)が施設の窓から見下ろす中、対応する児童ケアセンターの児童心理司・氷崎游子(松雪泰子)・・・。

「娘を返せ」

「娘のことを考えるなら・・・まともになりなさいよ」

「そんなの無理だ・・・俺は弱い人間なんだよ」

「世の中に強い人間なんていないのよ」と言いたい玲子だったが・・・とにかく、職務を遂行するのだった。

酒乱の父親から娘を保護することで給与を得ているのである。

父親の醜態を見ながら、父親を失うことに納得がいかない玲子は食を絶って・・・世界に反抗を試みる。

游子に唾を吐きかけようとした玲子だったが・・・脱水症状で唾が出ない。

「あんたも負け犬ね。あんたの父親も負け犬だし。口惜しかったら・・・食事をして唾を吐けるようになりなさい」

仕方なく、食事をする玲子だった。

もちろん、食べても負け犬である。

餓死して・・・游子の対応に問題があったと世間の非難を浴びせる勝ち方もある。

玲子が死ねば玲子の感じる世界は滅びるのだから大した差はないわけだが。

かっては人情味あふれた役人であった父親の清太郎(井上真樹夫)が認知症になって以来・・・この世の正義を疑い始めている玲子。

母親の民子(浅田美代子)は自己責任能力の欠如を露呈し、現実逃避に熱中する。

神も仏もない

神も仏もない

神も仏もない

両親が頼りにならないとはそういうことである。

強気の背景を失い・・・游子の理性は蝕まれている。

家を売って・・・夫を老人ホームに入れるという民子の主張に揺らぐ游子の信念。

いかにもブラックな老人ホームに対する警戒感も・・・過酷な現実から全速力で逃走しようとする母親に対する嫌悪感も・・・両親への依存心に拘泥された子供としての自分によって麻痺してしまうのだった。

民子は恐るべき行動力で家の売却を決め、ブラック老人ホームに一千万円を入金してしまう。

そんな馬鹿なと誰もが思うが・・・民子は少し気がおかしくなっているわけである。

游子はそれに気がつきながら・・・子供としてそれを認めたくないのである。

結果として・・・氷崎家は・・・家も一千万円も一瞬で失うことになるのだった。

「あんたのせいよ・・・あんたが強く反対しないから」

「なにもかも・・・お母さんが決めたことじない」

「お母さんはもう年寄りなんだよ・・・あんたがしっかりしなきゃダメじゃないか」

そんな馬鹿なと思う人は多いかもしれないが・・・年齢を重ねればそれが単なる現実だと言うことが分かるのである。

しかし・・・どうしようもなく親ではなくなった親の残骸から逃れるために家出する游子だった。

そうならないためには早急に親から自立し、無縁になっておくのが正しいのである。

それが嫌なら・・・物凄い経済力を獲得するかだ。

いや・・・あくまで一部の事例の話である。適当に仲良くして適当に寿命がきて適当にお別れできる場合もあります。

一方・・・のほほんとエッチなことはするが・・・なんらかの事情で家庭を持つことに嫌悪感があるらしい私立高校の美術教師・巣藤浚介(伊藤淳史)は妊娠したと称する同僚の清岡美歩(山口紗弥加)の求婚を避けて避けて避けまくる。当然、避妊もしておくべきだが、完全なる結婚がないように完全な避妊もないのだった。・・・いや、精巣除去すればいいんじゃね。

清岡美歩(山口紗弥加)もまた・・・不登校の生徒に対し「嫌悪感」を丸出しにするなど社会人としては不適切な言動を展開し、浚介のダメ人間ぶりを緩和するわけだが・・・ある意味、お似合いのカップルとも言える。

それにしても山口紗弥加はこの役をやるためにキャリアを積んできたのかと思わせるはまり役である・・・それで女優としていいのかどうかは別として。

英語教師に「てめえのおふくろとファックしな」と叫ぶ問題生徒・芳沢亜衣(中村ゆりか)に軽く接触しようとしたり、元教え子の電気屋・渓徳(北山宏光)と渓徳の歌舞伎狂いの妻について談笑したりとのほほんと生きる浚介は・・・妊娠させた相手の両親が乱入してくると、「お腹の子供については責任とって堕胎費用は出すが娘さんについては責任なんてとらない」と母体の健康なんて知ったこっちゃないよという態度で自分の家から脱走するのだった。

夜の街で恐ろしい偶然が・・・いい年して子供じみた家出をしてきた二人を邂逅させるのだった。

「元気ないじゃないですか」

「そういう夜もあるわよ」

「現実がくそだったら・・・そんな現実変えてやる・・・そういうあなたの方が好きだな」

「・・・」

軽い男の軽い言葉に乗せられて・・・不動産屋に向かう游子。

父親に恩義を感じていた不動産屋は・・・売却後に借用したいという游子の申し出を受諾してくれるのだった。

氷﨑家は首の皮一枚つながったのである。

地獄に仏だ

地獄に仏だ

地獄に仏だ

なんだか・・・自分がいいことをしたような気分で家路に着く軽い男。

しかし、地獄はそういう人間を容赦しないのだった。

路上で燃えあがるホームレス。

そして、歓声をあげる恐るべき若者たち。

そんな現実を前にして・・・なんの武装もせずに・・・相手を叱りつける浚介だった。

頭が悪いにもほどがあるのだった。

たちまち・・・恐るべき若者たちのターゲットとなった浚介は放火されてしまうのだった。

うわあ。

 

やめて。

 

熱いから。

連続一家心中事件の犯人を何故か游子と決めてかかるおかしな警視庁の刑事・馬見原光毅(遠藤憲一)は裏では反社会的組織とつながり、小銭を稼いでいる悪徳刑事だったらしい。

捜査中に知り合った冬島綾女(水野美紀)と研司(須田瑛斗)の母子と親密な関係となった悪徳刑事は・・・狂気に蝕まれた妻の佐和子(秋山菜津子)にたじろぎながら形ばかりの夫婦生活を続ける。

しかし・・・暴力団関係者の元・夫の油井善博(谷田歩)が出所後、行方不明となり、綾女母子に危機が迫るのではないかと危惧する。

しかし・・・油井は悪徳刑事の娘・真弓(篠田麻里子)の営む花屋に現れ、手伝いに来ていた佐和子に綾女宛ての花束を配達させる。

添えられたカードから・・・油井の接近を知った綾女は・・・悪徳刑事には通報せずに逃亡の準備を開始するのだった。

悪徳刑事は「声が聞きたくなった」などと綾女に探りを入れるが・・・危機感はまるでない。

しかし・・・油井の魔の手はすでに身辺に及んでいる。

「他人の女房に電話している場合かよ」

「なんだと・・・」

「お前が俺の家族を狩ったように・・・俺もお前の家族を狩ってやる」

あわてて帰宅した悪徳刑事はバスタブで血に染まる佐和子を発見するのだった。

その瞳に映るものは底知れぬ虚無・・・。

この世のささいな偽善を許さない無垢な地獄の業火がスタンバイを始めた模様・・・。

そして・・・連続一家心中事件に対応して中の下の私立高校では不登校生徒の駆除を開始するのだった。

ゾクゾクしますな。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

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