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2014年7月 7日 (月)

時は今雨が下しる五月哉・・・と明智光秀(春風亭小朝)

京の都の愛宕山で明智光秀が連歌会を催し・・・有名な発句を残す。

この席には元服間もない嫡男の明智光慶も参加している。

本能寺の変勃発の数日前で陰暦五月下旬のことだった。

信長と親交のある連歌師・里村紹巴も出席している。

そういう席で・・・謀反を仄めかす歌など歌えるか・・・という率直な疑問はあるのだが・・・歌がなぞかけという性質を持っている以上・・・解釈は可能なのである。

「土岐(明智氏は土岐氏系である)は今・・・天(あめ)が下知する殺気かな・・・」である。

天が私に殺せと命じている・・・誰を?という話である。

居並ぶ歌人たちは・・・それぞれに・・・おやと思うわけである。

その中には信長の忍びもいて・・・当然、信長はそれを知る。

しかし・・・五月といえば雨という月並みな歌い出しに・・・それほど心は動かされなかったに違いない。

また・・・光秀はその歌が恐ろしい掛け言葉を含んでいることには気がつかなかった可能性もある。

だが・・・心の底では・・・戦国武将として千載一遇のチャンスが巡ってきていることを意識していたはずである。

天正十年六月二日(1582年6月21日)未明・・・。

明智光秀は戦国最大のミステリを認めるべく・・・一万余名の直属軍を率いて本能寺へと進軍する。

で、『軍師官兵衛・第27回』(NHK総合2014070608PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は前回よりややダウンの三十一行。通俗的な尊王明智光秀の姿に苦笑でございますな。まあ、誰が殺した第六天魔王の音頭は果てしなく輪を描くのでございます。しかし、かっての光秀が今回は小早川隆景に転生し、暗い翳りを見せている。そんな毛利家の実質司令官・隆景の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。清水宗治の命をめぐる官兵衛、秀吉、隆景、安国寺それぞれの思惑が入り乱れる外交戦・・・とってつけたような織田ファミリー物語を止めて鳥取城攻防戦を描いて欲しかったですなあ。毛利家が何故、戦わずして敗北してしまうのか・・・この辺りの阿吽の呼吸が醍醐味なのですが・・・全く伝わってきませんなあ・・・。誰のために死ぬのか・・・清水宗治の心情を描くだけで・・・一篇の詩になるわけなのに。

Kan027天正十年(1582年)五月、羽柴秀吉は備中国高松城水攻めの土木工事を開始する。中旬に工事は完成し、梅雨(五月雨)にも恵まれ、高松城は水没し、城主・清水宗治は完全に孤立する。圧倒的な経済力を見せつけた織田方に対し、毛利家は条件付降伏の道を探りはじめる。武田家滅亡の報は毛利家内部に衝撃をもたらしていたのである。播磨国攻防戦における毛利と織田の代理戦争を先兵である羽柴軍との局地戦におさめ・・・信長出馬に際しては支配地域の半分を差し出すことによって毛利本家の保存を図る小早川隆景の大戦略である。しかし、そのためには毛利家が本国安芸などで影響力があることを信長に知らしめなければならない。つまり、信長傘下に入った毛利家の利用価値を認めさせなければならないのだった。高松城主・清水宗治の切腹は清水家の毛利家への忠誠心を示すとともに・・・信長の美意識にかなう物語を発生させる。秀吉と隆景はその筋書きで合意したのだった。すでに越後では三月下旬より上杉景勝が織田軍団の包囲攻撃を受けており滅びへと向っている。柴田勝家の軍団四万に加え、予備戦力二万が上杉家滅亡の後は、滝川一益二万と合流し、徳川軍団二万とともに十万の大軍となって関東に出る。一方、信長は明智光秀二万の軍勢に丹後衆、大和衆などを加え、およそ四万の援軍を毛利攻めに出陣させる。この後、信長が出陣すれば十万の大軍が毛利家を圧倒するわけである。東西に十万、合わせて二十万の軍事力を持った信長は天下布武の完成を確信し、上洛、本能寺に入る。丹波国で軍の終結を終えた明智光秀は・・・山城国を通過し、摂津国から西へと向う・・・はずだった。天正十年・・・六月・・・二日。

高松城の西、猿掛城に毛利本陣が置かれ、毛利輝元が在陣している。

小早川隆景はその前衛として猿掛城の東南にある日差山に陣を構えていた。

隆景は毛利忍びを父から受け継いでいる。

山陰、山陽では無敵を誇る毛利忍びも軍団全体が忍びという羽柴軍には手を焼かされていた。

秀吉が奇妙なことを始めた噂は・・・草の者から届いてくるが・・・その全貌がつかめない。

「何をしているのか」

隆景の問いに参集した忍びの頭領たちが応じる。

「土石を集めておるのは堤を築いているのかと」

桂の太郎と呼ばれる忍びが応じる。

「周囲に土壁を作ったという話もありまする」

杉の善三と呼ばれる忍びが囁く。

「百姓から俵を買ったそうです」

葦の作蔵が呟く。

「水攻めという言葉を残した下人もおりまする」

独活の鱸が告げる。

独活の鱸は水軍忍びの頭である。

彼らの一団は川からの潜入を図ったが、蜂須賀の忍びに殲滅されていた。

「毛利忍びが結界を破れぬとは・・・恐ろしきことよのう」

隆景は呻いた。

「それにしても・・・水攻めとは・・・」

その時、斥候からの諜報が届いた。

「何・・・高松城が水没しただと・・・そんな馬鹿な」

毛利の将兵が度肝を抜かれている頃・・・黒影は・・・京の河原でわらべ歌を聞いていた。

その歌を歌う童たちが藤原の忍びの幼忍であることは調べがついていた。

籠女 籠女

籠の中の鳥は

いついつであう・・・

その河原には吉田神社の当主・兼見が佇んでいる。

周囲は夕闇に包まれつつある。

夜明けの番に

鶴と亀が統べた

後ろの正面だあれ・・・

黒影は影の術で完全な穏形を成し遂げている。

河原には・・・吉田兼見と子供たちがいるだけだが・・・風の中に女の声がある。

「願いを聞こう・・・」

「この世にお上(かみ)と呼べるのはお一方のみ・・・しかるに・・・ものどもに上様と呼ばれる不遜のお方がおありや・・・」

「しかし・・・汝もそのものに護られておるのではないか・・・そのものに与えられた銭で・・・妾を買うのかえ・・・」

「・・・」

「その願いは聞けぬ・・・しかし・・・京の都の卦は・・・月が変われば凶となろう」

「それはどないな訳かいな・・・」

黒影は耳をすました。

しかし・・・風の声はそれきり途絶えた。

黒影は声の主を求めて・・・気を張った。

しかし・・・手ごたえはなかった。

(この世には・・・恐ろしき使い手がおるものよ・・・)

黒影は心が冷えるのを感じる。

誰かに嘲笑された気がしたのだ。

完全な闇に包まれた河原に子供たちの影も消え・・・一人、吉田兼見が残された。

暗殺者は一人のターゲットに対し二人の依頼人を持たぬものなのである。

関連するキッドのブログ→第26話のレビュー

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