陽なたにて揺るるさなぎ(橋本愛)たそがれの空は希望のいれもの(蒼井優)
そのままじゃないか・・・。
単なるファンだからな。
映画「ボクサー」(1977年)の撮影中にサインしてもらったなあ。
だからといって時代を超越するのは勘弁してほしいよな。
半世紀前の大学生みたいな口説き方されてもな・・・。
再評価ということでいいんじゃないか。
いや・・・今さら過ぎるだろう・・・。
祖国がピンと来ないだろう・・・。
国敗れて山河ありあっての祖国だものな。
「復員服の飴屋が通る頃ならんふくらみながら豆煮えはじむ」時代の
「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」という「祖国喪失」なんだから・・・。
まあ、次回タイトルは「待ち受けでつかのま愛の闇ふかし身捨つるほどの異性はありや」ということになりそうなわけで・・・。
「三鷹ストーカー殺人事件」を連想させすぎだよな・・・。まだ・・・早いんじゃないか・・・。そういう衒いはないんだよ、きっと。
うらやましいほど恥も外聞もないんだよ。
やり手だからな。
で、『若者たち2014・第7回』(フジテレビ20140827PM10~)脚本・武藤将吾、演出・杉田成道を見た。演出家がチェンジして・・・体をはってる橋本愛が復活である。舞台「飛龍伝」では暁(瑛太)の幻視によって・・・「濡れ場」を吉川瑞貴(広末涼子)が演じていたように見えたわけだが・・・実際は永原香澄(橋本愛)がハルこと佐藤陽(柄本佑)がキスをして抱擁していたのである。虚構と現実の間で・・・初舞台の香澄が濃厚な擬似恋愛を客観視できるはずもなく・・・身も心も奪われていたという話である。それなのに・・・何故、佐藤旦(野村周平)と交際を始めてしまったのか・・・という疑問は純情可憐なお茶の間に浮かぶかもしれないが・・・美少女かつ女子高校生の心なんてつかみどころのないものなのである。そういうものに心を奪われるのはある意味、仕方ないのだろう。
一方で・・・男と女の愁嘆場をネチネチとやりたい演出家は・・・先週、決着のついたはずの長女・ひかり(満島ひかり)鬼畜・新城(吉岡秀隆)の別れの現場を気分を出してもう一度である。
「これ以上、君を傷つけられない」
「私より、奥さんと子供なのね」
「そうだ」
「こんな日がくることをずっと惧れていました・・・」
「すまない」
「さよなら」
その日・・・ひかりは兄弟たちに寿司を振る舞うのだった。
長男・旭(妻夫木聡)と鬼畜二世・ハルはスルーして御馳走を喜ぶ。
しかし、ハルと魔性の女・香澄に凌辱された末っ子・旦はそれどころではないのだった。
そして・・・前科者の暁が慰めモードに入るのだった。
「我慢するな・・・泣いてもいいんだよ」
「シクシク」
「もっと泣け」
「えーん、えーん」
「もっとだ」
近親相姦に移行する勢いである。
そして・・・旭の妻・梓(蒼井優)の早産の危機が訪れる。
1000グラムに満たない胎児・・・「あせも」ではなく「あかり」の誕生だった。
かけつけた旭は・・・未熟児の産声に安堵する。
しかし・・・その小さな姿を見た瞬間、複雑な感情に襲われ、我を失うのだった。
自分に気のない交際相手につきまとう旦。
「お兄さんの赤ちゃん・・・生まれたんでしょう・・・病院に行かなくていいの?」
「僕は・・・母親の死と引き換えに生まれたんで・・・なんとなく病院は苦手なんだ」
「そうなの・・・」
母親の愛を知らないという必殺のエピソードも・・・気のない相手にはまるで通じない。
香澄はただハルと逢瀬がしたいだけなのである。
じゃ・・・なんで・・・旦と付き合いだしたんだよ。
だから・・・そういう脚本だから。
そして・・・ストーカーにありがちな見たくもないものを見ずにはいられない旦である。
自分の欲しいものを兄に奪われる弟なのである。
香澄の惜しみない愛は兄に捧げられているのだった。
兄も弟への気遣いは一切ないのだった。
やりたい盛りの人々の話である。
寺山修司の歌集「祖国喪失」から恥ずかしいロマンと耳に優しい韻律に満ちた「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」で香澄の心を金縛りのハルだった。
昭和29年(1954年)、十八歳で重い腎臓疾患を得た寺山は闘病のための入退院を繰り返しながら二十歳の頃、「祖国喪失」を発表している。敗戦の歴史がまだ生々しさを残している世相である。
しかし、祖国はこのドラマの場合、おそらく家族である。
家族なんか関係ない・・・君と僕がいれば愛は成立するよねえという話なのである。
一方、結婚して初めての子供の誕生が修羅場と化した旭・・・。
佐藤家を知りつくした女・屋代多香子(長澤まさみ)は暁にアドバイスする。
「お兄さんについていてあげた方がいいわよ」
「俺なんかいたってしょうがないだろう」
「あなたとお兄さんは光と影のようなもの・・・」
「俺が光か」
「あなたは影よ」
「・・・」
「お兄さんは太陽のように輝くけど・・・あなたが影にならないと・・・すべてを焼きつくす・・・お兄さんにはあなたが必要なの」
「君は・・・予言者なのか」
旭の心は揺れていた。
「ごめんね・・・早く生み過ぎて」
「そんな・・・」
「早く・・・あかりってよんであげて・・・」
「まだ・・・そんな気になれないよ・・・」
「・・・」
旭は人を傷つける天才なのだった。
「人が死ぬのも72時間だが・・・人が生きるのも72時間なんだ」
「なんだよ・・・それ」
「この子が72時間生き伸びれば・・・生存率は高まる」
「生き伸びるとか・・・こわいんですけど」
「祈るしかない」
そこへ・・・ついに我を失った旦が・・・香澄の家で騒ぎを起こし、通報されて逮捕である。
警察から旦を回収する旭。
「僕は悪くないんだよ・・・僕はただ愛しているだけなんだ」
「他人様に迷惑かけるなよ」
「話を聞いてくれよ」
「そんな場合じゃねえんだよ」
旭は病院から逃げ出し・・・梓の入院準備に逃避する。
そこへ騎兵隊の暁が到着である。
「そんなことしてないで・・・病院へ行け」
「小さいんだよ・・・俺は死ねばいいって思っちゃった」
「それはかわいそうだからだろ・・・助かって生きたらどうするんだ」
「それはすごくいいよ・・・俺と梓の子供だもん・・・かわいいにきまってるよ」
「じゃ・・・生きろって祈れよ」
「田丸神社でか・・・」
「なんで・・・田丸神社なんだよ」
「忘れたのか・・・お母さんが死んで・・・旦なんか死ねばいいと思っていたら・・・旦が熱出して死にそうになって・・・田丸神社に宝物捧げたら・・・熱下がったじゃないか」
「・・・ああ」
「今、お前の一番大切なものってなんだ」
「金」
「じゃ・・・金出せよ」
「お前千円しかないのか」
「お前も千円しかないのか」
兄たちの悲哀も弟の心を動かさない。
つまり・・・母殺しの旦は・・・三人の兄に呪われているのである。
ハルは・・・未だに旦を殺してやりたいほど憎んでいるのだった。
いや・・・それはどうかな。
とにかく・・・旭は祈った。
暁も兄のために祈った。
医師と看護師は脳内出血で危機に陥った新生児を懸命に治療し看護する。
梓は鶴を折った。
そして・・・たまたま・・・あかりは危機を脱したのだった。
それを奇跡と喜ぶ・・・旭と梓。
胸をなでおろす暁。
背徳の喜びに浸るハル。
そして・・・一人、ベッドで自慰をしながら・・・保存された画像の香澄の裸身を見つめる旦。
光あるところに影はあるのだった。
旦の耳元では下劣な悪鬼たちが囁き続ける。
「お前は何も悪くない。お前を愛することもなくお前の母親は勝手に死んだ。お前の恋人はお前を裏切りお前に何も与えない。そんな女はいない方がいいだろう。そんな女は死んだ方がいいだろう。そんな女は殺されても仕方ないだろう。なんならお前が殺してやればいいだろう・・・」
朝焼けの空は絶望のはじまるところ・・・。
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