武士の覚悟と星見草(小出恵介)
覚悟という言葉は死を連想させる。
極道の妻が「覚悟せいや」と凄んだらピストルで撃たれる可能性があるわけである。
しかし、読んで字の如く、覚悟とは覚って悟ることである。
もうサトリまくるわけである。
そこには迷いの付け入る隙はないのである。
一体・・・人は何を悟るのだろうか。
そもそも何を見極めて心を定めるのか・・・迷いの中に生きる人は悩むのだった。
死を覚悟して生きる・・・分ったような分からないような・・・話である。
もうすぐ300万アクセスというところで突然カウンターがリセットされたくらいでは動じない覚悟は欲しいな。
で、『吉原裏同心・第8回』(NHK総合20140821PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・佐藤峰世を見た。夏休み編成で一回休みで今回である。皆さまのNHKの覚悟はどこにあるんだ。まあ・・・田舎のお盆はいろいろとアレだからな。広島の土砂災害は日ごとに犠牲者数が増える・・・そこでも深夜の避難勧告を出す覚悟の是非が問われるのだった。未来予測の困難さと・・・当たり外れに対する大衆の賛否両論。「よくやった」と言われるか「馬鹿じゃねえの」と言われるか・・・苦悩する役人たち・・・だが・・・大事を取っていいのではないかと部外者は無責任に思うのだった。「明日、裏山が崩壊するかもしれません」と言われてどうするかは・・・自己責任で。避難困難者はどうする・・・それは運命で。所詮、悪魔だからな。
吉原一の花魁・薄墨太夫(野々すみ花)の危機を救った吉原裏同心の神守幹次郎(小出恵介)の武勇は吉原界隈の評判となる。
「誰からお聞きになったのです」という遊女たちの手習いの師匠を務める汀女(貫地谷しほり)の疑問は聞き流される。
「神守様は私たちのことも救ってくださるでしょうか」夕霧(近野成美)たち遊女は問いかける。
「もちろん・・・それがお役目ですから・・・」と応じる汀女・・・。
しかし、薄墨太夫は微笑む。
気まぐれな遊女たちの関心は客を呼ぶ文の話題に・・・。
「客が寄ってくれるような文句を考えてくださいよ」と汀女にせがむ。
「神守様の心を射止めた汀女様はきっと素晴らしいお言葉を考えてくれましょう」
素知らぬ顔で汀女に挑む薄墨太夫なのであった。
季節は九月九日の重陽の節句が目前である。
奇数は陰陽の陽であり、その最大の数である九が重なるので重陽である。
菊の季節でもあり、菊の節句とも呼ばれる。
菊は古来より、不老長寿の薬効があるとされていた。
重陽の節句に菊酒を飲む慣わしなのである。
吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)は薄墨太夫の親代わりとして密かに節句を祝う櫛を買おうと外出するのだった。
伴は要らぬという四郎兵衛に「女かな」と疑う仙右衛門(山内圭哉)・・・。
そこへ「父が忘れものを」と四郎兵衛の娘・玉藻(京野ことみ)が現れる。
日本堤の土手で・・・浪人たちに襲われる四郎兵衛。
「俺を四郎兵衛と知ってのことか」と見得を切る四郎兵衛だが・・・浪人たちは腕ききでたちまち手傷を負い、絶体絶命の窮地。
しかし、忘れものを届けに来た幹次郎が危機を救う。
構えの応酬で幹次郎の腕前を見抜いた浪人の頭は・・・引き上げを命じるのだった。
河原の芒の影で成り行きを窺っていた穀物問屋の跡取り息子・公太(浜田学)は舌うちをする。
父親の武七(篠井英介)は吉原への参入を画策していたが・・・そのために四郎兵衛が邪魔だったのだ。
「だからといって・・・手を出すとは・・・本当に馬鹿な息子持ったものだ」と嘆く武七。
「親父のやり方はまどろっこしい」と悔いた様子もない公太だった。
一方、遊女たちに頼まれた口説き文句に頭をひねる汀女。
「一日千秋の思いで貴方のおいでをお待ちしております・・・」
そこへ・・・幹次郎が戻り・・・「夕餉の支度を・・・」と汀女。
しかし、幹次郎は頓着せず、薄墨太夫から贈られた御礼の饅頭をぱく付く。
これに汀女の女心が悋気を発するのであった。
なんだかんだ・・・汀女は・・・薄墨太夫の幹次郎への思いを察しているのである。
「夕餉の支度は後にします」
しかし・・・鈍感な幹次郎は汀女の女心を解さない。
その翌日、ぬけぬけと吉原会所を訪れる武七と公太の父子。
公太は幹次郎と汀女を見かけてまたもや悪企みを思いつく。
汀女の誘拐であった。
汀女は抵抗むなしく浪人たちの手に落ちる。
医者の柴田相庵(林隆三)の家に汀女を捜しに来る幹次郎。
「あの方は・・・連絡もなく何処かに行くようなことはしないだろう」と断言する相庵だった。
故・林隆三の姿の見収めも近いのだなあ・・・。
診療所手伝いのお芳(平田薫)も捜索に加わるが夜は更ける・・・。
報告を受けた四郎兵衛は・・・浪人たちとの一件を連想する。
しかし、仙右衛門は妻仇討ちの件も案じるのだった。
嫉妬で汀女の心が揺れたように、心配で幹次郎の心も揺れる。
公太は幹次郎を呼び出し、「四郎兵衛の警護で手抜きをしろ」と脅すのだった。
その苦渋を悟った四郎兵衛は「ちょいと三ノ輪までお伴を頼みます」と幹次郎を誘い出し、事情を聴取するのだった。
一方、囚われの汀女は縄抜けをして、窓の隙間から必死に文をちぎって風に託す。
それを千住あたりで拾うのが四郎兵衛の息子・清次(若葉竜也)で物語始って以来の初手柄であった。
穀物問屋の筋から汀女の監禁場所を特定する番方たち・・・。
しかし、浪人たちが多数出入りしていて・・・中の様子が分らない。
「私が囮になりましょう」と覚悟を決めた四郎兵衛だった。
四郎兵衛に誘われて浪人たちが出動すると幹次郎は突入する。
留守番の浪人たちを切り捨てた幹次郎は汀女の救出に成功するのだった。
容赦なく浪人たちを一刀両断する幹次郎。
「姉様・・・御無事でしたか」
「きっと・・・おいでくださると信じていました」
再会を祝って抱擁するのを堪え・・・四郎兵衛の救援に急ぐ幹次郎。
「この四郎兵衛、ただじゃあ死なねえぞ」と獲物を持って戦う四郎兵衛と番方一同。
そこへ幹次郎が駆けつけて腕の冴を披露する。
怒りに燃えた幹次郎は武七と公太の父子も斬殺である。
一同は幹次郎の剣の腕に惚れぼれとするのだった。
清爽たる野菊を摘んで汀女に捧げる幹次郎。
「こういうことはまたあるかもしれません」
「覚悟はできています」
秋の気配の深まる江戸で燃える幹次郎と汀女だった・・・。
何があっても動じない心・・・人はそれを覚悟と呼ぶ。
ま・・・そういう心は滅多にありません。
関連するキッドのブログ→第7話のレビュー
| 固定リンク
コメント