狂気とは得体のしれないものを信じる気持である・・・例として神とか悪魔とか(北山宏光)
ドラマにおけるキャラクター設定というものは実は一種のお約束である。
人格などというものは存在しないし、人間は朝には天使だった人が昼には悪魔になり夜にはなんだかよくわからないものになっていたりする。
男には冷たいのに女には優しい人はいくらでもいる。
それでも・・・天使のような存在、悪魔のような存在、冷たい存在、優しい存在がキャラクター設定に求められるのである。
そうでない場合は二面性を持つキャラクターということになる。
リアルさを追求する場合は・・・この設定を取り払うという手法がある。
しかし、加減を間違うととんでもないことになるのである。
家庭を顧みない刑事が・・・家族はやりなおせると言い出したり、陰湿な暴力団員が・・・突然ロマンティックな死を選択したり、普通の人間だった人が・・・不死身人間だったり・・・やるせない気分になりますな。
ドラマは夢の世界・・・できれば夢だと気付かせないで・・・。
で、『家族狩り・第9回』(TBSテレビ201408029PM10~)原作・天童荒太、脚本・泉澤陽子、演出・坪井敏雄を見た。この物語の主人公は基本的に無能である。氷崎游子(松雪泰子)は東京都児童ケアセンター職員で児童心理司だが、駒田幸一(岡田浩暉)と駒田玲子(信太真妃)の父親を救援することはできなかった。もちろん・・・これは一例であって游子の上司の態度からも明らかのように游子はトラブルをケアするよりもトラブル・メーカーなのである。一方、ヒロイン・ポジションの巣藤浚介(伊藤淳史)もまた無能な高校教師である。ほとんど授業していないわけである。ダメ人間とダメ人間が出会い・・・魅かれあい・・・突然、使命感に目覚めたかのように・・・現実に介入し始める・・・今にも目が覚めてしまいそうだが・・・必死に妄想の世界に逃げ込むのだった。
冬島綾女(水野美紀)は油井(谷田歩)の殺害を決意するが・・・実行力はなく、返り討ちに遭う。そこへ椎村刑事(平岡祐太)が駆けつけるが返り討ちに遭う。
仕方ないので油井は自殺するのだった。
「僕はね・・・馬見原刑事(遠藤憲一)みたいなお父さんが欲しかったんだ・・・強くてかっこよくて・・・僕を守ってくれそうだもの・・・それなのに研司(須田瑛斗)ばかり可愛がってさ・・・やんなっちゃうよね・・・」
「あなた・・・何言ってるの・・・」
「・・・」
「死にましたね」
銃で撃たれた椎村刑事がむくりと起きあがる。
「あなた・・・大丈夫なの」
「ええ・・・実は僕は不死身人間なんですよ・・・これは秘密にしておいてください」
銃創から弾丸がポロリとこぼれ落ちる。
「通常の人間よりも回復力があるんです・・・秘密ですよ」
「誰も信じないでしょう」
「ですね」
不死身人間の椎村刑事は警視庁の特命刑事だった。警視庁刑事部捜査一課の不正行為を内偵中だったのである。
藤崎課長(飯田基祐)が反社会勢力との癒着による情報漏洩で金銭を受け取っている事実を突き止め、藤崎刑事がその罪を馬見原刑事になすりつけようと画策したことを暴くのだった。
「見逃してくれ・・・女房と子供がいるんだ」
「できません・・・職務なので・・・」
突然、ウルトラスーパーデラックス有能刑事となった不死身の椎村刑事である。
一方、いつまでたっても帰ってこない游子の身を案じる浚介。
「あの子・・・まさか・・・彼氏ができたのかしら」
「彼氏・・・」
「やあね・・・冗談よ・・・」と呑気な民子(浅田美代子)・・・。
「心当たりを捜してくれよ」と鈴木渓徳(北山宏光)に頼る浚介・・・。
「捜してもいいけど・・・本当に彼氏がいたらどうします?」
「彼氏・・・」
「意外とお父さん(井上真樹夫)と同じく認知症を発症してたりして・・・」と鈴木佳苗(松浦雅)は毒々しい。
「若年性か・・・」と正気タイムの父親の清太郎・・・。
「ほら・・・あんたんとこの生徒の父親が若年性認知症で・・・再婚した母親が育児放棄しちゃったって話があったじゃない
「それ・・・ちがうドラマです」
「あ・・・キャラが一緒なんで間違えちゃった・・・」
「ほっといてください」
そういうのどかな擬似ホームドラマ進行中に・・・仮面を脱ぎ棄てた連続殺人犯組織に拉致監禁されている主人公だった。
束縛されて放置され・・・朝を迎えたのだった。
「手荒なことをしてすまなかったな」と縄を解く大野白蟻工業の社長(藤本隆宏)・・・。
「体に優しい自然食をご用意したので召し上がれ」と山賀葉子(財前直見)・・・。
「駒田さんをどうしたのです」
「送ってさしあげたんです」
「送ったって・・・どこへ」
「・・・」
「山賀さん・・・この人に脅されてるんですか・・・」
「とんでもない・・・この人は同志よ」
「同志・・・」
「あなたにはきっとわかってもらえるわ」
「何をですか・・・」
「送ってさしあげることの意味を・・・」
説明しよう・・・一体、なんでそんなことを始めたのかは最終回に語るのだろうが・・・とにかく、山賀と大野は連続一家殺人犯なのである。
山賀が対象を補足し、大野が白アリ駆除の名目で現場を密室にできるように床下に細工するのだった。
そして両親を殺害後、子供を自殺に導くのである。
「おかしい・・・私の通院の時間なのに・・・連絡がない」と娘の不在に不自由を感じる母。
「だから・・・連絡もなしに帰宅しないっておかしいって言ってるでしょう」
「クイーン・エメラルダス・・・真の勇気を持つ男には優しい女・・・」と記憶障害モードの父。
「何か・・・手掛かりはないんですか」
「そういえば・・・シャンプー」
浚介は突然の鬼直感でシャンプーこそが事件解決の手掛かりであることを感じるのだった。
所轄の新人刑事に戻った椎村刑事は・・・解放された馬見原刑事と浚介に呼び出される。
「重要な手掛かりって・・・」
「甘い匂いのシャンプーですよ」
「だから・・・犯人は・・・あの女だろう」
「違いますよ・・・イタリア製で個人輸入の貴重品なんです・・・それを分けてもらってるんです」
「すると・・・あの女・・・行方をくらましたか・・・」
「すぐに・・・追いましょう」
「彼女は犯人じゃありません」
「それは本人の口から聞こう」
二人の刑事は游子の端末の位置情報の追跡を開始するのだった。
こうなってはあの人に頼るしかない浚介だった。
「捜してくれ・・・このシャンプーを個人輸入している人を」
ウルトラスーパーデラックス特命探偵・ケートクは即座にウルトラスーパーデラックス情報網にリンクするのだった。
「お尋ねの方は二人います・・・往年の大女優・原節子さんと山賀さん」
「山賀だって・・・」
その頃、大野は下見にきているのだった。
何故か、娘を残してショッピングにでかける芳沢希久子(相築あきこ)・・・。
大野のマジックハンドは芳沢亜衣(中村ゆりか)の部屋の鍵を破壊する。
「隠れてないで出ておいで・・・」
天才であり超洞察力の持ち主は大野が連続殺人犯であることを悟る。
「あなたが駆除するのね・・・私たち家族という害虫を・・・この家から」
「家族は害虫ではないよ」
「うそつき・・・一人にしておいて・・・私は世界を描かなければならないの」
「これは・・・妖怪百目かい」
「違うわ・・・世界を監視する神の目よ」
「なるほど・・・」
自己表現力の拙い天才少女は浚介にSOSメールを発信する。
【シロアリシロアリシロアリ】
「なんなんだよ・・・」
もちろん・・・鈍感な浚介に解読は不可能だった。
位置情報を追いかけた二人の刑事は廃品業者の車に投棄された游子の携帯端末を発見する。
山賀と大野は游子を連れて芳沢家に向かう。
浚介と名探偵ケートクあるいは内閣特務工作員は山賀家に到着。
周辺を調査したケートクは隣の家が大野白蟻工業であることを発見する。
「これは内部調査の必要がありますね」
工作員あるいは窃盗常習犯のケートクはピッキング術も習得していた。
「お前って・・・」
「少年院出身者だからって誰でもできると思わないでください」
そして・・・二人は・・・火の用心の悪い・・・狂信者の蝋燭つけっぱなし回廊と・・・魔窟の祭壇を発見するのだった。
祭壇に供えられた葬送状には・・・芳沢家が記されていた。
「これって・・・」
「千羽鶴も名前入りですよ」
「実森・・・」
「どういうことなんだ」
「え・・・実森を殺したってことでしょう・・・そして今夜は芳沢を殺すんでしょう」
「大変じゃないか」
帰宅した芳沢孝郎(二階堂智)は刃物を取り出した。
「あなた・・・やめて」
「情報漏洩のために会社はおしまいだ・・・」
「それはあなたのセキュリティーが甘かったから・・・」
「破滅なんだよ・・・・」
「どうするつもり・・・」
「可愛い娘を最後に抱いて・・・終わりにするんだよ・・・いいだろう・・・最後にやらせてもらっても」
貞操の危機に鈍器で抵抗する娘。
しかし、娘やりたさで鬼となった孝郎は痛みを感じない。
家族から殺人者を出したくない希久子は制止する。
血みどろの父親と母親と娘。
そこへ・・・白き衣(害虫駆除用作業服)を来たシロアリ教徒の大野が到着する。
大野のマジックハンドは三人を一瞬で失神させるのだった。
気がつくと食卓に呪縛された芳沢家の三人。
ゲストとして游子も招かれている。
「一体・・・何をする気なの」
「送って差し上げるのよ」
「それが・・・最終的解決なんて・・・頭がおかしすぎる」
「何言ってるの・・・あなたは誰も救えなかったでしょう」
「救おうとしたもの」
「子供の家庭内暴力で父親を励ましたあなたは・・・父親に一家斬殺の上で放火自殺されて実際ご遺体を損傷させるほど頭おかしくなったでしょう・・・それをなんとか落ちつかせてあげたのは私ですよ」
「だからって・・・殺したら・・・何の解決にもならないじゃないの」
「あなたは・・・実森くんのお母さんの最後の言葉を聞いたでしょう・・・これでよかったって言ってたでしょう」
「違う・・・そんなの・・・ただのあきらめ・・・」
「あなたも・・・儀式を見ればきっと理解できるわ・・・」
「儀式・・・」
「最終的な解決方法の後、家族は生まれ変わって再出発するの」
「う・・・うまれかわり・・・って」
そこへ飛び込んでくる浚介・・・。
たちまち・・・大野のマジックハンドの餌食となるのだった。
「やめろ・・・そんなのただの人殺しだ」
「静かになさい・・・」
浚介はごちそうを口につめこまれた。
「さあ・・・よく見るのよ」
娘の目の前で両親を刃物で突き刺し苦痛を与える二人。
「や・・め・・・て・・・」
「逃げては駄目・・・よく見るのよ・・・あなたの親たちの苦しみを・・・」
その時、主人公はくのいちモードを覚醒する。
呪縛していた縄は一瞬で解かれ、驚異的な脚力で跳躍したウルトラスーパーデラックス游子は魔人大野を突き飛ばすのだった。
「殺すなら私を殺しなさいよ」
それを言ったらおしまい的な決め台詞を残し・・・物語はウルトラスーパーデラックスな感じの最終回に向かって旅立つのだった。
来週は死者を除いたオールスター登場かな。石倉真弓(篠田麻里子)とか清岡美歩(山口紗弥加)とかしばらく見てないしな・・・。
関連するキッドのブログ→第8話のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の家族狩り
| 固定リンク
コメント