ごめんね素直じゃなくてミラクルマジックブレインロマンス思考回路はショート寸前(木村拓哉)
言葉によるコミュニケーションの話である。
英語圏で仕事をすると・・・通訳抜きでは仕事ができない語学力しかないことがものすごいストレスになる。
話が通じないというのはつらいことだ。
それでも「ワタシノイイタイコトワカリマスカア」的に一生懸命伝えようとしなければならない。
すると人間同士なので最低限の相互理解はなんとか可能なのである。
日本語でも専門用語がからむと似たようなことは発生する。
一方、テレビでは不特定多数の人に理解してもらう必要がある。
「ご理解いただけたでしょうか」ではなく「おわかりになりましたか」あるいは「わかった?」の方が正しかったりするのだった。
子供の視線に立つというのは・・・ある意味で子供を馬鹿にした話である。
「被疑者」を「悪いことをしたかもしれないとうたがわれている人」と言い換えることは可能だが・・・「ヒギシャ」という耳慣れない言葉を新鮮に受け止めることができるのも子供なのである。
「ウルトラマン」とか「仮面ライダー」とか「月に代わっておしおきよ」とかだって最初は凄く耳慣れない言葉なのである。
しかし・・・「なんだかすげえ」が伝われば・・・子供は耳を傾けるものだ。
そうでない子供はバカなので仕方ない。
バカでない以上、相手の立場になって考えることと自分の信念を貫くことは・・・融合することが可能なのである。
言葉によるコミュニケーションに実は限界はないのだった。
で、『HERO(第2期)・第5回』(フジテレビ20140811PM9~)脚本・福田靖、演出・金井紘を見た。どんなドラマにも寓話性はあるが・・・このドラマの寓話としての主題の展開の仕方は緻密で驚異的なものがある。今回は鬼の川尻こと川尻健三郎部長検事(松重豊)にスポットライトがあたる。仕事が山積みで管理職である鬼尻が・・・現場に一時復帰するという「話」である。鬼尻が担当するのは置き引き事件で被疑者は小茂田繁樹(矢崎広)だが事件の目撃者が小学生や幼稚園児で証言を得ることが難しいという「話」なのである。一方、久利生公平検事(木村拓哉)と麻木千佳事務官(北川景子)が担当しているのはゴルフ場の吊り橋崩落によってキャディーが負傷し設計者の責任が問われている事件。久利生は設計者を取り調べるために吊り橋の設計の基礎知識から専門用語までを勉強中という「話」である。
鬼尻部長は「子供たち」・・・久利生は「専門家」という「話」の難しい相手に立ち向かう「話」なのである。
さて、臨時の現場復帰であるために・・・事務官は交代制で鬼尻部長を補佐するわけだが・・・麻木が久利生と鬼尻を比較し・・・二人が似たもの同士であることを感じたり、検事職の本質を学んだりするのが重要な「話」になっているという仕掛けになっている。
この大筋を語りながら・・・各検事や事務官の個性を見せつつ、さらには牛丸次席検事(角野卓造)の「話」まで盛り込み・・・ついには久利生が「検事」としての筋を通しながら・・・「仲間」への愛を貫くという「話」にまで踏み込んでいく。
なんという「話」の上手さなのだろう・・・と脚本家の腕前に舌を巻くという「話」なのである。
城西支部で健康診断の結果・・・麻木事務官は体脂肪の数値の増加が・・・取調に時間をかけすぎる久利生検事のために残業が増え食事が不規則になったのが原因と断定する。一方、久利生は健康器具マニアとして体脂肪率ヒトケタという驚異的な健康を維持するのだった。対して鬼尻部長はすべての数値が悪い方に向かっていた。
そのあげく、久しぶりの現場では取調にキレがない。
監視カメラの映像で「盗品を持って逃走中」の被疑者に「急にカバンを渡されてあわてて追いかけただけ」と否認される始末に末次隆之事務官(小日向文世)は「昭和の香りが強すぎる」と呆れる。
一方、久利生は「吊り橋のすべて」を知るために参考図書を大量に収集し、麻木事務官に「専門家に意見を求めればいいのでは」と意見されるのだった。
鬼尻部長も久利生検事も・・・自分が納得しないとダメなタイプなのである。
ここから・・・一部のお茶の間は・・・鬼尻部長の鬼瓦的表現力と・・・目撃者の一人、女子小学生のレイナ(桜田ひより)の演技力に欺かれることになる。
レイナが鬼尻の顔がこわくて証言ができない・・・という欺瞞である。
そのために・・・井戸事務官(正名僕蔵)は鬼尻のネクタイを外させ、遠藤事務官(八嶋智人)は男子小学生への家庭訪問で鬼尻をリゾート・スタイルに導く。
さらに麻木は鬼尻に幼稚園児と一緒にお遊戯をさせる。
麻木はうさぎさんで可愛いが鬼尻は「ゲロゲーロ」なのである。
「部長、固い、固いです」
そこそこ園児に気に入られた鬼尻だが・・・遊ばれただけで証言を得ることはできないのだった。
久利生は「構造物に荷重が作用して部材内部に発生する曲げモーメントという断面力」を理解しようと数式に取り組むが中卒の学歴が立ちはだかる。そんな久利生を東大法学部卒業の宇野大介検事(濱田岳)が上から目線で見下ろすが、それはもちろん、久利生がイスに座っている間の出来事だった。
鬼尻の補佐を終えた麻木が復帰して、久利生愛用の電動マッサージ器で園児相手の肩こりをほぐすと複雑な感情を胸に立ちさる宇野検事。
「そんなんじゃ、ダメだ・・・ここをこうだよ」
「あ、いい・・・気持ちいい・・・」
「だろう」
二人のいい感じに意気消沈する宇野検事を末次事務官は「肩が重い・・・片想い・・・なんちゃって」と慰めるのだった。
それをおちょくりとはとらない宇野検事である。
理解とはほぼ誤解なのである。
取調に自信を失った鬼尻は・・・辞職を牛丸次席検事に匂わす。
馬場礼子検事(吉田羊)は田村検事(杉本哲太)と痴話喧嘩をすることで・・・事情を知る鬼尻部長の必要性を訴える・・・しかし、慰留工作は功を奏さないし、それが慰留工作であることをほとんどのお茶の間は察しないのだった。
「St.George's Tavern」の出番である。
麻木事務官のリクエストで「フォー」があるよのマスター(田中要次)である。
かっては特捜で鬼検事と呼ばれた鬼尻部長・・・。
「しかし・・・手間をかけすぎる俺の捜査方針は・・・特捜にはあわなかった・・・与えられた仕事を適当に処理することができなかったんだ・・・特捜から左遷されてずっと管理職だ・・・俺は検事として終わっているのかもしれない」
麻木事務官は・・・鬼尻が久利生と似ていることに気がつく。
しかし、久利生は「テレビ・ショップ」の「記憶力を飛躍的に高めるサプリ・ミラクルマジックブレイン」に心を奪われるのだった。
「検事をやめたら弁護士になるんですか」
「いや・・・農業でもやるよ」
鬼尻が去ると麻木は久利生を問いつめる。
「部長がやめちゃっていいんですか」
「でかいキャベツとか作りそうだな」
「どうすればいいのかしら」
「とりあえず回鍋肉かな」
「ちがうっ」
もちろん・・・久利生は鬼尻のことを深く案じているのである。
基礎知識をマスターした久利生は専門家に意見を求めに行く。
自分が理解したことが正しいかどうかをチェックするためである。
もちろん・・・建築や土木の専門家には及ばないが「話」がしたいのである。
そこで「社会科見学」に来た子供たちの写真を麻木に指示す久利生・・・。
「本当の自分を取り戻すことが大切だ」と久利生は語る。
麻木は・・・子供は仲間と一緒なら心を開くのではないかと誤解するのだった。
そこでレイナを同級生たちと東京地方検察庁城西支部に招待する麻木だった。
そこで・・・久利生は検事の仕事について・・・鬼尻に語らせるのだった。
本来なら・・・「皆さん・・・裁判って知っていますか・・・そう・・・誰かが悪いことをしたかどうか・・・決めることだよね・・・おじさんの仕事は悪いことをしたんじゃないかと疑われている人をいろいろとしらべて・・・裁判にかけるかどうかを決めることなんだ」的なことをレクチャーするべきなのかもしれない。
しかし・・・鬼尻は・・・。
「検事は被疑者を取り調べて起訴するか不起訴にするかを決める仕事です。警察にはたくさんの警察官がいて機動力があるのでいろいろなことを調べることができます。しかし、検事の人数は少ないのでそういうことはできません。それでは何をするのか。検事は話を聞くのです。疑われている人の話も聞きます。事件について何か知っている人の話も聞きます。そして・・・本当のことが何かを判断するのです。本当のことがわからなければ正義を行うことができないからです。検事は正義のために真実を求めていろいろな人から話を聞くのが仕事なのです」
真摯な鬼尻の言葉に子供たちは心を奪われるのだった。
眼圧(正しくは眼力)の強い麻木は検事の心の真実に触れ、心を揺さぶられる。
それはレイナも同じだったらしい。
「何を見たか・・・話して下さい」
鬼尻の言葉に・・・レイナは我慢していたものをあふれださせるように泣きだすのだった。
小茂田繁樹の取調。
「お前は・・・事件を目撃した小学生にナイフを見せて黙っていろと脅したそうだな」
「・・・」
「刑法238条、財物の取り返しを防ぐため、逮捕を免れるため、または、罪証隠滅のために、暴行・脅迫をすることは事後強盗の罪に問われる」
「・・・」
「必ず実刑にしてやるっ」
「部長がキレたよっ」と一同は鬼の川尻復活を讃えるのだった。
麻木の尽力に感謝する鬼尻部長。
「いえ・・・すべて久利生検事の采配です」
「じゃ・・・久利生にも御礼を言わないと・・・」
「いえ・・・久利生検事はそういうの・・・苦手ですから」
「ふふふ・・・久利生のことはなんでもわかってるんだな」
「私は・・・久利生検事の事務官ですから」
微笑む鬼尻・・・実はすべてお見通しだった気配さえあるのだった。
吊り橋崩落事件の取り調べ。
嫌疑をかけられた設計者は・・・専門知識で誤魔化そうとする構えである。
しかし・・・「設計上、明らかに吊り橋の強度に問題があったこと」を専門用語を交えて話す久利生に・・・被疑者の顔色は蒼ざめるのだった。
「橋をつくる専門家として・・・あなたが良心に恥じない仕事をしたのかどうか・・・じっくりお話を聞く準備ができています」
検事の仕事は「正しく法を執行するために関係者の話を聞くこと」という「話」だった。
そして・・・そのために時間を惜しんではいけないというのが・・・久利生と川尻部長を結ぶ検事の絆なのである。
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