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2014年9月30日 (火)

愛する人に逢いたいのでゴロゴロする私です~金田一耕助VS明智小五郎ふたたび(山下智久)

御嶽山噴火のために・・・時間が喪失しています。

「火山活動以外にも火山性のガスや火山灰が心配ですね」

キャスターたちも使いなれない言葉に戸惑いを隠せないんだなあ。

みんな・・・もう少し理科の勉強もしようねえ。

それにしても・・・死火山とか・・・休火山とか懐かしいなあ。

明日、東京23区内で噴火が始ったら吃驚仰天なのか。

それに比べれば火山で噴火しているんだから・・・驚くほどのことはないんだよなあ。

火山に登山して噴火に遭遇しているんだから・・・それなりの覚悟があったと理解してはいけないのかなあ。

まあ・・・噴石が飛んでくるので心の声は控えめにしないとなあ。

で、『金田一耕助VS明智小五郎ふたたび』(フジテレビ20140929PM9~)原作・芦辺拓、脚本・池上純哉、演出・澤田鎌作を見た。若き日の金田一耕助と・・・すでに有名な明智小五郎の邂逅を描くオマージュ・ミステリの続編である。オリジナルの「本陣殺人事件」が昭和十二年(1937年)十一月なので・・・前回の事件があった一月から立て続けに続編に突入するわけである。すでに日本は日中戦争に突入しており・・・しかし、太平洋戦争の開戦前で・・・戦前の気配が濃厚な時期なのである。金田一は三年後には召集されて中国戦線に向かうのである・・・。

「何作ってるの」

「猫の捕獲器だよ・・・」

「なんか・・・だめそう」

正木玉緒(鈴木梨央)の母親が営む下宿に「探偵事務所」の看板を掲げる金田一耕助(山下智久)は米国帰りの若者である。

しかし・・・探偵らしい仕事はほとんどないのだった。

「せっかく・・・大事件を解決したのに・・・」

「美味しいところは明智さんにもってかれたもの・・・」

「おとくじゃないわねえ」

そこへ・・・今回の依頼者が現れる。

柳條男爵家の令嬢・星子(剛力彩芽)である。

「私でいいんですか」

「あなたがいいんです」

柳條男爵家の当主・清久男男爵(津嘉山正種)は新聞を賑わせていた。

「主治医で女医(市毛良枝)の処方した薬でヒ素中毒となり意識不明の重体になっているんですよね」

「主治医の折口庸子先生は・・・そんなことをする方じゃありません」

「しかし・・・逮捕された女医は・・・黙秘しているそうですね」

「なにか・・・理由があるのだと思います・・・金田一さんに真相をつきとめてもらいたいのです」

「わかりた」

「なんですって・・・」

「いや・・・わかりました」

二人は汽車に乗って尚徳金山でかっては栄えた尚徳山口駅にたどり着く。

「ここはどこですか」

「どこぞの地方の街です・・・柳條男爵家は代々この町の有力者だったのです」

「あの・・・四葉のクローバーみたいな印はなんですか」

「柳條家の家紋です」

「家紋が街のいたるところに・・・あるわけですか」

「町のものは皆、男爵家を敬ってくれているのです」

「ファンタジーだなあ」

出迎えの使用人の息子・阿野田一平(岡山天音)の運転する車で屋敷に向かう一行。

しかし・・・路上には男の首つり死体がつるされていたのだった。

「あ・・・あれは・・・数馬様・・・」

「だ・・・誰ですか」

「花陽お姉さんの旦那さんです・・・」

到着早々・・・死体発見者として取調をうける金田一だった。

屋敷に到着すると・・・住人たちが紹介される。

当主・清久男・・・意識不明で病床に・・・。

当主の妻・志麻子(星由里子)・・・最後に語りそうな人物である。

長女・花陽(横山めぐみ)は死んだ数馬(今奈良孝行)の妻である。

数馬は柳條の婿養子だった。

しかも・・・数馬が養子縁組したのは男爵毒殺未遂事件の後である。

「あなたにも語る資格はありそうですね」

「なんのこと・・・」

次女の雪夜(山口紗弥加)は実家が造船会社を経営する星野夏彦(平岳大)の妻だった。

「あなたは・・・いや・・・ないか」

「なによ・・・」

「途中で急に出番が少なくなったりすることが多いですよね」

「役があるだけましなのよ」

「まあ・・・今回は二時間サスペンスですから」

「ほっといてちょうだい」

「そして・・・三女が・・・星子さんか」

「その通り・・・女ばかりなので・・・養子縁組をしたのに・・・」

「男爵位は男でなければ継承できませんからねえ」

「こうなったら・・・星子に婿をとるしかないわ」

「え」

金田一は激しく動揺するのだった。

そこへ・・・玉緒から電話が入る。

「どうなのよ」

「どうって・・・」

「まさか・・・また色惚けかまして・・・わやなことになってるんじゃないでしょうね」

「そんななななこここここととととあるわわわわけないいいい」

「ちっ」

そこへ・・・満州帰りの名探偵・明智小五郎(伊藤英明)が到着する。

「いいんだ・・・金田一くん・・・探偵がヒロインに惚れるのはミステリのお約束だ」

「ななななななにいってるんです」

「あなたが・・・有名な・・・」

事情聴取に来た日比野警部(渡辺いっけい)は感激するのだった。

「どうして・・・ここへ・・・」

「怪人二十面相が・・・柳條男爵家の黄金如来像を奪うと予告してきたのです」

「ええええええええ」

「そんなこと言ってまた邪魔しに・・・」

「君は殺人事件の謎を・・・私は怪人二十面相を追う・・・それでいいじゃないか」

「・・・」

その時・・・どこからか・・・子供たちの歌声が聴こえる。

風が吹けども

柳はおれぬ

つきはせぬ

風の吹くまま

掘るがよし

「この歌は・・・」

「この地方に古くから伝わる童歌よ」

「柳條家を讃え・・・金山を誇る歌か・・・」

「もちろん・・・裏の意味があるんですよね」

「まあ・・・定番だね」

やがて・・・どこから呼んだのか・・・男爵夫人の遠縁の若者・菱川卓造(阿部力)が星子の配偶者候補として現れる。

「え」

動揺が激しくなる金田一だった。

「さあ・・・今夜は舞踏会だ・・・金田一くんも正装したまえ」

「なんでですか」

「ファン・サービスだよ」

しかし・・・その夜・・・星子を殺そうとして・・・銃が暴発し・・・夏彦が死亡する。

銃には鉛が詰められていた。

さらに・・・意識不明だった男爵が危篤状態に・・・。

往診に来た医師(団時朗)が実は怪人二十面相だった。

金田一と明智は怪人二十面相を追うが・・・見失う。

「私は結婚したくありません」

「お前は養女の癖に逆らうなんてとんでもないわ」

星子は実は孤児だった。

一人になった金田一は床の上に横たわりゴロゴロと転がりだす。

推理力が回転数によって向上するのである。

(ヒ素中毒・・・女医・・・黙秘・・・そうか)

「わかりました・・・男爵を毒殺したのは・・・男爵夫人だ」

「えええええ」

「男爵は通院する時に・・・おしゃれをしていた・・・つまり・・・折口女医は・・・男爵の愛人。そして・・・その時はいつもお伴に・・・一平くんを連れていった・・・つまり、隠し子だ・・・きっと男爵は一平くんに爵位を譲ろうとしたに違いない。それを知った男爵夫人は・・・数馬くんに毒を入手させ・・・殺害を計画した」

「そうよ・・・愛人の息子なんかに・・・この家を継がれてたまるか」

「・・・」

「なによ・・・」

「いや・・・語り短いので・・・」

「じゃ・・・数馬さんや夏彦さんを殺したのは・・・」

「一平くんだ」

「・・・」

「いや・・・金田一くん・・・君は間違っている・・・犯人は・・・一平くんの育ての親だ」

「えええ」

「ちなみに・・・私は二十面相だ」

「えええええ」

その頃・・・二十面相に拉致監禁されていた明智は鳩で妻の文代(吉田羊)に連絡をとり、小林少年(羽生田拳武)に救出されていた。

「かなりダイジェストだな」

「宝の山の噴火が気になるんです」

「男爵家の宝は閉鎖された金山だよ」

はちあわせする二人の明智。

「本物はどっちだ」

「さて、僕の好物はなんでしょう」

「?」

「羊羹ですよ・・・本物の明智さんは私のストーカーなので知っているはずだ」

「明智め・・・」

こうして逮捕される二十面相・・・もちろん、護送中に脱走である。

廃鉱の隠し部屋は・・・隠れ切支丹の礼拝場だった。

「黄金如来とは・・・黄金のマリア様だったのか」

「私たちはみな・・・はらいそにいくのです」

地獄の蓋が開き・・・男爵家の人々と村人たちを飲み込む。

「金田一くん、脱出だ・・・」

「でも・・・星子さんが・・・」

「あきらめたまえ・・・星子さんと一平くんは相思相愛だ・・・」

「そんなあ」

「君には僕がいるじゃないか」

「お断りします」

こうして・・・村には平穏が戻った。

村人がいなければ事件もないのである。

(今さらですが・・・記事内容が妄想であることをお断りしておきます)

関連するキッドのブログ→金田一耕助VS明智小五郎

Ypki001ごっこガーデン。爽やかな風の吹く田園セット。エリ毎年、この季節になると・・・金田一P助に逢えるのでス~。ちょっぴりドジだけど・・・推理力抜群の名探偵・・・ゴロゴロすれば解けない謎はないのでス~。少し間違ってるところがまた御愛嬌なのでス~。芒が風に揺れて・・・しんみりしまス~。じいや・・・今夜は男爵イモのお味噌汁と松茸ごはんにしてね~まこごっこガーデンのセットチェンジが大変な季節でしゅね~アンナHEROセットは永久保存ぴょ~ん

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2014年9月29日 (月)

豊臣鶴松生誕・・・黒田官兵衛、嫡男・長政に家督を譲る(岡田准一)

天正十七年(1589年)五月、茶々、豊臣鶴松を出産。

黒田官兵衛は嫡男・長政に家督を譲り、秀吉に近侍する。

つまり・・・軍師・官兵衛の誕生である。

黒田長政を補佐するのは黒田八虎。

井上九郎右衛門之房・・・妻は櫛橋伊定の娘で官兵衛の妻・光とは姉妹である。

栗山善助利安・・・太兵衛の義兄弟。黒田一成の舅。

母里太兵衛友信・・・善助の義兄弟。母・母里氏は官兵衛の義母と姉妹。大友宗麟の娘婿。

黒田兵庫助利高・・・官兵衛の同母の弟。

黒田修理亮利則・・・官兵衛の異母の弟・・・母・神吉氏。

黒田図書助直之・・・官兵衛の異母の弟・・・母・母里氏。

黒田三左衛門一成・・・官兵衛の養子。善助の娘婿。

後藤又兵衛基次・・・母・神吉氏は官兵衛の義母と同族。長政の乳兄弟。

黒田家のホームドラマを描きたいのであれば・・・この地縁・血縁に満ちた八虎と官兵衛の関係を描くべきなのである。

戦国の家族と・・・太平の家族の差異を少しは物語れるはずである。

まあ・・・いまさらですが~。

で、『軍師官兵衛・第39回』(NHK総合20140928PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は36行+2行で微増中・・・しかし・・・後北条氏四代目当主・北条氏政は再生・描き下ろしイラスト大公開なのでございますねえ。嫡子・北条氏直の正室は徳川家康の娘・督姫ですが・・・キャスティングされているのかどうか・・・微妙ですな。大政所や朝日姫と同様に言葉だけの存在か・・・。なんていうか・・・無駄なことをしないといか・・・手間を惜しむというか・・・よくわからない制作姿勢ですよね。家康と・・・氏政が舅同志という関係にあることを絵にしないでどうするんだ・・・と思いますけれど~。やはり・・・脚本家が・・・「天地人」とか「江」と同じ・・・戦国史音痴なのではという疑惑が幽かに生じるのでございますな~。苦手のことはしないでほしいものですな~。

Kan039天正十四年(1586年)、黒田長政の正室・糸の兄・蜂須賀家政の嫡男・至鎮が誕生している。蜂須賀家は阿波国主として順調に統治を行っていた。天正十五年(1587年)、真田昌幸は大坂城で秀吉に謁見、豊臣家臣となる。天正十六年(1588年)、北条氏政・氏直父子は秀吉の上洛要請を拒否。徳川家康の仲介で八月、氏政の弟・氏規が名代として上洛。徳川家康の次男で秀吉の養子・秀康が豊臣姓を賜る。天正十七年(1589年)、真田家・北条家・徳川家における沼田領の帰属問題が表面化。火種として着火の時を待つ。三月、豊臣秀長が淀城を改修し、茶々が入場。五月、茶々は鶴松を出産。秀吉は黒田長政の家督相続を認める。真田昌幸の嫡男・信之と家康養女(本多忠勝の娘・小松姫)が婚姻。福島正則は伊予今治十一万石、加藤清正は肥後北半国十九万五千石、池田輝政は美濃国岐阜で十三万石、細川忠興は丹後十二万石、浅野長政は若狭国小浜八万石、豊臣秀次は近江国四十三万石、黒田長政は豊前国中津十二万五千石と秀吉子飼いの大名が揃い踏みである。秀吉の姉・日秀を母とする秀次の別格扱いが印象的である。

大政所は眉を潜めた。

秀吉に鶴松が誕生したことである。

ただちに・・・秀吉の嫁である北政所を呼びだす。

「秀吉に子ができたとな」

「お孫さまでございます」

「本当にそうかのう・・・」

「間違いございませぬ」

「秀吉はこれまで多くの女たちを侍らせてきたというのに・・・おかしなことじゃ」

「お母様・・・」

「ねね殿もそうは思わんか・・・」

「しかし・・・お世継ぎでございますから」

「孫なら・・・他にもおる・・・秀次もおれば・・・秀勝もおるし、秀保もおる」

「しかし・・・殿下にとっては・・・みな甥です」

「私にとっては・・・みな可愛い孫じゃ・・・血もつながっている」

ギラリと大政所の目が光る。

「信長様の姪とやらが・・・気に入らん・・・私にとっちゃ・・・秀吉の嫁はねね殿だけじゃ」

「お母様・・・」

「今度の子は・・・我が家に仇をなすのではないかと・・・思うんじゃ」

「それ以上・・・言ってはなりませぬ・・・」

「私は血のつながっていないものが・・・この家を継ぐのは絶対嫌じゃ・・・」

血縁に対する異常なこだわりが大政所の目に狂気の光を宿している。

「殿下のお世継ぎでございますよ・・・」

「いいや・・・きっと・・・ちがうぞ・・・私は許さぬ」

「お母様・・・」

北政所の背筋に冷たいものが走る。

大政所には明らかに妄執の気配が漂っている。

そして・・・大政所には尾張のくのいち衆がついているのである。

淀城で生まれた鶴松は秋には大坂城に入ることが決まっていた。

北政所に迷いが生じる・・・。

このこと・・・夫・秀吉に告げるべきかどうか。

北政所の心は揺れた。

そして・・・その口は閉ざされた。

淀殿の子など・・・いっそいない方がよかろうず・・・と北政所の心が囁いたのである。

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2014年9月28日 (日)

とらとーらとーらとら、命ある限り戦え、そして生き抜くんだ(北乃きい)

満州国の興亡に大きく関係するのが・・・太平洋戦争におけるペリリューの戦いである。

日ソ中立条約を前提に・・・満州国防衛の精鋭部隊を太平洋戦線に転用したことが・・・満州国防衛を困難にしたわけである。

昭和十二年(1937年)の盧溝橋事件を発端とする日中戦争で華北戦線に投入され転戦を重ねた第十四師団は満蒙国境のハンダガヤから昭和十九年(1944年)に太平洋のパラオに配置される。

すでに制海権は失われつつあり、師団の海上輸送も困難を極める中、第14師団主力はパラオ本島に展開する。

さらに・・・大規模飛行場のあるペリリュー島には第14師団歩兵第2連隊が分派されるのである。

そこで・・・太平洋戦争での玉砕を前提としない最初の激戦が行われることになる。

つまり・・・潔く散るのではなく・・・最後の一兵まで徹底抗戦という・・・大日本帝国陸軍の方針転換があったのである。

万歳して突撃して全滅せず・・・要塞に籠ってゲリラ戦を挑むジャップ(日本兵)に鬼畜米英(連合軍)は戦慄するのだった。

ちなみに「トラトラトラ」は真珠湾奇襲成功時の暗号電文トラ連送で「ワレ奇襲二成功セリ」であり、「とらとーらとーらとら」は芸者遊びの掛け声のひとつである。説明必要か・・・?

で、『金曜プレステージ・終戦記念スペシャルドラマ・命ある限り戦え、そして生き抜くんだ』(フジテレビ20140815PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・福本義人を見た。ペリリュー島の激戦は米国のリュパータス海兵少将率いる米第1海兵師団を壊滅させるという大戦果をあげ、太平洋戦争における日本陸軍の奮闘を物語るわけだが・・・結局、敗北した日本はそれを祝すことはできなかったわけである。頑張った人たちに頑張ったと言えないのが敗戦国の哀愁なのだな。

それが・・・米国のテレビドラマシリーズ「ザ・パシフィック」で大きくとりあげられたことで・・・日本での企画が通りやすくなったわけである。

ドキュメンタリーとしては「NHKスペシャル  狂気の戦場 ベリリュー~“忘れられた島”の記録~」(NHK総合20140813PM10~)がその詳細を伝えている。

一方、ドラマは・・・伝説の・・・芸者兵士をメインに据えた戦争ファンタジーである。

まあ・・・なんていうか・・・やらないよりやった方がいいだろう的なお粗末であるが・・・がんばったヒロインに敬意を表したいわけである。

噴煙が五百メートル上空まで噴き上げている御嶽山も御照覧あれだ。

第一次大戦でドイツが敗戦国になったことで・・・戦勝国・日本の委任統治領となったパラオ・・・以来・・・三十年・・・平穏な時が過ぎたのである。

コロール島には海軍基地がおかれ、ペリリュー島には飛行場が建設された。

軍人相手の料亭「みね屋」の女将・浜野八重子(仁科亜季子)は店をコロール一と呼ばれるまでに仕立てあげたのである。

昭和十五年(1940年)・・・「みね屋」に一人の若い芸者が流れ着く。

後に・・・ペリリューの女兵士と呼ばれる小鈴(北乃きい)・・・十七歳である。

コロールはパラオ諸島で一番の賑わいを見せている。

この世の楽園・・・青い海とサンゴ礁の島に憧れてやってきた小鈴。

たちまち・・・人気の芸妓となったが・・・その幸福は長く続かなかったのである。

昭和十六年十二月・・・日本は米英に対し宣戦を布告し・・・大東亜戦争と名付けられる戦争が平和な楽園を襲うのだった。

真珠湾の奇襲で始った太平洋での戦いは・・・昭和十七年、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦と続き、戦局は大日本帝国に厳しいものとなっていく。

空母を多数失った帝国はガダルカナルをめぐる消耗戦で航空戦力も失い、守勢に立たされる。

昭和十八年、山本五十六連合艦隊司令長官が戦死。

アッツ島守備隊の全滅から玉砕が始る。

昭和十九年、マリアナ沖海戦で惨敗した帝国は太平洋における制海権、制空権を完全に失う。

米機動部隊は二月にトラックを・・・三月にはパラオを空襲し、帝国の海軍基地は機能を喪失する。

これに対し陸軍は防衛圏の維持のために四月、第14師団をパラオに派遣したのである。

玉砕戦法を捨て、要塞構築による防衛主体の戦闘がパラオ守備隊の任務だった。

しかし、多方面作戦の可能な連合軍はパラオを素通りし、六月、サイパンに上陸を果たす。

戦略的価値を失ったパラオに・・・米ニミッツ海軍提督は手柄を求めて襲いかかり、手痛いしっぺ返しを食らうことになるのだった。

爆撃により、平穏を乱されるパラオ。

楽園に戦争がやってきたことに怒りを覚えた小鈴だった。

しかし・・・美貌の小鈴に・・・第十四師団歩兵第二連隊の伊藤正人少尉(溝端淳平)は仄かな恋慕を抱く。

だが・・・幼い頃に別れた父の面影を求める小鈴の心は・・・第十四師団歩兵第二連隊長の中川州男大佐(上川隆也)に傾いて行く。

けれど・・・内地に妻の光枝(木村多江)を残し、清廉潔白な中川大佐に・・・芸者・小鈴の思いが伝わることはない。

やがて、ペリリュー島防衛のために歩兵第二連隊はコロールから移動する。

小鈴は・・・中川大佐を慕い・・・無謀にもペリリューに渡るのだった。

すでに民間人が避退したペリリューにやってきた小鈴を伊藤少尉は追いかえそうとするが・・・もはや・・・脱出する術はなかった。

九月・・・第一海兵師団の攻撃が開始されたのである。

帝国陸軍はペリリューに鉄壁の要塞を構築しており、連合軍による空襲は効果的ではなかった。

「日本軍はどうせ万歳して突撃してくるから楽勝」と考えていた連合軍は・・・徹底したゲリラ戦法を仕掛けてくる帝国陸軍に「話が違う」と絶望したのだった。

しかし・・・消耗しても・・・交代部隊のある連合国側と・・・食糧・弾薬の補給もない帝国陸軍とでは・・・勝敗の行方は明らかだった。

徹底抗戦を続ける第二連隊と行動を共にしていた小鈴は・・・負傷兵の手当てなどで活躍したが・・・ついに・・・負傷兵を手当てする場所も失われる。

十一月・・・中川大佐は自決する。

その間際、銃手を失った銃座で・・・機関銃を構えた小鈴は最後の連射を敵に叩きこむのだった。

「とらとーらとーらとら・・・」

憎い敵を打ち倒す歓びに小鈴の心は躍る。

直後、敵の集中攻撃を浴びた小鈴は花と散るのである。

「女だったな・・・」

「女だった・・・」

「日本にも女兵士がいるのだな・・・」

「幻覚だろう・・・」

「早く・・・故郷に帰りたい」

「女とやりたいなあ」

鬼畜米英の兵士たちは囁くのだった。

もちろん・・・本当にそんな女性兵士がいたのかどうか・・・戦史は明らかにしていない。

北乃きいは「ZIP!」(日本テレビ)で総合司会中なのである。

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2014年9月27日 (土)

お母さんはおへそです(深田恭子)私は売れました(二階堂ふみ)遠い約束〜星になったこどもたち〜(松山ケンイチ)

松山ケンイチ、深田恭子、二階堂ふみと言えば・・・大河ドラマ「平清盛」(2012年)の平清盛、その正室・平時子、その娘の平徳子である。

なんだか・・・懐かしいぞ。

「平清盛」はよかったなあ・・・。

それにしても・・・二階堂ふみは大物なんだなあ。

毎度おなじみの・・・敗戦ドラマであるが・・・敗戦の特異日である八月十五日を遠く過ぎ・・・もはや九月も終わり・・・。

しかし・・・大日本帝国の敗戦はまだ続いていたのである。・・・っていうか今も続いている。

二度と戦争はしません・・・ということは・・・永遠に敗戦国なんだなあ。

できれば・・・第三次世界大戦が勃発し・・・なんとなく参戦し・・・今度こそ・・・勝者になりたい・・・それはけして口には出せない一部日本人の密かな希望である。

そうすれば従軍慰安婦とか・・・どうでもよくなっちゃうものな。

まあ・・・地球が滅びるリスクはあるとしても。

で、『テレビ未来遺産“終戦69年”ドラマ特別企画遠い約束〜星になったこどもたち〜 』(TBSテレビ20140825PM9~)原作・増田昭一、脚本・永田優子、演出・土井裕泰を見た。朝日新聞は従軍慰安婦の存在を高く謳いあげるのと同じくらいの分量で連合国側の性暴力を謳いあげるべきなんだよな。そうだったらここまで叩かれない。戦争中のドサクサのことをドサクサ抜きで語ったら・・・いらぬ誤解を招くに決まっているのだ。人と人が国家の利権をかけて殺し合ってる時に・・・人権もクソもないのである。「記事は捏造だったが・・・歴史的事実は変わらない」とか自己弁護していると、いつか国家反逆罪が成立した時、根こそぎ絞首刑にされるぞ。

1945年8月8日、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄して日本に宣戦布告。

8月9日、ソ連軍は満蒙国境地帯から・・・満州国へ侵攻を開始する。

8月10日、満洲国を防衛する日本の関東軍首脳とその家族は特別列車で満州国を脱出した。

国と国との約束を信じる国家はバカであり・・・責任者が無責任であることを疑うものはバカなのである。

「私たちは騙された」とか誰かを詰っても後の祭りだ。

すべてを自分の責任として・・・人は生きる他はないのである。

「東京を大空襲された」とか「広島に原爆を落された」とか「満州でソ連兵に強姦されて殺された」とか嘆いても・・・すべては自己責任なのである。

そういう時代を認めて生きていたものの当然の結果だ。

空襲で殺されたくなかったら敵機を撃墜し、原爆で殺されたくなかったら米国を焦土と化し、犯されたくなかったらソ連兵を皆殺しにしておけばよかったのである。

そんなことできるか・・・と言われればそれまでである。

それは・・・単に現実に過ぎないのである。

満州国の関東軍は・・・精鋭を太平洋での戦闘に引き抜かれ・・・超弱体化していた。

ドイツ軍を降伏させたソ連軍は全精力を大日本帝国の領土の不法占拠に振り向けて来たのである。

とっとと逃げる他はなかったのだ。

そして・・・国策により・・・実質植民地である満州国に開拓団として送り込まれた帝国臣民である「日本人」たちは・・・置き去りにされたのである。

無防備のまま取り残された女子供たちは・・・ソ連軍や・・・抗日勢力の無法者たちから凌辱される。

それでも・・・生き残ったものたちは・・・新京へ逃避行を続ける。

ソ連軍が逃げ遅れた女子供を凌辱している間になんとか・・・大日本帝国は滅亡したのだった。

関東軍の将校である戸田英一(松山ケンイチ)は小規模な抵抗で部隊が全滅した後、民間人の死体から衣装をはぎ取り軍服を脱いだ。

「日本は戦争に負けません」と子供たちに教えていた教師の水野有希子(二階堂ふみ)は男装してソ連軍の強姦を逃れつつ、母親や弟妹と新京の避難民収容所にたどり着く。

逃亡中に孤児となった佐竹三郎(加藤清史郎)、田中さとみ(山田望叶)、中村竜也(高澤父母道)、上田豊(森遥野)たち、教え子の面倒をみる有希子・・・。

逃げのびた人々は・・・劣悪な生活環境と栄養失調で次々と死んでいく。

「弱いものから死んでいく・・・」

軍人であることを隠して収容所に紛れ込んでいた英一は自決を覚悟する。

しかし・・・それを止める有希子だった。

「生き恥をさらすのが・・・罰じゃありませんか」

「死んで楽になることも許されないのか」

「生きている間は生きてください」

「なぜだ」

「生きるのに理由なんかありません」

松原友之(五十嵐陽向)の母親・松原喜代美(深田恭子)は臨終を迎えようとしていた。

「ともちゃん・・・お母さんはもうすぐ死ぬけれど・・・お母さんがいなくても生きていくって約束してちょうだい」

「お母さんがいなくなるのはやだよう」

「ともちゃん・・・おへそをみてごらん・・・」

「おへそ」

「お母さんとともちゃんはおへそでつながっているの・・・淋しくなったらおへそをみるのよ」

「へーそー」

「お母さんは・・・いつも・・・ともちゃんのおへその中にいるからね」

喜代美は土饅頭に葬られる。

やがて・・・満州の短い夏は終わり・・・過酷な季節が迫っていた。

軍人ではなく画家になりたかった英一はみんなの絵を描くのだった。

英一と・・・有希子、三郎、さとみ、竜也、豊、友ちゃんの七人は星を見る。

「ごらん、あれが北斗七星・・・」

「私たちは満州の七つの星よ」

「日本ってどんなところ」

「富士山があるのよ」

「見たいなあ」

「みんなで日本に帰って一緒に見ましょう」

しかし・・・有希子の母親・水野有枝(伊藤かずえ)は幼い弟妹のために中国人妻として娘を売ることに決める。

「ごめんね」

「生きるためだもの・・・仕方ないわ」

有希子は嫁ぐ前に子供たちに中華料理をごちそうするのだった。

「みんな・・・生きるのは大変だけど・・・人を思いやる心や・・・分かち合う気持ちを忘れないでね・・・先生のお願いです」

「先生・・・ごちそうさま」

しかし・・・落語の上手い竜也は発疹チフスに罹り、青黒くなって死ぬ。

「弱いものから死んでいく・・・」

英一は子供を失くした中国人に友之を売るのだった。

「ともちゃんを売っちゃうの」

「ちがう・・・生き残るためだ・・・ともちゃんの新しいお母さんは・・・ともちゃんを大切にしてくれると約束してくれた・・・」

「約束・・・」

「うん・・・それを信じるしかないんだよ」

冬が迫ってくる・・・英一は出稼ぎに出ることにする。

「みんな・・・俺が帰ってくるまで元気でいるんだぞ」

しかし・・・子供たちの顔はすでに青黒くなっていた。

過酷な冬がやってくる。

さとみと豊が冷たくなった。

そして三郎も冷たくなった。

春になって英一が戻ってきた時・・・収容所には墓だけが残っていた。

三郎のノートには遺言が残されていた。

「みんな死にました・・・僕も死にます・・・日本に一緒に帰れなくてごめんなさい」

1946年夏・・・英一は一人で日本に帰国した。

歳月が流れた・・・「戦争体験を語り継ぐ」英一(宝田明)の前にともちゃんそっくりの旬(五十嵐陽向)が現れた。

「英一さん・・・」

「ともちゃん」

友之(前田吟)は旬の祖父になっていた。

「生きていたのか・・・」

「生きていました・・・満州のお母さんが約束を守ってくれたのです」

どのような時代でも運の強いものは生き伸びるのである。

そして・・・弱いものは死んでいくのだった。

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東京が戦場になった日

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2014年9月26日 (金)

二人の不倫は終わったのね・・・とりあえず(上戸彩)

ブログ的にはレギュラー・レビューがすべて最終回を迎え・・・夏と秋の谷間に突入したわけだが。

夏ドラマのフィナーレを飾るのは・・・「昼顔」である。

不倫でいっぱいの2014年夏ドラマにあって・・・人妻となった女優・上戸彩が・・・お茶の間の妄想をかきたてたのでございますねえ。

13.3%↗13.5%↘12.0%↗13.1%↘11.8%↘10.9%↗13.8%↗15.6%↘15.1%↗16.7%↘16.5%

前戯でつかみ・・・途中、上昇下降をくりかえしつつフィニッシュへ・・・まさにいい感じでございましたな。

どんな妄想なんだよ。視聴率の上下でいい感じになるなよっ。

「昼顔~第二章」に期待ですな・・・そのためには愛のない結婚をして・・・また真実の愛と巡り合う必要がありますな。

やはり・・・不倫にはいろいろと面倒くさい手順が必要だよな~。

そう考えただけでうんざりするよな~。

そういうタイプの人は浮気されやすいので注意が必要です。

で、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜・最終回(全11話)』(フジテレビ20140725PM10~)脚本・井上由美子、演出・西谷弘(他)を見た。(月)「ペテロの葬列」では妻が浮気・・・協議離婚が成立。(火)「聖女」では夫がよろめき妻を捨てたものの愛人に捨てられて投身自殺敢行、(水)「若者たち」では妻子ある男性と愛人が円満破局、(木)「吉原裏同心」が内縁の妻が愛人と駆け落ちに成功。「同窓生」ではいろいろとあれやこれや。木曜日は不倫の日である。(金)「家族狩り」では刑事が犯罪者の妻と愛人関係になり夫死亡で解消、週末は比較的穏やかに過ごす・・・不倫だからかっ。家族サービスかっ。

日本の家庭は大丈夫なんですか・・・と思う2014年の夏だった。

まあ・・・すべてが倦怠期なんだろうよ・・・きっと。

結局・・・愛慾に支配されて・・・燃える一夜を過ごす笹本紗和(上戸彩)と北野裕一郎(斎藤工)・・・。

「私、待ってなんかなかったよ」

「嘘つけ・・・もう・・・こんなに」

「あ」

男と女の官能の宴・・・。

(裕一郎さんの指はとっても優しく触れてくるんです。いつもおずおずしていて、可愛い感じがするんです。でも時々我慢できなくて力一杯私を掴んでくる・・・その感じが愛おしいんです。私は身体中が敏感になってどんどん高まっていんです。もっと気持ちよくなりたい。もっと気持ちよくしてあげたい。いつまでもいつまでもいっていかせてとけあってしまいたくなるんです・・・)

・・・てなことがあって満足した二人の元へ・・・双方の家族たちが突入である。

接合しているところだったら阿鼻叫喚だよな。

「ほれほれ・・・やってますよ」

「ひでぶ」

「ほれほれ・・・つながっちゃってるんですよ」

「放水開始」

「うひゃあ」

「強制排除~」

「きゃあ」

・・・そういうことをしないのが大人の演出というものだ。

「夫にあったら生涯罰金月30万円です」

「ええ~」

「相殺でお願いします」

「いいですよ、遊びだったんだから」

「私だって体が目当てですもの」

体裁つける不倫夫と不倫妻だった。

愛している妻や愛してる夫は・・・他人に発情した配偶者をそれぞれ引き取るのだった。

晴鐘学園付属高校理科教師の北野は生徒たちに別れを告げる。

「妻を抱く時よりも気持ちのいいセックスをしたから・・・きっと愛だったのです・・・君たちは誰よりも気持ちいいセックスのできる人と結ばれてほしい・・・まあ、生物学的には全員が配偶者に恵まれるとは限らないんですが~」

性の暴走教師を生温かく見守る教師と生徒たちだった。

「禁断の愛だから燃えるってことはないんですか」

「まあ・・・そうかもなあ」

「いいセックスを」

「いいセックスを」

愛の狩人・滝川利佳子(吉瀬美智子)によって仲良し夫婦も愛人も途中通過駅である。

経済力のある夫とちょっと傷ついた長女とまだ愛を知らない次女との平穏な生活に戻るのだった。

もちろん・・・まだまだ若いので次の愛人を募集中なのである。

束の間の愛の宴に・・・執着する紗和は平穏を望む夫・笹本俊介(鈴木浩介)との生活には何の未練もなかった。

(もうどうでもいいやあ)

家に火を放つのだった。

アパート・マンションなど集合住宅に住む人々を襲う戦慄の恐怖。

「愛人と別れさせられ妻放火、高層マンション全焼、死者百人超」

・・・になる前に駆けつける俊介・・・。

「あちちち」

「あちちち」

「そんなに・・・セックスしたいのか」

「セックスがすべてよ」

仕方なく・・・愛しい妻を野に放つハムスター好きの夫だった。

「まあ・・・いいか・・・ハムたちがいるから・・・」

紗和は今・・・新しいセックスの歓びを求めて街へ出た。

大丈夫、それなりの武器を装備しているのだ。

相手に不自由はしないだろう・・・その胸がしぼむまでは・・・。

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2014年9月25日 (木)

前科者(瑛太)妻子ある男性と不倫(満島ひかり)就職拒否(柄本佑)ストーカーでリベンジポルノ実行犯(野村周平)俺もできちゃった結婚だから歪んでいる(妻夫木聡)用水路で騎乗位はじめました(長澤まさみ)

刑務所に入る程の犯罪と・・・他人の家庭を壊す行為と・・・寄生獣と・・・他人の人生を汚す非行・・・それとできちゃった結婚を同じ土俵にあげる・・・おかしなバランス感覚・・・。

この脚本家のある種の傾斜に・・・馴染めないお茶の間は多かっただろうなあ。

今回は小説「されどわれらが日々―/柴田翔」(1964年)からの引用である。

ちょうど半世紀前のベストセラーである。

この中に・・・未婚で妊娠したことで自殺するヒロインがでてくるわけである。

つまり・・・「できちゃった結婚」が許されないと思いつめる若者がいた時代がかってあった・・・という話なのだろう。

いや・・・そんなことはないだろう・・・と思うばかりである。

でも・・・空前のベビーブームによる子供たちが若者だった頃の話だからなあ。

おしあいへしあいに疲れたのかもしれん。

少子化時代がくると予見できなかった憐れさなのか・・・。

まあ・・・世界暴力革命の幻想が・・・若者たちを高揚させたひとときだからな。

とにかく・・・21世紀にそんなこと言われてもな。

伝わらないよな。

で、『2014・最終回(全11話)』(フジテレビ20140917PM10~)脚本・武藤将吾、演出・杉田成道を見た。柴田翔は昭和十年(1935年)生まれで満79歳、「誰もきみに未来を贈ることはできない・・・何故ならきみが未来だから」という詩篇「未来へ」が引用される谷川俊太郎は昭和六年(1931年)生まれで満82歳である。もちろん・・・誰だってかっては若者だったわけだが・・・現状は若者とは程遠いわけである。戯曲のセリフを引用されるつかこうへい(故人)は昭和二十三年(1948年)生まれで存命であれば満66歳である。そういう人々の言葉に依存して表現しなければならないこと・・・その拘りがよくわからない・・・わけである。

家族ゲーム」に続いての問題作のリメイクで題材もかなり深刻なものなのであるが・・・どこかとりとめない感じになっちゃった・・・率直な感想でございます。

まあ・・・「家族ゲーム」の時に感じた・・・この人少しおかしい・・・という感じはますます強まりましたけどな~。

屋代多香子(長澤まさみ)の急報により、暁(瑛太)の悪事の示談金代わりに屋代兄弟に譲渡された土地の権利証によって・・・佐藤家が売りに出され買い手がついたことが判明する。

貧乏ながらも・・・土地付の家に住んでいることでなんとか成立していた佐藤家の暮らしが立ち行かなくなるわけである。

特に・・・夢追い人の就職浪人・陽(柄本佑)と、高卒認定の旦(野村周平)は狼狽する。

「この家、なくなったらどうすればいいの」

「俺・・・誰に食べさせてもらえばいいの」

父親代わりの旭(妻夫木聡)は「もはや・・・これまで」の心境である。

「こうなったら・・・みんな自立しろ」と言い出す。

前回、「みんなで・・・あかりを育てていこう」とまとまっていた家族は木っ端微塵なのだった。

いやあ・・・もう・・・アレだよね。

父親は生前・・・旭に「いざとなったら家を売れ」と言っていたと旭は主張するが・・・そもそも父親は旭が中学生の時に不慮の死を遂げているのである。

辻褄が・・・アレだよね。

とにかく・・・社会の底辺の若者たちの話なのである。

もう・・・何でも良いんだな。

そして・・・どうでもいい感じだが・・・単身赴任に疲れた新城正臣(吉岡秀隆)は生まれ故郷に戻って友人の小さな病院に務める決心をする。

要するに・・・ひかり(満島ひかり)との関係を清算するということである。

「今も貴方が好き」と言われれば欲望に勝てない性格なんだなあ。

兄弟の思い出のつまった家が人手に渡る・・・しかも自分のせいで・・・いたたまれない暁は多香子とともに多香子の兄に掛け合いにでかける。

「お金ならあるんで・・・売るのはやめにしてください」

「金って」

「あの三千万円です・・・」

しかし・・・それは苦しい言い訳だった。

明らかにはされないが・・・三千万円はおそらく・・・吉川瑞貴と同じ病気に苦しむ人にでも寄付してしまったのだろう。

弟の見え透いた嘘を見抜く兄だった。

あてもなく埋蔵金を掘りに行く弟を追う兄。

「金なんてないだろう」

「だけど・・・一週間あれば何とかできる」

「できねえよ・・・現金輸送車でも襲わない限り」

「じゃ・・・そうしよう」

「バカじゃねえの」

「・・・」

「いいんだよ・・・家でカタがついたら・・・お前も多香子ちゃんと」

「え」

「好きなんだろう・・・」

「・・・」

「許す」

「何をだよ」

「結婚さ・・・だって俺がお前の父親代わりだもん」

「バカ」

その頃・・・中卒の旭が道路工事で稼いだ金で看護師となったひかりは弟たちに語る。

「もうさ・・・旭兄ちゃんを解放してやろう」

「だって・・・俺の夢が・・・」

「僕の受験が・・・」

「旦の学費は・・・私が夜勤増やしてなんとかするよ・・・陽は夢を叶えるために汗水ながしな」

「ひでぶ・・・」

陽が不法占拠している・・・大学の稽古場に・・・永原香澄(橋本愛)が姿を見せる。

「私・・・高校やめちゃった・・・」

「ええっ」と驚く陽と旦。

「でも・・・大学には行くつもり・・・高卒認定とってね」

「なんでまた・・・」

「だって・・・女優になるって決めたから」

「そうか・・・」

旦に手を差し伸べる香澄。

「だから・・・勉強、教えてね」

「香澄ちゃんが笑ってくれた・・・」

「過去からやってきた私は・・・まだ見ぬ未来を待ちながら・・・やりたいことをやるだけよ」

「難しくてわからないよ」

「とにかく・・・私が抱かれたいのは陽さんで・・・旦くんじゃないってこと」

「ひでぶ・・・」

とにかく・・・この末っ子は・・・何をしでかすか・・・分らない狂気を秘めています。

それは死ななきゃ治らないものですから。

兄から「ストーカーだしな」と言われて「そんなにひどいことはしていない」と平気で言うところが・・・恐ろしい感じです。

「殺してないよ・・・ちょっと心臓をナイフで刺しただけだよ」とか言いそうですな。

ある意味・・・脚本家の狂気の分身だよねえ。

兄から許しをもらった暁は農作業の休憩時間に・・・多香子にプロポーズである。

「一生・・・一緒にいさせてくれ」

「なんて」

「ケコンしてください」

二人はむさぼるように唇を交わし、全身全霊で愛し合うのだった。

とりあえず・・・嫁の梓(蒼井優)の実家に転がり込む旭だった。

「早く、引っ越し先捜してよね」

「うん・・・お母さんと一緒だと二番目の子が仕込めないしな」

「声を出さなきゃ大丈夫じゃない」

「いや・・・お前・・・声、大きいじゃん」

「いやん」

あかりはついに保育器を脱する。

「人は何かを求めて戦う。理想のために戦う。しかし、実際のところ・・・戦うのがすきなんじゃないのか」

「なんだい・・・」

「いろいろと理由をつけて・・・不倫を飾っても要するにやりたいからやってたんだなっていう話」

「思い出はもう少し美化しようよ・・・」

不毛の関係を絶つ・・・医師と看護師だった。

整理してみよう・・・。

ひかり・・・独立して一人暮らし。

暁・・・結婚して多香子と同居。

旭・・・梓の実家で姑と同居。

陽・・・夢を追うホームレス。

旦・・・受験生のホームレス。

こんな感じである。

じゃ・・・香澄はホームレスの恋人か。

とにかく・・・こうして佐藤家は一家離散したのだった。

貧乏人にもそれぞれの人生がある。

たとえ・・・それがどんなに悲惨なものでも・・・。

飯場飯場と渡ってく

俺は一生流れ者

だけど俺たちいなくなりゃ

ビルも道路もできゃしねえ

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2014年9月24日 (水)

美しさは善ゆえに呪われ、醜さは罰ゆえに祝福される(広末涼子)

いよいよ、夏も終わりである。

暑さ寒さも彼岸まで・・・でございますから。

上野周辺の墓地をめぐる一日は・・・デング熱リスクのために幽かな緊張感を漂わせる。

しかし・・・どうして、沖縄をスルーして東京なんだ・・・。

2003年まで生物兵器分類だったデング熱ウイルスがそうでなくなったのは・・・威力が低いことにつきるだろう。

それでも諦めずにデング熱兵器を開発していた研究者が・・・ついに疲れ果てて・・・代々木公園あたりに・・・投棄したんだよね・・・きっと。

妄想的にはな・・・。

で、『聖女・第5回』(NHK総合20140922PM10~)脚本・大森美香、演出・水村秀雄を見た。女に狂う人や、男に狂う人は日常的な存在である。あなただけが生きがいなの・・・てなこと言われてその気になってしまう人は多いものだ。そこそこ美男美女に生まれ、まあまあの経済力を持ち、健康な心身を持っていれば「素敵な恋愛」は入手可能だが・・・多くの人にとってそれは「素敵な恋愛風」の何かなのではないかと思うことがある。それを得られずに年齢を重ね・・・ふと・・・目の前にそれらしきものが翳された時、飛び付かずにいられる人は少ないのかもしれない。ただ・・・ちょっとした純粋な愛欲を交わしただけなのに・・・それがすべてとのめり込み・・・別れ話が出ると破滅しようとする男がいれば・・・魔性の女の称号を美しい人はたやすく与えられてしまうのである。

Swpp004「聖女」の製作者かもしれないフェルメールには「取り持ち女」(1656年)という作品がある。描かれているのは売春宿の情景である。男性が二人、女性が二人描かれていて・・・向かって右端の女は売春婦である。取り持ち女とは客に売春婦をあてがう・・・所謂、やり手婆である。客が売春婦に料金を直接渡さずに取り持ち女に渡すのは・・・もちろん・・・管理売春の方がリスクが少ないからである。しかし、金銭と女体というものの間にワンクッション置きたい客側の心理がないわけではない。つまり・・・擬似恋愛気分のようなものである。同じ作者だから当然だが・・・聖女と売春婦の表情は似ているような気がする。だからなんだということですが。

一審で無罪を得た基子(広末涼子)は前原弁護士(岸部一徳)の手配で記者会見に応じることになる。

ホテルの一室で心の準備をする基子は黒坂弁護士(田畑智子)からハンドクリームを借りる。

歳月が衰えさせた肉体を繕う基子の心は揺れるのだった。

そこに擬似人格・・・おそらく基子の幻想としての・・・阿川博之(浜野謙太)が現れる。

「君には相応しくない安物だね」

「仕方ないじゃない・・・ここは凌ぎ所だもの」

「しかし・・・上手く切り抜けたな」

「だって・・・すべては誤解の産物だもの」

「おやおや」

「あなただって・・・死んじゃうことはないのに」

「もう・・・終わったことだ」

「私は淋しかったよ・・・友達がいなくなって」

「友達か・・・友達以上になろうとした俺がバカだったのか」

「そりゃ・・・そうでしょ・・・私とあなたの愛はつりあわないじゃない」

「愛は天秤にかけるものなのか」

「さあ・・・どうかしらねえ」

擬似人格・阿川は消えた。

基子の病んだ心は安らぎを感じるのだった。

新人弁護士・中村晴樹(永山絢斗)は千倉泰蔵(大谷亮介)から「基子が床に火のついた煙草の吸殻を落したのを見た」という記憶を知らされ・・・心が乱れていた。

しかも・・・それを看護師として居合わせた・・・婚約者の本宮泉美(蓮佛美沙子)に聞かれてしまったのである。

「しばらく・・・誰にも言わないでくれないか」

「わかった・・・私はあなたを信じてるから・・・」

一体・・・何を信じているのか・・・複雑な気持ちの二人だった。

おそらく・・・二人の間にはそれぞれにとって都合のいい信頼が横たわっているのである。

記者会見にはゲスニックマガジン西条記者が現れた。

「聖女っていいますが・・・そういう貴方は金目当てで男と付き合っていたわけですよね」

「それはどうでしょうか」

「だって・・・お金をたくさんもらっちゃってたんでしょう」

「あなたは・・・デートの時、相手にお金を払わせない男性と・・・なるべく相手にお金を払わせようとする男性・・・どちらのタイプですか」

「えええ」

「お答えは結構です・・・もし後者だったら・・・相手の女性がきっとお金持ちなんでしょうねえ」

「ええええええ」

「私はたくさんのお金を相手の男性からいただきましたが・・・そのことで・・・相手の方から文句を言われたことはありません・・・どの方も・・・優しい方だったんだと思います」

「あなたは・・・聖女なんですか・・・それとも魔女なんですか」

「さあ・・・私は・・・ただの女だと自分では思っています」

「そこに愛がありますか」

「私にはわかりません」

前原弁護士はまとめに入るのだった。

「皆さん・・・愛を美化するのは程々にしましょうよ。愛だって所詮、欲望の一つなんですから。経済的に恵まれない人がイミテーションの宝石を恋人に贈るのと経済力のある男性が高価な宝石を贈ることの差異についてあれこれ言っても仕方ないでしょう。愛は地球を救うって言ったって募金というのは・・・お金を募るっていうことじゃないですか。愛こそがすべてでビートルズは大儲けですよ」

「・・・」

控訴によって展開される裁判で不利な材料になりかねない「千倉の記憶」について前原に相談しようとする晴樹。

しかし、言葉を選ぶうちに機会は失われる。

そして・・・「肘井基子を応援する会」に前原に招待された泉美が現れる。

激しく動揺する晴樹だった。

完全に二股かけちゃってる男の表情である。

おそらく・・・晴樹に釘をさすために・・・泉美を基子に紹介する前原だった。

「この子は・・・中村弁護士の婚約者の・・・泉美ちゃんです」

「婚約者・・・ですか」

ただ一人愛している男・・・晴樹に婚約者がいたことに激しく動揺する基子だった。

(婚約者・・・婚約者・・・婚約者・・・婚約者・・・婚約者)

心の病んだ基子は眩暈を感じるのである。

「なんだ・・・中村さんに・・・あんなに素敵な婚約者がいるなんて」

アルバイトの田中みはる(清水富美加)は呟く。

「なんだ・・・みはるちゃんは中村を狙ってたのか」

小池弁護士(田中要次)は少し落胆するのだった。

妄想的には・・・。

「婚約者キターッ!」

「あるよ」

・・・という会話になっている。

「いえ・・・私・・・基子さんは・・・中村さんのこと・・・好きなんじゃないかと思って」

「えええ・・・そんな」

話に割り込む黒坂弁護士。

「君の恋人は無職だもんなあ」

「ヒモですか」

「言いたい放題ね・・・私はね・・・こわいの・・・あの基子って女が」

「いかにも女の敵ですよね~」

「あなたも・・・ちょっと恐ろしい子かも・・・」

「いやいや~・・・そんなことないですよ~」

恐ろしい感じで気が利くみはるは・・・何故か・・・千倉に基子の携帯電話の番号を渡しているのだった。

病院の公衆電話から・・・電話をする千倉。

「基子さん・・・僕の連絡先がわからなくて困っているんじゃないですか・・・連絡ください」

留守番伝言サービスに語りかける愛欲に溺れ色惚けした夫を・・・妻の文江(中田喜子)は残念な気持ちで見つめる。

ホテルに戻った基子は晴樹からの電話を心待ちにしていたために・・・何度目かの千倉の着信に応じてしまう。

「あ・・・基子さん・・・ようやく・・・つながった」

「千倉さん・・・」

「もう・・・基子さん会いたくて会いたくて」

「意識をとりもどされてよかったです・・・一日も早いご回復をお祈りしています」

「何をいってるんだ」

「私もこの機会に・・・一人になって一からやりなおす覚悟です」

「え」

「千倉さんもご家族と幸福にお過ごしくださいますように・・・」

「基子さん・・・」

「・・・」

「あ・・・あああ・・・ああああああああ・・・俺は・・・・ああああああバカだったのかあああああ」

思わずかけよる文江。

「あなた・・・しっかりして」

「ほっといてくれ・・・俺はもう・・・死ぬ」

「あなた・・・目を覚まして」

「俺は・・・起きてる・・・俺はおしまいだ・・・このドラマに俺の居場所はないんだ」

「そんなこと言ったってもう・・・相棒の世界には戻れないんですよ・・・大河ドラマでは切腹しちゃったし」

「あああああああああ」

晴樹のちょっと鈍いところがある母親(筒井真理子)に呼び出され、中村邸を訪問する泉美。

待ち構えていたのは怪しい兄の克樹(青柳翔)だった。

その狂気が泉美を襲うが・・・克樹はレイプしたりする根性はないのだった。

「晴樹は初恋の人を救って高揚してるだろうねえ」

「初恋の人?」

「っていうか・・・初体験の相手」

「基子さんが・・・」

「傷ついたかい」

「いえ・・・晴樹さんが昔の悲しい恋をした話は聞いてましたから・・・相手が基子さんと聞いて少し驚いただけです」

「へえ・・・」

「それに・・・この前、婚約者として紹介してもらいましたし・・・」

「あの女は・・・君のこと・・・凄く嫌いだと思うぜ」

「え・・・なんでそんなことを言うんですか」

「だってさあ・・・君は太陽みたいに明るいじゃないかあ。あの女は薄暗いところにうずくまった影みたいなもんさ。僕だってさあ・・・昔は東大生だったんだあ。バカな晴樹と違ってさあ・・・陽のあたる場所にいたのさあ。だけどうちの親はバカな子が好きで晴樹は親の愛情一人占めだったんだあ。僕はさあ・・・そんな晴樹が憎くて憎くてたまらなかったんだあ」

襲われる・・・と覚悟を決めた泉美だったが・・・ひょっとすると童貞もしくは性的不能者である克樹は退散するのだった。

「ちくしょう・・・君が傷ついて苦しむ顔がみたかったのにいいいい・・・ガッカリだぜえええええ」

どうやら・・・克樹もまた心を病んでいるらしい。

しかし・・・泉美はなかなかに芯の強い子だったのである。

一方、行方をくらます基子。

晴樹との思い出の場所で「私を捜してごらんなさい」にチャレンジするのだった。

まんまと罠にはまったかのように見える晴樹。

しかし・・・黒坂弁護士を同行させている。

「後で・・・ホテルに来て・・・」

二人をまるでテレパス七瀬のように補足する泉美。

ホテルのカフェまで尾行をするのである。

タクシー捕まえてあの車を追って・・・をやったのだな。

「あのこと覚えている・・・」

「・・・」

「大人になったら・・・恋人にしてくれるんでしょう・・・」

「部屋に行きましょう・・・」

部屋まで尾行しようとした泉美だったが・・・千倉が病院の屋上から飛び降りた緊急連絡が入り足止めされるのだった。

二人きりになった基子と晴樹。

純愛という純粋な愛慾の波が押し寄せるホテルの一室。

基子は晴樹の唇を奪う。

「あなたを独占しようなんて思わない・・・婚約者がいてもいい・・・だってあなたには何もかも知られてしまっている・・・こんな女なんだもの」

「本当に・・・僕はあなたのすべてを知っているんでしょうか」

基子の愛撫を拒絶し・・・問いかける晴樹だった。

見つめ合う二人・・・。

病んだ基子の心は噛む爪を求めている。

「すべてを話せばきっと愛してくれる」

「そんなはずないでしょう」

基子の中の聖女と魔女が激しく言いあうのだった。

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2014年9月23日 (火)

逃れられない罪と彷徨う罰を追いかけて司法試験(木村拓哉)

女事務官を必ず女検事にしてしまう男検事の話である。

寄り添いたいのではなく・・・本人になりたいという欲望はある意味、変態的だが・・・そこがいい。

真実は時に残酷なものである。

天寿を全うしようが・・・軍用機による爆撃で飛散しようが・・・死んだ人間の無残さは・・・恐ろしいものだ。

それを見つめ続けることが・・・人間性を破壊する場合がある。

なにしろ・・・人間は慣れるのである。

ドラマに限らず虚構は・・・真実を伝えないのが基本だ。

しかし・・・真実とは何かを伝えようとはする。

このドラマの素晴らしさは・・・恐るべき完璧さで・・・「当たり前のこと」を語ることにある。

何が当然かは・・・人それぞれによって違うかもしれないが・・・多くの人間が・・・そこに「希望」とか「理想」とか・・・「そうあってほしいこと」を見出すのである。

ダメ人間の集合体である社会が・・・少しマシになるために・・・そう言う虚構があることは健全なことだ。

もう、基本がなってないドラマが乱立する中で・・・一つの教科書的な存在なのである。

まず・・・捨て方が上手いのだ。

たとえばこのドラマでは「検事と事務官」というコンビが設定の基本である。

コンビがいくつか集まってチームを作っている。

最終回・・・「難題」が主人公ではないコンビによって発見されてしまう。

しかし・・・発見に至る経緯は・・・主人公の影響であることが明らかだ。

「難題」をもてあまし・・・苦悩するコンビとその他のチームのメンバー。

そこで主人公は・・・「大前提」を語る。

苦悩から解放されたコンビたちは主人公に吸収されるのである。

さらに「難題」のキーパーソンとして・・・引退した検事が提出される。

そこで当然、ベテラン事務官がクローズアップされる。

ストレートなら・・・引退した検事と・・・ベテラン事務官は・・・かってのコンビだったという「手」がある。

しかし・・・それではあまりにも主人公の影が薄れるのである。

そこで・・・その「手」は隠されるのだが・・・引退した検事とベテラン事務官の対峙という構図は残るのである。

そして・・・主人公が・・・クローズアップされてから・・・隠し味として・・・ヒーローでなかったものがヒーローを追いかけてヒーローになるという・・・お約束が果たされて行く。

何を捨てて何を残すか・・・主人公の破天荒な行動に対して用意された数々のフォローと同様に・・・澱みなく選択がなされていくのである。

つまり・・・考え抜かれているのだなあ。

美味しい料理の口当たりの良さは・・・料理人の苦労を感じさせないということなのである。

まあ・・・そういうドラマばっかりだと刺激不足になりますけど~。

で、『HERO(第2期)・最終回(全11話)』(フジテレビ20140922PM9~)脚本・福田靖、演出・鈴木雅之を見た。HEROという文字はHとエロで出来ているので英雄は色を好むわけだが・・・なんじゃそれは・・・このドラマのヒーローはヒロインと合体せずに・・・ヒロインをヒーローに変身させてしまうのである。13年前に合体しかかったカップルがうやむやにされ・・・一部お茶の間が雨宮(松たか子)の登場を待望してもそこはスルーされて・・・雨宮検事の成立だけがまことしやかに語られる。一方で・・・まことしやかに語られる牛丸次席検事(角野卓造)にそっくりな娘も登場しない。釣りである。そして・・・伝説「女事務官を必ず女検事にしてしまう男検事」の成立のために・・・ネット通販の宅配システムは・・・「司法試験ドットコム」の書籍を発送するのだった。

ヒーローには逆風がつきものである。

押坂副部長(手塚とおる)の捜査方針に叛旗を翻した久利生検事(木村拓哉)と麻木千佳事務官(北川景子)は特捜本部から東京地検城西支部に返品されてしまう。

城西支部では・・・田村検事(杉本哲太)と遠藤賢司事務官(八嶋智人)が殺人容疑の被疑者・南雲尊之(加藤虎ノ助)を連続通り魔事件の犯人であると確信していた。

しかし・・・一連の事件の一つが・・・別の被疑者を起訴して有罪判決を得ていたのだった。

しかも・・・被疑者はその後、病死している。

これが冤罪であることが判明すれば・・・「検察組織」の面子は丸つぶれになる。

「職務」と「組織の保護」の間で揺れる城西支部。

しかし・・・久利生は「そんなこと・・・事件の当事者には何の関係もないじゃないですか」と痛いところをつくのだった。

そして・・・城西支部は一つとなり・・・裁判の矢面には久利生が立つことになる。

検察内部では・・・川尻健三郎部長検事(松重豊)が矢面に立たされる。

「なんだと・・・わざわざ・・・冤罪を立証するというのか」

「裁判に勝っても負けても検察にダメージあるじゃないか」

「一体、何を考えているんだ」

「罪を犯したものを罰する・・・そのために職務を遂行しています」

鬼尻だった。

自分好みの真実を追求する新聞記者・八木(小市慢太郎)はネタを求めて傍聴席に座る。

反権力こそがジャーナリズムの存在意義だと考える八木にとって司法という権力は最初から仮想敵組織である。

その落ち度を見逃さない態度で裁判を見守る。

「滝翔太殺人事件」の裁判だった。

裁判員裁判である。

「被告・南雲尊之は所持していたナイフで滝翔太さんを背後から刺し死に至らしめたものである。罪状・殺人・刑法199条」

被害者の気持ちに寄り添う原告側として久利生検事は精一杯の正装である。

南雲は起訴事実を否認する。

「ナイフは亡くなった滝翔太さんが所持していたもので・・・酒場での口論の後で滝さんがおいかけてきて私を刺そうとしてもみあいになり、あやまって自分自身を刺してしまったものです。これが真実です」

南雲被告の弁護人・松平一臣(羽場裕一)は述べる。

「つまり・・・これは不幸な事故であり・・・弁護側は無罪を主張します」

傍聴席の被害者の母親・滝光恵(朝加真由美)は遺影を抱いて唇をかみしめる。

久利生はジャブを繰り出すのだった。

「被告人・・・あなたはなぜ、そこにいたのですか」

「え」

「駅から離れた路地裏に・・・」

「飲み足りなかったので・・・」

「しかし・・・現場の周囲は住宅街で・・・そういう店はありません」

「・・・」

「けれど・・・被害者の住んでいたマンションはあります」

「・・・」

「逆じゃないんですか・・・帰宅途中の被害者を被告人が追いかけたのでは・・・」

「・・・」

松平弁護事務所の弁護士・理紗(朝倉えりか)は朝ドラマのヒロインのような性格らしく・・・動揺の色が早くも隠せないのだった。

「先生・・・被告・・・やっちゃってますよね」

「静かにしたまえ」と松平弁護士・・・。

「まあ・・・いいでしょう・・・ところで・・・被告人は画廊を経営していますね」

「はい」

「事務員の方は長くお勤めらしい・・・」

「そうです・・・」

「その方が・・・三年前の五月二十九日・・・画廊はお休みだったと言っています」

「なに・・・」

「あなたは何をしていましたか・・・」

「そんなこと・・・覚えているはずないだろう」

「そうですか・・・日本ダービーでオルフェーヴルが勝った日ですよ」

「あ・・・」

「それから・・・六年前の十一月二日も画廊はお休みでした・・・」

「・・・」

「あなたは何をしてましたか・・・ちなみにこの日は・・・ウオッカが天皇賞(秋)を制しました」

「・・・」

「三年前のこの日・・・高校生が何者かに背後からナイフで刺され重傷を負っています」

「・・・」

「六年前にはOLが何者かに背後から刺され重傷を負いました」

「裁判長・・・検察は本件とは無関係の話をしています」

「検察は・・・説明してください」

「本件の現場付近では・・・過去に同様の未解決事件が発生しています」

「しかし・・・それと本件とは・・・」

「検察は・・・過去五件の犯行が被告によるものだと断定し・・・追起訴します」

「なんだって・・・」

思わぬ展開に弁護側一同が唖然とする中・・・新聞記者・八木は突然の大ネタ発生に舌舐めずりをするのだった。

八木は早速未解決事件を検索し・・・その事件の一つがすでに解決済みであることに驚愕する。

「うわあ・・・検察が検察に喧嘩売っちゃってるよ・・・」

騒ぎの火種を確保して八木は万歳三唱するのだった。

これがジャーナリズムの正体である。

マスメディアは宮根誠司をはじめとして狂喜乱舞する。

記者会見で矢面に立つのは牛丸次席検事だった。

「もしも・・・今回の裁判で犯人が有罪となったら・・・過去の事件は冤罪ということですよね」

「そういうことになります」

「どうやって責任をとるおつもりですか」

「検察は・・・常に真実を明らかにすることに全身全霊で取り組んでいます・・・間違いがあればこれを糾し、取るべき責任は取る覚悟です」

その頃・・・特捜部では・・・「ヌカダ建設・額田太一社長から現職の国交大臣・橋場正太郎への贈収賄事件捜査」が新たな展開を迎えていた。

ヌカダ建設の社長室長・三島直也(石井正則)が金銭授受当日の運転手であることが判明したのである。

「確かに・・・私が・・・現金を運ぶ車を運転しました」

三島の証言は事件の突破口になるのだった。

歓喜に揺れる特捜部・・・。

しかし・・・押坂副部長は沈んだ気持ちになるのだった。

特捜部長(佐戸井けん太)がそれに気付く。

「どうした・・・」

「これというのも・・・あの久利生って奴が・・・運転手の件で逆らったおかげなんですよね」

「つまり・・・あいつがアレをやらかさなかったら・・・事件の捜査は暗礁に乗り上げてたってことだな」

「ええ・・・」

漸く・・・久利生の恐ろしさに気がつく二人だった。

城西支部では・・・十五年前の一件についてミーティングが行われていた。

「捜査線上には・・・南雲尊之が浮かんでいたわけだよな・・・」

「しかし・・・国分検事は別人を起訴して・・・有罪判決が出て・・・直後に病死・・・」

「もしも冤罪なら・・・酷いことですね」

「これは・・・どうしても・・・国分検事に当時のことを問いただす必要があるな・・・」

「しかし・・・冤罪を出したかもしれないと言っている我々に協力してくれるかな」

「難しいかもな・・・」

「しかし・・・やるしかない」

トップ・バッターは田村検事・遠藤事務官ペア。

「当時のことを・・・」

「帰ってくれたまえ」

門前払いである。

二番手は・・・馬場検事(吉田羊)・井戸事務官(正名僕蔵)ペア。

「お話だけでも・・・」

「話すことはない」

馬場検事の色気はまったく通用しないのだった。

三番手は・・・宇野大介検事(濱田岳)・末次隆之事務官(小日向文世)ペアである。

当然・・・お茶の間もあまり期待していないわけである。

最終的に・・・久利生・麻木ペアが輝くための前座・・・誰もがそう思うわけである。

「よってたかって私をおとしめようというのか」

「そんなつもりはありません・・・ただ・・・私は・・・本当のことが知りたいのです」

「私はもはや・・・検事でもなく・・・法律家ですらない・・・無関係の人間だ」

結局・・・引き返す二人。

しかし・・・元検事・国分秀雄(井上順)の・・・住まいの・・・なんという侘しさだろう・・・。

玄関開けたらすぐに居間である。

表から・・・国分の姿は丸見えなのだ。

家族がいる気配もなく・・・いつも一人・・・家で絵を描いている。

そのことが・・・国分の傷の深さそのものを物語っているのは明らかだった。

その傷に・・・塩を摩り込む・・・末次事務官だった。

「元検事とか・・・そんなの関係ないでしょ・・・実際に人が一人死んでいるんだ・・・人としてどうなんだって話ですよ」

「す・・・末次さん・・・」

「あ・・・」

その一部始終を新聞記者・八木が見ていた。

そして・・・国分の存在を・・・弁護側に伝えるのだった。

いよいよ・・・久利生・麻木ペアの出番・・・。

しかし・・・二人は・・・「St.George's Tavern」のマスター(田中要次)の出番を作っているのだった。

「ねえ、マスター、マスターにも夢はあるの?」

「あるよ」

「麻木・・・明日・・・付き合ってくれないか」

「ええっ」

しかし・・・デートは鍋島利光元東京地検次席検事(故・児玉清)の墓参りだった。

「久利生さん・・・こんなに偉い人とお友達だったんですか」

「オンエア的にお彼岸モードのサービスだけど・・・そんなに親しくはなかったかな・・・実は俺・・・被疑者として・・・取調を受けたことがあったんだ」

「え・・・」

「結局、不起訴になったんだけど・・・担当検事の・・・その人の取調がすごくてさ・・・俺・・・この人みたいになりたいって思った」

「・・・それで・・・検事に・・・」

「その検事と鍋島次席は仲がよかったらしい・・・」

「へえ・・・」

「そのおかげで・・・俺は・・・鍋島次席に見守ってもらえたらしい・・・」

「なるほど・・・」

「首になるところを左遷ですんだりとか」

「そ、それは微妙なフォローですね」

「でも・・・おかげでずっと検事でいられる」

「どうして・・・久利生さんは検事を続けているんですか」

「悪を追いかけて・・・正義のレールをひた走る・・・蒸気機関車でいられるからさ」

「うわ・・・シュッシュッポッポですか・・・」

「せめて・・・トーマスと・・・」

そして・・・クライマックス・・・。

国分検事が弁護人側の証人として出廷したことにショックを受ける末次・・・。

「俺のせいで・・・」

「何を言ってるんです・・・我々はチームじゃないですか」と末次を励ます井戸・・・。

実は末次はゴール前に素晴らしいパスをすでに蹴り込んでいたのだった。

追いかけてヨコハマ

あの人が逃げる

残した捨てゼリフに

誰か見覚えはありませんか

自信満々で・・・証人に質問をする松平弁護士。

「当時、取調を担当した検事として・・・あなたは・・・南雲尊之を起訴しなかった・・・それはなぜですか」

「彼は・・・目撃証言に背格好は一致していたし・・・現場付近にいた・・・しかし・・・起訴された人物には・・・被害者との金銭トラブルがあった・・・」

「つまり・・・南雲尊之は犯人ではないと確信したということですね」

「当時の結論としてはその通りです」

「以上です」

久利生はすでに・・・国分検事の心を見通していた。

だからストレートを繰り出すのだった。

「国分検事・・・あなたは優秀な検事だったそうですね」

「さあ・・・」

「しかし・・・あなたは・・・十四年前に突然退官された・・・」

「検事が途中で退官することは珍しくあるまい」

「けれど・・・あなたは法曹界から引退された・・・」

「静かに暮らしたかったのだ・・・」

「何故です・・・」

「・・・」

「今日は裁判員裁判です・・・あなたが検事の時にはなかった制度です」

「・・・」

「皆さん・・・裁判は一種の茶番です・・・もしも・・・誰も嘘をつかないとしたら・・・ですがね」

「・・・」

「なにしろ・・・真犯人はすべての真実を知っている・・・真犯人が正直に話してくれれば裁判なんて必要ありません・・・けれど・・・多くの被告は嘘をつくものです」

「・・・」

「しかし・・・だからこそ・・・被告以外のすべての人間が正直であることを求められます」

「・・・」

「そのために・・・証人は嘘をつかないことを誓うのです・・・一体、誰にでしょう」

「・・・」

「信仰なきこの国では・・・神には誓えない・・・結局・・・自分自身に恥ずかしくないように・・・誓う他ないでしょう・・・国分さん・・・あなたは何かを話すために・・・ここに来られた・・・どうか・・・お話し下さい」

「私は・・・ただ・・・謝りたかったのだ」

「誰に・・・何を・・・」

「私が冤罪を着せたあの人にだ・・・」

「何を言ってるんですか・・・」とあわてる松平弁護士。

「しかし・・・あなたは・・・信念を持って・・・彼を起訴したんでしょう」

「その通りだ・・・」

「だが・・・次の年・・・同じような事件が起きて・・・容疑者の中に・・・南雲尊之がいた」

「犯人は南雲だ・・・私は自分の過ちに気がついた・・・しかし・・・私が無実の罪を被せた彼は死んでいた・・・もはや・・・償うことはできない・・・だから私は検事を続けることができなかった・・・」

「えええええ」

「私は真実から逃げたのだ・・・その結果・・・犠牲者は次々に現れた。ついに・・・死者が出た。すべて・・・私の不徳の致すところです・・・被害者の皆様には心からお詫びします・・・」

「一体・・・あなたは何を言ってるんです・・・」と弁護人。

「私は一人の人間として・・・罪を告白しているのです」

「あ・・・」と驚く末次事務官。

騒然とする場内。久利生は仕上げにかかるのだった。

「それでは証人にお聞きします・・・今、最初の事件の加害者は誰だと思われますか」

「南雲尊之です」

「違う・・・俺はやってない。やってない。やってない。やってない。やってない。やってない。やってない。やってない。やってない。やってないやってないやってないやってな・・・・」

九官鳥化した南雲尊之には「無期懲役」の有罪判決が出た。

新聞記者・八木は意外な結末に驚いた。

記事はあまり面白くならなかった。

八木が記事を書く新聞の読者は下衆だからである。

そして・・・矢面に立った人々の首は・・・「勝訴」によって辛うじてつながるのだった。

勝てば官軍だからである。

もちろん・・・久利生の姿勢は勝敗とは無縁である。

自分の信じる道をひた走るのみである。

そして・・・その線路には・・・雨宮号に続いて麻木号が乗り入れるのだった。

事務官発、検事行き・・・そのためには司法試験を突破しなければならないのだ。

「結局・・・久利生さんの花嫁には誰もならないわけだ」と宇野検事はニヤニヤするのだった。

そして、城西支部には・・・回転すし食い逃げ犯(森下能幸)が送られてくる。

マツタケの窃盗犯(佐古麻由美)も送られてくる。

久利生の前には・・・ロッキー(ウォルター・アントニー)が・・・。

「あなたは平成二十六年十月二日・・・ムービング・シェイバーはホントに 効くんですか?」

久利生は正義の道をひた走る・・・でもミーハーなのである。

また会える日まで・・・ごきげんよう・・・さようなら。

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Hero011ごっこガーデン。ヒーローに会える並木道セット。アンナ13年は結構長いけど・・・三ヶ月はあっと言う間・・・楽しい時はいつの間にか過ぎ去って行くのぴょん。でもね・・・思い出は永遠にとどまるのぴょ~ん。もちろん、認知症になったらはらほれひれはれぴょんぴょんぴょん・・・順風満帆の時も逆風真っ只中の時も・・・ダーリンへの愛は変わらないのぴょ~ん。アンナもブレません。ヒーロー一座はますます広がっていくのぴょん。二度と演じられない役も愛おしいけど・・・何度もできる役もそれなりに楽しいアンナなのなのぴょん・・・じいや~カエルの蚊取りも作って~・・・もしも・・・ダーリンが昼顔さんだったら・・・やばえろいぴょんシャブリ今週も登場人物チェックをしたのでありました~・・・シーズン3が楽しみなのでありました~manaがんばった大賞を最終回の後で見る・・・NGは後からしみじみ笑うもの~なんだわ~。その方がよかろうず。牛丸の娘も雨宮もこなかったけれど~通販の人キターッ!・・・人それぞれの正義を持ち寄って・・・真実を捜すパーティー・・・それが裁判・・・本当のことなんて言えない被告こそがパーティーの主役・・・無期懲役はおみやげだぎゃあ・・・意外とすぐにつづきがあるでよ~・・・ちなみに次回は女性警備員が登場するかもコスプレで~すまこ最終回も大満足だったデスヨ~。ヴェテランとなった久利生くんは軽いけど渋いという軽妙洒脱を体現してましゅ~。難しい言葉は夏の家庭教師の地獄の猛特訓で覚えました~ヒエ~。映画化とか続編はあるのかなあ。この世から悪い人はいなくならないのでネタには困らないんてしゅよね~。秋ドラマはまこの竹様久しぶりの登場でしゅ~・・・デヘヘmari出勤だよ!全員集合なフィナーレ・・・ドリフの香りがしますね。そして・・・今日もお仕事です・・・良心という言葉が滅びないように祈りましょう・・・来週はPちゃまですよ~

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2014年9月22日 (月)

この頃の厄妄想を入れ置きし鉄鉢袋今破るなり・・・と佐々内蔵助成政(岡田准一)

天正十六年(1588年)、切腹した佐々成政の辞世である。

成政の墓は浄土宗法園寺にある。

つまり、生前は念仏を唱えていたわけである。

この頃というのがいつの時期を指すのか・・・は想像するしかないが・・・直近では・・・肥後統治失敗により、秀吉によって幽閉され、沙汰を待つ間ということになる。もちろん・・・信長死後の紆余曲折を指すのかもしれないし、ものごころついて後の全生涯を思ってのことかもしれない。死者の言葉には秘密が多いのである。

厄妄想というのは・・・死にいたるあれやこれやをああでもないこうでもないと思いつめたことである。

厄(やく)というのは疱瘡のことで・・・一生に一度しかかからない病であり・・・それは死の暗喩である。

妄想(もうそう)というのは仏教では真実でないことを真実と思いこむことなのだ。

で・・・それを入れておいた鉄鉢袋を今、破るわけである。

鉄鉢(てっぱつ)は曹洞宗では応量器、臨済宗では持鉢と呼ばれる器のことである。

喜捨による糧をいただき、布施を受ける器でもあり、僧侶の食器でもある。

鉄鉢袋とはそういう施されたものをためておく袋でもあり、鉄鉢の収納具でもある。

切腹を申しつけられ・・・心にためこんでいた・・・苦しみを解き放つ。

ああ・・・清々する・・・と成政は詠んだのだった。

転がりでるのは鉄鉢・・・つまり、遺骨である。

死を命じた因縁深い秀吉に「お前だっていつかそうなる」と語りかけたのだろう。

いさぎいいようで往生際の悪い人柄が偲ばれる。

で、『軍師官兵衛・第38回』(NHK総合20140921PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は31行で微増ですが・・・なんと・・・待望の浅井三姉妹の長女・茶々に加え、宇都宮鎮房の娘・鶴姫も描き下ろしイラスト大公開で超お得でこざいます。姫君二人にうっとりでございますねえ。歴代茶々の中でも極めて存在感のある二階堂ふみ・・・滅多に描かれることのない鶴姫を抜群の存在感で印象付けた市川由衣・・・両女優の魂ほとばしっておりますな。女中衆が団結なんていうありえないにも程がある妄想を描くくらいなら・・・光と糸に・・・誰にも漏らさぬ心情を口走る官兵衛と長政・・・でよかったと考えます。「やるしかなかったんだよお」「官兵衛様、凄いぞなもし」「やっちゃったよお」「長政様、ど偉ゃあでえ」的に・・・。男と女なら時代を越えてもよろしいでしょうからねえ。

Kan038天正十六年(1588年)四月二十日、黒田長政は豊前国で宇都宮鎮房を謀殺する。その四日後に黒田官兵衛は鎮房の嫡男の城井朝房を肥後国で謀殺する。父と子による共同作業というか・・・見事な連係プレーである。鶴姫とその侍女団はその前後に処刑されたと考えられる。伝説として磔刑の場所も伝わっており・・・これを否定する根拠は薄いが・・・ドラマでは逃亡説を採用している。もちろん、この場合は監視役の侍が切腹を命じられているわけである。また、逃亡説では逃亡後、鶴姫は自害して果てている。そういうところをねぐるとおとぼけファンタジーになってしまうので注意が必要である。朝房の妻である竜子は実家に逃げ戻り、実父・秋月種実の元で秘匿され、朝房の子・朝末を育てあげる。豊前宇都宮氏の血脈は辛うじて保たれることになる。閏五月、佐々成政が切腹。肥後国北部は加藤清正が拝領し、南部には小西アウグスティヌス行長が配置された。日蓮宗の加藤清正とキリシタン小西行長の宗教的対立が肥後国に吹き荒れるのだった。この対立が関ヶ原まで続くことは言うまでもない。長政はキリシタンとして小西に・・・北政所派として清正に近く、いろいろと巻き込まれ板挟みになるのである。七月、秀吉は刀狩令を発布する。もちろん、一揆対策である。続けて海賊停止令を発布。これも一揆対策であるが同時に豊臣水軍を編成し、密貿易を封じたのである。秀吉の天下統一事業は着々と進行していた。八月、琉球王国に対して服属交渉を開始する。この頃、茶々が側室となったことは翌年、鶴松が誕生することから確実である。

「人質を如何するのです」と糸姫が問う。

「鶴姫のことか・・・」と長政は情事のあとで身を清める正室を見下ろして言った。

糸姫は濡れた布で長政の陽根を拭いながら囁く。

「兄上からの報せで・・・情け無用のことと申してきました」

「案ずるな・・・殿下が・・・人質成敗を命じられた以上・・・従うまでじゃ」

糸姫が幽かに安堵した気配が下腹部から伝わってくる。

後藤又兵衛は鶴姫と侍女団の仕置きを命じられた。

すでに大文字の磔台を人数分揃えている。

謀反人となった人質たちは又兵衛配下の足軽衆に引きたてられ、刑場となる中津城下の千本松河原で裸にされ磔台にくくりつけられる。

あちこちで女たちのわめく声、罵る声が起きる。

最後に鶴姫が幼さの残る体を磔台に横たえる。

顔は蒼白だが・・・屈辱に耐えしのぶように口は固く結ばれている。

足軽たちは大の字にそって鶴姫の脚を大きく開かせる。

やがて大文字の磔台は斜めに掲げられる。

又兵衛は槍をしごいた。

「なるべく・・・苦しまぬように・・・しまする」

又兵衛は小声で囁いた。

鶴姫は幽かに頷く。

又兵衛は最初に鶴姫の股間を槍で貫いた。

又兵衛の熟練した槍術は内蔵を貫き、一気に心臓に達する。

槍を引きぬくとすでに鶴姫は絶命していた。

足軽たちは傾斜を起こして見せしめの位置に磔台を立たせる。

又兵衛の槍に残る血と臓物を弟の基景が麻布で拭う。

又兵衛は無言のまま、身分の高き順で女たちを刺し貫いていった。

見物人たちは喝采し、河原は汚物の臭気で満ちていく。

初夏の風が女たちの骸をさらす磔台の間を吹き抜ける。

大坂城では秀吉が茶々に溺れていた。

茶々は老いた秀吉の肛門に指を差しいれ、お市から伝授された秘孔を突いている。

すると果てたばかりの秀吉の陽根はたちまち蘇るのだった。

「おうおう・・・これは荒まじいのう・・・」

床の間には陽光がさしている。

秀吉は夜の間に茶々の寝屋に入ったのだがそれ以来・・・ずっと射精を続けていた。

茶々の白い肌が眩しい時刻になってもそのことは果てしなく続くのだった。

秀吉と茶々の愛液の匂いで部屋はむせるような臭気を発している。

「こんなことは・・・はじめてじゃ・・・」

「茶々とて・・・かようなことをするのは・・・殿下が最初でございます」

「おう・・・おおおおう」

初夜とは思えぬ手慣れた仕草で・・・秀吉のそそり立ったものを茶々の秘部がいつの間にか飲み込んでいく。

「おう・・・なんという・・・締め付けじゃ・・・と思えば甘く擦ってくる・・・極楽じゃ・・・これがこの世の極楽じゃ・・・うおう」

秀吉は変幻自在の化け物のような茶々の膣内で溺れていたのだった。

そして・・・ついに何度目かの射精を終えた秀吉は気絶した。

奈落の底に沈んだ秀吉を見下ろす茶々にはじめて淫蕩な笑みが浮かぶ。

「織田流くのいち秘義・・・秘水の術・・・ふふふ・・・殿下も他愛ない・・・もはや果ててしもうたかや・・・殿下の種は精が薄い・・・搾りつくすだけ搾らんとならんのや・・・まだまだ搾りつくさんとあきまへん」

茶々は裸のまま立ち上がると侍女に膳の仕度を命じる。

「腹が減っては女の戦ができへんしなあ」

大坂城は昼下がりだった。

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2014年9月21日 (日)

AKIRA(33)のGTO~高校聖母(松岡茉優)ラインを越えて保健室(三吉彩花)三代目ヒロイン(比嘉愛未)

「GTO」というコンテンツは魅力的なんだなあ。

AKIRA版は第一期に続き、スペシャル版を三回もやった上に・・・第二期まで・・・。

まさか・・・長期シリーズとか・・・考えているのか・・・。

まあ・・・やりたければやってもいいが・・・。

AKIRA版・第一期の平均視聴率は13.2%とまあまあだったがオリジナルストーリーで挑んだ第二期は平均視聴率*7.2%である。

これは・・・失敗なんじゃあ・・・。

だから・・・きっと第三期はないな。

で、『GTO(第二期)・第1回~最終回(全11話)』(フジテレビ20140708PM10~)原作・藤沢とおる、脚本・山岡潤平(他)、演出・白木啓一郎(他)を見た。平均視聴率28.5%だった反町隆史版ではヒロイン教師が冬月(松嶋菜々子)でリメイク第一期では冬月(瀧本美織)だったわけだが・・・その存在感の薄さが気になっていた・・・ところが第二期では・・・冬月は消滅し・・・ヒロイン教師として藤川ほなみ(比嘉愛未)が突出してくる。鬼塚英吉(AKIRA)は明修湘南高校2年A組副担任となっている。もはや・・・異次元の「GTO」と言っていいだろう。人気のキャラクターに寄りかかって行くやり方としては最も危険な「手」である。「もはやGTOではない」と言っても過言ではないからだ。

唐突に明かされる・・・鬼塚教師誕生の秘密・・・そんなこと言われてもである。

10年前・・・抗争に明け暮れていた鬼塚にはいじめられっ子の優等生・沢村功也(金井勇太)という親友がいたのだった。

そして・・・抗争相手の瀧澤茂(阿部亮平)に沢村は撲殺されてしまうのだった。

そんなこと言われてもな。

そして・・・沢村の遺言で鬼塚は教師になることを誓うのである。

そんなこと言われてもな。

そして・・・出所してきた瀧澤は鬼塚を逆恨みして・・・生徒を人質にとって体育館に立て籠もったりするのである。

そんなこと・・・。

そして・・・藤川ほなみは両親が離婚して姓が変わっているが・・・殺された沢村の妹なのだった。

そんな・・・もういいか。

さて・・・「GTO」の名物と言えば・・・頭脳明晰で・・・復讐のために陰謀をたくらむ美少女である。

いつもは「教師なんか信用しない」のが原動力だが・・・。

今回は・・・かって担任教師・木原(竹財輝之助)との交際を学校側に妨害され、教師にも生徒にも怨みを持つ宮地めいり(三吉彩花)が登場する。保健室に引き籠り・・・。

「私は絶対に許さない・・・みんな地獄に堕ちればいいのよ」

まあ・・・ここが最大の見どころと言っていいな。

そして・・・地獄に落とされるのが・・・明修湘南高校2年A組の学級委員・葛木(菊池風磨)の子供を身ごもった志条あゆな(松岡茉優)である。めいりによって秘密にしていた妊娠の事実を暴露されてしまうのだった。

定番の十代の妊娠である。

どのくらい定番かと言うと・・・「3年B組金八先生」(1979年)では中学生・浅井雪乃(杉田かおる)が同級生の宮沢保(鶴見辰吾)の子供を妊娠・出産し、「このこ誰の子?」(1986年)では進藤百合(中田喜子)が中学二年で輪姦され生んだ子供・拓也(保阪尚希)にレイプされて高校二年生で妊娠する杉浦葵(杉浦幸)もいるし、「14才の母」(2006年)では志田未来が三浦春馬の子供を妊娠・出産し、「女王の教室スペシャル・エピソード1~堕天使~」では戸田戸田恵梨香が妊娠して中絶を推奨されているし・・・「恋空」(2008年)では水沢エレナが妊娠して流産しまた妊娠したりしていている・・・もういいか。

まあ・・・ドラマにしやすい・・・ネタなのである。

基本的に十代の妊娠の是非が問われるのであるが・・・最終的には生むが生まないかの話になる。

今回は・・・養護教諭の野上多恵子(馬渕英俚可)が中絶の母体への悪影響にはあまり触れず、十代の未成熟な母体での出産のリスクを解いて中絶をアドバイスしたり、父親の母親である葛木一美(床嶋佳子)が我が子可愛さにより認知を拒否するなど・・・出産反対の風が吹く中・・・「命を守る覚悟」を説く鬼塚が・・・あゆなに出産を決意させるという流れである。

まあ・・・十代の妊娠ドラマに新たな歴史を刻んだGTOなのだった。

松岡茉優といえば「あまちゃん」の途中で、「斉藤さん2」に出演し・・・大鷹高校を妊娠して退学する前園冴も演じている。

来年、二十歳なのだが・・・もう一回くらいやって・・・高校生妊娠女優の座を築くといいな。

そんなもの・・・築いてどうする。

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2014年9月20日 (土)

俺たちは(岡田将生)エステの似合う(林遣都)四天王だ(窪田正孝)ぬああああ(藤原竜也)ちがうよ~ST赤と白の捜査ファイル(志田未来)

コメディー要素が少し追加されて・・・かなりマシになってきたシリーズ版。

しかし・・・まだまだアホ要素が足りない。

アオイホノオ」(テレビ東京)で焔モユル(柳楽優弥)がとんこさん(山本美月)に諭されてアホに専念するようにもっともっとアホになってもらいたい。

それにしても・・・山本美月の「実写版メーテル」の完成度の高さに多重人格一同の過半数が反応して思わず「メーテル~、メ~テル~」と叫びました。

ちなみにショートカットなのでバシバシ叩くのをやめてドロンした津田ヒロミ(黒島結菜)は秋ドラマで「ごめんね青春!」(TBSテレビ)に登場である。

一方、とんこさんは「地獄先生ぬ〜べ〜」(日本テレビ)に登場だ。

「待ちながら」記事の前に二枠も埋まってしまうなんて・・・なんていうことだ。

いや・・・津田ヒロミやとんこさんじゃなくて中井貴子(黒島結菜)と葉月いずな(山本美月)だけどな。

妄想で変換するから大丈夫だ。

そろそろ・・・焼きまくる季節だな。

この時期、ありがちなのは落したつもりで消すことだな。

注意しないとな。

もう・・・「牙狼」の哀川翔の回でやっちゃいました。

ああああああああああああああああっ。

で、『ST 赤と白の捜査ファイル・第1回~最終回(全10話)』(日本テレビ20140716PM10~)原作・今野敏、脚本・渡辺雄介(他)、演出・佐藤東弥(他)を見た。水曜日と言えば・・・対決の日である。男女まんべんなく揃えた裏に対して・・・こちらはエステの似合うじゃなくて・・・イケメンで勝負してきたのである。内容的にはミステリとホームドラマで比較が難しいが・・・出演者全員に壮絶な汚れを強いた裏よりも・・・のほほんと中二病設定で押したこちらの方が視聴率で勝利している。

ST  13.6%↘11.4%↗13.1%↘12.6%↘*9.8%↘*9.5%↗*9.9%↘*8.9%↗11.4%↗12.2%

若者  12.7%↘*7.8%→*7.8%↘*7.3%↘*6.8%↘*6.1%↗*7.3%↗*7.4%↘*7.1%↘*6.5%

圧勝じゃないか。

っていうか「若者たち2014」が惨敗しすぎ~。

フジテレビは「水」と「木」をチェンジすればよかったな・・・いや、それだと・・・共倒れの可能性が・・・だな。

さて・・・誘拐現場に牛蒡を残す・・・五芒星だろうが・・・正確には五角形の対角線と五角形だがな。

とにかく同じ図形を残す・・・連続殺人犯を負うのが最終局面である。

被害者は世間に悪人と認定されながら・・・法的制裁を免れた人々。

犯行グループの黒幕の正体は・・・元埼玉県警察捜査官・湯原圭太(石黒賢)だった。

同僚の婦人警官をレイプして殺した犯人を警官の職を辞して15年・・・追跡してついに殺害したのだった・・・15年間、どうやって食いつないだかは言及されない。

湯原と同僚だった三枝参事官(渡部篤郎)は湯原とコンタクトするために潜入捜査をしていたのである。

「警察の捜査には限界がある・・・」と私的制裁を推奨する湯原に危険な匂いを嗅ぎつけたからだ。

しかし・・・真相を暴くために悪人が続々と殺されて行くのを・・・黙認する三枝・・・それでいいのか。

コメディーにそんな細かいこと言ったらだめだろう。

「倉地、泉田、畑山、小金井・・・と被害者の名前には五行思想に基づく要素が入っています」

「なんだね・・・それは」

「つまり・・・土、水、火、金・・・なので次は木です」

「それ・・・苦しいよね」

「第一・・・世間に恨みを買ってる人で・・・そういう名前の人を捜すの大変じゃねえの」

「そういう・・・面倒くさいことが好きな犯人なんですよ」

「それで次は・・・百合根か・・・」

「犯人は自殺願望があると思うんだよね」と犯罪心理学が専門のブルー青山翔(志田未来)は叫ぶのだった。

「いいなあ・・・私なんか最後の方、全然、活躍しなかった」と物理専門のグリーン結城翠(芦名星)はぼやくのだった。

「・・・」と囁くブラック黒崎(窪田正孝)・・・。

「俺は最後にアクションがあるから安心だと言ってます」とゴールド山吹(三宅弘城)・・・。

「友情も大切だけど僕たちはもっとイチャイチャするべきでしたね」とホワイト百合根(岡田将生)・・・。

「お茶の間は男の百合展開を希望する変態中心の構成だからな」と冷静に語る池田管理官(林遣都)だった。

「あたしなんか・・・散々、結城との百合関係を匂わせておいて・・・結局、ただのいい人よ」と松戸ST監査役理事官(瀬戸朝香)は嘆くのだった。

「ああああああああ・・・謎がすべて解けてしまった・・・女性警察官強姦殺人事件の犯人が証拠不十分で有罪にならなかったのは・・・湯原刑事が・・・証拠を捏造したからで・・・それはさておき・・・司法制度の矛盾なんか突いちゃったから・・・ものすごく後ろめたい気持ちになった・・・そんで・・・変なことはじめちゃったんだ・・・そうでしょ・・・そうなんでしょう」

お約束の見得を切る赤城左門(藤原竜也)である。

「それでいろいろ面倒くさいことをしたんだ」

「モモタロウが侵略の話なんて・・・常識だし・・・勝てば官軍だし・・・敗戦国の苦しい立場で超エリート育成計画をする人の話とかアニメでやってるし」

「筒井刑事・・・おタクだったんですか」

「いや・・・このままだと出番がなさそうなので・・・なんとなく言ってみました」と筒井桃子捜査官(柴本幸)・・・。

「お・・・筒井・・・お前、ピンクだったんだな」

「あ・・・菊川さん・・・」

「俺なんて色ついてないんだぜ・・・劇場版に出番があるのか・・・心配だよ」

菊川吾郎捜査官(田中哲司)は花束を持って佇むのだった。

「俺もです・・・」と牧村真司捜査官(水上剣星)・・・。

「お前だってイケメンなのになあ・・・」

「・・・」

こうして謎の上層部は警視庁科学特別捜査班の存続を決定したのだった。

すべては・・・劇場版のために・・・一発興行収入を得るためになのでげしょう。

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2014年9月19日 (金)

約束を果たしていただき誠にありがとうございます(近野成美)

遊女の夕霧(近野成美)はエピソードのないまま終了か・・・と危惧していたが・・・ちゃんと用意されていてホッとしたぞ。

今季は「聖女」に上野なつひも出ていて・・・NHKは歴代・黒井ミサに優しい気がいたしました。

そこかよっ。・・・「ST 赤と白の捜査ファイル」(日本テレビ)には加藤夏希がゲスト出演していたぞ。「外科医 鳩村周五郎13」(フジテレビ)には佐伯日菜子が・・・。吉野公佳がくればパーフェクト・シーズンだったんだよな。

さて・・・不倫に満ちた夏ドラマ・・・。

言わば「吉原裏同心」はその代表である。

もちろん・・・「昼顔」が話題作なのは間違いないし、「同窓生」はフーミン原作である、「ペテロの葬列」もいろいろあってお嬢様妻の「あやまち」が最終的なオチという趣向が物議を醸していた・・・しかし、まあ・・・現代の不倫はいろいろと曖昧である。

その点、不義密通は死罪の時代に駆け落ちしちゃう二人は不倫中の不倫なのである。

そもそも「愛」は誰にも縛られない心の問題である。

一方、不倫を生みだす「結婚」は社会的な制度であるとと同時に一種のお約束である。

「愛」と「結婚」の不一致が様々な心模様を描くわけである。

不倫をされた方は「約束が違う」と相手の裏切りを責めるのが基本である。

一方、不倫をした方は「ごめんなさい」と言いつつ・・・様々な言い訳をするわけである。

その最終兵器は「結婚に愛がなかった」ということになる。

「愛のない結婚」を持ちだされると・・・「あああああ」と叫ぶ他はないのである。

ドロドロの好きな人は「離婚には絶対応じない」と約束の道を歩く。

サバサバの好きな人は「慰謝料もらってごきげんよう」である。

「金」がからんでくると・・・結婚とか愛とか・・・美しい言葉の虚しさが漂うわけである。

離婚が日常茶飯事になり・・・子供が両親の離婚に世界の終焉を感じない時代・・・そういう時代は嘆かわしい気がしないわけでもない。

親である前に人間ですからと言われればそれまでである。

しかし・・・ファンタジーであるこのドラマには鎹(かすがい)たる子供は存在しないという「手」が潜んでいます。

で、『吉原裏同心・最終回(全12話)』(NHK総合20140918PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・川野秀昭を見た。前回も今回も医師・柴田相庵(林隆三)の出番はなかった・・・つまり・・・第10話がお別れだったのだなあ・・・。合掌。毎回・・・ほんの一瞬のシーンに「時代劇」としての奥行きを感じさせた・・・有終の美でございました。「ダークシステム 恋の王座決定戦」の白石鉄山も素晴らしかったけれど・・・遺作としては華々しすぎたものな。「チーム・バチスタ4」もあっただろう・・・。ま、どちらにしろ・・・さようなら・・・右京さんって言うには時代劇でよかったのさ。

吉原遊郭に不穏な空気が漂う。

巾着切りが出没し、ふってわいたように喧嘩沙汰が頻発する。

「何者かが・・・仕掛けているのかもしれまんな」

「吉原が何やら物騒だと評判を立たせようと・・・いうわけですか・・・」

吉原裏同心・神守幹次郎(小出恵介)と吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)は顔を見合わせる。

遊女・夕霧(近野成美)も被害に遭い、親に仕送りしようとためていた金と・・・親から贈られた猫の根付を奪われてしまったのだ。

「あれは・・・ふるさとを思い出すことのできる・・・大切なものだったんだろう」

「お金だって毎日、少しずつためていたんだよねえ・・・」

遊女仲間たちも同情の声をあげる。

事情を聞いた幹次郎は「俺が・・・必ず犯人を捕まえる」と夕霧に誓うのだった。

そんな折・・・家路に着いた幹次郎は因縁の相手に出会う。

借金の形に汀女(貫地谷しほり)を妻とした上で虐待していた藤村壮五郎(皆川猿時)である。

幹次郎は汀女の窮状を見るに見かね・・・駆け落ちして豊後の岡藩(藩主は中川清秀の子孫)を脱藩したのだった。

それ以来、幹次郎と汀女は女敵討(めがたきうち)のターゲットとなったのである。

剣の腕に自信のない壮五郎は剣客を助太刀として幹次郎を仕留めようと目論む。

しかし・・・幹次郎がどんどん腕をうげるために・・・返り討ちにあっているのだった。

「野郎・・・また腕をあげやがったな」

「無駄なことはおよしになるがよかろう」

「昼間・・・汀女を見た・・・あの女、幸せそうに笑っておった」

「・・・」

「お前さえ・・・現れなければあの女は俺のものだったのだ」

「しかし・・・あなたは泣かせることしかなさらなかったではないか」

「くそこの・・・不義密通をいたせしものになんで拙者が意見されねばならんのだ」

「お手前の武士の面目をつぶしたことは謝り申す・・・しかし、汀女殿を連れて逃げたことに後悔はござらぬ」

「盗人猛々しいわ・・・覚えておれ・・・次はもっと腕の立つものを雇ってやる」

法的には正しいことをしているのに・・・情けないことおびただしい壮五郎だった。

しかし・・・追われるものの辛さで幹次郎の心も沈むのだった。

その気配を察し、汀女が事情を聞こうとしたところに隣の仙右衛門(山内圭哉)の女房・お芳(平田薫)が顔を出す。

「お侍さんが・・・幹次郎様をお尋ねです」

「・・・」

もしや追手では・・・と思い緊張する二人。

幹次郎はひきとめる汀女を無言で制する。

「姉様は・・・奥へ」

「幹殿・・・」

しかし、現れたのは見知らぬ侍だった。

「お初にお目にかかります・・・拙者、越中山岡藩(フィクション)の藩士・矢部新造と申しまする」

矢部新造(田中幸太朗)の用件は幹次郎を越中山岡藩の剣術指南役として迎えたいという願ってもない話だった。

「しかし・・・拙者は・・・訳あって流浪の身・・・」

「失礼ながら・・・お願いする上で・・・貴殿の身の上は調べさせていただいた・・・そもそも・・・貴殿は・・・吉原裏同心として・・・御高名が響いておりますので・・・」

「え」

「いかなる・・・腕かも・・・先ほど見せていただいた・・・いや・・・素晴らしい太刀筋でございました」

「えええ」

しばらく、猶予をもらう幹次郎だった。

吉原を覆う暗雲が気がかりだったのである。

例によって身代り屋佐吉(三宅弘城)が情報を仕入れてくる。

「吉原の見世の主だった男に勘助てえのがおりまして・・・なんと吉原で賭場を開帳して追放になったという札付きです。こいつが場末の岡場所(未公認の売春街・・・品川や千住などを始め江戸各所に点在・・・岡とは外れの意味である)で結構な顔役になってまして・・・どうやら悪だくみをしているようなんでさあ・・・金を使って子分を集め・・・親分気取りでしてね・・・吉原への怨みを晴らそうというんじゃねえかと噂です」

「ところで・・・拙者は有名になっておるのか」

「何言ってるんです・・・吉原裏同心の旦那を知らなかったら江戸っ子じゃねえってくらい評判ですぜ・・・」

「それではもはや裏とは言えぬではないか」

「あはは・・・確かにそうでやんすねえ」

一方、汀女の思案顔に気がついた吉原一の花魁・薄墨太夫(野々すみ花)は事情を聞きだす。

薄墨太夫は四郎兵衛に幹次郎の出仕の話を伝えるのだった。

薄墨太夫の部屋に幹次郎を呼びだす四郎兵衛だった。

「よい話ではございませんか」

「は・・・」

「お二人が表の世界にお戻りになられるいい機会でございます」

「しかし・・・こちらでは・・・勘助とやらが・・・」

「ああ・・・勘助・・・そのことなら・・・もう話がついております・・・どうか、安心してご出立ください」

「・・・」

他の藩の家中のものとなれば・・・壮五郎もうかつに手出しはできなくなる・・・。

汀女のことを思えばそうせざるをえない幹次郎だった。

二人を送りだした四郎兵衛に薄墨太夫が告げる。

「随分と男をあげましたねえ」

「何のことでしょう」

「勘助のこと嘘でありんしょう」

「お見通しでしたか・・・太夫こそ・・・よろしいのですか」

「手に入らぬものが目の前にあるのは口惜しいものでありんす」

「・・・」

越中山岡藩の江戸屋敷で矢部の上役・松下源左衛門(山田明郷)と目通りし、ついに越中行きが決まる幹次郎だった。

「達者でな」

「世話になった・・・」

出発の日、仙右衛門と言葉少なに別れを告げる幹次郎。

板橋の宿で同道する矢部とおちあうために街道を行く二人・・・。

一方、幹次郎の不在を狙って・・・勘助は吉原殴りこみを実行する。

勘助は四郎兵衛の首に懸賞金をかけたのだった。

偶然、途中の茶屋で矢部と出会った幹次郎・・・。

ところが・・・そこへ・・・一人の巾着切りが逃げてくるのだった。

思わず、捉えた男の懐からは・・・猫の根付がこぼれ落ちる。

「お前・・・吉原でも仕事をしたか・・・」

「へ・・・遊女だからとあてこんだが・・・とんだはずれくじだったぜ・・・巾着の中はビタ銭ばかりだ」

「その金を・・・遊女たちがどんな思いをして貯めたのか・・・知らぬのか」

「知ったこっちゃねえや」

その刹那・・・幹次郎は・・・遊女・夕霧との約束を忘れていた自分に気がつくのだった。

「矢部殿・・・申し訳ありませぬ・・・この話、なかったことにしていただきたい」

「・・・」

「拙者には・・・吉原で・・・果たさねばならぬ務めがございました」

「残念でござるが・・・そう言われては無理強いできませぬ」

「かたじけない」

幹次郎は今来た道を駆けもどるのだった。

仕方なく、汀女を送り届ける矢部だった。

「よもや・・・ふられるとは」

「申し訳ございませぬ・・・」

「いや、・・・さすがは吉原裏同心でござる」

吉原大門でにらみ合う四郎兵衛と勘助。

「野郎ども、やっちまえ・・・」

「待て・・・」

「なんだ・・・あ・・・あいつは吉原裏同心」

「冗談じゃねえ・・・俺は抜けるぜ」

「馬鹿野郎、今さら、何を言いやがる」

吉原裏同心の名、鳴り響きすぎである。

「くそ」

やけになった勘助を一刀両断する幹次郎だった。

「なんでお戻りになったんです」

「拙者は・・・吉原裏同心でござる」

歓喜する一同だった。

四郎兵衛の娘・玉藻(京野ことみ)は茶屋に幹次郎と汀女を招く。

「これは・・・」

「吃驚仰天の宴でございます」

そこには番方や遊女たちが集っていた。

薄墨太夫や夕霧たちも畏まって控えるのだった。

「今宵は私が一席設けました・・・」と四郎兵衛。

「実は・・・吉原はお上公認の遊郭・・・将軍家や幕閣の皆様とも裏でつながっております」

「・・・」

「栄達の道を捨ててお戻りくださったお二人に・・・ささやかなお礼をしたいと存じまして・・・将軍家より・・・お二人の罪を免じてくださるよう・・・一筆いただき・・・岡藩にお届けいたしました」

「なんですと」

「お二人は・・・もう追われる身ではなくなったのでございます」

「えええ」

「そこで・・・勝手ながら今宵はお二人の祝言をあげさせていただきとうございます」

「・・・」

「さあさあ・・・お席におつきくだされ」

「高砂や」

「この浦舟に帆を上げて」

「はや住の江に着きにけり」

「シュラシュシュシュ~」

フィナーレである。

続編が楽しみだが・・・柴田相庵が存在しないのは・・・悲しいことだなあ。

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2014年9月18日 (木)

耳には届かない私の愛(蒼井優)女優なら見せなさい(長澤まさみ)パイオツナイデー(瑛太)

著しく品格に欠けるタイトルじゃないか。

まあ・・・ここまでで一番、セリフがよかったから・・・。

そうか・・・。

(なんで俺の味噌汁ジャガイモ入ってないんだよ)

(ちゃんとグルグルかきまわしてミソ)

(ジャガイモなんてよく覚えたな)

・・・手話部分じゃねーかっ。

静かなる食卓が好きだ・・・。

米粒の落ちる音が聴こえるようなか。

もやしじゃなかったっけ・・・。

それは「あまちゃん」だろう・・・。

もう一年経っちゃったんだなあ。

ユイちゃん(橋本愛)、まだ18歳なんだよな。

いや、ユイちゃんはもう二十歳越えてるだろう。

「あまちゃん」の世界ではな。

で、『2014・第10回』(フジテレビ20140917PM10~)脚本・武藤将吾、演出・中江功を見た。嵐の前の静けさではなくて・・・静寂の前のそよ風が吹く・・・佐藤家の人々・・・。佐藤旭(妻夫木聡)と梓(蒼井優)の夫婦は娘・あかり(内山陽菜)の退院が近いことに期待する。過去のエロ動画を回収した屋代多香子(長澤まさみ)は前科者の暁(瑛太)と職場恋愛中。医師の新城(吉岡秀隆)との不倫を清算したひかり(満島ひかり)は看護師として職務に励む。陽(柄本佑)と旦(野村周平)と香澄(橋本愛)の愛憎劇は途中休憩中である。しかし・・・あかりの健診をする新城の顔は曇るのだった。

「聴覚障害ですって・・・」

「耳が聴こえないんですか」

蒼ざめる旭と梓に新城は医師として告げる。

「現状では・・・聴覚刺激に対して反応がない。一過性の可能性があるが・・・持続することになるかもしれない」

「そんな・・・私が早産したから・・・」

「俺の言葉・・・聴こえてなかったのか・・・」

激しく動揺するあかりの母親と父親だった。

ひかりが兄弟に事情を話し・・・佐藤家の夕餉は沈鬱なものになるのだった。

「今夜は寿司だぞ~」

明るく振る舞う旭だったが・・・梓の表情はいつになく暗い。

人一倍、察知力のある暁はそれが気にかかる。

「兄貴が支えてやらないと・・・」

「わかってるよ・・・」

旭は警備員として働くプロレス団体に勤務時間の変更を打診する。

「娘が退院するんで・・・もう少し勤務時間を減らしてもらえませんか」

「いやあ・・・今がギリギリだからなあ・・・」

そこへ・・・ひかりから連絡がある。

「梓さんが・・・約束の時間に・・・来院しないの」

「え」

「搾乳もしなくちゃならないし・・・」

梓を捜す旭は・・・実家に戻っていることが判明する。

「ひどい母親だと思うけど・・・どうしてもこわくて病院に行けないの」

「・・・」

様々な苦難を乗り越えて未熟児の母親をしていた梓は・・・自分を見失い・・・鬱を発していた。

「悪いけど・・・しばらく・・・私に預けてください」

梓の母親・澤辺京子(余貴美子)は旭に申し出る。

「お願いします」

頼りの妻を失い・・・旭は子育ての自信を失うのだった。

まして・・・娘は聴覚障害者かもしれないのだった。

「お兄ちゃん・・・言ってたでしょう・・・子供が幸せになれるかどうかじゃない・・・親が子供を幸せにしてやるんだって・・・」

ひかりは困惑した兄を励ます。

一方、通学を再開した永原香澄は・・・かって幻視したように・・・机の中からリベンジポルノ画像を発見し、高校を早退する。

香澄に報告された陽と旦は惧れていたことが現実となった恐怖に襲われるのだった。

孤立無援の兄は・・・時間に余裕のある職を求めて・・・プロレス団体を退職するのだった。

「すみません・・・せっかく拾ってもらったのに・・・」

「お前はきっと大丈夫だ」とプロレスリング・ノアの杉浦貴は根拠なく旭を励ますのだった。

「仕事はやめた・・・」

旭の宣言に激昂する兄弟たち。

「どうすんだよ」

「仕方ないだろう・・・しばらくは日雇いで食いつないで・・・お前たちに面倒はかけない」

その言葉にきれる暁。

「表に出ろ」

「なんだよ」

「うちの父ちゃんは日本一の日雇い人夫ですって言ってもらえるのは星一徹だけなんだよ」

「・・・そんなセリフないだろう」

「再現率低め設定なんだろ・・・とにかく殴らせろ」

しかし、その前に拳を繰り出す陽。

「なんでだよ」

「え」

「なんで面倒かけないんだよ・・・」

旦もパンチを繰り出すのだった。

弟たちによる凄惨な集団リンチである・・・違うぞ。

「俺たち・・・頼りになんないかもしれないけど・・・兄弟だろう」

「・・・」

「そうだよ・・・歓びも悲しみも共有(シェア)しないと」

「嫁は共有しないぞ」

「兄貴にとって娘なら・・・俺たちには姪じゃねえか」

「・・・」

「困ったら助けあう」

「迷惑はお互い様」

「それが家族なんだろう」

「兄貴の家族は俺たちの家族だぜ」

たたみかける暁・・・。

「お前たち・・・」

「あかりの面倒は俺たちが見る・・・兄貴は仕事を探せ」

「はい・・・」

そして・・・旭は・・・サワタリ道路社長の佐渡(岩松了)を訪ねるのだった。

「お願いします」

「俺を蹴り殺そうとしたお前を雇うと思うのか」

「そこをなんとかお願いします」

「そんなにこの仕事が好きだったのか」

「辞めて・・・初めて気がつきました・・・道路作りは・・・俺のプライドの源だって」

「だめだな・・・」

「だめですか」

「制服・・・新しくなったんだよ・・・その制服じゃだめだ・・・お前、悪運強いよ・・・東京五輪とか復興支援とか・・・土木・建設業界は・・・人手不足で・・・経験者募集中なんだよ」

「・・・社長・・・」

旭の父親を殺した男は・・・人情家だった。

もちろん・・・この世界の神が拙いながらまとめに入っているのだった。

暁は頼みにくいことを多香子に頼むのだった。

「あのさ・・・」

「なによ・・・」

「いや・・・」

「いいなさいよ・・・」

多香子は「恥ずかしい画像仲間」として香澄の相談役をお願いされたのだった。

なぜか、大学構内に常設されている学生劇団「bluehall」の稽古場。

「私ね・・・陽くんと旦くんの二番目のお兄さんの彼女・・・あ・・・彼女って言っちゃった」

「シュッとしているほうのお兄さんですね」

「シュッとしてるかな」

「梯子をパクッてました」

「手癖が悪いのよね・・・リベンジポルノされたんだって・・・」

「最悪です・・・」

「私もね・・・処女喪失動画を盗撮されて脅迫されて性奴隷にされてたことがある。妊娠して堕胎するまで・・・やられまくったのよ」

「凄いじゃないですか」

「私は結局、夢もあきらめちゃった・・・」

「・・・」

「あなた・・・女優なんでしょう・・・すべてをさらけ出すのが仕事じゃない」

「少し・・・違うと思いますけど・・・これが発覚したら・・・学校も退学になるし・・・」

「でも・・・女優をしていることがバレたら・・・やはり退学なんじゃない」

「・・・」

「凄くエロい舞台だったって彼から聞いたわよ」

「えええ」

「思いきってエロ画像でチラシ作ったりして」

「そんな・・・エロを売りにするなんて」

「どんなエンターティメントだってエロを売りにしているのよ・・・このドラマだってそう」

「それを言ったらおしめえだよ・・・ですよお」

「とにかく・・・私は開き直って・・・やっちゃいましたっていう生き方もあると思うの」

「私には無理です」

「私はけしてそうしろって言ってるんじゃないの・・・あくまで考え方の一つよ」

「・・・」

「誰かを責めたって・・・何も始らないわ」

「・・・」

「私だってエロ動画を撮られたのは・・・私にも悪い所があるって思う。あなたにだってまったく落ち度がなかったわけじゃないでしょう・・・」

「・・・」

「あなたを責めてるんじゃないわよ・・・自分や誰かを責めるんじゃなくて・・・自分の今やりたいことをやってほしいって思うだけ」

「・・・」

「だって・・・裸をみられちゃったらしょうがないし、喘ぎ声を撮られちゃったらしょうがないし、耳が聞こえなかったり、目が見えなかったり、歩けなかったり、頭が悪かったり、なににしたってしょうがないじゃない・・・だってもう生まれちゃったことがしょうがないんだからさ」

とにかく題材が題材だけにどんな理論も苦しい展開である。

女優魂で乗り切った二人だった。

香澄を残し、部屋を出る多香子・・・。

「あんなことしか言えなかった」

「いや・・・最高だったよ」

暁は多香子を抱きしめようとするが・・・多香子は拒絶するのだった。

ここはトラウマなのか・・・盗撮に対する警戒心なのか・・・単なる照れなのか不詳である。

あかりのために何かしようと思った佐藤家の人々は全員、手話の教本を入手するのだった。

「気が早いんだよ」

「覚えるの大変なんだよ」

「馬鹿だからな」

「パチンコやりたいは覚えた」

「バイオツカイデーも」

「うちの姉ちゃんは」

「パイオツナイナイ」

「こらっ」

おバカな家族だった・・・。

困った時には・・・鬼畜・新城を訪ねる旭だった。

「娘の耳が不自由な時はどうしたらいいんですか」

「誰だって自分の娘がかわいい・・・自分の娘が差別されたら嫌だ・・・だから・・・差別されるかもしれない娘を持つ親は・・・差別をしないことしかできないんだよ」

「ああ・・・」

「自分の娘を親が差別してどうするんだ」

「・・・」

「俺さ・・・聾者のお楽しみ会でボランティアやるんだ・・・昔は聾者(耳の不自由な人)は唖者(言葉の不自由な人)になりがちだったので聾唖者なんて言葉もあったけど・・・最近は聴こえなくても言葉には不自由しなかったりするんだぜ・・・」

「お楽しみ会で何をするんです」

「聾者たちが合唱するんだ」

「耳が聴こえないのに・・・」

「だけど歌えるんだよ」

ひかりは梓にあかりの成長アルバム渡す。

京子は不安を抱える娘を抱きしめる。

そして・・・夫は妻を水辺のデートに誘うのだった。

「私、ひどい人間になっちゃったの」

「・・・」

「街を歩いて・・・障害者を見かけると・・・知的障害者より耳の不自由なことの方がましだとか・・・視覚障害方がもっと大変だとか・・・よからぬことばかり・・・思っちゃう」

「いいじゃないか・・・親馬鹿で・・・」

「でも・・・私のせいで・・・あかりは・・・」

「梓のせいじゃないよ・・・すべては運命だ・・・あかりが生きているだけでありがてえじゃないか」

「でも・・・あの子は他の子より・・・きっと大変なのよ」

「だったら・・・それを確かめに行こう」

夫婦は・・・聾者の子供たちのお楽しみ会に出席するのだった。

明るく楽しく歌う・・・耳の不自由な子供たち・・・。

つらいとき ひとりきりで 涙をこらえないで

世界がひとつになるまで ずっと手をつないでいよう

知っているアニメソングに気持ちが明るくなる梓・・・違うだろう。

耳が不自由な子があんなにたくさんいた。

私の娘だけじゃない。

耳の不自由な子が歌っていた。

私の娘も歌える。

娘の歌を聴いてみたい・・・と梓は思った。

梓は希望を取り戻したのだった。

手と手を握り合う夫婦だった。

(味噌汁の味付けが薄いんだよ)

(健康のためには減塩よ)

(この塩分控えめの塩ってどういうことだよ)

(塩分50%だから・・・体にいいんじゃないの)

(それって・・・塩が単に半分ってことじゃないのかよ)

(みんな、手話が上達しすぎだよ)

そこへ・・・多香子が不吉な報せを届けに来ていたのだった。

「あのさ・・・旭お兄さんが・・・私の兄さんたちに・・・この家の権利証を譲渡したでしょう・・・あれ・・・買い手がついちゃったわよ」

「ええええええええええええええええええええええええええ」

佐藤家の絶叫を残して物語は最終回へなだれ込むのだった。

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2014年9月17日 (水)

愚かさは罪ゆえに愛され、賢さは悪ゆえに憎まれる(広末涼子)

愚かさが罪であるのは「してはいけないことをしてしまう」からである。

賢さが悪であるのは「餌食にされたもの」にとってである。

人間は賢さで百獣の王となり、あらゆるものを食いものにした。

食い物にされたものたちはどれほど人間を憎んでいることだろう。

そのあげく・・・人間は時に人間さえ食いものにしてしまうのである。

その愚かさゆえに・・・人間は愛されてしかるべきだろう。

で、『聖女・第4回』(NHK総合20140917PM10~)脚本・大森美香、演出・日比野朗を見た。連続殺人および殺人未遂の被告・肘井基子(広末涼子)の裁判は基本的に淡々と進む。法廷劇としては見ごたえがないが・・・脚本的にはそこはどうでもいいのだろう。そもそも・・・「あの女、絶対に刑務所に送り込んでやる」という東京地方検察庁検事の千葉恒雄(池田成志)・・・どれだけ、決定的な証拠を持っているのかと思えば・・・ほぼ状況証拠である。この状況では起訴も難しいのではないか・・・ある意味、弁護側は反証する必要もないくらいである。そもそも二人を殺害し、一人を殺そうとして放火した被告である。検察側の求刑は「死刑」であるべきであり・・・セリフとしては「死刑にしてやる」が正しいのだが・・・いろいろとそういう言葉を使いたくないスタッフの意向が反映しているような気さえする。しかし・・・まあ・・・本題は裁判ではなくて・・・聖女だか悪女だか不明の女に翻弄されるちょっとおバカな男たちの話なんですよねえ。

Swpp003さて・・・フェルメールの「聖女」には聖女プラクセディスとは別にもう一人の女性が描かれている。推測として・・・この女性が聖女プラクセディスの姉妹である聖女プデンティアナだということが囁かれるわけである。そもそも二人は伝説上の姉妹である。1世紀から2世紀の間にいたらしい・・・と囁かれているわけである。しかし・・・姉妹のために作られたサンタ・プラッセーデ教会とサンタ・プデンツィアーナ教会はローマに実在するわけである。姉妹の伝説で教会が建っているのだな。聖女プラクセディスが妹で聖女プデンティアナが姉というのが通説だが・・・逆だと囁くものもいるわけである。姉妹の運命さえ定かではないのである。伝説では二人はローマの元老院議員プデンスの娘であるとされている。ドラマ「ペテロの葬列」でおなじみの聖ペテロ(ローマではピエトロ)はローマ市民権を持つテント職人で迫害者から殉教者に転じ「パウロの回心」で知られた聖パウロとともにプデンスの屋敷に滞在していたという。つまり、プデンスはローマにおける初期キリスト教の保護者であったのである。そして、姉妹はこの時にキリスト教徒になったと囁く人もいる。聖ペテロも聖パウロも一世紀中に殉教しているわけである。その洗礼を受けた姉妹は二世紀にはかなり老いてしまっている。そういう伝説の題材なのである。二人の姉妹は殉教者たちの看取りをした後で殺害され、遺体は井戸に投げ込まれたという説もあり・・・平穏に天寿を全うしたという説もある。とにかく・・・キリスト教を信仰することが基本的に命がけの時代があったわけである。

「愛とは・・・お金をいただきそれなりの奉仕をすること」という信念を持つ肘井基子(広末涼子)の偽名は緒沢まりあであった。基子にとって「聖女」は「罪の女」の一人である売春婦のマリアである。アートコーディネーターとして美術史を学んだ過程でフェルメールの「聖女」がマリアではないことを知っていた基子だが・・・すべての「聖女」がマリアへと統合されている基子にとってそれは些細な問題であったと思われる。

「聖女」であれば聖母マリアも聖プラクセディスもマグダラのマリアも・・・すべてキリストに許された売春婦マリアに還元されて行く・・・それは狂気の香りを漂わせている。

基子に童貞を捧げた新人弁護士・中村晴樹(永山絢斗)は・・・その恐ろしさをまだ知らない・・・と考えられるのだった。

裁判は弁護側が圧勝する。

①2009年10月29日に港区のマンションで死亡した会社経営者・阿川博之(浜野謙太)の殺害の件・・・検察側は・・・被害者の経営する会社の幹部を証人として・・・被害者には自殺する意志がなかったと主張。

これに対し弁護側は・・・被害者を被告に紹介した経緯を持つ内藤あかね(上野なつひ)から・・・事件前に事業に行き詰り、被告との交際も思わしくなくなった被害者が「死んでしまいたい」と漏らしていたという証言を引き出す。

そもそも・・・自殺にみせかけた他殺という検察側の主張の根拠を揺るがせるのだった。

②2012年10月12日に伊勢原市山中で死亡したテレビ局プロデューサー・坂東幸雄(森岡豊)の殺害の件・・・検察側は崖下から現場を目撃した証人が被告を崖から蹴り落としたと主張。

これに対し弁護側は・・・目撃者は視力に問題があり・・・そもそも現場は見えないと反証する。

そもそも・・・目撃証言の信憑性・・・なかったわけである。

③2012年12月4日に練馬区のアパートで重傷を負った企業役員・千倉泰蔵(大谷亮介)に一億三千七百万円の保険金をかけ殺害未遂に至った件・・・検察側は被告による放火を主張。

これに対し弁護側は・・・意識を回復した被害者本人を出廷させ・・・「出火の原因は私の煙草の不始末だった」と証言させるのだった。

これで「有罪」を宣告できる裁判員は・・・いないだろう・・・。

それなのに・・・千葉検事は「ただちに控訴手続きをとれ」と部下に叫ぶのだった。

その根拠は一体・・・。

「私は裁判を通じて・・・私が多くのあやまちを犯し・・・多くの皆さんにご迷惑をおかけしたと痛感しました・・・もし・・・できることなら・・・その間違いを正して・・・生きなおしたいと思います」

聖女として・・・姿勢を正す・・・基子だった。

本能的に・・・基子の危険性を察知している看護師・本宮泉美(蓮佛美沙子)は魔に魅入られた婚約者の晴樹に囁く。

「無罪になったら・・・あの人は・・・千倉さんと結婚するのかしら」

最も痛いところを突かれた晴樹だったが・・・誑かされているので聞く耳は持たないのである。

基子と晴樹のただならぬ関係を察知した前原弁護士(岸部一徳)は苦言を呈する。

「お前は・・・そのことを誰にも言うなよ」

千倉の妻の文江(中田喜子)は夫に離婚届を突き返すが・・・夫の心は妻にはないのである。

「だまされているのがどうしてわからないの」

文江の言葉は届かない。

しかし・・・怪しい兄の克樹(青柳翔)は・・・晴樹に対して不気味な言葉を投げつける。

「実は・・・俺は検察から・・・証言を求められているんだ・・・俺が務めていた会社を辞めたのは阿川さんの会社にヘッドハンティングされたからなんだ・・・驚いたのは・・・阿川さんの女が・・・お前が高校生の頃、勉強部屋でセックスしていた女だったことだよ・・・」

克樹は・・・明らかに・・・自分もセックスしてもらいたかったのだった。

一審で無罪を得た基子は・・・すでに自分が自由になったように振る舞う。

タクシーの中で晴樹の手を握る基子。

その時・・・婚約者からの着信音がなるが・・・無視する晴樹。

「私のこと・・・嫌いになった」

「僕はあなたを守るためにここにいます」

基子の手を握り返す晴樹である。

タクシーの後部座席は密室ではないと全国のタクシードライバーが叫ぶのだった。

そして・・・千倉は突然・・・思い出す・・・。

基子が・・・床に火のついた煙草を投げ捨てた情景を・・・。

「私は・・・思い出してはいけないことを・・・思い出してしまった・・・」

とにかく・・・晴樹の人生はただならぬ危機的状況に陥っている。

ただ・・・本人は幸せの絶頂にいるのだった。

そして・・・聖女は悪女へと変貌して行く。

全国の一部お茶の間男性に問いかけるこのドラマ・・・あなたはどちらの基子がタイプですか?

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2014年9月16日 (火)

こんなことしかできないけれど一石を投じたら波紋が世界に広がりますように(木村拓哉)

一石を投じるのは水面である。

一石を投じるのは良いことなのか・・・悪いことなのか。

投げられた石は沈んでいく。

水面下で何が起こるのか・・・予想もつかない。

運悪く直撃を食らった魚が浮いてくるだろうか。

しかし、水面に波紋は広がって行く。

波紋はまるで計算されたように美しい輪を描く。

その美しさゆえに・・・一石を投じることは・・・それほど悪くないんじゃないかと人はなんとなく思うのだった。

だから・・・一石を投じる人は絶えないのだった。

一石を投ぜずにはいられない人に幸あれ。

もちろん・・・一石を投じるのは危険な行為です。

で、『HERO(第2期)・第10回』(フジテレビ20140915PM9~)脚本・福田靖、演出・
平野眞を見た。組織暴力団による犯罪、前科者に組織された犯罪集団と組織による悪に傾斜していく展開の果て・・・物語は当然の帰結として組織としての検察局による悪へと向って行くのである。そもそも・・・久利生検事(木村拓哉)は過去に傷害事件を起こして逮捕歴があり・・・前科者となるところを・・・ドラマ未登場の検事・沼田の徹底的な取調によって不起訴となったことが・・・検事人生の出発点だった。沼田と旧知の間柄だった鍋島利光東京地検次席検事(児玉清)はかって・・・そんな久利生に大きな期待を寄せていたのである。13年前・・・ダウンジャケットにジーンズというスタイルで「冬のヒーロー」は東京地検城西支部に一石を投じ・・・結局、その波紋によって中央を追われたのだった。組織が腐敗して行くのは構成要素が人間だからである。腐った人間の集団と腐らないヒーローは必ず軋轢を生むのである。久利生の理想に触れた人々は・・・腐りかけた自分から脱皮し・・・束の間、城西支部は栄光に包まれる。しかし・・・巨悪はけして滅びないのである。

Tシャツ、時にはタンクトップにジーンズという「夏のヒーロー」にも出る杭が打たれる季節が巡ってきたのだった。

そして・・・13年前に・・・久利生の生き方に洗礼を受けた東大卒業のエリート検事(勝村政信)が・・・故人となった鍋島次席検事に代わり、その席につく牛丸次席検事(角野卓造)へ・・・・地検特捜部による「ヌカダ建設・額田太一社長から現職の国交大臣・橋場正太郎への贈収賄事件捜査」の応援要請を行い・・・あえて久利生を指名するわけなのだった。

川尻健三郎部長検事(松重豊)は久利生と麻木千佳事務官(北川景子)に地検への出向を命じる。

「凄い・・・特捜ですか」と目を輝かせる麻木事務官。

しかし・・・「事件に大きいも小さいもない」という信念を持つ久利生は喜ばない。

気配を感じた川尻は・・・久利生のモチベーションをあげる一言を伝える。

「地検の食堂は・・・定食が美味しいぞ」

久利生はようやく、やる気になるのだった・・・食いしん坊かっ。

一方・・・特捜出張を名誉と考える検事たちは・・・久利生チームを羨む。

「本来・・・エリートの僕が行くべきなのに・・・」と宇野大介検事(濱田岳)・・・。

「どこまで男社会なのよ」と馬場検事(吉田羊)・・・。

「返り咲きたかった」と元・特捜の田村検事(杉本哲太)・・・。

ぼやきつつ・・・万引き犯や・・・ハイヒール専門の空き巣の取調にかかる検事たち。

しかし・・・田村検事(杉本哲太)の案件は・・・対象が 「殺人容疑の被疑者」であり・・・黙秘を貫く。

演じるのが加藤虎ノ助である以上・・・容疑者・南雲尊之はただものではないのである。

やがて・・・南雲が画壇の実力者の一族であり・・・落ちこぼれながら・・・腕のいい弁護士をつけてもらえる身分であることが明らかになる。

取調中の田村検事に電話で宣戦布告する・・・大手弁護士事務所の凄腕弁護士・松平一臣(羽場裕一)である。

「完全黙秘を指示したのは・・・あんたか・・・」

「お手柔らかにお願いします・・・可能な限り不起訴の方向で・・・」

「殺人現場のすぐ近くの公園で返り血浴びたシャツを洗っているところを逮捕されたのに・・・ですか」

「だからといって犯人とは限らないでしょう・・・疑わしきは罰せず・・・ですよ」

「凶器のナイフを所持していたのに・・・」

「だからといって・・・絶対に起訴なさるとは限らないでしょう」

「それを判断するのは私の仕事です」

「どうやら・・・真実を明らかにするために法廷でお会いすることになりそうですな」

しかし・・・被疑者・南雲は不敵な笑みを浮かべる。

だが・・・電話の向こうで松平弁護士はアンニュイな表情を浮かべていた。

事務官・遠藤賢司(八嶋智人)は・・・「府中競馬場」でギャンプルに興じている被疑者に・・・どこか・・・自分と似た匂いを嗅ぎつけるのだった。いや・・・合コン狂いと競馬狂いは違うだろう。

田村・遠藤チームは闘志を燃やし・・・お出かけ捜査を開始する。

「すっかり久利生検事に影響されましたね」

「いや・・・検事の勘が・・・この事件、一筋縄ではいかないって囁くんだ」

「超能力者ですかっ」

現場には花が手向けられていた。

死者を悼む二人・・・。

被害者は刃物で刺されて失血死・・・目撃者は今の処・・・現れていない。

被害者と被疑者の間には特に関係は見当たらない。

「通り魔的な・・・犯行かもしれないな」

「競馬に負けて・・・むしゃくしゃして・・・ですか」

「その線で・・・余罪があるかもしれない」

未解決の類似事件の捜査資料に埋もれる二人だった。

一方・・・憧れの東京地検・特捜部に到着した麻木事務官は気持ちが浮き立っていた。

しかし・・・江上が久利生に指示した仕事は・・・取調ではなく・・・膨大な捜査資料のチェックというデスクワークだった。

「ええ・・・」と落胆する麻木事務官。

「人手不足の応援なんだから・・・当然だろう・・・」

久利生は最初からこれを予測していたのだった。事件の大小は関係なくても・・・机に縛り付けられるのは・・・久利生の性に合わないのである。

「江上さんも一緒ですか」

「私には・・・それなりのキーパーソンを取り調べる任務がある」

「そんなのずるい・・・」

不満を募らせる麻木に対し・・・久利生は作業に黙々と着手するのだった。

膨大な捜査資料から事件に関する書類を発見する・・・それはほとんど不毛な仕事である。

麻木は・・・もう、城西支部に帰りたくなっていた・・・。

「St.George's Tavern」のマスター(田中要次)の顔が見たくなる二人・・・。

フジテレビの女子アナウンサーも顔を出す店で嘆くのだった。

「物凄い量ですよ・・・夏が終わりますよ」

「あれ・・・カトパンじゃね・・・あと・・・誰だっけ」

「パンをつけるとスポンサーによっては大変なことになりますよ」

そこへ・・・江上がやってくる。

「俺はね・・・胃がイタタタ・・・」

説明しよう・・・江上はストレスを感じるとお腹が痛くなるタイプだった。

実は・・・些少ながら久利生の信念に感染している江上はただならぬ善と悪の相克にプレッシャーを感じているのである。

しかし・・・そのことを敏感に察する久利生。

「マスター、お腹に優しいものを」

「胃薬の方がいいかもしれません」とフォローする麻木。

「あるよ・・・」

しかし・・・薬の選択に悩むマスター・・・市販の薬では間に合わない病状なのである。

結局、胃潰瘍で入院する江上だった。

江上の上司・押坂副部長(手塚とおる)は傲慢な態度で久利生に引き継ぎを命じる。

取調と聞いてテンションがあがる麻木。

「大筋には関係ないが・・・調書にサインをとれ」

しかし、ヌカダ建設から国交大臣に金銭が渡された七月三十一日・・・車を運転したとされるヌカダ建設の総務部・桂川隆史(矢柴俊博)は調書への署名を拒否していた。

「その日は・・・会社を休んで映画を見に行ったんです」

「それを証明する証拠がありますか」

「会社の引き出しに・・・チケットの半券が・・・」

応酬物件の山から・・・それを捜す二人。

再び、テンションの下がる麻木・・・寝落ちである。

「もげっ」

そんな麻木に・・・ムラムラする久利生・・・。

麻木もまんざらではない・・・。

披露困憊の時にはよくあることであるが・・・違うぞ。

麻木の頬からチケットの半券が回収されるのだった。

「でも・・・これだけでは・・・偽装工作が疑われるんですよね」

「検察の書いた大筋ですか・・・厚労省元局長を無罪と知っていながら不当に逮捕し、その無罪の証拠であるフロッピーディスクを改ざんしちゃうみたいなことをしますか」

「村岡花子さんですか・・・」

「それは赤毛のアンの人・・・元局長は村木厚子さんだ」

「朝日新聞はいいスクープをしているのに・・・その信憑性も薄れる事態に・・・」

「信用を失うってこわいことですよね」

「だからこそ・・・映画を見に行ったことを証明しないと・・・誰かと話をしたりしませんでしたか」

「あ・・・しました」

久利生と麻木は・・・桂川と話したというスタチュー(彫像)の大道芸人を求めて・・・デング熱の危険地帯に乗り出すのだった。

「その人なら・・・転んでタクシーにひかれそうになってました」

「えええ」

タクシーの車載カメラの映像に・・・桂川が映っていた。

ある意味・・・ミラクルである。

「・・・というわけで・・・書類に署名させることには無理があります」

「なんで・・・こんな余計なことをするんだ・・・金を運んだ車の運転手がいなくなったら・・・困るじゃないか」

「そういわれましても・・・」

「歯車は歯車らしく言われたことだけしていろ」

「だからと言って虚偽の調書作成は法に触れます」

「だまっていろ」

「だまりません」とついに逆上する麻木だった。

「検察官の仕事は真実を追求することでしょう」

「じ・・・事務官の分際で・・・」

すでに悪の化身となった特捜副部長・・・。

久利生的正義と・・・成果主義の悪の間で・・・江上の胃は爛れてしまったのである。

「運転手をどうするつもりだ」

「これから捜します」

「もういい・・・お前らはクビだ・・・」

「それで・・・別の都合のいい人を運転手に仕立てるんですか」

「麻木・・・もういい」

かなり大人になっている久利生は麻木を宥めるのだった。

実は半分、寝落ちしている久利生である。

金を贈ったとされるヌカダ建設の額田太一社長と金を贈られたとされる橋場正太郎国交大臣は山梨県の中学の同級生だったらしい・・・。

「その二年先輩で二人をよく知る人物に国分秀雄元検事がいます」

牛丸次席検事を訪ねた特捜部長(佐戸井けん太)が報告を兼ね要件を切りだす。

国分秀雄(井上順)は14年前に引退していた。

「しかし・・・国分氏は検察への協力を拒否しているのです」

「名のある検事だったのに・・・」

「そこで・・・面識のある次席検事に説得をお願いしたいのです」

「やってみよう・・・ところで久利生はどうかね」

牛丸は同席していた副部長に問う。

「久利生・・・ああ・・・あのつまらないことにこだわる男ですか」

「つまらないことに・・・こだわっていますか・・・」

牛丸次席検事はそれ以上、言及できない立場にあった。

歯車を守るためには・・・立場を損なってはならないのである。

今は亡き鍋島次席検事のポジションに立っている牛丸なのである。

そして・・・牛丸もまた久利生のことを思えば幽かに胃が痛む男なのだった。

国分元検事の隠居に足を運ぶ牛丸。

しかし・・・国分は頑なに協力を拒むのだった。

「お世話になりましたが・・・私はもう・・・引退した身なのです・・・お世話になりました」

「渡る世間は鬼ばかりですからな」

国分の拒絶に不審を抱く牛丸だった。

「St.George's Tavern」で胸の内を明かす麻木事務官。

「私は・・・久利生さんに・・・特捜で活躍してもらいたかったんです・・・きっと・・・久利生さんなら・・・凄くかっこいいはずだと思ったんです・・・だって・・・久利生さんは私のヒーローなんですから」

口惜しくて涙のとまらない麻木だった。

「麻木・・・」

「私のことはほっといて・・・」

我を失った麻木をもてあます久利生・・・。

思わず煙草を吸って知らん顔をするマスターだった。

恥ずかしい場面では紫煙が有効な場合もあるが・・・健康おタクにはわからないものだ。

いつの間にか・・・完全に・・・久利生を理想の検事として尊敬している麻木なのである。

その足を引っ張った自分が情けないのである。

一方・・・捜査資料の山に埋もれた田村・遠藤チームは恐ろしい発見にうろたえていた。

「三年前にも未解決の類似事件があります・・・被害者は高校生」

「六年前にもだ・・・被害者はOL」

「府中競馬場でレースがあった日です」

「ビール工場も見えるんだな」

「まだまだありますよ・・・」

「問題は・・・15年前の事件だ・・・」

「被疑者は28歳です・・・馬券は買えますよ」

「明らかに・・・被疑者の犯行が疑われるが・・・別人が起訴されて・・・有罪になっている」

「まさか・・・」

「担当検事は・・・国分秀雄・・・しかし・・・犯人は一貫して・・・犯行を否認・・・」

「しかも・・・有罪判決が出た後で被告は病死・・・」

「もしかして・・・被疑者が真犯人なら・・・」

「冤罪・・・」

「うわあ・・・」

事件の真相にたどり着いたら・・・冤罪を発生させ・・・検察の威信を傷つけることになるのだった。

証拠を捏造する検察。

冤罪被害を出す検察。

不祥事を隠蔽したい検察。

検察という組織の悪の動力が二人の正義を抑制する。

「起訴してもいいですか」

田村は川尻に決断を仰ぐ。

「一晩考えさせてくれ」

「それって・・・上にたてつくことになりませんか」と宇野検事。

「なるわね・・・」と馬場検事。

「昔・・・似たようなことがあって・・・誰か・・・左遷されたような気がします」と末次隆之事務官(小日向文世)・・・。

「今度は左遷じゃすまないかもしれませんね」と当時は警備員だった井戸事務官(正名僕蔵)は遠い目をするのだった。

「じゃ・・・起訴をやめますか」と遠藤。

うなだれる一同だった。

翌朝・・・暗い表情で登庁するメンバーたち・・・。

そこへ出戻った久利生チームが合流する。

「返品されちゃいました」

「何をしでかした・・・」

「いえ・・・調書にダメ出しを・・・少し」

「この非常時に・・・」

「非常時って・・・」

「久利生さんは間違ってません。久利生さんは絶対悪くないもん」

「ないもん・・・って・・・小学生かっ・・・童心に帰っちゃったのか」

「確かに・・・俺だって・・・もはや駆けだしじゃないですし・・・組織なんだから・・・調和を大切にするべきなのは・・・分ります・・・チームですから・・・仲良くしたい・・・でも・・・事件の関係者にとっては・・・そんなこと関係ないですよね・・・やってもいないことをやったといわれて・・・人生左右されたら・・・たまったものじゃないでしょう」

「そうか・・・」

「そうだよな」

「人が死んでるんだった」

メンバーたちは原点に還る。

久利生は呆気にとられる。

そして・・・ホワイトボードに目を止める。

そこに書かれた「えん罪?」の文字・・・。

田村は川尻に迫る。

「起訴するのか・・・しないのか・・・判断してください」

「起訴しよう・・・」

もはや鬼尻である。

顔に輝きが戻る一同・・・。

検事としての正義の炎は今・・・全員に点火したのだった。

警備員の小杉(勝矢)はそれが無性に嬉しかった。

悪の検察組織VS正義の城西支部・・・。

ついに・・・夏のヒーローも怒涛のクライマックスを迎えるのだ・・・。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

Hero010ごっこガーデン。愛と青春の炎燃える城西支部セット。アンナ生ダーリンとドラマのダーリンの間で・・・完全燃焼したアンナはただ今・・・夢の中へ・・・夢の中へ・・・よろしこドリーム中・・・いやん・・・そんな・・・こんなところで・・・ぴょ~ん・・・うへへ・・・あはん・・・ぴょんぴょんぴょん・・・雨宮さんに叱られる~・・・うふん・・・ああ・・・かっこいい・・・ああん・・・セクシー・・・あああん・・・ステキーっ・・・キスするのですか・・・どうしてもキスしますか・・・これが奇跡・・・いやあん・・・うひょひょ・・・なごや・・・mana女子アナエキストラごっこで・・・何度でもダーロイドと握手ができるなんてどえりゃあことでよ~・・・ついにマスターの仇名がゴリラってついた・・・それでいいのか?・・・一つの真実で行き詰る捜査なんて・・・大筋が間違ってるってことですよねえ・・・ピースが一つでも欠けたらパズルは完成しませんから~mari二つの事件が一つにつながっていく・・・全員起立で最終回を待ちましょう。じいや、久利生がまた沖縄に飛ばされるかもしれないのでゴーヤチャンプルお願いしますシャブリ加藤綾子アナ、山崎夕貴アナの登場に思わず出演者総チェックをしてみたのでありました~。ソーキソバお願いするのでありました~

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2014年9月15日 (月)

父・宇都宮鎮房、母の父・大友義鑑、鶴姫十三歳、黒田長政の側室となる(市川由衣)

人質ということは基本的にそういうことである。

黒田長政は二十歳であり、正室の蜂須賀正勝の娘・糸があるものの嫡子がない。

すでに12万5000石の大名家となっている黒田家では忌々しき問題なのである。

長政は官兵衛が二十二歳の時の子供であるので・・・そろそろなのである。

当然、有力家臣は長政に女を送りこむわけである。

長政も官兵衛同様に洗礼を受けたクリスチャンであるが・・・一夫一婦制はあくまで建前である。

人質時代が長いために官兵衛よりも秀吉の言葉が重い傾向もあり、秀吉がバテレンはいけないと言えばさっさと棄教したい気分だったかもしれない。

ともかく、土着の宇都宮鎮房が新しい国主というべき、黒田家に娘・鶴姫を送りこむのは臣従の証である。

もし、黒田長政と鶴姫の間に子供が出来れば一族になることが出来る。

それに対して・・・黒田一族は無残で冷酷な仕打ちをすることになる。

しかし・・・戦国時代には別に珍しいことではない。

本来、黒田官兵衛とは・・・そういう男である。

一部お茶の間のためのキャラクターとイメージが違うからといって美化をするのもほどほどにしてもらいたいよね。

もで、『軍師官兵衛・第37回』(NHK総合20140914PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は28行で増進ですが・・・基本的に鶴姫(市川由衣)にうっとりなのでございますよねえ。かって秀吉は宇喜多家の本領安堵を主君・信長に願い出て薄氷を踏む思いを味わったはずですが・・・天下人とその家来では発想が違ってくるわけでございますよねえ。有能な武将は帰服させて手駒として使った方がいいという発想から・・・直接、管理できる領地は広ければ広いほどいいという発想になる。土着の武士と領民の一体感は無用の長物なのですな・・・あくまで領地から収奪する有能な管理人としての能力が求められるわけです。その代表が石田三成なのでございましょうねえ。「アオイホノオ」のゲストの市川由衣も際だっていましたが、鶴姫13歳を演じる市川由衣28歳も存在感抜群でございましたよねえ。イラスト大公開がなくて残念でしたが・・・あくまでマイペースでお願いします。だから、私信はコメント欄でやれと何度言ったら・・・。

Kan037天正十五年(1587年)十月、城井谷城に籠城した宇都宮鎮房を鎮圧するために出陣した黒田長政は地の利を生かした宇都宮勢に待ち伏せ攻撃を受け惨敗。肥後国人一揆の平定戦に参戦していた官兵衛は戦線を離脱して豊前国に帰陣し、宇都宮に味方する土豪を攻略し、城井谷城を包囲する。兵糧攻めの不利を悟った鎮房は黒田家への臣従と本領安堵を交換条件とする。十二月下旬、官兵衛はこの条件で紛争処理に同意する。これによって大友・宇都宮両家の血を引く鶴姫が黒田家嫡子の長政と縁を結ぶことになる。しかし・・・それは軍師・官兵衛の冷酷な計略だったのである。号令によって二十万の軍勢を動員できる関白に反逆することがいかに無謀なことであるか・・・官兵衛は鎮房をみせしめとして天下に知らしめる役割を担っていた。天正十六年(1588年)二月、肥後統治の失敗を責められて佐々成政は尼崎に幽閉される。四月、黒田本城の中津城に招かれた鎮房は留守を預かる娘婿の長政によって謀殺される。同行した宇都宮家の重臣も殺戮され、長政は側室・鶴姫を侍女団もろとも磔刑に処したのだった。一方、鎮房の嫡男・朝房は宇都宮勢を引き連れ官兵衛の配下として肥後国に出陣中だった・・・。宇都宮家粛清を実行する長政は鎮房の父の籠る城井谷城を急襲する。その頃、秀吉は聚楽第に後陽成天皇を迎え、徳川家康や織田信雄に臣下の礼をとらせていた。閏五月、佐々成政は秀吉に切腹を申しつけられ果てた・・・。

中津城に急造された宇都宮御殿に宇都宮の人質である鶴姫が初夜の儀を迎えるべく待っていた。

名家の血を引く鶴姫は幼い顔に気品を漂わせている。

長政は氏素性の定かならぬ黒田家の嫡男とは言え、母親は播磨国の名家・赤松家の血を引く櫛橋家の出身である。それほど出自に引け目は感じない。

戦場で研ぎ澄まされた長政は夜目が利く。

薄明かりに照らされた鶴姫の表情が固いのは見て取れた。

夜具の向こう側にいる鶴姫の元へと距離を詰めて腰を下ろす。

「長政である」

「はい」

「御殿は気に入ったか」

「立派でございまする」

「余も・・・かって人質だったことがある」

「まあ・・・」

「父が織田家の家来になった折、今の関白殿下の人質となった・・・」

「・・・」

「殿下も・・・北政所様も・・・慈しんでくださった」

「さようですか」

鶴姫の口元に微笑みが浮かんだ。

「そなたは女であるから・・・黒田家と宇都宮家が結ばれた証を示さねばならぬ」

「はい」

「最初は痛いが・・・我慢できるか」

「印をいただいて伴のものに申さねばなりませぬ」

「そうか・・・では・・・参るぞ」

長政は鶴姫をかき抱くとそのまま寝具に押し倒した。

その細くて白い足を一挙に開く・・・。

「鶴姫・・・参るぞ」

「あ・・・」

長政に刺し貫かれ鶴姫は短く叫ぶと、歯をくいしばり・・・涙を流した。

情を通じ・・・長政の心は揺らぐ。

幼い姫の運命を思うと憐れさを覚えてならない。

すべては父・官兵衛の描いた宇都宮の油断を招く計略なのである。

長政の父は戦で負けを知らぬ恐ろしい軍師だった。

せめて・・・今宵は優しくしてやろうと思う他はないのだった。

長政の強靭な肉体の下で・・・鶴姫は震えながら耐えている。

冬の朝はまだ遠い・・・。

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2014年9月14日 (日)

どんよりくもる的にゼロの真実〜監察医・松本真央〜(武井咲)

ゼロはこわい数字である。

なにしろ・・・何をかけてもゼロになってしまうのである。

逆に・・・1×0=0である。もう9999999999999×0=0なのである。

ゼロにはかけられたら虚無に還るという恐怖がつきまとっている。

しかし・・・ドラマはさらに、マイナスの真実という展開を主軸にしていく。

「真実が解明されること」が解明以前より「不幸」というのが基本である。

「そんな真実なら知りたくはなかった・・・」と関係者が思う真実の追求・・・。

つまり・・・この物語の主人公はダーク・ヒロインなのである。

もちろん・・・その前提が郷田マモラ原作のドラマ「きらきらひかる」(1998年)であることは言うまでもないだろう。

因縁のある二人の監察医。新人とベテランの対峙は明らかに換骨奪胎というか・・・オマージュになっている。

ただし・・・「きらきらひかる」はある意味、真実が救いとなり、ちょっといい話が完成するのが基本だが・・・こちらでは概ね、真実が痛いことになるのである。

もちろん・・・真実そのものはゼロだということなのだろう。

それをプラスに感じるか、マイナスに感じるかは・・・周囲の人間の心にすぎない。

しかし、法医学教室を舞台にした「ヴォイス~命なき者の声~」や葬儀社を舞台にした「最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜」といった亜流よりも・・・ストレートに監察医でパクりながら新境地を開いている感じがするのは・・・脚本の勝利と言えるかもしれない。

しかも・・・「いい話」よりも「悪い話」の方がネタに困らないような気がする。

で、『ゼロの真実〜監察医・松本真央〜・第1回~最終回(全8話)』(テレビ朝日20140717PM9~)脚本・大石静、演出・常廣丈太(他)を見た。専門分野に特化したクールな天才美少女というキャラクターを「お天気お姉さん」で確立した脚本家と主演女優がそのニュアンスを持ちこんでいる。こうなると三部作にしてもらいたいが・・・コレの続編になるのかもしれない。

ちなみに「きらきらひかる」のトリオは・・・。

新人監察医・天野ひかる(深津絵里) 

東京監察院嘱託医・杉裕里子(鈴木京香) 

刑事・月山紀子(松雪泰子)

・・・だったわけだが・・・コチラでは・・・。

新人監察医・松本真央(武井咲) 

ベテラン監察医・印田恭子(真矢みき) 

刑事・屋敷一郎(佐々木蔵之介)

・・・という布陣になっている。

「きらきらひかる」では杉がクールな役どころだが・・・コチラではヒロインが超クールな役柄なのである。

そして・・・松本真央の母親の「死の真相」に印田と屋敷が深く関わっているということで・・・一話完結でありながら・・・連続ドラマとしての要素を深めていくという趣向だ。

真央の赴任する関東中央監察医務院は泉澤部長監察医(生瀬勝久)の元、岩松(六角精児)、中山(尾美としのり)、児玉(青柳翔)などの監察医や、監察医補佐の保坂(でんでん)、事務員の秋山晴子(水沢エレナ)、臨床検査技師の佃(小松和重)、久米みどり(宮﨑香蓮)などが配置されている。

指導医たちよりも知識が豊富な真央は・・・ぬるま湯に浸っていた監察医たちを圧倒する。

しかし・・・印田だけは・・・「真実を追求しすぎる真央」を生温かく見守るという展開である。

実は・・・真央の母親の死に・・・印田が「悪人」として関わっているのではないか・・・という疑惑が最後まで怪しく漂うのである。

悪女が似合う真矢みきの魅力炸裂である。

そういう意味では上司に冷淡な水沢エレナや同僚に冷淡な宮﨑香蓮もいい味を出している。

「きらきらひかる」では基本的にいい人だった周囲が・・・ギスギスしているのが醍醐味なのである。

「きらきらひかる」では「死体にしか興味がない」のはヒロインの敵対者だが、コチラではヒロインが「死体にしか興味がない」のだった。

「きらきらひかる」では刑事が「私を誰だと思っている」が口癖の熱血漢なのだが・・・。

こちらでは・・・「金貸してくれ」が口癖なのだった。

「きらきらひかる」では「真実」を追及することで遺族の心が温まるのが基本だが・・・コチラではたとえば最終回・・・。

転落死して自殺だと思われていた遺体・内野ひかり(小島藤子)が実は恋愛関係のもつれで・・・ひかりの姉・良美(黒川芽以)が突き落とし、殺害していたことを真央が暴いてしまうのである。

姉妹の母親は・・・「姉が妹を殺したなんて・・・そんな真実、知りたくはなかった」と嘆くのだった。

「目の不自由な人が暴行を受けました」

「犯人の心ない行為は絶対、許せません」

「犯人は重度の知的障害者でした」

「ああああああああああああああ」

・・・みたいなことだな・・・そのたとえはどうかな。

そういう真央に・・・印田は問いかけるのである。

「真実は必ずしも良い報せじゃないわよ」

しかし・・・真央は「真実に善悪は関係ありません」と主張する。

やがて・・・真央の母親が「自殺」していたことを印田が隠蔽してきたことが明るみに出る。

「あなたの母親は酷い人だった。貴方を生んですぐに交番の前に捨て・・・あなたと再会しようとした時も男に裏切られて自殺した・・・生まれて母に会う日に・・・幼いあなたに・・・真実を告げる勇気が私にはなかった・・・だから・・・死因は不詳とした・・・私はそれでよかったと思う。真実を求めて・・・今のあなたがここにいるから・・・」

「それは・・・先生の独りよがりですよ・・・どんな母親でも・・・私には受け入れる準備がありました」

「そう・・・」

「ひどい母親かもしれませんが・・・死んだ母親が・・・生きていたと知るのは私にはうれしいことでした」

「あなたにも・・・うれしいことがあるんだ」

「人間ですから・・・」

「人間だったんだ・・・」

おい・・・もう少し甘い決着だったんじゃないか・・・だったとしてもっ。

さらにブラックな第二シリーズに期待したい。

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ラスト・ドクター〜監察医アキタの検死報告〜

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラヘくう様のゼロの真実

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2014年9月13日 (土)

上司に勧められてお見合いする監察医始めました(相武紗季)

「家族狩り」終了のために谷間である。

様々なものがかぶった夏ドラマ・・・。

応援団ドラマが二つとか。

すべてのドラマで不倫が展開とか・・・すべてでもないだろう。少なくとも「アオイホノオ」は違う。

とんこさんと津田さんとホノオは・・・あれは青春の妄想だ。

刑事ドラマにつぐ刑事ドラマとか。

まあ・・・それは毎シーズンそうだ。

そして・・・「ゼロの真実 ~監察医・松本真央~」(テレビ朝日)と「ラスト・ドクター〜監察医アキタの検死報告〜」(テレビ東京)は監察医ドラマのダブルである。

なんとなく・・・日本の終焉の予兆を感じるな。

いや・・・スーパーリンクが進化する過程なのかもしれんぞ。

「デング熱ウイルス」がテロのデモでないことを祈る。

で、『ラスト・ドクター〜監察医アキタの検死報告〜・第1回~最終回(全9話)』(テレビ東京20140711PM8~)脚本・尾崎将也(他)、演出・水谷俊之(他)を見た。こっちからかよ。・・・キャリアから考えて・・・主人公のか。ヒロインのか・・・それは聞かないでください。とにかく、今季、三本掛け持ちの脚本家がベタベタっと書いたに違いないこのドラマ。それなりに面白いし、のほほんと見るにはいい感じの仕上がりだったのだった。

最終回をざっと見てベタについて考えよう。

ベタにも様々な解釈が可能だが・・・いつか見たことがあるような展開が基本だ。わかりやすさを促進する一種の手だよな。

ヒロインの関東監察医務院の新人監察医・吉崎薫子(相武紗季)が「大目にみてね」でおなじみの院長・柳田修平(伊東四朗)の紹介でお見合いすることになるのだが・・・お見合い相手の自称・不動産業者の福山真治(袴田吉彦)が・・・結婚詐欺師である。最初なので例をあげるが今季のドラマ「東京スカーレット ~警視庁NS係」でヒロインの鳴滝杏(水川あさみ)が結婚詐欺師(黄川田将也)にひっかかっている。ベタなのである。騙されるのはバカの証拠だが、騙す人よりは「いい人」に決まっているので・・・ヒロインの善良さをベタにアピールできるわけである。

薫子の指導係で主人公の監察医・秋田晋也(寺脇康文)は「生きている人間より死んでいる人間に興味がある変人」である。職務については非常に優秀だが対人関係に難がある。別のドラマでは「右京さん」の非人間ぶりにあきれていた男が・・・こちらでは周囲に呆れられるわけである。もちろん・・・秋田より薫子の方が常識的な人間であり、そのやりとりがお茶の間の共感を誘うというベタである。

しかし、そんな秋田は普通の人々である監察医の安田(マキタスポーツ)や監察医補佐の山下(戸田恵子)、あるいは検査科の竹下係長(YOU)とのふれあいを通じて人間性を学んでいくという趣向がベタなのである。

最終回の第一の死体は酔って喧嘩した後、路上で死亡した中田(春田純一)・・・。

酒癖の悪い夫だったが・・・結婚記念日のプレゼントはかかさなかったという中田の妻・佳代子(遊井亮子)の言葉に感動するヒロイン・・・ベタである。

監察医・秋田は・・・鳩尾を殴られたためのショック死と結論を出す。

喧嘩相手は通りすがりの花屋・進藤和弘(岡田義徳)である。

「喧嘩というよりは因縁つけられただけで・・・殴ったりはしません」

しかし、目撃者の証言から起訴されることになる。

監察医として法廷で証言する秋田。

進藤の弁護士として尋問するのが・・・秋田が十年前に結婚して八年前に離婚した元妻の川田玲子(草刈民代)である。

「被害者が心臓に疾患があったことはご存じでしたか」

「知りませんでした・・・」

「病死ではないと100%言いきれますか」

「100%の正解なんて科学的ではないな」

「では100%ではないのですね」

「・・・はい」

顔をしかめる検察官(東根作寿英)だった。

裁判官の心証は「疑わしきは罰せず」の基本に傾き・・・進藤には無罪の判決が下る。

「病死じゃないのに・・・」とうなだれる秋田。

ベタである。

所要で医務院を訪れた川田弁護士は薫子たち女性スタッフと意気投合。

「あの人・・・自分は利口で他人は馬鹿だと思ってるでしょう」

「そうそう・・・」

「悪い人じゃないけど・・・我慢できなくなって」

「よく・・・二年も辛抱しましたねえ」

「ありがとう」

立ち聞きしている秋田だった・・・ベタだなあ。

第二の死体は薫子のお見合い相手・福山・・・。自宅ガレージで発見され、死体は睡眠中の一酸化中毒で・・・車のエンジンがかかっていたために・・・自殺と判断されかかる。

見合い相手の死因を動揺を抑制して判定する薫子・・・ベタだが・・・他殺の可能性もあるんだから関係者がやっちゃダメだよな。

そこへ・・・福山の婚約者を名乗る女・加藤由紀(三津谷葉子)が現れ・・・福山が結婚詐欺師であったことが判明する。

さらに・・・福山の元妻(岩崎ひろみ)が現れ・・・事情が明らかになる。

福山は難病の子供の治療費を作るために・・・悪事に手を染めていたのだった。

ベタだが・・・その悪事が結婚詐欺でいいのかどうか微妙・・・。

しかし・・・福山の善良さに心が傾く薫子は「自殺でなければ保険金が入ること」を知り、自殺ではなかった可能性を探りはじめる。

そして・・・心臓病の発作により・・・心身喪失後、中毒死という事故死だった結論を導き出す。

それでいいのかどうかは別としてベタである。

一方、冤罪被害を出すかもしれなかった監察医として素晴らしいインターネットの世界で叩かれる秋田・・・。ベタである。

別れた妻である川田弁護士も「変人」が気にかかる。

そんなある日・・・仲睦まじい進藤と被害者の妻佳代子の密会を目撃してしまうのだった。

ベタである。

探偵を使って進藤と佳代子の素行調査をする川田弁護士。

依頼者の不利益になる情報と知りつつ・・・秋田に二人の関係を伝えるベタである。

進藤が佳代子から病気の事を聞いていれば・・・発作を起こすために・・・急所を打った可能性が出て来た。

しかし・・・そんなことができるのは武術の心得があるものだけ。それはどうかな。

控訴の期日が迫る中・・・。

監察院の同僚たちは武術関係の道場の捜査を開始する。ベタである。

「それはあなたたちの仕事ではない」と警視庁中央東警察署の山倉刑事(渡辺いっけい)に叱られる一同。ベタである。

しかし、秋田と犬猿の仲の安田監察医が・・・進藤の通っていた武道教室を特定するのだった。・・・ベタである。

一方、弁護士の裏切りを知った進藤は・・・何故か・・・弁護士の口封じをはかる。ベタだから。

追われて何故か屋上に逃げて追い詰められる弁護士のベタ。

そこへ・・・秋田が段ボール武装で登場。

「そんなもので俺の拳が防げるか」と進藤。

しかし・・・段ボールの鎧の下には鉄板が仕込まれていたのだった・・・ベタでした。

秋田と弁護士の復縁の気配を感じさせながら・・・物語はベタベタと音を立てて幕を閉じるのだった。

純情可憐なキャリア・ウーマンという・・・ベタなヒロインを演じる1985年度生れを代表する女優の一人・相武紗季はベタにかわいかったのである。

ある意味、長い道程だったよな。

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2014年9月12日 (金)

奈落の底までお伴する覚悟でお慕い申し上げます(野々すみ花)

そういう覚悟で「強制連行をした男・吉田」と交際してきた「朝日新聞」だったが・・・ついに「訣別」するのだった。

長年、それを応援してきた「報道ステーション」はなんとなく無表情を装いあくまで個人的な問題ですからそっとしておいてあげましょうという態度である。

まあ・・・キャスターはただ・・・番組の方針に従って役割をこなしているだけなので・・・あまり責めないであげてください。

とにかく・・・やってもいないことをやったと言っちゃう人は嘘つきなのである。

それだけの話なのでございます。

それを迷惑だと感じる人もいればそういうことってあるよねえと共感する人もいる。

ただ、それだけの話なのでございますとも。

うしろゆびをさされたくなければ己に恥じない行動を続ける他ないのだが・・・そんなヒーローばかりじゃないのが・・・この世というものでございます。

で、『吉原裏同心・第11回』(NHK総合20140911PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・川野秀昭を見た。9・11といえばあの日である。その事実をテレビで見た人は世界中にいる。しかし、それぞれの最後の時、加害者や被害者がどういう気持ちだったのかは永遠の謎なのである。生き残ったものは「恐怖」を語るだろう。加害者は「勝利」を宣言し、被害者は「復讐」を誓う。しかし、死人は何も語らないのである。先週終わった監察医・松本真央は語らせるわけだが・・・。現代においては・・・どんな事情があろうとも人を殺せば裁かれる。しかし、事情を知れば心は揺れる。情状酌量したりもする。そして・・・たとえ人斬り包丁を腰にさした武士たちの時代であってさえも・・・命を奪った罪の重さは心にのしかかるという話である。

「俺は朝は焼き魚が喰いてえんだ」

「納豆は安いし体にいいのよ」

新婚の仙右衛門(山内圭哉)とお芳(平田薫)は朝から夫婦喧嘩である。

同じ長屋の吉原裏同心・神守幹次郎(小出恵介)と姉さん女房の手習いの師匠・汀女(貫地谷しほり)は様子を見に来る。

「朝からやかましい・・・せっかく夫婦になったというのに仲良くせんか」

「お前んとこは喧嘩しねえのかよ」

「喧嘩などせん」

「本当ですか」

「嘘ですよ・・・いたします」

「ええっ」

江戸は平和だった。

一方、吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)は吉原一の花魁・薄墨太夫(野々すみ花)は秘事を明かされ困惑気味である。

「あちきは・・・幹次郎様をお慕い申し上げているのでありんす」

「え」

「幹次郎様と結ばるなら命も惜しまないと・・・」

「・・・そんなことは口に出されてはいけません」

「それゆえ・・・四郎兵衛様だけに申し上げたのです」

しかし・・・薄墨太夫の恋心は募って行くばかりなのである。

ま、お茶の間はずっと知っていたわけだが。

その頃、吉原では掏摸(すり)が横行している。

「どうやら徒党を組んでいやがるらしい・・・小物を一人二人捕まえてもきりがねえから・・・泳がせて掏摸の元締めを探りださねえとな」

番方たちに命じる四郎兵衛だった。

そんな折、吉原遊郭の廓うちで仇討ち騒ぎが持ち上がる。

追われるものは中林与五郎(豊原功補)という浪人。

討手は備中国藩士の溝呂木忠也(佐野和真)という若侍である。

「廓うちでの刃傷沙汰はご法度ですぜ」と仲裁に入る四郎兵衛・・・。

「藩主に許された仇討ちじゃ」

追われるものと追うものが吉原に・・・何しに来たのかはさておき。

「とにかく・・・仔細を伺おう」と同心の村崎季光(石井愃一)が二人を分ける。

溝呂木忠也は仇討ちの次第を語る。

「中林与五郎は家に出入りする浪人であった。しかし、拙者の姉に懸想して不埒なふるまいに及んだゆえ、それを嗜めたわが父・溝呂木六兵衛(村野武範)を惨殺し逐電したのでござる」

「それは破廉恥極まる男じゃ・・・そうとなれば時と場所を定める故、存分に仇を討ちなさるがよかろう」

それに対し「逃げも隠れもせぬ」と応じる与五郎だった。

期日まで与五郎の身柄を預かることになった幹次郎。

与五郎は犬を連れてみすぼらしい風体だったが・・・剣の腕はかなりのものだと幹次郎は見抜いていた。

「拙者には貴殿が破廉恥な男には見えもうさん・・・何か訳があるのでしょう」

「何があろうと・・・仇は仇・・・仇討ちに応じぬわけにはまいらぬ・・・」

事情を語らぬ与五郎だった。

「この犬は遠州の浜辺で見つけましてな・・・声をかけたら・・・寄って来た・・・そこで遠介と名付けて旅の伴にいたしました」

「追われての旅は苦しゅうございますからな」

「確かに・・・そろそろ・・・決着をつける時と思っておりました」

「拙者も・・・追われてここへたどり着いたものでござる」

「そうでござったか」

「惨い夫から妻を攫うようにして共に逃げ・・・妻仇討ちとして追われながら・・・江戸へ」

「・・・御苦労なされたな・・・」

「さほどでもござらん」

「そうまで打ち明けられては・・・語らぬわけにはまいらぬようじゃ。当時、拙者は浪々の身を囲碁の指南で養っておりました。六兵衛は教授相手でございます。六兵衛は腕が上がらぬままに賭け碁の虜になってしまいましてな。一勝負で二朱(およそ一万円)などという遊び事を求めてきたのです。客を逃したくないという心が仇でした。負け続けた六兵衛はついには賭け金を二分(およそ四万円)にあげようと言い出したのです。六兵衛は賭け碁にいれこんで方々に借金を作っていたのです。そのことを諌めると逆上した六兵衛は抜刀して斬りかかって参りました。拙者は逃げようとしたのですが・・・折悪く・・・あの息子が居合わせて・・・二人掛かりとなり・・・やむなく・・・六兵衛を斬ってしまったのでございます」

「それでは・・・理は与五郎殿にあるではありませんか」

「そのようなこと・・・語って何になりましょう・・・父親の仇を討つために・・・あのような若者が流浪の身・・・それが憐れに思えてなりませぬ・・・」

「・・・」

仇討ちの日時が決まり、忠也は江戸藩邸の上役・亀田満右衛門(野添義弘)に報告する。

「それは・・・大義である・・・それならばしかるべき助太刀を用意せねばなるまい」

「助太刀・・・」

「お主の父の死の真相・・・知るものは多い・・・万が一にもお主が敗れて・・・仇の口からそのことが漏れては・・・藩の一大事じゃ・・・美談と醜聞では大違いじゃからのう」

「・・・」

村崎の口から助太刀のことを聞く幹次郎。

「助太刀とはいささか卑怯ではござらぬか」

「仇討ちではよくあることじゃ・・・非は仇にあるのじゃからな」

「ならば・・・拙者、義によって与五郎殿に助太刀いたす」

「何・・・」

汀女に決心を告げる幹次郎。

「お止下さるな・・・やらせてくだされ」

「とめませぬ・・・おやりなさいませ」

「・・・お許しくださるか」

「私は・・・武士の妻でございますから」

「姉様・・・」

「しかし・・・死んではなりませぬ・・・必ず生きて帰ると誓ってくださいませ」

「誓いまする」

薄墨太夫も幹次郎を呼びだすのだった。

「助太刀の件・・・おやめください」

「・・・何故です」

「愛しいお方が命を落すかもしれないのに・・・止めずにおられるでしょうか」

「姉様は・・・行けと言ってくれました」

「そうでありんすか・・・汀女様は・・・武士の妻・・・あちきは・・・所詮、遊女でございましたねえ」

武家に生まれ遊女となった薄墨太夫は・・・敗北を悟るのだった。

憐れである。

仇討ち決行の日・・・折悪く・・・掏摸の一味が尻尾を出す。

「お役目を果たされよ」と与五郎。

「すぐに片付けて参ります」と幹次郎。

仙右衛門と幹次郎は手早く仕事を終えるのだった。

「後は頼んだぞ」

「まかせときな」

幹次郎は走る。

そして・・・間に合った。

「助太刀の方々は拙者が相手をいたす」

四人の助太刀を気迫で圧する幹次郎。

しかし・・・与五郎は無抵抗で忠也に討たれるのだった。

「与五郎殿・・・何故」

「潮時でござる・・・若いものが生き伸びた方がよかろう・・・江戸の地で友にめぐりあえてよかった・・・遠介を・・・」

与五郎はこときれた。

虚無の風が野原を吹き過ぎる。

もの憂い顔で帰宅する幹次郎に駆け寄る汀女。

「よくご無事で・・・」

「与五郎殿は・・・見事な最後でござった」

「さようでございましたか」

すべてを悟った汀女はひっそりと幹次郎に寄り添う。

遠介は・・・柴田相庵(林隆三)の患者の家に引き取られて行った。

しかし・・・相庵の出番はない・・・合掌である。

そして・・・ついに・・・豊後からの追手の影が幹次郎と汀女に迫る。

最終回は越えねばならないこ小太りの山が・・・立ちはだかるらしい・・・。

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2014年9月11日 (木)

よくある話、よくあるとんでもない話、よくあるひどい話だよ(長澤まさみ)

実際にあったひどい話風の後は実際にありそうなひどい話である。

いや・・・別にこれはこれでいいと思うが・・・できれば・・・もう少し、ゆとりのある脚本だとよかったなあ。

そこそこの脚本だと・・・きついよねえ。

ついに・・・長澤まさみと蒼井優と満島ひかりが食卓を囲んじゃうわけである。

ものすごくゴージャスな画面にセリフがついてこないんだな。

これに橋本愛が加わった四人・・・もう完全に脚本が負けるわけである。

もう・・・確実にそうなるよね。

ま・・・みんながみんなそう思うわけじゃないから・・・きっと大丈夫だよ。

今さらですが・・・基本的にこのプログは100円ライター・キッドの妄想が責任を転嫁しますのでご了承ください。

で、『2014・第9回』(フジテレビ20140910PM10~)脚本・武藤将吾、演出・並木道子を見た。両親がすでに他界している佐藤家・・・長男の旭(妻夫木聡)はできちゃった結婚で梓(蒼井優)と夫婦となり、未熟児の長女・あかりが誕生する。次男の暁(瑛太)は重病の恋人(広末涼子)のために詐欺事件を起こすが恋人は死亡、服役後、詐偽の被害者の娘である屋代多香子(長澤まさみ)と交際を始める。長女のひかり(満島ひかり)は医師の新城(吉岡秀隆)と不倫をしていたが新城の妻(斉藤由貴)に説教されて関係を清算する。三男の陽(柄本佑)は四男の旦(野村周平)の恋人・香澄(橋本愛)を略奪し、旦は香澄の恥ずかしい画像をネットに流出させ押入れに引き籠る・・・いろいろなことがあったが特に感慨はないのだなあ・・・。これがクドカンの脚本だったらどうだったのかなあ。禁句だよ。

「理屈じゃないんだよ・・・って言うわけ。それがすでに理屈だと思うわけですよ。言葉って理屈で成り立ってるわけでしょ。プロレスだったら凶器を使ったら流血でしょ。奥さんとお母さんがプロレス好きで意気投合してたら最高の離婚じゃないですか。最高の離婚は脚本・坂元裕二なんですよ。最高の離婚風のセリフ書かれたら演出・並木道子で濱崎光生風になっちゃいますよ。でもあれでしょ、俺は旭の弟の暁でしょ。自動販売機の営業じゃなくて、前科ありの農業手伝いでしょう」

「家族のこと喋るの好きだよねえ・・・あんた」

「だって脚本にそう書いてあるんだもの・・・それにあんたはやめてよ」

「じゃ・・・なんて・・・」

「暁(さとる)でいいじゃないか・・・あんたと同じ三文字だし・・・」

「じゃ・・・さとる・・・」

「う」

全国のサトルさん悩殺である。

朝からイチャイチャする二人に水をさす着信音。

謎の男・・・土居正登が気になるさとるだった。

「誰・・・」

「昔の知り合い・・・結構、有名な音楽プロデューサーなんだけど・・・」

言葉を濁す多香子だった。

刑務所生活のために・・・諸事情に疎いさとるは立ち読みで情報を補完するのだった。

著名な音楽プロデューサー土居正登(鈴木一真)は雑誌の表紙を飾っていた。

妄想の巨大掲示板や妄想のつぶやきシステムは・・・。

「また、お前か」で埋まったのだろう。

一方・・・超未熟児のあかりは感染症にかかり発熱する。

新城と担当看護師のひかりは「投薬したから大丈夫」と太鼓判を押すが・・・母親の梓は「万が一の可能性」に怯えるのだった。

死にたくなるような奴らが多いドラマでは死ななくていい奴が死ぬというお約束があるので・・・あかりの命は風前の灯なのである。

「この保育器から出たらパパとママにだっこしてもらうんだ」フラグである。

そんな悲しいフラグがあってたまるかよっ。

香澄が笑って許してくれなかったことに不安な気持ちになる旦。そのポケットからは万引きしたとしか思えないボイスレコーダーが発見される。

「なんだよ・・・これは」

「香澄ちゃんの声を録音しようと思ってたんだけど・・・」

「変態プレーは禁止・・・没収する」

「結局、あへあへ言わせることもできなかったよ」

「まず・・・童貞をなんとかしないとな」

仕事の警備中に観客と喧嘩した夫を叱る妻。

「今度、喧嘩なんかしたら・・・あかりに会わせないよ」

「二度と喧嘩しないことを誓います」

すかさず・・・兄の言葉を録音するさとるだった。

さりげない最終的解決策の提示であるが・・・これみよがしという感じになってます。

香澄が退団したことで解散の危機に陥る「さとうはる劇団」・・・。

「どういうことだよ」

「なんでお前の弟が画像流出なんてしたんだよ」

「なんで兄貴のお前が阻止できないんだよ」

「なんで兄弟で三角関係なんかになるんだよ」

「大体、看板女優に手を出すなんて・・・ありがちすぎるだろう」

「お前は大島渚か、伊丹十三か」

「故人の名前ばかり出さないでください」

「じゃ、篠田正浩かっ」

「やってらんねえよ・・・」

そして、誰もいなくなるのだった。みんな・・・芝居じゃなく・・・香澄が好きだったんだな。

一人になった陽を旦が複雑な微笑みで慰める。

「オレのせいで・・・こんなことに・・・」

「お前だけが・・・悪いんじゃないよ・・・青春の神様は意地悪なんだ」

旦は「ざまあみろ」と思う反面・・・「このままではいけない」とも思うのだった。

「兄ちゃんなんとかしてよ」

「のび太だって・・・ドラえもんを卒業したのに・・・」

しかし・・・弟や妹の幸福が旭の夢なのである。っていうかそういう設定だった。

一方・・・様子のおかしい多香子を問いつめるさとる・・・。

「路上で歌ってた時・・・オーディションに落ちまくって・・・母が病気で倒れて・・・もう、潮時かなって感じてた時に・・・土居から声をかけられたの・・・デビューさせてやるかわりに一回やらせろっていう条件だった。一回くらいならいいかと思って寝たのよ・・・でもデビューの話は嘘だった・・・文句を言ったら・・・盗撮されていた私の処女喪失動画を見せられた・・・文句があるなら流出させるって・・・全世界がお前の局部を見るぞって・・・それからはやりたい放題されて・・・射精され続けて妊娠した・・・堕胎して・・・飽きられて捨てられた・・・もう済んだことだと思ってたけど・・・時々、思い出したように呼びだされて性奴隷になるの」

「ああああああああ」

放心して児童公園の滑り台を占拠するさとる。

そこへ・・・旭に連行される陽が通りかかる。

「だめだよ・・・香織ちゃんの家に行くなんて」

「だめだと思うからだめなんだよ」

「通報されるよ」

「大丈夫だ・・・両親の留守は確かめてある・・・家にはあの子一人だ」

「それだけ聞いていると犯罪計画みたいだよ」

「また・・・余計なお節介か」と合流するさとるだった。

チャイムに応じない香澄。

表裏一体の兄弟は近所から梯子を拝借である。

「香澄ちゃん・・・」

「帰って下さい」

「君とのことがばれて・・・劇団は解散寸前だ」

「だから・・・来たの?」

「うん・・・君の顔を見るまではそういう気持ちもあった・・・」

「・・・」

「だけど・・・君を見て・・・自分の気持ちがわかったよ・・・なんでここでこうしているのか」

「それは何故?」

「恋だよ。恋しくて恋しくて恋しい気持ちに導かれてだよ。そうに決まってる。恋しい君に会うためならばたとえ火の中、水の中、世界の果てまで行くだろう」

「結局、ロミオとジュリエットなのね」

「僕は君が一番輝くのは舞台だと思うけど・・・なんでもいいよ・・・君が生きていてくれれば・・・君が幸せで微笑んでくれれば・・・そして・・・いつかその気になったら帰ってくればいい。それまで僕は一人芝居を続けるよ」

そこへ・・・梯子の所有者が来たために退散する三兄弟だった。

リベンジポルノ関係でこの決着がないことは前回述べたのでもう言うまい。

多香子に冷たい言葉で別れを告げるさとる。

「お前といると・・・昔の女のことを思い出してつらい」

「何言ってんの」

もちろん・・・本当は多香子がいるために昔の恋人の面影を忘れそうなさとるだった。

さとるは旭にも別れを告げる。

「しばらく家を出る・・・」

「多香子さんのところに行くのか」

「迷惑かけてすまん」

「いいじゃないか・・・」

そして・・・さとるは包丁を購入するのだった。

旭は・・・同棲開始を祝福する電話を多香子にかけるのだった。

「弟のこと・・・よろしくお願いします」

「なんのこと・・・」

すべての事情を打ち明ける多香子だった。

まあ・・・確かに覚醒剤中毒やら交際相手を自殺未遂に追い込む色魔とか・・・そういう音楽プロデューサーが実在するのは周知の事実だが・・・どちらかといえば芸能界よりも極道に近い感じの下衆野郎・土居である。

なんの警戒もせず、先着した旭の面会に応じるのだった。

こういう害虫駆除の対処方法は何でしょうか。

後腐れのないように存在そのものを抹消するべきですな。

しかし・・・一般人には難しいのでは・・・。

一般人は泣き寝入りされるがよろしかろう。

ソフトな感じでは・・・。

動画には動画で・・・後ろの穴に挿入して勃起でもしている姿を収録するがよろしかろう。

ドラマなのでもう少しソフトな決着である。

嗜虐性のある土居は「暴力に耐えられたらご褒美」という条件で画像の返却を匂わす。

「恥ずかしい画像で脅迫するなんて・・・恥ずかしくないんですか」

「一度や二度ご奉仕したくらいでデビューできるほど・・・この業界甘くないんだよ」

「しかし・・・その様子を隠し撮りして脅すなんて・・・ヤクザみたいだ」

「何、言ってんの・・・音楽プロデューサーなんて基本、ヤクザだよ」

「じゃ・・・暴行シーンは月並みで時間がもったいないので・・・今の言質をとったということで・・・返却してください」

「そんな・・・証拠にもならない録音なんて古臭い手法・・・恥ずかしくないのか」

「勘弁してください・・・これが限界なんです・・・なんでしたら・・・包丁の方がいいですか・・・あなたと違って・・・こっちは失うものが何もないんで・・・」

「それはこわいなあ・・・貧乏人の怨みほどこわいものはないからね・・・僕の負けだ」

途中参戦でボロボロになったさとるを迎える多香子。

「とりかえしてきたぜ」

「結局、ワルは野放しなのね」

「甘い餌で罠にかかったウサギにもそれなりの責任がある」

「それ・・・土砂崩れやメルトダウンの被害者にも言えるの・・・」

「それは別腹だ」

「どこかで聞いたセリフね」

「昨日・・・深夜ドラマで・・・」

「どうして・・・こんなことするのよ」

「多香子が好きだからさ・・・多香子が震えないで眠れるようにしたいからさ」

「馬鹿ね・・・」

抱擁する二人だった。

要するに泣き寝入りの一種である。強いものはある程度何をしてもいいという話になっている。いいのか?

まあ・・・二人が幸せなら社会正義はどうでも良い姿勢です。

生き方としてはありなんじゃないの。弱者の処世術的な・・・。

そして・・・愛しいロミオの元へ帰ってくるジュリエット・・・。

「私にはここしかないもの」

「そのセリフは君には似合わない・・・パンティー、ひゃっほーでお願いします」

旦は不幸中の幸いというものを知るのだった。

愛したからといって必ずしも愛されるわけではないのが人生である。

旭に梓、暁に多香子、陽に香澄・・・。

大丈夫だ・・・ひかりに旦のペアができる。相思相愛だし。

近親相姦だけどな。

全員、ちょっと汚れ役にチャレンジの流れでいいんじゃないか。

一種の青春スター残酷物語だよな。

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2014年9月10日 (水)

伝統を守ることと革命的なことの軋轢にあすなろ三三七拍子(剛力彩芽)

う・・・はっ・・・うっ・・・はの全米オープン・テニス男子シングルで錦織圭が準優勝した影響で・・・特別編成のため総合・2014年9月16日(火) 午後10時からにドラマ10「聖女」の第4回放送は順延である。

準優勝ということは決勝で敗北したわけだが・・・四大大会に日本人が決勝進出したことがすでに史上初の快挙であり、応援していた人々はそれなりに拍手を送るわけだ。

しかし・・・別にドラマを飛ばす必要はないのではないかと思う。

まあ・・・皆さまのNHKはお茶の間に媚びる機会は絶対に逃がさないという姿勢なのですな。

寝不足の錦織圭の生の声を一部大衆が求めている以上、なにがなんでもインタビューをお届けしなればいけないのである。

基本的にテニスにまったく興味のない人、ごめんなさいなのだった。

で、『あすなろ三三七拍子・第1~最終回(全9話)』(フジテレビ20140715PM10~)原作・重松清、脚本・吉田紀子(他)、演出・土方政人、音楽・大友良英を見た。「あまちゃん」の音楽を担当した人の投入である。脚本家は「Dr.コトー診療所」の人、主演はロト部長、ヒロインはワカリタ剛力彩芽・・・で視聴率が*7.7%↘*5.1%↗*5.3%↘*4.1%↗*5.0%→*5.0%↘*3.6%↗*5.5%の大苦戦である。「廃止寸前の大学の応援団の復興のためにリストラ寸前の五十代のサラリーマンが大学生になる」という設定が「奇」を衒いすぎているという感じをお茶の間に与えたのかもしれない。誰かを応援するのが大好きな国民にとって・・・今さらの話なのである。

まあ・・・個人的には大学時代に世界同時革命側にいた人間にとっては・・・いつの時代だよっ・・・所詮・・・体制側の犬である「応援団」は敵対勢力に過ぎないわけである。

もちろん・・・このドラマの「応援団」は時代から取り残された希少生物同様の存在で・・・そもそも・・・敵対するのが・・・暴力革命を目指す極左勢力ではなく・・・フェミニズム論研究室准教授の原先生(森口瑤子)なのである。

社長(西田敏行)命令で翌檜大学応援団の団長となるエール物産総務部課長の藤巻大介(柳葉敏郎)はそもそも伝統順守の精神などない・・・単なる松山千春ファンである。

愛読書は「ドカベン」だ・・・。つまり、軟弱の徒なのである・・・断定するのかっ。

そして・・・中核は学園紛争ではなくて藤巻家のホームドラマなのである。

一部革命戦士のどうでもいいわ感は半端ないのだった・・・極一部過ぎるだろう・・・。

藤巻団長は付属高校に通う娘・美紀(飯豊まりえ)の交際相手で金髪の勤労大学生・保阪(風間俊介)を軟弱者呼ばわりするのだが・・・学生時代に「松山千春研究会」に所属していたものが言うことかである。ある意味、藤巻団長自身が軟弱者の極みだろう。

そんな夫に「誰のおかげで飯が食えてるんだ」などと言われてプチ家出しかしない妻でパート従業員の広子(菊池桃子)は冬と夏の間に春を置くタイプである・・・なんのことだかわからない。

・・・ま、谷間だし・・・三百万アクセス突破でなんとなく気が抜けているのでございます。

そもそも・・・伝統というものは滅びる時は滅びるものだ。

「パンがなければケーキを食べればいい」などと言っていると断頭台の露と消えるのである。

しかし・・・一方で「執着心」や「変化を望まない気持ち」がイギリスの王室や日本の皇室を支えているわけである。

「平等」という理想よりも「伝統」が勝利することもある。

そもそも・・・応援団なんて・・・「強制勧誘」しなければ存続不可能に決まっているのである。

可愛い新入生が学ラン来た怖い先輩たちに囲まれて「団に入らないと・・・お化けが来るよ」と恫喝されて・・・泣きながら「自由」な学生生活とさよならしてこその「応援団」の存続であり・・・存在意義なのである。

第一・・・スポーツが盛んな大学なら・・・応援団がないなんて面目丸つぶれの事態なので・・・多少の必要悪には目をつぶるのである。

そういうゴリ押しは断固許さないぞ~・・・だからいつの時代なんだよっ。

とにかく・・・「仕事しろよ」と誰もが叫ぶOBの斉藤先輩(反町隆史)や山下先輩(ほんこん)や親の血を引いて自発的に応援団入りする松下沙耶(剛力彩芽)や純情可憐な野口健太(大内田悠平)・・・みんなファンタジーの国の住人なんだろう・・・。

そして・・・酒池肉林の大学生活なのに色恋沙汰はお互いに好きなのに言い出せないチアリーダーの葉月(高畑充希)と吹奏楽部部長の園田(山本涼介)・・・小学生かっ。

まあ・・・これは視聴率なんかとれないよな。

でもまあ・・・事件らしい事件もなく・・・苦難らしい苦難もない・・・のほほんな展開・・・これぞ夏ドラマと言えるのかもしれない。

突然、お約束のチンピラが現れて喧嘩とも言えない喧嘩をして問題となって活動停止とか・・・すげえ・・・恥ずかしかったぜ。

まあ・・・放火して皆殺しにする価値もない軟弱な団員しかいない応援団なんて・・・ぶっつぶす価値もないよな・・・だから、誰なんだよ、お前は・・・。

とにかく・・・こうして・・・あすなろ応援団は・・・ワン・シーズンに応援団ドラマが二つという珍事の片翼を担ったのである。

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2014年9月 9日 (火)

笑いの壺の底の浅い女だわ・・・カツ丼食べて勝つどんのカーニバル(木村拓哉)

悪の嵐も最初はほんの小さな風である。

楽をして稼ぐ・・・それだけでそよ風のように悪は忍びこむ。

大金に目が眩む・・・雲を一瞬、吹き払う爽快な悪戯な風。

しかし、悪の風は知らず知らずのうちに心を蝕む。

背中を押す悪の風は地獄へ向かって吹いて行く。

悪い風が吹き荒れる悪のカーニバルに人はたやすく翻弄される。

悪の嵐が近付けば誰もがとりかえしのつかないことをしてしまう可能性がある。

やがて、人は拾った金をポケットに忍ばせるように人の命も奪うようになるのである。

悪意のブリザードに襲われて自分を見失った時・・・魂は冷えている。

そして、永遠の悪の嵐が吹き荒ぶ・・・。

で、『HERO(第2期)・第9回』(フジテレビ20140907PM9~)脚本・福田靖、演出・森脇智延を見た。組織化された犯罪には元締めの存在するものがある。単独犯とは違い、組織的犯罪は司法組織に厄介な対応を迫る場合がある。覚醒剤犯罪を見れば分かるだろう。末端の違反者を逮捕しても・・・それが憐れな薬物中毒者にすぎない場合があるわけである。本当の主犯は覚醒剤ルートの全貌を明らかにしなければ処罰の対象にならないのである。犯罪を摘発する組織は・・・地道に捜査を続け・・・共犯者たちの共犯意識を破壊し・・・悪の中枢に迫って行かなければならないのだ。これはそういう話である。

残暑が厳しいらしい。

2014年8月23日(土)に行われた「第33回浅草サンバカーニバル」はとっくに終わっているのにだ。

事務官たちの趣味談義・・・。

末次隆之事務官(小日向文世)といえば社交ダンス。遠藤賢司事務官(八嶋智人)は合コンである。・・・合コンは趣味なのか。

井戸秀二事務官(正名僕蔵)はフットサルを始めたらしい。

そして、麻木千佳事務官(北川景子)は・・・なんと露出の多い衣装で浅草サンバカーニバルに毎年参加しているらしい。

事件はどうでもいい・・・それを見せんかっと叫んだお茶の間の一部愛好家だった。

二人の事務官の新たに明らかになった趣味が・・・事件解決にそれとなく絡んでくるという趣向である。

「おかしいんですよ」

「何があった・・・」とさりげなく尋ねる久利生公平検事(木村拓哉)・・・。

「ネット通販で買ったDVDボックスが一週間過ぎても届かないんです」

「それはやばいね」と遠藤事務官。

「何のDVDですか」と叫ぶ宇野大介検事(濱田岳)・・・。

「暑いな・・・」と職場恋愛問題に敏感な川尻健三郎部長検事(松重豊)は回避モードに入るのだった。

東京地方検察庁城西支部のエレベーターは朝から蒸すのだった。

牛丸次席検事(角野卓造)からは城西支部が総力戦を求められる案件が提示される。

被害者・吉田恒春(黒木辰哉)・・・「ホームレス中学生」(2007年フジテレビ)の主人公が死体で登場である。今回は応徳義塾大学の学生である。

被疑者は同じ大学に通う四人の学生で・・・被害者に対する集団暴行による暴行致死容疑がかけられている。

凶器は発見されておらず、致命傷を負わせたのが誰かも不詳である。

検事たちは被疑者を個別に担当し・・・真実の解明に取り組む。

久利生・麻木チームは新井勇弥(渋谷謙人)・・・多部未華子と同じ1988年度組で「すみれの花咲く頃」(2007年NHK総合)で共演している。実年齢26歳なので何年留年してるのだって感じだ。ちなみに同じく共演している濱田岳もこの年度である。

田村検事(杉本哲太)・遠藤チームは阿部勝士(白洲迅)・・・ミュージカル「テニスの王子様」やミュージカル「押忍!!ふんどし部!」でおなじみのジュノン・スーパーボーイ系である。

馬場検事(吉田羊)・井戸チームは石川健吾(渡辺大知)・・・ロックバンド「黒猫チェルシー」のヴォーカルで「サイレント・プア」(2014年NHK総合)の新聞配達員で・・・日経電子版の田中でもおなじみである。

そして、宇野・末次チームは竹中誠(タモト清嵐)・・・「仮面ライダーフォーゼ」(2012年テレビ朝日)で鬼島夏児 / ペガサス・ゾディアーツを演じていた。宇宙キターッ!仲間である。

まあ・・・お茶の間的には被害者も含めて・・・物凄く区別のつきにくい五人なのだが・・・そこが一種の伏線になっている。

つまり・・・真犯人は誰か・・・とふっておいて・・・ここにはいませんでしたオチなのである。

被害者も含めた五人はフットサル仲間だと供述するが・・・井戸事務官が突破口を開く。

「ポジションはどこ・・・?」

「ディフェンダーです」

「君・・・フットサルやってないね」

フットサルではディフェンダーのポジションの呼称はフィクソなのである。

もちろん・・・一般的でないから・・・そう言ったという言い逃れもできるが・・・他のポジションやルールなどをつっこめば「嘘」は見抜かれてしまうわけだ。

被疑者たちの供述はあいまいで・・・致命傷を与えたのは誰かという質問にも・・・阿部は竹中がやったと言い、竹中は石川がやったと言い、石川は新井がやったと言い、新井は阿部がやったと言う。

「口裏を合わせてるな」

「こうなったら・・・久利生のおでかけ捜査に期待だな」

「え」

「そうだな」

「みんなでやりましょうよ」

「いや・・・暑いし」

「・・・」

「じゃ、そういうことで」

「なんだ・・・このじゃんけんをしてもいないのに負けちゃった感じは・・・」

チームワークはチームワークとして主役がやるべきことはやらねばならないのだった。

久利生・麻木チームは結局、街に出るのだった。

大学で・・・女子大生のテニスを観察した久利生は五人組の仲か良かったことを確認。

仲良し写真を入手する。

殺害現場の男子トイレでは臭い仲になる二人だった。

「大学からは離れているな」

「フットサルの競技場が近い・・・という理由だったんですが」

五人の行きつけの食堂は営業時間外だった。

実は・・・趣味のサンバカーニバル関連のDVDボックスが届かないために・・・心ここにあらずの麻木だったのである。

その夜・・・「St.George's Tavern」で麻木の相談を受けた宇野検事。

「東大の友人で警視庁の友人に聞いたら・・・それって通販詐偽らしい」

「え」

「だから・・・いくら待っても・・・商品は届かないみたい」

「マスター、95度のテキーラありますか」

「あるよ」とマスター(田中要次)は麻木のやってられない感じを蒸発させるのだった。

その頃・・・麻木が失調中は単独捜査の流れで・・・久利生は件の「プラジル料理店」を訪れる。

そこには怪しいブラジル人の女将・TAMAE(片桐はいり)がいるのだった。

「フェイジョアーダ・コンプレッタって何ですか」

「フェイジャンは豆よ~、まめぶじゃないのよ~」

「ブラジル料理ですか」

「ブラジル人はみんなフェイジャン好きよ~」

「あの・・・この五人の学生・・・見覚えありますか・・・」

「知ってるよ~・・・常連さんよ~・・・いつも先生と来てたよ・・・」

「先生・・・じゃあ・・・六人で・・・」

「そうよ~・・・いつも六人よ~・・・」

久利生は臭いトイレに戻り・・・もう一人が窓から逃げたのではないかと推察する。

そして・・・鑑識を呼ぶのだった。

そして・・・相当に無理をしないと届かない高さの窓から前科ありの指紋が検出される。

恐喝の容疑で逮捕歴がある応徳大学のOBで今アパレル会社の社長・椎名(丸山智己)のものだった。

椎名の写真を入手した久利生はTAMAEに裏をとる。

「この男ですか」

「そう・・・五十代なら伊原剛志、アラサーなら鈴木亮平だけど・・・アラフォーだからこの人よねえ」

「確かに・・・三人とも歴代変態仮面って感じですよね」

椎名の名前を聞かされて動揺する被疑者たち。

詐偽の被害者意識に目覚めた麻木はピンと来るのだった。

「フットサルもやらないで・・・大学からも離れた街で・・・あなたたち・・・詐偽でもしてたの」

「え」

「え・・・ってビンゴなのか」

被疑者・新井の動揺を見逃さない久利生だった。

「椎名を主犯とした詐偽グループだった可能性があります」

「なるほど」

「麻木のお手柄です」

「被害者ですからっ」

被疑者・新井を鬼尻にバスした久利生は・・・参考人・椎名と対峙する。

詐欺師を睨みつける麻木だった。

詐欺師に振り込んだ29800円の怨みは恐ろしいのだった。

「あなたと被害者を含めた六人の学生とはどんな関係だったんですか」

「先輩と後輩ですよ」

「それにしては・・・頻繁に会っていたようですね」

「ああいう若者たちの面倒をみるのが好きなんです」

「実は・・・事件の現場から・・・あなたの指紋が発見されました」

「・・・近所に事務所があるんで・・・よく利用するんです・・・あのトイレ・・・臭いでしょう」

「その事務所はどこにあるんですか」

「・・・サニーハイツです」

取調室はチャット・ルームで結ばれており、事務官たちは情報を共有するのだった。

学生たちは主犯の椎名の口から・・・サニーハイツの情報が出たことを検事たちに突きつけられ動揺するのだった。

組織化された犯罪者たちにとって共犯者の存在は強みでもあり、弱みでもある。

「サニーハイツで何してた」と田村検事が切りこむ。

「私の目を見て答えなさい」と馬場検事が迫る。

「私は参考人ですよね・・・犯罪を犯したのは・・・彼らのはずだ」と椎名。

「そうです・・・しかし、被害者を殺したのが誰かは・・・まだ謎です」と久利生。

「そういうことなら・・・私は帰らせてもらう」

「どうしてです・・・可愛い後輩が殺されたというのに・・・随分・・・冷たいじゃないですか」

チャット・ルームの新着メッセージの着信音が鳴り響く。

【阿部が詐偽の犯行を認めました・・・遠藤】

【石川が自白しました・・・井戸】

【竹中がすべて椎名の指示だったと供述・・・末次】

別室で鬼尻は新井を追い込む。

「私の取調は昭和の香りがあるそうです」

「・・・」

「君は確かに・・・恐ろしい犯罪の事実から逃れたいだろう・・・」

「・・・」

「事実を隠して・・・処罰を免れたいと思うだろう」

「・・・」

「しかし・・・こんなに仲の良かった友人が死んだんだ」

鬼尻は久利生の入手した写真を見せる。

被害者と仲間たちとの笑顔の写真・・・。

「君の心にそのことを悲しむ気持ちはないのかい」

「僕たちは・・・庇ったんだ・・・ほんの出来心で始めた詐偽だったけど・・・最後は嫌気がさしていた・・・でも椎名はやめると言うなら・・・すべてをばらすって・・・吉田くんがミスをして・・・僕らは制裁を命じられた・・・でも僕らは手加減して殴ってたんだ・・・それを・・・椎名の奴がスパナで・・・血が流れて・・・吉田くんが動かなくなって・・・椎名が・・・これが発覚したらみんな殺人犯だって・・・」

着信・・・。

「今・・・すごいパスが来ましたよ」と久利生。

「なんだって・・・」と椎名。

「あんたは・・・彼らを支配していたつもりかもしれないが・・・彼らの心がまるでわかってなかった・・・脅せば黙っていると思っていたのかもしれないが・・・そうはいかなかったよ」

「あんな・・・学生たち・・・苦し紛れに嘘八百を・・・」

「これは信頼できる仲間たちが・・・事件関係者から引き出した情報なんだよ・・・信じるに値するんだ・・・それに彼らが共謀してボスを追い込むほど賢いとは思えない」

「・・・」

「あなたを・・・殺人容疑で緊急逮捕します」

「くそっ」

麻木が手配した刑事たちが椎名の身柄を拘束する。

椎名には長い取調が待っているのである。

城西支部の仲間たちは健闘を讃えあうのだった。

そして・・・井戸の呼びかけでフットサルを始めるのだった。

その頃・・・牛丸次席検事の元を訪ねる特捜の江上検事(勝村政信)・・・。

「あいつと久しぶりに一緒に仕事をしたいと思いまして・・・」

「あいつって・・・あいつか」

秋が近付き・・・フィナーレも迫っているらしい。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

Hero009ごっこガーデン。サンバも踊れるフットサル競技場セット。アンナごっつぁんゴールでもいい。美しいダーリンの華麗なるフィニッシュぴょ~ん。臭い匂いも我慢して頑張ったご褒美なのだぴょん。そして・・・いつのまにか・・・強い絆で結ばれた城西支部の仲間たち・・・これぞ、ヒーローの世界なんだぴょんぴょんぴょん・・・アンナは全身全霊をダーリンに捧げた一週間にバタンキュー・・・ここでダーロイドの膝枕で仮眠をとるのだぴょ~ん・・・サンバはまこぴょんにまかせたぴょん・・・すやすや・・・トイレはダメ・・・トイレに行ってはダメよ・・・ムニャムニャmana青春鼻血ブーもテキーラもあるよのマスターじぇじぇじぇもあるよね~。顔が四角い女優さん万歳よね~。駅長夫婦すれちがい共演よね~。夏も終わりだけど鰻はオールシーズンOKだよね~・・・ナイス・ゴールでよかろうず!mari季節の変わり目です。天変地異にご注意ください。ストレスは貯めずに発散しましょう

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2014年9月 8日 (月)

茶茶茶、茶茶茶、茶茶茶茶茶茶々・・・フレー、フレー、キリシタンと高山右近(生田斗真)

さて・・・高山右近こと高山大蔵少輔重友は「バテレン追放令」に対して秀吉から賜った播磨明石郡六万石の領地を捨てた。

キリシタン大名の一人・小西行長が右近の隠遁生活をバックアップする。

このドラマにはまだ登場していない加賀国主の前田利家が一年後に右近を拾いあげる。

扶持はおよそ一万五千石で大名扱いである。

なぜなら・・・右近は猛将だからである。

ドラマ冒頭の小田原征伐にも前田利家軍として参戦している。

利家が死に、秀吉が死んで・・・天下の形勢定かならぬ状態となった時、利家の嫡男・利長の軍師として右近は前田家の命運を担う。丹羽長重と前田家が敵対した関ヶ原前哨戦である越前平定戦では首級を挙げる獅子奮迅の働きもする。

ここで右近が退場するということはこのドラマのスタッフが「金輪際、血なまぐさい合戦なんて描きません」というアピールなのだろう。

架空のどうでもいい登場人物のあーだこーだ残留だ転居だは描いても「戦」は描く気ないわけである。

そして・・・黒田官兵衛も死に・・・十年がたった時、天下の主となった徳川家康により「キリシタン国外追放令」が出る。

右近は家族とともにフィリピンに移住し・・・直後に病没する。

おそらくデング出血熱にでもかかったのだろう。

つまり・・・代々木公園とか・・・NHKのお膝元で騒動が起きているのは・・・右近の早すぎる退場が呪われているのだ。

あくまで妄想です。

で、『軍師官兵衛・第36回』(NHK総合20140907PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は20行に下落。それにしても・・・おゆう(中村映里子)を外して、お福(阿知波悟美)を残すとは・・・どんだけ一部お茶の間に媚びる気なんだ。そもそも・・・宇喜多秀家の母の通称・おふくを架空の人物に使っちゃってる時点で・・・嗚呼・・・なんでございますけどねえ。そのために直家の正室はお鮮(笛木優子)という聞きなれぬ別名に・・・別名あって胸をなでおろした感じがいたしますなあ。奇説採用という点では荒木だしの物語の伏線はそれなりに張られていたわけですが・・・もう、伏線がないのでは・・・という感じの天正年間終盤・・・。松平忠輝誕生まで後、五年でございます。それはそれとして・・・ついに蜂須賀小六の娘にして黒田長政の妻・描き下ろしイラスト大公開で思わず姫祭り開催いたしました~。

Kan036天正十五年(1587年)、関白秀吉は京の都に豊臣氏邸である聚楽第を落成する。六月、秀吉はバテレン追放令発布。さらに九州における太閤検地を命ずる。佐々成政は肥後国主として肥後地侍の家臣団化に着手する。七月、隈部親永が検地を拒否して挙兵。成政は隈部一族の居城を包囲するが肥後国人の甲斐親英、和仁親実、菊池武国らが次々と叛旗を翻し、成政の本城・隈本城を包囲する事態となる。秀吉は毛利元就の九男で筑後三群の大名・小早川秀包に一揆討伐の総大将を命ずる。黒田軍がこれに従軍中の十月、宇都宮(城井)鎮房が城井谷城を占領。豊前国でも国人一揆が発生する。黒田官兵衛は黒田長政に鎮圧を命じる。しかし、地元の利を生かしたゲリラ戦術で長政軍は撃退されてしまう。天然の要害に立て籠もった宇都宮軍は黒田軍を苦しめ続ける。官兵衛も豊前に帰国し、国人の調略を開始し、宇都宮軍の孤立を図る。黒田家居城となる馬ヶ岳城への入城は混乱の中で敢行された。同時に官兵衛は中津城築城に着手する。肥後国派兵、内乱鎮圧、お引っ越し、新城築城と・・・官兵衛は多忙を極めるのだった。奥のことなど知ったこっちゃないのである。京都の聚楽第の主となっていた秀吉の側室・京極竜子は従妹の茶々を大坂城に送り、秀吉の愛妾とすることを決める。竜子の母・京極マリアは茶々の父・浅井長政の姉にあたる。また、茶々の妹・初はマリアの息子・京極高次の正室となっている。京極高次・初の夫婦は揃って姉妹が秀吉の愛妾となるのである。・・・濃いな・・・。

大坂城の完成したばかりの本丸奥は北政所・おねの領域だった。

秀吉の天下統一の最終段階となった天正年間の終盤・・・秀吉は多忙である。もちろん、九州遠征など軍事もあれば・・・京の都での朝廷工作もある。なにしろ・・・秀吉は最強の戦国武将であると同時に貴族の中の貴族である関白なのである。

おねは言わば・・・軍事方面の奥を仕切っているのだった。

なにしろ・・・秀吉同様・・・おねもまた下層階級の出身である。

雅な教養とは程遠い。

一方、京の都には京極氏の姫たちがいて・・・朝廷政治の奥を仕切っている。

「母上・・・京から新しい姫が参るそうですな」

おねを母と呼んだのは前田利家の四女である豪姫である。

豪姫は幼少の頃に秀吉の養女になっており・・・妬のおねにとって実子同然の愛娘である。

すでに十四歳になっており、来年には宇喜多秀家に嫁ぐことが決まっている。

「さよう・・・信長様の妹・お市様の姫君じゃ・・・」

「前田の父の殿様だった柴田様の養女だったこともある姫じゃな」

「その通り・・・」

豪姫は猛将・利家と才女まつの血を濃く反映させた溌剌とした美少女だった。

「父上の・・・お盛んなこと・・・姉上を迎えたばかりじゃというのに・・・果たしてどれほど精が出るものか」

豪姫の二つ年上の姉で利家の三女・摩阿姫もまた秀吉の愛妾となっていた。

「これこれ・・・口が過ぎますぞ」

四十歳となったおねも流石に悋気がおさまっている。秀吉の愛妾が生んだ子供を毒殺した頃の嫉妬の炎はもはや燃え尽きているのである。

今では・・・後悔の念さえ感じているのである。

気がつけば夫はあれよあれよという間に天下人となっている。しかし、後継者がないのである。

あの子を我が子として育てていれば・・・おねは若気の至りを悔やむのだった。

(認めたくないものだがや・・・自分自身の若さゆえの過ちというものを・・・)

おねの親戚筋や秀吉の係累にも後継者候補はいるが・・・おねの心には馴染まない。

「はたして・・・今度の姫はいかがなものか・・・」

「織田の姫には閨の秘術があると申しますよ」

「それは教えてもらわねばなるまい・・・」

「ふふふ」

「母上のために・・・妾が父上の子を生んでさしあげたいくらいじゃ」

「まあまあ・・・心にもないことを・・・美男の秀家様と内の禿鼠じゃ・・・比べるのも馬鹿馬鹿しいでしょう・・・」

「あらあら・・・母上こそお口が悪い・・・」

「ほっほっほ」

「あはははは」

仲睦まじい義理の母娘だった。

石田の忍びに護られて・・・茶々の輿は・・・京を出て大坂を目指していた・・・。

織田と豊臣の融合・・・茶々の使命は重いのである。

九州の戦乱が大坂では遠いものに感じられる時代となっている。

大坂にも秋の気配が濃い。

「まあ・・・母上・・・満月よ」

「おやおや・・・これは美しい・・・」

義理の母と娘はしばらく月光の下で肩を並べた。

関連するキッドのブログ→第35話のレビュー

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2014年9月 7日 (日)

捜される女たちと匿名探偵(高橋克典)

探偵ものはひとつのジャンルである。

ミステリには二つのジャンルがあって・・・警察官が捜査するものと警察官ではないものが捜査するものとに分類される。

警察官がプロだとすれば・・・そうでないものは女子大生であろうと、温泉芸者であろうと、葬儀社経営者であろうと、キャビンアテンダントだろうと、ルポライターだろうと・・・素人なのである。

しかし、探偵は・・・内閣府の所管する「探偵業の業務の適正化に関する法律」に定められた職業であるので・・・プロと言えないことはない。

警察官と素人の間に・・・プロの探偵が存在するのである。

当然、氏名を届け出なければ探偵業は営めない。

しかし・・・何故か・・・ハードボイルドな探偵は名無しであることが正統派なのである。

で、『匿名探偵・第二期・第1回~最終回(全9話)』(テレビ朝日201407042315~)脚本・尾崎将也(他)、演出・秋山純(他)を見た。脚本家は単独ではないが・・・「吉原裏同心」(NHK総合)「ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告」(テレビ東京)そして、コレと三本掛け持ちである。量産機かっ。しかし・・・よどみなくそこそこの作品を仕上げているのだった。さて、「匿名探偵」は2012年に同じ「金曜ナイトドラマ」枠で第一期が放送されている。ついにレビューはしなかったので・・・谷間に登場である。

探偵(高橋克典)はMFK法律事務所の冴島響子弁護士(片瀬那奈)を通じて仕事を依頼される自称・名無しの権兵衛である。

第一期では自宅兼事務所のオーナーは新垣真由美(三浦理恵子)だったが第二期では長山逸郎(柴俊夫)に替わっている。長山は理髪店を経営しており、時々、髭を剃ってくれるのである。

探偵には二人組の刑事が付き物で・・・眩しい感じの阿南刑事(田山涼成)と棟方刑事(鈴木貴之)が配置されている。

また、助手的な役回りで第一期では大学生、第二期では社会人となった一般人の青島一平(山口大地)がいる。

そして・・・探偵行きつけのBAR「Smokey Rain」のマスター(森次晃嗣)も探偵同様、名もなきマスターなのであった。

さらに・・・何故か、事件関係者が偶然利用する・・・ボディ・マッサージの店「Lihim」にはマッサージの達人の相田香織(原幹恵)が在籍している。妄想的にはキューティーハニーが働いているとしか思えない。探偵の本名は早見かもしれないのだ。

まあ・・・それはそれとして・・・探偵は基本的に人捜しが主任務である。第二期第一話では・・・資産家の女(石野真子)の生き別れの娘(中村ゆり)の真偽を確かめたり、女優になりたくて家出した資産家の娘(荒井萌)を捜索したりしている。時には場末の町で偶然知り合った謎の女(安達祐実)から失踪した恋人を探してくれと依頼されたりもする。

探偵の棲息する世界は裏では色と欲にまみれているので・・・ゲストは結構、濡れ場を要求されるのだった。

第二期・最終回のゲストは第一期には女子高校生だった保坂麻美(小池里奈)である。今回は女子大生になっていて・・・つまり未成年ではなくなっているのだった。

つまり・・・濡れ場を要求される可能性が大きいわけである。

小池里奈といえば1993年度生まれ組である。能年玲奈を筆頭に武井咲、志田未来、西内まりや、大後寿々花、新川優愛、小島藤子、川島海荷、渡辺麻友など・・・強烈なメンバーが揃っている。

「モーモールルギャバン」のライブで「パンティー!」と叫んで盛り上がっている橋本愛が未成年なのに体当たりを連発している以上、負けるわけにはいかないのである。

・・・なんのこっちゃっ。

親代わりの新垣真由美から麻美の失踪を知らされた探偵。

「レインボー・ブリッジと東京タワーが窓から見える場所で元気にしている」という麻美の最後のメールから捜索開始である。

雲をつかむような話である。

巷では「超能力による失踪者捜索で死体が発見された件」が話題を集めていた。

超能力者は某宗教の某教祖を連想させるスタイルの城ヶ崎晃(林家三平)である。

晃の教団本部の窓からは・・・レインボー・ブリッジと東京タワーが見えるのだった。

テレビ番組でそれを知った探偵は・・・藁にもすがる思いでマイケル・ジャクソンに変装して、教団本部に乗り込むのだった。

そして・・・信者となっている麻美を発見するのだった。

「家には戻りません」

麻美は探偵の説得には耳を貸さないのだった。

仕方なく、探偵は手掛かりを求めて・・・恵比寿警察署の阿南刑事を拝みに行く。

すると・・・晃の発見した死体が・・・麻美の恋人の雑誌記者・北山秀樹(金児憲史)であることが判明する。

もう一度、麻美にアタックした探偵は・・・事務所に連れ帰り事情聴取に成功する。

「お前・・・あの教団にケンカを売るのか」

「北山さんは・・・あの教団のインチキを暴こうとしてたの・・・それなのに・・・死んでまで・・・教団の宣伝に利用されるなんて・・・」

「どうして・・・最初にあった時に言わないんだ」

「あそこは・・・いたるところに盗聴器が仕掛けてあるの」

「そんな危険な場所に戻すわけにはいかないぞ」

「イヤ・・・私は北山さんの仇をとるんだもの」

「しょうがないな・・・」

「北山さんは・・・教団のインチキを暴こうとして・・・教団と敵対する聖修大学の教授にも取材していたのに・・・」

専修大学の柳井教授(袴田吉彦)は晃の超能力がインチキであると断定していた。

「なに・・・柳井教授(袴田吉彦)だって」

「柳井教授(袴田吉彦)がどうしたの」

探偵はもちろんお茶の間も黒幕が誰かを悟ったのだった。

信者に性的行為を強要する晃。

ついに麻美も指名されてしまう。

「宇宙意識は性的結合によって覚醒する・・・さあ・・・服を脱ぎなさい」

ついに信者服を脱いで下着姿になる麻美。

「さあ・・・全部脱ぎなさい」

「あ・・・」

「どうした・・・」

「宇宙意識がこれ以上、脱ぐなと言っています」

「事務所NGかよ」

何者かのテレビ電話着信で難を逃れる麻美。

モザイクのかかった黒幕の画像を入手するのだった。

一方、キューティーハニー香織は客として訪れた晃を教祖だと見抜く。

キューティーハニー香織のアクロバット・スタイルで体に尋問するボデイ・マッサージに不可能はないのだった。

意味不明だぞ・・・。

晃の主宰する城ヶ崎宇宙意識開発センターの幹部・村田(倉田昭二)は麻美の行動に不審を感じ追跡する。

探偵の留守中に長山が麻美を保護するが・・・村田は彼女を拉致してしまう。

しかし・・・麻美の残した画像のモザイクは一平の手によって修正されるのだった。

黒幕は案の定・・・柳井教授(袴田吉彦)だったのである。

晃を締め上げた探偵は敵のアジトを白状させるのだった。

「秘密をつかんだ北山記者を柳井教授(袴田吉彦)が殺したんです・・・」

まあ・・・世界中のみんながそうだと思っていたけどな。

アジトでは麻美が絶体絶命のピンチ・・・。

「安心しろ・・・お前を恋人のいる場所へ送ってさしあげるから・・・」

悪を攻撃することで有名になった柳井教授(袴田吉彦)は悪を操作することで大衆を操作していたのだった。

「そこまでだ・・・柳井教授(袴田吉彦)・・・」

危機一髪で探偵の登場である。

ハードボイルドなので肉弾戦に突入。最終回はいつもの三倍くらいのアクション・シーンがサービスされるのだった。

雑魚を片付けた後は中ボス村田と半裸の探偵の打撃戦からの火球弾攻撃。

麻美の猿轡サービスからの燃える鉄拳制裁である。

スコップで物凄い攻撃を加えるラスボス・柳井教授(袴田吉彦)だったが・・・探偵の燃える炎に腕を突っ込んで炎の拳にしちゃった攻撃でノックダウンである。

こうして・・・探偵は麻美に代わって恋人の仇・柳井教授(袴田吉彦)を半殺しにするのだった。

警官隊到着である。

「やめろ・・・探偵・・・それ以上やると・・・お前を逮捕しちゃうぞ」

そのセリフを頭の眩しい刑事から聞きたくはなかった・・・。

「超能力を使って大切なものを探そうなんて・・・アホよね」と冴島弁護士。

「そうだよ・・・それじゃ・・・探偵の商売あがったりだもの」

「ありがとう・・・探偵・・・」と微笑む麻美。

もちろん・・・最後にラーメンを食べずにはいられない・・・最近のドラマである。

まあ・・・美味いからな。

夜更けのラーメンは・・・。

マスター「探偵はバーにいない・・・ジュワッ」

第三期が楽しみである。どんなゲスト女優が来るのかなあ・・・。橋本愛は来ないだろうなあ。

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2014年9月 6日 (土)

個人が家族が社会が責任をおしつけあう世界でろくでなしの父帰る(篠田麻里子)

幻想と現実が混在するフィクションは常に前衛的になってしまう。

つまり・・・フィクションというお約束の中で・・・主観と客観を分離するというお約束を破壊するチャレンジだからである。

たとえば「シャイニング」では現実の呪いと主人公の狂気のどちらが非現実なのか混沌としてくるところが面白いわけである。

しかし・・・そういうものは一歩間違えると・・・非常にださい感じになってくるものだ。

まず・・・お約束を壊すことで生じるわかりにくさの問題がある。

特に・・・単なる娯楽作品ではなく・・・思想的主張が匂う作品には不向きな手法である。

このままでいいのでしょうか・・・みたいな問いかけをしている時に・・・まあ・・・この状態そのものが幻想なんですけどね・・・と言われてもしらけるしかないのである。

作品が生み出す・・・なんだかよくわからないものを・・・なんだかよくわからないまま語れば・・・なんだかわからないと思うしかないのだった。

で、『家族狩り・最終回(全10話)』(TBSテレビ20140905PM10~)原作・天童荒太、脚本・泉澤陽子、演出・坪井敏雄を見た。この物語の核心は・・・個人の心の病に誰が責任をもって対応するか・・・ということだろう。本人に責任を負ってもらおうにも心の病なのである。その場合、家族に責任を押し付けても無理があるので社会全体が責任を分担して行こうという正論である。そんなあたりさわりのない毒にも薬にもならない結論を・・・凄いでしょう、これこそが真理なんですよと絶叫し続ける・・・そういう頭のおかしな感じを最後まで漂わせ続けていたなあ・・・。最後に出るテロップが「家族を愛してますか?」である。もう完全に余計な御世話だよな。スタッフの正気を疑う他ない・・・病院に行った方がいいぞ。

暑い夏だった。

ウルトラスーパーデラックス不死身人間の秘密はウルトラスーパーデラックスウイルスである。

椎村刑事(平岡祐太)はウルトラスーパーデラックスウイルスに冒されたウルトラスーパーデラックス・・・以後、USDと略す・・・ゾンビなのである。

この夏、突然変異したUSDウイルスは蚊を媒介して感染する能力を獲得した。

署内で取調を受けた巣藤浚介(伊藤淳史)はUSDゾンビである椎村刑事を刺して感染し、USDゾンビ化した蚊に刺され、USDゾンビとなる。

不良に暴行され、火傷を負っても不死身なのでたちまち回復したのである。

暴力に屈してきたために消極的だった性格は変異し、躁状態となった精神は他人の人生に積極的に関わりはじめるのだった。

街で知り合った認知症の老人(井上真樹夫)は屋内で巣藤を刺した蚊に刺されUSDゾンビとなる。「認知症は治る・・・将来的には」などという希望的ドキュメンタリーのように糞尿まみれで介護に疲弊した家族に束の間の癒しを与えるために「認知症が治癒する奇跡」が展開するのだった。

ひとりよがりの性格のために業務を上手くこなせない東京都児童ケアセンター職員で児童心理司の氷崎游子(松雪泰子)は苛立つと暴力をふるうダメ人間だが・・・人を殴るのと殺すのとは違うことだと盲信している。

自分の言うことを聞かなかったご遺体を損傷させるほど怨みがましい性格のために・・・自分に優しくしてくれて体にいいシャンプーを分けてくれた山賀葉子(財前直見)が単なる頭のおかしい殺人鬼だったことが許せなくて儀式の邪魔をするのだった。

外面のいいことが生きがいの山賀葉子と元夫の大野白蟻工業の社長(藤本隆宏)は自分の子供に全く関心がないという心の病を発症していたため、育児放棄された長男は歪んだ性格に育ち、当然、いじめられ、その鬱憤を家族への暴力で発散する。長男の暴力に耐えられなくなった大野は長男を殺害・・・良いことをしたのに自分の息子が悪い子になってしまった理不尽さに憤怒した狂った夫婦は・・・自分を殺す代わりに似たような家族を殺し始めたのだった。

「自分が辛いから・・・人を殺すなんて・・・バカじゃないの」と不死身だが無力のために拘束されてしまった巣藤は率直な感想を口にする。

「だまされた・・・私はだまされた」ととにかく口惜しい氷﨑。

「頭のおかしい人に何言っても無駄よ」と醒めた口調の天才少女・芳沢亜衣(中村ゆりか)・・・。

「むむむ」と子供より頭の悪かった父親(二階堂智)とさらに頭の悪い母親(相築あきこ)は切り刻まれる恐怖に失禁しつつ・・・凌辱される暗い喜びを感じるのだった。しかし、父親は娘に心臓を刺されてもピンピンしていることから明らかだが・・・すでにゾンビ蚊に刺されている。ただ、拷問されて痛いのは嫌なのである。

「あなたたちにも・・・きっとわかる・・・地獄の苦悶の果てに白い千羽鶴にのって天国の涅槃にたどり着いて永遠の幸福の家族の絆がいろいろあれだということを・・・」

人を支配することが何よりも好きな山賀は微笑むのだった。

「茶番はそこまでだ・・・」

馬見原刑事(遠藤憲一)は闇ルートで手に入れた拳銃で現場に乗り込む。

「今日は・・・邪魔が多いわね」

「面倒くさくなっちゃった」と大野は石油を散布して放火するのだった。

「地下から逃げる気よ」

「待て」と言われて待つ人間はいないので人に逆らわれるのが大嫌いな馬見原は即座に発砲するのだった。

致命傷を受ける殺人鬼夫妻。

しかし・・・二人はすでにUSD化していたのだった。

「私たちの生きがいを邪魔するものども・・・シロアリ様に呪われるがいい」

怨みのこもった眼差しを一同に向けた山賀は炎の中に消える。

椎原刑事は熱いのが嫌なので追わなかった。

指名手配された殺人鬼夫妻だったが・・・復活するとお互いの顔に整形手術を行い、行方をくらますのだった。

油井殺害現場でUSDゾンビ化した冬島綾女(水野美紀)は息子もUSDゾンビ化する。

未練がましく冬島母子につきまとう馬見原だったが・・・「別の場所でもっといい相手と再婚したい」と綾女は拒絶する。

仕方なく場末のゲームセンターから妻の病院に戻ると馬見原夫人は退院するところだった。

「今さら・・・なにしにきたの・・・」

石倉真弓(篠田麻里子)は不実な父をなじる。

「やりなおしたい」

「私も・・・」

「ええええええ」

「夫婦喧嘩は犬も食わないってやつだよ」と真弓の夫は囁くのだった。

とにかく・・・嫁の両親とはあまり関わりたくない真弓の夫である。

だって、面倒くさいからな。

放置されていた清岡美歩(山口紗弥加)はとっとと別の男に乗り換えたのだった。

当然である。

駒田幸一(岡田浩暉)の葬儀に姿を見せる氷﨑。

駒田玲子(信太真妃)は闇ルートで入手した拳銃で氷崎を撃ち抜く。

「親父の仇じゃ・・・思い知ったか・・・ボケ」

「ごめん・・・私・・・不死身になっちゃったの・・・気のすむまで撃ちなさい」

「ちっ」

不死身人間・氷﨑と不死身人間・巣藤はラーメンをすする。

「結局・・・ラーメンか」

「変な、餃子ロボットが出てこないだけでもマシなのよ」

「原作ありだからな」

「原作ありだもの・・・」

暑い夏が終ろうとしている。しかし、不死身となった蚊にシーズン・オフはないのだ。

このスタッフたちが次はどんなUSDなダメドラマを見せてくれるのか・・・楽しみである。

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2014年9月 5日 (金)

知っているのに知らぬふり・・・秘するが花でもあるまいに(馬淵英俚可)

気がつけば夏の終わりである・・・。

夏ドラマもいろいろあったなあ・・・・

(月)「HERO」・・・検事と被疑者の話。

(火)「聖女」・・・弁護士と被告の話。

(水)「若者たち」・・・被害者と加害者の話。

(木)・・・今、ココ。

(金)「家族狩り」・・・連続猟奇一家皆殺しの話。

みんな・・・ミステリーだよっ。

そして・・・この時代劇も・・・心中に見せかけた毒殺の謎を解くという・・・結局、ミステリである。

まあ・・・好きだからいいのだが・・・。

でも・・・時代劇は殺伐としていてもうっとりできるのである。

今回のゲストの馬渕英俚可(1979年3月生まれ)は第17回ホリプロタレントスカウトキャラバン(1992年)のグランプリ受賞者である。1978年度生まれを代表する女優の一人と言っていいだろう。他に長谷川京子、麻生久美子、原沙知絵、遠藤久美子、釈由美子、小西真奈美、青山倫子、市川実日子、矢田亜希子などがいる。そして京野ことみもである。「白線流し」(1996年)から・・・18年なのである。

がんばってるよねえ。酒井美紀の花魁も見たいよねえ。

で、『吉原裏同心・第10回』(NHK総合20140904PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・佐藤峰世を見た。人間は情報を取得し、保存できるシステムを標準装備している。もちろん・・・機能障害はあるとしてもだ。その情報を伝達するかどうかの選択権を持っているわけである。今回は黙秘、嘘、おとぼけ、しらを切る・・・真相を隠すことの功罪を重ねてくるわけである。そして・・・言いたくても何も言えない憐れな骸は・・・生けるものをつき動かすのだった。まあ・・・この後すぐの「ゼロの真実〜監察医・松本真央〜」なんか毎回、これをやってます。

思いを寄せる番方の仙右衛門(山内圭哉)に意中の人・・・お芳(平田薫)がいることを知った玉藻(京野ことみ)はきっぱりと身を引き・・・父親の吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)に仙右衛門とお芳を夫婦にするように伝える。

思いを殺す玉藻は小股の切れ上がった粋なお姉さんなのだった。

しかし、四郎兵衛はその役目を吉原裏同心・神守幹次郎(小出恵介)と姉さん女房の手習いの師匠・汀女(貫地谷しほり)にパスするのだった。

娘の玉藻の失恋は心に収める四郎兵衛なのである。

悪い魔女のような変な横槍はいれないのである。

しかし・・・そういう色恋沙汰が気恥かしい幹次郎・・・仙右衛門の気持ちを確かめることはなかなか困難である。

口が重いのである。

意気地なしと言える。

そんな折・・・山吹屋という見世で心中事件が発生する。

毒を飲んで死んだのは遊女・小春(馬渕英俚可)馴染み客で乾物商の信濃屋の手代・幸太だった。

駆けつけた幹次郎の腕の中で「ぶんきち・・・」と言い残しこときれる小春。

「心中なんてしやがって・・・売れっ子の遊女でなかったのが不幸中の幸いだ・・・」

発見者の男衆・又一(和田洋一)の心ない言葉に・・・違和感を感じる幹次郎。

「そういうことが関係あるのか・・・」

「そりゃ・・・売れっ子に死なれたら見世だって大損害ですから」

遊女たちの手習いを指導中の汀女にも報せが届く。

「小春さんが心中なんて・・・そんなまさか」

同じ見世の遊女・若竹(菜葉菜)が疑念を抱く。

「弟さんがもうすぐ所帯を持つって・・・喜んでいたのに・・・」

同心の村崎(石井愃一)は心中の見立てで吟味を行う。

「幸太の野郎・・・金を使い込んで遊びに使ってたんです」

信濃屋の番頭・義左衛門(湯江健幸)は告げるのだった。

「使いこみだって・・・いくらだ」

「五十両ほど・・・」

そこへ・・・小春の弟で飾り職人の文吉(内野謙太)が飛び込んでくる。

「姉ちゃんが死んだなんて・・・嘘でしょう・・・なんかの間違いだ」

「残念だが・・・」

取り乱した文吉を家に連れ帰る幹次郎。

「もうすぐ・・・所帯を持つって男が・・・しっかりしろ・・・」

「・・・嘘なんですよ・・・姉ちゃんを喜ばそうと思って・・・親方に褒められたとか嘘の文を認めているうちに・・・親方の娘を嫁にするってところまで行っちまって・・・」

小春の話と違い・・・出来の悪そうな文吉に納得する幹次郎だった。

しかし・・・心中相手の幸太と小春は身請け話などはないものの・・・地味で堅実な付き合いだったという。

そして・・・五十両もの大金はどこからも見つからない。

江戸時代も物価は変動するがおよそ一両は十万円ほどである。

五十両では五百万円の大金であった。

そして・・・吉原一の花魁・薄墨太夫(野々すみ花)に呼び出される幹次郎。

「御用はなんでしょう」

「用がなければおよびしてはいけませんか」

「・・・」

「私は小春さんにお金を預かっておりました・・・」

金は三両二分・・・一分は四分の一両なので三両半・・・およそ35万円である。

「これは・・・弟さんのために小春さんがこつこつと貯めたお金でありんす・・・」

そんな小春が自分の情婦に五十両もの大金を貢がせるはずがないと匂わす薄墨太夫。

「小春さんの疑いを晴らしてくださりますか」

「もちろんです・・・吉原の女の幸せを守るのがそれがしの務め・・・」

「私の幸せも・・・」

「はい」

「私の幸せが何か・・・ご存じでありんすか」

「・・・」

幹次郎の手をとる薄墨太夫・・・。

「私の気持ちがおわかりにならないのですか・・・それともわかっていて・・・」

幹次郎はそっと手を離す。

「これからも・・・あなたをお守りします」

もてる男はつらいのだった。

そして・・・浮気心を秘める幹次郎だった。

「この心中事件はどうも腑に落ちませぬ」と幹次郎は四郎兵衛に隠密捜査を進言するのだった。

「ようございましょう」と許可する四郎兵衛。

例によって身代り屋佐吉(三宅弘城)の出番である。

一方、酒に酔った文吉は本音を口にする。

「家族のために吉原に売られた姉ちゃんの期待が重かった・・・だから嘘に嘘を重ねちまったんだ」

そこへ・・・柴田相庵(林隆三)がやってくる。

「昔・・・小春が風邪を引いた時に聞いた話だ・・・ひとしきり・・・弟の自慢をした後で・・・小春の奴・・・こう申しておった・・・なんてねえ・・・きっと弟の話は作り話だと思うんですよ・・・だってそんなに出来のいい弟じゃないんですよ・・・でもね・・・嘘でも・・・そんな話をしてくれる弟が可愛いんですよ・・・それに嘘から出た真ということだってありますでしょう・・・もしかしたら・・・嘘が本当になるかもしれない・・・だから私は弟の話を信じてやるんです・・・そう申しておった・・・」

涙にくれる一同だった。

仙右衛門は事件の日に信濃屋の番頭・義左衛門を吉原で見かけたことを思い出す。

捜査線上に浮かんだ義左衛門をつけている男がいると佐吉。

あわてて駆けつけた幹次郎は文吉を発見するのだった。

「俺は・・・姉ちゃんの仇を討ちたいんだ」

「まあ・・・急くな・・・」

義左衛門を尾行した二人は出向いた先の茶屋で男衆・又一を発見する。

義左衛門と又一は密会をしていた。

「これが約束の十両だ・・・」

「遊女を殺して十両なら儲けものだ」

「俺も・・・残りの四十両で相場で作った借金の詰め(返済)ができる」

「旦那も悪だねえ」

「話は聞かせてもらった・・・五十両の使いこみという濡れ衣をきせるために・・・小春と手代の幸太に毒を飲ませたということだな」

「お、おめえは・・・」

「この悪党・・・よくも・・・姉ちゃんを・・・散々嘘八百並べやがって・・・」

又一は用心棒を呼ぶが・・・幹次郎の敵ではない。

峰打ちで全員を叩き伏せる幹次郎だった。

そんなこんなで事件解決の際中、汀女はお芳の気持ちを確かめる。

「仙右衛門さんのこと・・・」

「好きです」

言うべきことを言うお芳だった。

番所に礼を言いに来た文吉。

「お前が職人として立派に生きることが・・・小春への供養だ」

「頑張って親方の娘を嫁にできるように精進します」

「そうだ・・・ついでに・・・仙右衛門・・・」と汀女に尻を蹴飛ばされた幹次郎。

「なんだよ」

そこへお芳が顔を出す。

「お前、お芳に言うことがあるだろう・・・」

「え・・・」

見つめ合う二人。覚悟を決める仙右衛門だった。

「・・・お芳・・・俺と所帯をもってくれ」

「いいよ・・・お前さん・・・」

「え・・・いいのかよっ」

めでたいのだった。祝言もそこそこに新婚旅行に出るお芳と仙右衛門だった。

仲睦まじい二人を見て・・・悶々としてきた幹次郎と汀女はいそいそと帰宅するのだった。

四郎兵衛は薄墨太夫に尋ねる。

「せっかくの大店の主の身請け話を何故断りなさるんで・・・」

「ご祝儀をもらい損ねて・・・お怒りですか」

「そんなわけないでしょう・・・あっしはただ・・・」

「それでは・・・四郎兵衛さんにだけは・・・お話いたします・・・私の誠の心を・・・」

果たして・・・太夫は何を語るのか・・・今回は秘するのでございました。

謎で気を引くのは・・・まあ・・・古今東西の常套手段でございますねえ。

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2014年9月 4日 (木)

恐怖女子高校~私はこうして失った(橋本愛)

芹明香の映画「恐怖女子高校・不良悶絶グループ」(1973年)と宮下順子の映画「私はこうして失った」(1971年)を混ぜてみました。

なぜ、混ぜた。

共演なら「四畳半襖の裏張り」(1973年)があるじゃないか・・・。

「四畳半襖の裏のドラえもんかっ」(野村周平)じゃあんまりだからな。

それにしても橋本愛(1996年1月生まれ)は1995年度生まれのスターを代表しすぎだよな、後は大野いとぐらいだもんな。

そして・・・なんていうか・・・三鷹ストーカー殺人事件の被害者も1995年度生まれだったわけで。

そういう流れでこの主題・・・薄氷を踏んでるよな。

東京地裁の裁判員裁判で「無期懲役」の求刑に対して、「若くて更生可能性がある云々」で「懲役22年」の判決である。

被害者の遺族は「失望」するよな。

公開処刑が妥当なんじゃないのか。

なにしろ・・・一人の人間を二度殺しているんだからな。

で、『若者たち2014・第8回』(フジテレビ20140903PM10~)脚本・武藤将吾、演出・中江功を見た。紆余曲折して終盤に来てコレである。そうなれば・・・これは「三鷹ストーカー殺人事件」を下敷きにしたフィクションということになる。つまり、お嬢様の永原香澄(橋本愛)と貧困ゆえに落ちこぼれた佐藤旦(野村周平)の地獄のロミオとジュリエットなのである。あの事件でも被害者は成績優秀な女子高校生、加害者は貧困の家に育ち、母親の交際相手から過酷な虐待、近所のコンビニで消費期限の切れた弁当を無心する生活を送って成人した男だった。男は七月にリベンジポルノ行為をした後で十月に被害者を殺害している。つまり、事件をなぞればやがて旦は香澄を殺害するわけである。なぞらないのであれば・・・なんで今、これを物語るのか・・・と心が冷えるものがある。

理屈じゃなく・・・駄目なんじゃないかと感じるのだった。

嵐の前の静けさ・・・。

未熟児あかりは危機を脱し、父親の旭(妻夫木聡)は保育器の中の我が子に語りかける。

「仕事も順調なんだけどさ・・・今はちょっと不満があるっていうか・・・なにしろ・・・俺はずっと道路を作って来た男だからさ・・・今の仕事に馴染めないっていうか」

「何・・・子供相手に愚痴ってんのよ」と旭の妻・梓(蒼井優)は咎める。

「いや・・・なんか話かけろっていうから・・・」

「とっとと仕事に行きなさいよ」

「あ・・・いけね」

さんな若夫婦の漫才に微笑む梓の母・京子(余貴美子)だった。

ほのぼのホームドラマなのである。

最近まで鬼畜・新城(吉岡秀隆)と不倫していたひかり(満島ひかり)も何事もなかったかのように明るく振る舞う。

ストーカー行為で補導された旦も大人しく自宅の押し入れで謹慎している。

何を考えているかわからない陽(柄本佑)は女優である香澄と相思相愛の演出家という関係を楽しんでいるようだ。

ここまでの経緯をふりかえってみよう。

旦は産褥で母親を失い、事故で父親を亡くし、三人の兄と一人の姉によって貧困の中で育てられる。当然のように情緒不安定な人格が形成される。

旦(ただし)が高校生になった時、次兄の暁(瑛太)が詐欺事件の犯人として逮捕され、これを発端としていじめの対象となる。結局、高校を中退した旦は予備校に通い、そこで香澄と知りあう。

容姿端麗で学力優秀な香澄だったが・・・何事か鬱屈を抱えており、旦とラブホテルで一夜を過ごした後、妊娠詐偽で堕胎費用を搾取しようとする。

弟のために香澄と対峙した陽(はる)は香澄の美貌に心を奪われ主催する演劇サークルの主演女優に抜擢する。

舞台で自分を表現することで新しい扉を開いた香澄は魅力を開花させる。

旦はそんな香澄に心を奪われ、交際を申し込む。

香澄の心はすでに陽に向かっていたが・・・何故か、交際を承諾する。

香澄との肉体交渉を求める旦。しかし、香澄はそれを拒絶して、陽との交際を開始する。

やがて・・・香澄と陽の関係に気がついた旦はストーカーと化して香澄の学校や家に押しかけ・・・香澄の母親(山下容里枝)に警察に通報されてしまう。

「自分は悪くない」という思いを抱えたまま・・・引き込もる旦。

そして、香澄と陽は恋に芝居に充実した日々を過ごす。

そこで・・・旦は香澄が残した「恥ずかしい写真」をネットに流出させるのである。

もちろん、18歳の女優・橋本愛がお茶の間に披露しているセミヌード画像なので基本的にはそれほど恥ずかしい写真ではないのだが・・・ここは演出上の配慮でドラマ内現実としては社会生活が困難になるほどの恥ずかしい写真を流出させたのである。

「流出画像」「美少女」でいつも検索しているのであろう演劇サークルの団員がネット上で「香澄の恥ずかしい画像」を発見する。

それを知った陽と香澄はたちまち、犯人が旦であると思い当たる。

おそらく・・・その画像は誰もが保存したくなるようなショッキングでエロティックなものなのである。

たちまち、ネット上に浸透と拡散していく香澄の恥ずかしい姿。

おそらく局部なども披露していたのだろう。

香澄は衝撃を受け、演劇活動を中断する。

陽は主演女優を失ったショックで旦を問いつめる。

「なんでこんなことをした」

「別にいいだろう」

「彼女の恥ずかしい写真は世界中で永遠に保存され続けるんだぞ」

「そんな・・・つもりじゃなかったよ」

・・・などというのは嘘である。システムを知らずにどうしてリベンジポルノが出来ようかだ。

「彼女と交際したことを大衆にひけらかし、付き合った事実を半永久的に残し、かなり話題になり、女の尊厳を傷つけたかった」に決まっているのである。

旦の心の闇は愚かで未熟であるほど深いのである。

兄弟の中でただ一人、「リベンジポルノ」を知っている前科者の暁は佐藤家を知りつくした女・屋代多香子(長澤まさみ)に問いかける。

「どうすればいいと思う」

死ねばいいと思うよ

「・・・」

どうやら・・・多香子の友人と言う名の本人は誰かに「恥ずかしい写真」を所持されているようだった。

それはまた別の展開である。

大人のすることだ。

警察沙汰にされないように・・・旦を連れて謝罪に出向く旭。

しかし、香澄の父親(鶴見辰吾)は微妙な応対をする。

「香澄は社会的に抹殺されたようなものだ・・・取り返しのつかないことをしておいてどう責任をとるつもりだ」

「・・・」

「責任の取り方もわからず・・・形だけ謝られても仕方ない。警察に通報するしかない」

「それだけは勘弁して下さい」と土下座する旭。

「君が弟を庇うように私も娘を庇わねばならない」

「死ねばいいんだろう」と凄む旦。

「馬鹿・・・何を・・・」

「死んでお詫びしますよ」

とりあえず退散した二人。

「あなた・・・警察に通報なさるの」

「そんなことをして問題を大きくしたら・・・娘がもっと傷つくじゃないか」

ここまでは・・・被害者家族で描かれる永原家。

しかし、最初の香澄の問題行動から・・・当然、秘密があるはずである。

しかし・・・あの事件を下敷きにしている以上、被害者家族の落ち度への言及はかなり厳しいと推察する。

一方・・・同情すべき点がある・・・という描かれ方の旦は・・・家出である。

鬼畜の新城は「どうすれば謝罪できるのか・・・本人が考えるべき」などと当たり障りのないことをアドバイスするのだった。

何故か・・・おそらく廃校になっている出身学校に集う・・・旭、暁、ひかり、陽の四人。

たちまち始る肝試しちゃん・・・ではなかった捜索活動。

暁は教壇に潜む旦を発見し、気付かぬ態で全員に集合をかける。

「あいつは・・・本心を話せない奴だから」

「でも・・・陽の笑顔にいつも励まされていた」

「俺が詐偽なんかしたせいで・・・自殺未遂までさせて悪かったと思っている」

「あいつが好きなことを知っていて、ものにしてしまった俺が悪い」

「何にもしてやれないが・・・いつもそばにいるからな」

ついに・・・投降する旦だった。

「えーん、僕は悪いことしちゃったよう」

「泣くな・・・笑え」

所詮・・・社会の底辺を彷徨う一家である。

いざとなったら社会を敵にして戦う覚悟があるのだった。

だから長男は父親を殺した会社から金をもらい、次男は詐偽で逮捕され、長女は不倫、三男は弟から恋人を略奪し、四男はストーカーでリベンジポルノ投稿者なのである。

ものすごく分かりやすい貧困層=犯罪者予備軍の論理なのであった。

そして・・・おそらく被害者家族にとっては迷惑でしかない・・・雨の中で謝罪のためのすわりこみをする旦。それを見守る旭。

学校で友人から「画像」を示され・・・答案用紙を画像と見間違うほどの恐怖に襲われた香澄は悶々とベッドに横たわる。

何故か・・・そんな娘の背中を押す父親。

おそらく・・・この世界では「三鷹ストーカー殺人事件」は発生していないのだろう。

玄関から姿を現した香澄。

「もういいよ・・・私も悪かったんだから・・・これきりにしよう・・・」

家の中に姿を消す香澄。

まったく納得のいかない旦だった。

旦の暗い表情に気がつく旭。

「お前・・・まさか許してもらえたら・・・仲良くできるとか思ってたのか」

「違うよ・・・香澄ちゃん・・・笑っていなかった・・・許してくれてなんていないんだよう・・・」

世界は終結に向かって加速していくのだった。

はたして・・・死ぬのは・・・香澄か・・・それとも旦か。

現代の管理社会は自殺を禁ずる傾向にあるが・・・死んでお詫びするしかない場合はあるだろう。

死んだって許されるとは限らないけれど。

何しろ、殺されたら許すことももうできないのだから。

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2014年9月 3日 (水)

神様はなぜ娼婦とやり逃げするスケベ野郎を創造したのでしょうか(山口まゆ)

主人公の少女時代を演じる山口まゆは「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」では母親・滝川利佳子(吉瀬美智子)の不倫を非難する娘・真菜を演じている。こちらでは娼婦の娘である。

キリスト教においては「不貞を働く女」や「売春婦」は総じて罪の女というカテゴリーに含まれる。

俗説では「罪の女」の象徴はマグダラのマリアとされることが多い。

キリストを処女懐胎した聖母マリアとは別のマリアである。

禁欲的な方向に発展した教義の中で・・・罪ある女を信者として獲得するためのスターがマグダラのマリアである。

娼婦という罪深い女がキリストに許され、その処刑と復活を見守ったというストーリーが下賤な女たちの心を捉えたことは言うまでもない。

「聖書」の中のマグダラのマリアは悪魔に憑依されつつも、イエスにより悪魔払いされ・・・重要な信徒となる有閑マダムである。

もちろん・・・裕福な女が性的な罪を犯すのは「昼顔」でおなじみの主題なのである。

奇しくも・・・不貞妻と娼婦の娘を演じる山口まゆは「罪の女の娘」というシンボルになっているわけだ。

で、『聖女・第3回』(NHK総合20140902PM10~)脚本・大森美香、演出・水村秀雄を見た。連続殺人および殺人未遂の被告・肘井基子(広末涼子)の愛する絵画「聖女プラクセディス」は17世紀のイタリア人画家フェリーチェ・フィチェレッリの「聖女プラクセディス」の模写である可能性がある。オランダのフェルメールの「聖女」が1665年頃の作品でイタリアのフィチェレッリの作品が1640年代の作品とされており、真似たのがフェルメールであることは間違いない。本来、フェルメールの「聖女」もフィチェレッリの「聖女」とされていたのである。それがフェルメールの「聖女」かもしれないということで・・・この作品の真贋が問われるわけである。もちろん・・・資産価値として・・・フィチェレッリの「聖女」よりもフェルメールの「聖女」の方が高まる・・・わけである。かくして聖なる女は金銭に還元されるのだった。

Swpp002一見してわかるようにフィチェエッリの「聖女」には十字架が描かれておらず、フェルメールの「聖女」にはそれがある。

ドラマでは娼婦の娘が洗礼を受けてクリスチャンとなる描写がある。

おそらく・・・母親の娼婦は・・・クリスチャンではなかったが・・・その教養はあったのだろう。

基子の「基」は基督教の「基」なのだから。

容疑者・肘井基子の生い立ちを調査するために基子の生地である北九州市を訪れた野心的な黒坂弁護士(田畑智子)と基子に童貞を捧げた新人弁護士・中村晴樹(永山絢斗)・・・。

お好み焼屋の看板を掲げながら実は売春宿だった店で住み込みで働いていたという基子の母親・肘井雅恵(安藤玉恵)だった。

基子が五歳の時に父親が他界し、それ以来、娼婦をしながら雅恵は基子を育てていたのだった。

「ああん・・・はうん・・・おおお・・・あん・・・おあん・・・ううん」

性の営みを子守唄にして育った基子だった。

売春婦の娘として見下された日常。

五千円の料金を踏み倒す客もある。

中学生となった基子はそういう客を追いかけて料金徴収する勝気な女に育っていた。

「やることやったら金払わんかい・・・このスケベ野郎」

そんな娘に母親は「お金は大切だけど下品なことを言うのはあかんよ」と諭すのだった。

「下品ってなに?」

「上品でないことよ。あんたは器量良しだから・・・上品にしてたら男衆に愛されるたいね」

「男なんて嫌いたい」

「何言っとうと・・・男に愛されな幸せになれんとよ・・・あんたは男に拝まれるような女になれると」

「観音様?」

「聖母マリア様たい」

この話を聞いて黒坂弁護士は(金銭へのあくなき執念、根拠のないプライドの高さはこうして作られたのか・・・こりゃ・・・悪女になるわな)と洞察するのだった。

一方、晴樹は基子のおいたちの悲惨さに・・・うっとりし始めるのだった。

(ああ・・・基子先生・・・あなたはそんなに・・・そんなにつらい思春期を)

十四歳で母親を病気で亡くした基子は伯父夫婦の家に引き取られる。

しかし、訪問した弁護士たちを追い返す基子の義理の伯母・中根美佐子(内田春菊)だった。

「あんな・・・ズベ公のことなんか知らんとよ」

隣の酒屋の息子・白井久雄(笠原秀幸)は事情を語る。

「となりのおっちゃん(吉永秀平)な・・・姪が風呂入ってるとこを覗き見しとったと。そんで基子はそんなおっちゃんから小遣いせびっとったと。それが近所の噂になって夫婦喧嘩になったと。基子はそりゃ別嬪やったと」

(これが・・・自分の美貌で金を稼ぐ基子のルーツ・・・悪女誕生かっ)と黒坂。

(ああ・・・先生・・・なんてかわいそうな・・・)と晴樹。

基子の高校の同級生だった佐藤真紀(肘井美佳)たちも基子の悪評を吹聴する。

「嘘ばっかりついてたわ・・・妙にお高くとまって」

(虚言癖があって・・・自尊心が高い・・・今の基子そのままね)と黒坂。

(ああ・・・先生・・・ひとりぼっちで・・・いつもさびしくて)と晴樹。

男と女の間には深い川が流れています。

二手に分かれた晴樹と黒坂。

晴樹は母娘の暮らした店に近い教会を発見する。

神父(牧村泉三郎)は基子のことを覚えていた。

「幼い頃・・・彼女は聖プラクセディスのような聖女になりたいと言ってました・・・どうすればなれるのかと問われ、神に祈りなさいと申しますと・・・神様なんていない・・・もしいたとしても意地悪で悪魔のような存在だと叫んだのです・・・私は彼女に代わってアーメンと言いました・・・しかし・・・それから彼女は教会に足を運ぶようになったのです・・・そして売春婦でも聖女になれるのかと私に聞きました・・・私は悔い改めれば罪が許されることを申し上げたのです・・・主は罪深き女にも慈悲を与えたもうたと・・・それから・・・彼女は姿を消しました・・・しかし、十年程前に一度だけ姿を見せました・・・実に美しい女性になっていたのです・・・まさに聖女の如く・・・彼女はしかし・・・いいえとそれを四度も否定しました・・・いいえ・・・いいえ・・・いいえ・・・いいえ・・・私は聖女になれなかったと・・・私は彼女に入信を勧め・・・彼女は洗礼を受けました・・・私は彼女が訪れるのを楽しみにしていましたが・・・それきりです・・・彼女はいったい・・・どんなあやまちを犯したのか・・・私にはわかりません」

(ああ・・・十年前・・・あの時だ・・・僕を男にしてくれた・・・先生はまさに聖女だった)

とにかく・・・基子が有罪でも無罪でも・・・信じようと思い定める晴樹。

もしも・・・無罪にできたら・・・約束通り、恋人になれるかも・・・と思うのだった。

そうなると・・・最愛の婚約者・看護師・本宮泉美(蓮佛美沙子)がなんとなく疎ましいのである。

有罪になったら基子とはこれきりだからキープしておいてもいいが・・・無罪を勝ち取れれば泉美は「いらない女」なのである。

「なんだか・・・おかしいよ・・・晴樹くん」

「とにかく・・・裁判が終わるまで待ってくれ」

「どうして・・・」

「とにかく・・・それまでは何も考えられないんだ」

女の直感で・・・自分が殺人事件の容疑者と天秤にかけられていることになんとなく気付く泉美だった。

2014年六月下旬・・・基子の公判の期日が迫る。

公判前整理手続で前原弁護士(岸部一徳)は東京地方検察庁検事の千葉恒雄(池田成志)に争点を伝えるのだった。

①2009年10月29日に港区のマンションで死亡した会社経営者・阿川博之(浜野謙太)の殺害の件・・・睡眠薬を提供した自殺ほう助にすぎず時効が成立しており免訴を主張。

②2012年10月12日に伊勢原市山中で死亡したテレビ局プロデューサー・坂東幸雄(森岡豊)の殺害の件・・・無理心中を迫られた緊急避難的な行為だったとして無罪を主張。

③2012年12月4日に練馬区のアパートで重傷を負った企業役員・千倉泰蔵(大谷亮介)に一億三千七百万円の保険金をかけ殺害未遂に至った件・・・タクシーの防犯カメラ映像などによる状況証拠のみであり無罪を主張。

真っ向勝負である。

そして・・・意識を取り戻す・・・千倉泰蔵。

妻の文江(中田喜子)など眼中になく第一声が「まりあさん(基子の偽名)はどこですか」である。

そして・・・「まりあさんが悪女なんてとんでもない・・・私が妻と離婚して一緒に暮らそうと言ったら・・・ありがとうと・・・うれしい・・・と言ってくれたんだ・・・彼女は優しくて美しい・・・聖女です」

文江は泉美に「夫婦ってなんなんでしょうね・・・」と呟くのだった。

小池弁護士(田中要次)から・・・被告との関わりで独自のアプローチをしてみたらどうかと唆された晴樹は公判直前・・・基子との単独面会を挙行する。

「急に来てすみません」

「いいのよ」

「あやまりにきました」

「・・・」

「あなたのことが全部嘘だなんて言って・・・」

「・・・」

「知られたくないことまで勝手に調べて・・・」

「・・・」

「少なくとも先生のおかげで僕は落ちこぼれを卒業できました」

「・・・」

「もういいのよ・・・私が本当に愛したのはあなただけですもの」

「・・・」

「こんな・・・アクリルの壁ごしにじゃなく・・・もうすぐ・・・あなたと会えるわね」

「・・・」

「私はそれだけで・・・幸せよ」

壁ごしに差し伸べられた基子の掌に・・・掌を重ねる晴樹だった。

全国の一部お茶の間で「堕ちた~」の絶叫が響くがJUJUの歌声がかき消すのだった。

そして・・・引き籠りだった怪しい兄の克樹(青柳翔)は髭を剃るのだった。

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2014年9月 2日 (火)

納得いかないんで・・・釈放しちゃいます(木村拓哉)

巨大な社会である。

巨大な社会を維持・運営していくために法がある。

しかし、法が万能であることはない。

殺人を禁じても殺人事件は発生し、メルトダウンや土砂崩れを取り締まる法律はない。

だが・・・法を盾に何が善で何が悪かを説くことはできる。

「HERO」で描かれる一種の勧善懲悪はひとつの理想論である。

主人公は「自分が正しいと感じることを曲げることはできない」という設定になっている。

それは「悪いことだから」なのである。

時に、それは「独善」や「独りよがり」という切口で批判の対象となるスタイルと言える。

しかし・・・お茶の間がギリギリ納得できる「善」をこのドラマは見事に追及する。

「暴力には屈しない」・・・人間にとっていかにそれが困難なことであるか。

それでも・・・けして屈してはならないのがヒーローなのである。

で、『HERO(第2期)・第8回』(フジテレビ20140901PM9~)脚本・福田靖、演出・金井紘を見た。組織犯罪における身替り自首をどうするかという話である。普通のドラマの場合、これをやられると取り締まる側は口惜しい感じになるわけである。ところが・・・主人公が「納得できません」と言い出すと・・・周囲は「うわあ、面倒くさい」てなことになるわけだ。しかし、面倒くさいことでも間違っていないことなので・・・みんな従うしかないわけである。まさにこのドラマの醍醐味であり、おかしさ倍増なのであった。そもそも平成3年に通称暴力団対策法が施行され公安委員会が指定暴力団を特定するようになって「暴力団」は正式名称になったわけである。反社会的組織である「暴力団」に社会は圧力を加え・・・時には「暴力団」を解散に追い込んだりしているわけである。だが・・・そうでありながら今も「暴力団」が存続しているというある意味、恐ろしい事実、そして、暴力団として指定されない・・・非合法な暴力団的組織の台頭などと問題は波乱を含んでいる。禁酒法を作れば闇酒場なのである。一方で・・・暴力団を廃業した人が簡単に社会に復帰できるかといえばそうではない。それがありのままの世の中ということだろう。元暴力団組長の運営する前科者の社会復帰支援団体などというものがあるし、高齢化社会では罪を重ねる暴力団関係者のために刑務所では看守が受刑者の入浴介護をしていたりするわけである。時々、利用する近所の緩い銭湯にはまだまだ入れ墨者たちが入浴している。抗争でヒットマンが乱入してきてとばっちりを受けたらどうしようと心配しつつ、威勢のいい兄ちゃんたちの髪に白いものが目立ち始め・・・やがて看守たちのお世話になるのかと思うと儚い気持ちにもなるのだった・・・何を言ってるんだ・・・。

早朝の公園で暴力団幹部が射殺され死体となって発見される。まもなく、敵対する暴力団の組員・権藤明(池内博之)が出頭する。

実は・・・権藤明は・・・真犯人ではなく・・・身替り自首してきた雑魚なのである。

権藤明(41)である。41歳で身替り出頭って・・・どんだけ雑魚なのか・・・。

相手が暴力団組員であるために水羊羹を食べつつ及び腰になる検事たち。

結果として・・・久利生公平(木村拓哉)が取り調べることになるのだった。

城西支部に被疑者・権藤の所属する暴力団の顧問弁護士・小此木誠(鶴見辰吾)が顔を見せることによって・・・久利生検事の闘志に火がつくのだった。

しかも・・・小此木弁護士は・・・宇野大介検事(濱田岳)は司法研修生時代の教官という因縁を持っていた。

宇野検事は恩師が暴力団関係者になっていることに違和感を抱くのだった。

しかし・・・小此木はそんな宇野にフレンドリーに振る舞うのだった。

「法律家は・・・無法者の存在によって価値を高める。検事は単なる役人だが・・・弁護士は人間の業の清濁併せ飲む覚悟を求められる高尚な仕事だ」

小此木の言葉に揺れる宇野検事。

だが・・・久利生は小此木の訪問によって最初から疑惑をもって取調に挑むのだった。

「あなたが・・・本当に被害者を殺したんですか」

「殺したよ」

「一体、何故・・・」

「女のことでトラブルがあったんだ」

「そんなことで・・・」と思わず口を挟む麻木千佳事務官(北川景子)・・・。

「そんなことでって・・・」

「いや・・・そんなことで・・・ですよ」と久利生検事。

「すまないな・・・馬鹿でさ」

「すると・・・敵対する組織の幹部を誰かの命令で殺したわけではないと・・・」

「そうだよ・・・個人的な遺恨があったんだ」

「なるほど・・・じゃ、組は破門ですね」

「え・・・」

「だって、そうでしょう・・・そんな個人的な理由で殺しをやった組員・・・許せないでしょう・・・組としては・・・」

「そりゃあ・・・組が考えることだろう・・・」

個人的犯罪ではなく・・・組織的犯罪・・・だから顧問弁護士がやってくるという久利生の理論だった。

もちろん・・・組長(親分)によっては我が子も同じ組員なので馬鹿でも許す場合もあるわけだが・・・久利生は・・・当然、権藤の所属する団体の組長がそういうタイプではないと知っているわけである。

「身替りで出頭してきた可能性が大です」と川尻健三郎部長検事(松重豊)に報告する久利生検事。

川尻部長は牛丸次席検事(角野卓造)に報告する。

「もうこうなったら・・・久利生のやりたいようにやらせるしかない」

久利生は出頭してきた殺人事件の被疑者を起訴しない方向で動き出すのだった。

「なんだと・・・」

権藤の面会に来た小此木弁護士はのけぞるのだった。

「どうしましょう」

「やったと言い張れ・・・」

「頑張ります」

久利生は事件を担当した所轄署にも顔を出す。

「身替りじゃないかと思うんです」

「そりゃあ・・・身替りでしょう」と唖然とする担当刑事(マキタスポーツ)・・・。

「ですよね・・・だから・・・真犯人を捜す方向で捜査をお願いします」

「ええっ・・・被疑者が自白しているのにですか」

「だって・・・殺していない人間を殺人犯にはできないでしょう」

「いや・・・それは」

慣習的にとか渡世の仁義が・・・とは口がさけても言えない現職警官だった。

現場検証に向かう久利生と麻木。

「久利生さん・・・気をつけてください」

「大丈夫・・・あいつらだって・・・無用な手出しはしないさ」

「なんのことですか」

「え」

「蚊ですよ・・・シマシマの奴・・・公園はデング熱ウイルス感染の危険地帯なんですから」

「なるほど」

「目の奥に激痛走るそうですよ」

「それはやだな・・・気をつけよう」

二人は事件の目撃者の証言を得るために「やまとなでしこ」の「魚春」によく似た魚屋「魚羽」を訪ねるのだった。すっかり名コンビとなっている検事と事務官である。

「禿げた次郎さんですよね」

「羽毛田(はけた)次郎だよ・・・変換してみろ」

「はけたで・・・あ、羽毛田、出た」

羽毛田(野添義弘)は身体的特徴などは覚えていたがそれ以上の証言は得られない。

再び、取調室で被疑者と対峙する久利生検事。

「おかわりでもなく水割りでもなく水割りおかわりでもなく日替わりでもなく身替りで出頭するためにレクチャーされたんですよね・・・」

「俺がやったんだよ・・・背中から一発、奴は噴水池に倒れて、それからあおむけになったんで胸に一発撃ち込んだらそのまま沈んじゃった。奴の犬ときたら飼い主を守ろうともせずとっとと逃げていきやがった・・・見かけ倒しのドーベルマンだったぜ・・・奴が顔を水につけたまま・・・血の海で隠れるまで見てたよ・・・死んだと思ったから・・・車に乗って逃げた」

「それをあなたに教えてくれたのはどの人ですか」

「何・・・」

「これ・・・あなたの組の構成員の写真・・・その中からあなたとスタイルが似ている人を選抜するとこの五人になります・・・このうちの誰ですか・・・本当にやったのは・・・」

「俺がやったって言ってるだろう」

「よく・・・考えてください。ドラマなんかでよくありますよね・・・チャカ(拳銃)渡されて、お勤めしてこい・・・出所したら幹部の席を開けておくなんて・・・ね」

「・・・」

「でも・・・それ・・・無理ですからね」

「検事はおそらく無期懲役を求刑します」と麻木がフォロー。

「そうですね・・・暴力団組員同士の事件だから・・・おそらく求刑通りに判決が下るでしょう」

「無期って・・・」

「あなたが・・・模範囚で十年くらいで仮釈放されたとします」

「・・・」

「でも・・・あなたが暴力団に復帰した時点で仮釈放は取り消されますから」

「・・・」

「つまり・・・あなたはどうあがいても組の幹部にはなれないんですよ」

「嘘だろ」

「本当です」

「なあ・・・あんた・・・とにかく・・・起訴してくれよ・・・そうじゃないと俺・・・」

「だって・・・組とは無関係なんでしょう」

「う」

「とにかく・・・あなたは不起訴にします・・・釈放手続きをとりますから」

そんな・・・久利生に圧力をかけるために・・・組員たちが城西支部に「お礼参り」の予告にやってくる。

暴力沙汰に弱い検事と事務官たちは仮装パーティーを開催するのだった。

「久利生さんも早く・・・変装して」

「大丈夫・・・俺には眼鏡型双眼鏡がある」

「確かにそれはバカっぽいね」

しかし、差出人不明で届けられる「久利生のプライベート盗撮写真」・・・。

「なんでこんな危険な時に・・・夜、一人で屋台のラーメンなんか食べてるんですか」

「無性に食べたくなる時・・・あるだろう」

「ありますけど・・・」

「お前が一人テンプラするように俺は一人ラーメンするんだよ」

「一人テンプラって・・・」と所員の関心は移るのだった。

宇野検事だけはいつになく真顔で久利生を案じる。

「無理しないでくださいよ」

「無理なんてしてないさ・・・検事として当たり前のことをしているだけだ」

「・・・かっこいい」

ついに久利生に惚れてしまう宇野だった。

小此木愛用の高級バーに出向く宇野。

「確かめてみたくなったんですよ」

「何を・・・」

「麻薬や覚醒剤の密売、恐喝、ゆすり、たかり、振り込め詐欺、ノミ行為、強盗、置き引き、密輸、殺人、追剥、万引き、密猟、窃盗、誘拐、闇金融、管理売春、強制猥褻、婦女暴行、美人局その他諸々の悪事の限りを尽くす暴力団の顧問弁護士になんか・・・なぜ・・・なっちゃたんですか・・・金ですか」

「・・・」

「僕、僕、笑っちゃいます・・・いつまでもあなたを『先生』って呼びたかったのに・・・今じゃもう泣きたいようなコメディですよね。あんたは所詮『やくざの手先』じゃないですか。僕は行きませんよ・・・あなたの事務所になんか・・・たとえ、どんなに美人秘書がいたとしても・・・そんなの・・・ハニートラップにきまってるんだから」

「暮れなずむ街に誓って・・・君にそんなことはしない・・・それに私は風見じゃない」

「それはそれで・・・残念です」

権藤の釈放に立ちあう久利生の前にチンピラたちが立ちはだかる。

「組長に伝えろ・・・さっさと真犯人を自首させろってな」

「てめえ・・・痛い目にあいたいのか」

「そんなこと言ったら逮捕しちゃうぞ」

「月のある晩ばかりじゃねえぞ」

「すげえな・・・そういうのってテキストあんのかよっ」

「野郎・・・」

いきり立つチンピラたちを抑える兄貴株の男・・・。

「あんた・・・検事にしておくにはおしい奴だな」

「検事で充分満足してる・・・伝言よろしこ」

「・・・」

見守っていた所轄の刑事ももちろん久利生に惚れるのだった。

「いつもああなのか・・・」

「いつもああですよ」と胸を張る麻木である。

小此木は最後の挨拶にやってくる。

「まったく・・・常識を知らないのにも程があるでしょう・・・怖いもの知らずとはこのことだ」

「裏社会の常識なんて知らねえよ。それから・・・もしも、久利生に何かあったら・・・お前の組もお前もつぶしてやる」

鬼尻部長だった。

屋台のラーメン屋で麺をすする久利生と麻木。

「いいですか・・・久利生さん、ヤクザにからまれたら」

「お、元ヤンの必殺技か」

「ダッシュで逃げてください・・・もう、もげっと一目散で・・・」

「・・・」

そこへ・・・刑事がやってくる。

「新しい目撃者が出ました・・・近所の女子大生で・・・犯人の顔も見てます」

「クリーンな人なんですね」

「ええ・・・まともな学生さんです・・・それに目撃されたのはホンボシですよ」

「ああ・・・こいつか」

「こんなことなら最初から偽の目撃者でも用意しとけばよかったのにね」

「犯罪者なんて・・・どこか迂闊なもんですよ・・・だって世間をなめてるわけだから」

「なめられないように・・・こいつは必ず逮捕しますよ」

「お願いします・・・ところで・・・火を持ってますか」

「禁煙中なんで・・・」

「あるよ」

牛丸次席検事の娘の話題はなかったが・・・馬場検事(吉田羊)ひとやまこえたしな・・・「St.George's Tavern」のマスター(田中要次)はラーメンを食べながら久利生が咥えた煙草に着火するためのライターを取り出して出番を確保するのだった。

あの店・・・定休日あったのか・・・。

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Hero008ごっこガーデン。一度は食べたい極うまよなきそばやセット。アンナダーリンと食べるラーメンならどんなラーメンでも極上なのだぴょ~ん。久利生と麻木が痛い目にあったらどうしようってドキドキだったのぴょん。久利生は怖いもの知らずじゃなくて・・・怖いのを我慢して我慢して・・・勇気をふりしぼっているんだと思うのぴょんぴょんぴょん・・・だって・・・だからこそのヒーローだと思うのぴょ~ん・・・そしてヒーローの身代りは誰にもできないのですびょん。だってダーリンの代わりをできる人なんていないのだぴょ~~~んmana刑事はエロいものだけを動かせるのではなくて事件も動かした・・・でも刑事を動かしたのは仮面の検事・久利生なんですよ~。もしかしてだけどもしかしてだけど刑事は検事に惚れちゃったんじゃないの~♪・・・末次さんは100点満点中3点で残念~・・・守らなければならないものは絶対に守る・・・例外はなしだがや~mari検察という組織は大きいけれど検事や事務官は個人でもある・・・一人の小さな手は何もできないけど・・・みんなが手をつなげば何かできる・・・それがチームワークですね

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2014年9月 1日 (月)

おのれば捨てよ、神に委ねよ、大筒をぶっぱなせと大友義鎮(岡田准一)

日本の植民地化を目指すポルトガルのキリスト教宣教師の中でもっともドス黒いとされるイエズス会司祭のガスパール・コエリョは穏健派の宣教師ヴァリニャーノの戒めを無視し、積極的にキリシタン大名の組織化に邁進したという。

そもそも黒人奴隷貿易を開始したポルトガルである。

インド洋の制海権を得るほどの海軍力を持ち、東南アジアまで支配下においていた。

東アジアに触手を伸ばしたイエズス会は日本・中国への浸透を図って行く。

すでに天正八年(1580年)には肥前の大名・大村バルトロメオ純忠(有馬晴純の次男)が長崎の統治権をイエズス会に寄進している。これは竜造寺軍との戦闘の中でポルトガル軍艦が大村を支援したためである。

そして、長崎からは土民が奴隷として輸出され始めていたのである。

その首謀者がコエリョである。

日本を統一中の秀吉には見過ごすことのできない・・・キリスト教の侵略的汚染だったわけである。

しかし、信長の軍事革命によって軍事大国と化した日本の植民地化は常識的なイエズス会穏健派には無謀と映っていたのだった。

かくて日本の領主たちとキリシタン勢力の確執は17世紀に入っても続いて行くことになる。

そうこうしていうちにポルトガル本国が没落していったのが歴史の妙と言える。

で、『軍師官兵衛・第35回』(NHK総合20140831PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は34行に増進。基本的に合戦はスルーで組織における人間関係のもつれを描いて行くというスタイルのこのドラマ。これはもう・・・「倍返しだ」の世界ですな。なんで大河ドラマでそういうことを描かなくてはならないのか・・・キッドは理解に苦しみまずが・・・これも御時勢なんでしょうなあ。キリスト教が支配する世界でキリスト教の害毒を説くのはなんでしょうが・・・少なくとも西欧列強の今に通ずる侵略的意図を描かんでどうするのか・・・と嘆息する次第でございます。それはそれとして・・・まるで死傷者なしで九州平定が終わった感じの今回。宇都宮氏の傍系・城井鎮房のイラスト大公開でお得なのでございますが・・・来週には人殺しの嫌いな主人公が息子を使って家臣ともども暗殺し、主人公が鎮房の息子を謀殺する展開と思われ・・・どんだけ仕方なさを声高く叫ぶのか・・・みものですなあ。

Kan035天正十四年(1586年)十二月、島津家久の奇襲戦法で仙石秀久らの四国勢は戸次川の戦いで壊滅。長宗我部元親の嫡子・信親、十河存保らが討ち死にする。島津軍は大友宗麟の籠る豊後・臼杵城を包囲。宗麟はポルトガル製大砲「国崩し」で城を死守する。大友家臣・佐伯惟定が遊撃戦を展開し、島津軍を撃破。島津・大友両軍は各所で戦線が停滞し、膠着状態のまま越年する。天正十五年(1687年)、正月に秀吉軍先鋒・宇喜多秀家軍九州上陸。二月、豊臣秀長が出陣。三月、豊臣秀吉出陣。愛妾となった茶々との初夜の儀を目指して秀吉の九州平定戦がちゃっちゃっと開始される。秀吉は城井朝房、前野長康、別所重宗、赤松広英、中川秀政、福島正則、丹羽長重、池田輝政、稲葉貞通、蒲生氏郷、前田利家などを従え、秀長は黒田孝高、蜂須賀家政、小早川隆景、吉川元長、毛利輝元、宇喜多秀家、加藤嘉明、九鬼嘉隆、長宗我部元親、森忠政などを率い、総勢二十万、二方向から九州を蹂躙する。秀吉軍の進撃に島津義弘と家久は合流、豊後から日向へ撤退。これを追撃した豊臣秀長軍は宮部継潤、藤堂高虎、宇喜多秀家らの連携で島津軍を翻弄、着陣した小早川・黒田勢が包囲を開始しために島津軍は崩壊し、退却を強いられ、島津忠隣、猿渡信光などが討ち取られた。主力を失った島津義久は五月、無条件降伏に追い込まれる。秀吉を九州に呼びこんだ大友宗麟は戦争終結直前、病死する。九州を平定した秀吉はポルトガル商人による奴隷売買の実態を把握、バテレン追放令を発布する。同時に秀吉は新たなる国割りを発令し、黒田家に豊前国六郡十二万石を与える。これにより黒田家は土着の宇都宮鎮房と摩擦を生じるのだった。

東海から九州に至る広大な領土を支配した秀吉にとって次なる目標は海外貿易の独占であった。

「さすがに二十万の大軍の兵糧奉行は苦労じゃったのう」

秀吉は博多の港の陣で石田三成、大谷吉継、長束正家という三人の兵糧奉行をねぎらった。

平伏する三人に秀吉は微笑む。

「大分、私腹も肥えたじゃろう」

「滅相もございませぬ」と蒼白となる長束正家・・・。

「よいよい・・・私腹を肥やすのも才覚のうちじゃ・・・合戦は儲かるからのう」

「・・・」

「次はいよいよ・・・関東じゃ・・・その前に南蛮貿易の利権を整理しておかねばなるまい」

「九州のバテレン大名に甘い汁を吸わせるわけにはまいりません」と大谷吉継。

「ふむ」

「すべての冨は殿下のものでございますれば・・・」と石田三成。

「九州一のキリシタン大友宗麟は上手く片付いたのう・・・ぐっと仕置きが楽になったわ・・・佐吉の甲賀者もなかなかやるのう・・・」

「殿の思し召しのままに・・・」

「キリシタンどもにはちとお灸をすえて・・・窓口の一本化をせねばなるまいの・・・」

「この佐吉におまかせくだされ・・・」

「いや・・・それは官兵衛にさせる・・・」

「官兵衛様に・・・」

「あやつには商人の血が流れておるからな・・・貿易の本質がわかっておるわ・・・」

「しかし・・・黒田様はキリシタン・・・」

「なんの・・・あやつは単に・・・古女房に飽きてキリシタンの女子に懸想しただけよ・・・神も仏も信じぬものが・・・キリシタンなどと嗤わせおるわ・・・」

「・・・」

「さあ・・・大坂に戻るぞ・・・茶々が待っておるからのう・・・」

秀吉は大友家から献上された大筒搭載の帆船・・・日の丸号を見上げた。

博多の海には夏の気配が漂っていた。

「殿下・・・黒田忍軍はあのままでよろしいのですか・・・」

「よい・・・親父は食えぬ奴だが・・・息子はすっかり手の内じゃ・・・息子の代になれば黒田忍びは骨抜きになるのだがや・・・」

秀吉はもう一度微笑んだ。

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