納得いかないんで・・・釈放しちゃいます(木村拓哉)
巨大な社会である。
巨大な社会を維持・運営していくために法がある。
しかし、法が万能であることはない。
殺人を禁じても殺人事件は発生し、メルトダウンや土砂崩れを取り締まる法律はない。
だが・・・法を盾に何が善で何が悪かを説くことはできる。
「HERO」で描かれる一種の勧善懲悪はひとつの理想論である。
主人公は「自分が正しいと感じることを曲げることはできない」という設定になっている。
それは「悪いことだから」なのである。
時に、それは「独善」や「独りよがり」という切口で批判の対象となるスタイルと言える。
しかし・・・お茶の間がギリギリ納得できる「善」をこのドラマは見事に追及する。
「暴力には屈しない」・・・人間にとっていかにそれが困難なことであるか。
それでも・・・けして屈してはならないのがヒーローなのである。
で、『HERO(第2期)・第8回』(フジテレビ20140901PM9~)脚本・福田靖、演出・金井紘を見た。組織犯罪における身替り自首をどうするかという話である。普通のドラマの場合、これをやられると取り締まる側は口惜しい感じになるわけである。ところが・・・主人公が「納得できません」と言い出すと・・・周囲は「うわあ、面倒くさい」てなことになるわけだ。しかし、面倒くさいことでも間違っていないことなので・・・みんな従うしかないわけである。まさにこのドラマの醍醐味であり、おかしさ倍増なのであった。そもそも平成3年に通称暴力団対策法が施行され公安委員会が指定暴力団を特定するようになって「暴力団」は正式名称になったわけである。反社会的組織である「暴力団」に社会は圧力を加え・・・時には「暴力団」を解散に追い込んだりしているわけである。だが・・・そうでありながら今も「暴力団」が存続しているというある意味、恐ろしい事実、そして、暴力団として指定されない・・・非合法な暴力団的組織の台頭などと問題は波乱を含んでいる。禁酒法を作れば闇酒場なのである。一方で・・・暴力団を廃業した人が簡単に社会に復帰できるかといえばそうではない。それがありのままの世の中ということだろう。元暴力団組長の運営する前科者の社会復帰支援団体などというものがあるし、高齢化社会では罪を重ねる暴力団関係者のために刑務所では看守が受刑者の入浴介護をしていたりするわけである。時々、利用する近所の緩い銭湯にはまだまだ入れ墨者たちが入浴している。抗争でヒットマンが乱入してきてとばっちりを受けたらどうしようと心配しつつ、威勢のいい兄ちゃんたちの髪に白いものが目立ち始め・・・やがて看守たちのお世話になるのかと思うと儚い気持ちにもなるのだった・・・何を言ってるんだ・・・。
早朝の公園で暴力団幹部が射殺され死体となって発見される。まもなく、敵対する暴力団の組員・権藤明(池内博之)が出頭する。
実は・・・権藤明は・・・真犯人ではなく・・・身替り自首してきた雑魚なのである。
権藤明(41)である。41歳で身替り出頭って・・・どんだけ雑魚なのか・・・。
相手が暴力団組員であるために水羊羹を食べつつ及び腰になる検事たち。
結果として・・・久利生公平(木村拓哉)が取り調べることになるのだった。
城西支部に被疑者・権藤の所属する暴力団の顧問弁護士・小此木誠(鶴見辰吾)が顔を見せることによって・・・久利生検事の闘志に火がつくのだった。
しかも・・・小此木弁護士は・・・宇野大介検事(濱田岳)は司法研修生時代の教官という因縁を持っていた。
宇野検事は恩師が暴力団関係者になっていることに違和感を抱くのだった。
しかし・・・小此木はそんな宇野にフレンドリーに振る舞うのだった。
「法律家は・・・無法者の存在によって価値を高める。検事は単なる役人だが・・・弁護士は人間の業の清濁併せ飲む覚悟を求められる高尚な仕事だ」
小此木の言葉に揺れる宇野検事。
だが・・・久利生は小此木の訪問によって最初から疑惑をもって取調に挑むのだった。
「あなたが・・・本当に被害者を殺したんですか」
「殺したよ」
「一体、何故・・・」
「女のことでトラブルがあったんだ」
「そんなことで・・・」と思わず口を挟む麻木千佳事務官(北川景子)・・・。
「そんなことでって・・・」
「いや・・・そんなことで・・・ですよ」と久利生検事。
「すまないな・・・馬鹿でさ」
「すると・・・敵対する組織の幹部を誰かの命令で殺したわけではないと・・・」
「そうだよ・・・個人的な遺恨があったんだ」
「なるほど・・・じゃ、組は破門ですね」
「え・・・」
「だって、そうでしょう・・・そんな個人的な理由で殺しをやった組員・・・許せないでしょう・・・組としては・・・」
「そりゃあ・・・組が考えることだろう・・・」
個人的犯罪ではなく・・・組織的犯罪・・・だから顧問弁護士がやってくるという久利生の理論だった。
もちろん・・・組長(親分)によっては我が子も同じ組員なので馬鹿でも許す場合もあるわけだが・・・久利生は・・・当然、権藤の所属する団体の組長がそういうタイプではないと知っているわけである。
「身替りで出頭してきた可能性が大です」と川尻健三郎部長検事(松重豊)に報告する久利生検事。
川尻部長は牛丸次席検事(角野卓造)に報告する。
「もうこうなったら・・・久利生のやりたいようにやらせるしかない」
久利生は出頭してきた殺人事件の被疑者を起訴しない方向で動き出すのだった。
「なんだと・・・」
権藤の面会に来た小此木弁護士はのけぞるのだった。
「どうしましょう」
「やったと言い張れ・・・」
「頑張ります」
久利生は事件を担当した所轄署にも顔を出す。
「身替りじゃないかと思うんです」
「そりゃあ・・・身替りでしょう」と唖然とする担当刑事(マキタスポーツ)・・・。
「ですよね・・・だから・・・真犯人を捜す方向で捜査をお願いします」
「ええっ・・・被疑者が自白しているのにですか」
「だって・・・殺していない人間を殺人犯にはできないでしょう」
「いや・・・それは」
慣習的にとか渡世の仁義が・・・とは口がさけても言えない現職警官だった。
現場検証に向かう久利生と麻木。
「久利生さん・・・気をつけてください」
「大丈夫・・・あいつらだって・・・無用な手出しはしないさ」
「なんのことですか」
「え」
「蚊ですよ・・・シマシマの奴・・・公園はデング熱ウイルス感染の危険地帯なんですから」
「なるほど」
「目の奥に激痛走るそうですよ」
「それはやだな・・・気をつけよう」
二人は事件の目撃者の証言を得るために「やまとなでしこ」の「魚春」によく似た魚屋「魚羽」を訪ねるのだった。すっかり名コンビとなっている検事と事務官である。
「禿げた次郎さんですよね」
「羽毛田(はけた)次郎だよ・・・変換してみろ」
「はけたで・・・あ、羽毛田、出た」
羽毛田(野添義弘)は身体的特徴などは覚えていたがそれ以上の証言は得られない。
再び、取調室で被疑者と対峙する久利生検事。
「おかわりでもなく水割りでもなく水割りおかわりでもなく日替わりでもなく身替りで出頭するためにレクチャーされたんですよね・・・」
「俺がやったんだよ・・・背中から一発、奴は噴水池に倒れて、それからあおむけになったんで胸に一発撃ち込んだらそのまま沈んじゃった。奴の犬ときたら飼い主を守ろうともせずとっとと逃げていきやがった・・・見かけ倒しのドーベルマンだったぜ・・・奴が顔を水につけたまま・・・血の海で隠れるまで見てたよ・・・死んだと思ったから・・・車に乗って逃げた」
「それをあなたに教えてくれたのはどの人ですか」
「何・・・」
「これ・・・あなたの組の構成員の写真・・・その中からあなたとスタイルが似ている人を選抜するとこの五人になります・・・このうちの誰ですか・・・本当にやったのは・・・」
「俺がやったって言ってるだろう」
「よく・・・考えてください。ドラマなんかでよくありますよね・・・チャカ(拳銃)渡されて、お勤めしてこい・・・出所したら幹部の席を開けておくなんて・・・ね」
「・・・」
「でも・・・それ・・・無理ですからね」
「検事はおそらく無期懲役を求刑します」と麻木がフォロー。
「そうですね・・・暴力団組員同士の事件だから・・・おそらく求刑通りに判決が下るでしょう」
「無期って・・・」
「あなたが・・・模範囚で十年くらいで仮釈放されたとします」
「・・・」
「でも・・・あなたが暴力団に復帰した時点で仮釈放は取り消されますから」
「・・・」
「つまり・・・あなたはどうあがいても組の幹部にはなれないんですよ」
「嘘だろ」
「本当です」
「なあ・・・あんた・・・とにかく・・・起訴してくれよ・・・そうじゃないと俺・・・」
「だって・・・組とは無関係なんでしょう」
「う」
「とにかく・・・あなたは不起訴にします・・・釈放手続きをとりますから」
そんな・・・久利生に圧力をかけるために・・・組員たちが城西支部に「お礼参り」の予告にやってくる。
暴力沙汰に弱い検事と事務官たちは仮装パーティーを開催するのだった。
「久利生さんも早く・・・変装して」
「大丈夫・・・俺には眼鏡型双眼鏡がある」
「確かにそれはバカっぽいね」
しかし、差出人不明で届けられる「久利生のプライベート盗撮写真」・・・。
「なんでこんな危険な時に・・・夜、一人で屋台のラーメンなんか食べてるんですか」
「無性に食べたくなる時・・・あるだろう」
「ありますけど・・・」
「お前が一人テンプラするように俺は一人ラーメンするんだよ」
「一人テンプラって・・・」と所員の関心は移るのだった。
宇野検事だけはいつになく真顔で久利生を案じる。
「無理しないでくださいよ」
「無理なんてしてないさ・・・検事として当たり前のことをしているだけだ」
「・・・かっこいい」
ついに久利生に惚れてしまう宇野だった。
小此木愛用の高級バーに出向く宇野。
「確かめてみたくなったんですよ」
「何を・・・」
「麻薬や覚醒剤の密売、恐喝、ゆすり、たかり、振り込め詐欺、ノミ行為、強盗、置き引き、密輸、殺人、追剥、万引き、密猟、窃盗、誘拐、闇金融、管理売春、強制猥褻、婦女暴行、美人局その他諸々の悪事の限りを尽くす暴力団の顧問弁護士になんか・・・なぜ・・・なっちゃたんですか・・・金ですか」
「・・・」
「僕、僕、笑っちゃいます・・・いつまでもあなたを『先生』って呼びたかったのに・・・今じゃもう泣きたいようなコメディですよね。あんたは所詮『やくざの手先』じゃないですか。僕は行きませんよ・・・あなたの事務所になんか・・・たとえ、どんなに美人秘書がいたとしても・・・そんなの・・・ハニートラップにきまってるんだから」
「暮れなずむ街に誓って・・・君にそんなことはしない・・・それに私は風見じゃない」
「それはそれで・・・残念です」
権藤の釈放に立ちあう久利生の前にチンピラたちが立ちはだかる。
「組長に伝えろ・・・さっさと真犯人を自首させろってな」
「てめえ・・・痛い目にあいたいのか」
「そんなこと言ったら逮捕しちゃうぞ」
「月のある晩ばかりじゃねえぞ」
「すげえな・・・そういうのってテキストあんのかよっ」
「野郎・・・」
いきり立つチンピラたちを抑える兄貴株の男・・・。
「あんた・・・検事にしておくにはおしい奴だな」
「検事で充分満足してる・・・伝言よろしこ」
「・・・」
見守っていた所轄の刑事ももちろん久利生に惚れるのだった。
「いつもああなのか・・・」
「いつもああですよ」と胸を張る麻木である。
小此木は最後の挨拶にやってくる。
「まったく・・・常識を知らないのにも程があるでしょう・・・怖いもの知らずとはこのことだ」
「裏社会の常識なんて知らねえよ。それから・・・もしも、久利生に何かあったら・・・お前の組もお前もつぶしてやる」
鬼尻部長だった。
屋台のラーメン屋で麺をすする久利生と麻木。
「いいですか・・・久利生さん、ヤクザにからまれたら」
「お、元ヤンの必殺技か」
「ダッシュで逃げてください・・・もう、もげっと一目散で・・・」
「・・・」
そこへ・・・刑事がやってくる。
「新しい目撃者が出ました・・・近所の女子大生で・・・犯人の顔も見てます」
「クリーンな人なんですね」
「ええ・・・まともな学生さんです・・・それに目撃されたのはホンボシですよ」
「ああ・・・こいつか」
「こんなことなら最初から偽の目撃者でも用意しとけばよかったのにね」
「犯罪者なんて・・・どこか迂闊なもんですよ・・・だって世間をなめてるわけだから」
「なめられないように・・・こいつは必ず逮捕しますよ」
「お願いします・・・ところで・・・火を持ってますか」
「禁煙中なんで・・・」
「あるよ」
牛丸次席検事の娘の話題はなかったが・・・馬場検事(吉田羊)ひとやまこえたしな・・・「St.George's Tavern」のマスター(田中要次)はラーメンを食べながら久利生が咥えた煙草に着火するためのライターを取り出して出番を確保するのだった。
あの店・・・定休日あったのか・・・。
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ごっこガーデン。一度は食べたい極うまよなきそばやセット。アンナ「ダーリンと食べるラーメンならどんなラーメンでも極上なのだぴょ~ん。久利生と麻木が痛い目にあったらどうしようってドキドキだったのぴょん。久利生は怖いもの知らずじゃなくて・・・怖いのを我慢して我慢して・・・勇気をふりしぼっているんだと思うのぴょんぴょんぴょん・・・だって・・・だからこそのヒーローだと思うのぴょ~ん・・・そしてヒーローの身代りは誰にもできないのですびょん。だってダーリンの代わりをできる人なんていないのだぴょ~~~ん」mana「刑事はエロいものだけを動かせるのではなくて事件も動かした・・・でも刑事を動かしたのは仮面の検事・久利生なんですよ~。もしかしてだけどもしかしてだけど刑事は検事に惚れちゃったんじゃないの~♪・・・末次さんは100点満点中3点で残念~・・・守らなければならないものは絶対に守る・・・例外はなしだがや~」mari「検察という組織は大きいけれど検事や事務官は個人でもある・・・一人の小さな手は何もできないけど・・・みんなが手をつなげば何かできる・・・それがチームワークですね」
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コメント
こんにちは~。
>「はけたで・・・あ、羽毛田、出た」
まさにこんな感じ!
変換して私も驚いた~(ノ∇≦*)アルンダ
小此木もそうだでかんわぁ。
覚え難い言い難いで、
「おこのみ」で脳内変換して書いたぎゃ。
キッドさんの丁寧で分かり易い解説、
毎度スッキリ~笑えます
デング熱も、さすがです!
今回はバランスの良さに心地良かった~
気分次第なのきゃ?(笑)
投稿: mana | 2014年9月 3日 (水) 10時19分
ただ今、第三中庭で屋台祭りを開催中ですので
特製ラーメンをご賞味くださりませ。
懐かしいところでは「池袋ウエストゲートパーク」
最近では「明日、ママがいない」の音楽を担当している
作曲家に羽毛田丈史(はけたたけふみ)氏がいらっしゃいます。
ふふふ・・・小此木も一発変換ですな
お好みも一発変換でございます。
何はともあれ一発変換はスッとしますな。
あくまで丁寧でも妄想ですので念のため。
丁寧も妄想も一発変換で
スッといたしましたぞ~。
代々木周辺には接近しないように
注意しております。
なにやら・・・陰謀の匂いがしますし・・・。
デング出血熱ですとこわいですからなあ。
ふふふ・・・やはり久利生の出番率の問題ですな。
主役あっての物語でございますからな~。
投稿: キッド | 2014年9月 4日 (木) 00時54分