約束を果たしていただき誠にありがとうございます(近野成美)
遊女の夕霧(近野成美)はエピソードのないまま終了か・・・と危惧していたが・・・ちゃんと用意されていてホッとしたぞ。
今季は「聖女」に上野なつひも出ていて・・・NHKは歴代・黒井ミサに優しい気がいたしました。
そこかよっ。・・・「ST 赤と白の捜査ファイル」(日本テレビ)には加藤夏希がゲスト出演していたぞ。「外科医 鳩村周五郎13」(フジテレビ)には佐伯日菜子が・・・。吉野公佳がくればパーフェクト・シーズンだったんだよな。
さて・・・不倫に満ちた夏ドラマ・・・。
言わば「吉原裏同心」はその代表である。
もちろん・・・「昼顔」が話題作なのは間違いないし、「同窓生」はフーミン原作である、「ペテロの葬列」もいろいろあってお嬢様妻の「あやまち」が最終的なオチという趣向が物議を醸していた・・・しかし、まあ・・・現代の不倫はいろいろと曖昧である。
その点、不義密通は死罪の時代に駆け落ちしちゃう二人は不倫中の不倫なのである。
そもそも「愛」は誰にも縛られない心の問題である。
一方、不倫を生みだす「結婚」は社会的な制度であるとと同時に一種のお約束である。
「愛」と「結婚」の不一致が様々な心模様を描くわけである。
不倫をされた方は「約束が違う」と相手の裏切りを責めるのが基本である。
一方、不倫をした方は「ごめんなさい」と言いつつ・・・様々な言い訳をするわけである。
その最終兵器は「結婚に愛がなかった」ということになる。
「愛のない結婚」を持ちだされると・・・「あああああ」と叫ぶ他はないのである。
ドロドロの好きな人は「離婚には絶対応じない」と約束の道を歩く。
サバサバの好きな人は「慰謝料もらってごきげんよう」である。
「金」がからんでくると・・・結婚とか愛とか・・・美しい言葉の虚しさが漂うわけである。
離婚が日常茶飯事になり・・・子供が両親の離婚に世界の終焉を感じない時代・・・そういう時代は嘆かわしい気がしないわけでもない。
親である前に人間ですからと言われればそれまでである。
しかし・・・ファンタジーであるこのドラマには鎹(かすがい)たる子供は存在しないという「手」が潜んでいます。
で、『吉原裏同心・最終回(全12話)』(NHK総合20140918PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・川野秀昭を見た。前回も今回も医師・柴田相庵(林隆三)の出番はなかった・・・つまり・・・第10話がお別れだったのだなあ・・・。合掌。毎回・・・ほんの一瞬のシーンに「時代劇」としての奥行きを感じさせた・・・有終の美でございました。「ダークシステム 恋の王座決定戦」の白石鉄山も素晴らしかったけれど・・・遺作としては華々しすぎたものな。「チーム・バチスタ4」もあっただろう・・・。ま、どちらにしろ・・・さようなら・・・右京さんって言うには時代劇でよかったのさ。
吉原遊郭に不穏な空気が漂う。
巾着切りが出没し、ふってわいたように喧嘩沙汰が頻発する。
「何者かが・・・仕掛けているのかもしれまんな」
「吉原が何やら物騒だと評判を立たせようと・・・いうわけですか・・・」
吉原裏同心・神守幹次郎(小出恵介)と吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)は顔を見合わせる。
遊女・夕霧(近野成美)も被害に遭い、親に仕送りしようとためていた金と・・・親から贈られた猫の根付を奪われてしまったのだ。
「あれは・・・ふるさとを思い出すことのできる・・・大切なものだったんだろう」
「お金だって毎日、少しずつためていたんだよねえ・・・」
遊女仲間たちも同情の声をあげる。
事情を聞いた幹次郎は「俺が・・・必ず犯人を捕まえる」と夕霧に誓うのだった。
そんな折・・・家路に着いた幹次郎は因縁の相手に出会う。
借金の形に汀女(貫地谷しほり)を妻とした上で虐待していた藤村壮五郎(皆川猿時)である。
幹次郎は汀女の窮状を見るに見かね・・・駆け落ちして豊後の岡藩(藩主は中川清秀の子孫)を脱藩したのだった。
それ以来、幹次郎と汀女は女敵討(めがたきうち)のターゲットとなったのである。
剣の腕に自信のない壮五郎は剣客を助太刀として幹次郎を仕留めようと目論む。
しかし・・・幹次郎がどんどん腕をうげるために・・・返り討ちにあっているのだった。
「野郎・・・また腕をあげやがったな」
「無駄なことはおよしになるがよかろう」
「昼間・・・汀女を見た・・・あの女、幸せそうに笑っておった」
「・・・」
「お前さえ・・・現れなければあの女は俺のものだったのだ」
「しかし・・・あなたは泣かせることしかなさらなかったではないか」
「くそこの・・・不義密通をいたせしものになんで拙者が意見されねばならんのだ」
「お手前の武士の面目をつぶしたことは謝り申す・・・しかし、汀女殿を連れて逃げたことに後悔はござらぬ」
「盗人猛々しいわ・・・覚えておれ・・・次はもっと腕の立つものを雇ってやる」
法的には正しいことをしているのに・・・情けないことおびただしい壮五郎だった。
しかし・・・追われるものの辛さで幹次郎の心も沈むのだった。
その気配を察し、汀女が事情を聞こうとしたところに隣の仙右衛門(山内圭哉)の女房・お芳(平田薫)が顔を出す。
「お侍さんが・・・幹次郎様をお尋ねです」
「・・・」
もしや追手では・・・と思い緊張する二人。
幹次郎はひきとめる汀女を無言で制する。
「姉様は・・・奥へ」
「幹殿・・・」
しかし、現れたのは見知らぬ侍だった。
「お初にお目にかかります・・・拙者、越中山岡藩(フィクション)の藩士・矢部新造と申しまする」
矢部新造(田中幸太朗)の用件は幹次郎を越中山岡藩の剣術指南役として迎えたいという願ってもない話だった。
「しかし・・・拙者は・・・訳あって流浪の身・・・」
「失礼ながら・・・お願いする上で・・・貴殿の身の上は調べさせていただいた・・・そもそも・・・貴殿は・・・吉原裏同心として・・・御高名が響いておりますので・・・」
「え」
「いかなる・・・腕かも・・・先ほど見せていただいた・・・いや・・・素晴らしい太刀筋でございました」
「えええ」
しばらく、猶予をもらう幹次郎だった。
吉原を覆う暗雲が気がかりだったのである。
例によって身代り屋佐吉(三宅弘城)が情報を仕入れてくる。
「吉原の見世の主だった男に勘助てえのがおりまして・・・なんと吉原で賭場を開帳して追放になったという札付きです。こいつが場末の岡場所(未公認の売春街・・・品川や千住などを始め江戸各所に点在・・・岡とは外れの意味である)で結構な顔役になってまして・・・どうやら悪だくみをしているようなんでさあ・・・金を使って子分を集め・・・親分気取りでしてね・・・吉原への怨みを晴らそうというんじゃねえかと噂です」
「ところで・・・拙者は有名になっておるのか」
「何言ってるんです・・・吉原裏同心の旦那を知らなかったら江戸っ子じゃねえってくらい評判ですぜ・・・」
「それではもはや裏とは言えぬではないか」
「あはは・・・確かにそうでやんすねえ」
一方、汀女の思案顔に気がついた吉原一の花魁・薄墨太夫(野々すみ花)は事情を聞きだす。
薄墨太夫は四郎兵衛に幹次郎の出仕の話を伝えるのだった。
薄墨太夫の部屋に幹次郎を呼びだす四郎兵衛だった。
「よい話ではございませんか」
「は・・・」
「お二人が表の世界にお戻りになられるいい機会でございます」
「しかし・・・こちらでは・・・勘助とやらが・・・」
「ああ・・・勘助・・・そのことなら・・・もう話がついております・・・どうか、安心してご出立ください」
「・・・」
他の藩の家中のものとなれば・・・壮五郎もうかつに手出しはできなくなる・・・。
汀女のことを思えばそうせざるをえない幹次郎だった。
二人を送りだした四郎兵衛に薄墨太夫が告げる。
「随分と男をあげましたねえ」
「何のことでしょう」
「勘助のこと嘘でありんしょう」
「お見通しでしたか・・・太夫こそ・・・よろしいのですか」
「手に入らぬものが目の前にあるのは口惜しいものでありんす」
「・・・」
越中山岡藩の江戸屋敷で矢部の上役・松下源左衛門(山田明郷)と目通りし、ついに越中行きが決まる幹次郎だった。
「達者でな」
「世話になった・・・」
出発の日、仙右衛門と言葉少なに別れを告げる幹次郎。
板橋の宿で同道する矢部とおちあうために街道を行く二人・・・。
一方、幹次郎の不在を狙って・・・勘助は吉原殴りこみを実行する。
勘助は四郎兵衛の首に懸賞金をかけたのだった。
偶然、途中の茶屋で矢部と出会った幹次郎・・・。
ところが・・・そこへ・・・一人の巾着切りが逃げてくるのだった。
思わず、捉えた男の懐からは・・・猫の根付がこぼれ落ちる。
「お前・・・吉原でも仕事をしたか・・・」
「へ・・・遊女だからとあてこんだが・・・とんだはずれくじだったぜ・・・巾着の中はビタ銭ばかりだ」
「その金を・・・遊女たちがどんな思いをして貯めたのか・・・知らぬのか」
「知ったこっちゃねえや」
その刹那・・・幹次郎は・・・遊女・夕霧との約束を忘れていた自分に気がつくのだった。
「矢部殿・・・申し訳ありませぬ・・・この話、なかったことにしていただきたい」
「・・・」
「拙者には・・・吉原で・・・果たさねばならぬ務めがございました」
「残念でござるが・・・そう言われては無理強いできませぬ」
「かたじけない」
幹次郎は今来た道を駆けもどるのだった。
仕方なく、汀女を送り届ける矢部だった。
「よもや・・・ふられるとは」
「申し訳ございませぬ・・・」
「いや、・・・さすがは吉原裏同心でござる」
吉原大門でにらみ合う四郎兵衛と勘助。
「野郎ども、やっちまえ・・・」
「待て・・・」
「なんだ・・・あ・・・あいつは吉原裏同心」
「冗談じゃねえ・・・俺は抜けるぜ」
「馬鹿野郎、今さら、何を言いやがる」
吉原裏同心の名、鳴り響きすぎである。
「くそ」
やけになった勘助を一刀両断する幹次郎だった。
「なんでお戻りになったんです」
「拙者は・・・吉原裏同心でござる」
歓喜する一同だった。
四郎兵衛の娘・玉藻(京野ことみ)は茶屋に幹次郎と汀女を招く。
「これは・・・」
「吃驚仰天の宴でございます」
そこには番方や遊女たちが集っていた。
薄墨太夫や夕霧たちも畏まって控えるのだった。
「今宵は私が一席設けました・・・」と四郎兵衛。
「実は・・・吉原はお上公認の遊郭・・・将軍家や幕閣の皆様とも裏でつながっております」
「・・・」
「栄達の道を捨ててお戻りくださったお二人に・・・ささやかなお礼をしたいと存じまして・・・将軍家より・・・お二人の罪を免じてくださるよう・・・一筆いただき・・・岡藩にお届けいたしました」
「なんですと」
「お二人は・・・もう追われる身ではなくなったのでございます」
「えええ」
「そこで・・・勝手ながら今宵はお二人の祝言をあげさせていただきとうございます」
「・・・」
「さあさあ・・・お席におつきくだされ」
「高砂や」
「この浦舟に帆を上げて」
「はや住の江に着きにけり」
「シュラシュシュシュ~」
フィナーレである。
続編が楽しみだが・・・柴田相庵が存在しないのは・・・悲しいことだなあ。
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