知っているのに知らぬふり・・・秘するが花でもあるまいに(馬淵英俚可)
気がつけば夏の終わりである・・・。
夏ドラマもいろいろあったなあ・・・・
(月)「HERO」・・・検事と被疑者の話。
(火)「聖女」・・・弁護士と被告の話。
(水)「若者たち」・・・被害者と加害者の話。
(木)・・・今、ココ。
(金)「家族狩り」・・・連続猟奇一家皆殺しの話。
みんな・・・ミステリーだよっ。
そして・・・この時代劇も・・・心中に見せかけた毒殺の謎を解くという・・・結局、ミステリである。
まあ・・・好きだからいいのだが・・・。
でも・・・時代劇は殺伐としていてもうっとりできるのである。
今回のゲストの馬渕英俚可(1979年3月生まれ)は第17回ホリプロタレントスカウトキャラバン(1992年)のグランプリ受賞者である。1978年度生まれを代表する女優の一人と言っていいだろう。他に長谷川京子、麻生久美子、原沙知絵、遠藤久美子、釈由美子、小西真奈美、青山倫子、市川実日子、矢田亜希子などがいる。そして京野ことみもである。「白線流し」(1996年)から・・・18年なのである。
がんばってるよねえ。酒井美紀の花魁も見たいよねえ。
で、『吉原裏同心・第10回』(NHK総合20140904PM8~)原作・佐伯泰秀、脚本・尾崎将也、演出・佐藤峰世を見た。人間は情報を取得し、保存できるシステムを標準装備している。もちろん・・・機能障害はあるとしてもだ。その情報を伝達するかどうかの選択権を持っているわけである。今回は黙秘、嘘、おとぼけ、しらを切る・・・真相を隠すことの功罪を重ねてくるわけである。そして・・・言いたくても何も言えない憐れな骸は・・・生けるものをつき動かすのだった。まあ・・・この後すぐの「ゼロの真実〜監察医・松本真央〜」なんか毎回、これをやってます。
思いを寄せる番方の仙右衛門(山内圭哉)に意中の人・・・お芳(平田薫)がいることを知った玉藻(京野ことみ)はきっぱりと身を引き・・・父親の吉原遊郭の顔役・七代目四郎兵衛(近藤正臣)に仙右衛門とお芳を夫婦にするように伝える。
思いを殺す玉藻は小股の切れ上がった粋なお姉さんなのだった。
しかし、四郎兵衛はその役目を吉原裏同心・神守幹次郎(小出恵介)と姉さん女房の手習いの師匠・汀女(貫地谷しほり)にパスするのだった。
娘の玉藻の失恋は心に収める四郎兵衛なのである。
悪い魔女のような変な横槍はいれないのである。
しかし・・・そういう色恋沙汰が気恥かしい幹次郎・・・仙右衛門の気持ちを確かめることはなかなか困難である。
口が重いのである。
意気地なしと言える。
そんな折・・・山吹屋という見世で心中事件が発生する。
毒を飲んで死んだのは遊女・小春(馬渕英俚可)馴染み客で乾物商の信濃屋の手代・幸太だった。
駆けつけた幹次郎の腕の中で「ぶんきち・・・」と言い残しこときれる小春。
「心中なんてしやがって・・・売れっ子の遊女でなかったのが不幸中の幸いだ・・・」
発見者の男衆・又一(和田洋一)の心ない言葉に・・・違和感を感じる幹次郎。
「そういうことが関係あるのか・・・」
「そりゃ・・・売れっ子に死なれたら見世だって大損害ですから」
遊女たちの手習いを指導中の汀女にも報せが届く。
「小春さんが心中なんて・・・そんなまさか」
同じ見世の遊女・若竹(菜葉菜)が疑念を抱く。
「弟さんがもうすぐ所帯を持つって・・・喜んでいたのに・・・」
同心の村崎(石井愃一)は心中の見立てで吟味を行う。
「幸太の野郎・・・金を使い込んで遊びに使ってたんです」
信濃屋の番頭・義左衛門(湯江健幸)は告げるのだった。
「使いこみだって・・・いくらだ」
「五十両ほど・・・」
そこへ・・・小春の弟で飾り職人の文吉(内野謙太)が飛び込んでくる。
「姉ちゃんが死んだなんて・・・嘘でしょう・・・なんかの間違いだ」
「残念だが・・・」
取り乱した文吉を家に連れ帰る幹次郎。
「もうすぐ・・・所帯を持つって男が・・・しっかりしろ・・・」
「・・・嘘なんですよ・・・姉ちゃんを喜ばそうと思って・・・親方に褒められたとか嘘の文を認めているうちに・・・親方の娘を嫁にするってところまで行っちまって・・・」
小春の話と違い・・・出来の悪そうな文吉に納得する幹次郎だった。
しかし・・・心中相手の幸太と小春は身請け話などはないものの・・・地味で堅実な付き合いだったという。
そして・・・五十両もの大金はどこからも見つからない。
江戸時代も物価は変動するがおよそ一両は十万円ほどである。
五十両では五百万円の大金であった。
そして・・・吉原一の花魁・薄墨太夫(野々すみ花)に呼び出される幹次郎。
「御用はなんでしょう」
「用がなければおよびしてはいけませんか」
「・・・」
「私は小春さんにお金を預かっておりました・・・」
金は三両二分・・・一分は四分の一両なので三両半・・・およそ35万円である。
「これは・・・弟さんのために小春さんがこつこつと貯めたお金でありんす・・・」
そんな小春が自分の情婦に五十両もの大金を貢がせるはずがないと匂わす薄墨太夫。
「小春さんの疑いを晴らしてくださりますか」
「もちろんです・・・吉原の女の幸せを守るのがそれがしの務め・・・」
「私の幸せも・・・」
「はい」
「私の幸せが何か・・・ご存じでありんすか」
「・・・」
幹次郎の手をとる薄墨太夫・・・。
「私の気持ちがおわかりにならないのですか・・・それともわかっていて・・・」
幹次郎はそっと手を離す。
「これからも・・・あなたをお守りします」
もてる男はつらいのだった。
そして・・・浮気心を秘める幹次郎だった。
「この心中事件はどうも腑に落ちませぬ」と幹次郎は四郎兵衛に隠密捜査を進言するのだった。
「ようございましょう」と許可する四郎兵衛。
例によって身代り屋佐吉(三宅弘城)の出番である。
一方、酒に酔った文吉は本音を口にする。
「家族のために吉原に売られた姉ちゃんの期待が重かった・・・だから嘘に嘘を重ねちまったんだ」
そこへ・・・柴田相庵(林隆三)がやってくる。
「昔・・・小春が風邪を引いた時に聞いた話だ・・・ひとしきり・・・弟の自慢をした後で・・・小春の奴・・・こう申しておった・・・なんてねえ・・・きっと弟の話は作り話だと思うんですよ・・・だってそんなに出来のいい弟じゃないんですよ・・・でもね・・・嘘でも・・・そんな話をしてくれる弟が可愛いんですよ・・・それに嘘から出た真ということだってありますでしょう・・・もしかしたら・・・嘘が本当になるかもしれない・・・だから私は弟の話を信じてやるんです・・・そう申しておった・・・」
涙にくれる一同だった。
仙右衛門は事件の日に信濃屋の番頭・義左衛門を吉原で見かけたことを思い出す。
捜査線上に浮かんだ義左衛門をつけている男がいると佐吉。
あわてて駆けつけた幹次郎は文吉を発見するのだった。
「俺は・・・姉ちゃんの仇を討ちたいんだ」
「まあ・・・急くな・・・」
義左衛門を尾行した二人は出向いた先の茶屋で男衆・又一を発見する。
義左衛門と又一は密会をしていた。
「これが約束の十両だ・・・」
「遊女を殺して十両なら儲けものだ」
「俺も・・・残りの四十両で相場で作った借金の詰め(返済)ができる」
「旦那も悪だねえ」
「話は聞かせてもらった・・・五十両の使いこみという濡れ衣をきせるために・・・小春と手代の幸太に毒を飲ませたということだな」
「お、おめえは・・・」
「この悪党・・・よくも・・・姉ちゃんを・・・散々嘘八百並べやがって・・・」
又一は用心棒を呼ぶが・・・幹次郎の敵ではない。
峰打ちで全員を叩き伏せる幹次郎だった。
そんなこんなで事件解決の際中、汀女はお芳の気持ちを確かめる。
「仙右衛門さんのこと・・・」
「好きです」
言うべきことを言うお芳だった。
番所に礼を言いに来た文吉。
「お前が職人として立派に生きることが・・・小春への供養だ」
「頑張って親方の娘を嫁にできるように精進します」
「そうだ・・・ついでに・・・仙右衛門・・・」と汀女に尻を蹴飛ばされた幹次郎。
「なんだよ」
そこへお芳が顔を出す。
「お前、お芳に言うことがあるだろう・・・」
「え・・・」
見つめ合う二人。覚悟を決める仙右衛門だった。
「・・・お芳・・・俺と所帯をもってくれ」
「いいよ・・・お前さん・・・」
「え・・・いいのかよっ」
めでたいのだった。祝言もそこそこに新婚旅行に出るお芳と仙右衛門だった。
仲睦まじい二人を見て・・・悶々としてきた幹次郎と汀女はいそいそと帰宅するのだった。
四郎兵衛は薄墨太夫に尋ねる。
「せっかくの大店の主の身請け話を何故断りなさるんで・・・」
「ご祝儀をもらい損ねて・・・お怒りですか」
「そんなわけないでしょう・・・あっしはただ・・・」
「それでは・・・四郎兵衛さんにだけは・・・お話いたします・・・私の誠の心を・・・」
果たして・・・太夫は何を語るのか・・・今回は秘するのでございました。
謎で気を引くのは・・・まあ・・・古今東西の常套手段でございますねえ。
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