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2014年9月 6日 (土)

個人が家族が社会が責任をおしつけあう世界でろくでなしの父帰る(篠田麻里子)

幻想と現実が混在するフィクションは常に前衛的になってしまう。

つまり・・・フィクションというお約束の中で・・・主観と客観を分離するというお約束を破壊するチャレンジだからである。

たとえば「シャイニング」では現実の呪いと主人公の狂気のどちらが非現実なのか混沌としてくるところが面白いわけである。

しかし・・・そういうものは一歩間違えると・・・非常にださい感じになってくるものだ。

まず・・・お約束を壊すことで生じるわかりにくさの問題がある。

特に・・・単なる娯楽作品ではなく・・・思想的主張が匂う作品には不向きな手法である。

このままでいいのでしょうか・・・みたいな問いかけをしている時に・・・まあ・・・この状態そのものが幻想なんですけどね・・・と言われてもしらけるしかないのである。

作品が生み出す・・・なんだかよくわからないものを・・・なんだかよくわからないまま語れば・・・なんだかわからないと思うしかないのだった。

で、『家族狩り・最終回(全10話)』(TBSテレビ20140905PM10~)原作・天童荒太、脚本・泉澤陽子、演出・坪井敏雄を見た。この物語の核心は・・・個人の心の病に誰が責任をもって対応するか・・・ということだろう。本人に責任を負ってもらおうにも心の病なのである。その場合、家族に責任を押し付けても無理があるので社会全体が責任を分担して行こうという正論である。そんなあたりさわりのない毒にも薬にもならない結論を・・・凄いでしょう、これこそが真理なんですよと絶叫し続ける・・・そういう頭のおかしな感じを最後まで漂わせ続けていたなあ・・・。最後に出るテロップが「家族を愛してますか?」である。もう完全に余計な御世話だよな。スタッフの正気を疑う他ない・・・病院に行った方がいいぞ。

暑い夏だった。

ウルトラスーパーデラックス不死身人間の秘密はウルトラスーパーデラックスウイルスである。

椎村刑事(平岡祐太)はウルトラスーパーデラックスウイルスに冒されたウルトラスーパーデラックス・・・以後、USDと略す・・・ゾンビなのである。

この夏、突然変異したUSDウイルスは蚊を媒介して感染する能力を獲得した。

署内で取調を受けた巣藤浚介(伊藤淳史)はUSDゾンビである椎村刑事を刺して感染し、USDゾンビ化した蚊に刺され、USDゾンビとなる。

不良に暴行され、火傷を負っても不死身なのでたちまち回復したのである。

暴力に屈してきたために消極的だった性格は変異し、躁状態となった精神は他人の人生に積極的に関わりはじめるのだった。

街で知り合った認知症の老人(井上真樹夫)は屋内で巣藤を刺した蚊に刺されUSDゾンビとなる。「認知症は治る・・・将来的には」などという希望的ドキュメンタリーのように糞尿まみれで介護に疲弊した家族に束の間の癒しを与えるために「認知症が治癒する奇跡」が展開するのだった。

ひとりよがりの性格のために業務を上手くこなせない東京都児童ケアセンター職員で児童心理司の氷崎游子(松雪泰子)は苛立つと暴力をふるうダメ人間だが・・・人を殴るのと殺すのとは違うことだと盲信している。

自分の言うことを聞かなかったご遺体を損傷させるほど怨みがましい性格のために・・・自分に優しくしてくれて体にいいシャンプーを分けてくれた山賀葉子(財前直見)が単なる頭のおかしい殺人鬼だったことが許せなくて儀式の邪魔をするのだった。

外面のいいことが生きがいの山賀葉子と元夫の大野白蟻工業の社長(藤本隆宏)は自分の子供に全く関心がないという心の病を発症していたため、育児放棄された長男は歪んだ性格に育ち、当然、いじめられ、その鬱憤を家族への暴力で発散する。長男の暴力に耐えられなくなった大野は長男を殺害・・・良いことをしたのに自分の息子が悪い子になってしまった理不尽さに憤怒した狂った夫婦は・・・自分を殺す代わりに似たような家族を殺し始めたのだった。

「自分が辛いから・・・人を殺すなんて・・・バカじゃないの」と不死身だが無力のために拘束されてしまった巣藤は率直な感想を口にする。

「だまされた・・・私はだまされた」ととにかく口惜しい氷﨑。

「頭のおかしい人に何言っても無駄よ」と醒めた口調の天才少女・芳沢亜衣(中村ゆりか)・・・。

「むむむ」と子供より頭の悪かった父親(二階堂智)とさらに頭の悪い母親(相築あきこ)は切り刻まれる恐怖に失禁しつつ・・・凌辱される暗い喜びを感じるのだった。しかし、父親は娘に心臓を刺されてもピンピンしていることから明らかだが・・・すでにゾンビ蚊に刺されている。ただ、拷問されて痛いのは嫌なのである。

「あなたたちにも・・・きっとわかる・・・地獄の苦悶の果てに白い千羽鶴にのって天国の涅槃にたどり着いて永遠の幸福の家族の絆がいろいろあれだということを・・・」

人を支配することが何よりも好きな山賀は微笑むのだった。

「茶番はそこまでだ・・・」

馬見原刑事(遠藤憲一)は闇ルートで手に入れた拳銃で現場に乗り込む。

「今日は・・・邪魔が多いわね」

「面倒くさくなっちゃった」と大野は石油を散布して放火するのだった。

「地下から逃げる気よ」

「待て」と言われて待つ人間はいないので人に逆らわれるのが大嫌いな馬見原は即座に発砲するのだった。

致命傷を受ける殺人鬼夫妻。

しかし・・・二人はすでにUSD化していたのだった。

「私たちの生きがいを邪魔するものども・・・シロアリ様に呪われるがいい」

怨みのこもった眼差しを一同に向けた山賀は炎の中に消える。

椎原刑事は熱いのが嫌なので追わなかった。

指名手配された殺人鬼夫妻だったが・・・復活するとお互いの顔に整形手術を行い、行方をくらますのだった。

油井殺害現場でUSDゾンビ化した冬島綾女(水野美紀)は息子もUSDゾンビ化する。

未練がましく冬島母子につきまとう馬見原だったが・・・「別の場所でもっといい相手と再婚したい」と綾女は拒絶する。

仕方なく場末のゲームセンターから妻の病院に戻ると馬見原夫人は退院するところだった。

「今さら・・・なにしにきたの・・・」

石倉真弓(篠田麻里子)は不実な父をなじる。

「やりなおしたい」

「私も・・・」

「ええええええ」

「夫婦喧嘩は犬も食わないってやつだよ」と真弓の夫は囁くのだった。

とにかく・・・嫁の両親とはあまり関わりたくない真弓の夫である。

だって、面倒くさいからな。

放置されていた清岡美歩(山口紗弥加)はとっとと別の男に乗り換えたのだった。

当然である。

駒田幸一(岡田浩暉)の葬儀に姿を見せる氷﨑。

駒田玲子(信太真妃)は闇ルートで入手した拳銃で氷崎を撃ち抜く。

「親父の仇じゃ・・・思い知ったか・・・ボケ」

「ごめん・・・私・・・不死身になっちゃったの・・・気のすむまで撃ちなさい」

「ちっ」

不死身人間・氷﨑と不死身人間・巣藤はラーメンをすする。

「結局・・・ラーメンか」

「変な、餃子ロボットが出てこないだけでもマシなのよ」

「原作ありだからな」

「原作ありだもの・・・」

暑い夏が終ろうとしている。しかし、不死身となった蚊にシーズン・オフはないのだ。

このスタッフたちが次はどんなUSDなダメドラマを見せてくれるのか・・・楽しみである。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

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