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2014年9月28日 (日)

とらとーらとーらとら、命ある限り戦え、そして生き抜くんだ(北乃きい)

満州国の興亡に大きく関係するのが・・・太平洋戦争におけるペリリューの戦いである。

日ソ中立条約を前提に・・・満州国防衛の精鋭部隊を太平洋戦線に転用したことが・・・満州国防衛を困難にしたわけである。

昭和十二年(1937年)の盧溝橋事件を発端とする日中戦争で華北戦線に投入され転戦を重ねた第十四師団は満蒙国境のハンダガヤから昭和十九年(1944年)に太平洋のパラオに配置される。

すでに制海権は失われつつあり、師団の海上輸送も困難を極める中、第14師団主力はパラオ本島に展開する。

さらに・・・大規模飛行場のあるペリリュー島には第14師団歩兵第2連隊が分派されるのである。

そこで・・・太平洋戦争での玉砕を前提としない最初の激戦が行われることになる。

つまり・・・潔く散るのではなく・・・最後の一兵まで徹底抗戦という・・・大日本帝国陸軍の方針転換があったのである。

万歳して突撃して全滅せず・・・要塞に籠ってゲリラ戦を挑むジャップ(日本兵)に鬼畜米英(連合軍)は戦慄するのだった。

ちなみに「トラトラトラ」は真珠湾奇襲成功時の暗号電文トラ連送で「ワレ奇襲二成功セリ」であり、「とらとーらとーらとら」は芸者遊びの掛け声のひとつである。説明必要か・・・?

で、『金曜プレステージ・終戦記念スペシャルドラマ・命ある限り戦え、そして生き抜くんだ』(フジテレビ20140815PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・福本義人を見た。ペリリュー島の激戦は米国のリュパータス海兵少将率いる米第1海兵師団を壊滅させるという大戦果をあげ、太平洋戦争における日本陸軍の奮闘を物語るわけだが・・・結局、敗北した日本はそれを祝すことはできなかったわけである。頑張った人たちに頑張ったと言えないのが敗戦国の哀愁なのだな。

それが・・・米国のテレビドラマシリーズ「ザ・パシフィック」で大きくとりあげられたことで・・・日本での企画が通りやすくなったわけである。

ドキュメンタリーとしては「NHKスペシャル  狂気の戦場 ベリリュー~“忘れられた島”の記録~」(NHK総合20140813PM10~)がその詳細を伝えている。

一方、ドラマは・・・伝説の・・・芸者兵士をメインに据えた戦争ファンタジーである。

まあ・・・なんていうか・・・やらないよりやった方がいいだろう的なお粗末であるが・・・がんばったヒロインに敬意を表したいわけである。

噴煙が五百メートル上空まで噴き上げている御嶽山も御照覧あれだ。

第一次大戦でドイツが敗戦国になったことで・・・戦勝国・日本の委任統治領となったパラオ・・・以来・・・三十年・・・平穏な時が過ぎたのである。

コロール島には海軍基地がおかれ、ペリリュー島には飛行場が建設された。

軍人相手の料亭「みね屋」の女将・浜野八重子(仁科亜季子)は店をコロール一と呼ばれるまでに仕立てあげたのである。

昭和十五年(1940年)・・・「みね屋」に一人の若い芸者が流れ着く。

後に・・・ペリリューの女兵士と呼ばれる小鈴(北乃きい)・・・十七歳である。

コロールはパラオ諸島で一番の賑わいを見せている。

この世の楽園・・・青い海とサンゴ礁の島に憧れてやってきた小鈴。

たちまち・・・人気の芸妓となったが・・・その幸福は長く続かなかったのである。

昭和十六年十二月・・・日本は米英に対し宣戦を布告し・・・大東亜戦争と名付けられる戦争が平和な楽園を襲うのだった。

真珠湾の奇襲で始った太平洋での戦いは・・・昭和十七年、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦と続き、戦局は大日本帝国に厳しいものとなっていく。

空母を多数失った帝国はガダルカナルをめぐる消耗戦で航空戦力も失い、守勢に立たされる。

昭和十八年、山本五十六連合艦隊司令長官が戦死。

アッツ島守備隊の全滅から玉砕が始る。

昭和十九年、マリアナ沖海戦で惨敗した帝国は太平洋における制海権、制空権を完全に失う。

米機動部隊は二月にトラックを・・・三月にはパラオを空襲し、帝国の海軍基地は機能を喪失する。

これに対し陸軍は防衛圏の維持のために四月、第14師団をパラオに派遣したのである。

玉砕戦法を捨て、要塞構築による防衛主体の戦闘がパラオ守備隊の任務だった。

しかし、多方面作戦の可能な連合軍はパラオを素通りし、六月、サイパンに上陸を果たす。

戦略的価値を失ったパラオに・・・米ニミッツ海軍提督は手柄を求めて襲いかかり、手痛いしっぺ返しを食らうことになるのだった。

爆撃により、平穏を乱されるパラオ。

楽園に戦争がやってきたことに怒りを覚えた小鈴だった。

しかし・・・美貌の小鈴に・・・第十四師団歩兵第二連隊の伊藤正人少尉(溝端淳平)は仄かな恋慕を抱く。

だが・・・幼い頃に別れた父の面影を求める小鈴の心は・・・第十四師団歩兵第二連隊長の中川州男大佐(上川隆也)に傾いて行く。

けれど・・・内地に妻の光枝(木村多江)を残し、清廉潔白な中川大佐に・・・芸者・小鈴の思いが伝わることはない。

やがて、ペリリュー島防衛のために歩兵第二連隊はコロールから移動する。

小鈴は・・・中川大佐を慕い・・・無謀にもペリリューに渡るのだった。

すでに民間人が避退したペリリューにやってきた小鈴を伊藤少尉は追いかえそうとするが・・・もはや・・・脱出する術はなかった。

九月・・・第一海兵師団の攻撃が開始されたのである。

帝国陸軍はペリリューに鉄壁の要塞を構築しており、連合軍による空襲は効果的ではなかった。

「日本軍はどうせ万歳して突撃してくるから楽勝」と考えていた連合軍は・・・徹底したゲリラ戦法を仕掛けてくる帝国陸軍に「話が違う」と絶望したのだった。

しかし・・・消耗しても・・・交代部隊のある連合国側と・・・食糧・弾薬の補給もない帝国陸軍とでは・・・勝敗の行方は明らかだった。

徹底抗戦を続ける第二連隊と行動を共にしていた小鈴は・・・負傷兵の手当てなどで活躍したが・・・ついに・・・負傷兵を手当てする場所も失われる。

十一月・・・中川大佐は自決する。

その間際、銃手を失った銃座で・・・機関銃を構えた小鈴は最後の連射を敵に叩きこむのだった。

「とらとーらとーらとら・・・」

憎い敵を打ち倒す歓びに小鈴の心は躍る。

直後、敵の集中攻撃を浴びた小鈴は花と散るのである。

「女だったな・・・」

「女だった・・・」

「日本にも女兵士がいるのだな・・・」

「幻覚だろう・・・」

「早く・・・故郷に帰りたい」

「女とやりたいなあ」

鬼畜米英の兵士たちは囁くのだった。

もちろん・・・本当にそんな女性兵士がいたのかどうか・・・戦史は明らかにしていない。

北乃きいは「ZIP!」(日本テレビ)で総合司会中なのである。

関連するキッドのブログ→八日目の蝉

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