おのれば捨てよ、神に委ねよ、大筒をぶっぱなせと大友義鎮(岡田准一)
日本の植民地化を目指すポルトガルのキリスト教宣教師の中でもっともドス黒いとされるイエズス会司祭のガスパール・コエリョは穏健派の宣教師ヴァリニャーノの戒めを無視し、積極的にキリシタン大名の組織化に邁進したという。
そもそも黒人奴隷貿易を開始したポルトガルである。
インド洋の制海権を得るほどの海軍力を持ち、東南アジアまで支配下においていた。
東アジアに触手を伸ばしたイエズス会は日本・中国への浸透を図って行く。
すでに天正八年(1580年)には肥前の大名・大村バルトロメオ純忠(有馬晴純の次男)が長崎の統治権をイエズス会に寄進している。これは竜造寺軍との戦闘の中でポルトガル軍艦が大村を支援したためである。
そして、長崎からは土民が奴隷として輸出され始めていたのである。
その首謀者がコエリョである。
日本を統一中の秀吉には見過ごすことのできない・・・キリスト教の侵略的汚染だったわけである。
しかし、信長の軍事革命によって軍事大国と化した日本の植民地化は常識的なイエズス会穏健派には無謀と映っていたのだった。
かくて日本の領主たちとキリシタン勢力の確執は17世紀に入っても続いて行くことになる。
そうこうしていうちにポルトガル本国が没落していったのが歴史の妙と言える。
で、『軍師官兵衛・第35回』(NHK総合20140831PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は34行に増進。基本的に合戦はスルーで組織における人間関係のもつれを描いて行くというスタイルのこのドラマ。これはもう・・・「倍返しだ」の世界ですな。なんで大河ドラマでそういうことを描かなくてはならないのか・・・キッドは理解に苦しみまずが・・・これも御時勢なんでしょうなあ。キリスト教が支配する世界でキリスト教の害毒を説くのはなんでしょうが・・・少なくとも西欧列強の今に通ずる侵略的意図を描かんでどうするのか・・・と嘆息する次第でございます。それはそれとして・・・まるで死傷者なしで九州平定が終わった感じの今回。宇都宮氏の傍系・城井鎮房のイラスト大公開でお得なのでございますが・・・来週には人殺しの嫌いな主人公が息子を使って家臣ともども暗殺し、主人公が鎮房の息子を謀殺する展開と思われ・・・どんだけ仕方なさを声高く叫ぶのか・・・みものですなあ。
天正十四年(1586年)十二月、島津家久の奇襲戦法で仙石秀久らの四国勢は戸次川の戦いで壊滅。長宗我部元親の嫡子・信親、十河存保らが討ち死にする。島津軍は大友宗麟の籠る豊後・臼杵城を包囲。宗麟はポルトガル製大砲「国崩し」で城を死守する。大友家臣・佐伯惟定が遊撃戦を展開し、島津軍を撃破。島津・大友両軍は各所で戦線が停滞し、膠着状態のまま越年する。天正十五年(1687年)、正月に秀吉軍先鋒・宇喜多秀家軍九州上陸。二月、豊臣秀長が出陣。三月、豊臣秀吉出陣。愛妾となった茶々との初夜の儀を目指して秀吉の九州平定戦がちゃっちゃっと開始される。秀吉は城井朝房、前野長康、別所重宗、赤松広英、中川秀政、福島正則、丹羽長重、池田輝政、稲葉貞通、蒲生氏郷、前田利家などを従え、秀長は黒田孝高、蜂須賀家政、小早川隆景、吉川元長、毛利輝元、宇喜多秀家、加藤嘉明、九鬼嘉隆、長宗我部元親、森忠政などを率い、総勢二十万、二方向から九州を蹂躙する。秀吉軍の進撃に島津義弘と家久は合流、豊後から日向へ撤退。これを追撃した豊臣秀長軍は宮部継潤、藤堂高虎、宇喜多秀家らの連携で島津軍を翻弄、着陣した小早川・黒田勢が包囲を開始しために島津軍は崩壊し、退却を強いられ、島津忠隣、猿渡信光などが討ち取られた。主力を失った島津義久は五月、無条件降伏に追い込まれる。秀吉を九州に呼びこんだ大友宗麟は戦争終結直前、病死する。九州を平定した秀吉はポルトガル商人による奴隷売買の実態を把握、バテレン追放令を発布する。同時に秀吉は新たなる国割りを発令し、黒田家に豊前国六郡十二万石を与える。これにより黒田家は土着の宇都宮鎮房と摩擦を生じるのだった。
東海から九州に至る広大な領土を支配した秀吉にとって次なる目標は海外貿易の独占であった。
「さすがに二十万の大軍の兵糧奉行は苦労じゃったのう」
秀吉は博多の港の陣で石田三成、大谷吉継、長束正家という三人の兵糧奉行をねぎらった。
平伏する三人に秀吉は微笑む。
「大分、私腹も肥えたじゃろう」
「滅相もございませぬ」と蒼白となる長束正家・・・。
「よいよい・・・私腹を肥やすのも才覚のうちじゃ・・・合戦は儲かるからのう」
「・・・」
「次はいよいよ・・・関東じゃ・・・その前に南蛮貿易の利権を整理しておかねばなるまい」
「九州のバテレン大名に甘い汁を吸わせるわけにはまいりません」と大谷吉継。
「ふむ」
「すべての冨は殿下のものでございますれば・・・」と石田三成。
「九州一のキリシタン大友宗麟は上手く片付いたのう・・・ぐっと仕置きが楽になったわ・・・佐吉の甲賀者もなかなかやるのう・・・」
「殿の思し召しのままに・・・」
「キリシタンどもにはちとお灸をすえて・・・窓口の一本化をせねばなるまいの・・・」
「この佐吉におまかせくだされ・・・」
「いや・・・それは官兵衛にさせる・・・」
「官兵衛様に・・・」
「あやつには商人の血が流れておるからな・・・貿易の本質がわかっておるわ・・・」
「しかし・・・黒田様はキリシタン・・・」
「なんの・・・あやつは単に・・・古女房に飽きてキリシタンの女子に懸想しただけよ・・・神も仏も信じぬものが・・・キリシタンなどと嗤わせおるわ・・・」
「・・・」
「さあ・・・大坂に戻るぞ・・・茶々が待っておるからのう・・・」
秀吉は大友家から献上された大筒搭載の帆船・・・日の丸号を見上げた。
博多の海には夏の気配が漂っていた。
「殿下・・・黒田忍軍はあのままでよろしいのですか・・・」
「よい・・・親父は食えぬ奴だが・・・息子はすっかり手の内じゃ・・・息子の代になれば黒田忍びは骨抜きになるのだがや・・・」
秀吉はもう一度微笑んだ。
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