美しさは善ゆえに呪われ、醜さは罰ゆえに祝福される(広末涼子)
いよいよ、夏も終わりである。
暑さ寒さも彼岸まで・・・でございますから。
上野周辺の墓地をめぐる一日は・・・デング熱リスクのために幽かな緊張感を漂わせる。
しかし・・・どうして、沖縄をスルーして東京なんだ・・・。
2003年まで生物兵器分類だったデング熱ウイルスがそうでなくなったのは・・・威力が低いことにつきるだろう。
それでも諦めずにデング熱兵器を開発していた研究者が・・・ついに疲れ果てて・・・代々木公園あたりに・・・投棄したんだよね・・・きっと。
妄想的にはな・・・。
で、『聖女・第5回』(NHK総合20140922PM10~)脚本・大森美香、演出・水村秀雄を見た。女に狂う人や、男に狂う人は日常的な存在である。あなただけが生きがいなの・・・てなこと言われてその気になってしまう人は多いものだ。そこそこ美男美女に生まれ、まあまあの経済力を持ち、健康な心身を持っていれば「素敵な恋愛」は入手可能だが・・・多くの人にとってそれは「素敵な恋愛風」の何かなのではないかと思うことがある。それを得られずに年齢を重ね・・・ふと・・・目の前にそれらしきものが翳された時、飛び付かずにいられる人は少ないのかもしれない。ただ・・・ちょっとした純粋な愛欲を交わしただけなのに・・・それがすべてとのめり込み・・・別れ話が出ると破滅しようとする男がいれば・・・魔性の女の称号を美しい人はたやすく与えられてしまうのである。
「聖女」の製作者かもしれないフェルメールには「取り持ち女」(1656年)という作品がある。描かれているのは売春宿の情景である。男性が二人、女性が二人描かれていて・・・向かって右端の女は売春婦である。取り持ち女とは客に売春婦をあてがう・・・所謂、やり手婆である。客が売春婦に料金を直接渡さずに取り持ち女に渡すのは・・・もちろん・・・管理売春の方がリスクが少ないからである。しかし、金銭と女体というものの間にワンクッション置きたい客側の心理がないわけではない。つまり・・・擬似恋愛気分のようなものである。同じ作者だから当然だが・・・聖女と売春婦の表情は似ているような気がする。だからなんだということですが。
一審で無罪を得た基子(広末涼子)は前原弁護士(岸部一徳)の手配で記者会見に応じることになる。
ホテルの一室で心の準備をする基子は黒坂弁護士(田畑智子)からハンドクリームを借りる。
歳月が衰えさせた肉体を繕う基子の心は揺れるのだった。
そこに擬似人格・・・おそらく基子の幻想としての・・・阿川博之(浜野謙太)が現れる。
「君には相応しくない安物だね」
「仕方ないじゃない・・・ここは凌ぎ所だもの」
「しかし・・・上手く切り抜けたな」
「だって・・・すべては誤解の産物だもの」
「おやおや」
「あなただって・・・死んじゃうことはないのに」
「もう・・・終わったことだ」
「私は淋しかったよ・・・友達がいなくなって」
「友達か・・・友達以上になろうとした俺がバカだったのか」
「そりゃ・・・そうでしょ・・・私とあなたの愛はつりあわないじゃない」
「愛は天秤にかけるものなのか」
「さあ・・・どうかしらねえ」
擬似人格・阿川は消えた。
基子の病んだ心は安らぎを感じるのだった。
新人弁護士・中村晴樹(永山絢斗)は千倉泰蔵(大谷亮介)から「基子が床に火のついた煙草の吸殻を落したのを見た」という記憶を知らされ・・・心が乱れていた。
しかも・・・それを看護師として居合わせた・・・婚約者の本宮泉美(蓮佛美沙子)に聞かれてしまったのである。
「しばらく・・・誰にも言わないでくれないか」
「わかった・・・私はあなたを信じてるから・・・」
一体・・・何を信じているのか・・・複雑な気持ちの二人だった。
おそらく・・・二人の間にはそれぞれにとって都合のいい信頼が横たわっているのである。
記者会見にはゲスニックマガジン西条記者が現れた。
「聖女っていいますが・・・そういう貴方は金目当てで男と付き合っていたわけですよね」
「それはどうでしょうか」
「だって・・・お金をたくさんもらっちゃってたんでしょう」
「あなたは・・・デートの時、相手にお金を払わせない男性と・・・なるべく相手にお金を払わせようとする男性・・・どちらのタイプですか」
「えええ」
「お答えは結構です・・・もし後者だったら・・・相手の女性がきっとお金持ちなんでしょうねえ」
「ええええええ」
「私はたくさんのお金を相手の男性からいただきましたが・・・そのことで・・・相手の方から文句を言われたことはありません・・・どの方も・・・優しい方だったんだと思います」
「あなたは・・・聖女なんですか・・・それとも魔女なんですか」
「さあ・・・私は・・・ただの女だと自分では思っています」
「そこに愛がありますか」
「私にはわかりません」
前原弁護士はまとめに入るのだった。
「皆さん・・・愛を美化するのは程々にしましょうよ。愛だって所詮、欲望の一つなんですから。経済的に恵まれない人がイミテーションの宝石を恋人に贈るのと経済力のある男性が高価な宝石を贈ることの差異についてあれこれ言っても仕方ないでしょう。愛は地球を救うって言ったって募金というのは・・・お金を募るっていうことじゃないですか。愛こそがすべてでビートルズは大儲けですよ」
「・・・」
控訴によって展開される裁判で不利な材料になりかねない「千倉の記憶」について前原に相談しようとする晴樹。
しかし、言葉を選ぶうちに機会は失われる。
そして・・・「肘井基子を応援する会」に前原に招待された泉美が現れる。
激しく動揺する晴樹だった。
完全に二股かけちゃってる男の表情である。
おそらく・・・晴樹に釘をさすために・・・泉美を基子に紹介する前原だった。
「この子は・・・中村弁護士の婚約者の・・・泉美ちゃんです」
「婚約者・・・ですか」
ただ一人愛している男・・・晴樹に婚約者がいたことに激しく動揺する基子だった。
(婚約者・・・婚約者・・・婚約者・・・婚約者・・・婚約者)
心の病んだ基子は眩暈を感じるのである。
「なんだ・・・中村さんに・・・あんなに素敵な婚約者がいるなんて」
アルバイトの田中みはる(清水富美加)は呟く。
「なんだ・・・みはるちゃんは中村を狙ってたのか」
小池弁護士(田中要次)は少し落胆するのだった。
妄想的には・・・。
「婚約者キターッ!」
「あるよ」
・・・という会話になっている。
「いえ・・・私・・・基子さんは・・・中村さんのこと・・・好きなんじゃないかと思って」
「えええ・・・そんな」
話に割り込む黒坂弁護士。
「君の恋人は無職だもんなあ」
「ヒモですか」
「言いたい放題ね・・・私はね・・・こわいの・・・あの基子って女が」
「いかにも女の敵ですよね~」
「あなたも・・・ちょっと恐ろしい子かも・・・」
「いやいや~・・・そんなことないですよ~」
恐ろしい感じで気が利くみはるは・・・何故か・・・千倉に基子の携帯電話の番号を渡しているのだった。
病院の公衆電話から・・・電話をする千倉。
「基子さん・・・僕の連絡先がわからなくて困っているんじゃないですか・・・連絡ください」
留守番伝言サービスに語りかける愛欲に溺れ色惚けした夫を・・・妻の文江(中田喜子)は残念な気持ちで見つめる。
ホテルに戻った基子は晴樹からの電話を心待ちにしていたために・・・何度目かの千倉の着信に応じてしまう。
「あ・・・基子さん・・・ようやく・・・つながった」
「千倉さん・・・」
「もう・・・基子さん会いたくて会いたくて」
「意識をとりもどされてよかったです・・・一日も早いご回復をお祈りしています」
「何をいってるんだ」
「私もこの機会に・・・一人になって一からやりなおす覚悟です」
「え」
「千倉さんもご家族と幸福にお過ごしくださいますように・・・」
「基子さん・・・」
「・・・」
「あ・・・あああ・・・ああああああああ・・・俺は・・・・ああああああバカだったのかあああああ」
思わずかけよる文江。
「あなた・・・しっかりして」
「ほっといてくれ・・・俺はもう・・・死ぬ」
「あなた・・・目を覚まして」
「俺は・・・起きてる・・・俺はおしまいだ・・・このドラマに俺の居場所はないんだ」
「そんなこと言ったってもう・・・相棒の世界には戻れないんですよ・・・大河ドラマでは切腹しちゃったし」
「あああああああああ」
晴樹のちょっと鈍いところがある母親(筒井真理子)に呼び出され、中村邸を訪問する泉美。
待ち構えていたのは怪しい兄の克樹(青柳翔)だった。
その狂気が泉美を襲うが・・・克樹はレイプしたりする根性はないのだった。
「晴樹は初恋の人を救って高揚してるだろうねえ」
「初恋の人?」
「っていうか・・・初体験の相手」
「基子さんが・・・」
「傷ついたかい」
「いえ・・・晴樹さんが昔の悲しい恋をした話は聞いてましたから・・・相手が基子さんと聞いて少し驚いただけです」
「へえ・・・」
「それに・・・この前、婚約者として紹介してもらいましたし・・・」
「あの女は・・・君のこと・・・凄く嫌いだと思うぜ」
「え・・・なんでそんなことを言うんですか」
「だってさあ・・・君は太陽みたいに明るいじゃないかあ。あの女は薄暗いところにうずくまった影みたいなもんさ。僕だってさあ・・・昔は東大生だったんだあ。バカな晴樹と違ってさあ・・・陽のあたる場所にいたのさあ。だけどうちの親はバカな子が好きで晴樹は親の愛情一人占めだったんだあ。僕はさあ・・・そんな晴樹が憎くて憎くてたまらなかったんだあ」
襲われる・・・と覚悟を決めた泉美だったが・・・ひょっとすると童貞もしくは性的不能者である克樹は退散するのだった。
「ちくしょう・・・君が傷ついて苦しむ顔がみたかったのにいいいい・・・ガッカリだぜえええええ」
どうやら・・・克樹もまた心を病んでいるらしい。
しかし・・・泉美はなかなかに芯の強い子だったのである。
一方、行方をくらます基子。
晴樹との思い出の場所で「私を捜してごらんなさい」にチャレンジするのだった。
まんまと罠にはまったかのように見える晴樹。
しかし・・・黒坂弁護士を同行させている。
「後で・・・ホテルに来て・・・」
二人をまるでテレパス七瀬のように補足する泉美。
ホテルのカフェまで尾行をするのである。
タクシー捕まえてあの車を追って・・・をやったのだな。
「あのこと覚えている・・・」
「・・・」
「大人になったら・・・恋人にしてくれるんでしょう・・・」
「部屋に行きましょう・・・」
部屋まで尾行しようとした泉美だったが・・・千倉が病院の屋上から飛び降りた緊急連絡が入り足止めされるのだった。
二人きりになった基子と晴樹。
純愛という純粋な愛慾の波が押し寄せるホテルの一室。
基子は晴樹の唇を奪う。
「あなたを独占しようなんて思わない・・・婚約者がいてもいい・・・だってあなたには何もかも知られてしまっている・・・こんな女なんだもの」
「本当に・・・僕はあなたのすべてを知っているんでしょうか」
基子の愛撫を拒絶し・・・問いかける晴樹だった。
見つめ合う二人・・・。
病んだ基子の心は噛む爪を求めている。
「すべてを話せばきっと愛してくれる」
「そんなはずないでしょう」
基子の中の聖女と魔女が激しく言いあうのだった。
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