耳には届かない私の愛(蒼井優)女優なら見せなさい(長澤まさみ)パイオツナイデー(瑛太)
著しく品格に欠けるタイトルじゃないか。
まあ・・・ここまでで一番、セリフがよかったから・・・。
そうか・・・。
(なんで俺の味噌汁ジャガイモ入ってないんだよ)
(ちゃんとグルグルかきまわしてミソ)
(ジャガイモなんてよく覚えたな)
・・・手話部分じゃねーかっ。
静かなる食卓が好きだ・・・。
米粒の落ちる音が聴こえるようなか。
もやしじゃなかったっけ・・・。
それは「あまちゃん」だろう・・・。
もう一年経っちゃったんだなあ。
ユイちゃん(橋本愛)、まだ18歳なんだよな。
いや、ユイちゃんはもう二十歳越えてるだろう。
「あまちゃん」の世界ではな。
で、『若者たち2014・第10回』(フジテレビ20140917PM10~)脚本・武藤将吾、演出・中江功を見た。嵐の前の静けさではなくて・・・静寂の前のそよ風が吹く・・・佐藤家の人々・・・。佐藤旭(妻夫木聡)と梓(蒼井優)の夫婦は娘・あかり(内山陽菜)の退院が近いことに期待する。過去のエロ動画を回収した屋代多香子(長澤まさみ)は前科者の暁(瑛太)と職場恋愛中。医師の新城(吉岡秀隆)との不倫を清算したひかり(満島ひかり)は看護師として職務に励む。陽(柄本佑)と旦(野村周平)と香澄(橋本愛)の愛憎劇は途中休憩中である。しかし・・・あかりの健診をする新城の顔は曇るのだった。
「聴覚障害ですって・・・」
「耳が聴こえないんですか」
蒼ざめる旭と梓に新城は医師として告げる。
「現状では・・・聴覚刺激に対して反応がない。一過性の可能性があるが・・・持続することになるかもしれない」
「そんな・・・私が早産したから・・・」
「俺の言葉・・・聴こえてなかったのか・・・」
激しく動揺するあかりの母親と父親だった。
ひかりが兄弟に事情を話し・・・佐藤家の夕餉は沈鬱なものになるのだった。
「今夜は寿司だぞ~」
明るく振る舞う旭だったが・・・梓の表情はいつになく暗い。
人一倍、察知力のある暁はそれが気にかかる。
「兄貴が支えてやらないと・・・」
「わかってるよ・・・」
旭は警備員として働くプロレス団体に勤務時間の変更を打診する。
「娘が退院するんで・・・もう少し勤務時間を減らしてもらえませんか」
「いやあ・・・今がギリギリだからなあ・・・」
そこへ・・・ひかりから連絡がある。
「梓さんが・・・約束の時間に・・・来院しないの」
「え」
「搾乳もしなくちゃならないし・・・」
梓を捜す旭は・・・実家に戻っていることが判明する。
「ひどい母親だと思うけど・・・どうしてもこわくて病院に行けないの」
「・・・」
様々な苦難を乗り越えて未熟児の母親をしていた梓は・・・自分を見失い・・・鬱を発していた。
「悪いけど・・・しばらく・・・私に預けてください」
梓の母親・澤辺京子(余貴美子)は旭に申し出る。
「お願いします」
頼りの妻を失い・・・旭は子育ての自信を失うのだった。
まして・・・娘は聴覚障害者かもしれないのだった。
「お兄ちゃん・・・言ってたでしょう・・・子供が幸せになれるかどうかじゃない・・・親が子供を幸せにしてやるんだって・・・」
ひかりは困惑した兄を励ます。
一方、通学を再開した永原香澄は・・・かって幻視したように・・・机の中からリベンジポルノ画像を発見し、高校を早退する。
香澄に報告された陽と旦は惧れていたことが現実となった恐怖に襲われるのだった。
孤立無援の兄は・・・時間に余裕のある職を求めて・・・プロレス団体を退職するのだった。
「すみません・・・せっかく拾ってもらったのに・・・」
「お前はきっと大丈夫だ」とプロレスリング・ノアの杉浦貴は根拠なく旭を励ますのだった。
「仕事はやめた・・・」
旭の宣言に激昂する兄弟たち。
「どうすんだよ」
「仕方ないだろう・・・しばらくは日雇いで食いつないで・・・お前たちに面倒はかけない」
その言葉にきれる暁。
「表に出ろ」
「なんだよ」
「うちの父ちゃんは日本一の日雇い人夫ですって言ってもらえるのは星一徹だけなんだよ」
「・・・そんなセリフないだろう」
「再現率低め設定なんだろ・・・とにかく殴らせろ」
しかし、その前に拳を繰り出す陽。
「なんでだよ」
「え」
「なんで面倒かけないんだよ・・・」
旦もパンチを繰り出すのだった。
弟たちによる凄惨な集団リンチである・・・違うぞ。
「俺たち・・・頼りになんないかもしれないけど・・・兄弟だろう」
「・・・」
「そうだよ・・・歓びも悲しみも共有(シェア)しないと」
「嫁は共有しないぞ」
「兄貴にとって娘なら・・・俺たちには姪じゃねえか」
「・・・」
「困ったら助けあう」
「迷惑はお互い様」
「それが家族なんだろう」
「兄貴の家族は俺たちの家族だぜ」
たたみかける暁・・・。
「お前たち・・・」
「あかりの面倒は俺たちが見る・・・兄貴は仕事を探せ」
「はい・・・」
そして・・・旭は・・・サワタリ道路社長の佐渡(岩松了)を訪ねるのだった。
「お願いします」
「俺を蹴り殺そうとしたお前を雇うと思うのか」
「そこをなんとかお願いします」
「そんなにこの仕事が好きだったのか」
「辞めて・・・初めて気がつきました・・・道路作りは・・・俺のプライドの源だって」
「だめだな・・・」
「だめですか」
「制服・・・新しくなったんだよ・・・その制服じゃだめだ・・・お前、悪運強いよ・・・東京五輪とか復興支援とか・・・土木・建設業界は・・・人手不足で・・・経験者募集中なんだよ」
「・・・社長・・・」
旭の父親を殺した男は・・・人情家だった。
もちろん・・・この世界の神が拙いながらまとめに入っているのだった。
暁は頼みにくいことを多香子に頼むのだった。
「あのさ・・・」
「なによ・・・」
「いや・・・」
「いいなさいよ・・・」
多香子は「恥ずかしい画像仲間」として香澄の相談役をお願いされたのだった。
なぜか、大学構内に常設されている学生劇団「bluehall」の稽古場。
「私ね・・・陽くんと旦くんの二番目のお兄さんの彼女・・・あ・・・彼女って言っちゃった」
「シュッとしているほうのお兄さんですね」
「シュッとしてるかな」
「梯子をパクッてました」
「手癖が悪いのよね・・・リベンジポルノされたんだって・・・」
「最悪です・・・」
「私もね・・・処女喪失動画を盗撮されて脅迫されて性奴隷にされてたことがある。妊娠して堕胎するまで・・・やられまくったのよ」
「凄いじゃないですか」
「私は結局、夢もあきらめちゃった・・・」
「・・・」
「あなた・・・女優なんでしょう・・・すべてをさらけ出すのが仕事じゃない」
「少し・・・違うと思いますけど・・・これが発覚したら・・・学校も退学になるし・・・」
「でも・・・女優をしていることがバレたら・・・やはり退学なんじゃない」
「・・・」
「凄くエロい舞台だったって彼から聞いたわよ」
「えええ」
「思いきってエロ画像でチラシ作ったりして」
「そんな・・・エロを売りにするなんて」
「どんなエンターティメントだってエロを売りにしているのよ・・・このドラマだってそう」
「それを言ったらおしめえだよ・・・ですよお」
「とにかく・・・私は開き直って・・・やっちゃいましたっていう生き方もあると思うの」
「私には無理です」
「私はけしてそうしろって言ってるんじゃないの・・・あくまで考え方の一つよ」
「・・・」
「誰かを責めたって・・・何も始らないわ」
「・・・」
「私だってエロ動画を撮られたのは・・・私にも悪い所があるって思う。あなたにだってまったく落ち度がなかったわけじゃないでしょう・・・」
「・・・」
「あなたを責めてるんじゃないわよ・・・自分や誰かを責めるんじゃなくて・・・自分の今やりたいことをやってほしいって思うだけ」
「・・・」
「だって・・・裸をみられちゃったらしょうがないし、喘ぎ声を撮られちゃったらしょうがないし、耳が聞こえなかったり、目が見えなかったり、歩けなかったり、頭が悪かったり、なににしたってしょうがないじゃない・・・だってもう生まれちゃったことがしょうがないんだからさ」
とにかく題材が題材だけにどんな理論も苦しい展開である。
女優魂で乗り切った二人だった。
香澄を残し、部屋を出る多香子・・・。
「あんなことしか言えなかった」
「いや・・・最高だったよ」
暁は多香子を抱きしめようとするが・・・多香子は拒絶するのだった。
ここはトラウマなのか・・・盗撮に対する警戒心なのか・・・単なる照れなのか不詳である。
あかりのために何かしようと思った佐藤家の人々は全員、手話の教本を入手するのだった。
「気が早いんだよ」
「覚えるの大変なんだよ」
「馬鹿だからな」
「パチンコやりたいは覚えた」
「バイオツカイデーも」
「うちの姉ちゃんは」
「パイオツナイナイ」
「こらっ」
おバカな家族だった・・・。
困った時には・・・鬼畜・新城を訪ねる旭だった。
「娘の耳が不自由な時はどうしたらいいんですか」
「誰だって自分の娘がかわいい・・・自分の娘が差別されたら嫌だ・・・だから・・・差別されるかもしれない娘を持つ親は・・・差別をしないことしかできないんだよ」
「ああ・・・」
「自分の娘を親が差別してどうするんだ」
「・・・」
「俺さ・・・聾者のお楽しみ会でボランティアやるんだ・・・昔は聾者(耳の不自由な人)は唖者(言葉の不自由な人)になりがちだったので聾唖者なんて言葉もあったけど・・・最近は聴こえなくても言葉には不自由しなかったりするんだぜ・・・」
「お楽しみ会で何をするんです」
「聾者たちが合唱するんだ」
「耳が聴こえないのに・・・」
「だけど歌えるんだよ」
ひかりは梓にあかりの成長アルバム渡す。
京子は不安を抱える娘を抱きしめる。
そして・・・夫は妻を水辺のデートに誘うのだった。
「私、ひどい人間になっちゃったの」
「・・・」
「街を歩いて・・・障害者を見かけると・・・知的障害者より耳の不自由なことの方がましだとか・・・視覚障害方がもっと大変だとか・・・よからぬことばかり・・・思っちゃう」
「いいじゃないか・・・親馬鹿で・・・」
「でも・・・私のせいで・・・あかりは・・・」
「梓のせいじゃないよ・・・すべては運命だ・・・あかりが生きているだけでありがてえじゃないか」
「でも・・・あの子は他の子より・・・きっと大変なのよ」
「だったら・・・それを確かめに行こう」
夫婦は・・・聾者の子供たちのお楽しみ会に出席するのだった。
明るく楽しく歌う・・・耳の不自由な子供たち・・・。
つらいとき ひとりきりで 涙をこらえないで
世界がひとつになるまで ずっと手をつないでいよう
知っているアニメソングに気持ちが明るくなる梓・・・違うだろう。
耳が不自由な子があんなにたくさんいた。
私の娘だけじゃない。
耳の不自由な子が歌っていた。
私の娘も歌える。
娘の歌を聴いてみたい・・・と梓は思った。
梓は希望を取り戻したのだった。
手と手を握り合う夫婦だった。
(味噌汁の味付けが薄いんだよ)
(健康のためには減塩よ)
(この塩分控えめの塩ってどういうことだよ)
(塩分50%だから・・・体にいいんじゃないの)
(それって・・・塩が単に半分ってことじゃないのかよ)
(みんな、手話が上達しすぎだよ)
そこへ・・・多香子が不吉な報せを届けに来ていたのだった。
「あのさ・・・旭お兄さんが・・・私の兄さんたちに・・・この家の権利証を譲渡したでしょう・・・あれ・・・買い手がついちゃったわよ」
「ええええええええええええええええええええええええええ」
佐藤家の絶叫を残して物語は最終回へなだれ込むのだった。
関連するキッドのブログ→第9話のレビュー
| 固定リンク
コメント