父は昭和の警察官、夫は平成の高校生ってか!(柴咲コウ)
歴史なんて全部ウソなのだが・・・それを理解することはなかなかに大変である。
たとえば・・・靖国神社には本土空襲の犠牲者は祀られていない。
連合軍が東京を空襲するのはそこに戦力があるからだ。
つまり・・・敵が存在するわけである。
戦闘員と非戦闘員を帝国がいかに線引きしても・・・戦闘機を女子供が作っている以上・・・戦闘力があるわけである。
それが総力戦というものだ。
だから・・・東京大空襲の犠牲者は全員、英霊であるべきだろう。
ガダルカナルで餓死した軍人も広島の原爆投下で焼死した勤労学生も皆、英霊であるべきだ。
だから・・・靖国神社の歴史は・・・ウソなのである。
歴史は主に勝者のつくウソだが・・・敗者だってウソをつくのだ。
すなわち・・・歴史なんてすべてウソなのである。
で、『信長協奏曲・第2回』(フジテレビ20141020PM9~)原作・石井あゆみ、脚本・西田征史、演出・松山博昭を見た。基本的に時間旅行をして戻る過去は現代の歴史の延長線上にある。しかし・・・すでに現代人が過去に行ってしまったことで歴史は変わってしまっているという発想が可能である。つまり、そこはもはや「歴史上の過去」ではないわけである。けれど歴史がウソである以上、それが本当の過去なのか・・・ウソの過去なのかを判別することは時間旅行者には不可能に近いとも言える。そういうなんだかわからない過去に戻ると・・・なんだかわからなくなるのだが・・・元々、歴史に詳しくなければ何の問題もない。当たって砕けるだけなのである。
高校生のサブロー(小栗旬)がタイムスリップして織田信長になりすましたのは天文二十年(1551年)だったと言う。
しかし・・・その後は・・・年号についてスルーである。
ちなみに・・・通説では斎藤道三が子の斎藤義龍との戦いに敗れて戦死する長良川の戦いは弘治ニ年(1556年)四月の出来事である。
えーと・・・サブローが戦国時代に来てから・・・五年の歳月は・・・流れてないような気がするよね。
そして・・・信長が弟の信行を殺害したとされるのは弘治三年(1557年)である。
えーと・・・道三が死ぬ前に・・・信行死んじゃってるよね・・・。
つまり・・・この戦国時代は・・・もはや正史とは違う世界に属しているのである。
すなわち・・・これはなんとなく戦国時代のお話です。
だが・・・あまり・・・やりすぎると違和感が半端ないので・・・そうなってしまった理由が求められる。
そのひとつが・・・サブローより先に未来人が訪れて・・・もう歴史を変えてしまっているという・・・今回の展開なのだった。
そもそも信長と道三の会見は天文十八年(1549年)の出来事という説もあれば天文二十二年(1553年)という説もある。
信長の父・信秀は天文二十年に病死するので・・・その後と考えた方が・・・美濃の守護代道三と尾張下四郡の実質的支配者の信長の会見という辻褄が合うわけである。
とにかく・・・二人はこの対面が初対面なのである。
歴史にあまり詳しくないサブローは斉藤道三の名前さえ知らなかったが・・・道三の娘で信長の正室である帰蝶(柴咲コウ)や・・・織田家家臣の柴田勝家(高嶋政宏)、池田恒興(向井理)、森可成(森下能幸)、丹羽長秀(阪田マサノブ)たちに「会えば必ず斬り殺される」と脅され恐怖するのだった。
着ていく衣装に悩んだサブローは結局、正装である詰襟の学生服を選択するのだった。
通俗的には・・・うつけの信長がラフなスタイルでやってくるのを密かに観察していた道三がラフなスタイルで対面の場に現れると・・・礼装に着替えた信長が現れて道三がギャップ萌えする場面である。
しかし・・・この世界で道三は人払いをすると・・・クラシックな警察官の制服に着替えてくるのだった。
「え・・・」
「はい・・・私は・・・おまわりさんでした」
「えええ」
「君は・・・昭和何年から来たのかな?」
「昭和って・・・平成ですよ」
「へいせい・・・」
斉藤道三は・・・昭和四十七年(1972年)からやってきた未来人だったのである。
平成生まれのサブローにとって昭和はすでに歴史に属するため・・・よくわからないのだった。
「知らないかな・・・札幌オリンピックのあった年なんだけど・・・」
「さあ・・・」
「総理大臣は田中角栄でさあ・・・」
「ええと・・・」
「シンシアは・・・シンシアは知ってるよね」
「シンシア・・・」
「吉田拓郎は・・・」
「あ・・・堂本兄弟で何度か・・・」
「堂本兄弟・・・?」
22才の警察官だった道三は・・・すでに四十年間を戦国時代で過ごしているという。
「四十年・・・そんなに・・・すぐに帰れると思ったのに・・・」
「帰れないよ・・・なんで来たのかわからないのに・・・帰る方法なんて・・・まるでわからないでしょう」
「そんなあ・・・」
2014年に戻れないかもしれないと思うと目の前が暗くなるサブローだった。
道三にとっても・・・サブローがやってきた21世紀は・・・遠い未来だった。
「君・・・歴史に詳しいの」
「いや・・・全然」
「でも・・・本能寺の変は知ってるよね」
「聞いたことはあります・・・誰か死ぬんですよね」
死ぬのはお前だと言いたいのを堪える道三だった。
しかし・・・道三もまた・・・それほど歴史に詳しくはなかった。
必死に生きた結果・・・自分が蝮の道三という有名人になっていることに驚いたほどである。
一体・・・昭和の警察官がどのように・・・斉藤道三になってしまったのだろうか。
天文二十年のおよそ四十年前は永正八年(1511年)である。室町幕府の第10代将軍足利義稙が第11代将軍の足利義澄と将軍位を争い返り咲いた年だ。
正史でも道三の前半生は謎に包まれており・・・生年も明応三年(1494年)から永正元年(1504年)までと幅がある。つまり・・・永正八年には6才~16才ぐらいだったわけである。結局、何歳なんだよ。
そのために斉藤道三は・・・父・西村新左衛門尉と子・長井左近大夫の親子二代が一人の人格にまとめられている説まであるのだった。
とにかく・・・二十二歳の道三は山城国で油問屋の婿になり、松波庄五郎を名乗り、美濃国に流れてきて美濃守護土岐氏の守護代の一人である長井氏の家臣となって、西村勘九郎を名乗り、土岐氏の相続争いに介入するために土岐頼芸に接近し、上司の長井氏を殺害して長井規秀を名乗り、長井氏の本家の名跡を引き継いで斉藤利政と名乗ったのだった。
大永七年(1527年)には主君・頼芸の愛妾だった深芳野を側室にしている。
深芳野は頼芸の子を身籠っており、生まれたのが斉藤義龍である。
土岐氏の血を引く義龍を嫡男として育てた道三は着々と美濃国支配の実権を握って行く。
ちなみに深芳野は西美濃三人衆の一人、稲葉一鉄の姉とされる。
一方で天文元年(1532年)に東美濃の実力者・明智氏から正室の小見の方を迎える。天文四年頃には帰蝶が生まれるのだった。小見の方は他に龍元、龍之、長龍なども生む。
そして天文十一年(1542年)・・・道三はついに主君・頼芸を美濃国から追放するのである。
この時点で苦節三十年なのだった。
しかし、追放された土岐頼芸は・・・越前・朝倉氏や・・・信長の父・信秀を頼り、道三に合戦を仕掛ける。
天文十五年、道三は朝倉氏と和睦し、天文十七年には織田氏と和睦するために帰蝶を信長に嫁がせたのである。
ちなみに頼芸派だった相羽城主・長屋景興(鶴田忍)を討伐したのは織田氏との同盟成立後であり・・・史実としては帰蝶(平澤宏々路→赤城くれあ→柴咲コウ)が人質になっていたことは考えにくいが、長屋氏討伐が天文十四年だったという説もありあながち否定できない。
そもそも昭和の警察官が何をやったのかをあれこれ言っても始らないわけである。
道三とサブローの会見は表面上は首尾よく終わる。
しかし・・・道三(西田敏行)は・・・「信長が偽物なら・・・用はない」と呟くのだった。
尾張国に戻った信長の元に道三の嫡男・斎藤義龍(新井浩文)がやってくる。
「帰蝶は織田家と離縁させ、武田家に嫁がせる・・・拒否すれば合戦」
外交としては無茶苦茶であるが・・・昭和の警察官のやることなのである。
本来、道三にとっては織田との同盟は美濃国統一の方便であった。
また、織田家にとっては北の斉藤道三と東の今川義元という両雄の挟撃を回避する意味があったわけである。
道三の美濃支配は・・・正室の小見の方につらなる土岐氏庶流の明智氏、遠山氏などの東美濃勢力、側室の深芳野につらなる土豪の稲葉氏、氏家氏、安藤氏などの西美濃勢力の危ういバランスの上にたっており、織田との同盟はまだ解消できないのだ。
不合理な道三の申し出に茫然とする織田家一同。
サブローにいたっては事態の把握すら困難である。
しかし、帰蝶は・・・「戦国にあっては女は戦の道具・・・父の申す通りにしましょう」と自らを犠牲に織田を守る姿勢である。
帰蝶の侍女であるゆき(夏帆)は・・・帰蝶の気持ちを代弁するのだった。
「昔は・・・道三様と帰蝶様は仲睦まじい父娘だったのです。美濃の蝮と蝮の娘として・・・あえて刺々しく振る舞っているのは一種のツンデレなのでございます」
「ツンデレなのか・・・」
しかし・・・道山の暴走には隠された意図があったのだった。
帰蝶のために伊勢神宮に参拝した池田恒興は情報を持ちかえる。
「道三様は・・・徳川家康、豊臣秀吉なる武将をお探しとか・・・そんな武将は聞いたこともありませぬ・・・」
道三は娘のために・・・絶対安全な嫁ぎ先を求めていたのだった。
しかし・・・歴史の知識が浅いために・・・まだ名乗りをあげていない武将を検索していたのてある。
けれど・・・同じ未来人であるサブローには・・・道三の秘めた思いがなんとなくわかるのだった。
「すべては・・・可愛い娘のためか・・・親馬鹿の極みだな・・・武田信玄は有名だもんね」
さて・・・尾張の東では・・・駿河・遠江・三河三ヶ国の領主・今川義元と甲斐国の武田信玄、相模国の北条氏康が軍事同盟を締結していた。武田は信濃国の支配をめぐり上杉家と対立し、北条は関東制覇を目指し、今川は上洛の機会を窺っている。
今川義元(生瀬勝久)は・・・忍びの段蔵(早乙女太一)と伝次郎(山田孝之)に美濃と尾張の分断工作を命じていた。
伝次郎は斉藤義龍の陣に忍びこみ・・・謀反を唆すのだった。父が正室の子供に相続をさせるかもしれないと疑心暗鬼になっていた義龍は・・・美濃国の正統な支配者である土岐氏の血を武器に・・・簒奪者である父・道三に叛旗を翻す。かねてから道三の強引な手法に反感を持っていた美濃の豪族たちは・・・義龍の元に結集する。
道三は篭城し・・・死を覚悟した。
一方・・・サブローは道三の心を知り・・・帰蝶のために道三に味方することを決意する。
すっかり・・・帰蝶のファンとなった家臣一同は・・・サブローに賛同するのだった。
「なんと・・・婿殿が援軍とな・・・」
その時、道三の元には忍び(仁科貴)が拾ったサブローの日本史の教科書が届いていた。
そこに「長良川の戦い」の記述を見出す道三。
「おう・・・・偽物でありながら・・・教科書通りのことを・・・あやつめ・・・意外とやるのかな」
死を覚悟した道三は・・・信長と帰蝶に手紙を認めるのだった。
「さよなら・・・帰蝶・・・父親らしいことをしてやれずすまない・・・幸せになってください」
「婿殿・・・娘を頼みます・・・歴史をのりこえて」
そして・・・道三は教科書から・・・本能寺の変の記述を削除するのだった。
道三の自害の報を聞き・・・史実通りに撤退する織田軍。
尾張に戻った信長は謝罪する。
「ごめん・・・お父さんを助けられなかった」
「いいのです・・・ありがとうございました」
初めて・・・心が通うサブローと帰蝶である。
西美濃三人衆の一人・安藤守就の娘婿・竹中半兵衛重治(藤木直人)は英雄・道三の死を悼んだ。
今川義元の人質として育った松平元康(濱田岳)は・・・織田攻めが近い事を知る。
今川忍びの伝次郎は尾張潜入のために通りすがりの商人を殺し、名前を奪う。
その名は木下藤吉郎・・・。
時が天文何年なのかは不明だが・・・どうやら・・・歴史は加速しています。
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