クリスマス殺人事件か・・・ジングルベルを聞きながらまた誰かが(小西真奈美)
中国では独裁者によって「法治国家」が叫ばれているという。
しかし、自分で自分の首をしめるのは難しいことなのである。
独裁政権が人民に自由を与えることなど未来永劫できない相談なのだ。
一般的に司法と行政が分離するのがいかに困難なことか・・・。
サービスしていいことと悪いことの区別がいかに難しいことか。
正妻を追い出して愛人と暮らす男に法的制裁がないことに驚きを禁じえないわけだが・・・正妻が出るとこ出ないことにはどうしようもないのである。
司法と行政が癒着して・・・権力者に支配されたら・・・「愚かで弱いもの」には何の権利もないのである。
人と人をつなぐ愛憎の絆・・・。
美しい景色の中で醜い人間の暮らしが今日も綴られる。
で、『Nのために・第2回』(TBSテレビ20141024PM10~)原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・塚原あゆ子を見た。権力の世襲が続けば・・・そこに腐敗が生まれる。しかし、平和共存の絆も生まれるのである。支配者は支配する世界を運営する責任を持つ。しかし、それが支配されるものの幸福につながるとは限らない。支配者に反逆するためには銃をとって立ち上がる必要がある。いやいや・・・法治国家ではまず裁判所に訴えるべきだろうと言うものがあるかもしれない。しかし・・・支配者が司法や行政も支配している場合、それは寝言なのである。娘を酔っ払いドライバーに引き殺された父親が私的に動かなければ無難な決着を目指す・・・それが役人というものなのだ。警察官も火の粉が自分にふりかからなければ様子見をやめないのである。
【2014年】香川県青景島の駐在だった高野茂(三浦友和)は・・・14年前に発生したある事件の時効を目前にしていた。高野はその未解決事件に病的な執念を持っている。そのために・・・事件に関わった人間のその後を追跡しているのだった。彼らは・・・その後も別の事件に関わっていた。手掛かりを得るために・・・別の事件にも足をつっこむ高野だった。
そんな高野に第二の事件の関係者である西崎真人(小出恵介)は問いかける。
「あんたには・・・その女がいなけれりゃ・・・世界が無意味になるような・・・女がいるか。俺にとって・・・あの人がそうだったんだ。あの人が殺されて・・・殺された奴を殺した・・・それだけだよ・・・罪を償って出所した俺にはもう・・・誰かに何かを言われる理由はない」
「そんなはずはないはずだ」
高野の表情には狂気が滲み出る。
「あんたは・・・きっと・・・誰かをかばってる」
その頃・・・高野が追いかける犯人候補の一人・・・香川県青景島出身の杉下希美(榮倉奈々)は・・・洗練されたオフィスでそれなりの地位につき・・・淡々と業務をこなしている。しかし、そのスケジュール帳には西崎の出所の日が記されていた。
【2004年】クリスマスで賑わう東京。高層タワーマンション・スカイローズガーデン48階では大手商社に勤務するエリートビジネスマンの野口貴弘(徳井義実)が不倫した妻の奈央子(小西真奈美)を殺害し、奈央子の愛人の大学生・西崎真人が貴弘を殺害した。
現場には・・・貴弘の部下である安藤望(賀来賢人)・・・。
そして・・・大学生だった杉下希美・・・。
さらに・・・希美の幼馴染の成瀬慎司(窪田正孝)が居合わせていた。
【2000年】島で一番の権力者である杉下晋(光石研)が愛人の宮本由妃(柴本幸)を自宅に住まわせ、正妻の早苗(山本未來)と子供たちを追い出してから一年が過ぎ去ろうとしていた。希美の弟・洋介(葉山奨之)は本土の高校に進学し・・・音信不通である。美しいが少し知能の不足している母親を抱え・・・希美は悪夢のような日常になんとか順応していた。
女性に高等教育は必要ないという男尊女卑の信念を持つ晋は希美の大学進学への援助を拒否したために・・・希美は新聞配達で進学資金を稼ぎ、自立しようとしていた。
そんな希美を影から支えるのが・・・慎司である。
慎司は島で一番の料亭「さざなみ」の一人息子である。
島一番のお嬢様であった頃の希美にとって・・・客として訪れる店の子供は・・・主従関係で言う従者であることは言うまでもない。
しかし、お嬢様の立場を失っても慎司との間には漠然とした主従関係があった。
もちろん・・・慎司は従者としてお嬢様を愛していたが・・・身分の差が障害となってそれを口にすることができない。
一方、阿漕な父親とダメな母親の両方の血が流れる希美は苦境からの脱出に集中しているために・・・恋どころの騒ぎではないのだった。
だが・・・二人は野望ごっこの仲間でもあった。瀬戸内海の海岸で・・・辛い日常を野望の応酬で紛らわせるのである。
「新しい野望はないの・・・」
「これはおばあちゃんの口癖だったんだけど・・・結婚相手より一日でも長生きしろって」
遠回しにプロポーズする慎司だった。
しかし・・・両親が凄いことになっている希美には心が荒む野望だった。
それをなんとか自制して・・・飲み込む希美。
従者の失言を軽くスルーするのが主人としてのマナーなのである。
「いいね・・・新しい野望に加えよう・・・だけど・・・私や慎司が誰かと結婚することなんてあるのかなあ・・・」
自分と慎司が結婚相手になるとは夢にも思えない希美。
慎司は希美の手を握りたかったが従者なので無理なのである。
そんな希美を本土へのデートに誘いだす慎司だった。
奨学金を受けようとする希美だったが・・・娘の進学を望まない父親が高額所得者であることがネックだったのである。
本土で東京進学のための資料を検出した二人は残された時間で「かき揚げうどん」を食べる。
「香川県だからね」
「香川県だもんね」
つかのまの幸福な時間。
疲れた希美は従者の肩に持たれて眠る。
主人による肩枕させてあげるサービスだった。
従者は狂喜した。
しかし・・・島に戻った希美は狂った母親がカードでものすごい浪費をしていることを発見する。
「希美ちゃん・・・怒らないでね」
「お母さん・・・カードはどこ」
「怒らないで・・・これは生きていくために大切なことなの」
家探しをした希美はカードを発見し、燃やすのだった。
「ごめんね・・・だめだって・・・お母さんにもわかってるけど・・・やはり・・・私、あの家に帰る」
狂乱した母親を宥めるしかない希美だった。
購入した商品は返品できず・・・せっかく貯蓄した学資は泡と消えるのだった。
なんとか・・・援助を乞うために生まれた家を訪ねる希美。
「まあ・・・大変ね・・・お母さん大丈夫・・・夜中中泣きわめいて・・・大変だって噂になってるらしいけど」と父親の愛人。
父親は・・・。
「お前・・・大学に進学する気らしいな。いいぞ・・・母親を捨てて自分のことだけ考える・・・そういう奴が俺は好きだな。しかし・・・金は出さん。この女を見ろ。島の人間はみんなこの女が金目当てで俺とつきあってると思ってる。だけどな・・・この女はすげえ金持ちなんだよ。何件も店を持っているんだ。この女は好きで俺と一緒にいるんだ。こいつはな・・・中卒なんだよ。金を稼ぐのに大学なんか行く必要はない」
「建築関係の大学に進んで・・・家の仕事を手伝おうかと・・・」
「ハハハ・・・心にもないことを言うようになったな・・・いいぞ・・・お前がただここから逃げ出したいだけなのはわかってる・・・そうしたけりゃ・・・自分でなんとかしろよ・・・ヒヒヒ」
希美の中に憤怒、絶望、悲哀が入り混じる。
それは・・・高校の慎司の後ろの席でシャープペンのノックの音に変わるのだった。
「タ・ス・ケ・テ」
カチ・カチ・カチ・カチ・・・。
「それは・・・どういう意味・・・」
しかし・・・希美は答えない。
慎司は友人に問う・・・四文字ってなんだ。
「ダイスキじやねえの」
自暴自棄になった希美は・・・オイルを購入するのだった。
夜更けに生まれた家に放火しようとする希美。
しかし・・・慎司はそれを探知していた。
「やめてください」
「とめないで・・・」
「だめだよ・・・」
「こんな家・・・戻れないなら・・・ない方がいい」
「だからといって・・・こんなことしたって」
「あなたには・・・私の気持ちなんか・・・分らない」
「わかるさ・・・俺の家だって人手に渡るんだ」
「・・・」
「わかった・・・俺が火をつける」
「え」
「君を犯罪者にするくらいなら・・・俺がなる」
「わかった・・・もうやめて」
泣き崩れる希美。
その背中に手を伸ばすが・・・従者なので無理なのである。
「さざなみ」が経営不振に陥り・・・他人に頭を下げないことがポリシーの夫・周平(モロ師岡)に代わり奔走した慎司の母親・瑞穂(美保純)が疲れ果て離婚を決意していた。
母親が島を出て行った日・・・人手に渡る店の中で一人になった慎司は・・・希美からとりあげたオイルに手を伸ばす。
父親は買い物に行くと言って家を出た。
放火の場面はない。
可能性としては・・・放火は何故か火にまかれた父親にも為し得る。
しかし・・・「さざなみ」の火災を目撃した希美は・・・慎司の仕業だと思いこんだようだ。
その時・・・慎司と一緒にいたと駐在の高野たちに偽証をする希美。
希美は慎司に「ありがとう」と囁くのだった。
この時・・・慎司は偽証をする希美に戸惑いを感じる。
もしも・・・慎司が放火犯人ではないとしたら・・・慎司は・・・希美を疑うことになるのだ。
真犯人を秘しお茶の間を惑わせながら・・・火事は鎮火する。
子供のない高野の妻・夏恵(原日出子)は・・・火の中に・・・我が子のような慎司がいるかもしれないと・・・あるいは慎司の父親と不適切な関係があった可能性もあるが・・・火中に飛び込み・・・。
生死の境を彷徨うのだった。
偽証がばれることを恐れる希美は・・・慎司に絶交を宣言する。
「いままで一緒におってくれてありがとう」
その希美の反応から・・・慎司が放火犯人だとしたら感謝を・・・放火犯でないとしたら疑念を抱くわけだが・・・真相は隠されるのだった。
「なんで・・・そんなこと言うん・・・」
とにかく・・・高野が・・・この事件の真相に拘る理由は・・・このあたりにあるのだろう。
もつれた糸は・・・さらにもつれていくからである
【2014年】高野の妻は生存していた。しかし・・・後遺症で声を失っていたのである。
高野が未だに事件の真相にこだわっていることを・・・何故か案ずる面持ちの妻の夏恵。
場合によっては・・・夏恵と周平は不倫関係にあったかもしれない。
ともかく・・・周平が慎司が捨てたオイルで焼身自殺していたとしたら・・・。
慎司がやったと思いこんでいる希美と・・・。
希美がやったかもしれないと疑う慎司で・・・最悪の展開ということになる。
ともかく・・・その謎を解くためには第二の事件の謎を解く必要があった。
高野は・・・貴弘が死んだために・・・出世街道を昇ったらしい・・・安藤望に面会するのだった。
「西崎はNのためにやった・・・って言ってるんですよ・・・それが亡くなった奈央子さんのことだと・・・」
「なるほど・・・僕にとってのNは・・・違いますけどね・・・」
「それは誰なんですか」
「杉下希美ですよ・・・好きだったんです」
「・・・」
希美は・・・望からのメールを受け取る。
(帰国した・・・会いたい)
そのメールを削除しようとした希美は追伸に同様する。
(高野って男が尋ねて来た)
希美は・・・突然、退職を決意するのだった。
「どうして・・・突然、そんなことを・・・」
経営者の桐野繭子(伊藤裕子)は戸惑う。
「二人で・・・二人三脚でやってきたのに・・・」
「すみません・・・」
どうやら・・・希美は・・・職を辞してでも高野には会いたくないらしい。
糸はかなり・・・もつれているのだった。
おっさん、もう、ほっといてやれよ・・・と誰もが思うのである。
そういう意味では「白夜行」・・・犯人が実は高野なら「流星の絆」だ・・・。
それはないんじゃないか。
関連するキッドのブログ→第1話のレビュー
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コメント
光石研……恐ろしいコ。
普通の小市民も似合いますが、今回のように妻と子をあっさりと捨てて独特の口の形で笑う……。似合う……。
そこには愛情の残滓のかけらも無し。絶対に情けをかけてもらえるとは思えない。冷たい。冷たすぎる。
しかし『すべてがFになる』にぶつけたのかぶつけられたのか、同シーズンにたった二つとはいえアルファベットが強烈すぎます(笑)。
投稿: 幻灯機 | 2014年10月25日 (土) 16時37分
「ドクターX」もございますけどな~。
弾丸なんかはねかえせ
ジェット機だって手づかみだ
ですな~。
そして・・・狂気の宿る光石。
狂気の宿る柴本。
狂気の宿る山本。
これは夫と妻と愛人のトリオとしては
近年まれにみるセッションですな。
全員ぶっ殺してやりたい気持ちに
お茶の間を誘導しているのではないかと
舌舐めずりいたします。
キッドには全員に愛はあると思うのですな・・・
しかし・・・それよりも
「自分が一番かわいい」が
ストレートに支配する人格。
三人は完全に同じ人格でございますよね。
自分が気持ちよければ後は知ったことじゃない的な。
機関銃をぶっ放す快感にも似ていますな。
酔いしれますな。
とにかく・・・ドクターXもありますぞ~。
投稿: キッド | 2014年10月26日 (日) 01時02分
キッドさま、またお邪魔いたします
今季は良作が多くなりそうで嬉しいかぎりです
Nozomiは慎司にとって変わらずずーっと姫だったのですね
あと少し手を伸ばして~!ともどかしいシーンの理由がやっとわかりました
ありがとうございます
高野は妻から声を奪った復讐心に燃えているんでしょうか
白夜行みたいにはならないで~~と願っています
投稿: mi-mi | 2014年10月28日 (火) 23時57分
奥寺佐渡子は救いようのない話に結構、救いを見出すタイプだと思うのでございます。
今回、流れでは・・・
Nozomiが慎司の罪を帳消しにするために
嘘をつき・・・忠実なお伴を
失ったように見え
高野は特別に大切な妻の声を奪った
二人を追及しているように見える・・・。
しかし・・・セリフの中でも・・・
場面でも・・・
慎司が放火した決定的な描写はありません。
そして・・・高野が二人を捜している理由も
示されない。
このことから・・・キッドは
「二人の誤解を解いてリセットするために」
高野は二人を追いかけているのじゃないかと・・・
まあ、妄想するわけでございます。
そういう・・・優しい結末になるのでは・・・。
投稿: キッド | 2014年10月29日 (水) 04時04分