がんばれ・・・N(窪田正孝)がんばれ・・・N(榮倉奈々)
学校というのは面白いところである。
小学校や中学校では地域社会・・・たとえば、町とか村とかの延長線上の幼馴染が顔を揃える。
もちろん、例外はある。
いきなり・・・付属校に入る人も多い御時勢だ。
とにかく・・・高校になると都道府県単位で見知らぬ顔に出会うことになる。
しかも・・・受験システムによって・・・ある程度の学力による差別化が起るわけである。
幼馴染ののんびりした優劣から・・・見知らぬ者同志の実力伯仲の切磋琢磨になるわけである。
これが大学となると全国津々浦々から・・・とんでもない赤の他人が集まってくる。
その一人一人に・・・想像を絶したおいたちが隠されているわけである。
こんなに面白いことはないのである。
しかし、まあ・・・人間に興味がない人にはどうでもよかったりするわけである。
けれど・・・どうしたって・・・あの原爆の落ちた広島から来た人か・・・とかあの原爆の落ちた長崎から来た人か・・・とかあの北方領土に接する北海道から来た人か・・・とかひめゆりの塔のある沖縄から来た人か・・・などと一々面白いんだよなあ。
そして・・・そこで出会った学生によって・・・それぞれの勝手な県人像が描かれるわけである。
しかし・・・同じ大学にいる女子学生が土下座の成果でここにいるかもって想像したことはなかったなあ。
それだけでもこのドラマは評価に値するよねえ。
自分が現役の大学生だったら・・・あの子は土下座してるかも・・・あの子もひょっとしたらって妄想の翼が広がるに違いない。
広がらねえよ。
で、『Nのために・第3回』(TBSテレビ20141031PM10~)原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・塚原あゆ子を見た。成瀬周平(モロ師岡)は火事では死亡しなかったのか・・・そして・・・高野夏恵(原日出子)は心因性で声が出なかったのか・・・つまり、ある意味、だんまりなのか・・・これはもう・・・周平と夏恵は・・・そういう関係だったとしか・・・そして、放火したのは・・・周平ではなく・・・二人の関係を知った高野(三浦友和)・・・「流星の絆」かよっ。
慎司(窪田正孝)が放火したのなら・・・杉下希美(榮倉奈々)は単なる偽証である。
しかし・・・それでは事件が単純になりすぎる・・・。
慎司は希美にやったと思われたという場合・・・希美に誤解を解きたいわけだが・・・父が放火犯人であることを疑えば・・・それも難しいわけである。
もちろん・・・希美がやった可能性も・・・慎司としては捨てきれない。
その場合はアリバイ工作の共犯者ということになる。
お茶の間的には・・・待ち合わせの亭で火事を目撃した希美は・・・アリバイが成立しているわけだが・・・証言者はいないわけである。
まあ・・・もちろん・・・ここでそういうことが明らかになったら・・・話が終ってしまうからな。
なにしろ・・・第三者が放火犯人かもしれないわけである。
なぜか・・・夫に対して後ろめたい表情を見せる夏恵(原日出子)・・・。
いかにも・・・何かを隠しているようである。
「なんで・・・火なんか」
「あんたと結婚してればよかった」
「何を今さら・・・さあ、逃げんと」
「うわあ・・・・火が火が」
・・・的な。
妻が隠している秘密を追いかけて・・・十数年・・・高野が本当に知りたいのは・・・真実ではなくて・・・妻の自分への偽りのない愛なんだな。
まあ、妄想上ではそういうことになる。
【2014年】安藤望(賀来賢人)にクリスマスイブ殺人事件について問う高野。
「僕は・・・あの日から・・・彼女とは疎遠になってるんです。僕は彼女とはただの友達でしたが・・・僕としては妻にするなら・・・杉下希美だと思っていた・・・希美が僕にとってのNだから」
「杉下希美にとってのNは誰だったんでしょうか」
「それをあなたに応える義務はありますか。大体・・・あなた、誰なんです」
「・・・」
希美の職場を突き止めた高野だったが・・・建築事務所の副社長だった希美は直前に職を辞していた。
「突然、理由もなく辞めるような子じゃないんですよ・・・何か事情をご存じないですか」
経営者の桐野繭子(伊藤裕子)に問われた高野は・・・。
「全く、心当たりがありません」
お前だ。お前じゃないか。
それにしても・・・職を辞するほど高野を拒絶するとは・・・高野、女子高校生時代の希美に悪質なセクハラでもしていたのか。
いや・・・それはないと思うぞ。
高野は希美が学生時代に住んでいたアパート「野バラ荘」の大家だった野原兼文(織本順吉)を訪ねる。
「さあ・・・どうでしたかねえ・・・いや・・・確かにそうだ・・・待てよ・・・違うかな」
妻に先立たれて二十年・・・野原の記憶は曖昧である。
結局、得るところなく帰る高野。
しかし・・・野原の家には西崎真人(小出恵介)が潜んでいた。
「あんな感じでよかったかなあ」
「うん・・・充分だよ」
「あの人誰だい」
「刑事ドラマを見すぎた元駐在さんだ」
野原は認知症を偽装していたのだった。
夫の帰りを待つ夏恵は暗鬱な表情を浮かべている。
【2004年】クリスマスで賑わう東京。高層タワーマンション・スカイローズガーデン48階では大手商社に勤務するエリートビジネスマンの野口貴弘(徳井義実)が不倫した妻の奈央子(小西真奈美)を殺害し、奈央子の愛人の大学生・西崎真人が貴弘を殺害した。
現場には・・・貴弘の部下である安藤望・・・。
そして・・・大学生だった杉下希美・・・。
さらに・・・希美の幼馴染の成瀬慎司が居合わせていた。
しかし、事件の真相は謎に包まれている。
なぜか・・・高野は・・・野口が無実ではないかと疑っているのだった。
妻が不倫しているとか・・・信じたくないのかもしれない。
それが自分の妻でなくても・・・。
【2000年】島で一番の権力者である杉下晋(光石研)は愛人の宮本由妃(柴本幸)を自宅に住まわせ、正妻の早苗(山本未來)と子供たちを追い出す。美しいが少し知能の不足している母親を抱え・・・希美は悪夢のような日常から脱出するために・・・奨学金を得て、大学に進学しようとしていた。
しかし・・・奨学金を得たのは成瀬慎司だった。
シャープペンのノックの音で「オ・メ・デ・ト・ウ」と祝福する希美。
しかし・・・自分が放火したと希美が思っていると感じている慎司にはそれが「バ・カ・ヤ・ロ・ウ」とか「ヒ・キョ・ウ・モ・ノ」とかに思えるのだった。
「さざなみ」の火災で重傷を負った周平と夏恵は順調に回復しつつあった。
しかし・・・夏恵は・・・心因性と思われる失声の症状を示す。
病床の妻に「何か面白いことあった」と問う高野・・・これは浮気されるな。
妻は仕方なく「あなたと話したいけど・・・眠たくて」と筆談に応じるのだった。
大切な妻の声が聞けなくて苛立つ高野は・・・火元の成瀬親子にからむ。
「また・・・仕事やめたんだって・・・」
「あんな・・・仕事やってられっかよ」
「気持ちは分かるけど・・・慎司も大学に行くんだし」
「・・・」
「あの火事で・・・保険金は出たのか」
「スズメの涙さ」
「慎司・・・火事のことで何か知ってるんだったら正直に言ってな」
「知っていることはみんな話しましたよ・・・俺が疑われてるみたいですけどね」
「まあ・・・夜中に自転車にのってあちこち出かけてるから・・・いろいろ言われるのよ」
「自転車にのってあちこち行ってるから・・・火が出た時に家にいなかったんじゃ」
「・・・」
「火事場にはオイルの缶があったし・・・杉下さんちの玄関先にオイルが撒かれていたこともあったんよ」
「杉下のことも疑っとるのか」
「いろいろと問題ある家の子じゃから」
「見て見ぬふりじゃなかったのかい」
「まあ・・・事件となれば話は別じゃ」
「もう・・・火事のことは忘れたい」
「しかし・・・放火犯人は捕まえんとな」
暇をもてあましてしつこい高野に顔をしかめる周平と慎司だった。
帰宅した希美を待っていたのは・・・大学の入学願書を引きちぎる母親だった。
「私を置いて島を出るような悪い子やないよねえ・・・希美ちゃんは・・・」
「お母さん、私、大学に行きたいの」
「だめよ・・・そんなお母さんを一人にするような悪い子はおしおきしないと」
希美を部屋に閉じ込める早苗。
「お母さんだって・・・希美ちゃんのためにいろいろ我慢しているんだから・・・希美ちゃんもわかってくれないとお母さん困る」
全国の理想的でない母親像首位をぶっちぎりで走る早苗である。
仕方なく部屋を片付ける希美は高松行きフェリーのチケットを発見する。
それは慎司と・・・お互いのために買いあった「島からの脱出切符」である。
「ガンバレN」と裏書きされたチケットに勇気づけられ・・・窓から脱出する希美。
担当物件の地鎮祭に出席中の父親に直訴するのだった。
周囲には大人たちが耳をそばだてる。
そこで父親に土下座する娘。
「お父さんは・・・大学卒業した人を馬鹿にして・・・憎んで・・・大学になんて娘を行かせたくないというのはよくわかります。お父さんの連れて来た人も中卒なのにお金を稼げる仕事ができてうらやましいです。だけど・・・私はバカなので大学に行きたいのです。だから・・・大学に行くお金を貸して下さい」
ものすごく世間体の悪い感じに辟易して同意する父親だった。
「お前・・・金を出すまで・・・これをやり続ける覚悟やな」
「はいっ」
「わかった・・・金は出す」
「やるわね」
「ありがとうございます」
不気味な笑顔を応酬する父と娘と父の愛人である。
【2001年】高校の卒業式も終わり、先に島を出る慎司。最後に一目・・・希美に逢いたいと願う。船着き場では高野が目を光らせている。しかし・・・思いを抑えきれなくなった伊豆の踊子じゃなかった希美は自転車を漕ぐのだった。
埠頭を渡る風の中・・・希美が叫ぶ。
「がんばれ」
慎司はフェリーの上で手を振る。
「がんばれ」
高野は慎司と希美がうらやましかった。
強い憎しみを覚えたのである。
何故なら、高野の妻はがんばれと口にしてくれないのである。
希美が島を出ていく日が来た。
「私は一人で生きていくから・・・お母さんも一人で生きてください」
「うまくいくわけない」
ありがたい餞の言葉である。
山本未來万歳っ。
そして・・・東京での希美の新生活が始った。
入学式からバイトの面接に直行する新入生の希美に・・・偶然、道を教えたのが二年生の安藤だった。
偶然は恐ろしいもので・・・安藤は希美と同じアパートの住人だった。
築六十年・・・風呂は大家と共有で月二万円の家賃。
希美に許されたギリギリの新居だった。
そこで・・・希美は大学に五年通ってまだ卒業できない・・・小説家志望の西崎真人(小出恵介)に出会う。
そして・・・運命の九月十一日がやってくる。
鳥島近海で発生した台風第15号は日本の南東海上を発達しながら北上し午前9時30分頃に暴風域を維持したまま神奈川県鎌倉市付近に上陸した。台風は東京都から茨城県へと抜け、東京の最大瞬間風速34.1m/sで暴風と大雨で首都圏の交通はマヒしたのである。
「野バラ荘」も床上浸水し、一階に住む希美と西崎は・・・二階の安藤の部屋に避難するのであった。
そして・・・三人はなんとなく仲良くなるのである。
午後10時の「NHKニュース」は中継映像で炎上する世界貿易センタービルの姿を映し出していた。「アメリカ同時多発テロ事件」の日本における最初の夜がやってきたのだった。
三人は・・・物凄い事件の展開に恐怖した。
翌日、世界が震撼する中で・・・呑気にアパートの修繕に励む三人。
大工仕事の得意な西崎と希美は意気投合し、使えない安藤は年下の希美に「安藤」と呼び捨てにされるのだった。
「野望」に燃える希美・・・。
「一つの創作」を模索する西崎・・・。
「高額所得者となりタワービルの住人」を目指す安藤・・・。
三人の青春が朽ち果てそうなアパートで始ったのである。
しかし・・・まもなく・・・アパートの取り壊し問題が起きる。
近隣に地下鉄の駅が出来ることによる地上げだった。
三人は・・・「野バラ荘」を守るために団結するのだった。
もちろん・・・野バラ荘も「N」なのだ。
どうやら・・・それが悲劇の発端となるらしい・・・。
【2014年】希美は安藤と待ち合わせをする。
「待たせてごめん」
「・・・」
「会いたかった・・・」
安藤は希美を抱きしめる。
希美の手はゆっくりと安藤の背中に・・・。
一方・・・西崎は・・・夜道を歩く慎司に電話をかけるのだった。
「やあ・・・久しぶり」
「・・・」
すべてはNのために・・・と言いたくなる今日この頃だが・・・Nはまだ闇の中にあるのだった。
関連するキッドのブログ→第2話のレビュー
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コメント
キッドさんのタイトルを読んで、また泣きそうになりました。二人の「がんばれ」は、胸に迫るものがありました。
奈々ちゃんも窪田くんも、凄く良いですねえ。思わず感情移入して、「がんばれ」って思っちゃいます。
だから高野さんにイライラするのかなあと思ってたのですが…。
そう!この人、鈍いというかずれているというか。あの病院での会話はひどかったですね〜。入院してて、声も出ない人に、そんなこと言う?と、びっくりしました。
善良なのでしょうが、痒いところに手が届かない。確かに浮気されるタイプかも…。
今のところNとごめんねが2強で、その次が選TAXIかなという感じです。今回はかなり好きなドラマが多くて、その上キッドさんのラインナップと重なっているものが多くて、余計に楽しいです。
今後は父、母、愛人の出番は減るんでしょうね。散々ムカムカした三人ですが、見ごたえありました。ちょっと寂しくもありますね。
投稿: ギボウシ | 2014年11月 2日 (日) 00時15分
オチツキレイセイシズカナヒト~ギボウシ様、いらっしゃいませ~ワクイエミダイスキ!
二人の別離はよろしゅうございましたねえ。
ああ、今夜だけは君を抱いていたいと言うこともできずに
船上の人となった慎司。
その気持ちを知ってか知らずか無心で追いかける希美。
「銀河鉄道999」も御照覧あれでございました。
主題歌の人は・・・船旅に似会う歌を歌いますな。
ふふふ・・・高野・・・。
妻も・・・夫の身を案じているだけなのかもしれませんが
何やら意味深の憂い顔・・・。
何かを隠しているのは確実ですな。
脚本家はとにかく・・・「夜行観覧車」もそうですが
痛いほど人の気持ちがわからない人の描写が抜群ですよね。
特に悪気がなくて酷いことしちゃう人物描写が上手い。
まあ・・・原作的にもそういう要素が強いわけですが。
例によって秋ドラマは必殺体制・・・。
NではないFとか
ゴロゴロ岡田ドラマとか
他にもレビューしたいドラマはあるわけですが
まあ・・・これが限度なのでございますねえ。
青景島の三人は・・・
心にのこる敵役1~3位を独占する勢いでしたな。
久しぶりにトレビアンと叫びましたぞ。
上京しての人間関係も楽しみですねえ。
すでに・・・せつない風が吹いてますよねえ。
投稿: キッド | 2014年11月 2日 (日) 02時31分