故事に曰く、鳥は貝を啄ばみ貝は嘴を挟む・・・漁夫は労せずして両者を捕らえる利ありと黒田如水(岡田准一)
その時、人々が何を思ったのか。
それは時の彼方の薄明に包まれている。
それをああだこうだ・・・妄想して楽しむのが歴史というフィクションの醍醐味なのである。
出典がどうだとか伝承がどうだとか・・・証拠のようなものがあっても所詮は人の話(フィクション)なのである。
そしてもの言えば唇は寒いものなのだ。
その中で「これが真相だ」などというのはある意味・・・おバカさんということです。
黒田如水の狙いを一言で言えば「漁夫の利」狙いということになるだろう。
AとBを戦わせて弱ったところをCが叩く。これは「戦わずして勝つ戦略」の基本中の基本なのだから。
しかし・・・「関ヶ原の戦い」に含まれる戦略は無論、これに留まらない。
そもそも・・・上杉を成敗する徳川も反乱軍を挙兵する三成も兵法三十六計の第十四計にあたる「借屍還魂」を借りて大義を創作する。どちらも・・・戦するのは「亡き秀吉公(屍)の御恩(魂)に報いるため」と主張するわけである。
また「漁夫の利」を得るためには・・・対立する二つの勢力を生みださなければならない。このためには「離間の計」を用いるのが普通である。
さらに・・・「離間した二つの勢力」を対立させるために・・・「反間の計」も多用されることになる。
それぞれの間者が・・・それぞれを疑うように仕向けていくわけである。
「徳川方に走ろうとしても正室が豊臣(秀吉)の養女ではなにかと不便でござる」
「いっそ・・・徳川(家康)の養女を正室に迎えられてはいかが」
「御意」
もちろん・・・前妻の実家の蜂須賀家では心穏やかなことではないが・・・蜂須賀家が徳川の養女をもらうのが二月、黒田が徳川の養女をもらうのが六月なので・・・いろいろとアレなのである。
「しかし・・・黒田が豊臣を見限るとはのう・・・」
「いやいや・・・蜂須賀ほど素早くはござらぬ」
「もう・・・口きかないからね」
「それはこちらのセリフ」
徳川の太平の世は・・・冷戦の連続の証明である。
だが・・・秀吉の養女も家康の養女も妻にした男として黒田長政はもっと賞賛されてもいいと思う。
それは一部お茶の間の方々がいろいろとアレなのでございます。
「明日から好きな女と暮らす」と天晴れな宣言をしたNの父親なんて袋叩きの運命ですから。
で、『軍師官兵衛・第47回』(NHK総合20141123PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はほぼ半減の26行。いろいろと定説通りの展開でしたな。「風林火山」へのオマージュともとれないこともない・・・桶狭間を今川義元に唆す山本勘助と東西挟撃を石田三成に唆す黒田如水の対比・・・そして・・・あくまで黒田家はそんなに悪じゃない的前妻後妻交代劇・・・。まあ・・・知らなかった人にとっては結構、衝撃の展開かもしれませんけれど。そして・・・豊臣政権では結構、幅をきかせていたはずの安国寺恵瓊の突然カムバック登場ぐらいですよねえ。醜態をさらすために戻ってきたのか・・・。しかし・・・待ちかねていた毛利の黒幕描き下ろしでお得でございましたな。できれば・・・吉川家と恵瓊の確執はもう少し描いてあった方が分かりやすかったと思いますけどねえ。「前田」も「上杉」もやっちゃったからいいでしょう的で「真田」は今度やりますから的な不在感・・・。まあ・・・もうすぐ終わるので・・・これはこれでいい黒田官兵衛だったと言う他ないという・・・今日この頃でございます。・・・。
豊臣政権の主軸は京の伏見城と豊臣秀頼在住の大坂城の二点にある。豊臣家老臣としての対抗馬である前田利家が死去し、反目する奉行衆の石田三成を隠居させた徳川家康は慶応四年(1599年)九月、大坂城西の丸に居を移す。この事によって豊臣政権の宰相の地位を得たと言える。この時、秀吉正室の未亡人・高台院は京に移り、実家である浅野、木下家は徳川方に組した形となった。ここで家康暗殺の陰謀が露見し、首謀者として前田家を継いだ前田利長の名が挙がる。豊臣政権における五家の老臣の内、後継となった前田家がターゲットとなったわけである。利長は織田信長の娘・永を正室とする織田・豊臣の両政権に深く関わった武将であり、秀吉に追放された高山右近(南坊)を保護する無骨者である。だが、足利・織田・豊臣の世を巧みに生きた細川家の当主で明智光秀の娘を妻とする細川忠興とは昵懇の間柄だった。忠興の仲介で家康に利長は恭順の意をしめし・・・徳川・前田は手打ちとなる。残る老臣は西の毛利輝元、北の上杉景勝、そして前田利家の娘を正室とする宇喜多秀家である。毛利を支えた小早川隆景、吉川元春はすでになく、当主は毛利元就の孫の輝元の代となっている。秀吉死後、宇喜多ではお家騒動が発生し、家臣団の分裂が起こる。家康は・・・最後の対抗馬となる上杉征伐の実行に着手する。上杉家では野心家の直江兼続が再起を図る石田三成と密謀を巡らしていた。慶応五年(1600年)四月、家康の上洛命令を無視した上杉家を成敗することが取り沙汰される。五月、直江兼続は家康に宣戦布告。六月二日、会津の上杉景勝成敗が号令される。六月六日、黒田長政は徳川家康の養女・栄姫を継室として迎える。
下総国の保科正直の居城から江戸城に迎えられた家康の姪・ねねは・・・家康の養女となり名を栄と改めた。
保科正直の父は武田の家臣で槍弾正として知られた保科正俊である。
妻に家康の異父妹・多劫姫を迎え、ねねが生まれた。
もちろん・・・ねねはくのいちである。
合戦前の急な縁組が決まり、栄姫となったねねは・・・東海道を西に下るのであった。
天下分け目の決戦を前に・・・真田家では徳川にくみする嫡男・信之と・・・石田謀反に加担する真田昌幸、信繁父子が分裂している。
信之の正室が家康の股肱の臣・本多忠勝の娘であり、昌幸の正室が石田三成の正室と姉妹、信繁の正室が三成の盟友・大谷吉継の娘という血縁による自然な流れである。
信繁の双子の弟で影武者となり真田忍軍を率いる真田幸村は昌幸の命により・・・栄姫暗殺の任を負っている。
三島の宿に集まった幸村の下忍たちは栄姫上洛の道程探査を報告する。
「江戸を発った姫駕籠は囮と判明いたしました」
「海路を選んだ忍び衆を沼津で襲撃しましたが・・・栄姫はここにあらず・・・」
「では・・・中山道が本命か・・・」
「で・・・ございましょう」
「猿飛と霧隠ならば・・・よもや討ちもらすまい」
旅芸人の一座を装った栄姫一行はすでに草津にさしかかっていた。
昼下がりの山中には霧が立ち込めている。
「これは面妖な・・・」
座長を装った武田忍びの生き残りである勘蔵が配下のものに注意を促す。
一行は十人。うち半分は踊り子の装束をした女である。
「来るぞ」
一瞬で十人は山道から姿を消した。
霧の中で忍び同志の暗闘が開始される。
勘蔵は森の中に強敵を見出す。
「猿飛か・・・」
銃声が起こり、銃撃を受けた武田忍びの一人が骸を晒す。
森に逃げれば猿飛の術中にはまり、それを避ければ狙撃の対象となる。
栄姫一行は死地に追い込まれていた。
しかし・・・栄姫は躊躇なく森に飛び込んだ。
「姫・・・」
狙撃を担当していた短筒の名手・筧重蔵は獲物が飛び込んできたのを見て引き金を引いた。
しかし・・・銃声はしない。
重蔵の前には二つの金の目が浮いている。
それが栄姫の邪眼と意識する間もなく・・・重蔵は仲間の忍びたちを乱れ撃つ。
咄嗟に銃撃を避けたのは佐助だけで・・・真田の忍びたちはそれぞれに傷を負っていた。
重蔵の背後に忍び寄った佐助が当て身で重蔵を気絶させるまで・・・同志討ちは続いた。
「ぬかったわ・・・」
才蔵も肩を撃ち抜かれている。
佐助は気絶した重蔵を見下ろし息を吐く。
生き残ったのは三人だけだった。
「逃げ足も速いぞ・・・もはや・・・気配もない」
「まだまだ・・・恐ろしい使い手というのはいるものだ」
「あんなものを嫁にするとは・・・黒田の若殿もこわいもの知らずじゃのう・・・」
「幸村様に叱られるな」
「まあ・・・仕方ないわ」
「うむ・・・邪眼のくのいちの相手など・・・命があったただけ儲けものというもの」
二人の忍びは気絶した重蔵と忍びたちの死骸を残したまま・・・森の中に消えた。
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