末永くお幸せにが裏返ると怨みます・・・あなたのこと・・・死ぬまで~だったらどうしよう。(綾瀬はるか)
この脚本家は基本的に弱い人間に優しいんだよなあ。
っていうか・・・弱い人間が好きなんだなあ。
そして・・・その描写を始めると肩に力が入りすぎるんだなあ。
今回・・・また道を踏み外しそうでヒヤヒヤしたよ。
まあ・・・主人公が力技でねじ伏せたけどな。
カレーうどん食べて歯が欠けるような人間は労わるしかないからなあ。
どうでもいい相手の痛みに敏感すぎて大切な人を傷つける。
結局、甘えたら優しくしてもらいたいってことだもんね。
甘えたい年頃ってあるからなあ。
三十路なんだけどなあ。
一人ベッドで膝をかかえられたら・・・許すしかないよねえ。
で、『きょうは会社休みます。・第5回』(日本テレビ20141112PM10~)原作・藤村真理、脚本・金子茂樹、演出・狩山俊輔を見た。地味で堅実な父親の巌(浅野和之)と夫唱婦随の母親・光代(高畑淳子)に育てられ温室育ちの箱入り娘で世間知らずの人となり三十歳の誕生日まで処女だった帝江物産横浜支社食品部デザート原料課勤務・青石花笑(綾瀬はるか)は九歳年下の大学生でバイトくんの悠斗(福士蒼汰)に処女を奪われ恋の虜になったのだが・・・結婚適齢期を遥かに過ぎていたので足が地につかない日々を送っていた。
毎日が夢みたいだし・・・そういう日常を与えてくれた悠斗は神様みたいなのである。
まあ・・・花笑から見ればかなり世慣れしている風な悠斗だが・・・実際は三年前まで高校生だったのである。
お茶の間としてはその点を忘れてはいけないんだなあ・・・。
一歩間違えて京都大学にでも入学していたら、頭のおかしいデカルチャーな先輩に革命的共産主義者同盟全国委員会の奇妙な論理によって洗脳されてしまい立派な革命戦士(テロリスト)に仕立てあげられていた可能性さえあるのだ・・・おいっ。
そしてニュース番組をみたお茶の間で・・・。
「今、平成だよな」
「21世紀だよな」
「ここは日本だよな」
などと囁かれてしまうことになります。・・・おいおいっ。
「サフィラストレーディング」の親会社が買収され・・・CEOは解任、合同事業である「イタリア物産展」への参加が中止となり、グルノーブル産のクルミの大量在庫を抱え、右往左往する帝江物産横浜支社食品部デザート原料課一同の困惑も他人事のように感じる花笑だった。
ストーカーのような元CEO朝尾(玉木宏)から解放され、ランチタイムで自由奔放にカレーうどんを食す喜びに浸る花笑だった。
その有頂天ぶりに腹を立てた神様はありえない感じで花笑の前歯をコント的ボケ顔風にへし折るのだった。
うどん屋のおばちゃん、笑いすぎである。
そして・・・花笑の両親も笑いすぎである。
人間を外見で判断してはいけないとしつけられた娘には笑いのポイントが分からない。
マモルは特に無反応だが・・・犬だからだ。
しかし・・・両親の言いつけに従い・・・駅前の評判のいい歯科医にかかる花笑だった。
すると・・・そこには実家で働く歯科衛生士の鳴前ひろ乃(古畑星夏)が待ち伏せしていたのである。
潜伏してたなあ・・・。
「ちょっと相談したいことがあるんですけど・・・」
「はい」
「青石さんて彼氏いるんですか」
「一応・・・いますけど」
「私も好きな人がいるんです・・・青石さんも知ってる人なんですけど・・・」
「ああ・・・ブッシーさん」武士沢(田口浩正)であるわけがないだろう。
「いやだあ・・・悠斗さんですよ」
「・・・」
「青石さんて・・・悠斗さんのバイト先の人なんですよね・・・だからいろいろと教えてもらおうと思って・・・」
超高層ビルから落下する花笑の魂だった。
三十年間、出会ったことのない恋のライバル登場なのである。
ドクターSなら必要以上に燃えあがるところだが・・・花笑は暗闇で背後から鋭利な刃物で刺された気分なのである。あるいはチェーンソウで脳天かち割られた・・・もういいじゃないか。
相手はピチピチ・・・花笑は地味地味である。
鮮度抜群の相手に年齢的に歯茎から時々出血する自分が勝てる気がしない花笑・・・。
将棋で言えば飛車角行金将銀将桂馬香車歩兵抜きで戦うようなものである。
初手で投了かよっ。
せっかく手に入れた夢の世界が崩壊していく音に耳をふさぐの花笑だった。
そんな花笑と・・・元CEOの関係を嫉妬していたと告白する悠斗だったが・・・花笑にはその意味は不明なのである。
だから・・・元CEOとの関係を否定することもできないのだった。
この時点で実は悠斗はものすごく傷ついています・・・なんてったって三年前まで高校生だった男ですから・・・。
そして・・・ブッシーの店で何気なくひろ乃に会ったと告げる悠斗。
ファミレスでレポートを書いていた悠斗に「忘れらんねえよ」を返しにきたひろ乃なので・・・何も疾しいことはない・・・悠斗。
しかし・・・自覚なき嫉妬で目が眩む花笑だった。
「あれ・・・疑ってるの」と感じやすい悠斗である。
「ははは・・・そりゃ・・・ひろ乃ちゃんはピチピチだから・・・」と微妙にフォローするブッシーだった。
ひろ乃には言えないが・・・悠斗には言える花笑である。
「ひろ乃さんに悠斗が好きだって告白されちゃって・・・」
「で・・・付き合ってることは・・・」
「言えなかった・・・」
「なんで・・・」
もちろん・・・悠斗だって自信がないから公にしたいのである。
一方・・・花笑は・・・自分の心がわからないから言えないのである。
言ったら・・・悠斗を奪われてしまうのでは・・・誘拐されて山に埋められてしまうのでは・・・歯医者で一服もられて裸の写真を撮られて脅迫されるのでは・・・何よりも悠斗が自分から去って夢の世界が崩壊するのでは・・・とこわくてこわくてたまらないのである。
「ま・・・相手がかわいそうだからってことだよな」とざっくりとフォローするブッシー。
「じゃ・・・俺から言うよ」
そうなると・・・まるで・・・嫌なことを悠斗におしつけたみたいで・・・結局、ひろ乃を騙し討ちしたみたいで・・・完全に自分が悪者で・・・罪悪感で自分が傷つきそうな予感を察知する花笑。
「待って・・・今度、歯医者で・・・自分で言うから・・・」
自分を追い込んでいるようで結論、先延ばしの花笑である。
どれだけ花笑が恐怖しているのか・・・さすがに判らない悠斗である。
お茶の間だってほとんどわからないわっ。
きっと・・・脚本家だけがわかっているんだな。
ヘタレの中のヘタレの気持ちが・・・。
一応、点描として・・・元CEOから加々見(千葉雄大)に乗り換えようとする恋のアタッカー大川瞳(仲里依紗)のために・・・正体不明の先輩・大城(田口淳之介)がお膳立てしてくれたのに「好きだ」と一言言えない加々見が対比として演出されています。・・・力入ってたよな。しかし、出番作りの感じは否めないけどな。・・・本筋じゃないからな。本筋をすぐに忘れる脚本家なんでドキドキするよね。
そして・・・「私、初恋なんです・・・処女なんです。彼に捧げたいんです」攻撃で・・・言わなければいけないことを言えない花笑。
じゃ・・・なんで・・・自分で言うなんて約束したんだ・・・とお茶の間の責任感の強い人に糾弾される主人公だった。
だって機内にエボラ患者がいたらCAだってパラシュートで脱出するでしょう。
まったく説得力がないぞ。
とにかく・・・自分が傷つくのも嫌だし・・・自分みたいな人が傷つくのも嫌なんだよねえ。
襲いかかるゾンビから逃れるためにダッシュで袋小路へ・・・自分で自分を追い込んでいく花笑なのである。
幼い花笑には・・・自他境界線が確立しておらず・・・自分とひろ乃の区別がつかないのである。
それはそれとして・・・ブッシーの店で悠斗と待ち合わせはする花笑だった。
「どうしても・・・言えなくて・・・」
「う~ん」
当然、ひろ乃来襲である。
「今日、悠斗が来たら運命だと思うんです」
いたたまれず脱走を試みる花笑だったが・・・悠斗が到着してしまう。
事態収集のために・・・ひろ乃に五千円渡してレモンを買ってきてもらうブッシーだった。
「言えなかったの・・・」
「どうして・・・」
「だってえ・・・」
「どんどん・・・言えなくなるよなあ・・・恋を応援すると言っておいて自分が交際してるなんてごめんね青春!みたいなこと・・・」
「誰と誰が交際してるの」
「そりゃ・・・悠斗と花笑さんが・・・」
「え・・・」
「あれ・・・レモンは・・・」
「交際してるって・・・本当なんですか・・・」
「もちろんだ・・・俺は花笑さんと交際してるし・・・肉体関係もある」
「ひどい・・・」
「あ・・・五千円・・・」
「どうして・・・言えなかったんです」
「だって・・・初恋だって言われちゃうと・・・」
「花笑さんにとって僕は大切じゃないんですか」
大切に決まっているのに・・・問われれば・・・花笑の中のいろいろなものがねじれていくのである。
「いろいろな人とお付き合いしてきた・・・悠斗さんには・・・私たちの気持ちはわからない」
禁句であるが・・・早い話・・・花笑の心の奥では・・・まだまだシュシュの怨みが渦巻いていたのだ。
女の怨みは恐ろしいものよのう・・・。
「私たちって・・・俺たちの問題でしょう・・・」
ひろ乃と比較されて混乱する悠斗だった・・・なにしろ、三年前には高校生だったのだ・・・もう、いいぞ。
「ちょっと・・・わからなくなったんで・・・距離をおきましょう」
「え」
すでに棺桶に入って埋葬される気分の花笑。
もちろん・・・このセリフは・・・いろいろな人とお付き合いしてやることはやってきた悠斗の経験からくる根拠なき自信に裏打ちされています。
キャッチ・アンド・リリース・・・しかし、いつでもキャッチできます精神である。
どんな・・・狩人なんだよ。
花笑の数少ない友達で二児の母の笹野一華 (平岩紙)は相談に応える。
「ちょっとした喧嘩ね」
「喧嘩なの・・・これって喧嘩なの」
「だって・・・相手に自分を通そうとしているわけでしょ」
「え」
「彼氏よりも恋のライバルの味方をする彼女でいいでしょうみたいな・・・」
「私の気持ちなんか・・・きっと誰にもわからないわよ」
「じゃ・・・私たちも距離をおきましょう」
「ええええええ」
「だって・・・あんたのおままごとにつきあってるほど暇じゃないし」
「いやん」
そして・・・職場で顔を合わせてもそしらぬ顔の悠斗に・・・花笑は泣きたくなるのだった。
そして・・・元CEOからのアプローチである。
「仕事で困ってる・・・手伝ってくれないか」
恋を応援してくれた人に冷たくできない花笑である。
黄昏たCEOはとってつけたような用件で夫婦ごっこデートをするために黄昏た国産車でドライブなのである。
なにしろ・・・花笑の中では三十年間ずっと・・・両親のような夫婦になるためのおままごとは続いていたのだ。
「あなた・・・こっちもおいしくってよ」と昭和の夫婦はノリノリで演じることができるのだった。
「面白かったけど・・・時代設定間違ってるぞ」と正直な感想を述べる元CEO・・・。
「ホタルノヒカリ」なら「部長のターン」であるが・・・ココでは単なる三枚目なのである。
黄昏の海岸の魔法も・・・ひろ乃からの一通のメールでたやすく解けるのだった。
「今、優斗さんと一緒です・・・悪く思わないで下さい」
「私、帰ります」
「え・・・」
居酒屋の飲み会で同席する悠斗とひろ乃。
「あ・・・車のキーが・・・なくなっちゃった」
海岸で立ち往生する花笑と元CEO・・・。
ドタバタする恋人たち・・・。
だが、恋に破れたマモル(ジェントル)はもう餌を待つしか楽しみがないのだった。
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