木綱とは家畜を樹木につないでおく拘束具にすぎない(丸山隆平)
人間はしがらみの中で生きている。
そのわずらわしさを考えれば鬱になるわけである。
しかし・・・親が子を慈しみ、子が親を慕う気持ちは麗しくもある。
我が子の寝顔を見て生きる喜びを感じるのも人。
我が子が鬱陶しくて川に蹴り落とすのも人である。
人が幸せになるためには絆を肯定した方がいいのかもしれない。
しかし・・・祖母の介護のために・・・十代から二十代まで十年間、寝起きを共にして真夜中に五回、下の世話をする孫娘の人生が本当に幸せと言えるのか・・・答えは風に吹かれるわけである。
そんな絆からはさっさと逃げだせばいいのに・・・悪魔は囁かずにはいられない。
で、『地獄先生ぬ〜べ〜・第7回』(日本テレビ20141122PM9~)原作・真倉翔・岡野剛、脚本・佐藤友治、演出・佐久間紀佳を見た。ギャラはタレントを拘束する絆である。コスト・パフォーマンスで言えば、拘束時間に対してギャラは相応する必要がある。番組での露出時間と番組制作に関して拘束される時間という問題もある。また・・・タレントの価値という問題もある。これらが複雑に絡み合うのが大人の事情である。スターがトークショーに出演した場合、収録時間は番組の倍程度、収録前後の拘束時間も含めて三倍程度が普通である。これに対し、ドラマは数倍~数十倍となる。しかし、ギャラの枠組みはそれに対応するとは限らない。もちろん・・・スターにも意志があり・・・向き不向きもある。コスパを無視してトークショーよりドラマというタレントもある。コスチューム・プレイはその凌ぎ合いの一つの手である。ずっと出演しているようで・・・本人は不在。まあ・・・がんばりましたね。
人通りの少ない夜更けの街角。
仕事に疲れたぬ~べ~こと鵺野鳴介(丸山隆平)は家路を急ぐ。
待ちうけるのは怪人・赤マント(声・明石家さんま)である。
夢魔(妖精)の一種であるために・・・妖気を感じられなかったのか・・・ぬ~べ~はまんまと魔力の虜になってしまうのである。
「青が好き・・・白が好き・・・それとも赤が好き」
呪いの問いに対して「赤」と答えたぬ~べ~はすでに・・・自身の精神世界を赤マントに支配されてしまうのだった。
帰宅して眠りの世界に落ちたぬ~べ~は赤マントの仕掛けた精神的な檻に閉じ込められてしまう。
ちなみに・・・赤マントの用意したタロットは色違いだが・・・すべて「審判」のカードである。
そして・・・どのカードを選んでも死をもたらす仕組みになっている。
本来、「審判」のカードは「神の祝福」を示す正義のカードだが・・・ここでは「死刑執行」のカードに他ならないのである。
このドラマにおける赤マントは・・・死刑執行された亡者のもののけだが・・・どうやら生前、魔術に長けていたらしい。
山伏系の霊能力者であるぬ~べ~は洋風の魔法に弱かったと思われる。
出勤時間になっても目覚めないぬ~べ~を押し掛け女房的雪女のゆきめ(知英)を案じるが見知らぬ魔術に対抗する術がないのだった。
無断欠勤したぬ~べ~を学校関係者は案じるが・・・しばらく静観することになる。
しかし・・・ぬ~べ~といろいろな意味で縁のあるまこと(知念侑李)だけはぬ~べ~の身を案じ・・・駆けつけるのだった。
夢の世界でぬ~べ~は「究極の選択」を迫られる。
ぬ~べ~の夢の世界を支配した赤マントは・・・ゆきめを死霊キャラ化して「一人しか乗れない船に乗り・・・ゆきめと律子先生の二人が溺れている時にどちらを助けるか」と問わせるのである。
「そんなの選べない」と夢の中のぬ~べ~が応じると・・・「答えない場合は不正解」で罰として死の鎌をふるう。
「赤を選んだ貴方は血まみれになって死ぬ運命って知っとるけ」
「なんだと・・・所詮、夢だろう」
「精神の死は即肉体の死というのはこういう場合のお約束やんけ」
「お約束なのか・・・」
教師の中ではただ一人・・・ぬ~べ~に恋をしてしまった高橋律子先生(桐谷美玲)も駆けつけるが一般人なので・・・為す術がない。
ぬ~べ~の胸に浮かんだ一筋の出血を見たまことは・・・妖怪マニアとして敵の正体を見たてる。
「これは・・・妖怪・赤マント・・・通称Aの仕業に違いない」
説明しよう。赤マントの怪人とは・・・幼い少女を誘拐して監禁し強姦した上で殺害するという鬼畜の怪異である。しかし・・・童守町の赤マントは・・・連続殺人犯・通称Aの死刑後の亡霊なのだった。
「夢の中で通称・Aは三回質問して・・・犠牲者が答えを間違える度に体を刻み・・・Aの文字を刻まれると・・・犠牲者は命を奪われるのです」
「なんで・・・そんなことを知ってんだ」
「そこは深くつっこまないのがお約束です」
「お約束なのか」
たまたま・・・訪問していた小豆洗いの父(上島竜兵)は即座に納得するのだった。
「どうすれば助かるの」
「僕にはどうしようもないけど・・・助けを呼んできます」
まことは助けを求めて童守寺に走る。
もちろん、和尚(マキタスポーツ)は役立たずだが、イタコ見習い・葉月いずな(山本美月)は最強の霊能力者の元へと向う。
ぬ~べ~と確執のある父親・無限界時空(高橋英樹)である。
「父親なんだから・・・助けてあげて・・・」
「そんな妖怪に取りつかれるような愚か者は・・・息子でもなんでもない」
「ひどい・・・見損なったわ」
もちろん・・・本心が違うのはお約束である。
「知っているか・・・童守高校の玉藻先生は・・・妖狐だということを・・・」
「えええ」
「妖力が必要ならば妖狐にでもすがってみるがいい・・・」
その頃、夢の世界では第二の質問の解答に失敗したぬ~べ~が第二の刻印を受けていた。
「くそ・・・こうなったら・・・もう封印してやる」
しかし・・・鬼の手は赤マントの呪力で猫の手に変換されてしまう。
「にゃんじゃこりゃあ」
「ひひひ・・・夢の世界では俺は無敵じゃ・・・」
「そんな・・・お約束・・・」
危機を察知した覇鬼(坂上忍)と美奈子先生(優香)は亜空間世界にぬ~べ~を緊急避難させる。
「絆なんて・・・所詮、戦略的互恵関係に過ぎない・・・お互いの都合のいい時だけの握手さ」
「そんなことはありません・・・傷つけあうより励まし合うのが人の生きる道です」
「他人は他人だよ・・・お前がいも喰って俺が屁をこくか」
「寅さんも健さんも・・・亡くなればみんなが悼むのです」
「だけど集団的自衛権は否定するんだろう」
「そりゃあ・・・敵の敵は味方ですから」
「敵があっての味方ってことじゃねえか」
「みんなが仲良くすればいいのです」
「幼子を殺す極悪人とも仲良くできるのか」
「そうなる前に手を差し伸べればいいのです」
「そんなに手があるもんか・・・千手観音でもあるまいし」
論争に夢中になった二人はぬ~べ~を保護することを一瞬、忘却するのだった。
たちまち・・・夢の世界に帰還するぬ~べ~だった。
恋する玉藻京介(速水もこみち)が妖狐と知ったいずなは「禁断の恋」設定に激しく萌えるのだった。
「ぬ~べ~を助けて」
「なぜ・・・私が・・・」
「だって・・・友達でしょう」
「まさか・・・私が人間に友情を感じるなんて・・・ありえない」
「見損なったわ・・・ぬ~べ~に負けたことを怨んでるのね」
「なんだと・・・」
ぬ~べ~のことなど忘れて遊んでいた他の生徒たちも・・・胸騒ぎを感じてやってくる。
夢の中のぬ~べ~は第三の質問を受けていた。
「次の犠牲者は・・・童守高校の生徒たちか・・・律子先生・・・あなたなら・・・どちらを選ぶ?」
「そんなの選べるか」
「じゃ・・・死んでもらうぜ」
だが・・・妖術で夢の世界に侵入した玉藻が立ちふさがる。
「玉藻先生・・・」
「こんな低級な悪霊に負けるなんて・・・許しませんよ」
しかし・・・夢の世界では・・赤マントは無敵なのである。
ぬ~べ~を庇って血を流す玉藻。
「玉ちゃん・・・」
「ああ・・・いつものあなたみたいなことになってしまった・・・」
友情パワーを炸裂させる二人だった。
しかし・・・何の役にも立たないのだった。
「所詮・・・人の絆など・・・無力」
死の鎌を振りかざす赤マント。
その頃・・・無限界時空は赤マントの悪霊が憑依する水晶を発見していた。
「こんなところに・・・根をはっていたか・・・」
無限界時空は霊力で赤マントの結界に綻びを生じさせる。
その間隙をついて・・・鬼の手を取り戻すぬ~べ~・・・。
「そんな・・・アホな・・・」
「アホちゃいまんねんパーでんねん・・・強制成仏!」
赤マントは地獄に堕ちた。
目覚めたぬ~べ~を絆で結ばれた関係者一同は歓喜で迎えるのだった。
「玉ちゃん・・・」
「・・・」
半妖怪と妖狐にも絆が生じていた。
「知っていますか・・・絆の別名はほだしというんです・・・」
「・・・」
「まさか・・・私がほだされるとは・・・」
「別に・・・僕は・・・玉ちゃんを木につないだりしませんよ」
「・・・」
その頃・・・お約束で・・・無限界時空の残された時間は短くなっていた。
まもなく・・・師走だからである。
さあ・・・谷間はないが裏番組の「リーガルハイ・スペシャル」を見なくては・・・。
年の暮れは殺気に満ちているからなあ・・・。
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