わが青春に悔いなしなんて負け惜しみ!(錦戸亮)
みしまるくんには中の人などいないわけだが・・・あくまでフィクションである。
ちなみにみしまるくんの相棒はかわせみくんである。
かわせみは青土鳥(そにどり)とも呼ばれる。かわせみのせみは蝉ではなく、青土(そに)の訛りであると言われる。
つまり、川の青土鳥がかわせみなのである。
青は羽根の色から名が起るわけだが・・・宝石のヒスイも連想させるわけである。
ヒスイのような鳥としてのカワセミであるのか・・・カワセミのような宝石としてのヒスイであるのか・・・意見が別れる。
風神王アイオロスの娘・アルキュオネーは海で行方不明となった夫・ケーユクスを捜索するためにカワセミに姿を変えて飛翔する。
夫はカツオドリに身を変えて海上にあった。
二人は巡り合うが陸は遠かった。
二羽の鳥は・・・仲睦まじく海の藻屑となったのである。
いい話・・・なのかよっ。
まあ・・・川鳥と海鳥じゃ・・・どちらが生存率高いかは明らかだろう。
そういう意味ではカワセミが先に力尽き・・・カツオドリはその場にとどまり後を追う。
いい話じゃないか。
まさに真のおしどり夫婦である。
ちなみにオシドリは交配シーズンごとに相手を変えます。
で、『ごめんね青春!・第6回』(TBSテレビ20141116PM9~)脚本・宮藤官九郎、演出・福田亮介を見た。「Sometimes the best gain is to lose. 」(負けるのがすごくためになることもある)と語った20世紀後半のテニス・プレーヤー・野獣ことジミー・コナーズ。ライバルには氷の男ことビョルン・ボルグ、悪童ことジョン・マッケンローなどがいる。彼らと死闘を演じたコナーズは「第一の鉄則は勝つこと、第二の鉄則は負けないことだ」とか「勝ちたいという気持ちは負けたくないという気持ちと同じだ」とか・・・勝つことに執念を燃やしている発言が目立つ。つまり・・・「負けることのも勝つためには必要だ」という話である。けして負け惜しみではないのだ。勝ってなんぼの世界の話なのである。基本、アスリートの鉄則は「敗者に語る言葉なし」なのである。死んじゃうのかよっ。
日本のお正月には欠かせない箱根駅伝ではなく・・・三島から「箱根まで駅伝」のスタートである。
男女混合駅伝のために・・・出場機会のなかった・・・聖三島女学院と駒形大学付属三島高校が合体し・・・駒形大学付属聖駿高校として・・・名門・名門駿豆西高に挑むのだった。
それというのも・・・チビクローズことサル(矢本悠馬)とサンダルこと山田・ビルケンシュトック・京子(トリンドル玲奈)のイチャイチャぶりに・・・サンダルのストーカー名門駿豆西高生(平埜生成)が猛烈な嫉妬にかられてサルを半殺しにしたことに・・・聖駿高校が憤ったからである。
私生活のいざこざをスポーツで晴らす・・・実に清々しい話なのである。
しかし・・・肝心のサルは・・・みしまるくんなので・・・駅伝には参加できないのだった。
なんじゃそりゃ・・・という気持ちを・・・原平助(錦戸亮)と蜂矢りさ(満島ひかり)に「青春なんて腑に落ちないもの」という名言でごまかされ・・・それなりに燃える気持ちで駅伝に挑む選ばれた人々だった。
第一走者はインターハイ出場経験のある女子生徒会長・中井貴子(黒島結菜)・・・愛する平助の声援を受け・・・快走・・・できないのだった。
さて・・・クドカンの脚本の基本は・・・現在に至る過去の・・・フラッシュ・バックである。
世界では・・・すべての人々は同時に存在するが・・・物語はそのダイジェストである。
現在を構成する人物の過去をすべて語ることは至難なのである。
そこで・・・ダイジェストの中に・・・省略されていた出来事を混入するのがクドカンの手なのである。
当然、それはかなりややこしく・・・ややこしいことが苦手な人は・・・脱落するしかないのだ。
そして・・・脱落しない人は選ばれし者の幸福を感じるのである。
それが・・・健全な気持ちなのかどうかはべつの話である。
「私の担任は・・・蜂矢先生ですか・・・原先生ですか」
廊下で平助に尋ねるスーパー女子校生・中井貴子の言い淀んだこと・・・それは。
中井一家の食事会に遡る。
東京に単身赴任した父親が週末帰宅しての一家団欒。
そこで・・・「お引っ越しによる転校の話」が話題となる。
「いよいよ、引っ越しね」
「え」
「何、言ってんの・・・東京行きが決まってあんなに喜んでたじゃないの」
「・・・」
その時は・・・男女共学でもなく・・・原先生にも出会ってなかったから・・・。
文化祭の前に・・・転校してしまうことをうっかり忘れていた貴子だったのである。
そのことを平助に言い淀む貴子。
「会えない時間が愛育てる自信」に欠ける貴子は・・・ヤケになって・・・カラクリ人形の海老沢(重岡大毅)の告白を承諾する勢いなのだった。
そんなアレやコレやがスーパー女子校生のメンタルを乱し・・・ペースを乱す。
「ナカイさん・・・マイペース」
平助の声援が・・・さらにナカイさんのペースを乱すのである。
どんどん、順位を下げる恋する乙女ナカイだった。気がつけば最下位である。
それでもなんとか走りきったナカイは・・・愛しい人の姿を捜すが・・・移動車にのった平助は無常にも走り去る。
ああ、無惨・・・。
第二走者は男子生徒会長の半田(鈴木貴之)・・・。
彼もまた・・・メンタルに問題を抱えていた。
りさ先生に告白したものの・・・りさから「原先生と結婚する」という衝撃の告白をされ、それを秘密にしろと脅迫され、暴露しないことを責められた上に・・・一日中「愛している」と言われていないと落ちつかない超恋愛体質の「あまりん」こと阿部あまり(森川葵)に追い詰められ・・・男子だけど乙女な村井(小関裕太)との同性愛に逃避するという激動の日々である。
とてもじゃないが・・・競技に集中できないのだった。
しかし・・・ジムの信奉者であるりさは・・・。
「勝たなきゃ意味ねえんだよ・・・チンタラ走ってたらぶっとばす」
恐怖心から逃走した半田は最下位から脱出するのだった。
第三走者はからくり人形である。
あまりんにふられ・・・失意の中・・・あてつけにナカイに告白。
転校問題に揺れるナカイがやけっぱちな感じの承諾。
しかし、半田にふられたあまりんが舞い戻り・・・気がつけば二股中である。
しかし・・・バカなので・・・この残念な感じの三角関係を・・・「モテキ」と誤解するからくり人形なのである。
これは・・・なんか・・・バンビを越えるバカの予感が・・・。
しかし・・・バカの恐ろしさで・・・快走するカラクリ人形だった。
ドンマイとは無心なりか・・・。
第四走者は・・・落ちつかない性格の神保(川栄李奈)である。
からくり人形を見染めるも・・・告白前に・・・あまりんに奪われ・・・一応、イケメンのウドの大木(竜星涼)と交際を開始するも「キス我慢選手権」の後でキスされそうな気配に幻滅し、三択のクイズ王・昭島(白洲迅)に乗り換えようとするのだが・・・。
「それは・・・無理・・・俺は遠藤が好きだから」
「え」
「三択問題って・・・正解と、ひっかけと、ありえない感じが基本なんだ」
「?」
「ありえない感じが意外と正解というのもセオリーなんだぜ」
「ひっかけが正解だってことは」
「それはない」
「ないのかよ」
「遠藤ちゃんは・・・ありえない感じだけど正解の匂いがするんだよ・・・神保ちゃんは可愛いけど絶対ひっかけだよね」
「ひっかけってなんだよっ」
乙女の怒りは爆走に転じ、聖駿高校を三位に押し上げるのだった。
ここで・・・スポーツ中継の途中ですが・・・お茶の間の様子である。
一休さんこと一平(えなりかずき)は亡き母の面影を宿す観音菩薩(森下愛子)にまたもや「不邪淫戒」を責められ発狂寸前に・・・。蝋人形じゃなくて人形焼きにされかかるところを愛妻・エレナ(中村静香)に介抱されている途中で・・・養護教諭として・・・「箱根まで駅伝」の救護班要員となっているドンマイマドンナ(坂井真紀)が箸休めリポートされているところを視聴してしまう。
「結婚ですか・・・好きな人はいます・・・あ・・・天候ですか・・・えーと・・・私の気持ちのようにどんよりしています」
道ならぬ恋の相手の姿に発情する一休は・・・バイクで走りだす。
坊さんはスクーターが似合うんだよな。
自転車は似合わないよな。
やはり・・・坊主の膝は閉じていてほしいんだよな。
尼さんなら開いてほしいのか。
罰あたりはほどほどになさいよっ。
「尼さんシリーズ」って根強い愛好家がいるよね。
何の話だよっ。
第五走者は遠藤いずみ(富山えり子)・・・。
浅田真央を思わせる集中ぶりである。
そこへ・・・アイドル的な息もたえだえ感を醸しだして神保が到着。
「神保ちゃん」
「遠藤ちゃん」
美少女と野獣の襷リレーである。
そして・・・猛ダッシュする遠藤ちゃん。
「足も早いのかよ・・・」
絶対ないけど正解を確信する昭島だった・・・。
フィニッシュは高橋尚子で決める遠藤ちゃん・・・。
第六走者はキスを我慢する必要のない大木である。
実は・・・神保にふられた大木は・・・巨乳高校生・佐久間りえ(久松郁実)、あまりん、サンダル、そして遠藤ちゃんにもふられているのだった。
イケメンなのに・・・バカが滲み出るらしい。
失うものなど何もないものは・・・爆走するのだった。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおお」なのである。
なんだかんだ・・・実力者揃いの・・・聖駿高校の選手たち・・・っていうか三島市の選手レベルが低いのか・・・。
第七(最終)走者の成田(船崎良)は二位でタスキを受け取るのだった。
思わぬ順位にプレッシャーのかかる成田は駅伝名物・故障発生である。
ああ・・・お正月が楽しみだねえ。
来年はどんな生まれたての仔ランナーが登場するのか・・・。
しかし・・・ここではお約束のドタバタ・リレーが展開する。
救護所で休む平助とみしまるくん。
みしまるくんはうっかり頭を置き忘れトイレへ。
そこで成田が故障。
無人となった救護所へ凄いスピードで40キロ近くを走破した一休とマドンナが不倫プレーに燃えて突入。
そこへ平助と成田が到着。
みしまるくんの頭に同化した一休を係員が連れ去る。
戻って来た半分、サルのみしまるくんは一休がなんとか脱皮した頭部を取り戻す。
そして・・・成田からたすきを受け取るのだった。
ゴールへ向かう・・・西高アンカーは・・・背後から迫るみしまるくんの姿に驚愕するのだった。
みしまるくんがトップでゴールし・・・歓喜のあまり・・・抱き合う三宮校長(生瀬勝久)と吉井校長(斉藤由貴)だった。合併後は・・・どっちが校長かという嵐の前の和解である。
このあと・・・吉井校長は「カバヤキ三太郎のごめんね青春!」で懺悔するのである。
聖駿高校のトップ同志が雪解けしている頃・・・。
みしまるくんは不安定な頭部を分離し・・・サルが姿を見せる。
そこへ・・・成田を背負って平助がゴールイン。
青春万歳なのだが・・・聖駿高校はいろいろな意味で失格です。
「勝利の美酒は一握りのもののために・・・敗北の果実はみんなのために」
それなりに甘酸っぱい言葉で生徒を慰めるりさ先生だった。
サトシは銭湯の天井から女湯覗いた過去がある男のようないでたちで平助を訪ねる。
「りさちゃんはいけるんじゃないか」
「りさちゃんと夜中に二人きりになっている時点で・・・お前、やっちゃう気満々じゃないか」
「嫌い嫌いは好きのうちだよ・・・」
「そんな・・・高等展開・・・意味不明だ」
「お前には幸せになってほしい・・・」
「真実を知っても・・・そう言えるのかな・・・」
「真実?」
そこへ・・・文化祭委員会に問題発生である。
優秀すぎるナカイさんのスピードにみんながついていけないのである。
「背負いすぎは・・・ダメだよ」と諭す平助。
女心を知らなすぎる男を相手に唇をかみしめるナカイだった・・・。
その頃・・・男と女のすべてを知った感じの銀ちゃんじゃなかった平太(風間杜夫)は・・・息子の不貞を感じ取るのだった。
平太に命じられ・・・一平を問いつめる平助。
「相手は・・・」
「どんまい・・・」
「何してんのお・・・」
「持国天、増長天、広目天、多聞天」
「誰が四天王の話をしろとっ」
不倫は青春の残滓である。
後ろ目痛いのは過去に罪科を感じるからである。
うしろめたさを暗喩するものは背中にすがりつくものである。
変身(メタモルフォーゼ)は殻を脱ぎ去り過去と訣別することの暗喩(メタファー)である。
うしろメタファーは微妙にメタだじゃれです。
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