露と落ち露と消えにし我が身かな浪速のことは夢のまた夢・・・と太閤秀吉(岡田准一)
「甲子夜話/松浦靜山」(1841年)の伝える豊臣秀吉の辞世。
技巧的だった秀次の辞世と比べると、その天才ぶり、自由奔放さが明らかで・・・爽やかである。
「露が生じるのは夜明け」であり、それが消えるのは「昼日中」である。
つまり・・・陽光に満ちているのである。
露もまた陽光を受けて光っているのである。
そして・・・光つつ、大地に飲み込まれ、あるいは蒸発して・・・美しい生涯を終える。
つゆ、つゆと来て・・・ゆめ、ゆめと繰り返す辺りも流行歌のリフレインのような軽さが漂っている。
それでありながら・・・「夢の中の夢」と超現実的要素まで盛り込まれているのだ。
この歌を自嘲と捉えるか、恐ろしいまでの自己陶酔と捉えるか・・・それは聞き手の感性にもよる。
豊臣秀吉はやはり・・・日本史上、稀有の存在だったことは間違いない。
秀吉がもう少し長生きして四世紀前から朝鮮半島が日本の領土になっていれば・・・みんなもっと幸せになっていたと思う。
まあ・・・そういうことも夢のまた夢なのである。
案外、明治維新は朝鮮半島から始っていたりして・・・。
なにしろ・・・征韓論の成立しない時空間になってるわけだし。
西郷さんも長生きしたんだよな・・・きっと。
あくまで・・・高い城の男のような話である。
で、『軍師官兵衛・第45回』(NHK総合20141109PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は幽かに減って24行。とにかく・・・徳川家康は元祖ダルマだったわけですな。それはそれとしてご臨終記念・太閤豊臣秀吉晩年のイラスト大公開で感涙でございます。竹中秀吉と岡田官兵衛の演技はそれなりに重厚なのですが・・・天下統一という偉大な業績の具体的な成果がほとんど描かれていないので・・・二人の苦労が水泡に帰する感じがそれほど伝わらないんですよねえ。百年以上続いた下剋上がまもなく終わり・・・二百年の停滞が今、始ろうとしている。そういう荘厳さにはやや欠けるような気がいたします。歴史上の人物も人間に過ぎないわけですが・・・それだけじゃあないだろうとも思う今日この頃でございます。
慶長二年(1597年)七月、朝鮮水軍は司令官を李舜臣から元均に交代し、巨済島沖で出撃準備中に日本水軍によって壊滅する。元均は戦死し、以後、朝鮮水軍は存在しないに等しい状態となる。黒田熊之助は母里吉太らと共に渡海中に海難にあい溺死。秀吉が年寄として頼みとした小早川隆景が病死。俗に言う五大老は秀吉生前に欠損してしまう。そこで秀吉は十人衆を選抜する。後の世に五大老と呼ばれる徳川家康(関東)、前田利家(北陸)、宇喜多秀家(近畿)、毛利輝元(中国)、上杉景勝(東北)の大大名と浅野長政、石田三成、増田長盛、長束正家、前田玄以ら秀吉側近の官僚集団である。後の世で五奉行と呼ばれる彼らは全員合わせても五大老のひとりの石高に足らず、いかにも秀吉ありきの歪な政治体制だった。十月、室町幕府15代将軍足利義昭死去。名実ともに室町時代が終焉。朝鮮半島では軍師・黒田如水がゆっくりとした前進を展開し、一年間で朝鮮半島南部をほぼ支配下に置く。慶長三年(1598年)三月、秀吉は醍醐寺に庭園を造営し、盛大な花見を挙行する。五月、秀吉は八幡明神(軍神)化を宣言。五大老に秀頼に対する起請文の提出を求める。八月、再度五大老に起請文を提出させるも直後に死亡する。これを受け、日本軍は明軍と和蟻を結び、撤退を開始する。十二月、撤退中の日本水軍を李舜臣の朝鮮水軍残党が襲撃、応戦した島津水軍の銃撃により李舜臣は戦死する。日本軍は粛々と帰国の途に就いた。死後、朝鮮半島で李舜臣が英雄として祭り上げられたことは言うまでもない。蹂躙されっぱなしだったでは朝鮮王家の面目にかかわるからである。
伏見城の北の森で・・・老忍・猿飛秀吉と戦国最強の刺客・初音が死闘を演じている頃。
南の森では・・・初音に誘導された徳川忍び衆が真田忍軍と遭遇戦を演じていた。
真田忍びと服部半蔵配下の伊賀衆が共に斬殺され・・・忍び戦が勃発してしまったのである。
真田屋敷と徳川屋敷の結界が重なっていた虚をつかれたのだった。
そして、あろうことか、服部半蔵と猿飛佐助が相対してしまったのである。
森の中に恐ろしいほどの殺気がみなぎっていた。
半蔵の放つ伊賀十字打ちの手裏剣がすべて虚空に消える。
「できる・・・」
半蔵は相手の力量を知り、戦慄した。
「よもや・・・甲賀の猿飛か・・・」
半蔵は秀吉が甲賀の猿飛の一族であることを知っていた。
そして・・・その一族に佐助という名人が生まれたことも・・・。
「甲賀者が流れて真田の忍びとなっていたのか・・・」
半蔵は得意の木の葉隠れを使うべく風上に移動しようとするが・・・敵は驚異的な移動力でそれを阻む。
「おのれ・・・」
強烈な気を感じた瞬間、半蔵の配下が割って入る。兜割の石打ちを受け、伊賀の下忍は即死する。
半蔵配下の忍びは・・・佐助めがけて殺到するが・・・森の中の佐助は無敵だった。
半蔵は仕方なく・・・撤退を開始する。
その動きを油断なく捉えた佐助は必殺の一撃を放とうとする・・・その時。
「佐助・・・待て」
「才蔵・・・伊賀者だけに・・・伊賀の頭に情けをかけるか・・・」
「太閤殿下が・・・討たれた」
「なにっ・・・」
「幸村様の命じゃ・・・退いて・・・真田屋敷を守るのじゃ・・・」
「・・・承知」
数人の忍びの骸を残し・・・夜の森は静けさを取り戻す。
もちろん・・・それは嵐の前の静謐であった。
関連するキッドのブログ→第44話のレビュー
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コメント
信長の時には桐谷美玲の亡霊を出したのに
秀吉の時にはセリフで利休も秀次も終了という
なんという扱いの差かと笑ってしまう今日この頃
後半になるにつれ描き方が粗雑になってますな
というか
官兵衛と信長と秀吉と家康を
同列の主人公のように描いてるような
そういうのは果たしてタイトルに誤りがあるのではと思えてならないのですが、どうでしょうかねぇ
でもって
黒田と福島の兜の交換もやってほしかったものですねぇ
おそらくこのお話もセリフベースで補完されてしまうのでしょうねぇ
投稿: ikasama4 | 2014年11月11日 (火) 21時55分
お疲れ様でございます。
一日一日、冬の気配が漂ってくる首都圏でございます。
だしにくらべると利休も秀次も地味だからでしょうかね。
秀次も美人のハーレムを作っていたので
一人くらい出しとけば・・・よかったのに・・・。
秀吉が信長になってしまった・・・
ということを描きたいなら・・・
こういうリフレインを絵にするべきでございますよねえ。
中盤で半兵衛の遺言があり
三成をここまで敵役として描くのであれば
そこからの道筋の違いを
もう少し丁寧に描くべきですよね。
役者の演技に頼って
ムードだけでここまで来ちゃった感じでございます。
もはや官兵衛は秀吉の軍師ではなくて
天下の首切り役人みたいな感じでございます。
官兵衛が「天下のために」と言ったら「死亡確定」ですからね。
朝鮮の役に関しては・・・
基本、隣国に気を遣いながらで
あれですが・・・官兵衛の計略成功場面を
ひとつくらいやってもらいたかった気持ちでいっぱいです。
軍師なんですからあああああああっ。
とにかく・・・関ヶ原に最後の淡い期待を抱きつつ
九州での如水・鬼神モードとか・・・ないない。
淀の方が・・・死なないので
官兵衛との最後の会話があるかどうか・・・
荒木村重の件での後日談は欲しいですからな。
できれば・・・
官兵衛には淀の方を褒めてもらいたい今日この頃でございます。
投稿: キッド | 2014年11月12日 (水) 01時37分