死んだ負け犬をラララと天使の蝶が讃える迷宮で彼の髪にドライヤーをかけました。(綾瀬はるか)
この世は灰色の迷宮である。
もちろん・・・白黒はっきりついている人たちは迷うことはない。
バカだからである。
「原発再稼働は絶対無理」と言う人も、「原発再稼働は絶対必要」と言う人も・・・基本的にはバカなのである。
しかし・・・どっちが正しいかわからない・・・という人はバカよりも性質が悪い。
平和な時空を生きて来たものたちは・・・危険な罠に弱い。
悪質な詐欺の犠牲者たちは・・・みんなバカ正直さんだ。
昼間、住居に鍵もかけずに見知らぬ人の訪問にも応答する。
発信者を確認しないで通話を開始する。
そういう人たちは運が悪ければ殺されるし、大金を失ったりもする。
だが・・・そういう人たちのあふれた社会はなんというやすらぎに満ちていたことか。
まさに・・・悪魔の天国とは灰色の迷宮にこそ存在する。
つまり・・・それは地獄なのである。
で、『きょうは会社休みます。・第6回』(日本テレビ20141119PM10~)原作・藤村真理、脚本・金子茂樹、演出・狩山俊輔を見た。他人を傷つけてしまう強い立場に不慣れな帝江物産横浜支社食品部デザート原料課勤務・青石花笑(綾瀬はるか)は歯科衛生士の鳴前ひろ乃(古畑星夏)に九歳年下の大学生でバイトくんの悠斗(福士蒼汰)と交際中であることを伝えることを躊躇したために・・・結果として悠斗の気持ちよりもひろ乃の気持ちを優先したことになる。大人ぶってはいるが三年前には高校生だった悠斗は自分が最優先でなかったことに傷つき・・・「しばらく距離を置きましょう」と花笑に伝えるのだった。花笑は一般的には当然だが個人的には思いもよらない展開に驚愕するのだった。そんな冷戦状態の途中で無防備な花笑は鹿の皮をかぶった狼の元CEO朝尾(玉木宏)とうっかりドライブしてしまう。そこへ悪女となったひろ乃から宣戦布告メールが届き、狼狽する花笑。だが・・・元CEOは黄昏の海岸で車のキーを紛失してしまったと宣言するのだった。
「そんな・・・困ります」
「困らせてすまない」
「私・・・今日はどうしても帰らないと」
「最寄り駅までタクシーを飛ばしても最終電車に間に合わない」
「どうしてくれるんですか」
「とりあえず・・・まあ、お茶でも」
最寄りの店に落ちつく二人だった。
一方、学生たちの飲み会で同席した悠斗とひろ乃。
「この後・・・二人で飲んで・・・私の処女を奪ってください」
「ストレートだね」
「私、正々堂々と戦って・・・私を選んでもらいます」
「花笑さんは・・・こういうことはしない人だ」
「・・・」
「君みたいなタイプを好きな人や・・・タイプでなくてもとりあえず処女を奪う人もいるかもしれないが・・・俺はどちらかといえば花笑さんが好きなタイプで・・・花笑さんはタイプじゃない人の処女をとりあえず奪う人はタイプじゃないと思う」
「そんなあなたを・・・私は好きになりました」
「ありがとう・・・そしてごめんね」
「わ・・・忘れらんねえよ」
お茶の間の一部愛好家を理想男子がうっとりさせている頃、花笑はフレンドリーな元CEOから恋のアドバイスを受けていた。
「彼とうまくいってないの?」
「お構いなく!」
「男って子供だからさ・・・一度口にだすとひっこみがつかないことがある。まして・・・君たちの場合・・・大人と子供が付き合ってるんだからさ・・・ちょっと折れてあげてもいいんじゃない」
「そんな・・・経験豊富な女子みたいなこと無理ですよ」
「正直の上にバカがつくのは・・・結局、正直なのかバカなのか・・・どっちだと思う」
「両方に決まってるでしょう」
「正解」
「どうして・・・私にそんなことを言うんですか」
「友達だから」
「こんなに犬猿の仲なのに?」
「私は君を猿だと思ったことはない」
「私は猿じゃありません」
「バナナが好きそうなのに」
「ムキーッ」
「さて・・・そろそろ・・・合鍵が届く頃だ・・・」
「え」
「どうしても・・・帰らないといけないんだろう・・・それとも私と忘れられない一夜を過ごすかい」
「あなたのバナナなんか死んでも食べません」
深夜に帰宅した花笑をチェックする三十路の独身女である娘をのほほんと案ずる母親の光代(高畑淳子)・・・。
相手が学生なのは心配だ。
しかし娘が未婚のままなのも心配だ。
ママの灰色の選択肢は少ないのだった。
「今日は・・・お泊まりじゃなかったの」
「ちょっと・・・」
「喧嘩でもしたの」
「うん・・・もうダメかもしれない」
「あらあら・・・まだ始ったばかりじないの」
「でも」
「パパとママも・・・付き合いだした頃はいつもケンカしていたわよ」
「パパとママが・・・」
「ケンカするほど仲がいいって言うでしょう」
「それは友達の場合でしょう」
「恋愛だって同じよ・・・そうやって段々とお互いのことが分かっていって・・・この人と一生やっていきたいって思ったら・・・結婚すればいいのよ」
「でも・・・このまま・・・仲直りできなかったら・・・」
「それがいやだったら・・・仲直りすることね」
「・・・どうやって」
「それは・・・自分で考えなさい・・・あなたはもう大人なんだから」
まだまだ子供でいたい花笑だったが成人式は十年前に済んでいるのである。
その年になってはじめて「女」としてのキャリアを積み始めたのに・・・まだ数回の実体験しかしていない花笑である。
できれば・・・さらにキャリアを積みたいのだが・・・どうしたら・・・それが可能なのか・・・申し込み方法が分からない花笑なのである。
さらに・・・花笑にとっては勝ち目のないライバル・ひろ乃がとっくに悠斗を奪い去っているのではないかと気が気ではないのだった。
そんな花笑を職場で無視する悠斗。
花笑は・・・「はじめてのデートで悠斗と獲得したクレーンゲームのアイテム・かものぬいぐるみ」を魔法の鍵ではないかと妄想するのだった。
「かものぬいぐるみ」があれば・・・「目くるめく世界への扉」がもう一度開く。
ゲーム・センターで徹夜した花笑が獲得したのは「さるのぬいぐるみ」だった・・・。
「これが・・・今の私自身・・・」
もはや・・・悠斗が別れ話を切り出すのは時間の問題と悟った花笑は・・・悠斗と二人きりになるのを避けるようになるのだった。
そんな花笑の態度に戸惑う悠斗である。
一方・・・可愛い顔をしているが・・・内面がお子様すぎる加々見(千葉雄大)は・・・自分がもてないのは顔がいけていないからだと思い悩むのだった。
先輩・大城(田口淳之介)は加々見の面倒を見るために・・・悠斗を巻き込むのだった。
「いけてるやつに童貞の気持ちはわかりませんよ」
「そんなことはありません・・・僕だって童貞時代はあったのです」
「ほら・・・バカにしてる~」
「今度は・・・思いきって壁ドンにチャレンジしろよ」
「あんなの・・・妄想の産物ですよ」
「まあ・・・本当にやってるやつがいたら・・・こわいよな」
「・・・」
それでも・・・意中の人、恋のアタッカー大川瞳(仲里依紗)に壁ドンをしてみる加々見。
「今度、僕とデートしてください」
「断る」
瞬殺である。
帝国スター全盛の世界は二枚目ではない帝国スターが二枚目を演じるために本来の二枚目が三枚目を演じるしかないという恐ろしい世界である。
一方、箱入り娘で地味に育った花笑は「世界名作劇場」的な世界に支配されているために・・・絶望的状況では愛犬・マモル(ジェントル)と「フランダースの犬」ごっこをするしかないのである。
「マモルッシュ・・・僕は疲れたよ」
「・・・」
「絵の中の天使が迎えにきたよ・・・」
「・・・」
「誰もが幸せになれるわけじゃないって真理をアニメにするなんて日本人って凄いよね・・・だから・・・ボクはもう・・・眠るしかないのさ」
しかし・・・冷暖房完備の両親の家で簡単には死なない花笑だった。
仕方なく・・・花笑としては一生分の勇気を使ってポストイットを使って「面会」を申し込むのである。
だが・・・ラブコメのお約束の取り違えで・・・約束の場所にやってはきたのは加々見だった。
「ボクに何の話ですか」
「・・・」
「ボクと花笑さんって似てますよね」
「え」
「だって・・・動物と馴染めないから・・・もう植物を育てるしかないんですよね」
「・・・」
「植物は・・・黙って枯れていきますし」
「枯らさないで・・・」
「時々・・・水をやらないで・・・放置して・・・意地悪したくなる時があります・・・実際にはできないけど」
「何もしないで・・・あきらめても・・・前に進めないよ」
「結果が分かっていても・・・ですか」
「だってラビリンスの中でじっとしていも・・・何も始らないでしょう・・・とりあえず目の前の扉が開くかどうか・・・試さないと」
「それで・・・罠だったらどうするんですか」
「扉の向こうに何が待っていたとしても・・・それは一つのステップアップでしょう」
「・・・」
もちろん・・・ステップアップが必要なのは花笑である。
花笑はありえない最後の勇気をふりしぼり・・・魔法のアイテム「悠斗の部屋の合鍵」を取り出すのだった。
「マモルッシュ・・・ボクを守って・・・」
帰宅した悠斗は・・・妖怪「暗闇キッチン正座女」にドッキリするのだった。
「花笑さん・・・」
「勝手に上がり込んでごめんなさい・・・でも・・・どうしてもお話させていただきたく・・・」
「はい」
「この間は・・・私の勝手な思いを押しつけて申し訳ありませんでした」
「僕の方こそ・・・つまらないことで怒ってごめんなさい」
「え」
「あやまろうと・・・思って・・・テラスで待ってたんですけど」
「別れ話じやなくて」
「僕は花笑さんと別れるなんて・・・考えたこともありません」
「えええ」
「花笑さんと・・・一緒に暮らそうと考えています」
「えええええええええ」
「考えてもらえませんか」
「ど・・・ど・・・ど・・・」
「同棲です」
「考えさせてもらいます」
「じゃ・・・今夜は泊っていきますか」
「はい・・・」
先にお風呂に入った花笑はまもなく脱ぐことになるパジャマの感触を楽しむ。
風呂上がりの悠斗は甘えてドライヤーで髪の毛を乾燥させてと要求するのだった。
そんなことでむふっ♥を感じる人たちはトリマーに向いています。
そして・・・加々見は瞳にもう一度チャレンジする。
「僕とデートしてください」
「・・・断る」
「・・・」に可能性を感じる加々見である。
しかし・・・その日・・・元CEOがなんとなく颯爽と社を来訪するのだった。
まあ・・・花笑には無関係だが・・・悠斗は本能的に警戒するのだった。
なにしろ・・・相手は先輩の先輩なのである。そして・・・今回は誰よりも後輩なのである。
ま・・・若いって素晴らしいからな。
「同棲時代」が似合うお年頃なんだし・・・。
関連するキッドのブログ→第5話のレビュー
| 固定リンク
コメント