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2014年12月31日 (水)

このミステリーがすごい! ベストセラー作家からの挑戦状が届いています(川口春奈)すごいのね(川島海荷)挑戦ですから(小池里奈)

さて・・・2014年の最後の記事である。

ミステリの裾野は広がってなんでもありのようでもあり・・・いつものように本格とそれ以外だったりする。

人は罪が好きだし、罰も好きである。

罪と罰のバランスも大切だ。

罪というものにこだわれば・・・罪を畏れぬ犯人に突き当たり、罰というものにこだわれば手段を選ばぬ犯人に突き当たる。

結局、ミステリは犯人探しに尽きるのである。

「犯人探しなんて虚しいからやめようじゃないか」などと・・・消失した給食費の謎を放棄してはいけないんだな。

残念なことに誰かが地球を滅ぼした時に・・・犯人探しが出来ない可能性はある。

そういう時のために・・・ミステリは片足をオカルトに突っ込んだりするのだった。

で、『このミステリーがすごい! ベストセラー作家からの挑戦状』(TBSテレビ20141229PM9~)を見た。2002年の第一回から2014年の第十三回まで続く『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作家四人の競作によるオムニバスドラマである。間奏のコントを小説家(ピース又吉)と編集者(樹木希林)が埋めて行く。アンソロジーというより、ミステリ雑誌を読んで行くような構成になっている。つまり・・・テーマ性よりもバラエティー色が強いわけである。それでもかぶる時はかぶるので・・・ある意味、意外な犯人という主題を見出すこともできるのが妙である。

ダイヤモンドダスト」・・・原作は『生存者ゼロ』で第11回の大賞を受賞した安生正。脚本・髙橋麻紀、演出・古澤健である。何と言っても「雪山遭難」ジャンルである。「雪山」じゃないだろう。いや・・・雪で遭難しそうになったらそこは山なのだ。東京のど真ん中でもか。でもだ。「ウルトラQ」なんてペギラが飛んできたら「東京氷河期」だからな。・・・もういいや。とにかく・・・異常気象で東京が大寒波に襲われ・・・凍りつくスペクタクルが展開され・・・それだけでもう・・・うっとりします。ミステリ抜きでうっとりしていたいくらいである。

中心となる登場人物は・・・都内で新店舗を出す会社員たち。やりてのタクミ(AKIRA)とグズの明神(山本耕史)は同期ながら・・・上司と部下になっている。二人は友人の体裁を繕っているが・・・明らかにタクミは明神を見下しているのだった。

明日は開店ということで・・・店舗で準備に入った二人だが・・・寒波の襲来でスケジュールは大きく狂って行く。

本社では二人の帰りを待って明神の交際相手の坂下睦美(高橋ユウ)が待機しているが・・・実は睦美は・・・密かにタクミに乗り換えているのだった。

やがて・・・東京は雪の中に埋もれ・・・新店舗の暖房装置の故障・・・さらに停電と危機的状況に発展していく。

「まったく・・・お前がノロノロしているせいで・・・とんでもないことになってきた」

「ごめん・・・でも・・・」

明神は「気象情報ツール」を見せて・・・まもなく「天候回復」が見込めることをタクミに伝えるのだった。

そして・・・二人はブリザードの吹き荒れる東京の街を・・・本社に向かって出発するのだった。

もちろん・・・本社にたどり着くのは一人だけである。

それが誰かはもう・・・おわかりですよね。

気象を凶器に使った殺人というアイディアなのだった。

もちろん・・・犯人を罰する法律はありません。

とにかく・・・年末にゴージャスな雪山遭難が見れて満足である。

凍死はしびれるからなあ。

残されたセンリツ」・・・原作は『さよならドビュッシー』で第8回大賞受賞の中山七里。脚本・髙橋麻紀(他)、演出・金子修介である。天才ピアニストである多岐川玲(とよた真帆)がリサイタルのアンコール直前に毒殺されてしまう。容疑者として浮上するのは・・・前の恋人の安住鷹久(佐藤二朗)と現在の交際相手でスポンサーの美能忠邦(長谷川初範)・・・そして・・・玲の実の娘でピアニストである多岐川真由(川口春奈)である。

捜査にあたるのは河原崎刑事(イッセー尾形)で・・・微妙に古畑任三郎風である。

ピアノしか頭にない母親の不倫関係の果てに生まれ、虐待されて育った真由には母親を殺す動機があった。

しかし・・・事件は・・・美能忠邦の経営する公害企業が絡んで意外な方向に発展して行くのだった。

そのすべてが・・・ほぼリサイタル会場だけで展開して行くという無謀な展開である。

まあ・・・川口春奈をうっとり見ていればなんとなく・・・被害者が加害者という・・・無理矢理な結末まで見ることができる。

ちなみに・・・自殺するわけではありません。

カシオペアのエンドロール」の原作は『チーム・バチスタの栄光』で第4回受賞の海堂尊。脚本・永田優子、演出・大谷健太郎である。こちらは列車「カシオペア」が舞台の密室殺人劇。前作と微妙にかぶっているが・・・脚本がベテランの分だけ・・・少し面白くなっている。殺されたのは女にだらしない映画監督(田中要次)で・・・大女優の望月ゆかり(藤原紀香)と新人女優の樫村愛菜(川島海荷)が容疑者である。他にも容疑者(いしのようこ、矢吹春奈)がいるがキャスティング上から・・・この二人のどちらかである。

探偵役は・・・加納警視正(吉田栄作)と玉村刑事(浜野謙太)で・・・またまた古畑風なのである。

まあ・・・「エーサーク」の髪型が「アメトーク大賞」的に気になるわけである。

久しぶりに川島海荷を見たが・・・藤原紀香と同様にいつもの感じでしたな。

二人とも貫禄なんだな。紀香はいいとしても海荷はそれでいいのか。

結局・・・愛菜の復讐劇なのだが・・・やはり裁かれることのない真犯人がいる展開である。

完全にかぶってしまったぞ・・・。

黒いパンテル」・・・原作は『完全なる首長竜の日』で第9回受賞の乾緑郎。脚本・監督・星護である・・・絶対にかぶらないように・・・もはやミステリではないところまできた面白いけれどある意味意味不明な作品を持ってきたわけである。

三十年前・・・特撮ヒーロー「ブラックパンテル」の主役(兼原良太郎)だった・・・須藤(勝村政信)は現在では建築関係の現場監督として地道に働いている。妻の栄子(高橋ひとみ)は昔はアイドル(柳ゆり菜)だった。

夫婦には娘の千明(小池里奈)がいて・・・最近、戸倉(山本裕典)という男と交際を始めたのである。

ある日、ブラックパンテルの衣装を妻が発見し・・・須藤は忌まわしい記憶を蘇らせる。

「ブラックパンテル」の最終回撮影現場で・・・火災事故が発生し・・・須藤は・・・友人の二ノ宮(城田優)と栄子のどちらかを助け、どちらかを見捨てる究極の選択を迫られるのである。

まあ・・・三角関係ということでは一本目とかぶってしまったな・・・。

しかし・・・やがて・・・二ノ宮そっくりの男が現れ・・・娘の千明は誘拐され・・・ついには巨大隕石が地球に衝突することが明らかになる。

お茶の間のなんじゃあこりゃあ・・・という叫びとともに・・・須藤は・・・ブラックパンテルに変身するのだった・・・。

まあ・・・面白ければなんでもいいんだよね・・・テレビなんて・・・。

ああ・・・今年も終わったな。

皆様、よいお年をお迎えください。

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2014年12月30日 (火)

美しき死に至る闘争~あしたのジョー(山下智久)

二十世紀の不朽の名作といえる「あしたのジョー」・・・。

二十一世紀に不死鳥のように蘇る・・・。

劇画、アニメ、実写映画と様々な先行系がある以上・・・それぞれに派生した妄想空間があるわけだが・・・山下智久の演じる矢吹丈は文句なく・・・ジョーである。

もちろん・・・伊勢谷友介の力石徹、香川照之の丹下段平、香里奈の白木葉子も素晴らしい。

そういうキャストに支えられて・・・映画「あしたのジョー」はあの日を思い出させる。

もはや戦後ではないと呼ばれながら・・・どうしようもなく敗戦の傷跡を残していた高度成長時代と・・・その終焉の日々を・・・。

白人種と有色人種のどちらにも赤い血が流れていることを証明し続けた時代。

占領と隷属と友好の混沌を・・・。

で、『あしたのジョー(2011年劇場公開作品)』(TBSテレビ20141228PM9~)原作・ちばてつや/高森朝雄(梶原一騎)、脚本・篠崎絵里子、監督・曽利文彦を見た。原作劇画の連載開始は昭和四十二年(1967年)である。それは戦後22年目にあたる。主人公の矢吹丈(山下智久)は不良少年であるために戦後の生まれだが・・・終戦直後のどさくさに生まれたわけであり・・・基本的には戦災孤児の影を宿している。浮浪児として育ち・・・無法地帯を生きてきた少年なのである。当然のことながら・・・世界を憎悪しているのだ。

ジョーという名前そのものに混血児の匂いさえ感じる。

父は米兵、母はパンパンだったのかもしれない。

ジョーのボクサーとしての天性の素質を見出す丹下段平(香川照之)は戦後のドサクサの中で失速した元ボクサーである。家族もなく・・・その父性をもてあましている。なにしろ、敗戦国民なのである。教育者として語る言葉などないのだ。しかし・・・ボクサーである以上、拳で語ることはできる。言葉狩りによって失われた仇名・・・拳闘気違いのケンキチは・・・ボクシングの前の人間平等の象徴なのである。

もちろん・・・野生児であるジョーは・・・段平の言葉には耳を貸さない。

ジョーを導くのは・・・ジョーよりも先に「ボクシング」に目覚めた力石徹(伊勢谷友介)である。力石もまた天涯孤独である。しかし・・・すでに天才ボクサーとしての栄光に包まれており・・・二人が「少年院」(映画では刑務所)で出会うのは・・・神秘的な運命によるものである。

なにしろ・・・力石の名はパワー・ストーンという妖しいものなのである。

名前で言えば・・・力石が生死の境を彷徨うのは虚構だと考えられる。

力石の恋人である白木葉子(香里奈)の名前がそれを物語る。白木の箱といえば死者の収納容器に決まっている。力石は生きながら白木の箱に抱かれていたのである。

財閥令嬢という妖しい存在も不思議だ。ボクシングジムを経営する財閥そのものが怪しい。

白木幹之介(津川雅彦)はまさに戦後のドサクサで成りあがった新興財閥の趣きがある。

だから・・・ヨーコには清楚なお嬢様と・・・妖艶な娼婦の匂いが交錯する。

年齢を問わなければ・・・その配役には・・・①壇ふみ、②松下奈緒、③北川景子、④宮崎あおい、⑤堀北真希、⑥武井咲、⑦綾瀬はるか、⑧仲間由紀恵、⑨戸田恵梨香、⑩長澤まさみなど・・・様々な女優が浮かぶが・・・共演歴なども考えて香里奈というのは申し分ないのだな。

力石が逝った後は・・・白木の箱の呪いは矢吹丈にかかってくるのだ。

サンドバックに 浮かんで消える

憎い あんちくしょうの

顔めがけ たたけ!

たたけ! たたけ!

敗戦国民として蔑まれて育った人々は・・・世界からの差別に耐えぬくしかない。

その格差は恐ろしいものだったのである。

現在の国内における貧富の差など・・・それに比べればどうってことのないレベルである。

実際は当時から暗渠になっている泪橋の荒川区側は犯罪者である日本国民の世界・・・台東区側が全世界なのだ。

日本国民は泪橋を逆に渡り・・・「戦後ではない世界」を目指す夢の中にある。

台東区に行けば飴屋だかアメリカ屋だかよくわからないアメ横やアメ横女学園が待っているのだから。

丈は・・・白いリングにあがれば・・・連合軍の物量作戦に飲み込まれる帝国陸海軍の悪夢は解け・・・一対一の平等な勝負があることを・・・力石から拳で伝えられる。

力石もまた・・・世界で唯一の同族と出会い・・・人と人として拳で語りあうこと以外には考えられなくなるのである。

しかし・・・階級差別という現実的なルールのために・・・二匹の獣は・・・不自由なデートを強いられるのだった。

力石は本来はウェルター級(66キログラム)、出所後はフェザー級(57キログラム)の壁を越え・・・丈のいるバンタム級(53キログラム)まで過酷な減量を重ねる。

一方、丈は・・・必殺のクロスカウンターに磨きをかけるために・・・ノーガード戦法という無謀な作戦を展開する。勝利を重ね、力石への挑戦の狼煙をあげるのだ。

まさに・・・愛し合う二人なのである。

愛し合うためには命を賭けるしかない二人・・・。

そして・・・若く情熱的なジョーは・・・恋人が無理に無理を重ねていることを・・・気が付きながら喜びに変えるタイプなのだった。

行け荒野を 俺らボクサー

夕陽が ギラギラ 男の夢は

親無し宿無しの名もないボクサーは

鎖をかみ切った!

星飛雄馬の姉が電信柱の影から見守ったように・・・白木葉子も・・・男たちの闘争をリングの下で見上げるしかないのである。

そして・・・炸裂する・・・戦いが好きで好きでたまらない男と男の愛の世界。

そういう宿命を封印することでしか・・・平和な世界など構築できないのである。

きのうはぐれた 狼が

きょうはマットで血を流し

あしたをめざして立ちあがる

立たなきゃ きのうに逆戻り

減量苦にあえぐ力石だったが・・・その実力は丈を大きく上回る。

正攻法で挑むが圧倒されリングをのたうちまわる丈。

「立て・・・立つんだ・・・ジョー」

しかし・・・丈の一撃が・・・力石を転倒させ・・・後頭部に致命的な傷を負わせるロープがヒットする。

死に向かいながら丈に対峙する力石は・・・。

トリプルクロスカウンターを狙う丈を必殺のアッパーカットでリングに沈める。

丈は敗北を認めるという幸福に満たされる。

だが・・・勝者である力石はすでに死んでいたのだった。

物語は・・・唯一の友を失った丈と・・・恋人を失った葉子との複雑な愛の軌跡を描きつつ・・・丈が真っ白に燃え尽きるまで続く。

しかし・・・それはまだ先の話。

丈と力石の死闘が描かれれば・・・「あしたのジョー」は充分なのである。

だから・・・この映画は素晴らしいのである。

世界なんて滅びたっていい。

二人がリングで時を分かち合えれば・・・。

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Jhc001ごっこガーデン。魂が熱狂する美女と二匹の野獣セット。

エリお嬢様のお部屋

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2014年12月29日 (月)

簡単にはやられませんよ、鈴木先生!(土屋太鳳)

キッドのブログが休止中だった2011年の問題作「鈴木先生」・・・。

気がつけば「鈴木先生」のレビューはないのだった。

しかし・・・コメント欄での語らいで・・・なんとなくレビューしていたような気になっているのだった。

「教育」とは何か・・・という主題がなければ・・・単に・・・美少女中学生と性交渉したくてしたくてたまらない中学校教諭の・・・赤裸々な妄想物語である。

もう・・・凄いよね。

これができるのはテレビ東京の深夜だけだよね。

その上、映画にしちゃうんだもんね。

万歳するしかないよね。

で、『映画 鈴木先生(2013年劇場公開作品)』(テレビ東京201412280230~)原作・武富健治、脚本・古沢良太、監督・河合勇人を見た。生徒を指導するにあたり、「問題児に時間を割かずに普通の子を中心に」という方針を持つ鈴木先生(長谷川博己)・・・。2年A組の担任として緋桜山中学屈指の美少女・小川蘇美(土屋太鳳)とセックスしたくてしたくてたまらない気持ちを理性でねじ伏せ・・・今日もギリギリの教育に励むのだった。

しかし・・・夢の中では・・・蘇美(そみ)を抱きしめ、キスも挿入も射精も寸前なのであるが・・・妊娠中の妻・麻美(臼田あさ美)が嫉妬による生き霊攻撃を発生させるので睡眠不足になりがちなのである。

いろいろと問題のあった一学期を乗り越え・・・二学期。

中学校では・・・生徒会選挙、そして文化祭といろいろと行事があるのだった。

さしあたって・・・文化祭である。

2年A組からは・・・生徒会長に中村加奈(未来穂香)が立候補する。

蘇美も書記に立候補して・・・問題児よりも美少女に関心のある鈴木先生はまずまず納得である。

もちろん・・・問題児より美少女に関心のある鈴木先生は隣のクラスの美少女・平良美祝(刈谷友衣子)にも立候補を薦める。

「私・・・目立つことは嫌いです」

「目立つように生まれて来たのだ・・・目立ってしまえ」

生徒の気持ちよりも自分の萌え心が大切な鈴木先生なのである。

そんな鈴木先生の天敵は・・・家庭科教師の足子瞳(富田靖子)で骨の髄からの教条主義である。

一学期において鈴木先生との対決に敗れ・・・精神を病んでしまった足子先生だが・・・夏休みの間に少し回復して学校に復帰する。

しかし・・・鈴木先生の実在が不可視という精神状態である。

鈴木先生にシンパシーを感じる桃井先生(田畑智子)軽く戦慄するのだった。

「全員投票こそが・・・正しい選挙」と最近、おバカなマスメディアが言い続けたお題目を唱える足子先生だった・・・。

小学校時代に・・・タレント候補に真面目な親友が敗北したことから選挙というシステムそのものに不信感を持つ出水正(北村匠海)は・・・テロリストの目付で・・・生徒会長に立候補する。

神田マリ(工藤綾乃)と中村加奈の美少女生徒会長候補で充分だと思っていた鈴木先生は暗雲が近付く兆しを感じる。

「社会に出て・・・本心を隠す必要がある時に役立つ演技」を研究するために竹地公彦(藤原薫)は文化祭で演劇の上演に熱意を燃やす。

そんな折・・・問題児だったOBの白井(窪田正孝)から厭味を言われる鈴木先生。

「先生のお気に入りの優等生なんて・・・卒業したら先生のことなんか忘れちまうんじゃね」

確かに鈴木を訪ねてくる卒業生はいなかった。

鬱屈して思わず、売春婦になった蘇美を妄想する鈴木先生だった。

ちょっと意地悪な神田マリは「痛い所突かれたね」と鈴木先生をからかうのだった。

公園で演技の自主トレーニングをする竹地とラブラブの河辺彩香(小野花梨)はうっかり・・・ベンチにすわる不審な若者たちに接近する。

若者たちは八年前の卒業生・勝野ユウジ(風間俊介)と田辺満(浜野謙太)だった。

二人は問題の少ない中学生時代を過ごしたが社会に出て落ちこぼれ・・・引き籠りがちになっているのだった。

ちなみに・・・「あまちゃん」前である。

目立たないが・・・時々、堀の内七海(松岡茉優)が視界に入ります。

公園の喫煙所は・・・社会的に好ましくないと言い出す足子先生だった。

ユウジと満は逃げ場所を失い・・・満はついに家庭内暴力を開始して・・・マスメディアを騒がすのだった。

立会演説会では・・・ついに・・・出水正が生徒会選挙を否定する。

「投票をするのも権利なら投票しないのも権利だ・・・棄権を禁止するのはおかしい」

「該当者なしで投票すればいいでしょう」と足子先生。

「それでは・・・この不毛な選挙システムを承認することになってしまう」

中学生に論破され・・・足子先生は出水の存在を抹消するのだった。

多数決に馴染めない少数派が放置を希望するという話である。

少数派に強要すればたちまち全体主義が頭角を現すのである。

「二重基準とは・・・一種のグレーゾーンの設定です。マララさんが教育を主張してもいいし、クルド女性軍が戦闘してもいい・・・そういう緩さを否定しない生き方があってもいい」と鈴木先生は思う。

もちろん・・・これは理想論であって・・・ドラマだからたまたまうまくいくだけである。

しかし・・・理想あっての現実なのである。

そして・・・投票日・・・。

何もいいことがなかったユウジは凶器を持って母校に侵入し・・・一番の美少女である蘇美をレイプすると宣言するのだった。

「これは・・・君の為なんだ・・・いい子のまま、卒業するより・・・汚され、傷ついた方が・・・社会で成功できる」

「君は童貞だろう・・・蘇美は処女だ・・・童貞と処女じゃ・・・大変なことになるぞ」

鈴木先生は平和的解決を目指すが問答無用で電撃を浴び悶絶するのだった。

しかし・・・妻の麻美は予知夢で「強姦未遂」を見る。

屋上に追い詰められたユウジ。

しかし・・・蘇美は・・・。

「私が傷ついたら悲しく感じる人がいます・・・私の命はわたしだけのものではありません。だから簡単にできると思わないでください・・・私、抵抗しますから」

「なんだと」

そこで乱入する足子先生。

「やるなら・・・私をやりなさい」

思わず萎えたユウジは鎌を振りかざす。

その後頭部を蹴る蘇美。

逆上したユウジか鎌で蘇美を出血させる。

その時・・・別の校舎から・・・蘇美を呼ぶ鈴木先生。

蘇美は空中へ飛び出すのだった。

まあ・・・映画なので・・・。

「ありがとうございました」と足子先生に頭を下げる鈴木先生。

足子先生の心に蘇る鈴木先生。

連行されるユウジに・・・声をかける鈴木先生。

「君も世界を変える一人だ」

「・・・」

虚しく佇む鈴木先生に・・・神田マリがつぶやく。

「先生の卒業生が・・・遊びに来ないのは・・・きっと今を一生懸命生きているからだと思うよ」

鈴木先生は美少女の優しい言葉に激しく萌えるのだった・・・。

生徒会長に選出されたのは出水である。

中学校ドラマの金字塔だな・・・。

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2014年12月28日 (日)

新境地キターッ!恋の合宿免許っ!(清水富美加)

新境地ってなんだか恥ずかしい・・・。

新境地とは別に一つの到達点だった「アオイホノオ」の人が・・・軽く脚本を仕上げたと思われるドラマで今月20才になったばかりの清水富美加が主役である。

四夜連続ドラマスペシャルで第一夜から・・・ある意味、すべりまくっているが・・・深夜だから平気だ。

一年を二十四時間で区切ると12月は午後十時からの二時間である。下旬に入れば・・・真夜中は近い。

だから・・・年末は深夜なのである・・・意味、分からんぞ。

だから・・・脚本家の人は今、無敵状態なんだな。

どうか・・・このまま、深夜の人を極めてください。

で、『4夜連続ドラマスペシャル・恋の合宿免許っ!・第1回~最終回(全四話)』(フジテレビ201412230040~)脚本・福田雄一、演出・高野舞を見た。美少女にも二種類あって・・・近寄りがたい美少女と親しみやすい美少女がある。来年の春の朝ドラ「まれ」の主人公・津村希を演じる土屋太鳳が前者なら・・・蔵本一子役の清水富美加は後者だろう。・・・勝手に決めんなよっ。とにかく清水富美加にとって可愛い女の子から・・・女優への第一歩を・・・踏み出すのがこの作品でよかったのかどうかは誰にもわからない。・・・わからないのかっ。

妄想少女である・・・加賀谷玲奈(清水富美加)は「クリスマイブまでに免許をとらないと・・・意中の人に告白できない・・・なぜならきっと彼は免許を持っていない女の子を相手にしないから」と思い詰め・・・宮古島にある「リゾートしながら合宿免許の世界」に飛び込んだのだった。

その大前提としてちょっと間違っている感じの玲奈に・・・地元で親のやっている飲食店を手伝うために・・・偏差値26の東京の大学を退学して・・・出前のために免許を取らなければいけない照屋弦(中島広稀)は一目惚れしてしまうのだった。

玲奈は・・・「二週間で免許がとれる」と意気込むが・・・合宿には・・・一ヶ月たっても卒業できないおばさん(氏家恵)、三ヶ月もいるおじいさん(有福正志)、半年前からいるおじさん(八十田勇一)がゴロゴロしていたのだった。

「ひょっとしたら・・・悪徳業者なのでは・・・」と考えた玲奈だったが・・・教官の武藤(野添義弘)たちは至って素朴ないい人たちだった。

やがて・・・離婚したばかりのおばさんや・・・リストラされたおじさんが・・・自信を失って・・・失敗ばかりしていることに気がつく玲奈。

「やればできる・・・大丈夫だよ」と二人に囁きかけてはげます玲奈である。

それが功を奏し・・・おじさんとおばさんは腕をあげるのだった。

しかし・・・「そんなことでは・・・自分が卒業できないのでは・・・」と危ぶむ弦なのである。

やがて・・・二枚目なのに無免許の永野ひかる(矢野聖人・・・「リーガル・ハイ」の井出のくせに二枚目だと・・・)、ひかるにぞっこんで免許があるのに偶然やってきた秋山千里(堀田茜・・・ドラマデビュー)が加わって・・・何故か、ひかるも玲奈に一目惚れしてダブル三角関係になったり・・・実はおじいさんは・・・大企業の社長さんだったり・・・そんないつもの少し懐かしいドタバタが続く。

ちなみに冒頭・・・「宮古島って・・・Dr.コトー診療所の」と友人が言うのだが・・・「Dr.コトー診療所」(2003年~)があるのは志木那島(フィクション)でロケ地は八重山列島の与那国島である。

宮古島はより東側の宮古列島に属します。

「コトーってのはさ・・・北の国からの吉岡秀隆がさ~」と語り続ける玲奈の女友達・・・。

「北の国から」(1981年)である。1994年生まれが知るか・・・という近現代時代考証の問題が発生する。

しかし玲奈は「コント赤信号のネタ」にこだわりも見せる・・・「誰も知らない」と周囲が応じると「検索すればわかる」と宣のだった。

・・・いやな時代だ。

流れのない・・・突出した輝き・・・まあ・・・それもまた流れか・・・。

しかし・・・深夜なのでまったく問題ないのだった。

とにかく・・・玲奈は・・・おせっかいな性格を前面に出して・・・周囲の人々を幸福にしていくのだった。

まあ・・・基本「キターッ」の人なので・・・ものすごくフィットするよね。

それでいいんだよね。

そして・・・クリスマスイブ・・・弦は「東京に帰らないと間に合わない」と男気を見せるのだが・・・もちろん・・・玲奈は・・・片思いの男の子を不幸せにはできない性分なのである。

まあ・・・深夜なので悪魔も微笑むしかないのだった。

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2014年12月27日 (土)

さらば、愛しき悪女たちよ(沢尻エリカ)

2014年の春ドラマの深夜枠から・・・秋ドラマのゴールデンに格上げされたこのドラマ。

全く悪女ではない沢尻エリカを悪女軍団に囲ませて弄ぶという斬新な企画であった。

しかし、ゴールデンに待ち構えたのは綾瀬はるかである。

沢尻エリカ+倉科カナ、ともさかりえ、市川実和子、小島聖、鈴木ちなみ、木村佳乃、田畑智子、菜々緒、佐々木希などが束になってかかっていったが・・・ダブルスコアで惨敗だった。

もちろん・・・大河ドラマの主演女優と・・・返り咲きの女優というステータスの落差はあるが・・・ゴールデン版の第二期は・・・脚本が・・・完全に・・・素人だったもんな。

まあ・・・連続ドラマに沢尻エリカが帰って来たことはよかったと思う・・・。

で、『ファースト・クラス(第2期)・最終回(全10話)』(フジテレビ20141224PM10~)脚本・及川博則、演出・西浦正記を見た。「お気に入りの洋服を着ただけで幸せになれる」吉成ちなみ(沢尻エリカ)は衣料材料店の販売員からファッション雑誌の編集長にまで登りつめるが「お気に入りの洋服を作りたい」ので服飾デザイナーに転職する。

ちなみは出世には興味なく・・・ただ「仕事」をしたいだけなのだが・・・周囲は様々な思惑で格付けし合うのである。

しかし・・・実際に格付けし合う女たちが・・・わがままモデル鈴木(佐々木希)、腹黒正社員・レミ絵(菜々緒)、ハングリーモンスター白雪(田畑智子)という最強トリオだった第一期に比べて・・・無能デザイナー凪子(ともさかりえ)、かわいいデザイナーさくら(倉科カナ)、ゆるふわプレスアシスタント向井山(鈴木ちなみ)のトリオでは戦力ダウンである。どういう三人の選択だよ・・・。だって能年玲奈のおしゃれ小鉢と化している篠原ともえとか・・・「あまちゃん」の桜庭(山谷花純)とか・・・悪女として戦力外じゃないか・・・。

で・・・いろいろあってすべてを失ったちなみだが・・・。

ちなみの王子様であるカメラマン西原(中丸雄一)が帰国して「手作りだけが作品と言える」とアドバイスすると・・・古着を新しいデザインで仕立て直すというビジネスを着想・・・。同じようにすべてを失いかけた悪女たちと共闘して・・・大成功をおさめるのだった。

女同士の格付けなんて無意味・・・という・・・じゃ、今までなにやってたんだという掟破りのオチを展開しつつ・・・「仕立て直し」を承る衣料移動販売車に乗って・・・「お気に入りのファッションで笑顔になるお客様を求め・・・行商生活を送るちなみである。

まあ・・・沢尻エリカのリハビリドラマとしては・・・まあまあだったんじゃ・・・ないのかな・・・。本当に女優としての一番大切な時を私生活で浪費して・・・もったいなかったなあ・・・まあ、でも人の幸せはそれぞれだからな。

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2014年12月26日 (金)

隣のレジの梅木さんと私の狂ったレジスタファイル(有村架純)

つつがなく、クリスマスも終了である。

去年より一日遅い、フジテレビヤングシナリオ大賞の受賞作レビューなのだ。

ちなみに去年は・・・新川優愛が頑張った「人生ごっこ」(第25回受賞作)である。

今年は・・・有村架純が頑張ったわけだが・・・どこまでチャレンジさせる気だ。

NGなものはNGにしないと・・・ステータスが・・・まあ、いいか。

パンパン役をやったり、拷問の末に斬殺されたり、車内でフェラチオしたり・・・そんなに汚さなくてもいいのじゃないか・・・と考えます。

まあ・・・「あまちゃん」レギュラーの中で・・・最終回に出られなかった役柄といい・・・そういう宿命があるのかもねえ。

クドカンはいつか救済してくれるかな。

海の家でアルバイトしている気さくな女の子が一番、似合うのにねえ。

で、『隣のレジの梅木さん』(フジテレビ201412220040~)脚本・倉光泰子、演出・相沢秀幸を見た。第26回の受賞作のドラマ化である。主人公はラーメン好きで過食症の梅木響子(馬場園梓)という地味な女である。母子家庭に育ち、母親(田島令子)に支配されて大学院にまで進んだが就職せずに・・・スーパーマーケットでレジ打ちをしながら、中華料理店「永楽」経営の小林広志(山中崇)と爛れた関係を続けている。レジとはキャッシュレジスターの略で・・・言わば底辺の労働階級の象徴と言えるだろう・・・おいっ・・・。

レジスターは記録を意味する。つまり・・・人間で言えば精神そのものなのである。

レジはお金を入れられ、販売取引を記憶する・・・恐ろしい生物だ。

もちろん・・・そんな主人公のスイーツな話は一部お茶の間にとって何の興味も引かないので・・・梅木の両サイドにもレジの人が配置されている。

一人は・・・元専業主婦の黒崎清子(神野三鈴)で夫を略奪されて・・・娘の貴子(小篠恵奈)と二人暮らし。それなりの慰謝料をもらったが精神が破綻し・・・夫の相手に復讐するためにボクシングを習っている。夫の相手が利用するスーパーマーケットと知って勤務しているのである。

そして・・・もう一人が・・・明らかにスーパーマーケットのレジよりはミニスカートのサンタさんとして脚光浴びるべき素材の沢村美香(有村架純)である。

無論、かわいい女の子が幸せになってはいけないという脚本家の執念で・・・美香は転落の人生を送るのだった。

「ブタのくせにブタのように食べすぎ」と梅木を批評するところから・・・世の中のブタに反感を買われるキャラクター設定である。

しかし・・・単に悪ではなく・・・梅木が・・・気が弱い恋人の広志の母親(高泉淳子)や弟の正志(宇野祥平)に奴隷のように扱われていると憤激し・・・天に変わって指弾するのである。

「なんだババア、ほざいてんなよ・・・ゴーヤチャンプルが苦いとか・・・常識がないのもほどほどにしろや・・・梅木さんにあやまれや」

かわいいよ、有村架純かわいいよ・・・なのである。

そんな・・・充分にかわいい美香を不幸にするために・・・「もっとかわいくなりたい設定」が付加されている。

美香は・・・もっときれいになるために・・・美容整形する女子大学生なのだった。

さらに・・・交際している男性・が・・・美香をセックスフレンド扱いするのである。

ものすごく・・・無理のある設定だが・・・健気に演じる有村架純。

そして・・・「すごいな」と誉められて口内射精である。ゴックンである。

「私たち・・・恋人なんだよね」

「・・・」

どんだけ・・・美少女に恨みがあるんだ・・・この脚本家は・・・。

その後・・・男から・・・。

差出人 五十嵐玄

宛先 沢村美香

件名なし

2014年12月12日16:38

お疲れ様。今夜、また車でお願い!

・・・というメールが着信する。

復讐か・・・何かの復讐なのか。

一方・・・ついに夫を奪った才色兼備の女・鷲津理恵子(安達祐実)と遭遇する元専業主婦。

問答無用で殴りかかるのだった。

「何するの」

「この名札が目に入らんか」

「・・・」

「私は・・・ただ謝ってほしかったの」

「ああ・・・ごめんなさい」

警備員に取り押さえられ・・・去っていく狂女だった。

かわいいよ、安達祐実かわいいよである。

梅木は恋人の子を宿し・・・出産か堕胎かで悩む。

担当の医師が・・・美香が密かに憧れている買い物客の桜木幸世(永岡卓也)だった。

そして・・・あろうことか・・・ブス専門でデブ専門の桜木は・・・梅木に愛を告白する。

「なんで・・・あなたと・・・あの人が・・・」

「私の顔が好きなんだって・・・」

ありえない展開に発狂した美香は・・・。

「なんならすでに死んでおります」と車道に飛び出し車にはねられて血まみれの姿に・・・。

「なんで・・・」

「世の中には美少女が酷い目にあえばいいと思っている人は多いのです・・・女優であれば・・・期待に応えるしかないのであります・・・」

なんて世の中だ・・・。

その後・・・シンデレラ物語なので梅木と広志は・・・「おいしいラーメン屋」を始めて幸せになるのだが・・・もう・・・どうでもいいよね。

ある意味・・・私的な表現は重要な出発点である。

美少女を不幸にしてブスを幸せにしたいと願うのはそれほど悪いことではない。

精進して・・・有村架純に素敵な役を演じさせる素晴らしい脚本家になってもらいたいものだな。

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2014年12月25日 (木)

そもそも・・・女はそれを許さないのです!(深田恭子)

かわいいよ、深キョンかわいいよと言う他ないドラマである・・・。

「リーガルハイ」以後の弁護士ドラマは・・・それなりに薄味のような感じになってしまうのだが・・・エピソードもそこそこ練られていて最後は・・・「自動車業界」の巨悪追及という着地で・・・それなりに凄いのだが・・・まあ・・・自動車業界はあくまでオチで・・・徹底追及されるわけではないのが御愛嬌なんだな。

「すべての車は狂器・・・ドライバーは殺人者」という展開はしないのだった。

誰がするかっ。

さて・・・年末年始の本格的谷間に突入である。

聖夜もつつがなく12時を越え・・・ユイちゃんの母は今年も健在だった。

ここから・・・2015年の冬ドラマまでは・・・結構、長い谷間である。

2014年の秋ドラマは結構、充実していたので・・・しばらくは軽く流させていただきます。

で、『女はそれを許さない・第1~最終回(全10話)』(TBSテレビ20141021PM10~)脚本・高橋泉(他)、演出・滝本憲吾(他)を見た。未熟ゆえに・・・事件の真相が見抜けず・・・担当した案件の関係者を深く傷つけてしまう・・・新人弁護士・岩崎麗(今瀬葵→深田恭子)は裁判恐怖症となって・・・弁護中に「いやあああああああっ」と言って法廷から逃亡するのだった・・・もう、かわいさ炸裂である。こうして・・・法廷に立てなくなった麗と・・・不祥事によって弁護士資格を停止させられた・・・やり手中のやり手・海老沢凛香(寺島しのぶ)がコンビを組んで・・・案件に取り組むという物語である。麗には・・・「人の役に立ちたい」という希望があり・・・凛香には高収入を取り戻すという野望があるのだった。

やがて・・・麗は凛香に鍛えられ・・・有能になっていき、凛香は麗に影響されて人間性を少し取り戻すのだった。

最後にたどり着いた事件は・・・小学生の列に突っ込んできたトラックが子どもたちをはねた後ガソリンに引火して炎上、運転手の平田正人(和泉崇司)は焼死。被疑者死亡で不起訴になった上、会社の監督責任に落ち度はないと賠償金も支払われなかったために被害者遺族会が訴訟を起こすというもの・・・。

麗&凛香は・・・会社のスケジュール管理に問題があったと追及するが・・・大手弁護士事務所の「セイント」の児玉(竹中直人)と葛城(加藤雅也)が立ちふさがる。

セイントは凛香の古巣であり、児玉は元上司、葛城は元彼氏だった。

さらに・・・凛香によって恋人を自殺に追い込まれた工藤(吉沢悠)がスパイとして麗に接近するのである。

ついでにマチベンとなった麗&凛香が所属する事務所の所長(上川隆也)、アシスタント(溝端淳平)である。

被害者の小学生の母親が涼子(安達祐実)で運転手の未亡人が真由美(原田佳奈)である。

キャスティング的にはゲイのバーテンダー(松重豊)などもいる。

なかなかに重厚なわけだが・・・とにかく・・・「リーガルハイ」以後は・・・これでも浅くなっちゃうんだな・・・。

やがて・・・運転手が過去に危険ドラッグで事故を起こしていたことが発覚し・・・その弁護を所長がしていたことが判明・・・遺族と弁護団に齟齬が生じる。

しかし・・・凛香は・・・「セイント」が乗り出してくるには事件が軽すぎると感じるのだった。

解任を受け入れようとする所長に・・・麗は説教するのだった。

「前科者の再犯率が高いとしても・・・そもそも弁護士は更生を信じて信じて信じる他ないのです!」

やがて・・・トラックによる原因不明の事故が多発していることが判明。

警察・・・。

「帝和ディーゼルのトラックが不具合を発生し・・・組織ぐるみでリコール隠しをしていたのです!」

トラックは運転中にブレーキがきかなくなり・・・小学生の列に突っ込んだのである。

「これは事故ではなく・・・そもそも事件だったのです・・・」

加害者も被害者だった・・・。

被害者の母親と運転手の未亡人はお互いを慰め合うのだった。

悪徳弁護士の児玉に鉄槌を下した凛香はセイントに返り咲く。

そして・・・麗は・・・凛香と法廷で宿敵として火花を散らすのだった・・・。

「そもそも・・・これはセクハラなのです」

「そもそも・・・これはパワハラなのです」

「そもそも・・・これはマタハラなのです」

世界はそもそも嫌がらせに満ちているのだった・・・。

そもそも・・・タイトルの「女」は・・・違うんじゃないのか・・・。

「私」または「深キョン」でよかったんじゃ・・・。

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サイレント・プア

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2014年12月24日 (水)

友よ静かに眠れ・・・(小栗旬)

これまで・・・どれだけの兵を殺してきたことか。

尾張統一戦。

桶狭間の戦い。

美濃攻略戦。

上洛戦。

姉川の戦い。

比叡山焼き討ち。

武田信玄上洛戦。

将軍追放戦。

それなのに・・・今さら、「戦いは憎しみを生み出すだけで・・・よくない」とか言ってんじゃねえよと誰もが言いたいスイーツ戦国絵巻もついに終結である。

ああ・・・ホッとするよね。

で、『信長協奏曲・最終回(全11話)』(フジテレビ20141222PM9~)原作・石井あゆみ、脚本・宇山佳祐(他)、演出・松山博昭を見た。高校生のサブロー(小栗旬)がタイムスリップして織田信長になりすましたのは天文二十年(1551年)だった。そして超時空天正元年である・・・正史の天正元年はほぼ西暦1573年である。サブローが戦国入りしてから22年経過していることになる。サブローももうすぐ四十歳ぐらい・・・そこのところだけが・・・ものすごく謎なんだよねえ。まあ・・・スイーツになんだかんだ言っても野暮だけどね。もちろん、わかってますけどねええええええええええええええっ。

ついでに・・・サブローと帰蝶(柴咲コウ)の夜の生活も謎である。

諸説あるが信長と濃姫の婚姻は天文十七年から十八年とされるので織田信長/明智光秀(小栗旬・二役)はすでに初夜の床入りを済ませている。帰蝶は生没年が定かではないが・・・信長とほぼ同年齢と考えられている。だから・・・帰蝶ももうすぐ四十歳くらいなんだな・・・。で、三年くらい過ごした信長本人よりも・・・ずっと一緒にいるサブローの方が愛しいという話である。

ものすごくモヤモヤしますな。

とにかく・・・この世界の信長は・・・家督争いのために身の危険を感じ・・・尾張国を脱出する。お伴は・・・このドラマには登場しない信長の老臣・平手政秀が教育係として起用した臨済宗大宝寺の僧侶・沢彦(でんでん)である。史実では「岐阜」の命名者で「天下布武」の発案者とされている。

そして・・・何故か・・・明智光秀となって・・・永禄十一年(1568年)頃に岐阜城に現れるのである。

不在の期間は17年である。

その間、放置していた帰蝶がサブローと仲睦まじくやっているのを見守って五年くらい・・・。

そういう時系列だと・・・いろいろと感情移入しにくいわけである。

だから・・・信長は・・・一年くらいで・・・ここまで大事業をやった。その間に浅井長政(高橋一生)に嫁いだ市(水原希子)は超時空出産で茶々・初・江の三姉妹を儲けたというわけだ・・・どんなわけだよ。

いやあ・・・じゃないと・・・自分の嫁さんが・・・そっくりさんの方が好きって言うんで・・・ちょっと妬ましいらしい信長の気持ちが分からないからあ・・・。

まあねえ・・・歴史云々というよりもドラマとして破綻してるよねえ・・・。

だから・・・スイーツなんだから・・・深く考えたら負けなんだよっ。

・・・であるか。

さて・・・超時空天正元年でも武田信玄は病死し、東からの危機の去ったサブローは秀吉の計略で足利将軍追放にも成功する。

これによって摂津、山城、大和、伊勢、尾張、美濃、さらに同盟中の徳川家康(濱田岳)の三河・遠江を合わせ・・・戦国最大勢力となった織田家である。

信長に敵対してきた越前国の朝倉義景(小市慢太郎)と近江国の浅井長政(高橋一生)の命は風前の灯なのである。

信長に対して裏切りを重ねて来た大和国の松永弾正久秀(古田新太)はたちまち降参するのだった。

しかし・・・絶対に秘密であったサブローが偽信長であることを察知する者が現れる。

一人は・・・信長に復讐を誓う秀吉(山田孝之)・・・そして、もう一人は信長の乳兄弟・池田恒興(向井理)である。信長の父・信秀の愛妾の一人と前夫との間に生まれた恒興は生粋の家臣なのである。

サブローが信長でないという事実は・・・自我が崩壊するほどの衝撃なのだった。

命の恩人であるサブローと信長/光秀の間で右往左往する恒興の心は・・・結局、血筋絶対の主従関係に傾く。

そこへ・・・浅井・朝倉の挙兵の報が伝わる。

「この戦の始末だけは・・・やらせてほしい」とサブロー。

「わかりました・・・」と恒興・・・。

サブローは帰蝶に真実を話そうとするが・・・帰蝶は話題をすりかえるのだった。

もちろん・・・サブローが信長でないことは夜の生活で・・・とっくに気付いていた帰蝶なのである。

つまり・・・きっと・・・信長より・・・サブローの方が「よかった・・・」のだろう。

Nobuo10「浅井とは和睦したい・・・」とサブロー。

「しかし・・・裏切ったのは浅井ですぞ」と柴田勝家(高嶋政宏)・・・。

「今は織田は浅井の十倍の勢力です・・・絶対に勝てます」と丹羽長秀(阪田マサノブ)・・・。

「でも・・・長政くんとはトモダチだし・・・きっと話せばわかると思う」

それはまずい・・・と思う秀吉だった。

なにしろ・・・浅井久政とは裏で通じているのだ・・・それが発覚したら物凄い裏切り者になってしまうのである。

「まずは・・・書状を送りましょう」と秀吉。

秀吉はその間に交渉決裂の陰謀を展開するのである。

ある意味・・・秀吉、無敵設定である。

秀吉の策略は・・・浅井の重臣である今井氏を暗殺・・・それを浅井内部の主戦論派に利用させるというものであった。

ちなみに・・・史実では浅井も朝倉も一門衆や重臣が次々と織田に寝返って・・・ある意味、殲滅されます。

とにかく・・・のこのこと織田家の城にやってきた長政は・・・。

「何が何でも戦います・・・友達なら・・・そこのところ・・・わかってください」

「えええええ」

ちなみに・・・友と言う言葉は・・・伴に通じている。生涯の伴侶といえば夫と妻のことである。

しかし・・・夫が主人を指す男尊女卑の世界では・・・妻と言う伴侶は従者なのである。

同様に弱肉強食の世界では・・・対等の友情も成立しない。

人間関係は敵か味方か・・・であり・・・味方の場合は主人とお伴なのである。

つまり・・・どちらかが支配し、どちらかが支配される関係しかないのだ。

そうでなくなれば謀反なのである。

つまり・・・友であることは降伏しないこと・・・つまり敵対である。

結局・・・浅井・朝倉連合軍と戦うことになるサブローだった。

「まずは・・・小谷城を包囲し、浅井を封じ込めた上で、援軍の朝倉勢を叩くがよろしかろう」

史実と違ってサブローの直臣となっている竹中半兵衛(藤木直人)の戦略は冴えまくり、史実通りに朝倉勢を崩壊させ・・・朝倉義景を自刃に追い込むのだった。

もはや・・・残るは小谷城のみである。

ここで秀吉が名乗りをあげる・・・。

「お市様を取りかえすために・・・敵を分断させる必要があります」

小谷城は中央に京極丸がある。浅井氏が傀儡としての主君・京極氏を飼っていた名残であった。京極丸を攻略することによって山王丸・小丸と本丸・中丸を分断し・・・久政・長政の父子を分断し・・・長政に降伏を促すという作戦である。

しかし・・・秀吉の目的は口封じのために久政(村井國夫)を殺害することだった。

秀吉の猛攻によって火に包まれる小谷の城。

「もはや・・・これまでじゃ・・・市よ・・・娘たちを連れて織田に戻れ」

「いけないのですか」

「まだ・・・ビグザムがある」

「殿・・・」

「行け・・・市、茶々とともに・・・」

市はサブローに対面する。

「ごめんね」

「兄上は・・・侘びる必要ありません・・・これが戦国の世の倣い・・・」

「でも・・・死んだら終わりじゃないか」

「殿・・・」

「僕は・・・長政くんを助けにいく」

「・・・お伴します・・・」

すでに・・・帰蝶の心を知った恒興は・・・サブローとともに織田を去る覚悟なのである。

なぜなら・・・恒興はサブローの虜なのだ。

燃えあがる小谷城・本丸。

「長政くん・・・もう充分だよ」

「やらせはせん・・・やらせはせんぞ・・・」

「長政くん・・・」

「信長様・・・介錯を頼みます」

見事に腹かっさばく浅井長政・・・。

「殿・・・」

「信長いきま~す」

見事に首すっとばすサブローだった。

浅井からの書面を黙読したり・・・一刀両断したり・・・サブローは・・・こっちにきてから・・・それなりに精進していたのだった。

偉いぞ、サブローと褒めてあげたい・・・。

こうして・・・織田家は第一次織田包囲網を突破する。

次は本願寺との戦いである。

しかし・・・それは先の話だった。

サブローは恒興との約束を守り・・・城を去る。

しかし・・・恒興は信長の命令でサブローを呼びもどす。

「ちょっと待って・・・今、帰蝶のおにぎり食べるから・・・」

「私や帰蝶様を一人にしてはなりませんぞ」

「うん・・・僕だって・・・一人になったら・・・すぐに殺されちゃうよね・・・」

その頃・・・秀吉の裏切りの事実を掴んだ半兵衛は・・・信長に報告。

しかし・・・信長はすでに・・・秀吉の手の内にあった。

「あなたは・・・殿ではなく・・・光秀・・・」

「違う・・・」

信長は半兵衛を切り捨てる。竹中半兵衛、史実より六年ぐらい早く死亡である。

「わしが・・・信長だ」

どうやら・・・信長は・・・サブローに天下を統一させ・・・それを奪うつもりなのだった。

そして・・・それを唆した秀吉は・・・光秀を・・・。

史実に向って流れ出した超時空世界・・・。

そんなことも知らず・・・サブローは・・・家康の陣中見舞いを楽しむのだった。

「この家康・・・三度の飯よりおもちが好きなのです」

「おもちも米だけどね・・・」

かわいいぞ、家康かわいいぞ。

やがて・・・京に進出する信長/サブロー・・・。

宿泊施設は・・・本能寺である。

王城の管理は光秀/信長・・・。

「これからも私は・・・明智光秀として信長を助ける・・・サブロー頼んだぞ」

「うん・・・頑張って・・・天下を統一するよ・・・ミッチー」

果たして・・・二人の運命や如何に・・・まあ・・・どうでも・・・いいけどね。

「目指せ将軍!家康くん」はちょっと見たい・・・。

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2014年12月23日 (火)

青春で逝けなかった皆さんのために!(錦戸亮)

春なのに冬の使い残しの灯油があって思わず頭からかぶって点火したりね。

門限の時間が気になってちょっとスピード出しすぎて首都高のカーブを曲がりきれなかったり。

生まれつき、心臓に爆弾を抱えていたから。

好きで好きで好き過ぎて高いビルからまっさかさま・・・。

そんな風に青春の中で散ってしまうのはそれなりに素晴らしいと思う。

青春が素晴らしかった上に長生きする人もいるだろうし、青春が素晴らしくなかった上にだらだらと過ごして今に至った人もいるだろう。

でも・・・青春が素敵だったら・・・どんなにか甘酸っぱいことだろう。

素敵な青春は永遠であってほしいと思ったりもする。

だから、青春にお別れする時は・・・あやまるしかないんだよ。

ごめんね・・・ずっと一緒にいられなくて・・・自分だけが・・・大人になって・・・。

で、『ごめんね青春!・最終回(全10話)』(TBSテレビ20141221PM9~)脚本・宮藤官九郎、演出・山室大輔を見た。文化祭って凄い風俗だよなあ・・・システムっていうか、イベントっていうか、行事っていうか、なにしろ・・・文化の祭りである。ある意味、人間のすべてじゃないか・・・どんだけ文化祭好きなんだよ。好きだよ・・・できれば一生、文化祭をやっていたいくらいだよ。明日、朝、目が覚めたら・・・前夜祭の思い出とともに・・・今日は初日だと思ったら気が引き締まるよ。なんてったって・・・もう搬出・搬入とか・・・準備作業は終わって・・・本番をエンジョイするだけなんだから・・・。

第1回青春祭 実行報告書

☆実施項目

・準備日および前夜祭

・一日目

・二日目および後夜祭

・撤収日

☆主題「熱くしなやかに燃え尽きて秋」

☆はじめに

翌年に合併して男女共学となる駒形大学付属聖駿高校の誕生を前に合併前の駒形大学付属三島高校と聖三島女学院が手を携えて行う共同作業は・・・

ただ今、開催中である。

男子は女子が・・・女子は男子が・・・ただ存在するだけで・・・至福なのである。

体温が上昇するので・・・秋でも熱気でムンムンなのだ。

お化け屋敷で・・・男子生徒がキャーッと叫んで何が面白いものか。

メイドカフェで・・・男子生徒が・・・いや・・・コスメこと村井(小関裕太)は別格だった。

そして・・・サンダルこと山田・ビルケンシュトック・京子(トリンドル玲奈)が男子にナンパされればみしまるくん(矢本悠馬)が凶暴化するのである。

そして・・・遠藤いずみ(富山えり子)は文化祭のヌシと化すのである。

メイン屋外ステージで「早押しの遠藤とクイズ大会」でチャレンジャーと対決し、メイン屋内ステージでは「相撲ミュージカルえんどう~髷を結う日」の主役を務め、さらにはちゃんこ鍋の出店もマネージメントする大活躍である。

今日は今まで 

どんな時より素晴らしい 

今日は今までの 

どんな君より美しい

エンドウの支配する文化祭は熱気に包まれ・・・教え子たちと青春祭神輿を担ぐ平助(錦戸亮)の心を躍らせるのだった。

しかし・・・りさ(満島ひかり)は平助に釘を刺すのだった。

「犯罪者がそんなに浮かれていいんですか」

「・・・合同文化祭が終ったら・・・すべてを告白するつもりです」

「青春祭が終ったら・・・姉は・・・三島から去ってしまいますよ」

「祐子さんには・・・今夜・・・告白します」

「告白・・・ですか」

もちろん・・・実の姉・蜂谷祐子(波瑠)は平助の初恋の人・・・りさの心は揺れるのだった。

そして・・・楽しい時間はあっという間に過ぎ去るのである。

祐子との待ち合わせ場所へと向う平助。

行く手に・・・サトシ(永山絢斗)が現れた!

「祐子に会いに行くのか・・・」

「・・・」

「そして・・・すべてを告白するのか」

「え」

「俺が・・・知らないとでも・・・」

「ごめん」

平助を殴り・・・蹴り倒すサトシ。

「俺が許せないのは・・・祐子とあれっきりになったことでも・・・放火犯人と疑われたことでも・・・高校中退になったことでもない・・・親友に裏切られたことだ」

サトシを殴る平助。

「お前がそれを言うな・・・裏切ったのはお前じゃないか」

「俺は・・・いいんだよ・・・こんなキャラだしさ・・・でも・・・お前は最高にいい奴じゃなきゃダメなんだ・・・」

「なんだよ・・・それ・・・」

「祐子に真実を話すのはやめろ・・・」

「なんでだよ」

「祐子は・・・お前のこと・・・好きだから」

「え」

「今度はイケルって」

「どの口が言う」

「いや、まじでイケル・・・だから行くな」

「どっちなんだよ」

その頃、明日の第二部にむけてリハーサルを繰り返すエンドウ。

「親方・・・私はどうすればいいんです」

「お前なら壁をきっと乗り越えられる」

「親方」

「さあ・・・跳んで見ろ・・・小結の壁を」

「はいっ」

「よし・・・次は大関の壁だ」

「はいっ」

「いいぞ・・・さあ・・・横綱だ」

「はいーっ・・・あああ」

「エンドウっ」

「親方ーっ」

「思い出せ・・・エンドウ、あの日の塩ちゃんこの味を・・・」

平助は・・・祐子と肩を並べた。

「原先生・・・私のことを・・・怨んでますか」

「え・・・」

「私のこと・・・嫌いでしょう」

「嫌いになるほど・・・祐子さんのことを知りません」

「ですよね・・・私も原先生のこと・・・何も知らないし・・・」

「・・・」

「時々・・・思うんです。あの日・・・あの事件がなかったら・・・私、どんな青春を過ごしてたのかなって・・・」

「ごめんなさい」

「サトシくんと付き合って・・・大学は別で別れて、別の人とつきあってまた別れて・・・それなりに恋愛をして・・・就職をして・・・結婚をして・・・どうして、原先生があやまるの」

「ごめんなさい」

別れることを前提として交際を始める魔性の女は平助を魅了するのだった。

一方・・・スナック「ガールズバー」では・・・銀ちゃんとヤスじゃなかった平太(風間杜夫)と善人(平田満)が修羅場に突入していた。

「なんだって・・・」

「だから・・・犯人は平助かもしれねえ・・・」

「銀ちゃん・・・なんだって今さらそんなこと・・・」

「すまねえ・・・ヤス」

「すまねえじゃ・・・すまねえよ・・・あんたに謝られたって・・・息子を呼んで来い」

「それだけは勘弁してくれ・・・あいつは文化祭が終ったらケジメをつけるから」

「何言ってんだ・・・俺は娘を・・・すべてを失ったんだぞ」

「だったら・・・あの時・・・娘を信じてやりゃあよかったんだ」

「・・・確かに俺は・・・世間に負けて・・・娘を信じることができなかった・・・」

「俺だって・・・同じさ・・・俺は息子を疑いきれなかった・・・」

「一緒にするな・・・娘殺された親と娘殺した男の親が一緒みたいな理屈じゃねえか・・・本当はてめえの保身なんだろう」

「・・・それもある」

「なんだとう・・・」

そこに割って入るサトシ・・・。

「やめてください・・・仲良くしてください・・・なんてったっておそろいのジャンバー着てるんですから・・・」

二人はごめんねウナギの特製ジャンバーを送られていた・・・。

「ヤス・・・こらえてくれ・・・子供がかわいくねえ親なんていないんだから」

「銀ちゃん・・・本当に銀ちゃんは・・・勝手なんだから・・・」

二人を見守るサトシ・・・。

サトシはいつだって・・・親友の幸せを願っていた。だが・・・祐子にキスを迫られて我慢できる男子なんていない・・・ただそれだけのことだったのだ・・・。

真相を知って走りだした祐子をりさが引きとめる。

「聞いたの・・・」

「あなたは知ってたの」

「うん」

りさは・・・姉よりも先に知ったことでうれしかった。

祐子はちょっと口惜しかった。

「あのね・・・」

「なによ」

「原先生のこと・・・許してやって・・・」

「それは無理」

「だよね・・・だけど・・・今までのこと・・・みんな水に流して・・・許してあげてほしいんだ・・・妹としてお姉ちゃんに・・・お願いしたいの」

「りさ・・・大人になったんだね」

「えへへ」

見事にシンクロする・・・祐子とりさ・・・まるで血がつながっているみたいだ。

この二人で「モスラ」の小美人が出来るレベルである。

「モスラは人間を許してやってくれと言ってます」

「でもゴジラは嫌だと言ってます」

「原先生は・・・きっと・・・明日・・・責任をとるよ」

見つめ合う美人姉妹である。

みゆき(森下愛子)の幻が平助に語りかける。

「いよいよだね」

「うん」

「明日だね」

「でも・・・後ろめたさがなくなったら・・・母ちゃんは・・・」

「なんだい・・・お前の母親は・・・ウシロメタファーだけの存在かい・・・お前の精神における母親心象複合体は・・・そんなに薄いのかい」

「そうか・・・母ちゃんは永遠に母ちゃんだよね」

「そうさ・・・いつだってお前を見守っているよ」

「母ちゃん・・・」

放火犯人(自称)の上にマザコンである。

そして・・・運命の二日目が始った。

待ちに待った中井貴子(黒島結菜)が東京からやってくるのだった。

東京モードのクネクネヘアから・・・三島モードのストレートヘアに戻る元生徒会長。

生徒たちは・・・歓待するのだった。

ナカイを・・・複雑な目で見つめるのは・・・あまりん(森川葵)とからくり人形(重岡大毅)・・・。

二人は・・・祐子とサトシとシンクロした存在である。

あまりんもからくり人形も・・・恋の遍歴を経て・・・祐子とサトシを乗り越えた存在となったのだ。

「親方~」

大盛況の「エンドウ」の裏で・・・ひっそりと催される「エビアングレイ」のリサイタル。

やわらかな風が吹くこの場所で

今二人ゆっくりと歩き出す

観客は・・・サンダル、神保愛(川栄李奈)・・・そしてあまりんの三名である。

寒く熱唱するからくり人形をあまりんは暖かく見つめるのだった。

祐子とサトシがそうなったかもしれない運命を未来の二人は実現する。

「君のために歌った・・・」

「最後まで聞いてたの・・・私だけだったもんね」

「・・・」

「本当は中井さんに聞いてもらいたかったんじゃないの」

「あまりんこそ・・・半田のことはもういいのか」

「私・・・やっぱり、海老沢くんのことが忘れられないみたい・・・」

「俺だって・・・ずっとあまりんのこと・・・」

一方・・・中井は最初から・・・ありし日のりさの発展系である。

りさが胸に秘めた思いを・・・中井は平助にぶつけることができたのだった。

そして・・・平助のために捧げた青春祭は実現し、あまりんに代ってメイドカフェのかわいい制服に身を包むナカイ。

平助はその眩しさに目が眩む。

平助にとってナカイは祐子でもあるのだ。

夢だった彼女のいる合同文化祭の模擬店に・・・今、平助は立っている。

「勝手に・・・参加しちゃってごめんなさい」

「大歓迎だよ・・・」

「えへ・・・」

「すごく似合ってるよ」

「あのね・・・もう一つお願いがあるんですけど・・・」

平助は彼女からおねだりされて恍惚になるのだった。

そして・・・エンドウは・・・ステージとステージの間に・・・ちゃんこ鍋の出前までするのだった。

あまりんからナカイへ。エンドウからナカイへ。女子たちの友情は共学になっても健在である。

そして・・・ナカイの夢を積極的に叶えるりさだった。

燃えあがるキャンプファイヤー。

そして・・・響き渡るオクラホマ・ミキサー。

フランケン半田(鈴木貴之)もクイズバカ昭島(白洲迅)も輪になって踊る・・・フォークダンスの集い。

ナカイは実現した夢の中で平助に愛を語る。

「ハズレなんて言っちゃったけど・・・平ちゃん先生は大当たりだったよ」

「まいったな・・・そんなことを言われたら・・・言えなくなっちゃう」

「?」

すでにナカイには東京の生活が待っている。

しかし・・・担任教師の平助に恋をして一緒に踊ったことは永遠の宝物なのである。

だから・・・ナカイは・・・新幹線で帰って行くのだった。

ナカイは消えて・・・りさとなって蘇るのである。

過去と未来が交錯しているのが現在なのだ。

そして・・・青春祭はクライマックスを迎えるのだった。

シスターと僧侶のコスチュームをチェンジしてダンスを披露する教職員一同。

あいつもこいつもあの席を

ただ一つねらっているんだよ

このクラスで一番の

美人の隣を

そして・・・MC神保愛と・・・大木(竜星涼)による・・・「ミスター&ミス聖駿コンテスト」開催である。

ミス聖駿は・・・コスメ。

そしてミスター聖駿は平助だった。

すべてのお膳立ては整ったのだった。

壇上に上がりスポットライトを浴びる平助。

青春の光と影が会場を包む。

「こんな賞をいただけるとは・・・光栄の極みです・・・しかし・・・辞退したいと思います・・・僕には資格がないからです」

平助はためらってりさを見た。

りさは頷いて励ます。

「なぜなら・・・三女と・・・トンコーの合同文化祭が・・・これまで行われなかったのは・・・僕が・・・嫉妬に狂って・・・ロケット花火を打ち上げたからなのです。僕が真犯人です」

プレゼンターだったシスター吉井(斉藤由貴)は・・・平助を追及するのだった。

「なぜもっと・・・早く、告白しなかったのです」

「こわかったのです・・・そして・・・学校が好きだったのです。友達が・・・マドンナ先生が・・・売店のコーヒー牛乳が・・・般若心経までもが・・・好きでした。それは僕の青春そのものでしたから・・・それを失うのがこわかったのです。やがて・・・僕は・・・合同文化祭が・・・男女共学が現実になるまで・・・この学校から離れることはできないとまで・・・思うようになりました」

「それが罪滅ぼしになると・・・そんなことで・・・罪を贖うことはできませんよ」

「別にいいんじゃね・・・」

吉井の断罪に異を唱える・・・神保愛。

「僕は・・・責任をとるつもりです」

「ちょっと待って・・・そこのちんちくりん・・・今なんて・・・」

「神保っす」

「別にいいんじゃないかって・・・彼女は言いました」

大木だった。

「しかし・・・教師が放火するなんて」

「教師が放火したんじゃなくて・・・放火魔が教師になったんでしょう・・・」

どよめく会場。

「こんなに楽しい青春をくれたのは原先生です。私たちが保育園にいた頃・・・先生が何かしたって・・・私たちには無関係だし・・・まあ・・・どうしてもやめたいならやめてもいいですけど・・・だって・・・私たち、もうすぐ卒業だから」

「来年、三月までやってそれから三島コロッケの東京店をやればいいよ」

「だれが安部ちゃんだっ」

ナカイは不在だが・・・もはや・・・生徒全員がナカイの意志を代弁するのだった。

「でも・・・僕は・・・今日で辞めます」

「ちょっと待った・・・」

警察官とともに乱入するサトシ。

「腐ったミカンではありません・・・この人たちは・・・平助の無実を明かしてくれるのです」

「無実・・・」

茫然とする一同だった。

「とにかく・・・今日はここまで・・・」

青春祭は幕を閉じた。

放火事件の担当刑事は説明した。

「確かに・・・現場にロケット花火の残骸はありましたが・・・現場検証の結果・・・それが失火の原因になった可能性は万に一つもありません」

「え」

「十万本発射したら一発当たる確率ですので・・・」

「でも・・・可能性は・・・」

「お前・・・何本撃った・・・」といつの間にかいる平太。

「二十本・・・」

「無理だな・・・」

「これは推定無罪ですな」

「大体・・・なんで・・・礼拝堂の窓があいてたんだ」

「閉め忘れですかね」と三女教頭の浜口(宍戸美和公)・・・。

「そうなると三女の管理責任が・・・」

「そもそも・・・生徒が屋上にあがれたのは・・・トンコーの管理ミスです」とトンコー教頭のクイズ大王・豪徳寺・・・。

「燭台が風で倒れたのかも」

「ネズミの仕業かも・・・」

もはや・・・平助の罪をうやむやにしたい一同だった。

「私なんか不倫してました」とどんまい先生(坂井真紀)・・・。

「しかし・・・」

「みんなお前に辞めてほしくないんだよおっ。だって分かるもん!・・・テメエの惚れた女がさ・・・他の男とキスしてたらさ・・・俺だってロケット花火飛ばすよ!・・・俺も本来は飛ばす派だ!・・・それにくらべたら火事くらいどうってことないよ」

「ヤス・・・よく言った」

「銀ちゃん・・・」

それが・・・青春だからな。

うっかり、とりかえしのつかないことを・・・することだってあるよねえ。

しなかった人はたまたまだよねえ。

一体・・・俺の十四年間は・・・と脱力しかける平助。

しかし・・・その耳にナカイが囁きかける。

ひかりは止まる のぞみは通過

水の都 新緑の匂い

友と語らう コロッケの味

ゆっくり走る 駿豆線

それは・・・後片付けに入った生徒たちの口ずさむナカイ作詞、平助作曲の聖駿高校の校歌だった。

どんなに楽しい青春も・・・終わる時が来る。

今がその時なのだった。

祭りが終わったら現状復帰して・・・解散・・・。

青春も後始末が肝心なのである。

そして・・・新しい朝が来た。

もてないさえない・・・かっての平助を現在に受け継ぐ成田(船崎良)・・・。

「これから・・・何もいいことがなかったとしても平気なくらい・・・最高の思い出が作れました・・・原先生ありがとう・・・」

心を鷲掴みにされる平助だった。

「結婚しましょう」

「え」

「いや・・・成田がかっこよかったんで・・・俺もがんばんなきゃって」

「ええ・・・しますよ」

「ええええええええええええ」と驚愕する生徒一同。

「しますけど・・・今だったかなあ・・・今かよっ」

「えへ・・・」

朝日の中・・・霊峰富士は微笑むのだった。

そんな青春はあきるほど見て来たのだ。

そして旅立ちの日が来た。女生徒たちは希望の進学をして・・・男子生徒たちはそれなりの道に進む。

このままで成績別クラス編成をすると・・・男女別クラスになるよね・・・。

サトシと祐子はなんとなく・・・いい感じになり・・・。

ホリコシ出身のエレナッチョ(中村静香)と肩を並べて花嫁修業をするりさ・・・。

そして・・・平助は・・・ローカルタレントとなったサンダルをアシスタントに起用した「ごめんね青春!」の二代目カバさんに・・・。

「もしもし・・・」と電話するのは第三の教頭に格下げされた初代カバさん(生瀬勝久)だった。

「元校長なんだから・・・せめて教頭筆頭でしょう!」

「一方的に話さないで」

「あ・・・ごめん」

「それではごめんねウナギの缶詰をお送りします」

「え」

人はみな・・・もやもやしながら青春から旅立って行く。

そして、青春は・・・いつだって謝罪を受け入れて微笑んでくれるのだ。

☆まとめとして

・・・素晴らしい合同文化祭だったと考えます。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

Hcb201412ごっこガーデン。パーティー専用ガラスのテラス。バースディーパーティー開催中・・・。じいや「いつもお世話になっておりまする・・・永遠の感謝をこめて・・・お祝いさせていただきます」

まこお誕生日おめでとうごじゃいましゅ~

くう様のお部屋

ikasama4様のお部屋

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2014年12月22日 (月)

思い置く言の葉なくて終に逝く道は迷わじ成るにまかせて・・・と黒田如水(岡田准一)

「小谷、北ノ庄、大坂と私の人生落城だった・・・と淀の方」(二階堂ふみ)・・・でもよかったけどな。

まあ・・・主人公には敬意を払わないとね。

辞世の言葉としてはかなり投げやりだけどな。

「何も思いつかん・・・死んだらどうなるかなんて誰にもわからんのだから・・・なるようにしかならん」

味も素気もないよね。

まあ・・・一種の戦馬鹿だからな・・・戦のない世の中になんか・・・なんの未練もなかったんだよね。

何故か、最後だけそういう黒田如水だったよな。

なんで・・・最初からそういう人物として描かなかったんだろうな。

聞くだけ野暮だろう・・・。

せめて・・・おたつ(南沢奈央)の死を原動力とした描き方があったらよかったよねえ。

道具としての「女」でいいのか・・・という怒りとかね。

マララ的な正義か。

そうでありながら・・・平和的解決の手段として政略結婚がある矛盾とか・・・。

そういう葛藤が描ける要素は黒田家の中だけで充分にあったよね。

もちろん・・・だし、茶々の存在感は抜群だったので・・・そこを掘りさげてもいい。

だしの信仰と殉教とか、茶々の敗者の凌辱とかもったいなかったよねえ。

そこにこそ・・・聖者としての官兵衛を置くべきだったのさ。

矛盾に満ちた人間というのが・・・このスタッフには難しいんだろうねえ。

無理して辻褄をあわせようとするから・・・物凄く平坦な物語が出来上がるんだよね。

で、『軍師官兵衛・最終回(全50話)』(NHK総合20141221PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は18行・・・まあ・・・しょうがないところですかね。関ヶ原はかなり「真田太平記/池波正太郎」のまんまな感じでしたな。なんていうか・・・脚本家は・・・もう少し・・・自分を全面に出せばいいのに・・・と考えます。部分部分はかなり・・・面白いところもあるのですが・・・うねりのようなものがないんですよね。さざなみ・・・なのかもしれませんな。父と息子の関ヶ原日記みたいな感じ?・・・で・・・心が動かないから最終回なのにイラスト公開な~し。残念でございますが・・・あくまでマイペースでお願い申し上げます。まあ・・・三成とか又兵衛も・・・もう一つインパクトにかけましたよねえ。ただの敵役だったり・・・ただのお伴だったり・・・ああ・・・もうそうなっても仕方ないよねえ・・・という部分が想像におまかせします・・・ですからねえ・・・。まったく・・・のめりこめないという。物凄い欲求不満で・・・もう・・・戦国シミュレーションゲームをやりたくてやりたくてたまりません。だから私信はコメント欄でと何度言わせるのかっ。

Kan050慶長五年(1600年)九月十五日、関ヶ原にて徳川家康軍(東軍)と石田三成軍(西軍)が激突。形式的には大老徳川家康と大老毛利輝元の王座決定戦となっているが・・・豊臣政権主流派と反主流派の対決である。もちろん・・・双方ともに我こそは主流派だと叫ぶのだが・・・現実は勝者のものなのだ。話を盛り上げるために・・・徳川も苦戦したことになっているが・・・数の上で圧倒した東軍の圧勝である。西軍はほとんど壊滅状態であり・・・主な主将がほとんど単独で逃亡した上で逮捕されるという・・・無惨な最期がすべてを物語っている。九月十八日、石田三成の居城である佐和山城落城。二十一日、石田三成捕縛。毛利輝元は大坂城を開場し家康は豊臣政権の実権を握る。この頃、黒田如水は関ヶ原の敗報に接するが、澱みなく九州攻略戦を続行する。十月一日、石田三成処刑。十四日、黒田軍は鍋島軍と合流し小早川秀包の久留米城と立花宗茂の柳川城の同時攻略を開始。さらに加藤清正軍が合流し、西軍側は降伏。四万人に膨れ上がった黒田勢は島津の領土への侵攻を開始。しかし、島津義久と家康の和議が成立し、十一月終戦。慶長八年(1603年)、徳川家康征夷大将軍となる。慶長九年(1604年)三月二十日・・・如水死去。慶長二十年(1615年)、大坂夏の陣にて後藤又兵衛基次戦死。

「おれ・・・死ぬんだ」

「え・・・殿・・・又兵衛は信じませんぞ」

「モー子ばっかりに気をとられていたけど・・・アニもいたんだよな」

「いましたよ・・・もう中盤からずっと・・・」

「なんだかんだ・・・存在感が薄いから・・・」

「かっての同級生が・・・今は殿の息子と同世代ですよ・・・」

「それが大河ドラマなんだよ」

「とにかく・・・妄想上では不死身だから・・・死なないんでしょ」

「再生能力が高くても寿命がくれば死ぬタイプなんだと思う」

「またまた・・・とかなんとか・・・言ってなかなか死なないんでしょう」

「だけど・・・死ぬんだよ」

「映画化とかは・・・」

「ないんだ・・・大河ドラマ史上・・・ラストは映画でというパターンはないらしい」

「NHKなので」

「まあ・・・やるべきことはやった・・・後はなるようになるだろう・・・」

「左手の件は・・・」

「あれは・・・長政に死ねって言ってるのと同じだからな・・・真田家ならともかく・・・黒田家ではない・・・一応・・・唯一の倅だしな・・・ちょっとした洒落だよ」

「なるほど・・・」

「さ・・・死ぬぞ」

「ぶっさん・・・じゃなかった・・・殿・・・殿~っ」

こうして、戦国時代の幕はほぼ下りた・・・。

来年・・・大河ドラマ・・・レビューできるのか・・・微妙だ。

もう少し・・・お茶の間に歴史を伝える使命感を持ってもらいたいよね。

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2014年12月21日 (日)

公害の件は口外させないダークスーツの男たち(倉科カナ)

嵐の前の谷間である。

なんていうか・・・Nが終ってしまったのでやや脱力してるよね。

まだ・・・「ごめんね」があるじゃないか。

まあね・・・。

さて・・・この脚本家で・・・このテーマ・・・。

物凄い無理ゲーの匂いがします。

いや・・・なかなか頑張ってるよ・・・。

きっと・・・ベトナムロケがしたかったんだよな。

いや・・・ベトナムロケができるんで・・・後はつけたしたんだろう・・・。

・・・おいっ。

で、『ダークスーツ・第1回~』(NHK総合20141122PM9~)脚本・荒井修子、演出・伊勢田雅也(他)を見た。日本の家電メーカーをめぐる世界市場の攻防戦はきっといろいろと面白いのだろうが・・・それを全六話の土曜ドラマでまとめるのは・・・いろいろと無理な感じがして・・・無理なんじゃないかなと思っていると・・・やはり無理でした的な・・・ドラマです。まだ最終回はあるけどな~。

巨大企業らしい・・・電機メーカー・ハシバは高品質・高価格の家電商品戦略が仇となり・・・経営危機に陥っていた・・・。米国の企業・アダムス・インダスストリー社長の松木(石丸幹二)はハシバのメイン・バンクである菱川あけぼの銀行融資部の招聘で・・・ハシバ本社社長に就任する。ハシバの子会社で働く一之瀬(斎藤工)は松木の作る再建チームの一員としてスカウトされるのだった。

急に忙しくなった一之瀬が特定疾患・強皮症という難病で入院中の妻・美砂子に「いつも見舞いに来れなくてごめん」と謝るドラマである。

美砂子は優しく「いいのよ」と微笑むのだった・・・。

・・・おいっ。

まあ・・・大競争時代にあって・・・体質的な問題を抱える大企業がおいそれと一発逆転のアイディアで逆転勝利は難しいよね。

再建チームには本社知財部に籍を置く高根沢(市川由衣)がいて紅一点である。

他は男である。

ちなみに東大生の男女比は女子が五人に一人・・・つまり戦隊的なアレである。

高根沢のスーツアクションはないがタイトなスーツは着用します。

本社製品開発部の番場(満島真之介)は「国際競争力獲得」のために「低品質・低価格」の商品開発を提案し、上層部からにらまれていた。

営業力を買われてチームのリーダー的な立場となったレッド一之瀬は・・・経理部の友人・島田(水橋研二)との雑談からヒントをもらい・・・海外での商品生産の可能性に取り組む。

ベトナム育ちの番場は「ベトナムでの燃料電池生産」を提案する。

早速、現地の実情を調査に来たレッドは好感触を得るが・・・問題が発生する。

現地の技術レベルではハシバの高品質の製品は生産できないのである。

まあ・・・現地にいかなくても・・・分かるよね。

ベトナム出張中に急変する美砂子の病状。

駆けつけるレッド。

「すまない」

「いいのよ」

・・・おいっ。

「貧乏人は高くていいものなんかいらない・・・安くてまあまあのものを作ればいいのに・・・ハシバはそういうものを・・・プライドが邪魔して作れないんですよ」

番場は不満をもらすのだった。

「じゃ・・・技術だけを売って・・・ライセンス料をとればいいのか」

「だね」

ライセンス事業に特化して再建を目指す案に・・・乗る松木社長だった。

「そのために生産ラインの子会社は売却する」

この方針を打ち出すと・・・井岡(大杉漣)、瀧(榎木孝明)、里中(石丸謙二郎)、塩崎(大和田伸也)、最上(柴俊夫)・・・といった濃厚な役員たちは・・・全員一致で社長を解任するのだった。

その裏には・・・実はハシバ会長の・・・御園(竜雷太)の存在があった。

そして・・・御園は・・・松木の・・・実の父親なのである。

かなり無理矢理な因縁の対決である。

一方・・・一之瀬の友人の島田は突然自殺する。

島田は不正経理の証拠を掴み・・・告発するかどうかを苦悩しすぎて死んじゃったのだ。

ある意味・・・小学生レベルの展開である。

一之瀬は島田の掴んだ不正が・・・「本社と子会社を利用した裏金作りのシステム」の存在を匂わせることに気がつく。

「子会社を売却できない事情」がそこにあったのだ。

役員たちは口々に言う。

「ハシバには恐ろしい闇があるんだよ」

しかし・・・・・・最終回を前にしてたいして恐ろしくない闇はすでに明らかになっているのだった。

そんなことばかりやっているので妻の見舞いにいけない一之瀬だった。

「すまない・・・」

「・・・いいのよ」

まあ・・・一種の春は馬車にのってごっこだな・・・。

最終回の見どころは・・・因縁の対決が・・・どうなるか・・・だけである。

あは、あはは、あははははははははは。

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2014年12月20日 (土)

愛したい人と愛されたい人が別の人だった晴れの日(榮倉奈々)

心というやっかいなものが・・・生きている間はつきまとう。

自分の心とうまくやっていける人はそれだけで幸いと言えるだろう。

たとえば嫌な気持ち。

嫌な気持ちにさせる嫌な思い出。

嫌な思い出を呼び起こす人物、風景、そして言葉。

すべてを拒む心。

強すぎる心は身体を蝕む。

誰かに会うだけで息が苦しくなり、誰かを想うだけで震えが止まらない。

失われたものがいつまでも留まり続ける心。

そういう心がなければ・・・人生はどんなに楽だろう。

心をもてあまし・・・心がなくなるように願っても・・・心は忍びよる。

誰にもその心を見られぬように・・・ひっそりとしていたい。

しかし・・・そのことを誰かにわかってもらいたい。

わかってくれる人がいたら・・・一瞬、心が消えるような気がするから。

そんな心を失くしたい人のために・・・。

我ら(notre)のために・・・。

で、『Nのために・最終回(全10話)』(TBSテレビ20141219PM10~)原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・塚原あゆ子を見た。シリアスなドラマとしては2014年を代表する傑作に仕上がったな・・・このトリオは現時点で最強なんじゃないか。「」に続く原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・塚原あゆ子のトリオである。もう一作は見たいよね・・・。心がつかみどころがないものだということをこれほどシニカルに描いてくるドラマは・・・稀だものな・・・。ずっと文句を言い続けた相手が聾唖者だったみたいな・・・深淵が目の前に広がっているような・・・。恐ろしいトリオだなあ・・・。

【2004年・12月24日午後5時30分】約束の時間に花屋に変装した西崎(小出恵介)は間に合わなかった。過ぎ去る時間は二度とは戻ってこない。

希美(榮倉奈々)を安藤(賀来賢人)の恋人だと信じている野口(徳井義実)は・・・サディスティックな衝動を高まらせ・・・安藤が世界の果てのようなダリナ共和国に海外赴任することを賭けた将棋の勝負をしていたことを告げる。恋人の希美が野口に勝利を手解きしたことで安藤が悲惨になることが楽しくて・・・それを知った希美が困惑するのが嬉しいのである。サディストにとって人の不幸は蜜の味なのだ。

「こんなことで・・・安藤の将来を決めるのですか」

「こんな勝負を・・・安藤くんは受けたんだよ」

希美の心は・・・家庭内暴力を受ける奈央子(小西真奈美)を救い出しにくる西崎から・・・前途洋々な守るべき安藤にスライドする。

心に闇を抱え・・・いざとなったら殺人未遂もしてしまう自分とは違い・・・安藤は希美にとって絶対に守らなければならない光の象徴だった。

それを愛と呼べるなら・・・希美は安藤を愛していた。

希美は安藤を愛したい。しかし・・・希美が愛されたいのは別の人なのである。

それが・・・西崎なのか・・・それとも・・・。

高層タワーマンション・スカイローズガーデンのコンシェルジュに入館を許された西崎は最上階のラウンジに向かう安藤とエレベーターで鉢合わせしてしまう。

「なんで西崎さんがここに・・・」

「花屋のバイトだ・・・こんなところで遇うとはな」

「何階?」

「48階だ・・・」

「え」

「野口氏の部屋だ」

「何か・・・たくらんでるだろう・・・それって・・・杉下の同級生も関わっているのか」

「偶然だ」

「偶然のわけないだろう・・・」

「じゃ・・・因縁というやつだろう・・・何しろ・・・彼は杉下の罪の共有者・・・いや究極の愛の相手だ」

「・・・」

「なかなか・・・いいやつだ」

西崎は・・・何故、そんなことを言ったのだろう。西崎は杉下を愛しているから・・・安藤を愛しているから・・・二人が結ばれることを願っているから・・・かもしれない。

ただ・・・文学者として・・・そういうセリフを言ってみたかっただけかもしれない。

もちろん・・・約束の時間に遅れた西崎はただ・・・心のままにそれを言ったのだ。

しかし・・・今夜、希美にプロポーズしようと・・・ポケットに指輪を忍ばせている安藤にとって・・・希美の幼馴染・慎司(窪田正孝)の存在は重くのしかかる。

希美が焼き鳥屋の誘いを断るほど会いたがっていた謎の男。

希美が島で再会したがっていた幼馴染。

相手の罪を半分引き受けて相手にも知られずに黙って身を引く究極の愛の相手。

希美が・・・安藤の妄想の中で最も頼りにしている男。

安藤はつぶやく。

「罪を共有することが・・・究極の愛なもんか・・・それはただの自己満足じゃないか」

しかし・・・その罪の共有仲間から・・・自分が疎外されていることは感じる安藤だった。

4803号室の書斎

「安藤くんが電気もガスも通ってない僻地に飛ばされることになったら・・・希美ちゃんはどうするんだい・・・ついていくのかな・・・それとも彼とは別れて・・・」

「・・・」

希美の心の中には危機を脱出する方法が犇めく。

どうすれば・・・安藤を救えるのか。

将棋の勝負がなくなればいい。

どうすれば将棋の勝負がなくなるのか。

4803号室の玄関。

西崎が到着し・・・奈央子が出迎える。

奈央子の身体を抱きしめる西崎。

「助けて」

「わかっている・・・さあ、逃げよう」

奈央子の手をとり・・・扉の外へ向かう西崎。

しかし・・・奈央子は拒絶する。

「違う・・・連れ出してほしいのは・・・希美ちゃん」

「え」

「奥の書斎に・・・主人と二人でいるの・・・私に隠れて・・・こそこそ何かをしているのよ・・・今日の食事会だって・・・あの子が主人をそそのかしたのよ」

「・・・」

「あなた・・・あの子と仲がいいんでしょ・・・あなたならできるでしょ」

奈央子の言葉は西崎の理解を超えそうになる。

野口氏の暴力と・・・それに依存する自分の関係を・・・西崎に断ち切らせるために・・・ここに呼んだ・・・のではなかったのか。

解放されたいのではなかったのか。

4803号室の玄関前。

安藤は・・・自分をのけものにする希美たちの邪魔をしてやろうと思った。

希美と西崎・・・そして慎司を困らせようとした。

外から鍵をかけて・・・もし出られなくなったら・・・自分を仲間に入れるしかない。

「安藤・・・助けて」と希美に言われたい。

安藤は希美に頼られたかったのだ。

安藤は・・・とりかえしのつかないことをするために・・・チェーンをロックした。

そして・・・希美からの救いを求める電話を待つ安藤・・・。

4803号室の書斎。

希美は安藤を守る手を思いついた。

野口氏が・・・西崎に暴力を振るい・・・警察沙汰になったら・・・将棋の勝負どころではなくなる。

希美はいざとなったら手段を選ばない女なのだ。

「私は安藤についていきます・・・奈央子さんと同じです・・・奈央子さんはこの家を逃げ出すつもりです」

「?」

「転んで・・・流産したなんて嘘ですよね」

「奈央子が・・・そう言ったのか」

西崎が野口氏から奈央子を救い出そうとしたように・・・希美も野口氏から安藤を救い出そうとした。

そのためには・・・西崎が野口氏から暴力を受けるのが最適だと希美は決断した。

「あなたより・・・奈央子さんを大切に思う人が・・・今、迎えに来ています」

最上階のラウンジ。

安藤は希美からの電話を待つ。

【2004年・12月24日午後6時】約束の時間に「シャルティエ・広田」のケータリング・サービスをするために慎司はスカイローズガーデンの受付に到着した。

しかし・・・コンシェルジュの呼びかけに応答しない住人。

4803号室のリビングルーム。

「お前か」

野口氏は西崎を発見していた。

電話の呼鈴が響くが・・・室内は修羅場に突入していた。

「お前が・・・奈央子に言い寄っていた男か・・・お前のせいで俺たちの子は死んだ・・・お前さえいなければ俺が奈央子を疑うことはなかった・・・奈央子が流産したのは俺が殴ったからじゃない・・・みんなお前のせいだ」

「・・・」

西崎は激しい野口氏の暴行に耐えながら・・・玄関を目指す。

奈央子に逃亡の意志がない以上・・・撤退するしかないのだった。

しかし・・・玄関には外からチェーンがかけられていた。

西崎は逃げることができなかった。

野口氏の怒りは奈央子に向かう。

「お前・・・俺を裏切るのか・・・」

「違うわ・・・」

「俺を捨てるのか・・・」

「そんなことしない・・・」

希美は意外な展開に茫然とする。

「西崎さん・・・」

野口氏は奈央子の首を締め上げる。

「あいつとどこへ逃げるつもりだ」

「どこにも行かないわ」

「嘘つけ」

「あなたと・・・一緒に・・・」

西崎は立ち上がりナイフを手に取る。

「もうやめてくれ」

「・・・」

しかし、野口は刃物を見ても平気で西崎に飛びかかる。

たちまち・・・ひるむ西崎はナイフを野口に奪い取られる。

ナイフを西崎に振りかざす野口。

間一髪、背後から燭台で奈央子が野口を殴り倒す。

野口の後頭部からあふれ出す血潮。

反射的に布で止血をする希美。

「触らないで・・・主人から・・・離れて・・・」

「・・・」

「この人は私だけのもの・・・」

「・・・」

「早く・・・ここから出て行って・・・」

「・・・」

「二人とも・・・出ていって・・・」

奈央子は西崎を見る。

「あなたなら・・・私とこの人を助けてくれると思った」

「・・・」

「だから・・・優しくしてあげたのに・・・傷だってなめてあげたのに・・・」

奈央子の中で心は散乱する。奈央子は夫を守りたかった。奈央子は夫に守られたかった。夫を独占したかった。そのために希美が邪魔だった。西崎に希美をとりのぞいてほしかった。しかし・・・西崎は・・・奈央子と同じ傷を持った仲間だ。夫から殴られていいのは自分だけだ。夫は西崎を殴ってはいけない。それは許されない。西崎は奈央子だ。西崎は奈央子に優しくしようとした。西崎を守りたい。そして夫の暴力を自分だけが享受したい。だって私たちは愛し合っているんだから。

「お願い・・・二人だけにして・・・」

「西崎さん・・・行こう」

希美は携帯電話で救急車を手配しながら玄関に向かう。

しかし・・・ドアにはチェーンがかかっている。

(チェーン・・・なぜ・・・チェーンが・・・チェーンをかけられるのは・・・安藤)

後ずさる希美はテレビのリモコンを踏む。

部屋に響き渡るジングルベルのコーラス。

奈央子は床から拾いあげたナイフで自傷する。

奈央子の腹部に深く食い込む凶器。

「やめろおおおおおおおおおお」

西崎の絶叫が虚しく響く。

奈央子の狂気は沈静して行く。

「彼と一緒に・・・ここここのへへへへへやをでででて」

「奈央子・・・」

西崎を見る奈央子・・・。

「ひどいことをして・・・ごめ・・ん」

錯乱した奈央子の中で閃く部外者への謝罪。

西崎の心に蘇る・・・母親の狂気と沈静・・・。

制御できない暴力衝動と涙の悔悟。

狂っていても正気。正気でいながら狂う。

ずっと正気の人には理解できない・・・その心の浮沈。

「奈央子・・・みんな・・・きっと理解に苦しむよ」

壮絶な展開に強烈な反省に襲われる希美。

「私が・・・野口さんにあんなことを言ったから・・・こんなことになっちゃって・・・」

我を失い始める希美を西崎が制止する。

「聞いてくれ・・・」

「・・・」

「野口を殴ったのは俺だ」

燭台を拾いあげる西崎。

「奈央子を刺した野口を俺が殺した」

ナイフを野口の手に握らせる西崎。

「何を言ってるの・・・西崎さんは・・・何もしてないじゃない」

「奈央子を人殺しにしたくない」

「そんな・・・」

「理由はどうあれ・・・奈央子は俺を守ってくれた。俺がそもそも悪いんだ。奈央子は俺の代わりに野口を殺した。俺が野口氏を殺したことにしたって・・・問題ない」

「なんで・・・嘘をつかなきゃいけないの」

「俺は・・・愛している者を見殺しにした・・・その罪を償いたい・・・母親も・・・奈央子も俺が殺したようなものだ。しかし・・・罪を自分では裁けない。奈央子みたいに狂っていないからな。俺は・・・裁かれて・・・刑に服し・・・それから人生をやり直したいんだ・・・君や・・・安藤のように普通に生きてみたいんだ」

「そんなの・・・明日からそうすりゃいのよ」

「それはできない・・・なあ・・・杉下・・・お前は・・・俺のこと、愛しているだろう」

「何言ってんの・・・」

「だから・・・罪を共有してくれ・・・俺のために嘘をついてくれ」

「そんな嘘・・・つき通せないわ」

「お前は愛したいけど愛せない・・・愛した相手に愛してもらいたくない・・・愛していない相手に愛されたい・・・心の病気だ・・・俺ならお前を愛せるし、お前も俺を愛せるだろう・・・お前の闇を俺が引き受けるよ・・・」

「そんなの・・・できないよ」

電話のベルが響く。

床の上に転がった杉下の携帯電話には安藤からの着信がある。

希美はフロントからの電話をとった。

「ケータリングサービスの方が到着なさっています」

「かわってください」

「かしこまりました」

「・・・」

「かわりました・・・」

「助けて・・・助けて・・・成瀬くん」

「・・・すぐにうかがいます」

慎司は4803号室に到着した。

「杉下・・・」

「成瀬くん・・・ごめん」

「どしたん・・・なんがあった?」

西崎は呟いた。

「作戦は失敗だ・・・警察に通報してくれ・・・警察には作戦のことは黙っておこう・・・俺が一人で奈央子を連れ出そうとした・・・そしてこうなった・・・」

どうなったのか・・・と慎司は問わなかった。

横たわる二つの死体。

血まみれの希美。

恐ろしいことがあったのだ・・・それは間違いない。

そして・・・希美は助けを求めて来た。

「杉下と俺はなんも知らんかった・・・全部・・・偶然だった・・・それでいいね」

慎司がいれば・・・何でもできる。

希美の心には闘志が漲った。

西崎が望むことを叶えてやるために嘘をつくくらい何でもない。

だって・・・希美にはいつでも励ましてくれる慎司がついているのだ。

「がんばれ」

慎司は希美の手をとった。

「がんばれ」

希美は慎司の手を振りほどいた。

「杉下を守ってやってくれ・・・」

奈央子の心は掴みきれない西崎だったが・・・慎司と希美の心は手に取るようにわかるのだった。

そして・・・4803号室に安藤が到着した。

奈央子は・・・惨状を安藤に見せたくなかった。

安藤を傷つけてはいけないのだ。

しかし・・・強引に室内に踏み込む安藤。

「入らないで」

「何があった」

「お願いだから」

「・・・」

安藤は死体と西崎を見た。

「逃げられなかったのさ・・・」

「俺のせいだ・・・」

安藤以外の三人は・・・密室を作った犯人が誰かを理解した。

パトカーのサイレンが鳴り・・・警察が到着した。

チェーンのことは話題にならなかった。

西崎は野口が奈央子を殺したので野口を殺したと証言した。

奈央子は何も見ていなかった。

慎司も何も見なかった。

安藤は何も知らなかった。

慎司には分かっていた・・・希美が守ろうとしたのが安藤だったことが・・・だから慎司は身を引いた。

安藤には分かっていた・・・希美が頼ったのが慎司だったことが・・・だから安藤は身を引いた。

偶然、この部屋に居合わせた四人は別れて・・・別々の人生を歩み出す。

秘密を守るためにはそうするしかなかったのだ。

希美の愛は引き裂かれ・・・十年の歳月の中に拡散していった。

希美が発病し・・・余命一年を宣告されるまで・・・。

そして・・・西崎が刑に服し・・・出所するまでは・・・。

【2014年(現在)】ホスピスのある施設で余生を過ごす準備を始めた希美の元へ慎司がやってきた。

「島でオープンする店に誘われた・・・」

「帰るん?」

「一緒に帰らん?・・・ただ・・・一緒におらん?」

「もしかして・・・病気のこと・・・西崎さんに・・・」

「親にも世話になりたくないん?」

「もう何年も会ってないし・・・母親と弟は高松におるんよ・・・お母さん、随分前に再婚したんよ・・・」

「ほうか」

「会いにきてくれて・・・ありがとう・・・成瀬くん・・・自分の野望・・・覚えとる?」

「どの野望?」

「結婚した相手よりあとに死ぬこと・・・もし一緒になっとったら・・・私が成瀬君の野望かなえられとったね」

「わからんよ・・・俺が突然死するかもしれん」

「二人して早死にか・・・」

「杉下の人生や・・・杉下の思う通りにしたらええよ・・・でも、待っとるよ」

「甘えられん」

「待っとる」

甘く・・・美しい・・・一瞬。

それが永遠ならいいのにね。

ずっとずっとこの瞬間だったらいいのにね。

バラバラだった希美の心がゆっくりと動き始める。

高野夫妻の心も一つになる。

高野(三浦友和)はずっと疑い続けた妻・夏恵(原日出子)の嘘を告白されて安堵した。

「周平さんとなんかあったんだな」

「もう・・・昔のことよ」

「それで・・・あんなことしたんか・・・」

「自分でもようわからん・・・夢中だったんよ」

「ほうか」

「許してくれんでええよ」

「許すも何も・・・昔のことだ」

「そう・・・」

「もう・・・あれこれ言う元気もないよ・・・年だもの」

「ごめんね・・・」

「ええんよ・・・なっちゃんがおらんかったら淋しくてたまらんもん」

「ありがとう」

「なっちゃん・・・声出てるな」

「あ」

仲睦まじい老夫婦なんてこんなもんだ。

夏恵は高野の胸でむせび泣いた。

主治医の多田(財前直見)に転院の相談をする希美。

「高松の病院を紹介するよ」

「まだ・・・決めてません」

「でも・・・そろそろ決めないとね」

「誰も悲しませずに死ぬことはできませんか」

「死んで喜ばれる人もいるけどね。誰も悲しませずに生きることと同じくらい・・・難しいかもね・・・いいじゃない・・・生きているものが悲しむのは・・・生きているものの自由なんだから」

「・・・」

「一人でも・・・誰かと一緒でも・・・死ぬ時は一緒よ」

高野は希美を訪ねた。

「二人には申し訳なかった」

「ええんです・・・夫婦喧嘩は犬も食べませんから・・・お構いなく・・・」

「今までのおわびにもならんけど・・・これ・・・希美ちゃんのお母さんの住所・・・」

「いまさら・・・ええですよ・・・親を捨てるように・・・島を出てきましたから」

「わしには・・・子供がおらんから・・・本当のことはわからんが・・・もしも・・・子供がおったら・・・どうしてるか・・・気になって気になってたまらんと思うよ」

「・・・今度、高松に行こうと思ってます・・・」

「ほうか」

「弟に子供が生まれたんで」

「そりゃ・・・めでたいな」

高野は安藤を訪ねた。

「私が長年知りたかったことはようやく分かりました・・・しかし・・・あの事件のことは・・・まだわからないことだらけです」

「みんな・・・口がかたいから・・・」

「私は・・・人が何かを隠すのは疾しいことがあるからだと思ってました・・・しかし・・・独りよがりなのかもしれんが・・・誰かを守るために・・・嘘をつき通す・・・そういう人間もおるんですな」

「高野さん・・・一つだけ教えてください」

「はい」

「成瀬さんの連絡先を・・・」

安藤は慎司を訪ねた。

「十年経って・・・今さらだけど・・・君には一度会っておきたかった」

「話せるようなことは・・・何もありません」

「君から何も聞けなかったら・・・あの事件のことはふっ切ろうと思ってた」

「・・・あの日・・・杉下が考えていたのは・・・安藤さんのことだったと思います。安藤さんを守ろうとしていたと思います」

「杉下はいつも・・・君のことを心の支えにしていたと思うよ」

「あれから・・・十年も経つんですね」

「うん・・・でもあっという間だったよ」

「・・・」

「・・・」

安藤と慎司の心は一つに溶け合って・・・そして消えて行った。

希美は母親の早苗(山本未來)の職場を訪ね・・・母親を見るなり逃げだす。

追いかける母。逃げる娘。

母親が転倒し・・・娘は駆け寄る。

「お母さん・・・大丈夫」

「うん・・・こんなに走ったの・・・生まれて初めて」

「・・・」

「大人になったね・・・奇麗になった・・・」

「ずっと・・・連絡もせんでごめん」

「洋ちゃんから・・・元気でやりよるて聞いとるよ」

「お母さんも元気そうやね」

「私は元気よ・・・まあ・・・年はとったけど」

「お父さんは・・・」

「相変わらずよ・・・来年・・・夫婦でハワイに移り住むんやって」

「あきれた・・・」

「ねえ・・・のぞみちゃん・・・ママ・・・のぞみちゃんたちにひどいことしたね・・・あのころのこと・・・思い出せんの・・・気が付いたら一人やった・・・自分のことばっかで・・・のぞみちゃん・・・悪いママで・・・ごめんね・・・ごめんなさい」

「お母さん・・・」

「・・・」

「私・・・話したいことがあるんよ」

「何?・・・言うて・・・聞くよ」

「私・・・病気になった・・・怖い・・・この世からいなくなってしまうのが・・・怖いんよ」

「全部話しなさい・・・大丈夫やけん・・・大丈夫・・・」

母は娘を抱きしめた。

母は老いて娘は幼かった。

野バラ荘には・・・西崎と野原兼文(織本順吉)が住んでいた。

家の修繕をする西崎。

「いつまでも・・・俺がいると思うなよ」

「そんなこと言わずに・・・私がいなくなったあとも守ってよ」

「いいから・・・長生きしてくれよ」

「いつだったかなあ・・・西崎くんと安藤くんと希美ちゃんが・・・三人で野バラ荘を守ってくれたことがあったねえ」

「・・・」

「三人がいてくれてよかったよ・・・三人が友達で・・・」

織本順吉さんが泣かせすぎである。

長生きしてください。

希美は指輪を安藤に返して・・・電話をした。

「やっぱり・・・もらえない・・・実家の近くに引っ越すことにしたよ」

「そっか・・・」

「嫌で出て来たのにね」

「・・・」

「安藤は・・・広い世界を見られた?」

「まだまだ・・・これからだよ」

「今・・・こうなりたいって思った通りに生きてる」

「生きてるよ」

「よかった・・・」

「杉下は?」

「私も・・・これからかな・・・」

「杉下・・・前を向いて生きろよな・・・杉下らしくさ」

「安藤が誰にも邪魔されず・・・行きたい所に行けますように・・・」

「なんだよ・・・それ」

「祈ってあげたのよ・・・」

「またプロポーズするからな」

「ありがとう・・・元気でね」

希美は出発点に戻って来た。

ゴールは近いのである。

青景島は光に満ちている。

慎司の店は「NOTRE」フランス語で我等のという意味の所有形容詞である。

「来たよ・・・」

「何、食べたい?」

「おいしいもの・・・」

希美の心は一つに収束する。

いつだって優しい慎司に守られて安心だ。

愛してくれる人を愛せるような気がする。

そして・・・二人は初めてのキスをする。

口に広がる幸せの味・・・。

希美の心は安らいで・・・。

故郷とひとつになった。

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2014年12月19日 (金)

瞬きしないのはNでもFでもなくてXである(米倉涼子)

前倒しに次ぐ前倒しで谷間である。

やたらと瞬きする「N」が傑作として完成する前夜・・・。

大人気のスーパー・ドクターもフィニッシュである。

子供みたいな性格の超人を管理できるのか・・・あるいは飼いならせるのかという趣向である。

まあ・・・剣豪ものと一緒で・・・「手術の実力」の前にはひれ伏すしかないのである。

手術=チャンバラなので・・・お年寄りにも楽しめるのだ。

「絶対に失敗しない」というのは「必殺」と同義語なのである。

そこにいたるまで・・・どういう「展開」を作るかが・・・脚本家の腕の見せ所ですな。

で、『Doctor-X 外科医・大門未知子・第三期・最終回』(テレビ朝日20141218PM9~)脚本・中園ミホ、演出・田村直己を見た。国家は巨大な生物である。長生きするものは結構長生きする。時には超巨大生物にもなる。しかし・・・ローマ帝国も・・・モンゴル帝国も・・・やがて滅びるのだった。日本という生物もいつかは滅びるだろうが・・・生きている以上、必死にあがくわけである。もちろん・・・個々の目的は明確で・・・やるべきことはわかっているわけだが・・・巨大さゆえに・・・もどかしいこともある。政治家は権力を行使して・・・国家の行動を決定する中核だ。税金を何に使うのか・・・考える仕事と言っても良い。その使い道について議論することはとても大切なことだと思う。しかし・・・柄のついたうちわがNGで柄のついていないうちわがOKだとかね・・・もう・・・いい加減にしてほしいよね。もちろん・・・そんなどうでもいいことで突っ込まれる方もいけないんだけどね。

ありえない成功率で手術を続ける大門未知子(米倉涼子)・・・。

その腕の値段はどんどん高額になっていくのだった。

そして・・・生じるマネージャーの神原晶(岸部一徳)のピンはね疑惑。

ダイモンは・・・ちょっと怒るけれど・・・手術以外は無能なので・・・家出してもアキラの元へ帰還するしかないのだった。

しかし・・・アキラは営業と称して行方をくらますのであるが・・・お茶の間には・・・発病したことがわかる仕掛けである。

医療という巨大なビジネスをめぐって・・・利権をめぐる争いがある。

専門家は言う・・・高度な医療技術の開発に予算を投じるべきだと。

政治家は言う・・・巨大な病院の建設に予算を投じるべきだと。

より良い医療を求めて・・・医療業界のトップに立とうとする国立高度医療センターの天堂 義人(北大路欣也)は・・・専門家が・・・国家予算配分のイニシアチブを握るべきだと主張して・・・次期厚生労働大臣候補の十勝喜子(ジュディ・オング)が幹細胞がん患者であることを利用し・・・日本医療産業機構設立にこぎつけるが・・・結局、利権をあさる専門家である政治家たちにお払い箱にされてしまうのだった。

これが・・・どうでもいい施設をやたらと作るけれど首都高速がボロボロという国家の現状なのである。

まあ・・・しょうがないよね。

天堂は・・・ダイモンの実力を賞賛し・・・ダイモン本人に国家予算を注ぎこもうとするが・・・ダイモン本人は・・・子供なので意味がわからないのだった。

重病に勝つというドクターネームに込めた初心を忘れ・・・いつしか・・・医学界の権力闘争に心を奪われた西京大学病院院長・蛭間重勝(西田敏行)・・・。

彼の弟子たちは・・・医療技術よりも・・・出世技術を磨いてしまったのである。

癌を発症した重勝は・・・。

「ダイモンを呼んでくれ・・・彼女に手術してもらいたい」と叫ぶが・・・「うるさい」と麻酔科医・城之内博美(内田有紀)に昏睡させられてしまう。

しかし・・・患者を選ばないダイモンは困難な手術を例によって成功させる。

最終回はサービスで二回、チャンバラがあります。

最後の相手は・・・腫瘍の塊と化したアキラである。

アキラこそは・・・ダイモンの育ての親なのである。

ダイモンを「失敗しない外科医」に育てたアキラは・・・ダイモンにも不可能な手術だと判断して・・・ダイモンの手術を拒絶する。

すべては・・・弟子に「失敗させたくないから」という師匠心のなせることであった。

姿を隠し死を待つアキラの病状は急変・・・。

だが・・・事情を知る看護師長・白木淳子(高畑淳子)はついに・・・ダイモンを召喚するのである。

絶対不可能な手術に挑戦するダイモン。

もちろん・・・ドラマには絶対不可能なことはありません。

「まばたきするな・・・」

おなじみの目を見開いたダイモン・アイズは・・・アキラの教えを忠実に守った結果だった。

「そして・・・どんな患者も見捨てるな」

「って・・・あなたが私に教えてくれたことじゃない」

絶体絶命の時は深呼吸という・・・小学生なみのテクニックでピンチをしのぐ・・・ダイモンだった。

「失敗するなよ・・・」

「私・・・失敗いたしません」

これから始る衝撃の結末のものがたり・・・。

案の定、不可能を可能とするダイモンだった。

そして・・・実はダイモン記念病院の設立のために貯金していたアキラ。

ご開帳でおなじみの銭湯のロッカーでアキラの隠し財産を発見したダイモンは・・・その金で宇宙旅行に出発する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チャン、チャン。

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2014年12月18日 (木)

忘れられないけど忘れようあなたを・・って思えば思うほど忘れられません。(綾瀬はるか)

これほど・・・ヒヤヒヤしたドラマはなかったよねえ。

ともすれば・・・ウジウジしたがる脚本家をなだめすかして・・・スカッと爽やかなシンデレラ物語の完成へ。

ゴール~である。

なんだかんだ・・・綾瀬はるかの勝利なんだよな。

適齢期を過ぎた一般職のOLをこんなにもみんなが見守っているなんて・・・ねえ。

綾瀬はるかだから・・・成立する話なのである。

たとえば・・・ついに・・・唯一の同期を見守り続けた男が・・・彼女を愛していたことが明らかになるわけだが・・・相手が綾瀬はるかだからありえるのだな・・・で、彼の内面を描けば・・・物凄いウジウジさが醸しだされるわけで・・・。

脚本家・・・何度か・・・ウジウジさせようとしていたよなあ。

演出陣が必死で抑えたんだよな。

「これ・・・最後まで秘めていた方が効きますから」とかなんとか・・・。

「え・・・でも・・・普通、ウジウジするよね。ずっと好きなわけだし・・・。ウジウジするべきなんだと思うけどなあ・・・少しくらいウジウジした方がいいんじゃないかなあ・・・」

「いやあ・・・それより、主人公の妄想シーンで盛り上げましょう」

「ウジウジ不足だと思うけどなあ」

「いやあ・・・もう結構、ウジウジしてますから」

「そう・・・」

セリフもうまいし、構成力も抜群・・・性格さえ直せば完璧なのに・・・。

あくまで妄想です。

で、『きょうは会社休みます。・最終回(全10話)』(日本テレビ20141210PM10~)原作・藤村真理、脚本・金子茂樹、演出・中島悟(他)を見た。みんな・・・実に見守っていたよね。暫定順位をつけると・・・。

①マモル(ジェントル)

①朝尾(玉木宏)

①大城(田口淳之介)

①巌(浅野和之)

①光代(高畑淳子)

①一華(平岩紙)

①立花課長(吹越満)

①武士沢(田口浩正)

①お茶の間一同

・・・みんな一位じゃないかっ。

順位なんかつけられるかっ。

二週連続でブロポーズ、そして・・・二週連続でお断りの帝江物産横浜支社食品部デザート原料課勤務・青石花笑(綾瀬はるか)である。

三十路の独身女としては思いあがるのもほどほどにしろ・・・なのだが・・・綾瀬はるかなので納得するしかないのだった。

悠斗(福士蒼汰)の将来を案じて好きだけど身を引いた花笑である・・・しかし、別れても好きなのは悠斗だけなので・・・一生独身を貫く覚悟なのだった。

だから・・・「奇跡のような相手である」朝尾のプロボーズもお断りなのである。

「ありのままでいられる相手と結婚するのがいい」と今年のトレンドを全面に出して・・・瞳(仲里依紗)は加々見(千葉雄大)と交際を開始する。

沈黙した悠斗・・・。

花笑は・・・悠斗と出会う前の立ち位置に戻る。

しかし・・・心は・・・悠斗のことで一杯なのだった。

その悠斗が・・・目の前から去っていく日は刻一刻と迫ってくる。

忘年会はアルバイト終了の悠斗の送別会なのだった。

直前のクリスマス・イブに・・・ついに童貞を瞳に捧げる加々見・・・まあ・・・もう・・・なんでもいいや。ちなみにトイレットペーパーで「ガンバレ」書いちゃう奴はロールチェンジの呪いにかかればいいと思うよ。

その夜・・・青戸家では恒例の「聖夜は手巻きずしでシャンパン・パーティー」である。

そして・・・朝尾は必殺の花束配達攻撃である・・・。

サプライズにちょっと揺れる花笑。

なにしろ・・・恐ろしいことに花笑の心はさやか(平澤宏々路)よりも童心なのである。

壁ドンが朝尾なら。朝帰りが朝尾なら。合鍵手渡しが朝尾なら。頭ポンポンが朝尾なら・・・すべてのサブライズが朝尾なら・・・朝尾が好きだったのではないかと気付く花笑。

しかし・・・さらに恐ろしいことに・・・花笑の心は純潔至上主義なのだった。

処女を捧げた以上・・・添い遂げるのは悠斗しかないのだ。

そして・・・悠斗と結婚できないのなら・・・未婚のまま・・・生涯を過ごす・・・。

それが花笑の尼寺人生だった。

「アホなの・・・」と思わずにはいられない一華である。

ちなみに二人は花と華なんだな・・・。

両親は・・・届いた花束に喜ぶが・・・花笑は幸せを感じない。

だって・・・愛しているのは・・・悠斗だけ・・・。

携帯から悠斗を削除することもできないのだ・・・。

「あのさ・・・別れた男に戻るのって・・・ある意味・・・地獄へまっしぐらだよ」

もちろん・・・ドラマだから・・・そんなことはないのだが・・・客観的に振り返っておく。

別れたきっかけを作った戸崎啓子(香椎由宇)が悠斗と付き合っていたのは三年前。

悠斗が花笑の前で誰かに別れを告げていたのは今年のことである。

少なくとも・・・もう一人いるのだな。

さらに言えば何人いるか分からないのだ。

花笑が打破した鳴前ひろ乃(古畑星夏)も処女だったわけだが・・・。

悠斗と別れた後で・・・研究一筋の啓子もなんとなく・・・処女だった感じである。

悠斗は・・・ヴァージン・キラーなんじゃないのか・・・。

本当は・・・魔性の男なんじゃ・・・。

そういう流れを無視して・・・最後まで王子様を演じきる福士蒼汰・・・やはりただものじゃないんだな。

そして・・・ついに・・・千秋先輩と種市先輩対決の決着である。

「猿から犬への花束攻撃」もかわして・・・決着をつける花笑。

「私・・・朝尾さんとは結婚できません」

「彼が・・・好きだからか」

「・・・」

「いいんだ・・・俺は・・・彼に恋してる君が好きなんだから」

「ごめんなさい」と涙ぐむ花笑。

「泣きたいのは俺だよ」と最高の友達は微笑む。

これはウジウジ以外の何物でもないが・・・玉木宏なので・・・もはや爽やかなのであった。

ちなみに精神的に童女の花笑にとって・・・極悪なことに35才の朝尾はおっさんなのである。

正気かっ。

ま・・・あさお・はなえの普通のラブコメも見たいよね。

そして・・・あっという間に忘年会である。

加々見は腹踊りで・・・男をあげるのだった。

そして・・・立花課長と・・・大城が・・・見守る中・・・悠斗に別れの挨拶をする花笑・・・。

「仕事での経験を生かして・・・これからの人生を頑張ってください」

一人・・・家路についた花笑・・・王子様はガラスの靴を持って・・・いや・・・ついにメールを送る。

「花笑さん・・・今日までどうもありがとう・・・本当はあなたのこと・・・ふっきれてないけど・・・時の流れが解決してくれるのを待つことにします」

彼がメールをくれた。 

彼がメールをくれた。 

彼がメールをくれた。

それだけで幸せな気分になる花笑。

携帯から・・・悠斗を削除・・・である。

そして・・・立花課長に・・・総合職への転身を申し出る花笑・・・。

「終身保険に加入して仕事一筋で生きて行くつもり・・・」

年越し蕎麦を一華と食べる花笑である。

「平均寿命の86才まで残り五十六年・・・結構・・・長いよ」

「・・・」

「その間・・・ずっと一人なんだよ」

少し・・・揺らぐ花笑だった。

もちろん・・・今は意地悪な義理の姉たちが・・・靴に足をつっこんでいる時間なのである。

シンデレラはその時を待つばかりなのだ。

新年がやってきて・・・総合職となった花笑は大城の指導の元で・・・営業の仕事に励むのだった。

合言葉は「ケチャップ」である。

なぜ・・・「マヨネーズ」ではいけないかは語られない。

そして・・・とんとん拍子で結婚が決まる加々見と瞳。

一方・・・レディースデイの映画館で悠斗の元カノ同士の遭遇である。

「決断してくれて・・・ありがとう」と悠斗の昔の恋人で・・・大学の助手である戸崎啓子。

「・・・」

「彼とは・・・その後・・・」

「あってません」

「彼は・・・渡米することが決まったの」

「お二人は・・・おつきあいを・・・」

「私は研究一筋なの」

「私も仕事三昧です」

穏やかに見えるがウジウジの火花がここぞとばかりに散華しています。

「ケチャップ」と唱える度に・・・。

「やっぱり彼が好き」と思う花笑なのである。

そして・・・春。

鼻血を出しながらついに挙式を迎える加々見と瞳。

瞳は加々見瞳になってなんだかゴロがいいのである。

しかし・・・花笑の気持ちは招待客の一人・・・悠斗に向いている。

「彼は来ないよ・・・今日・・・アメリカに出発するって」

大城はある意味・・・何を考えているか分からない男だった。

なぜなら・・・彼は花笑がずっと好きだったのだ。

それは・・・おそらく・・・大城が仕込んだ米国への往復航空券のビンゴの賞品に結晶しているのだ。

しかし・・・それは花笑の手には渡らない。

物凄いウジウジの極みだが演出力で見事に隠蔽されているのだな。

しかし・・・爽やかにウジウジできる朝尾は花笑の背中を軽やかに押すのだった。

「何も・・・ビンゴの商品じゃなくたって・・・アメリカには行けるだろう・・・どうせ、会いに行くなら・・・今、行けばいい」

「・・・」

「すぐ近くのバスターミナルから・・・あいつは出発するんだよ」と大城。

「地味に揺らせてこい」

「はっ」

走りだす花笑・・・。

朝尾は大城に微笑む。

「淋しそうだな」

「あなたほどでは・・・」

「まあ・・・その件については・・・じっくり語ろうじゃないですか」

「お伴しますよ・・・」

はっきりいっていくらドラマとはいえ二人は・・・見守りすぎである。

たちまち・・・バスターミナルにたどり着く花笑・・・。

「あの・・・まだ間に合いますか・・・」

「・・・」

「まだ・・・問題は解決していませんか・・・」

「言ったでしょう・・・花笑さんは俺のこと・・・好きだって」

魔性です・・・魔性の王子様ですよ~。

こうしてシンデレラの足にガラスの靴が・・・。

一年後・・・花笑は悠斗を空港で迎えに行くために「きょうは会社休みます。」なのであった。

両親は「えええええええ」とお茶を噴き出すのである。

空港には王子の帰国を待ちわびる宮廷の貴婦人の群れ・・・。

しかし・・・大丈夫。

王子様はシンデレラのものだから・・・。

「ただいま・・・」

「おかえりなさい」

たとえ・・・その後にはいろいろと怖い現実がまっているとしても・・・。

シンデレラの物語はすべての乙女に囁きかけるのだ。

大丈夫・・・あなたもきっと愛されると。

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2014年12月17日 (水)

自由とは何も選択しないことなのだ(竹野内豊)

しかし・・・神はそれを許さない。

たとえば・・・選挙。

与党に投票するか・・・野党に投票するかの選択から自由になるために・・・どちらにも投票しないことにする。

しかし・・・すると・・・投票するか、投票しないかの選択で後者を選んだことになってしまうのだ。

そのことに気がつくとせっかくの自由が台無しなのである。

人生とは不自由なものである。

結婚するか・・・しないか・・・自由であるためには・・・「する」とも言えないし「しない」とも言えないのである。

優柔不断で煮え切らない男は自由なんだなあ・・・。

決断して・・・不自由になるか・・・すべての選択を保留して自由になるか・・・。

難しい問題である。

もちろん・・・ぐずぐずしていると・・・選択肢はどんどん狭まり・・・物凄く不自由な感じになったりもします。

あらゆる可能性に満ちた素晴らしいひとときは一瞬。

決断は慎重に・・・しかし、お早めに・・・。

そんな時・・・選TAXIがあればいいのになあ・・・と誰もが思うのだった。

で、『素敵な選TAXI・最終回(全10話)』』(フジテレビ20141216PM10~)脚本・バカリズム(他)、演出・筧昌也を見た。神ではなく髪を切る人だった枝分(竹野内豊)である。しかも、枝(えだ)が姓で分(わかれ)が名なのかもしれないのだった。枝分でフルネームって・・・変な名前。そういうことがなんとなくおかしいのは・・・相撲ロボやひなたロボがなんとなくおかしいのと一緒だな。だから・・・アーリンロボも面白いんだよな。あらゆる可能性の中から作り手はたった一つを選んでいく。その選択作業の深遠さ・・・。黒幕刑事になるか犯罪刑事になるか・・・それとも普通の刑事や普通の犯罪者になるか・・・人間かロボットか・・・犯罪ロボコップなのか・・・選ぶことの苦しみ・・・それは生みの苦しみなんだよねえ。その成果をお茶の間はなんとなくおかしいと思うんだよねえ。

もはやおなじみとなった「cafe choice」の光景・・・。

マスターの迫田(バカリズム)とウエイトレスの関カンナ(清野菜名)はなんでもありな感じのドラマを視聴する。

なんでもありのように見えて「犯罪刑事」も選択の結果なのである。

カンナはその選択の結果に夢中になるのだった。

一方で・・・枝分はメニューとにらめっこをして・・・ウエイトレスの宇佐見夏希(南沢奈央)は「いい加減にしてもらいたい」と態度で示すのだった。

いい子だが・・・少し冷たいのである。

最後に・・・常連客の標(升毅)が笑顔で入ってくる。

「今日があの日だよ・・・」

「・・・ああ、そうか」

そして・・・選TAXI抜きで・・・時は遡上を開始する。

所謂、回想に突入するのだ・・・。

それは・・・三ヶ月前のことだった・・・。

三ヶ月前の枝分は街の床屋さんだった。

客の無理な注文に応じるかどうかに悩む・・・優柔不断な理容店経営者にして理容師・・・。

待合室では・・・子供がコミック「おひとよしトレジャー/虫海暗」を鑑賞しているのだった。

結局・・・客の言いなりになる枝分なのである。

そして・・・街角のレストランでは・・・女(奥田恵梨華)が恋人を待っていた。

女は悩みを抱えている。

勤めていた会社を辞めて・・・花屋に転職するかどうか・・・そして・・・交際している優柔不断な恋人に結婚の意志があるのかどうか・・・なにしろ・・・もう三十三歳なのである。

ここまでキャスティングの選択が絶妙だったこのドラマ。最後に奥田恵梨華(33)というのも素晴らしい。出産後の初仕事か。

そして・・・やってきた恋人は枝分だった。

もちろん・・・このレストランは・・・プロポーズするに相応しいレストランなのである。

やがて・・・事件に巻き込まれる可能性のある店なのである。

しかし・・・それは未来の話。

枝分はプロポーズする気はさらさらなく・・・メニューとにらめっこである。

美しい恋人と・・・前菜から始って食後のデザートで終わる食事を楽しみたい・・・ただそれだけの男なのである。

そして・・・メニューとにらめっこをするのだった。

そんな・・・枝分に苛立つ女だった・・・。

「枝くんって・・・いつもそうね」

「?」

「優柔不断で何も決められないじゃない」

「僕はべつに優柔不断じゃないし・・・優柔不断だから時間がかかっているわけじゃない・・・」

「じゃあ・・・なんで・・・」

「注文したら・・・もう変更はできない・・・後悔しないように・・・最高の決断をだね・・・」

「そもそも・・・最初からそうよね」

「?」

「私から言い出さないと交際も始らなかったじゃない」

「・・・」

「時々・・・本当に私のことが好きなのかしらって思うことあるよ」

「どうして・・・」

「今日だってそう・・・このお店だって私が決めたんだし」

「だって・・・君の方が・・・詳しいでしょう・・・君にまかせた方が間違いがないと思うから」

「間違ったっていいのよ。たまにはあなたがセッティングしてくれてもいいのになってこと。あなたの選んだ店がたとえおいしくなくても・・・私、文句なんて言わないわ」

「ごめんね・・・」

「とりあえず謝っとけばいいと思ってるでしょ・・・」

険悪な雰囲気に弱い枝分はひとまずトイレに退散するのだった。

こういう時は・・・間をとってクールダウンするのがいいと考えた枝分。

例によってトイレットペーパーのロールチェンジをして戻ってくると・・・。

彼女は・・・帰ってしまっていた。

あわてて・・・追いかける枝分。

彼女はタクシーに乗って去っていく。

そして・・・おなじみのあの車がやってくるのだった。

選TAXIの運転手は・・・標だった。

彼女からのメールが届く。

≪先に出ちゃってごめんなさい。なんだか気持ちが冷めました。私たち きっと別れた方がお互いのためだと思う。さようなら 今までありがとう≫

「えええええええ」

「どちらまでお戻りになられますか?」

「あの・・・くる・・・タクシーを追いかけてください」

「無理ですね・・・もう・・・追いつけませんよ」

「そんな・・・」

「どうして・・・あの・・・くる・・・タクシーを追いかけるんですか」

「くる・・・タクシーって言わないでください」

事情を話した枝分に・・・選TAXIについて説明する標。

「そんな・・・過去に戻るなんて・・・非常識な・・・」

「まあ・・・論より証拠です」

異音が響き、「(タイム)バックします」の合成音声が繰り返される。

「なんですか・・・」

「タイムスリップ音ですよ・・・最新型の6なら・・・無音なんですけどね・・・これ5なんで・・・」

「でも・・・戻ってもどうしたらいいのか・・・」

「考える時間はたっぷりあったんだから・・・決めちゃえばいいでしょう」

「あ・・・なるほど」

半信半疑で店に戻った枝分は・・・時空修正前の一時停止状態を体験する。

「レアチーズケーキね」

「珍しい・・・すぐ決めた」

「優柔不断じゃないからね」

「ところで・・・今日は相談したいことがあって」

「?」

「今の仕事辞めて・・・夢だった花屋を開こうと思って・・・」

「・・・」

「どう思う?」

「僕は・・・反対だな・・・僕だって一応、経営者だからね・・・経営者の先輩としては・・・商売の世界は甘くないよ・・・夢だからって・・・長く勤めている会社をおいそれと辞めるなんて賛成できないな・・・」

「ごめん・・・ちょっと一人で考えたいから・・・先に帰るね」

「え」

メールが着信する。

≪先に出ちゃってごめんなさい。さっきの話で色々ふっきれました。私、枝くんとはやっていけないと思う。 だから、さようなら≫

仕方なく選TAXIに戻る枝分。

「どうしたの・・・」

「彼女の相談にも素早く答えたのに・・・」

「そうか・・・じゃ・・・女性の意見でも聞いてみるか」

「女性・・・」

そして・・・枝分は「cafe choice」に連れて行かれるのだった。

枝分の相談に乗ったのは・・・二人のウエイトレスだった。

その間、標はマスターと将棋を楽しむのだった。

「たまには・・・なんか賭けるか」

「ウインナークラブなんてどうですか」

「カニさんウインナーか・・・美味しそうだよね」

「ちょっとモーニングでトーストにつけて出したら結構、人気なんですよね・・・可愛いし・・・ま、ただのウインナーですけどね」

「俺が負けたら・・・」

「ダリナ共和国に行ってもらいます・・・」

「彼女さんはきっと・・・枝分さんにとりあえず話を聞いてもらいたかったんじゃないですか」

「いや・・・話は聞いたし・・・はっきり意見も言いましたよ」

「彼女さんは別に意見を聞きたかったわけじゃなくて・・・彼氏に背中を押してもらいたかったんですよ」

「・・・」

「大体・・・相談する時って結論は出てるんですよね」

「?」

「だけど不安だから・・・彼氏に応援してもらいたかったんだと思うな」

「・・・なるほど」

女心の分からない枝分なのである。

それが・・・三ヶ月前の枝分だったのだ。

異音が響き、「バックします」の合成音声が繰り返される。

「どう思う?」

「ほんとにやりたいんだったら僕としては彼氏として君を応援するだけだよ」

「ありがとう」

明るく輝く彼女の顔。

晴ときどき曇りのち嵐と目まぐるしく変わる気分屋の彼女と・・・優柔不断の極みである枝分。

ある意味、最高に面倒くさい二人である。

よくもここまで交際が続いてきたな・・・。

ハードルを超えた枝分が喜ぶ間もなく・・・次のハードルが迫る。

「転職の間に・・・少し休みがとれると思うんだけど・・・」

「?」

「旅行でもどうかしら」

「うん」

「枝君・・・旅行先をたまには決めてよ」

枝分にとってこれ以上なく高いハードルである。

「温泉なんか・・・どうかな」

「温泉は・・・行ったばかりじゃない」

「じゃ・・・沖縄は」

「沖縄は・・・もう少し、ゆっくりと行きたいな」

もう・・・こうなれば後はハワイしかないのだった。

そうなのか。もっとゆっくりしたいところじゃないか。

じゃ・・・ここはグァムかサイパンで・・・。

どこもかしこもゆっくりだぞ。

行きたいよねえ・・・南の島。

お前がかっ。

しかし・・・彼女の狙いはそういうことではなかったのだった。

「いい機会だし・・・うちの実家来る?」

「え」

「うちの親も枝くんに会いたがってるし・・・」

「そうだねえ・・・それは・・・またにしようよ」

完全に低気圧に向かって特攻した枝分だった。

たちまち暗雲が視界を閉ざす。

「枝くん・・・将来のこととか考えてるの」

「うん」

「この間・・・理佐の結婚式に行った時・・・思ったのよね・・・すごく幸せそうだなあって」

「そっかあ」

「そっかあ・・・何よ・・・そっかあって」

「いや・・・そっかあは・・・そのそっかあで」

「ごめん・・・先に帰る」

≪先に出ちゃってごめんなさい。だけど、さっきの話ではっきりとわかりました。このまま、一緒にいても先が見えません。 さようなら≫

第二回ウエイトレス相談室開催である。

「どうですかね」

「どうって・・・枝分さんはどうなんですか」と夏希。

「どうって・・・」

「結婚する気があるんかい・・・ですよ」とカンナ。

「いや・・・それは・・・あるけど・・・いつってわけじゃなくて」

「今でしょう」と夏希。

「年齢的には遅いくらいですよ・・・33才って私の周りじゃ・・・もうみんな子供が中学生の年頃ですよ」とヤンママ友達が多いらしいカンナ。

「・・・」

「男としてけじめつけないと・・・そこんとこ・・・よろしく・・・ですよ」

「わかりました・・・プロポーズします」

男として・・・という言葉に敏感な枝分だった。

おそらく・・・枝分にとって「男」は「パシリ」の対義語なのである。

選TAXIに乗り込んだ枝分。

「プロポーズするの?」

「はい・・・」

「枝さん・・・見違えたね」

「そうですか」

「男らしくなった」

「えへ」

「じゃあ・・・急いで行こう・・・飛ばしますよ」

異音が響き、「バックします」の合成音声が・・・。

「あ・・・やばい」

「何ですか」

前方に異様な光景が広がっていた。

停車する選TAXI・・・。

「取り締まりだよ・・・」

「取り締まりって・・・」

「タイムスリップねずみ捕り・・・」

黄色い防護服のタイムスリップパトロールがやってきた。

「あれは」

「タイム警官だよ」

「タイム警官?」

「おたく・・・だいぶ飛ばしちゃったね」

「すいません」

「はい・・・これ確認して・・・タイム制限速度から・・・30タイムオーバー・・・間違いないね」

「はい」

「お客さん・・・お急ぎのところすみませんね・・・しかし・・・安全なタイムスリップのためにご協力くださいね」

「はあ・・・」と枝分。

「これ・・・レッドタイム切符だねえ」

「すいませんでした」

「どうしたんですか・・・」と枝分。

「ごめん・・・枝さん・・・タイム免停になっちゃった」

「タイム免停?」

「タイムマシン免許停止処分ね・・・タイム交通法の規定で・・・90日間、運転禁止なの」

「え」

「でも・・・三ヶ月たったら・・・免停解けるから・・・そうしたら・・・90日間遡って・・・戻れるから・・・」

「え・・・その間・・・彼女とは別れたままですか」

「ごめん・・・でも・・・料金はこっちもちにするから」

「そんな・・・」

「で・・・相談なんだけどさ・・・」

「?」

「選TAXIって三ヶ月営業しないと・・・営業停止になっちゃうの・・・」

「はあ・・・」

「だから・・・代わりにやってくんない」

「え」

「タイム書類に記入して印鑑押してタイム二種免許のちょっとした講習受ければOKだから」

「・・・」

こうして・・・理容師・枝分は・・・臨時の選TAXIドライバーになったのだった。

つまり・・・枝分はずっと・・・彼女へのプロポーズを胸に秘めて・・・乗客の愛の物語を見守りながらトイレットペーパーのロールチェンジを続けてきたのである。

プロポーズに成功した男がいた。愛のトラブルを乗り越えたカップルがいた。結婚の挨拶に行く男女。愛の黄昏を眺めた男女。愛のバトルを重ねる男女。そして・・・愛のない不運な男たち・・・。

すべては・・・思い出の中に・・・。

そして・・・標のタイム免停は解けたのである。

「さあ・・・行きましょうか」

「・・・」

走りだした選TAXI・・・。

そこで・・・偶然・・・花屋で働く彼女の姿が目に入る枝分だった。

彼女は・・・生き生きと働いていた。

ここで・・花屋のパートナーが・・・男で仲睦まじいというオチもあったろうが・・・ここはもう一つ深い世界に落ちて行くのだった。

枝分の過ごした三ヶ月も濃密だった。

乗客との出会いの数々・・・。

それをなかったことになんか・・・できない。

そして・・・彼女が夢をかなえたこの世界も・・・きっと大切な時間の結果なのである。

「戻るのは・・・やめます」

「え・・・」

「だって・・・それが・・・一番素敵な選択だと思うのです」

それから・・・枝分がもう一度、彼女にアタックするかどうか・・・。

それは枝分の気持ち次第なのである。

戻ってやり直すよりも・・・今を大切にしたい・・・枝分はそう思うのだった。

「そうかあ・・・男だねえ」

「えへ」

「じゃあ・・・海でも見に行くか」

「今ですか」

「さあ・・・飛ばすぞ・・・」

アクセルを踏み込む標。

その時、警告音が鳴り響き・・・背後からタイム警官のイエロー・バイクが・・・。

もうしばらく・・・臨時休業する・・・枝分理容室なのである。

竹野内豊とバカリズム・・・この組み合わせの選択は・・・かなり冒険的だったと思う。

しかし・・・それは素敵な選択だったと・・・お茶の間の心ある皆さんは思いますよね。

そして・・・今度こそ・・・宇佐見夏希の回がありますように・・・。

セカンド・シリーズが選択されますように。

神に願うに違いない・・・ですよね。

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Sentx010ごっこガーデン。ちょっとドライプしてトンネルを抜けたら雪山だったセット。まこちょこっと面倒くさいところがまた可愛いという不思議な魅力の枝さん・・・やはり・・・弱点あった方が親近感なのでしゅ~。温泉でしっぽりするためにガーデン飛び出して高速ぶっ飛ばしてたら・・・いつの間にか雪山遭難寸前になりましゅた~。じいや・・・半袖じゃムリなのでモフモフなMOZUコートくだしゃ~い。それから甘酒もプリーズ~!秘湯はどこぞに~くう最終回だけどエピーソードゼロ・・・そして伝説へ・・・これはタイムスクープを狙ってセカンドシーズンあるかどうか確認するために・・・未来に飛翔せねばなるまいて・・・だって面倒だけど素敵な枝分さんに逢いたいから~シャブリ「枝さんに楽しかった?と問われれば楽しかったと言う他ないのでありました~。血のり担当の森ちのりさんが実在するかどうかチェックしてきま~すikasama4「年賀状ラストスパートの季節ですな~。タイム違反にご注意を・・・あんぱんちレストランのエキストラの皆さんがちょっと大人しすぎたのが気になったわ~・・・時間が止まってたのかしら?」

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2014年12月16日 (火)

素晴らしいことが待っているという未来へ・・・(夏帆)

総選挙で「軍師官兵衛」と「ごめんね青春!」が先送りになったので・・・前倒しである。

小悪魔(グレムリン)たちが大量発生中なので・・・うかうかしていられないのである。

今年も聖なる夜が迫ってきましたな。

包丁の準備はぬかりなく、電子レンジやディスポーザーもいつでも使用可能にしておかないとな。

いつまでもいると思うな強いママである。

クリスマスツリーは背後から襲ってくるので要注意だ。

一般人はシムラうしろって叫んでもらえないからな。

なにしろ・・・コンビニは24時間営業である。

やつらは・・・真夜中に食べ放題なのだ・・・。

チャラチャラチャチャンちゃらちゃらちゃちゃん・・・恐怖のメロディーが聴こえて来たぞ。

で、『信長協奏曲・第10回』(フジテレビ20141215PM9~)原作・石井あゆみ、脚本・宇山佳祐(他)、演出・林徹を見た。超時空に再び元号が現れる。信長(サブロー)発案による天正元年(1573年)である。この時、織田信長は四十歳になっている。サブローはほとんど加齢していないので・・・これはもう超時空現象と考える他ないのである。一瞬、近江国小谷城の浅井長政(高橋一生)織田市の夫婦が登場するが・・・いつの間にか茶々、初、江の三人娘が揃っているのだった。もう・・・魔法と言う他はない現象である。

小説「戦国自衛隊/半村良」は・・・織田信長不在の戦国時代に・・・自衛隊がタイムスリップするのだが・・・いつしか・・・自衛隊が織田家の役割を果たしていき・・・歴史が修正されていくという趣向になっている。

このドラマは摩訶不思議的時空とは言え・・・一応、そういう「手」の中にあると言える。

シンプルに考えると・・・この戦国時代には明智光秀が不在なのである。

光秀が不在のままだと・・・本能寺の変が起こらないため・・・現代に到達できない。

そこで・・・サブロー(小栗旬)がタイムスリップし・・・信長と入れ替わることによって・・・信長(本人)が明智光秀になるわけである。

信長(本人)に恨みを持つ羽柴秀吉(山田孝之)が登場し・・・陰謀を巡らす。

このままいけば・・・本能寺の変・秀吉黒幕説的な流れが生じるわけである。

秀吉は光秀(信長)を「あなたこそ・・・本物の織田家後継者」と焚きつける。

これによって・・・光秀(信長)は信長(サブロー)を殺す本能寺の変を起こす可能性が生じる。

サブローを殺した信長を討てば・・・豊臣秀吉が誕生して・・・歴史は修正され現代に通じて行く。

最後は秀吉の息子をエロ本大好き脱糞おなご大名・徳川家康(濱田岳)が殺せば江戸時代の到来となる。

もちろん・・・それだと・・・主人公が・・・本能寺の変で死んでしまうわけである。

山崎の合戦までやるとなると・・・主人公不在だもんねえ・・・だから・・・予断を許さない感じに展開していると言える。

「むやみに人を殺したり、騙したりしてはダメよ~ダメダメ」と言っているサブローは集団的自衛権即戦争みたいな妄想に囚われている一部平和愛好家へのスイーツな皮肉と考えることもできる。

「米軍基地なんていらない」と浮かれて踊る沖縄県民の皆さんは・・・本気で中国共産党の支配下に入る覚悟があるのだろうかと・・・案じるわけである。

まあ・・・とにかく・・・首を土産に降参という戦国風景が描かれる月9はそれなりに凄いと言えるのだ。

主人公がきれいごと言うぐらい・・・我慢しろ!

なんだよね。

Nobuoo9で・・・超時空元亀四年。比叡山延暦寺の明智光秀による焼き打ち成功と、徳川家康による武田信玄の病死誘発により・・・四面楚歌の状態を脱出した織田信長(サブロー)である。

しかし、勉強のできない平成の高校生にとって・・・女子供を皆殺しにしたりすることは・・・物凄く悪いことに思えてならないのだった。

もう少し敏感であれば・・・命を賭けて信長の夢を守った森可成(森下能幸)の死が・・・戦国時代に順応する感性を磨いたはずだが・・・想像力に乏しいサブローには・・・命よりも大切なものがあるという実感が湧かないのだった。

だから・・・「我が身を守るためには・・・相手を殺してもいい」という不文律が理解できないのである。

そもそも・・・明智光秀を延暦寺に派遣したのはサブローなのだが・・・論理的な思考力のないサブローは「もう、勝手なことしないで」と光秀を叱りつけるのである。

つまり・・・「ヤキソバパンを買ってこいと言ったのになんでメロンパンなんだよ」という思考なのである。

光秀は・・・サブローに身代りになってもらった恩義があるため・・・罵詈雑言に耐えるのだった。

しかし・・・天下人の部下の家来であることよりも・・・天下人本人の部下に成りたい感じを真実を知る沢彦(でんでん)は匂わし始めるのだった。

そんな折・・・信長愛用の扇子を・・・光秀が所有していたことから・・・真実に迫る池田恒興(向井理)であった。ちなみに正史の池田恒興は娘を森可成の息子の長可(北村匠海)に嫁がせている。つまり、死んだ可成と恒興は舅同志なのである。

信長が影武者であったことに複雑な気持ちになるわけである。

何よりも・・・恒興は・・・信長の正室・帰蝶に横恋慕しているのだった。

乳兄弟の信長だから・・・我慢していたのに・・・よりによってどこの馬の骨とも分からない男が好きな女を抱いていることが・・・なんだか耐えられないのだった。

恒興が命の恩人であるサブローに急に冷たくなるのは・・・そういう暗い心理があるからだ。

一方・・・足利義昭(堀部圭亮)は史実通り、将軍としての実権を得ようと信長に敵対する陰謀を巡らす。

将軍を諌める使者として秀吉は・・・光秀を推挙する。

しかし・・・すでに暴君化しはじめたサブローは難色を示すのだった。

「戦国時代なのに武将に殺人を禁じる主君」はこれ以上ないバカ殿と言える。

言う通りにしていたら確実に国は滅ぶのである。

「信長様あっての・・・将軍家ということを忘れてはなりませぬ」

理路整然と将軍を威嚇する光秀に・・・恒興は・・・本物の信長を感じるのだった。

だが・・・スイーツなので帰蝶(柴咲コウ)やお市・・・そしてくのいちのおゆき(夏帆)は「デート」で女性を喜ばすサブローを断固支持するのだった。

帰蝶の策略によって・・・前田利家(藤ヶ谷太輔)からデートに誘われたおゆきは・・・サブローに告げる。

「生まれて初めて・・・明日が待ち遠しい気持ちになりました。これが楽しいという感情なのですね」

戦う機械として育てられたくのいちにとって・・・女の幸せは天国への階段そのものなのである。

「俺は信長様のために命を尽くす」という利家。

「私はただの女になりたいのです」というおゆき。

もう・・・「絶対にどっちか死にます」の旗が掲揚されまくるのである。

ちなみに・・・正史の利家には正室のまつがいてすでにこの時、一男三女の父である。

まつは十三歳で長女を生んで以来、二男九女を量産する戦国の生む機械である。

正史では信長自身が将軍を追放するが・・・ここでは秀吉が計略を実行する。

将軍に味方すると告げておき・・・将軍に挙兵させ・・・裏切って攻め込むという秀吉の一人舞台である。

「そんなの騙し討ちで・・・卑怯じゃないか」

もはや・・・完全なる暴君と化したサブローは・・・殊勲者の秀吉を叱りつける。

「比叡山は・・・森様の仇・・・これを討ったのは正しゅうございました。そのおかげで・・・諸国の大名たちは織田家を恐れ・・・味方についたのでございます。だから・・・将軍家に味方する大名はいなくなりました・・・しかし・・・将軍家はそれでも・・・信長様に敵対いたします・・・つまり・・・将軍も森様の仇なのです。計略を用いましたのは猿めの不徳の致すところ・・・どうかお許しくだされ・・・」

戦国時代の常識を持ち出され・・・頭の悪いサブローは反論することができないのだった。

将軍家追放により・・・天下人となった信長に・・・諸国の大名の家来たちが続々と寝返りはじめる。

史実では・・・七月に将軍を追放した信長は八月に朝倉氏を、九月には浅井氏を滅ぼすのである。

なにしろ・・・天正二年の正月には朝倉義景と浅井父子のドクロ酒で御屠蘇をいただかなければならないのだ。

その戦いの前に朝倉家臣の前波氏などが織田家に寝返り出す。

朝倉氏の重臣の一族である小泉景邦(フィクション・・・小泉長治+山崎景邦か?)も朝倉家臣の魚住景固(史実では信長に降伏)の首を持参し臣従を願い出る。

しかし・・・朝倉家のくのいちだったおゆきは・・・それが偽りの投降であることを見抜く。

「あのものは新当流の使い手・・・御用心ください」

おゆきは利家に注意を促す。

歓迎の宴で・・・利家は・・・景邦(木下ほうか)に注意を奪われ・・・くのいちの刺客にサブローは襲われる。

間一髪、身を挺してサブローを守るおゆき。

「おゆき・・・死ぬな」

「私の仕事は・・・帰蝶様を守ること・・・帰蝶様の幸せは・・・信長様・・・」

息絶えるおゆき・・・。

うわあ・・・おゆきが死んだら・・・キッド的にはこのドラマ終了じゃないか・・・。

恒興は・・・ついに・・・サブローに対峙する。

「みな・・・信長様を守るために・・・命を賭けているのです。森殿も・・・おゆきも・・・信長様を守るために・・・死んだのです・・・その信長様が・・・偽物なんて・・・許されない・・・この城から出て行ってください」

「恒ちゃん・・・」

その頃・・・竹中半兵衛(藤木直人)は本物の秀吉が死んでいることを突きとめる。

しかし・・・秀吉は半兵衛が察知したことをすでに知っていた。

帰蝶は悲しみにくれ・・・おゆきの幻を見るのだった。

「おゆき・・・髪を梳いておくれ・・・おゆき・・・」

すべての死の責任が自分にあることを・・・サブローは果たして理解できるのか・・・。

いよいよ・・・ドラマは最高のスイーツとしてクライマックスを迎えるのだった。

まあ・・・最終的には続きは「映画」でというスイーツな展開なんですけどね。

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2014年12月15日 (月)

すべてがFになるとMがいないのでやがてゼロになる(武井咲)

F(女性)とM(男性)の話じゃないよ。

違うのかっ。

「うちわ解散」総選挙のために谷間発生である。

・・・どういう個人的なネーミングだよ。

松島みどり法務大臣が証紙なしのうちわを配ったことを証紙ありのうちわを配っている民主党の蓮舫が参議院予算委員会で公職選挙法の禁止する寄付行為に該当すると指摘したことから・・・MMが辞表を提出し、総理大臣が売られた喧嘩を勝って解散・総選挙だろう・・・。

まあ・・・そうだよな。

「増税しないことを国民に問うた」のだから・・・反対勢力は「増税するべきだ」で戦えばよかったのだ。

まあ・・・ある意味、やぶへびだったんだよな。

いやがらせばっかりで・・・建設的なことができない野党というイメージを払拭しないと・・・だめだということをいい加減気がつけばいいのにな・・・。

まあ・・・いやがらせが好きなんだろうねえ。

それは・・・お前も一緒だろう。

だってねえ・・・嫌がらせは楽しいもんねえ。

で、『すべてがFになる・第1回~』(フジテレビ20141021PM9~)原作・森博嗣、脚本・黒岩勉(他)、演出・小林義則(他)を見た。「MOZU」もそうだったけど・・・これも1996年発表のミステリ・・・という二十年近い落差をどう埋めるかが・・・ほとんど処理されていないんだよな。なんだろう・・・二十年の歳月は無視できると考えているのかな・・・。いろいろと考えるのが面倒臭いんじゃないの。まあ・・・谷間だから・・・そのことはスルーしようよ。とにかく・・・20世紀の近未来だから・・・現代でいいんじゃね・・・的なことだろう。しかし・・・原作的には1990年代の出来事なんだぜ・・・。ま・・・いいじゃないのお。

毎日、あえてエレキテルしているのか。

はい。

まあ・・・大衆の好きなものは・・・アレだよな。

なんだねえ。

「お天気お姉さん」や「ゼロの真実」で・・・天才的変人を演じて存在感を示した武井咲が・・・天才少女でお嬢様大学生という・・・西之園萌絵を・・・純情な変態役に定評のある綾野剛が分裂ときどき統合の多重人格者・犀川創平准教授を演じるわけである。

二人とも・・・それなりに雰囲気があるので・・・なんとなく見ていられる感じだ。

二人が解明する謎は・・・基本的に猟奇的殺人の密室トリックなので・・・一応、本格ミステリである。

二時間ドラマを二週に分けてという展開は・・・もはや常套手段だが・・・イライラしないためには録画しておいて二週間分を一挙に見ればいいよね。

原作的にはS&Mシリーズである。タイトルの「すべてがFになる」は第5話~第6話のエピソードの原作タイトルになる。

二十年前といえば・・・プレイステーションやセガサターンというゲーム機が発売された頃である。パソコンは普及していたが・・・素晴らしいインターネットの世界はまだ黎明期だったよねえ。コンピュータにおける十六進表記で「15」にあたる「F」が一種のオチになっているのが・・・年代物という感じになるのだが・・・数学が苦手の人にはいまもフレッシュな感じなのかもしれない。

四ケタがすべてFになる時間・・・つまりFFFF(10進法では65535)時間後に・・・作動するプログラムがトリックのキーポイントになっているという話なのだった。

ちなみに65536時間後になると10000になるわけだが表示機能が四ケタの場合、0000でリセットされてしまうのだった。このブログのカウンターも最初は6ケタ設定だったので危なくリセットされてしまうところだったのだ。

・・・もう、いいか。

その・・・トリックを仕掛けるのが・・・このシリーズのレクター博士である真賀田四季博士(早見あかり)である。

両親を殺し、娘を殺す・・・天才的犯罪者・まがたしき・・・。

朝ドラで主人公のかわいい妹を演じている元ももクロのブルーがこちらでは・・・極めて反社会的なキャラクターで・・・テレビ東京で培ったビンタの女王の存在感を醸しだすのだった。

エキセントリックな役柄の似合う美少女は・・・基本的に希少価値が高いよねえ。

まあ・・・公式に行くと親切な見取り図がついていたりするわけだが・・・基本的にはドラマを見ているだけでは何がどうなっているのか・・・お茶の間のほとんどは置き去りにされているような気がする。

それでも・・・「殺人をそれほど悪いこととは思わない」犯人たちの連打はそこそこ楽しいのだった。

こわいもの知らずの・・・萌絵が絶体絶命になると・・・失踪中の殺人犯・真賀田四季博士がこっそり助けてくれたりするのも・・・ちょっとうれしいぞ。

まだ・・・五つめのエピーソードが残っているので・・・未見の方にはお薦めしておきます。

ついでに・・・・「みんな!エスパーだよ!番外編」もあるとか・・・。

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今日、恋をはじめます

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2014年12月14日 (日)

親の仇を赦し共に闘うという生き方(丸山隆平)

師走も中盤である。

2014年、秋ドラマの谷間なしの状態の最終日。

最初にフィナーレを飾るのは・・・これかっ。

間に大河ドラマのレビューがあって・・・気が付きにくいのだが・・・二夜連続で・・・帝国アイドル俳優による・・・高校教師の主人公である。

この落差もなかなかに凄いんだな。

ドラマとしての完成度、奥行き、偏差値の高さ・・・雲泥の差があると言っても良い。

しかし・・・これはこれでよいのだと思う。

世の中は偏差値の高い人だけで構成されているわけじゃないからな。

ウジウジしている人だけでもない。

大人だけでもない。

後先考えないいきあたりばったりの生き方。

自分より他人を優先する生き方。

悩んでいても明るくふるまう生き方。

そういう馬鹿馬鹿しい人生を送る人がいてもいいのである。

そして・・・そういう人でも幸せになれる。

それが人生の醍醐味なんだから。

ひたすら奥深い聖駿高校・・・ほとんど二次元の童守高校・・・。

どちらもフィクションにすぎないのだ。

ちなみに・・・今季は・・・高校生が戦国時代に行ったり、高校生が暗く長い闇を彷徨って三十路にたどり着いたりもしています。

実は・・・高校生のシーズンだったんだなあ・・・。

で、『地獄先生ぬ〜べ〜・最終回(全10話)』(日本テレビ20141213PM9~)原作・真倉翔・岡野剛、脚本・マギー、演出・佐久間紀佳を見た。深夜特撮ドラマという異端の傑作「キューティーハニー THE LIVE」はキューティーハニーシリーズの実写版として実に姑息なセーフティーネットを仕掛けている。オリジナルストーリーを展開して行き・・・気がつくとすべては「前日譚」だったというわけである。このドラマもそういうテイストをかなり持っている。緻密に構成してそういう話にしておけば・・・それなりに趣きがあったと思われるが・・・脚本家がいきあたりばったりなので・・・無理だったんだな。まあ・・・作家としては・・・主人公がそういうキャラクターに仕上がっているので・・・自己表現として真っ当といえるかもしれない。だが・・・マギーを赤裸々に語られてもお茶の間はきっと困るわけだが。

かなり・・・よくわからない感じで・・・ぬ~べ~(丸山隆平)の左手に封印されていた覇鬼(坂上忍)の封印が解け・・・ぬ~べ~は鬼の手を失ってしまうのだった。

セリフの流れから推測すると・・・覇鬼の弟の絶鬼(山田涼介)を鬼の手の力で封印しておきながら・・・ぬ~べ~が「人間の勝利」を宣言したことが・・・霊能力者である美奈子先生(優香)の力を借りて・・・微妙なバランスで成立していた封印力を弱めたということになるらしい。

「思いあがるのもいい加減にしろよ・・・誰の力で・・・平和が保たれていると思ってんだ」ということである。

これを・・・沖縄県の状況で考えてみる。

ぬ~べ~は自衛隊を含めた日本国民である。覇鬼は核武装を含めた在日米軍である。

妖怪とは仮想敵国なのである。

日本の平和が維持されてきたのは・・・なんだかんだ・・・在日米軍と核の傘であるという考え方に立てば・・・基地移転問題で・・・移転反対派が勝利すると言う沖縄県の政治的状況は・・・極めて危ういということである。それを・・・オール沖縄がノーと言っているなどと報道する報道機関は・・・相当に頭が悪いということだ。

大多数の日本の国民は・・・核のゴミが・・・自分の裏庭に捨てられることを嫌うと同じように基地が来ないことを望んでいる。沖縄県にある分には構わないに決まっているのである。

オール沖縄(一同爆笑)の意見がオール日本(一同大爆笑)の意見になることなどありえないに決まっている。

地理的条件による基地負担という沖縄県民の感じる不公平感を宥めるにはどうすればいいのか・・・という話であり、その解決方法は「金」に決まっているのである。

それとも・・・沖縄は独立戦争に踏み切るのか。

あくまで・・・ぬ~べ~と覇鬼の関係性のたとえの話ですので・・・他意はありません。

「力こそが正義・・・真の実力がどういうものか・・・見せてやる」

巨大な姿で童守高校の校庭を占拠する覇鬼だった。

「そんな・・・今まで仲良くやってきたじゃないか・・・一緒に妖怪退治をしてくれよ」

「いやだね」

「どうすればいいのさ」

「お前は・・・もっと絶望して・・・力というものの恐ろしさを思い知るがいい」

「破壊する力なんて・・・無意味じゃないか」

「それはどうかな」

覇鬼は実力行使にでるのだった。

ぬ~べ~よりも未来予測力がある妖狐・玉藻(速水もこみち)は覇鬼の意図を察知する。

「いけない・・・覇鬼はまず・・・無限界時空を殺す気です」

「なんだって・・・」

無限界時空(高橋英樹)はぬ~べ~の父親である。

父子の確執を乗り越えて・・・協力プレーで絶鬼を封印し・・・和解の道を歩みはじめたばかりなのである。

ぬ~べ~は・・・病床の無限界時空がいる童守寺へ向かう。

ちなみに・・・怪獣のような巨大な鬼が出現したので・・・街は大騒ぎのはずだが・・・もはや・・・この世界には童守高校と童守寺、そしてぬ~べ~の下宿しか存在していないようである。

しかも・・・童守高校も・・・一部教員と2年III組生徒しかいないみたいだ。

鬼の手を失い・・・最大の強敵を迎え撃つぬ~べ~は・・・まさに米軍抜きで中国軍と対峙する自衛隊のようなものである。

そんな・・・ぬ~べ~に・・・心を寄せる律子先生(桐谷美玲)や在日妖怪のゆきめ(知英)はせつない心情を伝える。

「鬼の手がなくなったんだから・・・危ないことをするのはやめて・・・普通の高校教師になってくれたらいいのに・・・」

「しかし・・・俺は・・・教師である前に・・・霊能力者なのです」

じゃ・・・なんで教師なんだよ・・・それを言うなっ。

童守寺に現れた覇鬼は・・・地獄の火矢で・・・無限界時空を攻撃する。

いずな(山本美月)は無限界時空を守ろうとするが・・・いずなを守ろうとしてバックからのしかかる童守寺和尚(マキタスポーツ)に動きを封じられてしまう。

「どいてよ」

「どきたくても下半身が言うことをきかない」

仕方なく立ちふさがる・・・無限界時空・・・。

その身体を無数の槍が貫く・・・。

ぬ~べ~が到着すると無限界時空は虫の息だった。

「と・・・」

「お前に父と呼ばれる資格は俺にはない・・・お前はお前の道を行け・・・お前はもう・・・充分に強くなったから・・・」

「父さん・・・」

肉親を殺されて・・・ぬ~べ~は・・・覇鬼への憎しみが湧きあがるのだった。

「だめよ~、だめだめ」

強力な残留思念である美奈子先生は幽体となってぬ~べ~を諌める。

「憤怒の塊である覇鬼に・・・怒りで対抗しても無駄よ」

「しかし・・・」

「非武装中立で平和的に解決するの・・・話せばわかるから」

「そんなに都合よくいきますか」

「大丈夫・・・これはドラマだから」

「しかし・・・ふりかかる火の粉は払わねばなりません」

そこへやってくる・・・玉藻、ゆきめ、いずなという・・・そこそこ霊力を持っているぬ~べ~の仲間たち。

校庭に戻った覇鬼と四人の勇者たちは対峙するのだった。

「団結力とか・・・絆とか・・・真の実力の前には無意味なんだよ」と覇鬼。

「やってみなければわからない・・・」とぬ~べ~。

「笑止」

「みんな・・・鬼の手がない今・・・俺は単なる足手まといだ・・・」

「でも・・・作戦はあるんでしょ」

「ない・・・俺はそういう男だからだ」

仕方なく狐火で攻撃を開始する玉藻。

ラブファイヤで支援するいずな。

ゆきめはブリザード攻撃である。

しかし・・・覇鬼の一撃で全員が吹き飛ぶのだった。

そこへ駆けつける律子先生と生徒たち。

篠崎愛(中村ゆりか)のエピソード回がないなんて・・・なんてことだっ。

「ぬ~べ~・・・」

「力ないお前は・・・愛するものも守れない」と嘯く覇鬼。

「わかった・・・俺の命・・・お前にくれてやる・・・それで堪えてくれ」

「お前の命など・・・何の価値もない」

ぬ~べ~を撃破しようとした覇鬼の前に律子先生と生徒一同が立ちふさがる。

思わず・・・手が止まる覇鬼。

「自衛隊だけが犠牲になればいいなんて・・・私たちは思わない。無力でも抵抗します。世界を滅ぼしたければどうぞ」

「ぬ~べ~はいつも守ってくれた。だからぼくらもぬ~べ~を守る」

意味不明な人間たちの言動に逡巡する覇鬼。

「覇鬼よ・・・お前は俺の父を殺し・・・俺は絶望を感じた・・・しかし・・・俺はお前を許す」

「な・・・何言ってんだ」

不合理なぬ~べ~の言葉のあまりの筋の通らなさに混乱する覇鬼だった。

「今だ」

その隙に乗じて・・・玉藻は封印の結界を展開するのだった。

玉藻、いずな、ゆきめ・・・そして律子先生と生徒たちの霊力がぬ~べ~に集中する。

それは奇跡の力であり超霊能力となるのだった。

「強制封印」

覇鬼は・・・ぬ~べ~の左手に封じられるのだった。

人間が鬼を封じる。

その超絶的な霊力によって・・・解き放たれていた魑魅魍魎は・・・天狗塚に飲み込まれる。

ぬ~べ~は・・・父の偉業「怨霊退散」を継承したのだった。

「やりましたね・・・」と玉藻は・・・ぬ~べ~を友として讃えるのだった。

旅立ちの時が来た。

妖怪のいなくなった街に・・・ぬ~べ~の存在意義はないのだった。

ゆきめと律子先生は・・・ぬ~べ~を暖かく送りだすのだった。

「ぬ~べ~を独占するなんて・・・無理ですものね」

「いや・・・独占してもらって構わないのですが・・・」

しかし・・・少年マンガのヒーローは誰かのものになったりしてはいけないのである。

まあ・・・原作ではなるがな。

生徒たちもぬ~べ~から卒業する。

「まあ・・・高校生にもなって妖怪をマジで信じていたら・・・いろいろとアレだもんね」

そして・・・ぬ~べ~は狸的妖怪が校長(笑福亭鶴瓶)の「津留部第二小学校」に転任するのだった。

喜屋武ひとみを演じるボンビーガールな柴田美咲は福岡県出身らしい・・・。

このドラマの・・・ある意味・・・もっとも意味不明な部分と言える。

これはこれで面白かったけれど・・・もう少し・・・怖くて・・・もう少し・・・エッチで・・・もう少し心揺さぶられる「ぬ~べ~スペシャル」があるとしたら・・・大人の事情に対応しすぎる脚本家はチェンジした方がいいと思うよ。

まあ・・・一言で「大人の事情」といっても様々である。

予算と時間はどうしようもない大人の事情である。

コネクションを作品内容より重視するタイプの大人の事情もある。

金と言う点ではスポンサーのご意向という大人の事情がある。

話題性を追求するおバカな大人の事情もある。

社会性に配慮しすぎる大人の事情がある。

限られた予算と限られた時間の中でギリギリのやりくりをしているところにぶっこんでくる大人の事情もある。

それらを飲みこんでそれなりにしあげるのが大人というものだが・・・それがつまらないものをつくる方向にシフトしそうなら・・・頑なに拒むのが真の大人だと思う。

バラエティーショーの企画だとか・・・バラエティーショーの評価だとか・・・そういうのをドラマに持ちこんで・・・ドラマをぶちこわすのは大人げないことです。

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2014年12月13日 (土)

花は花は花は遅かった(榮倉奈々)

いつの時代だよ。

1967年の第18回NHK紅白歌合戦で聴きました。

なにもかも・・・なつかしいな。

山本リンダ(初)は「こまっちゃうナ」を歌ったぞ。

なんだかんだ・・・NHKだな。

榮倉奈々は「瞳」のヒロインだしな。

窪田正孝は「花子とアン」の朝市だしな。

賀来賢人も「花子とアン」の安東吉太郎だしな。

ご近所さんだったんじゃないかっ。

小出恵介だって「梅ちゃん先生」の竹夫だ。

いや・・・最近では「吉原裏同心」やってたぞ・・・・。

駆け落ちしてたな。

ああ・・・かけおちしてた。

江戸時代ではやり手だったのになあ・・・まさか・・・作戦の中心人物が遅刻するなんてなあ。

で、『Nのために・第9回』(TBSテレビ20141212PM10~)原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・山本剛義を見た。ついに・・・第一の事件からの時の流れが第二の事件にたどり着いた今回。もう・・・この調子で・・・それからの十年を10クールぐらいで描いてもらいたいよね。建築事務所でのし上がっていくN・・・海外をたらいまわしにされるN・・・料理人として腕をあげていくN・・・獄中のN・・・そして・・・夫に秘密を隠し続けるN・・・せつない十年に流れ続ける「Silly」・・・誰が見るんだよ。獄中の西崎(小出恵介)は別として・・・慎司(窪田正孝)と安藤(賀来賢人)が希美(榮倉奈々)と逢えなくなってしまう理由が・・・何なのか・・・楽しみだなあ・・・まさか・・・お互いが相手を希美の意中の人だと勘違いして・・・身を引くのか・・・。だが・・・希美は西崎の出所を待つつもりだったのか・・・。ここまできて・・・まだまだ妄想できる余白がいっぱい・・・傑作だなあ・・・。

【2014年(現在)】なんとか・・・主治医の多田(財前直見)の元へたどり着いた希美である。それとなく家族への連絡を促す多田医師だったが・・・終末医療はホスピスのある施設で・・・と計画する希美。

誰にも看取られずに一人で死ぬ覚悟である。

慎司は青影島のフェリー乗り場で・・・あくまで・・・慎司が犯人であってほしい・・・高野(三浦友和)に呼び止められる。

「夏恵が・・・こんな置き手紙を残していなくなったんよ」

<14年前の夏・・・さざなみに火をつけたのは周平さんでした・・・周平さんは自殺するつもりだったのです。火事で死ねば生命保険で慎司くんを大学に行かせてやれる・・・だから・・・死なせてくれと周平さんは燃えさかる炎の中で私に言いました・・・どうしてそんなことが認められるでしょう。私は無我夢中でした・・・渦巻く煙の中で放火の証拠を隠滅すると・・・周平さんを担ぎ出したのです・・・私は警察官の妻でありながら・・・犯人隠避罪と証拠隠滅罪という二つの罪を犯したのです・・・このことが発覚したら・・・夫が駐在ではいられなくなる・・・私はこうして秘密を持つ女になったのです。夫が定年を迎え・・・事件が時効を迎えようとしている今が・・・最後の機会だと思い、警察ですべてを白状しようと決意しました・・・どうか、これまでのことをお許しください>

「どう思う・・・」

「どう思うって言われても」

「咄嗟にそんなことできるもんかな・・・」

「でも・・・きっとそうなんでしょう」

「本当は・・・お前のことかばって・・・こんなこと書いておるんじゃ・・・」

「まだ・・・疑ってんですか」

「夏恵・・・周平さんと・・・なんかあったんかな」

「さあ・・・」

「くそ」

「でも・・・俺は父がやったんだってことは薄々気がついていました」

「・・・」

「だって・・・そうでしょう・・・店を人手に渡すことになって・・・自暴自棄になってたんですから」

「知ってて・・・だまっとったのか」

「自分が疑われているなら・・・それでええかなって・・・」

「すまん・・・俺の目は節穴じゃった・・・」

「っていうか・・・気がきかない感じですよね」

「ほうか・・・」

「すみません・・・身元引受人相手に言いすぎました」

「あの時・・・希美ちゃんはお前になんて言うたんや」

「励ましてくれましたよ・・・俺なら何にでもなれるって・・・買いかぶりでしたよね」

「全く・・・俺は愚か者じゃのう・・・」

「・・・」

気がきかない高野は・・・個人情報ということにこだわったのか・・・慎司に希美の病状のことを伝えずお茶の間を唖然とさせるのだった。

夏恵(原日出子)は駐在所に出頭し・・・すべてを告白していた。

これで放火事件が解決したということになれば・・・慎司は放火の容疑者から・・・放火犯人の息子に立場を変えるのである。

とにかく・・・料亭「さざなみ」放火事件は・・・慎司と希美のものから・・・野口夫妻のものになったらしい。

妻は犯罪者になってしまったが・・・高野はそれなりに気持ちにけじめがついたのかもしれない。

高野は妻に秘密があることから目をそむけて生きて来た。だから・・・嘘をついていたと妻が告白しても心から信じる気にはならない。彼は最初から救われない男なのである。信じない者は救われないのである。

高野は虚しく過ぎ去った歳月を・・・茫然とふりかえる。もちろん・・・高野が慎司への疑念を捨てきれないように・・・これが真実とは限らないわけだが・・・一応・・・慎司は無実で・・・希美はする必要のない偽証をしてしまったことになる。

だが・・・これはあくまで二人の個人的な問題である。

慎司は・・・希美に疑われ・・・かばわれて・・・きっとうれしかったんだな。

「スカイローズガーデンの事件のあと・・・またお互い遭わんようになって・・・杉下がどんな気持ちでおったんか・・・ようやくわかった気がする」

「・・・どういう意味や?・・・十年前、それぞれに大事な相手がいたんやろ・・・」

「俺は・・・杉下やった」

「お前のNは・・・希美ちゃんやったか・・・なのに・・・会わなくなったのか・・・」

その頃・・・希美は安藤と会っていた。

安藤は友人たちとの宴席に希美を招き入れた。

その賑わいに・・・希美は笑顔になる。

「笑ったね」

「え」

「前みたいに笑わないから・・・気になっていた」

「安藤が笑えないこと言うからだよ」

「今度はもっと笑える感じで言うよ」

「もう・・・言わなくていいよ」

安藤は希美の余命宣告を知らないのだった。

希美の思いはお茶の間にも窺い知れない。

特に・・・希美の愛のありかは・・・。

西崎は・・・実家・・・母親と離婚した父親の家に顔を出していた。

「事件のことで・・・迷惑をかけ申し訳ありませんでした」

「大変だったが・・・いろいろと考えた・・・お前の母親と別れた俺にも責任がある・・・虐待するような女にお前を渡したことも・・・」

「それでも・・・育ててくれましたから」

「前科者に世間は冷たいぞ」

「覚悟しています」

「世話になった人には恩を返すことだ」

「はい」

「時々は・・・帰ってこいよ」

「・・・」

西崎は家庭の温もりを感じた。

西崎は迷う・・・希美の余命宣告を・・・安藤に伝えなくてもいいものかと・・・。

西崎は安藤に会った。

「関わらないって言ってたのに・・・」

「前科者だからな」

「俺は気にしないよ」

「・・・」

「なんで自分がやったなんて言ったの?」

「旦那を殺したのは俺だよ・・・まさか・・・殺すことになるとは思わなかった」

「・・・」

「安藤君のおかげで・・・償いは終わった・・・マイナスだった俺がゼロになった。これからはプラスを目指すさ・・・」

「・・・」

「さて・・・本題は杉下のことだ」

「会ったんだ・・・俺も会ったけど」

「杉下が助けを叫んだら・・・君はどうする」

「杉下はそんなに簡単に助けてって言わないよ」

「もしもの話だよ・・・」

「杉下に何かあったの・・・?」

その時・・・思い出の「ジングルベル」が鳴り響く。

何故か・・・西崎は真実を飲みこむのだった。

希美が西崎に・・・安藤には内緒にしてほしいと頼んだからなのか・・・。

「何もない・・・ただ・・・あの日がなければ・・・杉下はもっと幸せになっていたんじゃないかと・・・胸が痛むんだ」

「これからだよ・・・西崎さんも・・・杉下も・・・俺もね」

「・・・」

西崎は・・・希美と約束していない・・・もう一人の男に連絡する。

「成瀬くん・・・」

「西崎さん・・・」

「もう一度・・・杉下を助けてやる気はないか」

「また・・・N作戦ですか」

「杉下は・・・誰の助けも必要としていない」

「・・・」

「しかし・・・成瀬くんならそれでも助けたいと思うんじゃないか」

「文学ですか・・・」

「杉下は・・・はっきりいって・・・」

西崎の言葉に衝撃を受ける慎司だった。

施設の資料に目を通す希美。

そこへ・・・慎司から電話がある。

「今・・・家の前にいる」

「なんで・・・」

「島に帰っとったで・・・うどん買ってきた」

「なんで・・・ここに」

「何度か府中刑務所に差し入れに行ってたんで・・・西崎さんが教えてくれたんよ」

「急にこんでよ」

「少し・・・話さん?」

希美にとって安藤も特別な存在、西崎も特別な存在・・・そして慎司もまた特別な存在なのだろう。

人は特別な存在にも優先順位をつけたがるが・・・希美ははたして・・・。

「十年ぶりやね・・・島はどうだった」

「変わらんよ・・・さざなみの事件は決着がつきそうやけど」

「え」

「みんな・・・俺を疑ってたけど・・・杉下はかばってくれて助かった・・・」

「真犯人がおったの」

「もう・・・この世にはおらん人や・・・うらみごとも言えん相手や」

「成瀬くんや・・・ないん・・・」

「ないよ」

「ほうよね・・・私、あの時、咄嗟に嘘ついてしまったんよ・・・ギリギリのところにおったでしょ・・・自分じゃどうにもならんで・・・つらかった・・・あの夜・・・あの炎を見て・・・なんやわからん・・・すっきりしたんよ・・・父親も母親も・・・父親の愛人も・・・みんな燃えてしまったような気がして・・・成瀬くんが・・・みんな燃やしてくれたような気がしたんよ・・・ごめんね・・・成瀬君の大事な家が燃えとるのに・・・私・・・なんてこと考えとったんやろう・・・でも・・・おかげで・・・私は上をむけたんよ」

「野望はかなった?」

「ほうねえ・・・私、気が付いたら欲しいものはそんなにない。食べるもんがあって帰る家があって・・・それを誰にも奪われんなら・・・それでええんよ・・・あの時は・・・暗い井戸の底におって・・・ふつうの暮らしが・・・手の届かない高みにあるように・・・錯覚しとったんやね・・・きっと」

「俺・・・今、神楽坂のフレンチに勤めとるけど・・・島でオープンする店に誘われたんよ・・・そこで・・・人の思い出に残るような料理やら作れんかなって」

「ええね・・・成瀬くんらしい・・・」

「一緒に帰らん?」

「・・・」

「ただ・・・一緒におらん?」

慎司は・・・希美の首にマフラーを巻いた・・・。

立ちすくむ希美・・・。

もう・・・それでいいじゃないか・・・。

しかし・・・島に帰ると高野がしつこくしそうだからな。

え・・・退場じゃないのか。

いや・・・最終回に出番がないことはないな・・・痩せても枯れても百恵の夫だし。

・・・おいっ。

【2004年・12月】人間関係の基本は二人が結ばれた線分であるが・・・関係が問題となるのは三角関係である。父と母と子の三角関係。夫婦と愛人の三角関係。犯人と刑事と被害者の三角関係。この時点では希美には二つの三角関係が生じていると考えられる。幼馴染の慎司と・・・大学生仲間の安藤との三角関係。二人の男は奇しくも相手を希美の恋人のようなものと誤解している。もう一つは西崎と奈央子(小西真奈美)と希美の三角関係である。希美は・・・西崎の中にもう一人の自分を見出しているし・・・西崎に保護され、西崎を保護したいと考えている傾向がある。そこに・・・奈央子が介入し・・・西崎の目は奈央子に向かう。希美は奈央子に対して複雑な感情を持つが・・・結局、西崎の望みを叶える方向で動いて行く。希美の愛の複雑さは官能的でさえある。安藤にはどこまでも高みを目指してもらいたい。慎司には無事でいてもらいたい。西崎には傷を癒してもらいたい。複雑な親子関係のもたらした希美の歪んだ感情は正しい出口を求めて彷徨っているようだ。

自分と大切な人とそうでもない人の三角関係は複雑に絡み合い社会を構築しているのだ。

野口(徳井義実)と外出した奈央子は・・・公衆電話で西崎に救いを求めるが・・・結局、「イブの日に花屋に変装して来てほしい」という伝言を残して野口に捕縛される。

野口夫婦と三角関係を構築する西崎は高層タワーマンション・スカイローズガーデンにやってくるが・・・野口夫婦は要塞へと消える。

ここで・・・抑制された表現だが・・・野口夫婦が家庭内暴力関係の典型であることが明らかとなる。

野口は社会生活にストレスを感じると、妻の奈央子に暴力を行使する。日常的な暴力によって支配された奈央子はそれを愛情表現として受容する。暴力から謝罪そして慰安という相互依存による癒着が生じているのだった。

「ちくしょうちくしょうごめんねごめんねあいしてるあいしてる」

プレイであれば単なる変態だが・・・病理となると生命の危機が生じるのである。

「許してくれ・・・どうしてもお前をめちゃくちゃにしたくなる」

「怒らせてごめんなさい・・・」

「だれか・・・助けてくれ」

奈央子からの伝言によって・・・N作戦2は変更を余儀なくされるのだった。

西崎と希美の作戦会議。

「奈央子は殺されてしまうかもしれない・・・」

「今すぐ・・・警察に通報した方が・・・」

「いや・・・作戦は続行する・・・俺が花屋に変装して・・・侵入する」

「私と・・・成瀬くんがどうすればいいのかは・・・西崎さんが決めて・・・」

①午後5時に希美が野口宅へ・・・希美は野口を書斎で将棋をコーチ。

②午後5時30分に西崎が花を持って到着。

③奈央子を西崎が連れ出し、DVシェルターへ移送

④午後6時に成瀬が到着。

相変わらず・・・危うい計画である。

まあ・・・時に作戦はシンプルな方がいいが・・・今回は安藤抜きで立案されたために・・・招待客の一人である安藤は不確定要素として計画を破綻させかねない存在になっているのだった。

希美は計画の変更を伝えるために慎司が働くレストラン「シャルティエ・広田」にやってくる。

希美は三人で作戦会議をしたいと伝えるが・・・広田から・・・安藤が希美にプロポーズするかもしれないと聞かされた慎司は・・・わだかまりを抱えているのである。

「暮れまで結構・・・忙しいんだ」

「ほっか・・・じゃ・・・クリスマスイブに・・・」

「・・・うん」

希美は・・・安藤を巻き込まないために・・・動向を探る。

「クリスマスイブのことなんだけど・・・六時より前に着くようなら連絡くれる?」

「杉下は何時に行くの?」

「五時には・・・奈央子さんを手伝いたいし・・・」

「野口さんと・・・戦略練るんでしょ」

「え」

「野口さん・・・杉下みたいな手で反撃してくるから・・・」

「違うよ・・・」

希美を同期の忘年会に連れ込む安藤・・・この男は十年間、行動パターンが一緒なのか。

にぎやかな雰囲気に笑顔になる希美。

闇の仲にいる希美は・・・安藤によって光の中に連れ出されることをうれしく感じるのだ。

「安藤の彼女?」

「誤解されてるよ」

「いいじゃないの~」

「ダメよダメダメ~」

「何それ?」

「十年後の流行語大賞になるんよ」

慎司は広田に声をかけられる。

「どうした・・・元気ないな・・・彼女となんかあったか」

「プロポーズされるんですよ」

「え」

「この間の・・・」

「え・・・のぞみちゃんなの・・・でもさ・・・まだわからないじゃない」

「・・・」

「彼女がOKするとは限らないし・・・それより、先にお前がプロポーズすりゃいい」

「そんな・・・」

「こういうことは・・・早い者勝ちなんだよ」

「適当なことを・・・」

「適当でいいんだよ・・・適当ってのはほぼ正解ってことだから」

しかし・・・慎司は・・・適当なことが苦手なのだった。

幸せになるチャンスはいくらでもあるのに・・・若者たちはそれを見送り続ける。

みんな・・・ウサギとカメの物語に呪われているのである。

【2004年・12月24日】運命の日がやってきた。

「私・・・野口さんちに行くよ」

「杉下が頼りだ」

「奈央子さんを連れ出せたら・・・二人で逃げちゃいなよ」

「・・・」

「本当は奈央子さんと一緒にいたいんでしょ・・・奈央子さんの幸せばっかり考えないで・・・西崎さんの幸せも考えなよ」

「そのうちにな・・・さあ・・・作戦開始だ」

「遅れないでね・・・野口さんをそんなに長く引きとめることはできないから」

「きっかり・・・五時半に・・・」

しかし・・・クリスマスイブの花屋は・・・早い者勝ちの世界なのである。

希美は定刻通りに4803号室に到着する。

奈央子への挨拶もそこそこに・・・書斎に籠る希美と野口。

しかし、花屋のラッピングは二十分待ちである。

「何故だ・・・何故・・・こんなに花を買う男たちが・・・」

西崎の知らない世界が展開していた。

「今日は・・・クリスマスイブですから」

「・・・」

盤上に残された勝負途中の展開に・・・希美は見覚えがあった。

手筋が・・・希美が安藤に初めての敗北を喫したあの日と同じだった。

逆転の一手は・・・慎司から教わっている。

しかし・・・簡単には教えられない事情がある。

「これは・・・私が一度だけ・・・安藤に負けた時の手筋です」

「そうなの・・・」

「少し・・・考えさせてください」

「うん・・・まだ時間はあるはずだから・・・」

しかし・・・何も知らない安藤は早めに到着する。

あるいは・・・希美の指南を妨害する意図が安藤にはあったのかもしれない。

なにしろ・・・この勝負には・・・ダリナ共和国行きがかかっているのである。

安藤をラウンジで待たせる野口。

野口は希美を急かせる。

(五時半を過ぎたのに・・・西崎さん・・・どうしたの)

西崎は走っていた。

そして・・・プロポーズについて懊悩する慎司は渋滞に巻き込まれていた。

(これ以上・・・伸ばせない)

希美は逆転の手筋を打ち始める。

「ここに龍を・・・」

(西崎さん)

「そうか・・・これで・・・勝てる・・・安藤君は海外行き決定だな」

「どういうことです」

「賭けをしたんだよ・・・彼が負けたら電気もガスも通ってないこの世の果てのようなダリナ共和国に赴任することになる」

「そんなことを・・・将棋できめるんですか」

「何事も経験だからね・・・まあ・・・彼はかなり苦労するだろうが・・・」

野口の顔に・・・人を苛むことに快感を覚える嗜好が浮かぶ。

十五分遅れで西崎が到着した。

「ラ・フルール・マキコ様がお花を届けにいらっしゃいました」と伝えるコンシェルジュ。

奈央子が入室を許可する。

二人は玄関でひしと抱き合う。

それは・・・もう・・・逃げてからやってとお茶の間が絶叫する中・・・。

「さあ・・・安藤君を呼んで・・・食事の前に決着をつけてしまおう」

「安藤に勝ちたいなら・・・野口さん一人で勝ってください」

「人外魔境へのチケットをくれたのが・・・希美ちゃんだって知ったら・・・安藤君びっくりだよね」

「これは・・・正当な勝負じゃないでしょう」

「ずるい卑怯は敗者の戯言だよ」

「お願いです・・・こんなことで安藤の将来を・・・」

「必ずしも・・・悪い話じゃないんだよ・・・若い時の苦労はしておくもんだ・・・さて・・・希美ちゃんはどうするの・・・安藤くんについていくのかな」

すでに舌舐めずりをする野口だった。

希美は土下座をした。

土下座をした時の希美の恐ろしさを・・・野口は知らないのだった。

「やはり・・・若い女の子には無理かもねえ・・・結構、危険なところだからね・・・ダリナ共和国はだりーなあ・・・なんちゃって」

(どうすればいい・・・)

沸騰する希美の思考。

その時・・・西崎の一言が蘇る。

奈央子を旦那から引き離すには警察ざたにするのが手っ取り早い・・・

希美は大切な人のことを考えた。

その人の未来が幸せであるように・・・。

一番大切な人のことを・・・。

だが・・・それがその人を幸せにするかどうかは別の話なのである。

そして・・・聖なる夜は・・・ジングルベルを奏でるのだった。

恐ろしいほどに完璧なつづく・・・。

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2014年12月12日 (金)

結婚してくれませんかって本当ですか。(綾瀬はるか)

シンデレラなので・・・12時になったら帰宅である。

物語的には今、ここです。

「待ってください」

「待てません」

でもガラスの靴は置いていきますね・・・ということである。

なにしろ・・・お互いの親も了解の仲である。

来ようと思えばいつでも来れるでしょう・・・なのである。

自分をよく見せるためには・・・相手をどんなに傷つけても許される。

シンデレラのわがままにのけぞる人もいるかもしれないが・・・。

シンデレラというのは・・・そういうものなのです。

で、『きょうは会社休みます。・第9回』(日本テレビ20141210PM10~)原作・藤村真理、脚本・金子茂樹、演出・中島悟を見た。なにしろ・・・ウジウジするのが大好きな脚本家なので・・・今回はノリノリで書いていた気がする。障害がまったくない一本道で歩きながらバナナを食べて、バナナの皮を前方に投げ捨て、おりゃあっと踏みに行き、すってんころりんである。どんなコントなんだよ・・・。そういう人に「大丈夫ですか」と手を差し伸べるのはかなり勇気がいるよね。でも、それをするのが綾瀬はるかなんだから・・・納得するしかないよねえ。一般人は真似しちゃだめだよお・・・。

ドラマとしては・・・微妙なところである。

なにしろ・・・王子様は別に元CEO朝尾(玉木宏)でもいいよねえ・・・という人も多いだろうから。

しかし・・・舞踏会で踊ったのが悠斗(福士蒼汰)である以上・・・ハッピーエンドは悠斗でなければいけない宿命なのである。

そうでなければ・・・シンデレラの物語は愛されないのだ。

だから・・・今回は最終回じゃないんだな。

ちなみに恋愛物語は二つしかない。

「ロミオとジュリエット」のように結ばれないか・・・「シンデレラ」のように結ばれるかだ。

たとえば脚本家の出世作「プロポーズ大作戦」の原型である映画「卒業」は・・・王子様が・・・ヒロインの母親のセックスフレンドだったことで・・・「ロミオとジュリエット」を装いながら・・・最後は結婚式に殴りこみで結局、「シンデレラ」になってしまうのである。

「白夜行」はヒロインは「シンデレラ」の路を歩みながら・・・親殺しの恋人同志が・・・「ロミオとジュリエット」になる悲恋物語である。

この物語は・・・「シンデレラ」でないと・・・ものすごくやりきれない感じになるよね。

三十路に踏み入れた瞬間から・・・魔法にかかった帝江物産横浜支社食品部デザート原料課勤務・青石花笑(綾瀬はるか)は・・・初めてのセックス、初めての痴話喧嘩、初めての同棲生活、初めての三角関係清算、初めての両親紹介などを経て・・・ついに初めてのプロポーズにこぎつけたのだった。

夢のような舞踏会は続く・・・。

料理研究家の悠斗の母親・田之倉時子(鈴木杏樹)は・・・大学生の息子と九歳年上のOLとの結婚話に・・・かなりの確率で難色を示すと思われるが・・・。

「花笑さんがよかったら・・・よろしくお願いします」

・・・なのである。

それどころか・・・。

「温泉の高級旅館の招待券をどうぞ」

・・・なのである。

なんらかの詐偽を疑いたくなるところだ。

で・・・実質的に・・・結婚の段取りが・・・悠斗の大学卒業、就職が前提になっているのに・・・一度は断った帝江物産横浜支社食品部デザート原料課への正社員の話を蒸し返す前に・・・とりあえず・・・会社を休んで温泉旅行に行く二人だった。

とにかく・・・綾瀬はるかも入浴しなければならんだろうし。

悠斗もそれなりに肉体をアピールしなければならないのである。

昼間の光の中で・・・部屋付きの露天風呂に入るのは・・・それなりに美しさに自信がないとできないからねえ。

性欲のピークの二十代前半男性(個人差があります)と性欲のピークの三十代前半の女性(個人差があります)は欲望のおもむくままにやりまくったはずだが・・・ドラマなので省略である。

そして後戯として若さ漲る悠斗に・・・労りのマッサージを受ける花笑だった。

幸せの絶頂・・・幸せすぎてなんだかこわい・・・いつか・・・恋の魔法は解けるもの・・・。

自然の成り行きを受け入れることができない幼い花笑はたちまち・・・悪夢を見るのであった。

すべては・・・さやか博士(平澤宏々路)が悠斗ロボを使って仕掛けたどっきりカメラだったのである。

「どうして・・・そんなことを・・・」

「だって・・・花笑ちゃんだけが幸せなんてずるいもの」

「ハナエサンダケガシアワセナノデス・・・」

花笑の中で・・・自分との結婚を優先させるために・・・悠斗の大学院進学を断念させた・・・罪悪感が急速に育っていたのであった。

そんな花笑に痛恨の一撃を加えるために・・・やってくる悠斗の昔の恋人で・・・大学の助手である戸崎啓子(香椎由宇)・・・。

「悠斗はあなたと結婚するより・・・大学院に進んだ方が幸福な人生が約束されるのです」

啓子と悠斗がどんな恋愛をしたのかは明らかにされないが・・・明らかに独善的で・・・余計なお世話な言動だが・・・恋愛的に幼い花笑の心は打ち砕かれるのだった。

迷った時のアドバイザー朝尾は・・・。

「彼の背中を押してやるのも・・・時には大切だ」などと・・・偶然を装って悪意のない罠を仕掛けるのだった。

本末転倒という言葉を知らない花笑は・・・悠斗の幸せのために・・・身を退く決意をするのだった。

なんでそうなるの・・・と誰もが思うわけだが・・・ドラマですから。

美しいイルミネーションを見ながら・・・一方的に別れを切りだす花笑である。

もちろん・・・その根本にはふられる前にふりたいとか・・・そういうネガティブなウジウジ感が満ちています。

まったく潔くないわけです。

「どうして・・・」

「それがあなたのためだから・・・」

「僕の幸せはあなたと生きて行くことです」

「私は・・・もうあなたが好きではないのです・・・朝尾さんとつきあってます」

それは・・・絶対についてはいけない嘘だが・・・ドラマですからっ。

そうなるしかない心情を描き切っていたかどうか・・・微妙なところだよねえ。

なにしろ・・・人間はそういうウジウジしたものだ・・・が・・・この脚本家の前提なので。

自分で穴を掘って自分を埋めて・・・さめざめと泣く花笑・・・。

花笑の両親は真相を知ったら・・・一同爆笑するだろうが・・・てっきり、娘がふられたと思いオロオロするのだった。

花笑は自分についた嘘をとりつくろうために・・・朝尾に「つきあっていることにして」とお願いするのだった。

花笑は初心という設定なので・・・ギリギリクリアだが・・・鈍感にも程があるお願いである。

早速、真相を確かめに来た悠斗に・・・本当のことを言う朝尾だった。

「もちろん・・・彼女とつきあってはいないさ・・・」

「・・・」

「でも・・・言ったはずだよね・・・君には彼女が見えているのかと・・・」

「最初から・・・見えていなかったのかも」

「好きな人が耳をかきたいと言ったらかかせてやればよかったんだよ」

「そこですかっ」

若さゆえの自信を失う悠斗だった。

恋は所詮、幻・・・それでいいと思うには・・・もう少し経験が必要なのである。

好きな人のために頑張ることは自然なことだ。

頑張りすぎて疲れてしまうのも自然なことだ。

疲れたらちょっと手抜きをすればいい。

おなべを焦がす度に全焼させてはいけないのである。

朝尾は・・・誠実な態度で接しているが・・・実は悠斗を崖から突き落としているのだ。

悠斗は直接の要因をブッシー(田口浩正)から聞きだし、啓子を詰る。

「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて信じまえ」

「あなたの心より・・・他の女の言葉を信じる女・・・所詮、ろくなもんじゃないわよ。それに・・・あなたは大学院に進むべきだと・・・私は信じていますから」

「・・・」

花笑ではなく・・・啓子に会いに行ってる時点で・・・悠斗はわかげのいたりなのだった。

主導権を握っている花笑が頑なになっている以上、為す術もない悠斗は・・・再び・・・大学院に戻る流れに乗るのだった。

なにしろ・・・花笑と結婚しないのなら就職する意味はないのである。

本質から目をそむけ・・・瀬戸内寂聴に逃避する花笑だった。

「恋に破れて尼さんになった人の言葉に溺れてどうするの」

「だって・・・この本には私がいるから」

「ま・・・いいか・・・じゃ、彼の名は・・・削除しときなさいよ」

厳しい親友の一華(平岩紙)は甘えを許さないのだった。

もちろん・・・削除はできない花笑である。

だって・・・それはガラスの靴ですから・・・。

そして・・・最終回を前に・・・俺にだって胸キュンさせることはできるとばかりに・・・新装開店前のレストランに花笑を招待する朝尾だった。

「最初の客は・・・君にすると最初から決めてた」

「・・・」

「君はそのままでいい。好きなこと言って。好きなことして。ただ・・・笑って、傍にいてくれるだけで」

「はい?」

「だから・・・俺と結婚してくれませんか?」

ものすごく愛して愛されている相手を一方的にふっておいて・・・すぐさま別の男性にプロポーズされる。

そんなことを言うのは野暮ですが・・・あくまでドラマですからっ。

さあ・・・王子様は・・・シンデレラを求めて・・・街を彷徨ってくれるかな・・・。

基本的に主軸の三人以外のエピソードはいらないですよねえ。

特に主軸とからまない二人の出番・・・かわいそうな感じがするぞ・・・。

これは群像劇じゃないんだから・・・。

主人公あっての脇役にしていかないと・・・。

せめて・・・クリスマスを瞳(仲里依紗)一緒に過ごせることになったと加々見(千葉雄大)が花笑に報告するとかで関連付けないとねえ。

まあ・・・ウジウジにノリノリだからしょうがないか。

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2014年12月11日 (木)

運が良いとか悪いとかとやってはいけないことは無関係なんだよ(竹野内豊)

やはり・・・神だったな。

神じゃなきゃ・・・悪いことは悪いって言わないものな。

ギャンブルでの不正行為も許してくれないしな。

それにしても・・・ついに「愛」のない回が来たな。

それどころか・・・「タイムスリップ」さえないぞ。

いや・・・「愛」はあったんだろうな。

どこに・・・。

つまり・・・「恋愛してないと・・・ろくなことないぞ」って言う話だ。

恋愛してたって・・・強盗はするだろう。

いやいや・・・恋愛してたら・・・そんな暇ないって・・・。

だって・・・デート費用のために強盗することだってあるだろう。

いいね・・・デートと強盗を兼ねてか・・・。

誰がボニーとクライドの話をしろと・・・。

キスをしてから強盗するか・・・強盗してからキスをするか・・・悩むよね。

強盗に失敗するとキスどころじゃなくなるぞ。

じゃ・・・キスが先だね。すると・・・もう強盗はしなくてもいいんじゃないかな。

まあ・・・そうかもね。

で、『素敵な選TAXI・第9回』』(フジテレビ20141209PM10~)脚本・バカリズム、演出・星野和成を見た。ショート・ストーリーの手本というものには様々なものがあるが・・・手頃なのはオー・ヘンリーと言えるだろう。刑務所で服役しながら処女作を書き、妻に先立たれ、最後は酒に溺れて死亡。まさにちょっぴり悲しい人生である。・・・作者本人のことかよっ。まあ・・・「ついていない」ということを語る作品が多いからな。病気で死ぬから最後の一葉とか・・・貧乏な夫婦がお互いの大事なものを売って役に立たないクリスマスプレゼントを買うとか・・・浮浪者が遺産をもらい損ねるとか・・・改心した金庫破りが結局、金庫破りをするとか・・・全部、話の本筋が違うぞ。そういう延長に・・・ついていない男たちの話はあるのです。

キッドは下ネタが嫌いです・・・下品だから・・・どの口で言った?

まあ・・・くそを喰ってる時にカレーの話をされると食欲がなくなるからな。

そう言う意味で・・・二枚目俳優を便器に座らせたらいけないと思う。

もちろん・・・美少女が座ってる分には・・・そこまでだ。

「cafe choice」のトイレで枝分(竹野内豊)はトイレットペーパーを交換しようとして・・・ストックがないことに気がつく・・・。

困るよね。何もできない。いや・・・手でふいて手を洗えばいいと「F」の人が言ってたぞ・・・。あれはスイーツを食べる時の心得だろう。ああ・・・「よいとまけ」とか・・・それは別の情報番組の話だろう。

テレビでは・・・「髪型占い」で「オールバックの人が最下位」になっていた。

基本・・・ここにいるのは神々なのだが・・・でっちあげの占いに結構、影響される愉快な神なのである。

だから・・・枝分は・・・オールバックでついていないことを語りたいのだが・・・マスターの迫田(バカリズム)、ウエイトレスの宇佐見夏希(南沢奈央)は冷たい。

何故なら・・・不運は伝染するからである。

標(升毅)は頓着しないが・・・所詮、オールバックなのだった。

枝分の守護神であるもう一人のウエイトレスの関カンナ(清野菜名)はおつかいにはいかないのかと思ったがいくのだった。パシリじゃなくて仕事だからな。

ゲストの久保(高橋努)はゾンビのいない世界で玉川区役所を首になったのか・・・競輪で家賃を稼ごうとして・・・一文無しになってしまう。

切羽詰まったあげくに・・・コンビニでカッターナイフを奪い・・・レジから金を強奪しようとする。

そこへ・・・元レディース総長のカンナがやってくる。

カンナの圧倒的な戦闘力に・・・カッターを握ったまま逃走する久保だった。

追いかけるカンナ。逃げる久保。そして・・・その先には選TAXIが・・・。

「ついてないんですよ」と客にいきなり愚痴る枝分。

たちまち巻き起こるついてない合戦。

「ロールチェンジの上にロールストックゼロなんですよ」

「俺なんかロールチェンジでサイフドボンなんだよ・・・その上、コンビニ強盗しようとして・・・変な女に追いかけられるし・・・」

「なんですって・・・」

「変な女に」

「その前です」

「だからコンビニ強盗」

「えええええ・・・自首してください」

「できるか・・・」とタクシー強盗に切りかえる久保だった。

やがて・・・選TAXIが特別なタクシーであることに気がつく久保。

「じゃ・・・過去に戻れば・・・当たり車券を買うことができるじゃん」

「それは・・・不正なのでできません」

「そんなこといったって・・・これ・・・強盗だから」

「しょうがないな・・・でも・・・過去に戻ったらカッター消えますから・・・もう対等ですよ」

「え・・・そうなの」

「そうしたら・・・警察に突きだします」

「だって・・・カッター消えてたら・・・強盗してないじゃん」

「あ」

その頃・・・「cafe choice」ではカンナが戻ってきて事態を報告する。

テレビでは「犯罪刑事」が「人質刑事」と「たてこもり刑事」と対峙している。

マスターは心配だから・・・と枝分の携帯電話を呼びだすのだった。

テレビでは「拳銃を所持した銀行強盗のニュース」が始る。

枝分は電話には応答しない。

その頃、選TAXIには新たなる客が乗りこんでいた。

銀行強盗に失敗した大久保(梶原善)である。

よく似た警視庁公安部長がいるが・・・もちろん、別人である。

こうして・・・拳銃を持つ大久保が・・・ついてない男たちのリーダーとなるのだった。

空腹の大久保は枝分にパンを買わせようとするが・・・いろいろと問題が発生する。

特に・・・パシリのような行動をすることには・・・抵抗がある枝分である。

「あんた・・・パシリだったのか」

「違うよっ」とムキになる枝分だった。

結局、ドライブ・スルーでハンバーグを買う三人だった。

支払いは枝分がするのだった。

一文無しなので強盗からタカリに立場を変える久保。

カッターは大久保にとりあげられている。

しかし、隙を見て拳銃を奪う久保。

さらに隙をついて拳銃を奪う枝分。

何と言うか・・・ついているとかついていないとか言う前に・・・おバカな三人である。

拳銃を奪った枝分だが・・・発砲する度胸がないことを見抜かれ・・・襲われそうになって拳銃を投げ捨てるのだった。

「これで対等だ」と胸をはる枝分。しかし・・・大久保は久保から取り上げたカッターを持っていた。

再び・・・主導権を握る大久保。

選TAXIで過去に戻ることを強要するのである。

仕方なく・・・時空間修正走行に突入する枝分。

しかし・・・「時計が戻ってない」と気がつく大久保。

そこで・・・「記憶がそのままであるように・・・時計もそのままなんです」と言う枝分。

もちろん・・・いつも見ているお茶の間はそれが嘘だと知っているわけである。

「その辺の店で・・・時計を確かめれば分かるはずです」

店は・・・「cafe choice」だった。

三人が店内に入ると・・・時計は確かに過去の時刻を示している。

安堵する大久保。

いつになく・・・混んでいる店内である。

「とにかく・・・これで俺は・・・無実になったんだな」

「いや・・・それは・・・どうでしょうか」

突入してくる警官隊・・・そして店内の客は私服警官だった。

「踊る大捜査線かっ」

携帯電話を通じてすべての事情を盗聴していた神々は・・・警察に通報していたのだった。

こうして・・・ついていない男たちは・・・悪いことをした犯罪者と・・・善良な市民に・・・分れたのだった。

「ついていなくても・・・悪いことしちゃだめだよ」というありがたい話なのである。

そして・・・主題歌歌手aikoがゲストとして入店する。

「HEROかっ」

だがそれは・・・aikoにそっくりな近所の洋服屋の沼越宏美(aiko)だった。

ついていることにニヤニヤし、ついていないことにショボンとする。

それが人生というものなのだろう・・・。

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Sentx009ごっこガーデン。休憩用神々の喫茶店。まこふ~・・・師走なので忙しいからメタルスライムリンごっこも同時進行です・・・庶民の皆さんはロールチェンジをするそうですが・・・じいやの話ではまこの処ではロールロイドが自分でチェンジするそうデス。まこは一度でいいからロールチェンジというものをしてみたいと思うのでしゅ~くうまこちゃんは紙がないなら手でふきかねないタイプかも・・・シャブリもったいないからなめちゃうのでありますかーーーーっikasama4その童謡・・・全国区なんですかね・・・あんぱんち童謡じゃないんじゃないの・・・まこちゃんじゃなくてみっちゃんだし

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2014年12月10日 (水)

比叡山焼き討ちと三方ヶ原の戦いの間にクリパをおきました(柴咲コウ)

人間は集うのが好きな生き物だ。

もちろん・・・一人でいることも好きだ。

一人でいると集いたくなり、集っていると一人になりたくなったりもする。

しかし・・・一人でしかできないこともある。

たとえば読書。

読書が好きということになると・・・集うのはなかなかに骨が折れるのである。

人恋しい夜というのもあるだろう。

無人島に一人ぼっちならかなり恋しいはずである。

クリスマスの宴が・・・信仰心とは別に存在するのは不思議なことだが・・・実に自然なのである。

街に光があふれ・・・サンタクロースは玩具のつまった袋を下げる。

イブに恋人たちはキスをして子供たちはクリスマスの朝を待つ。

この馬鹿馬鹿しい集いに群れる人々に幸あれと願うばかりである。

で、『信長協奏曲・第9回』(フジテレビ20141208PM9~)原作・石井あゆみ、脚本・徳永友一、演出・金井紘を見た。毎度馬鹿馬鹿しい戦国スイーツである。こたつで食べるアイスクリームのようなものと考える。信長崇拝者にとっては毎週が苦行のようなものであるが・・・もうおバカな歴史好きの女子中学生の妄想と考えれば可愛い感じもしてきます。とにかく・・・超時空のなんでもあり感も極まってまいりました~。少なくとも・・・サブロー(小栗旬)の生きている世界は・・・現世とは何の関係もないと思う他ないのでありますっ。

さて・・・今回の最大のとんでもなさは・・・正史における元亀三年(1573年)十二月二十二日の「三方ヶ原の戦い」が元亀二年(1571年)九月十二日の「比叡山焼き討ち」よりも早く起きるということである。

結果として元亀四年(1573年)四月十二日の「武田信玄の死」も「比叡山焼き討ち」以前ということになってしまう。

ちなみに元亀三年の十二月二十二日は西暦では1573年1月25日になる。

だから・・・1573年なのに元亀三年だったり、四年だったりします・・・念のため。

とにかく・・・比叡山焼き討ち→三方ヶ原の戦い→武田信玄の死という・・・流れが逆流すると・・・いろいろとアレなのである。

比叡山延暦寺には天台座主という存在がある。

ちなみに・・・最澄の開創した延暦寺は日本における仏教の総本山的な立ち位置にある。

「ごめんね青春!」でおなじみの曹洞宗の開祖道元、臨済宗の開祖栄西、浄土真宗の開祖親鸞、日蓮宗の開祖日蓮など・・・そうそうたる顔ぶれがみんな・・・比叡山の修行僧なのである。

そして・・・天台座主は日本で一番偉いお坊さんということになる。

比叡山焼き討ちの時の天台座主は第166世覚恕法親王で正親町天皇の弟である。

京にいた覚恕は皆殺しと言われる焼き打ちから逃れ・・・脱出する。

脱出先が・・・武田信玄の元なのである。

「信玄が死んでいるとなると・・・どこに逃げたらいいんだ」と叫ぶ覚恕なのだった。

永禄十二年(1569年)に信長と対面しているポルトガルの宣教師であるルイス・フロイスもびっくりである。

自鳴鐘(時計)はすでにザビエルによって輸入されており・・・自鳴琴(オルゴール)が存在するのはギリギリ・・・クリアと考える。作ろうと思えば作れるからな。

とにかく・・・オルゴールに目が眩み・・・キリスト教の布教を許可するサブローなのである。

妄想レビューとしてはドラマの超時空史と正史の間を彷徨うしかないのだな。

「兄上との戦はもう・・・おやめください」と小谷城主の浅井長政(高橋一生)の正室となったお市(水原希子)は夫に頼みこむ。

「そんなこと言ったって・・・信長様は許してくれぬ・・・浅井方の横山城には羽柴秀吉が・・・佐和山城には丹羽長秀が入城して・・・ここは風前の灯なんだもん」

「しかし・・・いざとなったら・・・比叡山に逃げ込めばいいではありませんか」

「いや・・・最近、比叡山も本当に柄が悪くなっちゃってさ・・・物騒でそうもいかないんだよ」

信長は・・・秀吉(山田孝之)、長秀(阪田マサノブ)、池田恒興(向井理)、柴田勝家(高嶋政宏)らに命じて、延暦寺の僧兵に討ち取られた森可成(森下能幸)の仇討ちをするために畜生坊主どもを焼き殺す・・・ことはしないで・・・なんとなくクリスマス・パーティー開催に情熱を傾けるのだった。

すべては・・・三方ヶ原の戦いの日付からのスイーツな展開なのである。

十二月二十二日といえば・・・クリスマスイブの前々日じゃあないですかあ・・・ということである。

そのために・・・仕方なく・・・ある日、突然、遠江国・三河国・美濃国に同時侵攻を開始する武田信玄なのだった。

Nobuoo8武田信玄は二万を率いて遠江に侵攻、二俣城を攻略すると・・・徳川家康の浜松城に迫る。山県昌景の別働隊五千は三河に進軍し、秋山信友の別働隊五千は美濃に進軍するという大作戦である。

信長は本願寺・浅井・朝倉などの包囲にあって対応が遅れ・・・五男の織田勝長の居城・岩村城を落され、勝長を奪われている。この時、降伏した父・信秀の妹・おつや(信長の叔母)を後に磔にする信長である。

しかし・・・サブローはキリスト生誕祭の準備以外には何もしていなかったのでとりあえず出陣するのだった。

一方、信長から賜ったエロ本を抱いて、風林火山のザザザシーンゴゴゴシーンを正面から受ける覚悟の徳川家康(濱田岳)は遠江・三方ヶ原に出陣・・・伝説の大惨敗を喫し「だっふんだ」と叫ぶのだった。

家康を破った信玄は怒涛の勢いで尾張に迫る。

武田騎馬軍団の来襲に備え・・・ゆき(夏帆)の行列ができる団子配りにヒントを得た鉄砲三段撃ちの特訓をする織田軍。

しかし・・・鉄砲の数が揃わずサブローの命は風前の灯である。

だが・・・前倒しで病死する信玄に救われるのだった。

こうして・・・クリスマスイブに凱旋するサブローはパーティーに間に合ったのである。

スイーツだからな。

そして・・・帰蝶(柴咲コウ)はサンタクロースからオルゴールをプレゼントされるのだった。

スイーツなんだもん。

だが・・・突然・・・比叡山の僧兵が決起したので一難去ってまた一難である。

まあ・・・僧兵四千人に対して、織田軍団十万人なので・・・基本、問題ないわけですが。

おそらく・・・サブローの実家はなんらかの宗教関係だったのだろう・・・坊さん殺しはイケナイと急に思い立ったらしい。

そこでなんとか和平に持ち込もうと・・・実は信長である明智光秀(小栗旬・二役)を替え玉として交渉役とする。

替え玉の替え玉なので本人である。

ここで・・・二人の仲を疑う・・・復讐の鬼・・・秀吉は・・・「自分もついていきます」と名乗りをあげるのだった。

ねね(綾瀬はるか)は・・・そんな秀吉に切り絵をしてもらう。

秀吉は日輪を切りぬくのだった。

「もう・・・復讐なんてやめたら・・・」

二人は信長に親を殺された孤児同士である。

「いやだ・・・」

ねねは悲しくなって秀吉の忍者刀を折るのだった。

「やったのは私だよ・・・」

・・・誰が白夜行ごっこをやれと・・・。ねねなんてキャスティングされてないだろう。

比叡山に到着した信長(本人)と秀吉。

秀吉は単独で延暦寺に乗り込む。

「これからはトイチで利息を払ってもらうぜ」

「なんじゃそりゃあ・・・おんどりゃあ・・・どこの組にケツもってもらっとんのじゃ・・・」

交渉決裂である。

「信長様・・・こうなったらやるしかありません」

「しかし・・・宗教界を敵に回すのは・・・後々面倒ではないか」

「後腐れのないように・・・追い込んで山に埋めちゃえばいいんですよ」

「・・・」

戦国時代の人である信長(本人)はそれも一理あると思うのだった。

比叡山焼き討ち決行である。

山には・・・僧侶の情婦(美女)や・・・僧侶の男色相手(美少年)もいたがすべて殺戮されるのだった。

「女子供にも手加減するな」と叫ぶ秀吉。

「・・・」

「これこそ・・・戦ですよね」

「・・・」

「ところで信長様は・・・初陣のことを・・・憶えていますか」

「ああ・・・あれは十三歳だった」

秀吉は・・・光秀が信長(本人)であることを確信するのだった。

凱旋した信長を・・・サブローはネチネチと責める。

「何も・・・女子供まで・・・殺さなくてもよかったじゃないか」

「何を言ってる・・・姉川ではお前も戦ったではないか・・・戦は所詮、殺し合いなのだぞ」

「だめなんですよ・・・軍人の犠牲は仕方ないけど民間人は安全じゃないと・・・」

「なぜだ・・・」

「だって・・・これはスイーツなんですからあああああああああああ」

囁かれる・・・信長の・・・意外な残虐性・・・。

「殿もやる時はやるのお」

「たいしたもんじゃな」

「うつけも・・・戦国武将のはしくれじゃったのじゃ」

「俺じゃない」とは言えないサブローだった・・・。

オルゴールは悲しい音色を奏でる・・・。

「で・・・愚僧は・・・何処に逃げればよいのかのう・・・」

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2014年12月 9日 (火)

父が息子の罪を隠して何が悪いというくらいに可愛い!(錦戸亮)

親は子に「罪を犯したら罰を受けること」を教える。

それは正しい。

しかし・・・子供が罪を犯さないとは限らない。

馬鹿な子ほど罪を犯す可能性は高い。

そして・・・馬鹿な子ほど可愛いのである。

食べちゃいたいくらい可愛いとか目に入れても痛くないほど可愛いと同じように・・・。

犯罪者でも可愛いわけである。

だから・・・息子が罪を犯したら・・・隠蔽して、証拠をもみ消して、目撃者も消しちゃうくらい当然だ。

それは正しい。

それが・・・本当の気持ちだという話である。

ちなみに・・・論語第十三編「子路」で孔子は「父が子のために罪を隠すこと」は「人として正しい」と断じている。

悪魔も同意します。

刑事もので「子供の犯罪を官僚が握りつぶす」というお約束にお茶の間が主人公と一緒に激昂するのは・・・あくまで他人事だからです。

知っているのにしらんぷりで・・・いいじゃないの~。

ダメよダメダメ~なんて知ったことじゃありません。

で、『ごめんね青春!・第9回』(TBSテレビ20141207PM9~)脚本・宮藤官九郎、演出・福田亮介を見た。ミステリしかも刑事ものドラマばかり、見ていると犯罪者は完全な悪人が前提となってくるわけだが・・・虚構は本来、そういう常識的な視点を揺さぶった方が楽しい。親が子供の犯罪を見て見ぬフリをする・・・いいじゃないかという主張があったっていいじゃないかということだ。たとえば・・・殉職した職業軍人の葬儀で「お国のためにお役に立ててうれしい」と胸を張る親がいてもいいが・・・取り乱して「こんな国滅んでしまえ」と叫ぶ親がいたっていいわけである。今回は・・・「法」よりも「孝」の話であるが・・・平行して・・・「都合」よりも「契り」の話も絡んでくる。親の再婚に「一人暮らしじゃ老後が心配」という都合よりも「死んだ配偶者に殉じて一生独身でいろよ」という「契り」をごり押ししてくるわけである。

淋しい老後くらい・・・我慢しろ・・・なのだな。

しかも・・・父親に・・・亡き母への夫婦愛を強要する息子が・・・父親に罪をかばわれているという実に美しい物語構造を形成している。

もう・・・甘えん坊の極地である。

凄いぞ、凄いぞクドカンと言う他はないね。

中井貴子(黒島結菜)の不在の穴を埋める渾身の脚本だったな・・・まあ、じらしてじらして告知で登場なので何の問題もなかったけどな。

あれだけで満足なのか。

量ではない質だ。

家出後、通信教育で高卒の資格を取り、フリーライターとなって「東海ティーン」という地方誌の仕事で・・・「合併して駒形大学付属聖駿高校となる男女別高校」を取材にきたという蜂谷祐子(波瑠)・・・。

ここでりさ(満島ひかり)は祐子に対して敵意むきだしになるわけであるが・・・これは・・・積年の姉妹の葛藤であると同時に・・・自分の好きな人が昔好きだった人の登場・・・で心が乱れているのです。

何故かクドカン女優ではない木南晴夏が上司を演じる「私の部下は50歳」で部下役の緋田康人が演じる豪徳寺教頭は「じゃあ・・・放火犯人・・・」と言ってはいけないことを言う。

しかし・・・「彼女は・・・無実の罪で・・・すべてを失ったのです・・・言わば被害者です」と訂正するシスター吉井(斉藤由貴)・・・。

真犯人である平助(錦戸亮)の恒例の告白チャンスタイムであるが・・・居合わせた三宮校長(生瀬勝久)が平助と目と目で通じあい・・・阻止するのだった。

平助よりも・・・カバさんの秘密の方が重い・・・この世界である。

気がつけば・・・校長室は・・・。

あまりん(森川葵)       ごめんねウナギキーホルダー 

半田(鈴木貴之)        ごめんねウナギカイロ

どんまい先生(坂井真紀)   ごめんねウナギ携帯クリーナー

シスター吉井           ごめんねウナギクリアファイル

祐子                ごめんねウナギノート

りさ                 ごめんねウナギハンドタオル

平助                 ごめんねウナギマグカップ

からくり人形             ごめんねウナギソックス

・・・「カバヤキ三太郎のごめんね青春!」のリスナーだらけ・・・番組特製グッズだらけなのである。

こだまする「インフォメーションみしま」のジングル・・・。

暇な人はリスナーとグッズを正しい線で結ぼう・・・どんな企画だよ。

しかし・・・三宮校長がカバさんであることはなんとなく秘密なのだ。

祐子により・・・合同文化祭に励む生徒たちへの取材が開始される。

巷ではカラクリ人形と呼ばれ、本人も納得しているらしい重岡大毅が演じる海老沢はビジュアル系のバンド「エビアングレイ」を結成したらしい。

おそらく・・・「X JAPAN」のYOSHIKIのプロデュースで1999年にメジャー・デビューした「DIR EN GREY」のもじりと思われる。元ネタが「灰色の銀貨」なので・・・「灰色のエビ」である。

「DIR EN GREY」には「蜜と唾(つみとばつ)」などの作品があり・・・暗示的である。

しかし・・・灰色の海老はゆでられていない証でもある。

生徒たちは口々に「原先生のおかげで・・・青春を得た」と語るのだった。

シスター吉井は「男女共学」を賛美するのである。

初恋の人との再会に舞い上がる平助。

平助は・・・知らないが・・・ラジオで・・・へーくんを気になる人と語った祐子である。

しかし・・・何故、気になるのかは明らかにされていない。

「原先生のような先生がいたら好きになっていたかも・・・」

平助の男心をくすぐる祐子。

「僕は・・・いたじゃありませんか」

「いえ・・・あくまで・・・三女に・・・原先生がいたら・・・という話です」

「あ・・・」

祐子は平助の心をもてあそぶかのようだった。

一方・・・原家にやって来たせつ子(麻生祐未)は平太(風間杜夫)の再婚相手として完全無欠の存在であり、長男の嫁であるホリコシ出身のエレナっちょの心を鷲掴み。

亡き母の存在に固執する平助と一平(えなりかずき)も柔らかいごはんやお気に入りのふりかけで胃袋をつかまれてしまうのだった。

亡き母・みゆき(森下愛子)の怨霊はラップ音を中心としたポルターガイスト現象で対抗するしかないのである。

今回は・・・「純と愛」で汚された森下愛子を浄化する回でもあるのだ。

取材を終え・・・スナック「ガールズバー」にやってきた祐子・・・。

今回の主役とも言える銀ちゃんじゃなかった平太は・・・ヤスじゃなかった祐子の父親・善人(平田満)を招聘する。

父と娘のご対面である。

姉の祐子に複雑な感情を抱くりさは・・・店を飛び出す。

追いかけようとする・・・平助を・・・。

「逃げるのか・・・」とサトシ(永山絢斗)は引き留めるが・・・祐子は「行って下さい」と妹を気遣うのである。

平助とりさの消えた店内では・・・父と娘の和解の後で不穏な気配が流れる。

「放火の犯人はまだ・・・逮捕されていないんですよね・・・」

「うん」

「警察に問い合わせたら・・・現場には花火が残されていたとか・・・」

「花火・・・」と何かを悟るサトシ。

その時・・・平太が・・・隠していた本心を見せるのである。

「そのことはいいじゃないか・・・あんたたちが中止にした合同文化祭を・・・せっかく息子が開催にこぎつけたところだ・・・水を差すような真似は・・・しないでくれ」

「でも・・・私たちは無関係なのです」

「だったら・・・それをあの時・・・言えば良かったじゃないか・・・だまっていなくなるから・・・ことがややこしくなるんだよ」

「銀ちゃん・・・」

「ヤス・・・すまねえ・・・親子水入らずに・・・水をさしたのは・・・俺だったな」

「いえ・・・」

「お互い・・・子供のことでは苦労するよなあ・・・」

どうやら・・・平太は真相を知っていて・・・ずっととぼけていたらしい。

そして・・・そのことは関係者一同に伝わったようだ。

善人の着ているごめんねウナギジャンバーに気をとられたカバさんは別として・・・。

あらためて・・・再会する・・・祐子とサトシ・・・。

「ラジオ・・・聞いたよ」

「ごめんね・・・」

「平助もいつか・・・ごめんねすると思うよ」

「・・・」

もはや・・・知らぬは主人公とヒロインばかりなりの世界である。

店を飛び出したら追いかけてきてもらえた喜びの中・・・姉の祐子との確執を平助にぶつけるりさ・・・。

「いつも・・・お姉ちゃんが私の晴れ舞台を邪魔するんです・・・バレエの発表会、運動会、遠足・・・いつも・・・私よりお姉ちゃんが優先だった・・・今も好きな人と二人きりなのに・・・お姉ちゃんのおかげでちっとも楽しくない」

「・・・」

りさの弱音が・・・平助の心に何らかの響きを与えた夜・・・。

「今夜・・・泊めて」

「え」

「姉がいるんで・・・居ずらいの・・・友達でしょ・・・家、広いでしょ」

父親の再婚相手に暖かく迎えられる平助とフィアンセ(予定)のりさだった。

家事を完璧にこなす原せつ子(予定)は「おかず」の箱に徳川家康の愛読書を収納している。

結局・・・平助の部屋で寝袋に入るりさ。

「おやすみなさい」

「はい・・・」

「恋愛に興味ないの」

「おやすみの挨拶のあとに・・・核心を突くんだね」

「・・・」

「俺も核心を突いていいかな」

平助はりさの秘められた核心を・・・突かない。

「お姉さんと・・・仲直りしてもらいたいんだ・・・」

「え」

「ごめん」

「どうして・・・あやまるの・・・ふられたくせに・・・」

「ごめんの意味は・・・いつか必ず言うから・・・」

そこでラップ音が響き・・・平助の胸に飛び込むりさ。

「かあちゃん・・・」

「かあちゃんじゃないから・・・」

誤解だがマザコンであるのであながち誤解でもない微妙な状況の中・・・。

男と女の大人の階段の手前で立ち止まる二人だった・・・。

「今日は・・・ここまで」

「はい・・・」

ときめかせるなあ・・・。

ここまでで・・・もう・・・普通のドラマ以上の満足感でいっぱいだが・・・ここからがさらに凄いのである。

もう・・・なんてことしてくれるんだよう・・・。

他のドラマに対するモチベーションが・・・ねえ・・・。

十日連続で夜の核心を突かれなかったりさである。

どんまい先生は「どんだけディスタンス(へだたり)」とりさを煽る。

しかし・・・姉の性的魅力に勝てる気がしない・・・りさ。

「外見で勝てない時は内面で勝負するのよ」

「・・・」

りさは・・・家事の女王・原せつ子(予定)に弟子入りするのだった。

ちなみに原節子と言えば・・・戦前は・・・ヒトラーに賞賛され、戦中は戦意を高揚させ、戦後は黒沢明監督の「わが青春に悔なし」で反戦を称揚するという・・・日本一の女優である。

小津安二郎監督「東京物語」に至っては完璧な戦争未亡人になってしまうのだ。

原節子は九十路を過ぎて存命だが・・・あっという間に・・・文化祭前日である。

もう・・・先延ばしはできない。

たれ目日本一の平助にも残された時間は少ないのだった。

青春にためらっている時間は許されないのだから・・・。

平助は最後の授業に臨むのだった。

なにしろ・・・平助は教師の職を辞する覚悟である。

とにかく・・・放火犯なので告白したら教壇に立つ資格はなくなるのだった。

神保愛(川栄李奈)のお題「寒い」で始る言葉の解釈である。

「寒い・・・気温が低いと感じた気持ちを表す言葉です。しかし・・・最近では芸人同志がつまらない冗談を評する隠語が一般に定着し、つまらないジョークをおちょくる意味で一般の人も使い、辞書にも載っています。これが激しくなると場を凍りつかせます。先生は・・・寒いって言う言葉には優しさがあると思うのです。つまらないじゃなくて・・・寒い・・・つまらないと言ったらおしまいですが・・・つまらなさを冬の寒さに例える。冬は寒いけれど・・・それで死んじゃうかというとそうでもないでしょう・・・。つまり・・・冬の寒さはありっていえばありなのです。凄く面白いとは言えないけど・・・どうしようもなくつまらないわけではない。そして・・・寒さに耐えていれば・・・やがて春がくる。寒いよね・・・でも・・・もう少しで暖かくなる・・・がんばろう・・・だから・・・寒いっていうのは冷たい言葉ではありません。寒さの反対語は暑さですが・・・冷たいの反対語は熱い・・・つまり・・・寒いってのは熱い言葉なんです」

放火犯となって・・・初恋の人に無実の罪を着せ・・・悶え苦しみながら生きて来た平助の懺悔の序章である。

そして・・・知っているのに知らないフリをしているだけなのか・・・何でもお見通しに見えてしまうだけなのか・・・いけない謎の女・・・祐子は優しい平助を包む世界の優しさを伝えるのだった。

「お父様に・・・私があやまっていたと伝えてください」

「父に・・・」

平太を問いつめた平助は・・・両親の葛藤を知るのだった。

母親のみゆきは気がついていた。

我が子の挙動が不審だったから・・・。

父親は・・・警察が事情聴取に着た時に・・・息子をかばって口を噤んだ。

「どうして・・・」

「高校生の息子を警察に突きだして・・・何の得がある・・・子供の未来を奪うようなことする親は人間として最低だ」

「だけど・・・」

「もう・・・お前は大人だ・・・慕ってくれる生徒もいる・・・信じてくれる友達もいる・・・どうするかは・・・自分で考えて・・・自分で決めればいい」

「・・・」

平助の世界は崩壊を開始する。

平助が歩んできた時間・・・。

あの日のまま止まっていた時間・・・。

二つの時間が交錯し・・・教師としての平助と高校生の平助は一つになって事件現場へと走り出す。

そこにあるのは・・・青春祭の看板。中井貴子(黒島結菜)が描きだし、神保愛が仕上げた平助に捧げられた供物である。

平助は・・・自分の愚かな行為と・・・それによって失われるものを心に描く。

ラジオネーム「住職」は「カバヤキ三太郎のごめんね青春!」の電話トークに参加する。

「ご先祖様に・・・仏様に・・・この世の森羅万象に謝罪したい」

「一つにしてください」

「じゃ・・・死んだ妻に・・・」

怨念の導きで放送を聞くせつ子・・・。

「顔が好きで一緒になったので・・・家事とか・・・だめだめな・・・女でした。朝の味噌汁にだしパックぶちこむような女です・・・でも・・・そこにいるだけで・・・人を楽しくさせて幸せにする女だったんです。そんな女がある日、突然、いなくなっちゃうんですよ。神も仏もないでしょう。心筋梗塞で・・・病院に運ばれた時には虫の息でした。かけつけた息子たちもぽかんとしてましたね。だって・・・深夜放送の「さまぁ~ず」で寝坊するような女ですよ。こんなことになるなんて実感ないですよ・・・そしたら・・・次男がね・・・長男を外に連れ出したんですよ・・・夫婦水入らずにしてやろうっていう・・・優しさです・・・いい子なんです・・・すると・・・妻が・・・最後の言葉を漏らしたんです・・・面白かったって・・・幸せだったとか・・・楽しかったとかじゃなくて・・・面白かったですよ・・・とてもじゃないが・・・泣けません」

「私はだだ泣きしています」

「再婚することが決まって・・・その人は・・・みゆきと違って・・・俺にはもったいないような人なんだな。でも・・・再婚が決まってから・・・なんだか・・・みゆきのことばかり思い出しちゃってね・・・だから・・・こんな男で・・・ごめんね」

せつ子は最後まで聞かず・・・去っていくのである。

口は災いの元なのである。

金曜日の夜・・・校舎の屋上に平助は・・・りさを呼びだしていた。

ときめきまくるりさの胸・・・。

しかし・・・平助は・・・過去へと遡上して行く。

「その日・・・ぼくはここに立って・・・来れたら来るという祐子さんと・・・親友のサトシを待っていました・・・ここまでいいですか・・・」

「はい」

「その日は花火大会で・・・三女の屋上に・・・二人がいるのが見えました・・・ここまでいいですか・・・」

「はい」

「俺はロケット花火を全弾発射したのです・・・家に帰ると母が・・・礼拝堂の火事のことを・・・ここまで・・・」

「よくありません・・・なんですか・・・それ」

「・・・」

「あなたが・・・犯人で・・・すべての元凶だったなんて・・・」

「・・・」

「私・・・好きっていいましたよね」

「好きだから・・・」

「好きなら・・・許せって・・・そうおっしゃるの?」

「違います・・・僕があなたを好きなのです・・・真相を告白して・・・失う人の顔を思い浮かべてみたのです・・・あなたの顔を想い浮べた時が・・・一番悲しかった・・・学校を辞めて・・・あなたに会えなくなると思うと・・・つらくてつらくて・・・」

輝きだすりさの顔・・・はじめての告白に胸躍る乙女である。

「許しません・・・まず・・・学校を辞めるなんて・・・ダメ・・・事件のことは許せないけど・・・それも乗り越えるために神の与えた試練ということにします・・・なにしろ・・・私たちは結ばれる運命にあるのです・・・いずっぱこの伝説・・・なめんなよ」

「・・・いずっぱこ・・・?」

そして・・・泣いても笑っても最終回である。

選挙速報番組で谷間が発生するわけである。

妖怪さきのばし・・・来たか。

だって・・・最終回がきたら終わっちゃう運命だものね。

それはそれで淋しいものねえ・・・。

でも・・・文化祭には生徒会長が遊びに来るから早く見たいよね~。

世界を敵にまわしても愛する人の味方でいること。

愛の本質。

つまり、愛とは唯一無二の存在に捧げられるものなのである。

裏切るなんて許さないのだ。

邪悪な悪魔が邪悪の愛を邪悪な魔王様に捧げるが如く・・・。

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2014年12月 8日 (月)

あすはたがくさのかばねやてらすらんいしがきばるのきょうのつきかげ・・・と吉弘統幸(岡田准一)

石垣原は決戦場である。

南下する東軍の黒田勢と北上する西軍の大友勢が火花を散らした地に月光がさす。

劇的な舞台に「死」を予感した大友家臣の吉弘統幸は「明日は誰が死に野ざらしとなって月の光に照らされることか・・・」と詠んだわけだ。

戦国武将はロマンチストである。

敵は百戦錬磨で・・・秀吉の軍師と称された黒田官兵衛。

それに比して、主君である大友義統は影の薄い殿様である。

だが・・・大友家臣として天正六年(1578年)の耳川の戦いで父・鎮信が討ち死にしたように・・・自分も大友家に殉じるだろう・・・そういう感慨がある。

そういう忠臣に心打たれるものは多く・・・吉弘統幸は神として祀られることになる。

世間的には名もなき武将をとりあげるのはいいのだが・・・もう少し、取り上げ方があると思うよね。

伏線という言葉をもう少し噛みしめてもらいたいよね。

で、『軍師官兵衛・第49回』(NHK総合20141207PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は二十六行・・・倍増です。しかし・・・基本、苦言です。まあ・・・誰もが思いますよねえ。大友家と黒田家の交流にもう少し時間を割いていてもよかったと・・・。新参者は地元の人との交流を大切にしないとねえ。宇都宮殲滅だけではアレですよねえ。だからこそ・・・大友家臣としては名家の吉弘氏の面倒を見るわけですから。当然、大友宗麟の娘を嫁にしている母里太兵衛と義理の兄弟になる大友義統の関係も描くべきですよね。どう考えてもこれで首がつながるわけですし・・・。関ヶ原方面でも・・・小早川秀秋の家老の平岡頼勝が黒田長政の従兄弟であることは結構、重要なポイントですよねえ。平岡頼勝の妻の母である妙寿尼(酒井若菜)がせっかく登場しているのに・・・。モー子の出番が・・・。まあ・・・光(中谷美紀)のもう一人の妹が登場しないので・・・如水と井上九郎右衛門が義兄弟であることが・・・最後まで描かれない大河ドラマに何を言っても無駄ですが・・・。井上九郎右衛門の描き下ろしイラスト大公開に万歳でございます。

Kan049慶長五年(1600年)八月、池田輝政、福島正則ら東軍諸将は美濃国に侵入。清州会議でおなじみ三法師こと織田秀信の岐阜城を攻める。二十歳となった秀信は奮戦するが多勢に無勢で降伏開城・・・高野山送りである。五年後に死去したと言われる。九月一日、家康が江戸城を出陣。八日、大友義統(西軍)は豊後国に上陸。石垣原の南の立石に本陣を構え、旧家臣を集合させる。十日、石垣原の北方にある杵築城(細川忠興領・松井康之城代)の攻城を大友勢が開始。黒田如水は中津城より、杵築城支援のために井上九郎右衛門らを派兵する。十三日、黒田・細川連合軍は石垣原で大友勢と戦闘となる。井上九郎右衛門らは大友家臣の吉弘統幸など多数を討ち取る。十四日、大友義統は黒田如水に降伏。常陸国にて幽閉され十年後に死去する。この頃、家康は東軍の終結場所となる美濃・近江国境の赤坂に到着。南方の大垣城(西軍)と対峙。西方の佐和山城(石田三成居城)を狙う。釣られた三成は佐和山防衛のために関ヶ原に布陣を開始する。同時に東軍も移動を開始。十五日、天下分け目の関ヶ原の戦いに突入するのだった。

長政からの報せで美濃国が東軍の手に落ちたことを如水はすでに知っていた。

北九州一体は兵力が上洛し、空白地帯となっている。東西どちらの軍勢も城には最低限の守備兵があるばかりだった。三成の放った九州の西軍旗頭である大友義統を撃破した今、二万に膨らんだ黒田如水軍は無敵状態となっている。

「しかし、島津がおりますぞ」と栗山善助が慎重に言う。

「一度は破った相手だ・・・造作もない。まずは豊前豊後、そして筑前筑後、さらに肥前を抑え、肥後の清正を従えれば島津も抑えられる」

「従わぬものは討ち果たすまで」と母里太兵衛は抑えていた勇猛さを示す。

「義統様の処遇はいかがしましょう」と井上九郎右衛門が指示を仰ぐ。

「とりあえず、中津におしこめておくがよかろう」

如水が家臣や領地の百姓たちの女を孕ませて生まれた子供たちは黒田忍びとして育てられ、濃淡はあるものの黒田の血を受けて不死身の軍団を形成している。

半数は長政が率いているが・・・半数は如水の九州軍団の中核をなしていた。

黒田如風、黒田如火、黒田如地・・・如水の影に率いられた黒田忍び軍は西、西南、南の三群に分れ、前進を続けている。

その行く手を阻むものはなかった。

九州北部はすでに黒田の領土と化している。

逆らう弱小勢力は殲滅し、中津城には続々と首級が運び込まれていた。

一方、家康が江戸を発ち、赤坂に到着する間、石田三成は右往左往している。

宇喜多秀家の赤坂奇襲策を退けたかと思えば、大坂の豊臣秀頼や毛利輝元に出陣要請をし、越前加賀で前田勢と対峙中の大谷吉継を近江に呼び寄せ、妻子の籠もる佐和山城の防備を案じて大垣城を抜け出すという落ちつきのなさである。

「主将がこれでは戦にならん・・・」と島津義弘は前途を悲観した。

近江には敵味方の忍びが充満している。

しかし、数の上では東軍が西軍を圧倒していた。

なぜなら・・・家康はすべての忍びを統括していたが・・・石田三成には犬神衆しかいない。味方といえる真田忍軍でさえ・・・独立して活動しているのである。

徳川忍びの近江の斥候を担当するのは甲賀衆を率いる山中大和守である。

一族の山中山城守は西軍方として大坂城にあったが・・・山城守もまた家康の犬であった。

家康自身は服部半蔵影の軍団に守られ、別働隊の秀忠軍には東軍についた真田忍軍がついている。

三成の犬神衆は山中甲賀衆ほどの勢力であったが・・・それが東は陸奥、北は加賀、南は九州と各地に散っている。

それに対して・・・大和守の忍びは三成の監視に専従しているのである。

三成の行動は逐一、家康に届いている。

報告を聞く度に・・・笑いのとまらない家康だった。

「太閤もまこと愚かなものに後事を託したものだでや・・・」

家康にとって赤子の手をひねるような決戦は目前に迫っていた。

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2014年12月 7日 (日)

目には目を、歯には歯を、そして鬼には鬼を(山田涼介)

金曜日と土曜日の落差の激しさには慄くばかりだ。

しかし・・・そこがドラマの醍醐味である。

山田涼介の土曜ドラマといえば「金田一少年の事件簿Nが記憶に新しいが・・・何と言っても「理想の男子」である。

なにしろ・・・野島ドラマでスタンド(超能力)学園もの・・・というとんでもドラマである。

ある意味・・・「ぬ~べ~」はその延長線上にあると言えないこともない。

ぬ~べ~のモチベーションは「生徒を守る教師」という大義名分である。

基本的に「守り」・・・専守防衛なので・・・「生徒の敵」から「生徒」を身を挺して守る。

「ぬ~べ~」自身が「盾」なのである。

つまり・・・ぬ~べ~は一人自衛隊なのである。

「敵」の攻撃を受けて・・・初めて攻撃を自分で許可する。

ドラマだからいいが・・・先制攻撃ができないというのは辛いものだ。

なにしろ・・・「敵」の先制攻撃による犠牲は最初から決まっているのだ。

そういう「現実」を平然と受け入れている日本人を心底、恐ろしいと思う時がある。

で、『地獄先生ぬ〜べ〜・第9回』(日本テレビ20141206PM9~)原作・真倉翔・岡野剛、脚本・マギー、演出・池田健司を見た。ここまで・・・ぬ~べ~と敵対する妖怪は基本的に打撃系で攻撃してくる。流れで言えば・・・敵の暴力、それを受けて苦悶するぬ~べ~、最後は鬼の手で反撃ということになる。お約束と言ってしまえばそれまでだが・・・要するに暴力、暴力を我慢、暴力という展開である。つまり、暴力の賛美である。それをオブラートに包んで・・・平和的解決だった風にもっていく・・・一種の詐欺を続けているのだ。ぬ~べ~の奥の手は・・・左手に封印した鬼だが・・・要するに敵を奴隷化してエネルギー源にした核兵器保有国なのだ。言わば・・・毎回、専守防衛して最後は米国に核弾頭を発射してもらっているようなものだ。そう考えると凄いドラマなんだな。

もう・・・いいか。

地獄の妄想の奥は深いが・・・亡者を苦しめる地獄は・・・灼熱と極寒である。

夏の暑さと冬の寒さは人を苦しめるからだ。

もちろん・・・冷暖房完備になると・・・その恐ろしさは薄れます。

ためしに・・・夏の一日、クーラーから扇風機、冷蔵庫にいたるまで「冷たいもの」を断ってみるといい・・・熱中症になるぞ。

あるいは・・・冬の一日、ストーブからこたつ、床暖房にいたるまで「暖かいもの」を断っても良い・・・風邪ひくぞ・・・。

地獄の羅卒である鬼に・・・赤鬼と青鬼があるのはそういうことだ。

灼熱地獄担当が赤鬼さんで・・・極寒地獄担当が青鬼さんである。

ドラクエで言うと・・・メラ系が赤鬼さん、ヒャド系が青鬼さんです・・・そのたとえはどうかな。

ぬ~べ~(丸山隆平)が霊能力者である美奈子先生(優香)の力を借りて封印した覇鬼(坂上忍)は言わば赤鬼王である。

そして・・・今回、登場する覇鬼の弟、絶鬼(山田涼介)は赤鬼王である。

ちなみに鬼には大別して三つの意味がある。

一つは人としての鬼・・・幽鬼である。

二つは魔としての鬼・・・邪鬼である。

三つとして・・・鬼本来の姿である地獄の官吏である。

このドラマでは・・・鬼は邪鬼の要素が強い。

人間の負の想念が現象化した存在と言える。

なぜ・・・彼らが・・・この世を阿鼻叫喚の地獄としたいのかは・・・説明されないが・・・要するに・・・子供たちの・・・日本人の・・・人間の敵としての象徴なのであろう。

童守高校を中心とした亜空間で・・・邪気に満ちた異次元の扉が開かれ・・・まず、妖狐である玉藻(速水もこみち)が解き放たれ・・・今度は・・・絶鬼がこの世に出現したのだった。

「人間を苦しめるのが・・・妖怪のあるべき姿・・・阿鼻叫喚こそが美しい旋律」

絶鬼はそう嘯きながら・・・転校してきたのだった。

本名が「絶鬼」(ぜっき)である。

どこの国の人だよ・・・と一々ツッコミを入れるのが馬鹿馬鹿しいくらい開けっ広げの話である。

まあ・・・脚本家がそういうセンスなんだから仕方ないよね。

絶鬼は特技が妖力のステルス(隠密)化である。

そのために・・・ぬ~べ~は絶鬼の存在を感知できないのである。

ぬ~べ~に守られてきた生徒たちはそれぞれに・・・過去の妖怪たちの顛末を転校生に語る。

「妖怪と友達になれた」などと喜ぶ生徒たちは絶鬼の神経を逆撫でする。

「妖怪は人間を苦しめるために存在する」という信念があるからだ。

幻術使いでもある絶鬼はたちまち・・・生徒の半数を青鬼化し・・・苦痛と恐怖を与える。

一方、ぬ~べ~は・・・律子先生(桐谷美玲)から愛を告白されそうになって・・・激しく劣情を催していた。

そこへ・・・まこと(知念侑李)が「大変だ」と飛び込んでくる。

男ならその件は後回しにするべきだが・・・ヒーローなのでそうもいかないのだった。

教室にかけつけたぬ~べ~は鬼の手で・・・絶鬼の呪いを解くのだった。

その頃・・・雪女のゆきめ(知英)は悪寒を感じてくしゃみをし・・・ぬ~べ~の身を案じる。

そして・・・いずな(山本美月)は病床に伏した無限界時空(高橋英樹)のことをぬ~べ~に知らせる。

居合わせた玉藻は・・・人間に心を寄せている自身の妖怪としての自己同一性の危機に揺れていた。

「ぬ~べ~に・・・お父さんが話があるって・・・」

「あんな奴の話など聞きたくない」

「どうして・・・」

「あの男は母を見捨てた・・・だから・・・俺もあいつを見捨ててやる」

「そんな・・・玉藻さんからもなんか言ってやって」

玉藻はなんとか非情であろうとするが・・・結局、情にほだされる。

「無限界時空は・・・ぬ~べ~を助けた」

「なんだって」

「赤マントの呪いを解いたのは・・・無限界時空なのだ」

「・・・」

真相を確かめるために・・・無限界時空が伏せる童守寺に向かうぬ~べ~。

残された玉藻といずなの前に絶鬼が現れる。

「人間に心を寄せるなど・・・妖狐としては堕落だな」

「何よ・・・あんた・・・」

しかし、実力でいずなを仰臥拘束する絶鬼。

お色気担当要員みたいなことになるいずなだった。

まあ・・・健全な小学生男子は脳殺である。

だが・・・ラブ・ファイヤで抵抗を試みる健気ないずなだった。

「とにかく・・・妖狐は妖狐らしくするべきだ」

絶鬼の実力を伴う説得に折れる玉藻だった。

ゆきめに看病される無限界時空・・・。

「なぜ・・・俺を助けた」

「お前の母親は・・・手遅れだった」

「そんな・・・」

「お前の母親を失い絶望した俺は・・・妖怪退治に全力で逃避した・・・妖怪を封印して封印して封印しまくったのだ・・・」

「なんて・・・孤独な・・・」

「だが・・・俺の力の尽きる時が来た・・・もはや・・・一人では鬼を封じることはできん・・・」

「そうか・・・だが・・・俺はお前の力など・・・借りん」

結局・・・決裂する父子だった。

「悪夢ちゃん」のキャラクター・ユメノケの親類のようなコイナリが・・・いずなの危機をぬ~べ~に知らせる。

駆けつけたぬ~べ~にいずなは「絶鬼」の正体を告げるのだった。

「あいつが・・・鬼だったのか」

最初から・・・絶鬼だと名乗っているわけだが・・・。

「なかなか・・・正体を見抜いてくれないんで・・・困りました」

「すまない」

「そんなあなたに・・・プレゼントがあります」

屋上には律子先生と生徒たちが磔にされているのだった。

玉藻が電撃で悶えさせ・・・男子小学生のためのお色気攻撃第二弾である。

男子生徒もいるので・・・一部お茶の間にも対応しています。

「ああ~ん」

もう少し・・・やってくれてもよかったが。

「許さん」と鬼の手を解放するぬ~べ~。

しかし・・・鬼の手対鬼である。

圧倒的に強い絶鬼だった・・・。

ぬ~べ~の危機を見て・・・律子先生は玉藻に呼び掛ける。

「玉藻先生・・・ぬ~べ~を助けて・・・あなたなら・・・」

「・・・」

人間と妖怪の間で揺れる玉藻・・・。

しかし・・・ついに「破軍」と唱えるのだった。

それは・・・妖力を封じる結界である。

絶鬼の力が一瞬、弱まり・・・ぬ~べ~は拘束具・観音経を繰り出す。

そして・・・絶鬼を封印の地へ導くのだった。

ついに鬼としての正体を示す絶鬼。

「ふん・・・場所を移したところで・・・実力差は埋まらぬぞ」

しかし・・・響く念仏・・・。

「不思議力・・・怨霊退散・・・」

「不思議力・・・怨霊退散・・・」

父の念仏に・・・唱和するぬ~べ~。

「おのれ・・・人間の分際で・・・」

「親から子へ・・・つながれた絆の強さ・・・鬼には分かるまい」

鬼門が開き・・・絶鬼は異次元に吸引されかかる。

「それならばこうだ・・・」

絶鬼は鬼の法具で・・・無限界時空を絡め取るのだった。

「見ろ・・・地獄へ道連れだ・・・お前の力など・・・誰を守ることもできぬのだ」

一瞬、怯むぬ~べ~。

しかし・・・父は子を励ます。

「やるのだ・・・我が子よ・・・鬼を封じるために鬼となれ」

ぬ~べ~は父の教えに従った。

「結局・・・最後は・・・親殺しか・・・」

魔界に消える絶鬼。

しかし・・・ぬ~べ~は父の手を握る。

「犠牲など・・・必要ない」

ぬ~べ~は父をこの世に連れ戻した。

見つめ合う・・・父と子・・・。

しかし・・・結局、力で力を封じたぬ~べ~である。

「思いあがるな・・・弟を封じたのは・・・お前じゃない・・・俺だ」

悪の心と善の心の均衡は敗れ・・・解放される覇鬼・・・。

ぬ~べ~は鬼の手を失い・・・最終決戦に臨むのだった・・・。

人間対鬼である。

今度こそ・・・鬼が勝つよね。

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2014年12月 6日 (土)

目蓋のシャッターを閉じた時、暗闇が視える(榮倉奈々)

伏線は時限爆弾や地雷のようなものである。

前提として受け手には記憶力が要求される。

作り手は・・・それが爆発した時のショックを期待するものであるが・・・スルーされる場合もある。

どちらかと言えば・・・複雑なストーリーを求める人は伏線が効くとやられた感じがするのである。

最近では「フラグ」という要素があって例の「戦争前に結婚式の話をしたら死亡」のような「お約束のギャグ」にまで発展してしまった悲しい伏線もあるが・・・。

このドラマは伏線もそれなりに美しい。

「うちの家系の男はみんな短命や五十まで生きたやつはおらん・・・親父は四十八、 じいさんは四十三で死んだ・・・五十まで俺も残りあと三年・・・今まであくせく働いてきた分・・・残りの三年、好きに生きたってええやろ」

ドラマの冒頭で・・・破天荒な行動に出た主人公の父親は・・・捨てた家族に・・・心情を語る。

ここで・・・主人公は「病気でも見つかったのか」と聞く・・・。

父親はそれを否定する。

そして・・・時は流れ・・・主人公は遺伝的な流れの余命宣告を受けている。

伏線とは隠された筋書きである。

嘘の重ねられるこの物語・・・。

それも嘘ではないかと疑いもしたが・・・誰もいない夜の道で主人公が倒れた時・・・地雷が踏まれてしまったことを・・・せつなく思うのである。

で、『Nのために・第8回』(TBSテレビ20141205PM10~)原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・阿南昭宏を見た。非常識な振る舞いをする人々を見て良識ある人々は眉を顰めて時に思う。「どうしてそんなことをするのか」と・・・。たとえば飲酒運転で幼い子供を轢死させる人の行為がある。その愚かな行為による悲しい結果に「何故」は渦巻く。他に選択の余地はなかったのかと。だが、運命というものがあるとすれば・・・それは避けられぬことなのである。酒を飲まずにはいられない。車を運転せずにはいられない。子供を轢かずにはいられない・・・飲酒メーカーが酒を作り、自動車メーカーが車を作り、人間が子供を作るのはよくあることなのだから。

これはそういう悲しい物語である。

【2004年・12月25日未明】

取調室で顔に打撃による腫れを示す西崎真人(小出恵介)は淡々と聴取に応じる。

「年齢は・・・ニ十五歳・・・職業は・・・作家。あの男を殴ったのは俺です。あの男のことをいい人だったとみんなは言うかもしれないが・・・あの旦那は・・・クソみたいな奴だ・・・あんな奴・・・死んでいいと思って殴った・・・それを殺意と言うならその通り。俺と奈央子の関係を杉下は知らない・・・俺がやったことを黙っていてくれって頼めるほどの仲じゃない。まして・・・口封じに殺すなんてことはできない。顔見知りに顔を見られたんじゃ・・・逃げたって無駄だろう。だから・・・杉下の同級生に・・・名前は覚えていないな・・・警察に通報してくれって頼んだ・・・奈央子がいないから・・・俺には失うものなんてもうない。奈央子のことを想いながら・・・刑に服するのも悪くないって思った。自分のしたことに・・・反省も後悔もしていない・・・今はそう思っている」

お茶の間は・・・その証言が・・・事実とは異なることをすでに知っている。

西崎が野口貴弘(徳井義実)を「クソ野郎」と思っていたのは本当かもしれない。

西崎にとって野口奈央子(小西真奈美)は「掛け替えのない女」だったのも間違いないかもしれない。

しかし、杉下希美(榮倉奈々)は西崎と奈央子の関係を知っていたし・・・杉下の同級生である成瀬慎司(窪田正孝)を事件に巻き込んだのは西崎本人なのである。

西崎は嘘と真実を絡めて・・・辻褄の合う「話」をしたのだった。

【2014年(現在)】高野(三浦友和)と妻の夏恵(原日出子)は青影島の墓地で・・・父親の墓前に佇む慎司と再会する。

「ずっと・・・捜しとったんよ」

「今・・・厨房で働いとる・・・」

夏恵は席を外した。

「さざなみの事件・・・来年時効じゃろう・・・俺はお前と希美ちゃんが関与している疑いをどうしても捨てきれん・・・」

「杉下は何もしとらんけん・・・火つけたのも俺やない」

「お前と・・・希美ちゃんが・・・人よりも苦労しているのを俺は知っとる・・・お前と希美ちゃんを疑ったって・・・何一ついいことはない・・・しかし・・・疑わずにはおられんのよ・・・」

「杉下・・・元気だったか」

「会っとらんの?」

高野は疑心暗鬼に満ちた眼差しで・・・希美の連絡先だけを慎司に伝える。

夏恵は・・・夫の顔色をそっと窺っていた。

お茶の間は高野が問いただす相手を間違えていることを知っている。

しかし・・・本当は高野もそのことに気がついているのかもしれない。

「お前も・・・希美ちゃんも・・・島を出て前向きに生きている・・・十四年間、自分に嘘をついているのは・・・俺だけなんか・・・」

遠く離れた野バラ荘では・・・希美と西崎が微笑み合っていた。

西崎の部屋で・・・希美は西崎から送られた大金を返す。

「どうして・・・私が病気だって知ったの」

「興信所を使って調べた」

「私・・・西崎さんに出会わなきゃよかったって思ったこと・・・一度もないよ」

「俺にできることは・・・ないのか」

「気持ちは・・・嬉しいけど」

「誰にも頼らないか・・・」

「そんなことはないよ・・・人は誰かに頼って誰かに頼られて生きていくんだって今はわかっとる・・・でも・・・病気のことは・・・人に頼ってどうなるわけでなし・・・」

「大丈夫か・・・」

「大丈夫・・・楽しいことたくさんあったから・・・」

「・・・」

「安藤の次は私がここを出ていくつもりだったのに・・・西崎さんが先にいなくなって・・・淋しかったよ」

「・・・」

「この前・・・安藤に結婚しようって言われた・・・」

「断ったんだろう・・・」

「うん」

「もったいないことをしたと・・・」

「心を読まないで・・・安藤には弱い私を見られたくない」

「あとで・・・知ったら・・・あいつは怒るぞ」

「その時は・・・西崎さんがなだめて・・・」

「・・・」

「火は・・・まだ・・・怖い?」

「いや・・・そっちは冷蔵庫に食べ物いっぱいか?」

「今は食べたいものだけ食べるようにしてる・・・食欲ないし・・・」

「・・・十年間、ありがとう」

「それは・・・私のセリフ・・・先に言うなんてずるい・・・」

心が通じ合う二人。

希美にとっての「N」が・・・慎司なのか・・・安藤なのか・・・それとも西崎なのかは不明である。

最後まで明かされないのかもしれない。

人が誰か一人を愛するというのも「嘘」の一種に過ぎないからな。

しかし・・・シーンによって・・・希美は慎司も安藤も西崎も愛しているように見える。

そういうことだって・・・あるだろうし。

【2004年・11月下旬】慎司は野バラ荘の希美の部屋で・・・闖入者の西崎の話を聞く。

もちろん・・・慎司の心は・・・希美を抱きたい気持ちでいっぱいなのである。

しかし・・・その心を知ってか知らずか・・・暴力亭主によって塔に閉じ込められた人妻を救出する「N作戦2」への協力を慎司に求める西崎だった。

「ご主人は本当に奥さんに暴力を・・・西崎さんの妄想じゃなくて・・・」

「君も・・・なかなかに無礼だな・・・しかし・・・本当のことだ」

「人妻を略奪するんですよね」

「そういう下種な言い方はしないでくれ」

「成瀬くん・・・無理せんで・・・」

そう言う希美の心情も複雑である。そもそも・・・こうなることを希美が予測できないとは言えない。希美がこの席を設けたのは・・・西崎に対する好意なのか・・・慎司との共同作戦を望むのか・・・それとも全く別の思いがあるのか・・・。

「申し訳ないですけど・・・協力はできません。僕は料理をお客さんに楽しんでもらうために働いているので・・・職場に人助けは持ちこみたくないのです。大体・・・本当に助けたいのなら・・・警察に相談した方が・・・」

「警察は・・・事が起こってからじゃないと動かない・・・」

希美は知っている。

家族を家から追放した夫を放置した警察。

放火事件が起これば動く警察を・・・。

もちろん・・・それは慎司も知っている。

「そういうことはエスカレートするんだ・・・何かあってからじゃ・・・遅いだろう・・・」

「連れ出して・・・それからどうする気です」

「DVシェルターやらそういう安全な場所に保護してもらう」

「だけど・・・奥さんにその気があれば・・・とっくにそうしてるのでは・・・」

「歪んだ場所にずっといるとな・・・そこが歪んでいることに気がつかなくなる・・・彼女にはそこが歪んだ場所だということに気がついてほしいんだ・・・」

西崎はもちろん・・・希美も・・・慎司も・・・歪んだ場所の出身者なのである。

「・・・」

「駆け落ちするんじゃないんですね」

「そういう気持ちはない・・・奈央子が無事なら・・・それでいいんだ」

「・・・」

「・・・馬鹿な相談を持ちかけてすまなかった・・・ここに君がいると思うといてもたってもいられなかったのだ・・・いいところを邪魔してすまない」

部屋から退場しようとする西崎を希美が制止する。

「もういいよ・・・とりあえず・・・鍋を食べよう」

ええっ・・・三人でと・・・慎司は萎えるのだった。

片思いをしている女子の部屋にだれかいる・・・暗澹たる思いを抱えながら営業の酒の席に着いている安藤望(賀来賢人)だった。

「ゴルフはやらないとな・・・今度連れてってやる」

「お願いします」

今頃・・・やってるのか・・・と安藤は気持ちが乱れるのだった。

できれば・・・西崎が本来の意味で壁ドンしてくれと思うのだった。・・・おいっ。

かけつけた杉下の部屋からは笑い声が響く。

際中だったら・・・どうしようと思いながら安藤は叫ぶ。

「杉下!」

「入って来い」・・・部屋にいたのは西崎だった。

笑い声はテレビだった。喘ぎ声でなくてよかった。

「杉下は・・・」

「友人を駅まで送りに行った・・・」

接待で余ったカニを土産として持ち帰った安藤は・・・冷蔵庫の中にスイーツという先客を発見してもやもやする。

「カニ・・・食べる?」

「喰う」

「杉下の分・・・残しておいて・・・あいつ・・・食べ物のことは根に持つから」

「わかってる」

希美と慎司は夜の道を行く。

「今日はごめんね・・・せっかく来てくれたのに」

何もいいことがなくて・・・と言いたいのか・・・希美。

「西崎さん・・・真剣なんだな」

「ほうかな」

希美は西崎が奈央子を愛しているのを快くは思わない。しかし、奈央子の境遇には複雑な気持ちを持つ。西崎が駆け落ちする気がないのかどうかも疑っている。しかし、自分のために優しい気持ちになる慎司は大切なのである。希美にはわからない。欲しいのが西崎なのか、慎司なのか、安藤なのか・・・希美の心は半分くらい死んでいるからである。

「あんな高い所に住んどるのに・・・幸せやない人もおるんやな」

聳え立つ・・・高層タワーマンション・スカイローズガーデン・・・。

「・・・」

そこは・・・希美にとってたどり着く場所・・・帰還する場所だったはずなのに・・・。

「帰って少し考えてみるよ」

「そんなことせんでええんよ」

「将棋のことも考えとく」

「ありがとう」

慎司に・・・西崎のことや・・・安藤のことを考えさせる希美・・・すでに女として壊れているのである。

「そうや・・・ケーキのこと忘れとった」

「まだ喰うん?」

「甘いものは別腹~」

最初から・・・鍵をかけて・・・二人でスイーツを食べればよかったのに・・・。

希美にはそういう選択肢はないのか・・・。

希美が部屋に戻ると・・・安藤と西崎がじゃれあっていた。

「人の部屋でいやらしいことしないで」

「安藤君に合コンの話を聞いてた」

「へえ・・・合コンとか・・・行くんだ」

「し、仕事だよ」

「大変だねえ・・・それで可愛い子はいたの」

「別に・・・じゃあ・・・僕はこれで・・・野口さんが・・・来週、遊びに来いってさ・・・あとでメールする」

とにかく・・・希美の貞操の無事を確認した安藤は・・・他の女の話題から逃れるために帰宅を決意したのだった。

「帰っちゃった・・・」

「忙しいんだろう」

「なんで・・・カニを握ってるの」

「安藤君の土産だ・・・冷蔵庫、見てみろ」

慎司のスイーツと安藤のカニがぎっしりつまった冷蔵庫。

幸せか・・・幸せを感じたのか・・・希美。

騎士として希美の望みには応じる慎司は・・・スケジュール表に・・・クリスマス・イブのキャンセル発生を見出す。

誰も運命からは逃れられないのである。

すべてはあらかじめ起こることが決まっている。

そうやって宇宙は生まれ、やがて死ぬのである。

すべてはつかのまの夢なのだ。

それでいいのだ。

「西崎さん・・・クリスマス・イブなら・・・出張サービスの予約がとれるって・・・成瀬君が・・・」

「ありがとう・・・杉下」

「・・・」

「彼が・・・罪の共有者か」

「・・・」

「どんな罪を共有したんだ」

「それは言えない」

「そうだな・・・それを言ったら俺も共犯者になってしまうものな」

希美にとって・・・男と女の特別な関係とは・・・そういうことなのだ。悲しいぞ。

「奈央子さん・・・無事だといいね・・・今度、安藤とお見舞いに行ったらいろいろと探ってみるよ」

「頼む・・・」

安藤は野口と・・・重役との面談中だった。

本命である希美とはできないのだが・・・入社一年目なのに仕事は異常にできるらしい。

「安藤君・・・君が取引をうまくまとめてくれたおかげで・・・うちはほぼノーリスクだ・・・やるなあ」

重役に褒められる安藤に・・・同席する野口は明らかに心中穏やかではないのである。

「野口くんも・・・うかうかしておられんな」

二人になると野口はそっとギリギリの本心を口にする。

「しかし・・・安藤君は年配者に受けがいいな」

皮肉の影をスルーして安藤は社交辞令で応ずる。

「すべて野口さんのおかげですよ」

安藤も・・・野口の裏の顔を意識しないではいられない。

スカイローズガーデンのコンシェルジュは希美と安藤の入室を認める。

野口によって支配された密室に招き入れられた二人。

奈央子から虐待の形跡は感じられない。

野口と安藤は将棋の対局を開始し・・・希美と奈央子は女同士の話を始める。

「シャルティエ広田のこと・・・希美ちゃんが教えてくれたそうね」

「奈央子さんに喜んでもらえたらと思って」

「主人が・・・お二人をお招きしたいって・・・」

「お邪魔じゃないですか」

「ううん」

「奈央子さん・・・顔色良くなりましたね」

「・・・」

野口は安藤に賭けを持ちだす。

「ダリナ共和国での太陽光発電所についての人事の件だ」

野口の口調ではそれは「島送り」のようなものであるらしい。

「僕が勝ったら君の名を推す・・・負けたら名前が挙がっても僕が認めない」

「僕が負けたら・・・とばすっていうことですか」

「それは・・・まあ・・・君の受け取り方次第さ・・・」

野口は意味ありげに希美を見る。

その目が・・・彼女は待ってくれるかな・・・と告げているような気になる安藤。

希美は奈央子の心を探る。

「野口さんは奈央子さんのこと・・・大事にしてくれますか」

「そうね・・・欲しいものは何でも主人が与えてくれる」

「・・・」

「でも・・・一人で生きていく力は・・・私にはないし」

「そんなことはないですよ」

「・・・」

「本当に望めば・・・手に入るはずです」

いつの間にか背後に立つ野口。

「何の話?」

「・・・クリスマス・イブに・・・希美ちゃんたちも来てくれるって・・・」

「・・・そう・・・よかった」

希美と安藤は天国の牢獄を出る。

「勝負つかなかったの」

「うん」

「野口さん・・・劣勢か・・・」

「予約・・・よくとれたね・・・人気の店なんでしょう」

「春まで予約で一杯だけど・・・キャンセルが出たのを昔の同級生が教えてくれた」

「この前・・・来た人?」

「うん」

「そいつと・・・つきあってんの」

「つきあってない!」

希美にとって・・・それはあの日から決められたことなのだ。

安藤にはその深い意味は分からない。ただ安堵するばかりなのだ。

「そうか・・・来年・・・海外に赴任することになるかも・・・」

「え」

「まだ・・・決まったわけじゃないけど」

「いいなあ・・・」

「行き先は先進国とは限らないからね・・・電気もガスもない・・・砂漠とかジャングルとかかも」

「そんなところで・・・大丈夫なの」

「杉下なら・・・大丈夫だろうけどさ」

「日本じゃ・・・安藤には勝てないけどね」

「明日から・・・無人島で暮らせって言われたらどうする?」

「無人島で一人暮らしか・・・なんだか楽しそう」

「・・・そう言うと思ったよ」

探りを入れる安藤は希美の言葉に希望を見出す。

「でも・・・一人じゃ淋しいかな・・・」

安藤の心をもてあそんでいるようにも見える希美だった。

二人を送りだした野口夫妻の会話・・・。

「二人を呼んでくれてありがとう」

「今度は・・・外に連れて行って・・・」

「よくなったら・・・どこにだって連れてくよ・・・」

野口の言動からひょっとしたら・・・夫のDVではなくて・・・自傷行為の疑いも生じる奈央子である。

だが・・・自傷行為なら必要なのは監禁ではなくて監視だよな。

監視のための監禁と言う可能性もあるけどな。

つまり・・・室内の奈央子は24時間監視されているのか。

しかし・・・基本的に嘘だらけのドラマなので疑惑は深まるのみ・・・なのだった。

【2004年・12月上旬】慎司は野バラ荘の希美の部屋を度々訪問して・・・大家の野原兼文(織本順吉)とも顔馴染みになっていた。

「あんた・・・よく来るね」

いろいろと想像するが顔には出さない理想の大家なのである。

希美の部屋ではN作戦2の作戦会議が行われていた。

慎司は・・・きっと他にしたいことがあるよね。

「当日は午後六時で野口さんから予約が入ってる・・・人数は四人・・・野口夫妻と・・・杉下と・・・」

「もう一人は安藤望という野口さんの部下・・・この間までこのアパートに住んでいた共通の知り合いなんよ・・・」

「のぞみが・・・二人おるんや・・・」

「安藤はこの計画では部外者なの・・・仕事で時間ギリギリになるらしいし・・・」

野口氏の部屋の見取り図の上で駒となったメンバーは図上演習を繰り広げる。

時間よりすこし早目に到着する「シャルティエ・広田」の慎司と・・・助手を装う西崎。

先着している希美は野口を書斎に引き留めておく計画である。

一人になった奈央子を西崎が外に連れ出す・・・。

以上である。

「そんなにうまくいっていいのか」

「・・・」

「で・・・その後は・・・」

「店にはトラブル発生と連絡します」

「旦那が逆上して・・・成瀬くんに八つ当たりしたらどうする」

「私が体当たりして助けるよ」

「俺が書斎に突入して・・・二、三発殴られて・・・警察を呼ぶというのはどうだろう」

「暴力沙汰はちょっと・・・」

「あとのことは・・・私と成瀬くんがなんとかするから・・・西崎さんは奈央子さんのことだけ考えて」

「・・・分った」

杜撰な計画である。

奈央子が西崎と脱出したら・・・責任のすべては・・・不審人物を招き入れた・・・成瀬にかかってくるのは明らかなのだ。

しかし・・・まあ・・・成瀬は希美のためなら何でもする男だし・・・。

希美はそれを当然と考えるところがあるんだなあ・・・。

主従だからな。

ずっと肝心なことはやらない二人なのである。

「成瀬くん・・・迷惑かけちゃって・・・」

「気にせんでええんよ・・・困っとる人は助けたいし」

「・・・」

「これ・・・例の将棋の手筋なんだけど・・・」

希美が安藤に初めて負けた棋譜から逆転の一手を考えた慎司だった。

「捨て身の思いで龍で銀を獲りにいくんよ・・・」

「すごいよ・・・成瀬くん」

慎司の心に響く・・・希美のシャープペンのノックの音。

(す・ご・い・・・す・ご・い・・・)

別のことでそれを言ってもらいたいよね・・・男だから。

「また・・・成瀬くんに将棋を教えてもらえるなんて・・・思わんかった・・・このアパートだって・・・びっくりするくらいボロやけど・・・島にいる頃より何倍もマシって・・・そういうこと分かってくれるのは・・・成瀬くんだけだよね」

「ほうかな・・・」

「辛い時・・・助けてもらうと嬉しいよ・・・やけん・・・私も奈央子さんを助けようと思った」

「その役に立てるんなら・・・よかった」

二人でいると島の言葉に戻る二人。

心は通じ合う・・・しかし・・・お互いの思いはすれ違う。

二人が越えられない壁・・・。

一人になった西崎は記憶の彼方に向かう。

奈央子は言った。

「灼熱バードは・・・あなたなんでしょう?」

西崎(若山耀人)は幼い日々の追憶に沈んでいく。

女子小学生が囁く。

「西崎くんちって・・・リコンしてお父さんいないでしょう」

「西崎くんのお母さん・・・鈴木先生と付き合っているんだって」

「車の中でキスしたらしいよ」

「やらしいよね」

母親として・・・女として・・・人間として規格外だった西崎の母親・美雪(中越典子)・・・。

鈴木という教師に捨てられて狂気を深めた美雪は・・・。

我が子を虐待するという行為に溺れる。

「愛してるって言って」

「愛してる」

「この傷はみんな・・・愛の証なのよ」

歪んだ母親の支配する歪んだ世界で歪んでいく西崎・・・。

おそらく火の不始末で眠ったままの母親が燃えあがるのを傍観するのだった。

母を残し火事場から逃げ出した西崎・・・。

(助けないとお母さんが死ぬと思いました・・・だけど・・・僕はお母さんを助けませんでした・・・僕がお母さんを殺しました)

奈央子の言葉が蘇る。

「この傷は・・・彼の気持ちを受け止めた印なの」

「主人は・・・本当の気持ちを私にだけ・・・見せてくれるの」

「あの人は・・・私よりも苦しんでいるの」

その時、希美が訪れる。

「奈央子は・・・俺に連れ出してほしいと思っているのかな」

「・・・」

「家から出たくないと言われないとも限らない」

「・・・」

「この世には・・・本当に正しいことなんて・・・」

「奈央子さんに断られたら・・・それはしょうがないよ・・・でも・・・何もしないでいたら・・・あの時・・・なんで助けなかったんだろうって・・・後悔するかもしれない」

「それは・・・嫌だ」

「じゃあ・・・やろうよ・・・私と成瀬くんがついているから」

希美にとって・・・慎司は一心同体の存在なのだった。

慎司はきっと普通に合体したいんだけどな。

野口夫妻は外食中である。

西崎は大家に新人文学賞の二次予選落ちを報告している。

奈央子はトイレに向かう。

大家は西崎をなぐさめる。

奈央子は店の外に出て公衆電話の箱の中。

大家と西崎は電話のベルに気がつく。

奈央子は受話器を握りしめる。

「もしもし」

「助けて・・・クリスマスイブに希美ちゃんがうちにくるの・・・主人と書斎で将棋をするの・・・花屋のフリをして・・・六時に家に来て・・・ラフルールマキコって花屋に注文したことにしておくから」

「もしもし」

「お願い・・・助けて・・・あなたにしか」

「奈央子」

奈央子がふりむけばそこには夫が立っている。

奈央子は西崎の電話番号のメモを排水口に投棄する。

怒りに蒼ざめた野口は・・・妻を乱暴にタクシーに押し込む。

凶悪な気配を運転手は感じる。

「シャルティエ・広田」では店主が・・・成瀬に伝言を伝える。

「24日の野口さんのワインリストにシャンパン1本追加・・・それからデザートも変更するかな」

「男性一名、女性三名様ですよね」

「いや・・・男性二名、女性二名だよ・・・」

「でも一人は安藤のぞみじゃ・・・」

「男でものぞみだよ」

「・・・」

「なんか・・・成り行きではサプライズで・・・プロポーズもあるかもってことだから」

「・・・」

「おい・・・どうした?」

「いや・・・なんか・・・俺・・・勘違いしていたのかもしれないなと」

やるべき時にやらないと・・・やれない運命なんだな。

誤解とか・・・そういう問題じゃなくて・・・。

悪夢の中でもがく希美を目覚めさせる王子様は・・・きっと誰でもよかったような気がする。

【2014年(現在)】希美はがん患者のメンタルケアのセミナーに参加している。

「がんと共に生きる」

「死という不安」

「家族や友人」

月並みな言葉が希美の心をすり抜けていく。

同病相憐れむことを望む見知らぬ人を拒絶するように去る希美。

西崎は大家に将棋を指南されている。

「希美ちゃん・・・また遊びに来るといいね」

「・・・」

「実家には挨拶に行ったの?」

「・・・」

「事件のことはごめんなさいって謝ってくりゃいいんだ・・・なんなら・・・私が一緒に」

「一人で行けるよ」

西崎の実家とは・・・養父母の家なのか・・・。

慎司は島でなにやら店の下見をしている。

高野は妻の置き手紙を見つける・・・。

茂さんへ

もっと早く伝えられたらどんなにかよかったかと思います

春には伝えようときめていたのに冬になってしまいました

十四年前に・・・さざなみに火をつけた人のことです・・・

その人が誰かを知っていて・・・今まで隠していました・・・

慎司はふと・・・希美に電話してみようと思う。

希美は着信音を聞きながら・・・夜の町で意識を失っていく。

希美の身体を包む死の影・・・。

慎司は希美から遠く離れて・・・。

なんで・・・そこにいるんだよ・・・慎司。

誰か、希美を幸せにしてくれる人はいませんかああああああっ。

余命一ヶ月の花嫁でいいじゃないか・・・。

まあ・・・それだとこんなに夢中で見ないけどね。

【2004年・12月24日】床に転がる火のついた蝋燭。空になった燭台を握るのは・・・奈央子だった。

ええええええええええええええええええっ。

恐ろしいほどの傑作である。

これほど再現性を高めても・・・素晴らしさを伝えきった気がしない。

なんてことだ。

これは・・・一部お茶の間はついてこれんかもしれない。

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2014年12月 5日 (金)

結婚してくれるって本当ですか。(綾瀬はるか)

シンデレラなので・・・王子様が靴を履かせてくれるまでは待つのだ。

シンデレラなので・・・魔法使いがカボチャの馬車を用意してくれるまで待つのだ。

シンデレラなので・・・継母に虐げられても・・・実母だった。

まあ・・・シンデレラ物語は結婚したら終わりである。

「婚姻」という言葉には女が二回も含まれている。

婚姻は女の世界なのである。

婚姻の婚の昏は日が落ちかかる黄昏の意味である。つまり婚とは女の終息である。

婚姻の姻の因とは人が布団に寝そべった形である。

だから婚姻とは一日の終わりに女が布団で股を広げて待っているという意味なのだ。

とにかく・・・漢帝国の残した文字の上では・・・。

実は・・・結婚にはその程度の意味しかない。

男女雇用機会均等法によって・・・出産という責務のある女性に社会的な義務を負わせすぎた社会は・・・本当はどこか歪である。

労働力を獲得するために女性に機会を与えることと出産という・・・労働力の再生産の問題の折り合いをどうつけるか・・・まだまだ根本的に課題は多いと考える。

昔の人は「長生きなんてするもんじゃない」とよく口に出したものだが・・・そういう言論を封じた時代。

幸福な老後を誰もが送ろうとすれば・・・どこかに皺寄せは生じる。

それが・・・危険ドラッグでうつろな笑いを残す若者に結晶していないことを祈るばかりである。

で、『きょうは会社休みます。・第8回』(日本テレビ20141203PM10~)原作・藤村真理、脚本・金子茂樹、演出・中島悟を見た。何故か・・・「プロポーズ大作戦」を再放送した関東ローカルのフジテレビ。ある意味・・・嫌がらせかもしれない。久しぶりに見ると・・・「好きだ」と一言言えない男女が・・・ウジウジウジウジしたあげく・・・まともな男の結婚式をぶちこわす話である。このひどい話をある程度、ロマンチックに演じきった山Pと長澤まさみはさすがだ・・・と言う他はない。一方、こちらは九歳差の年の差カップルの話。ある程度、ギリギリの話である。・・・だから逆に・・・ウジウジしたくてもできない脚本家が・・・他のカップルに浮気している気配が常にある。だが・・・まあ・・・すべてをさらけ出す主人公と・・・何を考えているのかわからないパートナーという展開は・・・そこそこミステリアスなのである。

人は・・・家庭の事情である程度、人間性を作られる。

いかにもやり手な母親の登場によって・・・田之倉悠斗(福士蒼汰)の一面が見えた今回・・・。これは・・・本当に・・・ついこの間まで高校生だった男の子が・・・母親に似ていて母親より優しい人を捜していたら・・・帝江物産横浜支社食品部デザート原料課勤務・青石花笑(綾瀬はるか)がヒットしてしまったという・・・それだけの話なのかもしれない。

ある意味・・・ホラーである。

まあ・・・女子は怪談が好きだからなっ。

花笑と同期で・・・ここまで口の軽い男として描かれてきた大城(田口淳之介)に目撃されてしまった・・・花笑とマモクラじゃなかった悠斗。

絶体絶命・・・どころか・・・花笑としては吹聴されて外堀を埋めてもらいたい話である。

悠斗は未成年ではないので・・・犯罪的であっても法にはふれないはずだ。

むしろ・・・犯罪的なのは・・・悠斗の方で花笑の貯金に手を出したり、生命保険を賭けるように薦めてきたら危険なのである。・・・おいっ。

しかし・・・「ばれたら・・・恥ずかしい」と交際がばれた小学生のように同僚からヒャッホーってされることを危惧する花笑に対し・・・大城は沈黙を守るのだった。

「なぜ・・・秘密にしてくれるの・・・」

「だって・・・バレたら恥ずかしくて・・・会社辞めるとか言い出しそうだからさ・・・そんなことになったら責任取れないもの・・・俺はこれでもお前と同期なんだから・・・」

大城は大人だった・・・。

一方・・・上司の立花(吹越満)は花笑に一般職から総合職への・・・ジョブ・チェンジを打診してくる。

企業にもよるが・・・一般職は・・・女子事務員コース、総合職は男子営業員コースと考えても良いだろう。

つまり・・・「結婚しないなら・・・男のように働け」という話である。

もちろん・・・そのこと自体は悪い話ではない。

立花は・・・花笑の力量を高く評価しているということになる。

しかし・・・それはあくまで企業が求める労働力の話である。

結婚して出産し・・・女としての幸せを獲得することとは異質なのである。

もちろん・・・男のような女として妻のような夫を養う経済力を持ち、出産もするというライフスタイルだって選択可能だが・・・そういうことができるのは・・・かなりの能力が要求されるスーパーウーマンではないかという心配もあるし・・・第一、スイーツというよりはハーレクインロマンスの世界になってしまうま・・・おいっ。

すみません・・・ちょっと言動に危険な匂いを感じたものですから。

とにかく・・・花笑と悠斗の交際は職場では明るみに出ないのだった。

すると・・・悠斗の将来設計が気になる花笑である。

なにしろ・・・悠斗の口からは・・・「結婚」という言葉が出てこないのである。

そして・・・学生だから結婚は考えていないが・・・花笑とのことは真剣だと言っておきながら・・・就職の話を蹴って大学院に進学するというのである。

ひよっとしたら・・・真剣にしているのは恋愛で・・・結婚のことなんか・・・考えてもいないのでは・・・という危惧に襲われる花笑・・・。

親友の一華(平岩紙)の忌憚のない意見・・・。

「男は・・・なるべく結婚のことは考えないようにしているのが基本だからね」

「げっ」

そして頼りの・・・ブッシー(田口浩正)は「将来のこと・・・どう考えているの」と悠斗にさりげなく聞いてくれるが・・・悠斗の答えは・・・。

「大学院を卒業したら・・・渡米して資格をとって・・・三十までには企業したい・・・」

ある意味・・・フリーホールである。

悠斗が三十歳になったら・・・花笑は限りなく四十歳に近い三十九歳になってしまう。

もう・・・結婚適齢期どころか・・・出産適齢期を過ぎてしまうのだ。

ただちに・・・出産しても・・・子供が十歳の時に母親が五十歳なのである。人生終わっているではないか・・・それ以上は言うなよ・・・絶対にだ。

とにかく・・・それは・・・理屈抜きで困ると思う花笑である。

成熟していない女性の出産は危険だという説があるが・・・高年齢出産だってリスクは伴う。

若すぎるのも年寄りすぎるのも・・・過ぎたるは及ばざるが如しである。

しかし・・・まあ・・・「余命一ヶ月の花嫁」とか「出産と同時に母親死亡」とか・・・何事もケース・バイ・ケースですからあ・・・。

フォローのつもりかっ。

米国留学から帰国した悠斗は・・・世界一周の旅に出て・・・戻ってくると陶芸家に弟子入り。

気がつくと・・・花笑は特別養護老人ホームのベッドの上。

孤独死目前で・・・陶芸家になった悠斗老人が・・・「あの世で幸せになろう」とプロポーズ。

妄想の中で困り果てる花笑だった。

何度も言ってるが「孤独」とは幼くして親がなく、年老いて子がない状態の合わせ文字である。

存命している花笑の両親は・・・寿命があるからいつまでも面倒見られないとお茶をすするのだった。

行き詰った花笑は・・・困った時の相談役である・・・元CEOに救いを求めるが・・・朝尾(玉木宏)は起業に夢中で・・・花笑につれないのであった。

これまでの自分の態度を棚に上げて御立腹の花笑だった。

そんな折・・・「今度、母親が上京するから・・・一度会ってくれないか」と言い出す悠斗。

突然・・・海に道を開いたモーゼのような気分になる花笑である。

そして・・・やってきた料理研究家の母親(鈴木杏樹)である。

花の里の方からやってきたのか・・・。

じゃあ・・・前科者か・・・。

「相棒」の話はそこまでだ。

初対面の花笑に終始にこやかに応ずる悠斗の母・・・。

しかし・・・悠斗の進学問題から・・・話がこじれ・・・結婚問題に話が及ぶと顔色を変えるのだった。

まあ・・・そうですねえ・・・。

「姉さん女房」というのは一つ年上から二、三歳までというカテゴリーですから・・・息子の結婚対象としては九歳年上の女は問題外というか・・・おいおいっ。

口がすべり・・・「なんだったら・・・悠斗さんは私が養います」と宣言する花笑だったが・・・。

周囲の反応から失言だったことに気がつく花笑である。

とにかく・・・結婚で頭が一杯だったのは花笑だけだったということです。

しかし・・・優秀な頭脳を持っている悠斗は・・・たちまち・・・花笑の心理を読み解くのだった。

「ごめんね・・・花笑さん・・・そんなに・・・結婚のことを考えていたのに・・・まったく気がつかなくて・・・」

ある意味・・・慰めになってないぞ。

今回は・・・母親と同時に大学の先輩・戸崎(香椎由宇)も登場。

何やら・・・鉄仮面は怪しげな眼で悠斗を見つめるのである。

どちらかといえば・・・悠斗の姉さん女房には・・・戸崎の方が年相応なのである。

これはちょっかい出してくるかもわからんね。

まあ・・・花笑は主人公だから負けないと思うけどね。

そして・・・借金一億円の男・・・朝尾はふと・・・花笑の面影を追ったりするのだった。

まあ・・・朝尾花笑になった方がいいじゃないかと・・・良識ある誰もが思うわけだが・・・。

そこはドラマである。

朝尾をあきらめた(二度目)女・瞳(仲里依紗)とあきらめるのをあきらめた男・加々見(千葉雄大)がウジウジする夜・・・。

花笑を呼び出した悠斗はつないだ手をポケットにいれる。

私はこの町で一番幸せな女だ・・・結婚できなくても。

私は日本で一番幸せな女だ・・・結婚できなくても。

私はアジアで一番幸せな女だ・・・結婚できなくても。

私は世界で一番幸せな女だ・・・結婚できなくても。

呪文を唱えないと泣きそうになる花笑だった。

自分でナレーションしているので間違いないのだ。

夜の街角で花笑にキスをする悠斗。

そして・・・。

「結婚しよ・・・」と言うのだった。

「結婚して下さい」ではないところが・・・悠斗らしいのだ。

なにしろ・・・三年前まで・・・高校生だった男ですから・・・。

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2014年12月 4日 (木)

永遠の愛の終焉(竹野内豊)

針に糸を通す作業はミラクルを感じさせる。

普通の人はミラクルというものを度々は実体験しないものだろう。

しかし・・・スターは常にミラクルを求められる。

何気なくミラクルを起こす・・・それが「芸」というものだ。

サーカスを見よ・・・なのである。

グランドプリンスホテル新高輪「飛天」で「My Dear Fellow」を歌うももいろクローバーZ・・・間奏のパフォーマンスでおもちゃのバットを持ったしおりんこと・・・玉井詩織はリーダーの投げたゴールデンボールを・・・客席の田中将大(ヤンキース)・・・この曲が登場曲の大投手・・・目がけて打ち込むのである。それを田中投手が座ったままキャッチするのだ。

歌って踊っているアイドルの秘めたミラクル・パワー・・・すごいよ・・・しおりん・・・すごいよ・・・なのだが。

きっと・・・選TAXI使って何度かトライしてるんだよね・・・きっと。

本当は何回目で成功したの?

で、『素敵な選TAXI・第8回』(フジテレビ20141202PM10~)脚本・バカリズム、演出・今井和久を見た。三十年前には・・・書斎の窓から富士山が見えたのだが・・・今では高層ビルに隠れて見えなくなってしまった。「富士山大噴火」は秒読み段階に入っているはずなのでたまに富士山の方向を見てぼんやりすることがある。その時・・・高層ビルの背後で火柱がたったり・・・噴煙が立ち上るのは・・・もうすぐのはずである。もちろん・・・災害に対してこんなことを感じるのは不謹慎領域だが・・・できればその瞬間は見逃したくないものだ。だってミラクルな感じがするからである。最近・・・ドラマに富士山が登場することが多いような気がするのは・・・気のせいじゃないですよね。

時空間を言葉で表現することは難しい。

時空間には認識の階層があるからだ。まず、時空間の性質が人間にはよくわかっていないと言う前提がある。しかし、人間の中には「時間は時間に決まっている」という無思慮な感覚も存在する。それとは別に時間の本質について考えられた仮説がいくつも存在する。時空間という時と世界が分離できないという考え方もあるわけである。

ここでは金太郎飴的時間仮説にのっとり説明して行く。

あなたは呼吸している。息を吐いた時間は過去に属し、これから息を吸う時間は未来に属する。そこにあなたは時間の経過を感じるだろう。

周囲を見回すと窓がある。息を吐いた時間にも息を吸う時間にも窓は身動きせずにそこにあるような気がする。もちろん・・・その窓は百年前にはなかったかもしれないし、百年後にはないかもしれない。窓枠という製品は今もゆっくりと劣化が進行している。しかし、せわしない人間に比べると窓の時間は止まっているように見える。

窓のようなものを背景と考える。

あなたが見つめている窓は時間を金太郎飴にたとえれば金太郎の絵柄のようなものだ。

神が金太郎飴を舐める度に・・・金太郎飴は溶け去っていくが金太郎の絵はやはりそこにある。

人はその金太郎飴の表面で生きているのである。

次の瞬間も金太郎飴なので人は過去が過ぎ去ったら消えていくことは知らない。

やがて神が最後の一口を舐め終わると世界が消失することも・・・。

しかし、神は金太郎飴を取り出した時に・・・最初から最後までお見通しなのである。

金太郎飴や巻き寿司、そしてロールケーキ・・・それらはすべて時空間の象徴なのである。

そして・・・悠然とそびえたつ富士山もまた・・・。

【神の記憶】

いつか・・・どこかで・・・枝分(竹野内豊)は老いた男性客・泰三氏(津嘉山正種)を乗せる。泰三氏は・・・時間を遡上する前に寄り道をしたいと言い出す。

絶景の富士見の穴場で枝分と泰三氏はひとときを過ごす。たまたま枝分はいただきものの稲荷寿司を車に積んでいて・・・泰三氏に薦める。

「私の妻も・・・稲荷寿司を作るのが上手いのです」

「そうですか」

「おいしかったなあ・・・妻の稲荷寿司・・・」

「お亡くなりになったのですか・・・」

「ええ・・・まあ・・・」

「そうですか・・・」

「まあ・・・八十ともなれば高倉健も菅原文太も旅立つお年頃ですからな・・・心残りといえば・・・妻に愛の言葉をかけてやらなかったことです」

「はあ・・・」

「なかなか・・・私らの世代は・・・愛してるなんて・・・口に出せないものなんですな」

「まあ・・・言う人は言いますけど・・・若者でも言えない人は言えません」

「そうかもしれませんな」

「ええ・・・言うべきときには言った方が・・・すっきりしますよ」

「はい」

【排他的時空間】

「cafe choice」のトイレで枝分はトイレットペーパーを交換していた。トイレットペーパーもまた時空間の象徴である。模様入りならいつも同じ模様。色つきならいつも同じ色。白ならいつも白である。しかし、寿命が来たら残るのは芯のみ。新しいロールと交換しなければならない。

「また俺か・・・」

共有して使うものなのに・・・いつも自分がトイレットペーパーの最後を看取る気分になる枝分だった。

まあ・・・一人暮らしのものは必ず看取るわけである。

二人暮らしなら半分に・・・三人暮らしなら1/3になるのである。

それでも・・・めぐりあわせで自分ばかりが交換していると感じる人は被害妄想の兆候があるので注意が必要です。

枝分はそれでも・・・つい口に出す。

「トイレットペーパー、交換しておきましたよ」

常連客なので・・・大便したことを声を大にして言う枝分だった。

「あ・・・すみません」

マスターの迫田(バカリズム)は一応、御礼だか謝罪だかの言葉を口にする。

枝分が大便したばかりのトイレに・・・そういうことをあまり気にしないタイプの常連客の一人、標道雄(升毅)が入室する。

ウエイトレスの宇佐見夏希(南沢奈央)がポーカーフェイスで場の空気を変える事務的な言葉を口にする。

「そろそろ・・・トイレットペーパーを買ってきましょうか。砂糖も標さんがコーヒー一杯に五匙くらい入れるのでもう・・・亡くなりそうですし」

「だね」

もう一人のウエイトレスの関カンナ(清野菜名)はおつかいにはいかない・・・きっとそれはパシリの仕事だと思っているからだろう。

「枝分さん・・・今週の週刊ストロング読みましたか・・・」

「あ・・・まだ」

「じゃ・・・買ってきますね」

枝分と夏希は「週刊ストロング」連載のコミック「おひとよしトレジャー」の愛読者なのだ。

一話完結でありながら・・・じわじわと広がる人間関係の紙魚。

ドラマの大切な成分である。

常に謎を秘めた普通の女の子・・・それは不思議な存在と言える・・・夏希は淡々とコンビニに向かう。

トイレットペーパーとグラニュー糖は無事に入手するが・・・「週刊ストロング」は一冊しかなく・・・しかも立ち読みされていた。

立ち読みしているのは・・・「おひとよしトレジャー」の担当編集者の友人で・・・読者モデルの佐山佑香(臼田あさ美)である。

枝分と佑香は顔見知りであるが・・・そのことを夏希は知らない。

「おひとよしレンジャー」を読んだことのなかった佑香は・・・どんなものかと読んでいるわけである。

神であるお茶の間をくすぐる人間関係の綺である。

微妙な沸点を持つ夏希は・・・言いたいことを堪えて別の店に向かう・・・そこで上衣のニットを路上駐車の自転車にひっかけて・・・かなりの長さ・・・解いてしまうのだった。

「ああああああああ」

ものすごく・・・しみじみと・・・かわいいよ、夏希、かわいいよ・・・なのだった。

読モの佑香の目的は・・・自分が表紙になっているファッション誌の購入だった。

入院中の祖父の見舞いに行く途中で・・・祖父に見せようと買ったのである。

しかし・・・興味本位で読み始めた「おひとよしトレジャー」にうっかり熱中してしまったのである。

そして・・・病院にたどり着いた佑香は・・・祖母の六実(左時枝)に・・・祖父が急死したことを知らされる。

【排他的時空間中の排他的時空間】

ドラマ中ドラマ「犯罪刑事」の世界では被害者刑事を犯罪刑事が射殺。

「やったのは俺じゃない」という冤罪刑事を共犯刑事が射殺。

共犯刑事を犯罪刑事が射殺。

「人間なんてみんな犯罪者だ」と決める。

【排他的時空間】

「cafe choice」に戻って来た夏希は・・・枝分に・・・ニットが解けた顛末を語る。考えようによっては・・・二人の仲はなんとなく進行しているような気がするが・・・それは一部お茶の間の願望なのかもしれなかった。

その時・・・枝分の携帯電話が鳴り・・・選TAXI出動である。

枝分を呼び出したのは・・・佑香だった。

編集者・柴山美空(栗山千明)の件で・・・枝分を知った佑香である。

「おじいちゃんを・・・生き返らせることはできますか・・・」

「寿命の場合は・・・ちょっと・・・無理・・・でも生きている時間まで戻って・・・生きているおじいさんに会うことはできるよ・・・早めに病院に着けば・・・」

「じゃ・・・それでいいです」

今回から・・・UVカットもできるタイムスリップ専用サンバイザーの使用が義務付けられたらしい。

このドラマでの時空間修正は選TAXIが過去へ移動するというより、選TAXI以外の全世界が逆戻りしているのかもしれない。

下水道は逆流し、水に溶けたトイレットペーパーは拭われた汚物を払い、ホルダーに戻っていく。便を体内に戻した人は下着を脱ぐ前にもどり後進ででトイレを出ていく。全世界でトイレットペーパーはかなりの速度で未使用の状態に逆転していくのである。

「二万九千円になります」

「高い」

思わず本音を口にする佑香・・・。

そういう批判的な言動に傷つきやすい・・・枝分である。

「こういうことは・・・言いたくないですけど・・・おじいちゃんの死に目に会える料金ですよ」

「・・・でしたね」

「ある意味・・・安いくらいなんですよ」

枝分の心の傷は深いのである。

「あのカードは使えます」

「はい」

カード支払いに対応済みなことを明らかに出来て少し心が和らぐ枝分だった。

ある意味、面倒くさい男なのだった。

【佑香の選択により修正される排他的時空間】

佑香は立ち読みをやめて早めに病院に到着する。

夏希は「週刊ストロング」を手に入れた!

「おじいちゃん・・・」

「佑香・・・毎日、会いにきてくれてありがとう・・・」

「うん・・・ほら・・・これ・・・私、表紙になっちゃった」

「すごいなあ・・・えらいなあ・・・佑香は」

「えへへ」

病院の屋上に洗濯物を取り込みに行こうとする祖母を止める佑香。

「私がいってくるよ」

佑香は祖父と祖母に最後のプレゼントをするつもりだった。

五十年連れ添った夫婦のお別れのひととき・・・を。

「佑香はいい子だなあ・・・」

「ええ・・・」

「昔はお稲荷さんをぽろぼろこぼしていたのに・・・」

「ふふふ」

「なんだか・・・お前の作ったお稲荷さんが食べたくなってきたよ」

「でも・・・今から作りだしたら夕飯の時間になってしまいますよ・・・」

「そうか・・・」

「明日、作って持って来ましょうね・・・」

「うん」

そして・・・祖父は息絶えた。

涙にくれる祖母をなぐさめる佑香。

「こんなことなら・・・今日・・・おいなりさんを作ってあげたらよかった・・・」

「おいなりさん・・・」

「おじいちゃんがね・・・最後に食べたいって・・・」

「そうなんだ・・・じゃ・・・おじいちゃんにおいなりさんを食べさせてあげよう」

「え」

選TAXIに祖母を連れ込む佑香。

「できますよね・・・」

「そうなると・・・家に戻る必要がありますねえ」

「はい・・・」

「今日、病院に来たのは何時間前ですか」

「一時間くらい前です」

「おいなりさんを作るのにどれくらかかりますか・・・」

「急げば三十分くらいで・・・」

「すると・・・かれこれ・・・二時間前か・・・」

「私はその頃・・・コンビニ前です」

「じゃ・・・まず・・・祐子さんを二時間前のコンビニ前で下して・・・それから・・・祐子さんのおばあちゃんを家にお送りします」

再び逆流する全世界のトイレットペーパー。

コンビニ前で等身大パネルを除ける祐子。

「おばあちゃん・・・がんばって・・・」

選TAXIは祐子の祖母を乗せて再起動する。

再び逆流する全世界のトイレットペーパー。後ろ向きでトイレを出る人々の群れ。

「うゃちれもうゃちれも」と叫ぶギリギリの子供たち・・・。

【佑香の祖母の選択により修正される排他的時空間】

家を出る三十分前に帰宅する祐子の祖母・・・。

稲荷寿司作りにとりかかるが・・・砂糖を切らしているのだった。

「どうしましょう・・・お砂糖が・・・」

「買ってきます」

コンビニでは夏希が買い物を終えていた。

「夏希ちゃん・・・砂糖がどうしても必要なんだ」

「え・・・これ・・・最後の一つなんですけど」

「ものすごく急ぐんだ・・・」

「・・・わかりました」

「よかった・・・」

「でも・・・これ・・・グラニュー糖ですよ」

「いいんだ・・・名人は砂糖の種類を選ばない」

夏希は別の店に向かう・・・そこで上衣のニットを路上駐車の自転車にひっかけて・・・かなりの長さ・・・解いてしまうのだった。

「ああああああああ」

二度目でも・・・かわいいよ、夏希、かわいいよ・・・なのだった。

「間に合いましたね・・・」

「はりきって・・・作りすぎてしまいました」

祐子はすでに病院に着いていた。

「遅かったじゃないか」と祐子の祖父。

「ちょっと・・・おいなりさんを作ってたの」

「へえ・・・ちょうど・・・おいなりさんが食べたいなあ・・・と思ってた」

「さすがは・・・夫婦歴五十年だねえ・・・」

そう言いながら祐子は祖母と微笑み合う。

三人は稲荷寿司を食べた。

「うまかったな・・・なんだか・・・眠くなってきたよ・・・」

「そう・・・」

すでに涙ぐむ祖母と祐子。

そして・・・祖父は息絶えた。

祖母と祐子は料金の清算にやってくる。

「おじいさん・・・喜んでくれましたか」

「ええ・・・これ・・・残り物ですけどよかったら・・・」

「うわあ・・・うれしいなあ・・・」

枝分は稲荷寿司を手に入れた!

祖母と祐子が病院に戻ると・・・新しい客が来た。

老いた男。

神の記憶が・・・枝分に既視を感じさせる。

「どちらに・・・」

「三十分くらい前に」

男は佑香の置き忘れたパンフレットを持っていた。

「その前に・・・寄り道してもらえますか」

絶景の富士見の穴場で枝分と男はひとときを過ごす。たまたま枝分はいただきものの稲荷寿司を車に積んでいて・・・男に薦める。

「私の妻も・・・稲荷寿司を作るのが上手いのです」

「そうですか」

「おいしかったなあ・・・妻の稲荷寿司・・・」

「・・・」

「ここは・・・妻との思い出の場所なんですよ」

「なるほど・・・」

病院に戻ると・・・男は消えていた。

「・・・しまった・・・先払いにしておけば・・・よかった・・・」

【泰三氏の選択により修正される排他的時空間】

「五十年ってあっという間ですね」

「そうだな・・・」

「・・・」

「なあ・・・」

「はい?」

「・・・愛しているよ」

「知ってますよ」

「そうか」

「私もですよ・・・」

「知ってるよ・・・」

「あなた・・・」

「・・・」

そして・・・佑香の祖父・・・泰三氏は息絶えた。

病院の外には・・・結婚できない外科医の篠崎美佐子(吉田羊)が現れた!

「どうしたんですか」

「いえ・・・乗せた客が・・・幽霊みたいに消えちゃって・・・」

「枝分さん・・・ちょっと検査してみますか・・・いい精神科医・・・紹介しますよ」

「・・・」

「cafe choice」で枝分は・・・消えた乗客と現れた女医の話をする。

怪談だかなんだか分からない話で煙に巻かれた夏希はグラニュー糖を強奪した枝分に向けるべき怒りを・・・砂糖使用料の多過ぎる標に向けるのだった。

枝分は・・・ホッとするのだった。

そして幽霊のお客は先払いにしてもらおうと心に決めるのである。

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Sentx008ごっこガーデン。富士山の見える冒険世界セット。まこやんごとなきお方を見学に行ったのでごっこのスケジュールがおしてマス!・・・ここはスライムリンごっことエダブンごっこの合わせ技でクリアしましゅ~。共に白髪が生えるまで仲良きことは美しき哉なのデス。お稲荷さんの代わりにまこかまぱんでついでに CM撮影もクリア、時は金なり、タイムスリップの沙汰も料金次第でしゅ~。じいや~、おやつにギンナンやいて~くう今回のエピソードはとっても胸キュンだった・・・枝分のウザさもキュートだし、ご臨終の度に泣くポイントが変わっていく見事な展開・・・素敵な選択肢Zにやられたわ・・・シャブリおじいちゃんと孫から老夫婦の愛の賛歌に・・・泣かせるのでありました~。どんどんレギュラー化するゲストたち・・・なんとなくそそるのでありました~

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2014年12月 3日 (水)

元亀ですかーっ。元亀元亀元亀の包囲網(小栗旬)

下剋上とは・・・下のものが上のものに打ち勝つことである。

つまり・・・実力主義である。

これに応ずるのが年功序列主義なのか血統主義なのか・・・適当な言葉がないような気がする。

それは・・・現代が殺人を否定的に考える時代であることが原因だろう。

戦国時代の下剋上は殺し合いが前提なのである。

殺して殺して殺しまくったあげくに殺される。

信長は・・・まさに下剋上の時代を生きた英雄なんだなあ。

だから・・・基本的によい子は真似をしてはいけないのである。

そういう意味で・・・このスイーツ戦国絵巻を楽しいと感じる人は幸いなんだと思う。

日本の景気がいいのかどうか・・・難しい問題である。

しかし・・・少なくとも日本の景気がよくなることを韓国や中国は喜ばない。

下剋上の世が終焉しているのかどうか・・・時々疑わしいことはあります。

で、『信長協奏曲・第8回』(フジテレビ20141201PM9~)原作・石井あゆみ、脚本・宇山佳祐、岡田道尚、演出・品田俊介を見た。お市(水原希子)が茶々を出産したことによって第5回から少なくとも一年ぐらいたっていることが分かる超時空空間である。永禄十年(1567年)に嫁いだとすれば天正元年(1573年)の小谷城落城まで・・・お市の浅井長政(高橋一生)との結婚期間はおよそ六年。二年に一人のペースで産まないと茶々・初・江の三点セットが完成しないので・・・励むしかないわけである。この三人の姫がたどる運命こそが・・・歴史のドラマチックさ恐るべし・・・と感じさせるわけですから・・・。

で・・・超時空元亀元年(1570年)・・・六月・・・姉川の合戦で浅井・朝倉連合軍を撃破した織田信長は・・・再び天下に名を知らしめる。

「強いものと手を組む」のが生き残りの鉄則の一つである。

そのために・・・松永弾正久秀(古田新太)はサブロー(小栗旬)の傘下に入ることを申し出る。

久秀は五分の杯(軍事同盟)が欲しいわけだが・・・信長の動員兵力はこの時点で尾張・美濃・伊勢・三河・遠江・南近江・山城・摂津におよび五万人を遥かに超えている。

久秀は大和半国で三千人ほどの動員力である。

子分になるしかないのだった。

ちなみに・・・エロ本大好きな徳川家康(濱田岳)は一応・・・永禄十年に嫡男の信康と・・・信長の娘・五徳が結婚しているので・・・信長とは舅同志の関係にある。

しかし・・・力関係から言えば弟分ということになる。

家康が姉川の合戦で合力したのは・・・信長あっての家康だからなのである。

手抜きをしたら滅ぼされる・・・ギスギスしてなきゃ戦国時代じゃないのだ。

だから・・・久秀もとりあえず下手に出て・・・サブローの顔色を窺うしかないのだった。

楽市・楽座は・・・信長の基本政略であるが・・・要するに既得権益を許さない下剋上の精神の発露である。家老格の家である織田家は・・・執事として経営力が磨かれており、信長自身が有能な商人なのである。拡大再生産の基本に乗っ取り粛々と国力を向上させる・・・そのために経済基盤を整備するのは当然の施策だった。

たとえば・・・家康は三河から遠江を侵攻中である。遠江は戦場となるために・・・当然、生産力は下がる。しかし、三河国が統治されていれば・・・戦費が捻出できる。

信長は尾張・美濃・伊勢三国の統治によって・・・近江・山城・摂津での戦が可能となるのである。

「ノブナガノミクスということか・・・」

「は?」

「いや・・・なんでもない」

超時空ではサブローの居城がどこにあるかも定かではないが・・・北近江の浅井氏を湖北に封じ込め、南近江の六角を伊賀に追いやった信長は・・・京への回廊を確保し・・・摂津攻略にとりかかるために・・・美濃国岐阜城で「動員命令」を下す。

八月・・・三万の兵を引き連れ・・・信長は近江・山城経由で・・・淀川を下り摂津国に布陣するのだった。

目指す敵は石山の本願寺顕如である。

しかし・・・一向一揆の黒幕は信長を窮地に追い込むのだった。

Nobuoo7顕如は門徒衆に・・・「本願寺に味方するものは極楽往生、信長に味方するものは無限地獄」と告げて・・・決起を図る。乱世に絶望して後生を願う門徒衆は命知らずの戦闘力を発揮する。前衛となるのは京を追われた三好三人衆を中心とした無頼の徒であった。信長の傀儡であることに甘んじられず陰謀をめぐらす将軍・足利義昭(堀部圭亮)は信長に伴われ摂津へと出陣する。浅井・朝倉を裏で操る形ばかりの将軍に塩漬けした兜首一千を送り届け恫喝した信長だった。しかし・・・陰謀好きの将軍は懲りもせず・・・今度は本願寺と気脈を通じている。将軍の出馬に細川藤孝(市川知宏)、和田惟政ら幕臣、松永久秀と同様に寝返った三好政勝など・・・本願寺方の前衛・野田城に迫る信長軍は五万に膨れ上がっていた。しかし・・・本願寺には雑賀孫一率いる三千人の鉄砲衆が潜んでいたのである。織田軍の佐々内蔵助成政の鉄砲衆と根来鉄砲衆は九月中旬、伏兵の雑賀党に急襲され・・・大損害を出すのだった。サブローは直後にあふれ出す門徒衆の姿に声を上げる。

「うわあ・・・ホームレスの集団がこっちへくるよ」

「乞食同然の姿なれど・・・あれが恐るべき敵でございます」

「だって・・・ろくに武器ももってないじゃん」

「鋤や鍬で襲いかかってきますが・・・あやつらは・・・死をおそれません」

「なんだか・・・ゾンビみたい・・・」

殺されて極楽往生するためにやってくる門徒衆を殺しまくる信長軍団。

しかし・・・ゾンビは後から後から現れる。

その頃・・・近江国の各地では将軍と本願寺の共作による同時多発テロが進行していた。

南近江には六角勢が来襲し、浅井に供えていた横山城の羽柴秀吉(山田孝之)に襲いかかる。佐保山城に布陣していた丹羽長秀(阪田マサノブ)が合流して辛うじて撃退に成功。

尾張・伊勢国境の長島城では下間頼旦率いる一揆勢が尾張に乱入し、信長の弟(信秀の七男)織田信興が討ち死に・・・。

北近江では浅井長政と朝倉義景(小市慢太郎)が合流し・・・京を目指して南下を開始する。

琵琶湖周辺の忍びから連絡を受けた京に近接する近江国宇佐山城の森可成(森下能幸)は迎撃のために出陣を決意する。

その数・・・およそ・・・一千。

しかし・・・南下する浅井・朝倉連合軍は万を超す大軍だった・・・。

「殿・・・篭城なさるがよかろうず」

侍大将の各務元正が意見を述べる。

「素通りされて・・・京に乱入されてはことだがや・・・」

「京の都からは信長様のご舎弟・信治様が二千を率いて討って出た由・・・」

老臣の林新右衛門通安が告げる。

新右衛門は可成の正室・えいの父親である。

えいは長可、蘭丸らを生んでいる可成の愛妻だった。

「舅殿・・・留守をお頼み申す」

「御意」

一門衆の信治(信秀の五男)が出たのに・・・家臣が出ないわけにはいかないのである。

信治勢と合流するためにあわただしく城を出た森三左衛門左可成だった。

目指すは京に通ずる街道の要所・坂本である。

周囲の樹木は色づきはじめている。

ふと景色に心を奪われる三左・・・その顔には死相が浮かんでいた。

すでに斥候からは信治が街道筋の林間に布陣したと急報が入っている。

夕暮れが迫る中、前方で銃声が木魂する。

「遅れたか」

信治の鉄砲隊は伏せた状態で浅井の前衛に痛撃を与えたが押し寄せる多勢に押し包まれる。乱戦の中で孤立した武者はたちまち包囲され致命傷を負い首をかかれる。

その光景が視界に入ると攻めの三左の血は沸騰した。

「衝き入れえ」

三左は叫ぶと騎馬を猛進させる。

騎馬隊の突入に浅井勢に動揺が走る。

三左の槍は両鎌の十文字槍である。突くと同時にひねりあげ敵の首を切り落とす兜切りの熟練者である三左は馬を突進させ、左右の敵の首を宙に舞わせながら、風のように戦塵を過ぎてゆく。

返り血を浴びて赤く染まった織田信治は疾駆する三左の姿を見る。

そこへ朝倉景鏡の槍衆が群がる。

鮮やかな信治の軍装から大将首と悟った雑兵たちはそれぞれの武器を繰り出し、信治を追い詰める。郎党を討たれ、背後を奪われた信治は剛腕で太刀を振るい、押し寄せる敵を打ち払うが、ついに力尽き、動きを止める。その呼吸を読んだ古強者は手柄を求めて獲物を繰り出す。

腿を槍で突かれた信治はもんどりうって倒れ伏す。

そこへ足軽たちがのしかかり、馬乗りになった力士が信治の首に首切り包丁を押し当てると体重をかけて一気に切断する。

信治の落命の気配を背後に感じつつ、三左の騎馬隊は街道の彼方に見える浅井長政の旗印を目がけて阿修羅の如く突き進む。

浅井の親衛隊は姉川で多くの勇将を失い、手薄である。

三左の勢いに気押されて左右に退いて道が開く。

みるみる・・・突出した浅井長政と三左の距離がつまって行く。

その時、西側から本願寺勢が現れ、僧兵の大筒が火を噴いた。

集中射撃を受け、馬上から三左の姿が血しぶきとともに消える。

三左の五体は砕け散っていた。

摂津で攻城を続けるサブローの元へ浅井・朝倉勢の南下が伝えられる。

「もりりん・・・」

「信長様・・・浅井・朝倉に京に入られては挟撃の畏れがありますぞ」

松永弾正が具申する。

「殿・・・ここは引き返すのが得策ですぞ」

明智光秀が囁く。

「よし・・・京都に引き返そう・・・」

サブローの決断に伝令が動き出す。

明智光秀が先発し、淀川を遡上する。

柴田勝家、前田利家(藤ヶ谷太輔)、佐々成政(阿部進之介)らが信長を護衛しつつ陣払いの守備を固める。

三万の信長勢が接近すると・・・宇佐山城を包囲していた浅井朝倉勢は僧兵とともに比叡山に撤退する。

「あやつら・・・叡山に籠りおったかや・・・」

京周辺に放火する浅井方の野武士を追い散らしながら明智光秀は織田軍が苦境に陥ったことを知る。

殺傷禁断の地に篭城されてはうかつに攻められないからである。

京に戻った織田軍は比叡山を包囲するが・・・動きを封じられてしまったのだ。

摂津、近江では一揆勢が力を盛り返していた。

京で弟や森らの死を知ったサブローは茫然とするのだった。

尾張・美濃との通路は遮断され・・・織田信長はまたしても袋の鼠になろうとしていた。

「将軍を使って和議を結ぶ他ありませぬ」と光秀(小栗旬)・・・。

「やってくれる?」

京の明智屋敷のサブローの元へ続々、届けられる敵の首級・・・。

山となって積み上げる首は死臭を漂わせていた。

サブローは立体加工のマスクの下で鼻をひくつかせた。

森家の相続願いのため・・・宇佐山城を守り切った各務元正と林通安に伴われ森勝蔵(込江海翔)が上洛した。

「このたびはご愁傷さまでした・・・」

サブローは生前の森可成を思い出し目頭を熱くする。

サブローは頭を下げた。

勝三は信長と父の名にちなみ長可と命名される。

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2014年12月 2日 (火)

性同一性障害な子ほど可愛い!(錦戸亮)

どんな親だよっ・・・ていうか、いろいろと問題あるだろう・・・このタイトル。

ま・・・今さら、そんなこと言ってもな。

性同一性障害については「ラスト・フレンズ」など様々なドラマでとりあげられてきたが・・・最も真摯なものとしては上戸彩が性同一性障害者を演じた「3年B組金八先生・第六シリーズ」が想起される。ポイントは心因性のものではないということだ。肉体的に心が女なのである。ここが最大の理解が難しいところである。

単純に言えば「性別について心と体が不一致な疾患」ということになる。

病気である以上、治癒が必要となるが・・・ここで問題になるのが心を体に合わせるか、体を心に合わせるかという問題である。

結論から言って・・・心を体に合わせるのは「自由意志」の観点から不合理なものとなる。

実際に本人が望まない傾向も強く、それ以上に治療が困難なのである。

結果として・・・体を心に合わせる治療が主流である。

もちろん完璧な性転換技術が確立されていないために一種の緩和療法である。

基本的には心の性別に合わせて肉体を改造することになる。

当然、そこには様々な問題が発生するが・・・医学的にはこれが一つの流れなのである。

性同一性障害には・・・同性愛の問題や、性的倒錯の問題など境界を接する領域があり・・・共通認識の妨げになっていると言える。

また・・・異性らしさの強調は男女差別の問題も孕む。

異性装趣味や同性愛嗜好なとどは一線を画する必要があるが・・・全く無関係とは言えないのである。

身体は男だが・・・女として男を愛したい・・・「ロッキー・ホラー・ショー」の「彼/彼女」のせつない願いは永遠の主題なのである。

なぜなら・・・すべては運命の悪戯なのだから。

で、『ごめんね青春!・第8回』(TBSテレビ20141130PM9~)脚本・宮藤官九郎、演出・金子文紀を見た。性別・女の方にとっては些細なことかもしれないが・・・女子生徒会長・中井貴子(黒島結菜)の転校は大問題なのである。中井のいない駒形大学付属聖駿高校なんてもうどうでもいいや・・・みたいな気分さえある。だから・・・転校一週間で・・・女子たちが上京し・・・中井の近況報告をしてくれたことに涙を禁じえない。逢いたかったよおおおおおっなのだな。そもそも・・・2014年の秋ドラマは・・・夏ドラマ「アオイホノオ」の影響下にあり・・・「地獄先生ぬ~べ~」だってとんこさん(山本美月)ありきであり、このドラマも津田ヒロミの転生先に過ぎないのである・・・おいっ。まあ・・・少なくともお・・・キッドにとってはあああああっ。

もちろん・・・「セーラーゾンビ」から握手会傷害事件を経てここに来た神保愛(川栄李奈)も気になるので・・・歌番組でAKB48が出る場合、抜かれれば認知のドーパミンが出る今日この頃である。だから・・・まあ・・・中井抜きでも見るけどな。でも・・・来週出なかったら悲しいなあ。

・・・もういいか。

さて・・・主題的にはほぼどうでもいい・・・コスメこと村井守(小関裕太)の性同一性障害問題である。

息子の病気について知らず、三女の制服を着用したコスメに・・・逆上する・・・駒形大学付属三島高校の理事長・村井晋太郎(津田寛治)なのだった。

とにかく・・・資産家らしい・・・村井理事長は・・・コスメを男の中の男に育てたかったらしいが・・・息子の心は女性そのものなのだった。

その衝撃に・・・すべては・・・聖三島女学院との合併に起因するという論理に逃避した村井理事長は・・・駒形大学付属聖駿高校の誕生を全否定である。

合併は解消し、実験クラスは解散、合同文化祭である「青春祭」は中止という決定を下すのだった。

どんだけ・・・権力のある理事長なんだ・・・。

もちろん・・・息子の性同一性障害そのものを否定なのであった。

「まだまだ・・・一般的に性同一性障害に対する認識が浸透していないし・・・特におっさん世代には・・・ねえ」とため息をつく・・・シスター吉井(斉藤由貴)・・・。

「ざけんなよ・・・コスメが三女の制服着て・・・何が悪いんだよ」と神保愛は激昂するのだった。

「みんな・・・ごめんなさい」と謝罪するコスメ。

「コスメは何も悪くないよ」と庇う女子一同。

「いや・・・僕が交際宣言なんてしたから・・・」とコスメの彼氏である半田(鈴木貴之)もうなだれる。

そこはなんとなくスルーする一同だった。

「じゃ・・・文化祭は・・・」とカラクリ人形(重岡大毅)は問う。

「それだけは・・・絶対に中止にさせないから」と平助(錦戸亮)は一同に誓うのだった。

なんてったって・・・合同文化祭開催は・・・平助自身の悲願なのである。

「ああ・・・なんだか・・・イライラするんです」

「いろいろと大変ね」

蜂矢りさ(満島ひかり)とドンマイ先生(坂井真紀)はガールズ・トークを展開。

「彼がちっとも阿修羅になってくれないんですよお」

「え・・・そっち」

「どっちですか」

「ええと」

なんだかんだとトミー(富澤たけし)とのリア充ぶりを語りたいドンマイ先生だったが・・・りさは聞く耳を持たないのだった。

一方、スナック「ガールズバー」では・・・なんだかんだと付き合いを続ける平助とサトシ(永山絢斗)・・・。

「コロッケは・・・ソースだよな」

「ソースといえばハムカツだよな」

「なんだかんだ・・・揚げ物好きだよねえ」

「・・・この間・・・祐子に会ったよ」

「ふうん・・・・えええええええええええええ」

宅配コロッケの出張先のホテルに・・・祐子(波瑠)が滞在していたのである。

「それで・・・」

「それだけだけど・・・」

「今・・・何やってるとか」

「聞かなかった・・・」

「なんだよ・・・」

「なんていうか・・・意外となんでもなかったというか」

「意味わかんねえよ・・・」

「そういうもんなんだよ」

「連絡先は・・・」

「聞けないもんなんだよ」

「ああ・・・もう・・・なんなんだよっ」

平助の後ろめたさの象徴であるウシロメタファーみゆき(森下愛子)は単なる平助の心の分身ではなく・・・一種の亡霊であり・・・早耳である。

「あの人・・・再婚する気らしいの」

「え・・・父さんが・・・」

平太(風間杜夫)の相手は・・・せつ子(麻生祐未)である。

せつ子を一目見た・・・一平(えなりかずき)は驚愕・・・また惚れちゃったか・・・。

親子で争奪戦か・・・。

そして・・・お約束の「カバヤキ三太郎のごめんね青春!」には祐子が登場である。

平助と・・・サトシは・・・それぞれの居場所で・・・ラジオに耳を傾ける。

「昔・・・私には好きな男の子がいました。その人をAさんとします・・・ところが・・・Aさんの友達の・・・その人のことはへえさんとします・・・へえさんにラブレターをもらってしまったのです・・・私はそのことで・・・Aさんにあやまりたい・・・」

「ええええ」

「大丈夫・・・今・・・叫んでなかった」と駆けつけるホリコシ出身の兄嫁・エレナッチョ(中村静香)・・・アイドル飲み姿カワイイGP!欠席である。この裏切り者めっ。

どんだけテレビ東京好きなんだよっ。

「彼女に会って謝罪したいのかい」と観音様は問いかける。

「・・・」

「それとも・・・まだ愛してもらえるつもりでいるのかい」

「・・・」

「馬鹿だね・・・馬鹿だね・・・俺・・・」

三島のFM局に向かって走りだした平助は肝心な部分を聞き逃す。

「私はAさんと偶然再会しましたが・・・意外となんでもなかったのです・・・今・・・ふと思い出すのはへえさんなのです。だから・・・Aさんにあやまりたいのです。ごめんね・・・Aさん」

駆けつけた平助はもちろん・・・祐子には会えない。

そこにいたのは・・・三宮校長(生瀬勝久)だった・・・。

「え・・・校長・・・なんで・・・ここに」

「一方的に話さないでください・・・そうです・・・私がカバヤキ三太郎です・・・校長である以前にカバさんです」

「カバさん・・・」

思わず・・・カバさんをハグする平助だった。

カバさんは・・・平助の青春そのものだったから。

そんなこんなで・・・女装を禁じられたコスメのために・・・羽根を伸ばしてもらおうと・・・最近おしゃれな品川へと上京する神保と・・・あまりん(森川葵)・・・そしてサンダル(トリンドル玲奈)・・・。

彼氏付で出迎える中井である。

クドカンのイメージでは東京では中井は一週間以上放置されないわけであるが・・・まあ、そんなもんです。

中井が洗練された東京の人になってしまったようで・・・あまりんを中心にショックの輪が広がる。

男女共学の進学校に転校した中井はすっかり・・・東京をエンジョイしているようである。

しかし・・・コスメの置かれた状況を把握すると怒髪天をつく中井なのだった。

「はあああっ、なによ・・・それ・・・ひどいじゃない。コスメがありのままの自分でいることが悪いなんて・・・許せない・・・バカじゃないのっ」

中井の憤激に泣きだす女子一同・・・。

「どうしたの・・・」

「コスメのことはくやしいけど・・・カイチョーがカイチョーでうれしいんだよお・・・カイチョーが変わってなくてうれしいんだよお」と神保は心境を語るのだった。

「ギスギスしてなきゃ会長じゃないよ」と断言するサンダル。

激しく同意のあまりんだった。

「文化祭が中止になるなんて・・・絶対許さないから・・・だって・・・私・・・文化祭がなかったら・・・出番がないかもしれないじゃない」

「一部お茶の間が許さないよね」

かわいいよ・・・会長かわいいよ。

かわいいよ・・・みんなかわいいよ・・・なのであった。

理事長、合併やめるってよ・・・なので。

コスメ、女装やめるってよ・・・である。

平助は理事長宅に説得に訪れるが・・・門前払いである。

続いて・・・生徒たちと訪問するが・・・理事長は引き籠っている。

こういうものはワルツなのである。

高倉健の健と菅原文太の太で健太も・・・健、文太、健太だ。

みんな逝ってしまうなあ。

祐子の登場も。サトシの再会、ラジオで電話トーク、そして・・・御対面である。

お父さん、再婚するってよ。パソコンにデータがあるってよ。一休さん、坊ちゃんって言われちゃったよ・・・なのである。

男性と女性と中性なのだ。

三島で三太郎で三角関係である。

三女とトンコーで聖駿なのだ。

・・・もう、いいかな。

理事長のお宅訪問・・・三度目は・・・りさと二人で。

「職を辞しても青春祭を実行したい」と告げる平助。

「お帰り下さい」は「お入りください」にチェンジする。

待っていたのは理事長のスネゲくん。

理事長は・・・「性同一性障害」の関連書を百冊読破である。

だから・・・面会謝絶だったらしい。

「スカートのまま近所のとあるスーパーマーケットに行ってみました。顔見知りの店員の視線が痛かった・・・物凄いストレスでした。そして・・・悟ったんです・・・息子は生まれてからずっと・・・この違和感と戦ってきたのかと・・・」

「・・・」

「でも・・・だからといって・・・息子が女であることを認めることなんてできない」

「わかりました・・・明日、息子さんと一緒に学校に来てください・・・早朝特別授業を原先生にしてもらいます」

「え・・・」

帰路・・・愚痴を始める平助。

「そんなこと・・・急に言われても」

「できないんですか・・・そうやって・・・時間切れ待ちですか・・・時効まで逃亡ですか・・・明日やろうはバカ野郎はプロポーズ大作戦ですか・・・今日がだめなら明日があるさ明日がダメなら明後日があるさそれでもだめならドンガバチョですか・・・延期延期で寿命待ちですか」

「なんで・・・そこまで・・・」

「好きだからです・・・あなたが大好きだからです」

「え」

時計をとめて・・・二人のために・・・しかし、たちまち業務車両に挟まれる二人。

早回しで交通整理をした二人だった。

「ありがとうございます」

「こっちが勇気を出してはじめての告白したのに・・・なんですか・・・その対応は」

「でも」

「明日までにお返事ください」

「そっちも・・・」

極度のマザコンで・・・初恋の人のストーカーで・・・礼拝堂に放火した男は・・・追い詰められた。

そして・・・。

W校長とりさによる立ち会いのもと・・・平助の特別事業が始る。

制服を着て・・・登場する平助・・・。

本人はきついというが・・・残念ながらそこそこいけている。

アイドルのなんちゃってパワー恐るべしである。

似合ってない前提で補正してください。

とりだしたのは・・・性的倒錯の性典・・・「ロッキー・ホラー・ショー」のソフト。

しかし・・・パッケージの中身は・・・「稲川淳二の怪奇ホラーショー」だった・・・。

「そのたとえか・・・」

「もっといいたとえはなかったの」

W校長のWツッコミ・・・ゴージャスだな。

「これが・・・マモルくんの置かれた状況です。本当は稲川淳二なのに・・・ティム・カリーのフランク・フルター博士をやれって言われて困惑です。あれえ・・・稲川なのにロッキーってなんだかやだなあ・・・こわいなあ・・・なんか変だなんか変だ・・・って思うわけですよ」

「意外と似ている」

「それがやりたかったのか」

そこで・・・「稲川淳二の怪奇ホラーショー」のパッケージを取り出す平助。

パッケージと中身の不一致は解消され、スッキリするのだった。

「いやあ・・・ちょっと無理があるだろう・・・」

「よく・・・わかります」

「わかるのかよっ」

「つまり・・・パッケージと中身が違っている苦痛は筆舌に尽くしがたいということです・・・外見で判断してはいけないと言いますが・・・女なのに男の恰好していたら・・・変でしょう・・・無理があるでしょう」

しかし・・・空になった「ロッキー・ホラー・ショー」のケースに気をとられるスネゲ理事長。

「これ・・・中身はどうなっちゃったんでしょうね」

「そこ・・・」と呆れるりさ。

しかし・・・平助はスネゲの執着心をストーカー同士の共感で理解するのだった・

「麦わら帽子はもう消えたのです・・・そもそも帽子など・・・最初からかぶっていなかったんだ」

「そんなこと・・・私に・・・認められると思いますか」

「・・・」

「この子を最初に抱いたのは私だ。男性器を確認して・・・はじめての男子誕生に飛びあがって喜んで天井に頭をぶつけたのも私だ。それからずっと・・・息子と過ごしてきた日々をなかったことになんか・・・できるか」

思わずコスメに同意を求めたスネゲは・・・涙を必死に堪える我が子に気がつく。

静寂の中・・・窓辺に歩み寄るスネゲ。

その後を追う・・・コスメ。

「ごめんなさい・・・」

「・・・お前が謝ることなんかないよ。お前は悪いことなんて何一つしていない。むしろ・・・御礼を言うのはお父さんの方だ・・・今まで息子のフリをしてくれて・・・ありがとう」

「・・・」

「成人したら・・・男も女も関係ない・・・どうせ親離れしていくんだ」

「そんなことないよ・・・パパのこと大好きだよ」

「マモル・・・」

一人の息子が死んで・・・一人の娘が生まれたのだった。

「校長・・・この子が・・・心に相応しい服装で登校することを許可してください」

「では・・・合併の話は・・・」

「それは・・・どちらでもいいです・・・三女の存続のために経済的支援をする用意もあります」

「合併で・・・お願いします」とシスターよしよし。

「異論はありません・・・男だけの世界になんて・・・もう戻れない・・・むさくるしいだけですから」

「女子だけでは活気がものたりないのです」

「ねえ・・・」

「ねえ」

意気投合する男女校長だった。

「では・・・理事長命令で・・・実験クラスを再開してください」

歓喜にあふれる・・・登校してきた男子生徒たちだった。

合併復活。特別クラス復活。青春祭復活である。

男子は特別クラスに駆け込み・・・女子と喜びを分かち合う。

しかし・・・カイチョー代理を担う神保愛は・・・平助につっこむのだった。

「なんだよ・・・学生服なんか着て・・・浮かれすぎなんだよ・・・大人は大人しくしろよ」

文化祭まで・・・あと12日・・・。

ノリノリで追い込みにかかるりさ・・・。

決意を秘めて平助はりさを呼び出すのだった。

「あの件の返事を・・・」

「はい・・・」

「結婚を前提として・・・まずはお友達から・・・」

「なんですって・・・」

「だって・・・僕たち・・・友達ですか」

「・・・」

「だから・・・」

「出たな・・・妖怪さきのばし・・・」

「そういう貴女は・・・妖怪さきまわり・・・」

「原先生は・・・腰のところで小さく手を振るようなクネクネした女性が好きなんですよね・・・」

「そんなことありません・・・蜂矢先生は・・・今のままで最高に素敵だと思います」

平助の差し出した手をおずおずと握るりさ。

天使が舞い降りてきました。

最高の笑顔を見せるりさである。

しかし・・・校長室には・・・フリーライターを名乗る祐子が待っていたのである。

妹は涙目になり・・・姉はポーカーフェイス。

りさのライバル・・・中井は去った。ドンマイは消えた。しかし・・・最強の相手がやってきたのだった。

茫然と立ちすくむ・・・平助。

はたして・・・平助が告白するのは・・・思い出の屋上か・・・あるいは初体験の事後か・・・それとも・・・「カバヤキ三太郎のごめんね青春!」なのか・・・そこが気になる今日この頃である。

ハヤオシでサンタクでクリスマスである。・・・なに言ってんだよ。

気をつけたい・・・分かる人ゼロの日。

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2014年12月 1日 (月)

水の如く万物を利し低い地位に甘んじる善人は和やかに道を歩む・・・と黒田如水(岡田准一)

他人にとって都合のいい人のあり方を説くのが老子であるとするなら・・・「老子道徳経」の第八章は真髄と言ってもいいだろう。

「上善若水 水善利萬物 又不爭 處衆人之所惡 故幾於道  居善地 心善淵 與善仁 言善信 政善治 事善能 動善時 夫唯不爭 故無尤」

水のように生きることは好ましい。水がなければ困るが水はそれを言いたてない。水は高きより低きに流れる。あるがままの生き方である。もちろん、暮らしは地上でする。しかし、心の持ち方は深淵であるべきだ。人に接するには優しく、言葉に嘘がなく、幸福は分かち合い、素晴らしい力を持ち、適切なふるまいをする。求められてもそれを拒まないなら間違いはないのである。

そういう人間がコップに汲まれていれば渇いた人は喉を潤すのである。

つまり・・・老子は基本的に奴隷の心得を語っているのである。

しかし・・・まあ・・・他人を支配するよりも他人に支配された方が気が楽だという考え方はある。

もちろん・・・黒田如水は専制君主の一人であり・・・人の生き血を吸うのを善しとしたことは間違いないのだ。

たとえば関ヶ原の勝者の一人である前田利長は側室の一人が従兄と情を通じたと知ると側室の目玉をくりぬき、従兄を謀殺した。

それでこそ・・・戦国武将と言えるのだ。

そういう大河ドラマを見てみたいものだが・・・まあ・・・多くを望まないことが幸福の近道なのである。

で、『軍師官兵衛・第48回』(NHK総合20141130PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は十三行・・・年賀状の季節でございますねえ。しかし、待ちに待った忠臣A栗山善助利安と忠臣B母里太兵衛友信の二大イラスト描き下ろしで歳末大感謝祭でございます。義兄弟がセットでオリジナルに更新され・・・気分もあらたに関ヶ原に向えますな。老いを感じさせつつ、体内からもののふのエネルギーがあふれ出す・・・岡田准一の素晴らしい演技でなんとなく黒田如水が存在する終盤・・・。国民的美少女の栄姫もさすがの存在感で申し分なく・・・豊臣の養女から徳川の養女に正室スイッチする黒田の生々しい生き様を示しておりますしねえ。それをなぜ・・・あるがままに描かないのか・・・本当に不思議に思う今日この頃です。まあ・・・前田とか伊達とか山内とか上杉とか・・・これまでの大河主人公は極力排除みたいな感じでしたな。それなら・・・ついでに信長も秀吉も家康もダイジェストにすればよかったのに・・・。まあ・・・リアル戦国時代と・・・大河ドラマの間には暗くて深い河が流れているとしか・・・。

Kan048_2慶長五年(1600年)六月十六日、徳川家康は陸奥国若松城の上杉景勝を征伐するために大坂城を出陣する。家康は伏見、浜松、駿府、小田原、鎌倉を経由して七月二日に江戸に入る。その前日、宇喜多秀家は京の豊国社で出陣式を行う。十二日、石田三成は関東に下る諸将の足止めのための関所を近江国に設営。十七日に三成は毛利輝元を奉じて挙兵する。三成はただちに会津征伐参戦武将の妻子を人質にとることを画策するが、細川ガラシャが屋敷に放火の上、自害。黒田長政の妻は逃亡するなど不手際の連続で目的を達することができなかった。十九日、宇喜多秀家は家康の宿老・鳥居元忠の籠もる伏見城に攻撃を開始する。二十一日、家康は会津に向けて出陣。二十五日、下野国小山にて上方謀反鎮圧の評定が行われる。二十六日、会津征伐の諸将(東軍)は謀反軍(西軍)鎮圧のために西上を開始する。大谷吉継は越前国、加賀国の大名を調略し、西軍に勧誘したが東軍の前田利長は西軍の丹羽長重の加賀国小松城へ攻撃を開始する。大友義統は西軍の将として輝元の支援を受け、安芸国を経由して豊後国への進出を準備する。黒田如水は東軍に参加し豊前国中津城で無差別雇用による徴兵を開始した。

大坂城の南にある玉造の細川屋敷から火の手があがっていた。

石田三成の登城命令を無視して細川忠興の正室・ガラシャが自害したのである。細川家家老の小笠原秀清はガラシャを殺害後、屋敷を爆破し、自決した。

忠興の嫡男・忠隆の正室で前田利家の娘・千世は姉・豪の嫁ぎ先である宇喜多家に逃れた。

「ガラシャ様の辞世は・・・散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ・・・だったそうでございます」

大坂城の北にある長柄の黒田屋敷を脱出した光と栄の姑と嫁コンビに・・・出雲のお国が告げる。

大坂城下で遊郭を営んでいたお国は黒田のくのいちである。

「潔い言葉じゃのう・・・さすがは明智様の忘れ形見じゃ・・・」

光は時の流れを想う。

長政が出陣する折に・・・如水の命令ですでに脱出の手筈は整っていた。

石田方の手勢が到着する以前に黒田屋敷はもぬけの殻になっている。

光と栄は善助の手引きで淀川を下る船で難波の湊に出るとお国の手配した隠し小屋に落ちついた。

如水は二人の救出のために黒田忍びを総動員している。

三成は黒田の人質を得るために犬神衆による追手を出す。

隠し小屋の周辺では黒田忍びと犬神衆の暗闘が続いている。

「お方さま・・・船の用意が整いましてございます」

「さようか」

沖合の黒田の忍び船に乗船するための小舟が船着き場に着いたのである。

小屋を出た二人の前に一人の若侍が戦っているのが見える。

警護の母里太兵衛に緊張が走る。

「お急ぎくだされ・・・尋常ならぬ腕前のものですぞ」

黒田忍びの一人が若侍に斬りかかり一刀両断される。

巨躯を誇る太兵衛を頭一つ上回る体格から目にも止まらぬ必殺の太刀が繰り出されるのである。

太兵衛は・・・日本号を繰り出した。

その槍先が一瞬で斬り落とされる。

太兵衛は繰り出される第二撃を辛うじてかわす。

(二刀使いか・・・)

ふと殺気が失せ果てる。

太兵衛と若侍の間には栄姫がわりこんでいた。

「なかなかの腕前ですね・・・名乗りをあげなされ」

「宇喜多家中・・・新免弁助・・・」

「おや・・・」と光が首をかしげる・・・。

「お手前の父は宮本の無二斉殿では・・・」

「いかにも・・・」

「嫁御殿・・・敵味方に別れたれども・・・この者は黒田の剣術指南の縁者でありますれば・・・手加減してくだされ」

「母上の頼みとあらば・・・眠くて眠くてたまらぬ・・・もう目をあけてはおられぬぞ」

若侍は・・・昏倒した。

金色に輝いていた栄の両眼が色を減ずる。

「さあ・・・参りましょう」

若侍の寝息を残し・・・黒田衆は難波の津を離れた。

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