目には目を、歯には歯を、そして鬼には鬼を(山田涼介)
金曜日と土曜日の落差の激しさには慄くばかりだ。
しかし・・・そこがドラマの醍醐味である。
山田涼介の土曜ドラマといえば「金田一少年の事件簿N」が記憶に新しいが・・・何と言っても「理想の男子」である。
なにしろ・・・野島ドラマでスタンド(超能力)学園もの・・・というとんでもドラマである。
ある意味・・・「ぬ~べ~」はその延長線上にあると言えないこともない。
ぬ~べ~のモチベーションは「生徒を守る教師」という大義名分である。
基本的に「守り」・・・専守防衛なので・・・「生徒の敵」から「生徒」を身を挺して守る。
「ぬ~べ~」自身が「盾」なのである。
つまり・・・ぬ~べ~は一人自衛隊なのである。
「敵」の攻撃を受けて・・・初めて攻撃を自分で許可する。
ドラマだからいいが・・・先制攻撃ができないというのは辛いものだ。
なにしろ・・・「敵」の先制攻撃による犠牲は最初から決まっているのだ。
そういう「現実」を平然と受け入れている日本人を心底、恐ろしいと思う時がある。
で、『地獄先生ぬ〜べ〜・第9回』(日本テレビ20141206PM9~)原作・真倉翔・岡野剛、脚本・マギー、演出・池田健司を見た。ここまで・・・ぬ~べ~と敵対する妖怪は基本的に打撃系で攻撃してくる。流れで言えば・・・敵の暴力、それを受けて苦悶するぬ~べ~、最後は鬼の手で反撃ということになる。お約束と言ってしまえばそれまでだが・・・要するに暴力、暴力を我慢、暴力という展開である。つまり、暴力の賛美である。それをオブラートに包んで・・・平和的解決だった風にもっていく・・・一種の詐欺を続けているのだ。ぬ~べ~の奥の手は・・・左手に封印した鬼だが・・・要するに敵を奴隷化してエネルギー源にした核兵器保有国なのだ。言わば・・・毎回、専守防衛して最後は米国に核弾頭を発射してもらっているようなものだ。そう考えると凄いドラマなんだな。
もう・・・いいか。
地獄の妄想の奥は深いが・・・亡者を苦しめる地獄は・・・灼熱と極寒である。
夏の暑さと冬の寒さは人を苦しめるからだ。
もちろん・・・冷暖房完備になると・・・その恐ろしさは薄れます。
ためしに・・・夏の一日、クーラーから扇風機、冷蔵庫にいたるまで「冷たいもの」を断ってみるといい・・・熱中症になるぞ。
あるいは・・・冬の一日、ストーブからこたつ、床暖房にいたるまで「暖かいもの」を断っても良い・・・風邪ひくぞ・・・。
地獄の羅卒である鬼に・・・赤鬼と青鬼があるのはそういうことだ。
灼熱地獄担当が赤鬼さんで・・・極寒地獄担当が青鬼さんである。
ドラクエで言うと・・・メラ系が赤鬼さん、ヒャド系が青鬼さんです・・・そのたとえはどうかな。
ぬ~べ~(丸山隆平)が霊能力者である美奈子先生(優香)の力を借りて封印した覇鬼(坂上忍)は言わば赤鬼王である。
そして・・・今回、登場する覇鬼の弟、絶鬼(山田涼介)は赤鬼王である。
ちなみに鬼には大別して三つの意味がある。
一つは人としての鬼・・・幽鬼である。
二つは魔としての鬼・・・邪鬼である。
三つとして・・・鬼本来の姿である地獄の官吏である。
このドラマでは・・・鬼は邪鬼の要素が強い。
人間の負の想念が現象化した存在と言える。
なぜ・・・彼らが・・・この世を阿鼻叫喚の地獄としたいのかは・・・説明されないが・・・要するに・・・子供たちの・・・日本人の・・・人間の敵としての象徴なのであろう。
童守高校を中心とした亜空間で・・・邪気に満ちた異次元の扉が開かれ・・・まず、妖狐である玉藻(速水もこみち)が解き放たれ・・・今度は・・・絶鬼がこの世に出現したのだった。
「人間を苦しめるのが・・・妖怪のあるべき姿・・・阿鼻叫喚こそが美しい旋律」
絶鬼はそう嘯きながら・・・転校してきたのだった。
本名が「絶鬼」(ぜっき)である。
どこの国の人だよ・・・と一々ツッコミを入れるのが馬鹿馬鹿しいくらい開けっ広げの話である。
まあ・・・脚本家がそういうセンスなんだから仕方ないよね。
絶鬼は特技が妖力のステルス(隠密)化である。
そのために・・・ぬ~べ~は絶鬼の存在を感知できないのである。
ぬ~べ~に守られてきた生徒たちはそれぞれに・・・過去の妖怪たちの顛末を転校生に語る。
「妖怪と友達になれた」などと喜ぶ生徒たちは絶鬼の神経を逆撫でする。
「妖怪は人間を苦しめるために存在する」という信念があるからだ。
幻術使いでもある絶鬼はたちまち・・・生徒の半数を青鬼化し・・・苦痛と恐怖を与える。
一方、ぬ~べ~は・・・律子先生(桐谷美玲)から愛を告白されそうになって・・・激しく劣情を催していた。
そこへ・・・まこと(知念侑李)が「大変だ」と飛び込んでくる。
男ならその件は後回しにするべきだが・・・ヒーローなのでそうもいかないのだった。
教室にかけつけたぬ~べ~は鬼の手で・・・絶鬼の呪いを解くのだった。
その頃・・・雪女のゆきめ(知英)は悪寒を感じてくしゃみをし・・・ぬ~べ~の身を案じる。
そして・・・いずな(山本美月)は病床に伏した無限界時空(高橋英樹)のことをぬ~べ~に知らせる。
居合わせた玉藻は・・・人間に心を寄せている自身の妖怪としての自己同一性の危機に揺れていた。
「ぬ~べ~に・・・お父さんが話があるって・・・」
「あんな奴の話など聞きたくない」
「どうして・・・」
「あの男は母を見捨てた・・・だから・・・俺もあいつを見捨ててやる」
「そんな・・・玉藻さんからもなんか言ってやって」
玉藻はなんとか非情であろうとするが・・・結局、情にほだされる。
「無限界時空は・・・ぬ~べ~を助けた」
「なんだって」
「赤マントの呪いを解いたのは・・・無限界時空なのだ」
「・・・」
真相を確かめるために・・・無限界時空が伏せる童守寺に向かうぬ~べ~。
残された玉藻といずなの前に絶鬼が現れる。
「人間に心を寄せるなど・・・妖狐としては堕落だな」
「何よ・・・あんた・・・」
しかし、実力でいずなを仰臥拘束する絶鬼。
お色気担当要員みたいなことになるいずなだった。
まあ・・・健全な小学生男子は脳殺である。
だが・・・ラブ・ファイヤで抵抗を試みる健気ないずなだった。
「とにかく・・・妖狐は妖狐らしくするべきだ」
絶鬼の実力を伴う説得に折れる玉藻だった。
ゆきめに看病される無限界時空・・・。
「なぜ・・・俺を助けた」
「お前の母親は・・・手遅れだった」
「そんな・・・」
「お前の母親を失い絶望した俺は・・・妖怪退治に全力で逃避した・・・妖怪を封印して封印して封印しまくったのだ・・・」
「なんて・・・孤独な・・・」
「だが・・・俺の力の尽きる時が来た・・・もはや・・・一人では鬼を封じることはできん・・・」
「そうか・・・だが・・・俺はお前の力など・・・借りん」
結局・・・決裂する父子だった。
「悪夢ちゃん」のキャラクター・ユメノケの親類のようなコイナリが・・・いずなの危機をぬ~べ~に知らせる。
駆けつけたぬ~べ~にいずなは「絶鬼」の正体を告げるのだった。
「あいつが・・・鬼だったのか」
最初から・・・絶鬼だと名乗っているわけだが・・・。
「なかなか・・・正体を見抜いてくれないんで・・・困りました」
「すまない」
「そんなあなたに・・・プレゼントがあります」
屋上には律子先生と生徒たちが磔にされているのだった。
玉藻が電撃で悶えさせ・・・男子小学生のためのお色気攻撃第二弾である。
男子生徒もいるので・・・一部お茶の間にも対応しています。
「ああ~ん」
もう少し・・・やってくれてもよかったが。
「許さん」と鬼の手を解放するぬ~べ~。
しかし・・・鬼の手対鬼である。
圧倒的に強い絶鬼だった・・・。
ぬ~べ~の危機を見て・・・律子先生は玉藻に呼び掛ける。
「玉藻先生・・・ぬ~べ~を助けて・・・あなたなら・・・」
「・・・」
人間と妖怪の間で揺れる玉藻・・・。
しかし・・・ついに「破軍」と唱えるのだった。
それは・・・妖力を封じる結界である。
絶鬼の力が一瞬、弱まり・・・ぬ~べ~は拘束具・観音経を繰り出す。
そして・・・絶鬼を封印の地へ導くのだった。
ついに鬼としての正体を示す絶鬼。
「ふん・・・場所を移したところで・・・実力差は埋まらぬぞ」
しかし・・・響く念仏・・・。
「不思議力・・・怨霊退散・・・」
「不思議力・・・怨霊退散・・・」
父の念仏に・・・唱和するぬ~べ~。
「おのれ・・・人間の分際で・・・」
「親から子へ・・・つながれた絆の強さ・・・鬼には分かるまい」
鬼門が開き・・・絶鬼は異次元に吸引されかかる。
「それならばこうだ・・・」
絶鬼は鬼の法具で・・・無限界時空を絡め取るのだった。
「見ろ・・・地獄へ道連れだ・・・お前の力など・・・誰を守ることもできぬのだ」
一瞬、怯むぬ~べ~。
しかし・・・父は子を励ます。
「やるのだ・・・我が子よ・・・鬼を封じるために鬼となれ」
ぬ~べ~は父の教えに従った。
「結局・・・最後は・・・親殺しか・・・」
魔界に消える絶鬼。
しかし・・・ぬ~べ~は父の手を握る。
「犠牲など・・・必要ない」
ぬ~べ~は父をこの世に連れ戻した。
見つめ合う・・・父と子・・・。
しかし・・・結局、力で力を封じたぬ~べ~である。
「思いあがるな・・・弟を封じたのは・・・お前じゃない・・・俺だ」
悪の心と善の心の均衡は敗れ・・・解放される覇鬼・・・。
ぬ~べ~は鬼の手を失い・・・最終決戦に臨むのだった・・・。
人間対鬼である。
今度こそ・・・鬼が勝つよね。
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