水の如く万物を利し低い地位に甘んじる善人は和やかに道を歩む・・・と黒田如水(岡田准一)
他人にとって都合のいい人のあり方を説くのが老子であるとするなら・・・「老子道徳経」の第八章は真髄と言ってもいいだろう。
「上善若水 水善利萬物 又不爭 處衆人之所惡 故幾於道 居善地 心善淵 與善仁 言善信 政善治 事善能 動善時 夫唯不爭 故無尤」
水のように生きることは好ましい。水がなければ困るが水はそれを言いたてない。水は高きより低きに流れる。あるがままの生き方である。もちろん、暮らしは地上でする。しかし、心の持ち方は深淵であるべきだ。人に接するには優しく、言葉に嘘がなく、幸福は分かち合い、素晴らしい力を持ち、適切なふるまいをする。求められてもそれを拒まないなら間違いはないのである。
そういう人間がコップに汲まれていれば渇いた人は喉を潤すのである。
つまり・・・老子は基本的に奴隷の心得を語っているのである。
しかし・・・まあ・・・他人を支配するよりも他人に支配された方が気が楽だという考え方はある。
もちろん・・・黒田如水は専制君主の一人であり・・・人の生き血を吸うのを善しとしたことは間違いないのだ。
たとえば関ヶ原の勝者の一人である前田利長は側室の一人が従兄と情を通じたと知ると側室の目玉をくりぬき、従兄を謀殺した。
それでこそ・・・戦国武将と言えるのだ。
そういう大河ドラマを見てみたいものだが・・・まあ・・・多くを望まないことが幸福の近道なのである。
で、『軍師官兵衛・第48回』(NHK総合20141130PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は十三行・・・年賀状の季節でございますねえ。しかし、待ちに待った忠臣A栗山善助利安と忠臣B母里太兵衛友信の二大イラスト描き下ろしで歳末大感謝祭でございます。義兄弟がセットでオリジナルに更新され・・・気分もあらたに関ヶ原に向えますな。老いを感じさせつつ、体内からもののふのエネルギーがあふれ出す・・・岡田准一の素晴らしい演技でなんとなく黒田如水が存在する終盤・・・。国民的美少女の栄姫もさすがの存在感で申し分なく・・・豊臣の養女から徳川の養女に正室スイッチする黒田の生々しい生き様を示しておりますしねえ。それをなぜ・・・あるがままに描かないのか・・・本当に不思議に思う今日この頃です。まあ・・・前田とか伊達とか山内とか上杉とか・・・これまでの大河主人公は極力排除みたいな感じでしたな。それなら・・・ついでに信長も秀吉も家康もダイジェストにすればよかったのに・・・。まあ・・・リアル戦国時代と・・・大河ドラマの間には暗くて深い河が流れているとしか・・・。
慶長五年(1600年)六月十六日、徳川家康は陸奥国若松城の上杉景勝を征伐するために大坂城を出陣する。家康は伏見、浜松、駿府、小田原、鎌倉を経由して七月二日に江戸に入る。その前日、宇喜多秀家は京の豊国社で出陣式を行う。十二日、石田三成は関東に下る諸将の足止めのための関所を近江国に設営。十七日に三成は毛利輝元を奉じて挙兵する。三成はただちに会津征伐参戦武将の妻子を人質にとることを画策するが、細川ガラシャが屋敷に放火の上、自害。黒田長政の妻は逃亡するなど不手際の連続で目的を達することができなかった。十九日、宇喜多秀家は家康の宿老・鳥居元忠の籠もる伏見城に攻撃を開始する。二十一日、家康は会津に向けて出陣。二十五日、下野国小山にて上方謀反鎮圧の評定が行われる。二十六日、会津征伐の諸将(東軍)は謀反軍(西軍)鎮圧のために西上を開始する。大谷吉継は越前国、加賀国の大名を調略し、西軍に勧誘したが東軍の前田利長は西軍の丹羽長重の加賀国小松城へ攻撃を開始する。大友義統は西軍の将として輝元の支援を受け、安芸国を経由して豊後国への進出を準備する。黒田如水は東軍に参加し豊前国中津城で無差別雇用による徴兵を開始した。
大坂城の南にある玉造の細川屋敷から火の手があがっていた。
石田三成の登城命令を無視して細川忠興の正室・ガラシャが自害したのである。細川家家老の小笠原秀清はガラシャを殺害後、屋敷を爆破し、自決した。
忠興の嫡男・忠隆の正室で前田利家の娘・千世は姉・豪の嫁ぎ先である宇喜多家に逃れた。
「ガラシャ様の辞世は・・・散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ・・・だったそうでございます」
大坂城の北にある長柄の黒田屋敷を脱出した光と栄の姑と嫁コンビに・・・出雲のお国が告げる。
大坂城下で遊郭を営んでいたお国は黒田のくのいちである。
「潔い言葉じゃのう・・・さすがは明智様の忘れ形見じゃ・・・」
光は時の流れを想う。
長政が出陣する折に・・・如水の命令ですでに脱出の手筈は整っていた。
石田方の手勢が到着する以前に黒田屋敷はもぬけの殻になっている。
光と栄は善助の手引きで淀川を下る船で難波の湊に出るとお国の手配した隠し小屋に落ちついた。
如水は二人の救出のために黒田忍びを総動員している。
三成は黒田の人質を得るために犬神衆による追手を出す。
隠し小屋の周辺では黒田忍びと犬神衆の暗闘が続いている。
「お方さま・・・船の用意が整いましてございます」
「さようか」
沖合の黒田の忍び船に乗船するための小舟が船着き場に着いたのである。
小屋を出た二人の前に一人の若侍が戦っているのが見える。
警護の母里太兵衛に緊張が走る。
「お急ぎくだされ・・・尋常ならぬ腕前のものですぞ」
黒田忍びの一人が若侍に斬りかかり一刀両断される。
巨躯を誇る太兵衛を頭一つ上回る体格から目にも止まらぬ必殺の太刀が繰り出されるのである。
太兵衛は・・・日本号を繰り出した。
その槍先が一瞬で斬り落とされる。
太兵衛は繰り出される第二撃を辛うじてかわす。
(二刀使いか・・・)
ふと殺気が失せ果てる。
太兵衛と若侍の間には栄姫がわりこんでいた。
「なかなかの腕前ですね・・・名乗りをあげなされ」
「宇喜多家中・・・新免弁助・・・」
「おや・・・」と光が首をかしげる・・・。
「お手前の父は宮本の無二斉殿では・・・」
「いかにも・・・」
「嫁御殿・・・敵味方に別れたれども・・・この者は黒田の剣術指南の縁者でありますれば・・・手加減してくだされ」
「母上の頼みとあらば・・・眠くて眠くてたまらぬ・・・もう目をあけてはおられぬぞ」
若侍は・・・昏倒した。
金色に輝いていた栄の両眼が色を減ずる。
「さあ・・・参りましょう」
若侍の寝息を残し・・・黒田衆は難波の津を離れた。
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