迷える子羊たちのお茶会にスナイパーの銃弾をお届けします(水谷豊)
「相棒season12」の第13話 「右京さんの友達」で杉下右京(水谷豊)の奇妙な紅茶友達・毒島幸一(尾美としのり)を登場させた脚本家が・・・蘊蓄を繰り広げる元旦スペシャルである。
まあ・・・繰り広げ過ぎて意味不明なところもあるが・・・なかなか教養あふれる展開なのである。
サブタイトルの「ストレイシープ」は「マタイによる福音書」の「18章11節~13節」からの引用として紹介される。
その直前にナザレの男・イエスは弟子たちに「自分の死と復活」を予言する。
弟子たちは恐怖を感じる。
動揺する弟子たちにイエスは告げる。
「天におられる我等の父は・・・迷わないものと迷えるものを隔てることなどしない。迷えるもの(ストレイシープ)があれば必ず捜し出す。迷わないものよりもむしろ迷えるものが見出されることを喜ばれる」
弟子たちはイエスとともに滅びることにためらいを感じる。
「私は迷える子羊を捜しに来た羊飼いである。だから・・・罪の誘惑が必ずあることを知っている。あなたの手が罪を犯すなら・・・あなたは手を切り捨てなさい。手がそろっていても地獄の火に投げ入れられたら何の役にも立たないのだから」
こうして弟子たちは自分たちを導くもの・・・イエスの恐ろしさにようやく気がつくのだった。
で、『相棒 season13 元日スペシャル』(テレピ朝日20150101PM9~)脚本・真野勝成、演出・和泉聖治を見た。ピカソが「二十世紀最後の巨匠」と讃えた画家バルテュスはダージリンとアールグレイのブレンドを好んだと言う。紅茶を愛している杉下右京はそんな言葉で・・・謎の女・西田悟巳(石田ひかり)とお近付になるのだった。プライベートタイムの杉下右京は隙だらけという話なのである。
しかし・・・西田悟巳は自殺し、知人を名乗る謎の男(平岳大)が西田悟巳の最後の手紙を右京に手渡すのだった。
そこには・・・杉下右京に恋をした悟巳が右京と月本幸子(鈴木杏樹)の関係を誤解し死を決意したことが認められていた。
「なんて誤解を・・・」
いや・・・愛人関係なんだろう・・・二人は・・・違うのかよっ。
その頃、霊能力者である中園参事官(小野了)の妻は「未曾有の危機とラッキーアイテムは眼鏡と紅茶」という神のお告げを聞く。
やりたい放題だな。
誘拐事件が発生し・・・カリスマ投資家の梶井素子(川上麻衣子)が用意した身代金1億2千万円は焼失する。
危機を感じた中園参事官は・・・眼鏡と紅茶といえば特命係の杉下右京ということで捜査の参加を認めるのだった。
右京と相棒の甲斐享(成宮寛貴)は梶井素子(川上麻衣子)と関わりのある伊藤という自殺者(泉晶子)の存在を探知する。
伊藤は富士の樹界で集団自殺をしており・・・そのうちの一人は右京と関わりのある人物だった。
右京が検挙した万引き犯・粕谷栄子(山本雅子)の恋人だったのである。
その後・・・万引き犯は自殺し・・・恋人が右京を怨んでいた可能性が浮上するのだった。
さらに・・・もう一人の女性が大物政治家の愛人だったことを突きとめた特命係。
その大物政治家を自殺に追い込んだ元東京地検特捜部のエース、議院議員の橘高誠一郎(三浦浩一)が「12月25日、必ず罪を犯す」という動画が素晴らしいインターネットの世界の議員のサイトに投稿されるのだった。
警視庁は一連の犯罪の裏に「犯罪の神様」と噂される新型犯罪組織のリーダー・飛城雄一の関与があることを疑うのだった。
やがて・・・橘高誠一郎の愛人で大物政治家のスキャンダルを密告した女が拉致され、脅迫に屈した橘高は銃を乱射するのだった。
右京は真犯人に誘導されて真実に近づく。
甲斐の恋人の悦子(真飛聖)の携帯端末によって謎の男に呼び出される右京。
自殺した西田悟巳の思い出の地・・・数十年に一度花が咲く山荘で右京は拘束されてしまう。
「あなたは誰ですか」
「飛城雄一です」
「それは嘘ですね・・・飛城雄一は自己顕示欲が欠落した犯罪者だが・・・あなたは・・・そうではない」
「・・・」
「富士の樹海で集団自殺をしようとしたのは六人だったのでしょう。一人はカリスマ投資家を怨んだ女、一人は橘高議員を怨んだ女、一人は私を怨んだ男・・・そして・・・もう一人が犯罪の神様・飛城雄一・・・しかし、あなたと西田悟巳は死にそこなったのですね」
「あなたは・・・神か」
「いいえ・・・警察官ですよ」
「そうです・・・私は・・・飛島雄一の悪の遺産を手に入れ・・・死んだ人々の怨みを晴らすことを思いついたのです・・・彼女は・・・それに手を貸してくれたのです」
「しかし・・・あの人は私に恋をして・・・あなたを裏切ったのですね」
「ちがう・・・何を言ってるんだ・・・」
「だから・・・あなたは・・・あの人を殺したのでしょう」
「黙れ」
しかし・・・右京の危機を察した甲斐亨は父親の甲斐峯秋警視監(石坂浩二)を動かし・・・警視庁最強の狙撃手・日野警部補(寺島進)を召喚していたのだった。
間一髪、逮捕される謎の男だった。
「彼女の本当の遺書があります・・・」
「君はあの人を愛してしまったのですね」
「あなたはどうだったんです」
「・・・」
答えないのかよ・・・とお茶の間を激昂させる右京だった。
一人・・・思い出の店で・・・手紙を開く右京。
「私は免疫系の病気で・・・処女のまま年を重ねてしまいました。闘病に疲れた私は迷いの森の中で・・・死にかけた子羊と巡り合ったのです。彼の命を救うことが使命だと感じました。そして・・・彼が始めた復讐を手伝うためにあなたに近付いたのです。しかし・・・思いがけないことに・・・私は生まれて初めて恋をしてしまったのです。しかし・・・そのことをあなたに打ち明ける勇気は私にはありませんでした。私は犯罪者であなたは警察官・・・叶わない恋だったからです・・・私にできるのは・・・この手紙ですべてを告白することだけなのです・・・ごめんなさい・・・そしてありがとう」
右京は雪の降りかかる夜の街を歩きだす。
さて・・・警視庁広報課長の社美彌子(仲間由紀恵)は事件の火消に暗躍する。
美彌子と言えば・・・小説「三四郎/夏目漱石」の登場人物で・・・その口癖は「迷羊(ストレイシープ)」なのである。
美彌子のモデルは・・・平塚らいてうとされる。女性の権利獲得に奔走した活動家であり・・・恋する女だった。
時は過ぎ・・・女の時代がやってきた。それはまた・・・迷える子羊たちの時代でもあるようだ。
バルテュスの絵の中で少女は大胆に股を開く。
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