学校のカイダン昇り言葉のマシンガンぶっぱなせば君はもう生徒会長さ(神木隆之介)
言葉の力は偉大である。
「死ね」と言われて死ぬものがいるくらいである。
誰もが自分の意志を伝える自由がある。
しかし、意志を伝えるのは言葉とは限らない。
蔑みの視線もあれば、心臓を貫く白刃もある。
空気を読むことに特化した薄い評論家たちはコメントする。
「表現の自由を暴力で粉砕することはいけないことです。しかし、宗教的な問題では言葉を慎むことも考慮すべきです」
だって殺されるのは嫌だから。
そんな覚悟で守る表現の自由は絶対に守れない。
殺される覚悟で守ってこその自由である。
なぜなら自由を守るために殺すことだってあるんだから。
おちょくることを許されない言葉なんて・・・もはや言葉とは言えないのだから。
容赦なくテロリストを沈黙させる弾丸に学べ。
口が災いの元であることを。
で、『お兄ちゃん、ガチャ』(脚本・野島伸司)を見た。雫石ミコ(鈴木梨央)は理想のお兄ちゃんを求めて今日もガチャに五百円コインを投入する・・・おいっ。
失礼しました。・・・のんびりメルヘンの世界に逃避したい気持ちはわかるぞ・・・。しかし、お兄ちゃんの入浴シーンじゃな。
で、『学校のカイダン・第1回』(日本テレビ20150110PM9~)脚本・吉田智子、演出・南雲聖一を見た。学校は社会の縮図である。社会にカースト制度があるなら学校にあってもおかしくないわけである。平等主義者は機会の平等にも敏感である。東大生の親が東大生である割合の変化が大きくなれば直ちに不平等の蔓延を憂うものだ。富の偏在が進行し、一日百円で暮らす人々の数が増えれば嘆くのである。しかし・・・地域や国家の枠組みによって・・・ほぼ全員が一日千円以上で暮らし、一日十万円生活の暮らしを羨むような場所で・・・貧富の差を呪うのは・・・飢え死に寸前の人々からは神を畏れぬ行為になる。人間は贅沢な生き物だ。それでいいのだ。何故ならキッドが愛するのは平等ではなく、自由だから。
日本には有能な司会者は多いが・・・有能な演説家と言うと「今でしょ」とか「公明党と創価学会は無関係ではないんですね」という教師的なポジションの人が思い浮かぶ。
ヒトラーのように大衆を揺り動かし、破滅に導くようなスターが不在なのである。
なにしろ・・・出る杭は打たれるお国柄なのである。
そんな国で・・・言葉で大衆を扇動する女子高校生の話が成立するのかどうか・・・まさに見物なのである。
この世のどこかにある私立明蘭学園高等学校は・・・名門高校である。
生徒たちはカースト上位の家庭に属するものが多い。
この場合のカーストとは経済的階級のことらしい。
つまり、裕福な家庭の子女が通う高校なのである。
当然、貧乏人の通う学校よりまともなのが一般的だが・・・ドラマなので・・・裕福な家庭の子供たちにはふさわしくない品性の下劣さが満ちている。
有能な理事長兼校長である誉田蜜子(浅野温子)は学園の地位と名声の向上のために・・・革新的な制度を導入し・・・名門の中の名門を試行中らしい。
特別採用制度による編入枠(特サ枠)もその一つで・・・なんらかの事情のある生徒を無償で受け入れるプロジェクトによって・・・単なるお嬢様・お坊様学校でないことをアピールしているわけである。
もちろん、経済的に裕福な家庭の子供が必ずしも優秀とは限らないので・・・学業やスポーツなどで特別待遇することは生徒の質を向上させるよくある手口だ。
私立明蘭学園高等学校の場合はその手口を普通の子女にも広げているだけである。
青果店を営む祖父・徳次郎(泉谷しげる)と二人暮らしの春菜ツバメ(広瀬すず)もこれといった特徴はないが特別採用枠によって転校してきた生徒である。
転校して二か月・・・。二年一組の生徒として・・・無難にふるまってきた。
学校カーストの頂点に位置するプラチナ8と呼ばれる生徒たちにも何故か可愛がられている。
プラチナ8にはどうみても社会人のなんちゃって高校生・麻生南(石橋杏奈)や、ベテランなんちゃって高校生の須堂夏樹(間宮祥太朗)、そして現役バリバリの香田美森(杉咲花)などのおなじみのメンバーが揃っている。
しかし・・・それはもちろん・・・上辺の話である。
何故か・・・不在となった生徒会長の再選挙の結果・・・突然、新生徒会長に選ばれた日から・・・ツバメは学園に潜んでいる悪意の標的となるのであった。
プラチナ8の生徒たちにとって特サ枠のツバメは混入した異物。蔑みの対象でしかない愛玩物もしくはいつでも殺せる奴隷に過ぎなかったのだ。
所信表明演説で緊張のあまり気絶したツバメは彼らの嘲笑を浴びるのだった。
校名を高めるためにボランティア活動に出かけたツバメはついに・・・クイーン南の逆鱗に触れ・・・いじめの対象になりかかる。
その危機を・・・クラスメイトで生徒会の副会長・アブラムシこと油森哲夫(須賀健太)が救う。
たちまち・・・標的となったアブラムシは・・・キング須堂によって不謹慎な悪戯動画を素晴らしいインターネットの世界に投稿されてしまう。
キングやクイーンたちの親は高額寄付によって学園の財源を支えていた。
拝金的な考えによって学園を運営する金時教頭(生瀬勝久)は首謀者をキングと知りつつ、責任回避のためにアブラムシに自主退学を促すのだった。
ツバメは・・・「悪いのはあなたではない」とアブラムシを慰める。
しかし・・・アブラムシは「そう言えば・・・気持ちが軽くなるのかい」と揶揄するのだった。
立ちすくむ・・・ツバメ。
そこへ・・・車椅子の怪人・雫井彗(神木隆之介)が現れる。
「大切なものを捧げれば願い事を叶えてくれる」という噂の人物だった。
「バカはバカらしく・・・バカをやってればいいじゃないか」
「バカって言葉しか知らないんですか」
「どうする・・・アブラムシを救うのか・・・救わないのか」
「言うことを聞けば・・・彼を救えるのですか」
「それが君の願いならば・・・」
怪人の屋敷に連れ込まれたツバメが大切なものを奪われたのかどうかは謎である。
「私は何をすればいいんですか」
「君は・・・この世で最も強力な武器はなんだと思う」
「機関銃・・・爆弾かしら」
「それは・・・言葉さ」
「え」
「ネルソン・ホリシャシャ・マンデラは人生における様々な悲劇を言葉で乗り越えたし、マハトマ・ガンディーは言葉でインドを独立に導いた。ヒトラーは言葉でヨーロッパを破滅させたし、マンデルは言葉で学生を唆し、五月革命で愛車を燃やされた。それほどに言葉には力があるのだよ」
「・・・」
「バカには少し難しかったかな・・・大丈夫、バカにもできるようにしてあげるから・・・」
「私にできるのかしら」
「やるのは・・・君だ・・・どうする・・・逃げたっていいぞ」
「逃げ場なんてない・・・逃げられないから・・・こっそりしていたのに・・・」
「もはや・・・目をつけられてしまったのだから・・・やるしかないよね」
「やるしかない・・・」
「そう・・・やられる前にやる。そしてやるからにはトップを目指すしかない」
「トップって・・・」
「安心しろ・・・君はもうトップだ・・・なにしろ・・・生徒会長なんだから」
「でも・・・それはあの人たちが・・・お膳立てしただけで・・・仕組まれた悪戯・・・」
「やつらは・・・間違ったのさ・・・御膳があったら・・・喰うしかないんだから」
「そんな・・・」
「君は・・・とにかく・・・明日、学校を休まなければいい」
「それだけ・・・」
「朝一番で・・・生徒会室に行け・・・それでアブラムシは救うことができる」
「・・・」
「覚悟が決まったら退学届を書け」
「え」
「アブラムシを救うのか・・・救わないのか」
「書きます」
その日・・・密室では・・・教頭がアブラムシに引導を渡そうとしていた。
その時・・・響き渡る「生徒総会」の集合指示。
生徒会室でツバメは怪人の指示を受けるためのイヤホンと・・・武器を収納したリュックサックそしてスピーチ原稿を手に入れる。
「誰が生徒総会なんて・・・」
「あなたの指示にしたがったの」と生徒会の会計を務める脇谷玉子(清水くるみ)が告げる。
怪人はお膳立てを整えていた。
演壇に立つツバメ。
聴衆たちは野次を飛ばす。
(まだだ・・・)
ツバメは怪人の指示に従う。
(よし・・・マイクを倒せ)
マイクを倒すツバメ。
一瞬の静寂。
(武器をとれ)
リュックに格納されていたのはトラメガだった。
スピーチ原稿にはアブラムシの悪口を言うことが指示されていた。
「そんな・・・できないよ」
(やるしかない・・・俺を信じろ)
「私は・・・アブラムシが嫌いです・・・人の顔色を窺って・・・空気を呼んで・・・コソコソして・・・」
「一体・・・何の話だ」と訝る教頭。
その目に退学届を突きつけるツバメ。
「面白いじゃない」と不敵に笑う校長。
自主退学は良くても退学者は学校の面目を傷つけるのである。
その時・・・照明が消え・・・スクリーンに真実を暴露する盗撮映像が映される。
「何の真似だ」と激昂するキング。
そして・・・白紙のスピーチ原稿。
(正直な自分の気持ちを語れ)
「でも・・・それは私でした・・・人の顔色を窺って・・・空気を呼んで・・・コソコソして・・・いじめられないように・・・いじめる側にまわってた・・・いじめたいならいじめればいい・・・でもいじめたくもないのにいじめるなんて・・・間違ってる・・・我慢していじめにつきあうなんて・・・もう・・・嫌だ・・・私は・・・自分を変えたい・・・この学校を変えたい・・・このへんてこな世界を変えたい」
スピーチの最後の一枚。
(これが私の所信表明です)
「これが・・・私の所信表明です・・・」
「ふざけんな」
騒然とする会場。
しかし・・・アブラムシだけは・・・瞳に輝きを取り戻す。
「僕は自主退学を辞めます」
「なに・・・」
学園革命のための一歩を踏み出したツバメ。
同志・アブラムシを獲得したのだった。
成果を見つめる怪人。
「ふふふ・・・ははは・・・いいぞ・・・これが大逆転のスタートだ」
その頭上で紙吹雪となったツバメの退学届・・・革命の終着点は・・・新世界か・・・それとも世界の終焉なのか。
滅びへと向う素晴らしいスピーチを期待したい。
関連するキッドのブログ→キイナ・不可能犯罪捜査官
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コメント
『ごめんね青春』のあとにこういうのはキツいなぁと(笑)。ああ~杉咲花や石橋杏奈や飯豊まりえがヒールに回っているのはツライ。
でも広瀬すずが可愛いから二回くらいは観たいと思います。
(ただしお姉さんのほうが好き(笑))
投稿: 幻灯機 | 2015年1月12日 (月) 22時22分
寒中お見舞い申し上げます。
ふふふ・・・楽あれば苦ありが人生ですからな。
杉咲花や石橋杏奈や飯豊まりえがヒールなのも
また一興でございましょう。
お姉さんの方は女子プロレスラー役も
出来る感じに仕上がってますからねえ。
広瀬すずもその気配はありますが
いわば
スレンダーとグラマーのボーダーにある感じが
たまらなく萌え~ですな。
学校のオペラ座の怪人ですから
最後は警官突入で
二人は地下水路を
彷徨ってもらいたい今日この頃でございます。
投稿: キッド | 2015年1月13日 (火) 10時46分