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2015年1月13日 (火)

オリエント急行殺人事件と忠臣蔵まぜちゃいました(小林星蘭)

古典に親しむのはいいことだと思う。

「オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー」を未読の人は意外と多いわけで、映画「オリエント急行殺人事件」(1974年)を未鑑賞の人も今や多いと思える。

たくさんの人が犯人とか、列車内ミステリーとか・・・そういうなんとなく知っているコレのコトをお手軽に全編体験できるのもお得である。

もちろん・・・すごく面白いわけではないが・・・そこそこ楽しめるように贅沢に出来ている。

名探偵ポワロが変な人だというのも確認できる。

だから・・・前後篇あわせて六時間くらい我慢しろ・・・という話である。

なにしろ・・・後半は真犯人の語りだけで三時間である。

聞かない主義の名探偵なら後半は見なくてもいいわけである。

で、『オリエント急行殺人事件・第一夜~二夜』(フジテレビ20150111PM9~)原作・アガサ・クリスティー、脚本・三谷幸喜、演出・河野圭太を見た。原作のイスタンブールからフランスのカレーに向かう「オリエント急行」を下関から東京へ向かう「特別急行東洋」(フィクション)に翻案して豪華乗客を詰め込んだおせちミステリーである。

舞台となるのは昭和ヒトケタの日本。平和な時代の終焉を前に人々は戦前を生きていたわけである。

「オリエント急行」を味わうためには・・・「昭和初頭」も味わう必要がある。

それが面倒くさいといえば面倒くさいが・・・好きな人は好きなのであろう。

明治維新、日清日露、第一次世界大戦を経て、大日本帝国はそれなりに反映していたが・・・貧富の差はおろか・・・華族という特権階級や、違憲ではない職業軍人が繁栄を謳歌していた時代である。

極貧から身を起こした闇の企業家・藤堂修(佐藤浩市)は資金繰りのために身代金目的の誘拐を実行する。被害にあったのは陸軍軍人の剛力大佐(石丸幹二)の令嬢・聖子(小林星蘭)で藤堂は身代金を入手した後、聖子を殺害して遺棄する。おそらく顔を見られてしまったのだろう。

極悪非道の藤堂だったが証拠不十分で無罪となってしまうのだった。

「何の苦労も知らずにおいしい生活したんだから死んでも悔いはないだろう」と嘯く藤堂だった。

愛娘の死を知った剛力夫人で妊娠中だった曽根子(吉瀬美智子)は胎児とともにショック死。

絶望した剛力大佐は自殺。

濡れ衣を着た剛力家の小間使い・小百合(黒木華)は取調中に自殺する。

こうして・・・剛力大佐の一族の悲劇は幕を閉じたのである。

一方で藤堂は身代金で得た大金によって実業家として大成功していたのである。

しかし・・・藤堂を犯人として疑わない曽根子の母親で大女優の羽鳥典子(富司純子)をはじめとする剛力家の関係者たちは・・・五年の月日をかけて復讐の機会を待っていたのだった。

そして・・・昭和八年の二月・・・。

事業の視察に出かけた藤堂は帰京のために・・・下関発東京行きの豪華寝台列車「特急東洋」の乗客となる。

たまたま・・・乗り合わせた名探偵・勝呂武尊(野村萬斎)は隣の客室で・・・殺された藤堂の事件解決を鉄道省の重役(高橋克実)に依頼される。

現場に残された焼却されたメモから・・・「剛力聖子」の文字をあぶり出した名探偵はたちまち事件の真相を掴むのだった。

一号車から十二号車まで・・・乗り合わせた十三人の乗客は・・・すべて・・・剛力誘拐事件の関係者だったのである。

聖子の祖母である女優、演技の自信のない女子アナ(八木亜希子)、自殺した小間使いの恋人(池松壮亮)、銀河鉄道999の車掌もできそうな小間使いの父親(西田敏行)、聖子の伯母である伯爵夫人()とその夫(玉木宏)、家政婦もできる家庭教師(松嶋菜々子)、曽根子のストーカーで藤堂の秘書(二宮和也)、チンピラ上がりの運転手(藤本隆宏)、昼出川なら夜ダチョウ倶楽部のメイド(青木さやか)、傷痍軍人の能登大佐(沢村一樹)、どこでも執事(小林隆)、ゴッドマザー侯爵夫人(草笛光子)・・・。

「あなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたもあなたも犯人です」

名探偵の抜群の推理力に・・・「神か・・・」「魔法使いか・・・」「いや、名探偵だ」と恐れ入る犯人たちだった。

「しかし・・・被害者は殺されても仕方ない極悪人だったようだ・・・私は見なかったことにしておきます」

「やったあ」とはしゃぐ殺人者たちである。

昔はよかったなあ・・・犯罪も復讐もやった者勝ちで・・・表現の自由とかも・・・デモをしたりしなくちゃならない面倒くささから自由だったわけで。

そもそも・・・表現の苦手な人は・・・表現する自由にピンとこないどこころか・・・潜在的に反感持ってたりするんだよなあ。

日本の表現者の鈍い反応がそれを象徴してるんだよなあ。

まあ・・・金持ち殺して何が悪いって言ったら金持ちに殺されるという話なんだな。

もちろん・・・神は復讐を許したりはしないけどね。

だから・・・この後・・・日本は・・・ぎゃふんと言います。

そして・・・しばらくの間、忠臣蔵は禁止になるのです。

関連するキッドのブログ→わが家の歴史

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コメント

キッドさま
あけましておめでとうございます。

嵐ファンの友人が オリエンタル急行殺人事件
すごく楽しみ☆
と言っていたのを聞いて あぁニノが犯人だと思っているんだなぁ 題名も微妙に違うし。。
と複雑な気分に~笑。
クリスティーが大好きでハヤカワミステリーを愛読していたので オリエント急行殺人事件がもう誰が犯人か知っている人が少なくなるほどに古典になっていたとは思いませんでした
クリスティーの作品で映像化して欲しいものは他にもたくさんありますが 豪華キャストそれぞれに それなりの出番があるという意味では最適な作品だったのかもしれませんね
でも 倫理観とか ある意味手を出さないほうがいい作品のようにも思えました
3時間は長すぎるので
録画で早送りしながら見ました
昭和レトロの雰囲気はよかったし豪華なエンタメ作品になっていた気がしますが 罪の意識が希薄な感じが
なんだかなぁ でした
でも これがきっかけで クリスティーに興味を持ってくれる人がいたら嬉しいです♪

投稿: chiru | 2015年1月13日 (火) 21時47分

シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン

寒中お見舞い申し上げます。
素晴らしい一年のスタートをご祈願いたします。
ご自愛くださいませ。

カレーはオリエンタルな香りでございますねえ。

エルキュール・ポアロを野村萬斎で翻案する。
もう・・・この「のぼう」な感じが
それだけでナイス・アイディアでした。

とぼけた味の殺人者というのは
ショートストーリーでは
おなじみの手ですが
喜劇としては微妙な作風の脚本家ですので
これを認めるかどうかの
お茶の間許容量が問題になるのですな。

キッドはあまり買いませんが
緩く許容する方も少なくないと思いますぞ。

「なんで燃やしちゃうの」
「つい」
このやりとりにユーモアを感じるか・・・
寒いと感じるか・・・なんですよねえ。

みんなで何かしでかすことにワクワクする
お嬢様とかも・・・いろいろな意味でギリギリですからな。

予算的に昭和レトロの美術力を
レギュラーでできるか・・・という問題もありますが
野村萬斎のポアロは別作品でもできますな。

「ABC殺人事件」は「いろは殺人事件」になってましたし。

有名どころでは「ナイルに死す」ですなあ。
まあ・・・美しい遺産相続人の殺人事件なんて・・・
二時間ドラマすぎますけどねえ・・・。
「ハワイに死す」かなあ・・・。

「アクロイド殺し」へのチャレンジもよろしいですな。

「殺人者の殺人」みたいなタイトルがよろしいかと。

まあ・・・小説は小説・・・ドラマはドラマですけれど~。

今年もよろしくお付き合いください。

投稿: キッド | 2015年1月14日 (水) 07時45分

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